(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】金属個片積層体の製造装置及び金属個片積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20220926BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H02K15/02
B21D28/02 C
B21D28/02 B
(21)【出願番号】P 2019155157
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522309425
【氏名又は名称】原 直昭
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 剛
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103978(JP,A)
【文献】特開2017-108473(JP,A)
【文献】特開2017-108474(JP,A)
【文献】特開昭62-079867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B21D 28/02
B21D 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に移送される薄鋼板の移送方向に沿って配設された複数のダイと、前記複数のダイに前記薄鋼板を押し付けるストリッパーと、前記ストリッパーによって前記複数のダイに押し付けられた前記薄鋼板にプレス加工を行う複数のパンチとを備え、前記複数のパンチのうち前記移送方向の下流側の位置に配置されたパンチとして外形打抜パンチが配設されており、前記外形打抜パンチによって前記薄鋼板から所定の平面形状の金属個片を打ち抜いて前記薄鋼板から分離すると共に、前記外形打抜パンチに対応したダイ内で前記金属個片を積層するよう構成された金属個片積層体の製造装置であって、
前記複数のダイのうち前記外形打抜パンチに対応したダイよりも上流の位置には、接着剤塗布ユニットが配設されており、
前記接着剤塗布ユニットは、
接着剤を貯留する接着剤貯留室と、
前記接着剤貯留室から供給された前記接着剤を、前記薄鋼板の下側の面の所定の位置に、前記金属個片として予定されている平面形状に対応した接着剤塗布パターンで塗布する塗布ヘッドと、
前記接着剤を前記薄鋼板に塗布する際に該塗布ヘッドの裏面から前記塗布ヘッドを押さえるヘッド押えと、を有し、
前記塗布ヘッドは、多孔質の樹脂でなり、
前記塗布ヘッドの表面には、平面視したときに前記接着剤塗布パターンと実質的に同等の形状となっており前記薄鋼板が当接したときに表面から滲出した前記接着剤を前記薄鋼板に転写する部分となる転写部
と、前記多孔質の樹脂の孔であって前記塗布ヘッドの表面側における孔が塞がれるようにして構成された非転写部と、が設けられており、
前記ヘッド押えは、平面視したときに前記接着剤塗布パターンに対応した押えパターンとなっている押え面を有し、
前記押え面が、前記塗布ヘッドの裏面に前記転写部に対応する位置及び姿勢で当接するように構成されている、
ことを特徴とする金属個片積層体の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属個片積層体の製造装置において、
前記接着剤塗布パターンを平面視したときに、前記接着剤塗布パターンの領域が、前記金属個片として予定されている平面形状の領域と同等の領域である、又は、前記金属個片として予定されている平面形状の領域に包含される領域であり、該領域に前記接着剤が塗布されるように構成されている、
ことを特徴とする金属個片積層体の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の金属個片積層体の製造装置において、
前記ヘッド押え及び前記塗布ヘッドを断面視したときに、前記ヘッド押えの前記押え面の幅は、前記塗布ヘッドの前記転写部の幅よりも小さい、
ことを特徴とする金属個片積層体の製造装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の金属個片積層体の製造装置において、
前記塗布ヘッドは、弾性材料からなり、
前記ヘッド押えの前記押え面の硬さは、前記塗布ヘッドの硬さよりも硬い、
ことを特徴とする金属個片積層体の製造装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の金属個片積層体の製造装置において、
前記薄鋼板を挟んで、前記接着剤塗布ユニットが配設された位置とは反対側の位置に、塗布ヘッド受けが配設されており、
前記塗布ヘッド受けは、前記接着剤の転写を行う際に前記塗布ヘッドが前記薄鋼板を押圧する力である押圧力を、前記薄鋼板の反対側から受けるように構成されており、
前記ストリッパーが前記塗布ヘッド受けとしての機能を兼ね備えている、
ことを特徴とする金属個片積層体の製造装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の金属個片積層体の製造装置において、
前記薄鋼板は帯状をなすフープ材であり、
前記金属個片積層体の製造装置は、上金型及び下金型を備えた順送り金型装置であり、
前記下金型には前記接着剤塗布ユニットが配設され、
前記上金型には前記外形打抜パンチが配設され、
前記金属個片積層体の製造装置は、前記フープ材を間欠的に移送しつつ、前記フープ材の下側の面に前記接着剤を塗布した後に、前記フープ材の上側から前記外形打抜パンチで外形打抜を行うよう構成されている、
ことを特徴とする金属個片積層体の製造装置。
【請求項7】
前記金属個片積層体として積層鉄心を製造するよう構成されている請求項1~6のいずれかに記載の金属個片積層体の製造装置。
【請求項8】
間欠的に移送される薄鋼板の移送方向に沿って配設された複数のダイと、前記複数のダイに前記薄鋼板を押し付けるストリッパーと、前記ストリッパーによって前記複数のダイに押し付けられた前記薄鋼板にプレス加工を行う複数のパンチとを備えたプレス装置を用いて、前記薄鋼板から所定の平面形状に打ち抜き形成された金属個片を積層してなる金属個片積層体を製造する金属個片積層体の製造方法であって、
前記薄鋼板の下側の面の所定の位置に、前記金属個片として予定されている平面形状に対応した接着剤塗布パターンで接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記接着剤塗布工程により前記接着剤が塗布された前記薄鋼板に対して、外形打抜用の外形打抜パンチにより上側から外形打抜を行って、母材である前記薄鋼板から前記所定の平面形状の前記金属個片を分離する外形打抜工程と、
前記外形打抜工程によって分離された当該金属個片を、「先行して外形打抜して分離された金属個片」に対し積層し前記接着剤を介して固着する金属個片積層工程と、
をこの順で含み、
前記接着剤塗布工程は、
多孔質の樹脂でな
り、平面視したときに前記接着剤塗布パターンと実質的に同等の形状となっている転写部と前記多孔質の樹脂の孔であって当該塗布ヘッドの表面側における孔が塞がれるようにして構成された非転写部とが表面に設けられた塗布ヘッドが用いられ、
前記ストリッパーにより前記薄鋼板を前記塗布ヘッドに押し付け
、前記塗布ヘッドの
前記転写部の表
面に滲出した前記接着剤を前記薄鋼板に転写する、ことにより前記接着剤の塗布を行うものであり、
前記転写を行う際には、前記接着剤塗布パターンに対応した押えパターンとなっている前記塗布ヘッドの押え面を前記塗布ヘッドの裏面に当接して前記塗布ヘッドを押さえる、
ことを特徴とする金属個片積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属個片積層体の製造装置及び金属個片積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の金属個片が積層された「金属個片積層体」は各種の機械、電気機器等に広く用いられている。
例えば、モータの巻線が巻回される鉄心を「金属個片積層体」で構成することも広く行われている。このような鉄心は積層鉄心とも呼ばれている。積層鉄心は、軟磁性材料からなる比較的薄い帯状の鋼板(薄鋼板。例えばケイ素薄鋼板によるフープ材)を材料とし、順送り金型装置により、当該薄鋼板の所定位置に順次穴開けを行った後に外形打抜を行って金属個片とし、かかる金属個片を複数枚積層し、積層関係にある複数の金属個片同士を結合させて全体を1つのブロックとすることによって得られる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数の金属個片同士を結合させて全体を1つのブロックとするための具体的な方法は、従来より種々提案されている。例えば、複数の金属個片を積層した後にレーザ溶接等によって金属個片同士を「溶接」して結合する方法、各金属個片の一方の面に凸部(ダボとして機能させる)を他方の面に該凸部に対応する凹部をそれぞれ予め形成しておき、凸部及び凹部を互いに篏合させて、いわゆる「かしめ」を行って金属個片同士を結合する方法、などが提案されている。
しかし、「溶接」や「かしめ」等の機械的な結合方法によると、結合部位において磁気的特性・電気的特性が劣化するという課題がある。このため、近年では接着剤を用いて金属個片同士を結合(固着)する方法が広く採用されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されている金属個片積層体の製造装置及び金属個片積層体の製造方法は、順送り金型装置内において、打ち抜き・固着ステーションの上流に接着剤塗布ノズル(特許文献1の
図2においては符号26で示されている)を有する接着剤塗布ステーションを配置している。接着剤塗布ステーションにおいては、打ち抜き・固着工程に先立ち接着剤塗布工程を実施して接着剤の塗布を行う。具体的には、接着剤塗布ノズルにおいて接着剤を吐出させた状態にしつつ、当該接着剤塗布ノズルに向けて薄鋼板を相対的に移動させて、薄鋼板の下側の面の所定の位置(特許文献1の
図1においては符号16で示されている)に接着剤を塗布する。その後、打ち抜き・固着ステーションにおいて打ち抜き・固着工程を実施する。打ち抜き・固着工程では、外形打抜パンチによって上方から薄鋼板を外形打抜を行って金属個片とし、当該外形打抜した金属個片を「先行して外形打抜された金属個片」に対し接着剤を介して固着する。
この方法によれば、機械的な方法によらず複数の金属個片を結合するので、磁気的特性・電気的特性を劣化させることなく金属個片積層体(積層鉄心)を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている金属個片積層体の製造装置及び金属個片積層体の製造方法(従来の金属個片積層体の製造装置及び金属個片積層体の製造方法)は、接着剤塗布ノズルから接着剤を吐出させて塗布を行うものであるため、薄鋼板の表面にはスポット状にしか接着剤を塗布することができない。このため、外形打抜を行って得られる金属個片の平面形状の領域のうち、その一部のしかも点としてしか接着剤を塗布することができない。
【0007】
これを克服するため、各スポットにある程度の量を盛るようにしながら、かつ、スポットの配置間隔を短くしながら接着剤を塗布することも検討できる。こうすることにより、金属個片同士を積層して厚み方向に押圧すると、盛られた接着剤が押し拡げられるため、結果的に接着の領域(接着領域)を拡大させることができる。
しかし、幅が狭い仕様の金属個片(幅狭の金属個片)を扱う場合には、金属個片同士を積層して厚み方向に押圧すると幅狭の部分では接着剤が金属個片の平面形状からはみ出してしまう惧れがある(接着剤のはみ出し)。このため、幅狭の部分においてはやむを得ず僅かな量の接着剤を各スポットに盛ることしかできない。この場合、仮に接着剤が押し拡げられたとしても接着領域の面積を然程大きくすることができない。逆に接着剤が付着しない領域(非接着領域)も金属個片の平面形状において相当程度生じてしまう。
【0008】
このように幅狭の金属個片(別観点でいうと小面積の金属個片)を扱う場合には、接着剤が金属個片の平面形状の全体に行き渡りづらく、十分な固着力(結合力)を得られないという課題がある。
【0009】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、幅狭の金属個片であっても、当該金属個片のほぼ全面に渡って膜状に接着剤を塗布することができる金属個片積層体の製造装置及び金属個片積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の金属個片積層体の製造装置は、間欠的に移送される薄鋼板の移送方向に沿って配設された複数のダイと、前記複数のダイに前記薄鋼板を押し付けるストリッパーと、前記ストリッパーによって前記複数のダイに押し付けられた前記薄鋼板にプレス加工を行う複数のパンチとを備え、前記複数のパンチのうち前記移送方向の下流側の位置に配置されたパンチとして外形打抜パンチが配設されており、前記外形打抜パンチによって前記薄鋼板から所定の平面形状の金属個片を打ち抜いて前記薄鋼板から分離すると共に、前記外形打抜パンチに対応したダイ内で前記金属個片を積層するよう構成された金属個片積層体の製造装置である。
このとき、前記複数のダイのうち前記外形打抜パンチに対応したダイよりも上流の位置には、接着剤塗布ユニットが配設されており、前記接着剤塗布ユニットは、接着剤を貯留する接着剤貯留室と、前記接着剤貯留室から供給された前記接着剤を、前記薄鋼板の下側の面の所定の位置に、前記金属個片として予定されている平面形状に対応した接着剤塗布パターンで塗布する塗布ヘッドと、前記接着剤を前記薄鋼板に塗布する際に該塗布ヘッドの裏面から前記塗布ヘッドを押さえるヘッド押えと、を有し、前記塗布ヘッドは、多孔質の樹脂でなり、前記塗布ヘッドの表面には、平面視したときに前記接着剤塗布パターンと実質的に同等の形状となっており前記薄鋼板が当接したときに表面から滲出した前記接着剤を前記薄鋼板に転写する部分となる転写部が設けられており、前記ヘッド押えは、平面視したときに前記接着剤塗布パターンに対応した押えパターンとなっている押え面を有し、前記押え面が、前記塗布ヘッドの裏面に前記転写部に対応する位置及び姿勢で当接するように構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
[2]本発明の金属個片積層体の製造装置は、前記接着剤塗布パターンを平面視したときに、前記接着剤塗布パターンの領域が、前記金属個片として予定されている平面形状の領域と同等の領域である、又は、前記金属個片として予定されている平面形状の領域に包含される領域であり、該領域に前記接着剤が塗布されるように構成されていることが好ましい。
【0012】
[3]本発明の金属個片積層体の製造装置において、前記ヘッド押え及び前記塗布ヘッドを断面視したときに、前記ヘッド押えの前記押え面の幅は、前記塗布ヘッドの前記転写部の幅よりも小さいことが好ましい。
【0013】
[4]本発明の金属個片積層体の製造装置において、前記塗布ヘッドは、弾性材料からなり、前記ヘッド押えの前記押え面の硬さは、前記塗布ヘッドの硬さよりも硬い(大きい)ことが好ましい。
【0014】
[5]本発明の金属個片積層体の製造装置において、前記薄鋼板を挟んで、前記接着剤塗布ユニットが配設された位置とは反対側の位置に、塗布ヘッド受けが配設されており、前記塗布ヘッド受けは、前記接着剤の転写を行う際に前記塗布ヘッドが前記薄鋼板を押圧する力である押圧力を、前記薄鋼板の反対側から受けるように構成されており、前記ストリッパーが前記塗布ヘッド受けとしての機能を兼ね備えている、ことが好ましい。
【0015】
[6]本発明の金属個片積層体の製造装置において、前記薄鋼板は帯状をなすフープ材であり、前記金属個片積層体の製造装置は、上金型及び下金型を備えた順送り金型装置であり、前記下金型には前記接着剤塗布ユニットが配設され、前記上金型には前記外形打抜パンチが配設され、前記金属個片積層体の製造装置は、前記フープ材を間欠的に移送しつつ、前記フープ材の下側の面に前記接着剤を塗布した後に、前記フープ材の上側から前記外形打抜パンチで外形打抜を行うよう構成されている、ことが好ましい。
【0016】
[7]本発明の金属個片積層体の製造装置は、前記金属個片積層体として積層鉄心を製造するよう構成されていてもよい。
【0017】
[8]本発明の金属個片積層体の製造方法は、間欠的に移送される薄鋼板の移送方向に沿って配設された複数のダイと、前記複数のダイに前記薄鋼板を押し付けるストリッパーと、前記ストリッパーによって前記複数のダイに押し付けられた前記薄鋼板にプレス加工を行う複数のパンチとを備えたプレス装置を用いて、前記薄鋼板から所定の平面形状に打ち抜き形成された金属個片を積層してなる金属個片積層体を製造する金属個片積層体の製造方法である。
このとき、前記薄鋼板の下側の面の所定の位置に、前記金属個片として予定されている平面形状に対応した接着剤塗布パターンで接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記接着剤塗布工程により前記接着剤が塗布された前記薄鋼板に対して、外形打抜用の外形打抜パンチにより上側から外形打抜を行って、母材である前記薄鋼板から前記所定の平面形状の前記金属個片を分離する外形打抜工程と、前記外形打抜工程によって分離された当該金属個片を、「先行して外形打抜して分離された金属個片」に対し積層し前記接着剤を介して固着する金属個片積層工程と、をこの順で含み、前記接着剤塗布工程は、多孔質の樹脂でなる塗布ヘッドが用いられ、前記ストリッパーにより前記薄鋼板を前記塗布ヘッドに押し付け、前記接着剤塗布パターンに対応した形状となっている前記塗布ヘッドの転写部の表面から前記転写部に滲出した前記接着剤を前記薄鋼板に転写する、ことにより前記接着剤の塗布を行うものであり、前記転写を行う際には、前記接着剤塗布パターンに対応した押えパターンとなっている前記塗布ヘッドの押え面を前記塗布ヘッドの裏面に当接して前記塗布ヘッドを押さえる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の金属個片積層体の製造装置及び金属個片積層体の製造方法によれば、幅狭の金属個片であっても、当該金属個片のほぼ全面に渡って膜状に接着剤を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】薄鋼板SS、金属個片PM及び金属個片積層体LMの一例を説明するために示す斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1を説明するために示す図である。
【
図3】実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1を説明するために示す要部拡大図である。
【
図4】実施形態1に係る金属個片積層体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法の効果を説明するための図である。
【
図6】実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法の効果を説明するための要部断面図である。
【
図7】実施形態2に係る金属個片積層体の製造装置2を説明するために示す要部拡大断面図である。
【
図8】変形例に係る金属個片積層体の製造装置3及び金属個片積層体の製造装置4を説明するために示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る金属個片積層体の製造装置及び金属個片積層体の製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。各図面は一例を示した模式図であり、必ずしも実際の寸法、比率等を厳密に反映したものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
なお、本明細書において、金属個片積層体の製造装置を正置したときに鉛直線と概ね平行な方向を「下」といい、「下」と反対の方向を「上」というものとする。
【0021】
[実施形態1]
1.薄鋼板SS、金属個片PM及び金属個片積層体LM
始めに薄鋼板SS、金属個片PM及び金属個片積層体LMについて説明する。
図1は、薄鋼板SS、金属個片PM及び金属個片積層体LMの一例を説明するために示す斜視図である。
【0022】
実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1は、薄鋼板SSから所定の平面形状の金属個片PMを打ち抜いて薄鋼板SSから分離すると共に、複数の金属個片PMを積層するよう構成された金属個片積層体LMを製造する装置である(
図1参照)。なお、図の薄鋼板SSにおいて符号P1で示した形状(パターン)は、金属個片として予定されている平面形状を示している。「予定されている」としたのは、金属個片の平面形状は最終的に外形打抜を行った結果定まるため、外形打抜を行う前の状態においてはそのように表記するものとしている。
【0023】
薄鋼板SSとしては、例えば帯状の比較的薄い鋼板であるフープ材を採用することができる。しかしながらこれに限定されるものではなく、例えば単板状の材料を採用することもできる。この場合、個々の単板状の材料を別途の帯状のテープで結合した上で各ステーション(後述)に間欠的に移送してもよいし、個々の単板状の材料をそれぞれ単体で各ステーション(後述)に移送してもよい。
「薄鋼板」の「薄」とはパンチ(後述)で打抜が可能な程度に厚みが小さいという意味であり、その限りにおける薄さを保っている鋼板であれば「薄鋼板」といえる。
【0024】
金属個片積層体LMは様々な用途に用いられる。例えば、モータの巻線が巻回される鉄心として用いることもできる(積層鉄心)。この場合、薄鋼板SSとしては、軟磁性材料からなる鋼板(例えばケイ素薄鋼板によるフープ材)を採用する。
図1に示す金属個片積層体LMは積層鉄心の一例を示しており、特に平面視したときに幅が狭い部位を有する金属個片(幅狭の金属個片)を扱って形成した分割鉄心を例として採り上げている。
金属個片積層体LMは積層鉄心だけに限定されるものではないが、以下においては、説明の便宜上、取り扱い対象として積層鉄心を想定しながら金属個片積層体の製造装置の実施形態を説明する。
【0025】
2.実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1の構成
(1)金属個片積層体の製造装置1の基本構成
上記したように金属個片積層体の製造装置1は、薄鋼板SSから所定の平面形状の金属個片PMを打ち抜いて薄鋼板SSから分離すると共に、複数の金属個片PMを積層するよう構成された金属個片積層体LMを製造する装置である。
【0026】
図2は、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1を説明するために示す図である。
図2(a)は金属個片積層体の製造装置1の各ステーションで順次加工されていく薄鋼板SSの様子(ストリップレイアウト)を示す平面図である。
図2(a)において、斜線の網掛けで示した部分は既に抜かれた部分であり、太線で示したパターンは当該位置のパンチ30が抜こうとする抜きパターンである。
図2(b)は、金属個片積層体の製造装置1を
図2(a)の主としてA-Aで示した位置の断面を矢印Aに沿って視たときの要部断面図である。
【0027】
金属個片積層体の製造装置1は上金型51及び下金型52を備える《
図2(b)参照》。
薄鋼板SSは帯状をなすフープ材である。金属個片積層体の製造装置1は、パイロット穴5aを活用するなどして薄鋼板SSをインデックス送りすることにより薄鋼板SSを移送方向TDに沿って間欠的に移送するいわゆる順送り金型装置である。
【0028】
下金型52は、移送方向TDに沿って配設された複数のダイ10を備えている。
上金型51は、複数のダイ10に対し薄鋼板SSを押し付けるストリッパー20と、ストリッパー20によって複数のダイ10に押し付けられた薄鋼板SSに種々のプレス加工を行う複数のパンチ30とを備えている。
金属個片積層体の製造装置1には、薄鋼板SSの移送方向TDに沿って上流側から下流側にかけて「予備穴打抜ステーション60S」、「接着剤塗布ステーション100S」、「外形打抜・積層ステーション200S」等が設定されている。
【0029】
「予備穴打抜ステーション60S」には、図示を一部省略しているがパンチ30及びダイ10の対が複数対配設されており、パイロット穴5a、スロット穴5b等の予備穴を順次打ち抜くように構成されている。なお、予備穴打抜ステーション60Sにおける予備穴の打抜については既知の技術によって実現することができるため(例えば特許文献1参照)、以下における詳しい説明は省略する。
「接着剤塗布ステーション100S」には、接着剤塗布ユニット100が配設されている。接着剤塗布ユニット100は、複数のダイ10のうち外形打抜パンチに対応したダイ210よりも上流の位置(ダイ10が配置されてもよい位置であって、ストリッパー20による薄鋼板SSの押付を享受できる位置)に配設されている。
「外形打抜・積層ステーション200S」には、外形打抜パンチ230及び外形打抜パンチ230に対応したダイ210が配設されている。
【0030】
(2)接着剤塗布ステーション100S
上記したように「接着剤塗布ステーション100S」には、接着剤塗布ユニット100が配設されている《
図2(b)参照》。接着剤塗布ユニット100は、下金型52の側に配設され、薄鋼板SSの下側の面8の所定の位置に接着剤Adを塗布する。
接着剤塗布ユニット100は、接着剤貯留室110、塗布ヘッド120及びヘッド押え130を有している。
【0031】
また、接着剤塗布ユニット100が配設された位置(下金型52の側)とは反対側の位置に、薄鋼板SSが配置される位置を挟んで、塗布ヘッド受け180が配設されている。
塗布ヘッド受け180は、接着剤Adの転写を行う際に塗布ヘッド120が薄鋼板SSを押圧する力である押圧力を、薄鋼板SSの反対側から受ける。ストリッパー20がこの塗布ヘッド受け180としての機能を兼ね備えている。
【0032】
(3)接着剤塗布ユニット100
続いて、接着剤塗布ユニット100の詳しい構造について以下に説明する。
図3は、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1を説明するために示す要部拡大図である。
図3(b)は、
図2(b)の破線Bで囲まれた領域を拡大した要部拡大断面図である。
図3(a)は、
図3(b)に対応した位置において薄鋼板SSを上面の側から視たときの平面図である。
図3(c)は、
図3(a)の破線Dで囲まれた領域を拡大して、「金属個片として予定されている平面形状P1」のパターン(以下、かかるパターンをP1と示すことがある)、接着剤塗布パターンP2及び押えパターンP3を重ねて透視したと仮定した場合の要部拡大透視図である。
【0033】
図3(b)に示すように、接着剤塗布ユニット100は、ヘッド基部150と、一端(下端)がヘッド基部150の上面に接続され、他端(上端)において内側に突設された固定用凸部143を有する略円筒状のヘッド固定体140と、ヘッド固定体140の固定用凸部143の内面によって抑え込まれて固定された塗布ヘッド120を有している。
なお、ヘッド基部150は剛体と見做すことができる。また、接着剤塗布ユニット100は、
図2(b)及び
図3(b)の符号Cで便宜的に示したように、ユニット全体が必要に応じて適宜上下に移動ができるよう構成されている。
【0034】
(3-1)接着剤貯留室110
接着剤貯留室110は、ヘッド基部150、ヘッド固定体140の内壁142及び塗布ヘッド120の裏面126で囲まれた空間によって形成されている。
接着剤貯留室110においては接着剤Adを貯留することができる。
また接着剤Adは、接着剤供給源160(例えば接着剤ディスペンサ等)よりチューブ162を通じてヘッド固定体140の側部に設けられた接着剤投入口145を経由して接着剤貯留室110に供給されるようになっている。
図において、接着剤貯留室110は塗布ヘッド120の裏面126の側に設けられている。つまり、塗布ヘッド120へは塗布ヘッド120の裏面126から接着剤Adを供給できるようになっている《
図2(b)も併せて参照》。
【0035】
(3-2)塗布ヘッド120
塗布ヘッド120は、多孔質の樹脂(多孔質樹脂)でなる。多孔質樹脂は、比較的微細な孔が多数設けられたもので、孔は単独で存在するものが含まれていてもよいが、複数の孔同士が連接している部分も多く存在している。多孔質樹脂は、その内部(特に互いに連接した複数の孔)に接着剤等の所与の液状の物質を含ませること(含浸)ができる。また、塗布ヘッド120の内部に含浸した接着剤Adの量が飽和したときや、塗布ヘッド120の外部から押圧されたときなどには、塗布ヘッド120の内部に含浸している接着剤Adが表面から滲出するようになっている。
ここでの多孔質樹脂としては、各実施形態の作用・効果を奏する限りいかなる材料を用いてもよい。例えば、いわゆる多孔質ゴムと呼ばれるものを採用してもよい。
【0036】
上記したように塗布ヘッド120の裏面126の少なくとも一部は、接着剤貯留室110の一部を構成している。つまり、塗布ヘッド120は、所定の部位(ここでは裏面126)で接着剤貯留室110と接続されており、接着剤貯留室110から接着剤Adの供給を受けられるようになっている。
【0037】
一方、塗布ヘッド120の表面122には、「転写部123」が設けられている。「転写部123」は、平面視したときに接着剤塗布パターンP2と実質的に同等の形状(ここでは大きさも同等)となっており、薄鋼板SSが当接したときに表面から滲出した接着剤Adを薄鋼板SSに転写する部分となる部位である。
なお、塗布ヘッド120の表面122の部位であって、薄鋼板SSが当接したときに、接着剤Adを薄鋼板SSに転写しない部位を「非転写部124」と呼ぶこととする《
図3(b)参照》。
【0038】
転写部123は如何なる方法によって構成してもよいが、実施形態1においては塗布ヘッド120の表面122の目を潰す方法によって構成する。
具体的には、必要なマスクを施した上で、上方から閃光(比較的大きなエネルギーをもつ)によって塗布ヘッド120の表面122を相当程度の厚みに渡って選択的に溶融させ、これにより多孔質樹脂の表面に現れていた細かな孔を塞ぐ。閃光による溶融で孔が塞がれた部位は「非転写部124」となる。一方、マスクされ閃光による溶融を免れた部位は従前の多孔質樹脂の状態を保っているため、かかる部分からは内部に含浸している接着剤Adを外部に滲出させることができる。このようにマスクされ閃光による溶融を免れた部位を「転写部123」として構成するものとする。
なお、塗布ヘッド120のフランジ部127及び側面128についても閃光による溶融で表面の目を潰した状態として、塗布ヘッド120の内部に含浸している接着剤Adが塗布ヘッド120の側面128から外部に滲出しないように構成してもよい《
図3(b)参照》。
【0039】
以上のように、塗布ヘッド120は、転写部123を薄鋼板SSに当接させることにより、接着剤貯留室110から供給された接着剤Adを、薄鋼板SSの下側の面8の所定の位置に接着剤塗布パターンP2(金属個片として予定されている平面形状P1に対応したパターン)で塗布することができるように構成されている。
【0040】
(3-3)ヘッド押え130
ヘッド押え130は、接着剤Adを薄鋼板SSに塗布する際に、塗布ヘッド120の裏面126から押え面132によって塗布ヘッド120を押さえるものである。「押さえる」とは、ストリッパー20による塗布ヘッド120の押圧(後述)に抗するように塗布ヘッド120を裏面から支持する場合の他、押え面132により塗布ヘッド120の裏面から積極的に押し込む場合なども含む。
ヘッド押え130は、上記した押え面132を有する。押え面132は、平面視したときに接着剤塗布パターンP2に対応した押えパターンP3となっている《
図3(c)も併せて参照》。
押え面132とは反対側の面138はヘッド基部150に当接するようにして固定されている。一方、押え面132の側は、押え面132が塗布ヘッド120の裏面126において転写部123に対応する位置及び姿勢で当接するようにヘッド押え130が配置されている。
【0041】
なお、塗布ヘッド120は、弾性材料からなるものとし、ここでのヘッド押え130の押え面132の硬さは、塗布ヘッド120の硬さよりも硬い(大きい)ものとしている。
ここでの「硬さ」とはロックウェル硬さを指すものとする。
【0042】
また、接着剤Adと塗布ヘッド120及びヘッド押え130と間の接着に関する親和性(相互間の結合のし易さ、つまり接着のし易さをいうものとする)よりも、接着剤Adと薄鋼板SSとの間の接着に関する親和性の方が高くなるように設定されている。
【0043】
(3-4)金属個片として予定されている平面形状のパターンP1、接着剤塗布パターンP2及び押えパターンP3との関係
(a)接着剤塗布ステーション100Sにおいては、接着剤塗布パターンP2を平面視したときに、接着剤塗布パターンP2の領域が、金属個片として予定されている平面形状P1の領域と同等の領域である、又は、金属個片として予定されている平面形状P1の領域に包含される領域であり、この領域に接着剤Adが塗布されるように、構成されている(
図3参照)。
別の言い方をすると、転写部123が画定する接着剤塗布の領域(接着剤塗布パターンP2と等価)は、金属個片として予定されている平面形状P1が占有する領域と同等の領域か、それよりも狭い領域となっている。
更に別の言い方をすると、金属個片として予定されている平面形状P1の任意の部位に着目して断面視したときに、転写部123の幅W2(接着剤塗布パターンP2の幅W2)は、金属個片として予定されている平面形状の当該部位の幅W1以下となっている。金属個片として予定されている平面形状P1の輪郭付近の内側において、接着剤を塗布しない部分が一定程度(0の場合も含む)マージンとして確保されている。
【0044】
(b)また、ヘッド押え130及び塗布ヘッド120を断面視したときに、ヘッド押え130の押え面132の幅W3は、塗布ヘッド120の転写部123の幅W2よりも小さくなるように構成されている(
図3参照)。
【0045】
(4)外形打抜・積層ステーション200S
図2に戻って外形打抜・積層ステーション200Sについて説明する。
外形打抜・積層ステーション200Sにおいては、上金型51に外形打抜パンチ230が配設され、下金型52に外形打抜パンチに対応したダイ210が配設されている。
上金型51が有する複数のパンチ30のうち、移送方向TDの下流側の位置(ここでは最も下流の位置とする)に配置されたパンチ30として、外形打抜パンチ230が配設されている。
【0046】
外形打抜パンチ230は、その先端の形状(平面視)が、薄鋼板SSを打ち抜くことにより金属個片PMが薄鋼板SSから分離するように設計された所定の形状(パターン)を有している。
外形打抜パンチに対応したダイ210は、外形打抜パンチ230により薄鋼板SSがプレスされたときに、金属個片として予定されている平面形状P1が所定の部位で薄鋼板SSから切断されるように設計されている。
外形打抜パンチに対応したダイ210の内部212は、外部打抜によって分離した金属個片PMの平面形状に即した形状となっており、金属個片PM及びそれらを積層した金属個片積層体LMを積層し収容可能な空間を有している。
【0047】
また、外形打抜パンチに対応したダイ210に連接するようにして、その下方に金属個片積層体LMを保持する積層体保持部材240(例えばスクイズリング等)が配設されている。
積層体保持部材240には、内部に金属個片積層体LMを収容可能な空間が形成されており、当該空間は外形打抜パンチに対応したダイ210の内部212に連通している。かかる「内部に金属個片積層体LMを収容可能な空間」の内壁242の形状は、金属個片PMの平面形状に即した形状となっているが、前記した内部212の内寸よりも僅かに小さい寸法となっており、当該内壁242が金属個片積層体LMをその側面から挟み込むようにして保持できるようになっている。
また、外形打抜パンチに対応したダイ210の内部212及び積層体保持部材240の内部の空間には、下側が積層体受け台シャフト246に接続された積層体受け台245が配置されている。積層体受け台245の上面は、金属個片積層体LMを受ける面となっている。積層体受け台シャフト246は、図示しないアクチュエーター(エアシリンダ、油圧ポンプ、サーボモーター等)に接続されており、適宜の抗力(トルク)を保ちながら適宜上下するように構成されている。
さらに、積層体保持部材240の外周には接着剤Adを硬化させるためのヒーター244が配置されている。
【0048】
以上のように金属個片積層体の製造装置1は、フープ材(薄鋼板SS)を間欠的に移送しつつ、フープ材の下側の面8に接着剤Adを塗布した後に、フープ材の上側から外形打抜パンチ230で外形打抜を行って金属個片PMをフープ材から分離すると共に、外形打抜パンチに対応したダイ210の内部212で金属個片PMを積層し、当該接着剤Adによって複数の金属個片PMを互いに固着させて金属個片積層体LMを得ることができるようになっている。
【0049】
3.実施形態1に係る金属個片積層体の製造方法の構成
実施形態1に係る金属個片積層体の製造方法は、間欠的に移送される薄鋼板SSの移送方向TDに沿って配設された複数のダイ10と、複数のダイ10に薄鋼板SSを押し付けるストリッパー20と、ストリッパー20によって複数のダイ10に押し付けられた薄鋼板SSにプレス加工を行う複数のパンチ30とを備えたプレス装置を用いて、薄鋼板SSから所定の平面形状に打ち抜き形成された金属個片PMを積層してなる金属個片積層体LMを製造するための製造方法である。
図4は、実施形態1に係る金属個片積層体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4に示すように、実施形態1に係る金属個片積層体の製造方法は、少なくとも接着剤塗布工程S10と、外形打抜工程S20と、金属個片積層工程S30とをこの順番で含む。
【0050】
(1)予備穴打抜工程
予備穴打抜工程(フローチャートによる図示を省略)は、適宜の形状を有するパンチ30及び当該パンチに対応したダイ10によって必要な孔を外形打抜を行う前に薄鋼板SSから打ち抜く工程である。
例えば、薄鋼板SS(フープ材)の幅方向の両端部に小規模の穴を打ち抜いてインデックス送り用のパイロット穴5aを形成するパイロット穴打抜ステップを行い、次いで、例えば積層鉄心のスロット部に相当する部分に意図した形状の中規模の穴を打ち抜いてスロット穴5bを形成するスロット穴打抜ステップを行ってもよい《
図2(a)も併せて参照》。
【0051】
(2)接着剤塗布工程S10
接着剤塗布工程S10は、多孔質の樹脂でなる塗布ヘッド120を用い、薄鋼板SSの下側の面8の所定の位置に、金属個片PMとして予定されている平面形状P1に対応した接着剤塗布パターンP2で接着剤Adを塗布する工程である(
図3も併せて参照)。
接着剤塗布工程S10では、ストリッパー20により薄鋼板SSを塗布ヘッド120に押し付け、接着剤塗布パターンP2に対応した形状となっている塗布ヘッド120の転写部123の表面から転写部123に滲出した接着剤Adを薄鋼板SSに転写する。
接着剤塗布工程S10は、接着剤滲出ステップS12、塗布ヘッド押付ステップS14及び接着剤転写ステップS16を含む(
図4参照)。
【0052】
(2-1)接着剤滲出ステップS12
接着剤滲出ステップS12では、接着剤塗布パターンP2に対応した形状となっている塗布ヘッド120の転写部123の表面から接着剤Adを滲出させる。
接着剤Adの滲出は、塗布ヘッド120の内部における接着剤Adの含浸の量を飽和させて自然滲出させる方法、塗布ヘッド120を外部から押圧する方法(ストリッパー20により薄鋼板SSを介して塗布ヘッド120を押圧する方法、ストリッパー20による塗布ヘッド120の押圧に抗するようにヘッド押え130から生ずる抗力によって塗布ヘッド120を押圧する方法などもこれに含まれる)、その他の方法によって適宜実現することができる。
【0053】
(2-2)塗布ヘッド押付ステップS14
塗布ヘッド押付ステップS14では、ストリッパー20により薄鋼板SSを塗布ヘッド120に押し付ける。より具体的にはストリッパー20により薄鋼板SSを転写部123に押し付ける。
薄鋼板SSを塗布ヘッド120(転写部123)に押し付けるのか、塗布ヘッド120(転写部123)を薄鋼板SSに押し付けるのかは、相対的な関係からいえばどちらであってもよい。
【0054】
(2-3)接着剤転写ステップS16
接着剤転写ステップS16では、転写部123に滲出した接着剤Adを薄鋼板SSに転写する。
転写を行う際には、ヘッド押え130の押え面132(接着剤塗布パターンP2に対応した押えパターンP3となっている)を塗布ヘッド120の裏面126に当接して塗布ヘッド120を押さえる。なお、ヘッド押え130の押え面132については、塗布ヘッド押付ステップS14においても塗布ヘッド120を押さえるために活用してもよい。
【0055】
接着剤滲出ステップS12を先に実行して予め接着剤Adを滲出させておき、次いで塗布ヘッド押付ステップS14を実行してもよい。逆に、塗布ヘッド押付ステップS14を先に実行し、次いで接着剤滲出ステップS12を実行(薄鋼板SSに塗布ヘッド120を当接させた状態で接着剤Adを滲出させる)してもよい。
また、ストッパー20で薄鋼板SSを介して塗布ヘッド120を押すことにより接着剤Adを滲出させこれと同時に接着剤の転写を行うというように、マクロ的な見地で視たときに接着剤滲出ステップS12、塗布ヘッド押付ステップS14及び接着剤転写ステップS16は概ね同時に実行するものであってもよい。
【0056】
(3)外形打抜工程S20
外形打抜工程S20は、接着剤塗布工程S10により接着剤Adが塗布された薄鋼板SSに対して、外形打抜用の外形打抜パンチ230により上側から外形打抜を行って、母材である薄鋼板SSから所定の平面形状の金属個片PMを分離する工程である(
図2も併せて参照)。
【0057】
(4)金属個片積層工程S30
金属個片積層工程S30は、外形打抜工程S20によって分離された当該金属個片PMを、「先行して外形打抜して分離された金属個片」に対し積層し接着剤Adを介して固着する工程である(
図2も併せて参照)。
【0058】
なお、外形打抜工程S20及び金属個片積層工程S30は、マクロ的な見地で視たときに概ね同時に実行するものであってもよい。
例えば、外形打抜工程S20及び金属個片積層工程S30を実行するのに先立って、「先行して外形打抜された金属個片」のうち最上層の金属個片(つまり1サイクル前に外形打抜された金属個片)の上面を、外形打抜パンチに対応したダイ210の上面に対して実質的な段差が無い状態としておく(いわゆる面一の状態としておく)。この状態で外形打抜工程S20を実行すると、分離された金属個片PMの下面は、すぐさま、1サイクル前に外形打抜された金属個片PMの上面と当接することとなる。このようにすることにより、外形打抜工程S20及び金属個片積層工程S30をマクロ的な見地で視たとき概ね同時に実行することができる。
【0059】
上記のように積層された金属個片群を、外形打抜パンチに対応したダイ210の内部212に収容しつつ下方に押し込み、積層体保持部材240の内壁242によって一時的に保持する。金属個片PMの積層体が積層体保持部材240の内部に滞留している比較的短い時間に接着剤Adの硬化を促進させるため、ヒーター244等によって接着部を加熱し、積層関係にある金属個片PM同士を結合(固着)させて金属個片積層体LMを完成する。
【0060】
以上の工程を実行することにより、金属個片積層体LMを得ることができる。
【0061】
なお、上記した例では接着剤塗布工程S10は予備穴打抜工程を行った後に実行するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、接着剤塗布工程S10を予備穴打抜工程より先に実行してもよい。また、複数の予備穴を開ける予備穴打抜工程の中途で、接着剤塗布工程S10を実行してもよい。
工程順の入れ替えに対応して、金属個片積層体の製造装置においても、予備穴打抜ステーション60S及び接着剤塗布ステーション100Sを適宜配置替えしてもよい。
【0062】
またなお、金属個片積層体LMの最下層の金属個片PMとなる部分は、最下層の金属個片PMの下面が当該金属個片積層体LMの外面を構成することとなる。したがって、当該金属個片積層体LMの最下層の金属個片PMとなる部分については接着剤Adを塗布しない。接着剤塗布ユニット100を下方に退避することにより接着剤塗布工程S10を実行しないことでこれを実現できる《
図2(b)及び
図3(b)における矢印Cを参照》。
【0063】
4.実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法の作用・効果
(1)接着剤塗布ユニット100
塗布ヘッド120は多孔質の樹脂(多孔質樹脂)でなるため、接着剤Adを塗布ヘッド120に供給してやると塗布ヘッド120の内部に接着剤Adを含浸させることができ、更には、表面122から接着剤Adを滲出させることができる。
この塗布ヘッド120の表面122には、「金属個片として予定されている平面形状P1」に対応した接着剤塗布パターンP2と実質的に同等の形状となっている転写部123が設けられている(
図3等参照)。
転写部123が薄鋼板SSに当接すると、転写部123の表面から滲出した接着剤Adが薄鋼板SSに転写される。
この構成だけでも条件によっては薄鋼板SSの必要な箇所に接着剤Adを付着させることは可能であるが、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法においては、更に、ヘッド押え130で塗布ヘッド120の裏面126から塗布ヘッド120を押さえるようにしている。かかるヘッド押え130は、接着剤塗布パターンP2に対応した押えパターンP3となっている押え面132を有し、当該押え面132で塗布ヘッド120の裏面126において転写部123に対応する位置及び姿勢で当接するようになっている(
図3等参照)。
このため、ストリッパー20によって上方から薄鋼板SSが塗布ヘッド120に押し付けられたとき、塗布ヘッド120においては、ヘッド押え130の押え面132からの抗力によって多孔質樹脂(塗布ヘッド120)に含浸している接着剤Adが、特に接着剤塗布パターンP2に即した範囲で押し出されるようにして転写部123側に滲出することとなる。そしてこのように滲出した相当程度の接着剤Adは薄鋼板SSに転写され、薄鋼板SSにおいては、金属個片として予定されている平面形状P1に対応した接着剤塗布パターンP2で接着剤が膜状に塗布されることとなる(
図3及び後述する
図6参照)。
【0064】
図5は、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法の効果を説明するための図である。
図5(a)は従来の金属個片積層体の製造装置及び製造方法による接着剤塗布の様子を示しており、
図5(b)は実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法の様子を示す。いずれの図においても、左側に示した図は平面図であり、右側に示した図は左側に示した図のa-a矢視断面図である。
従来の金属個片積層体の製造装置及び製造方法によれば、
図5(a)に示すように、幅狭の金属個片を扱う場合には、金属個片として予定されている平面形状P1からの接着剤Adのはみ出しを恐れて、僅かな量の接着剤Adを各スポットに盛ることしかできない。
一方、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法によれば、上記した構成を有するため、
図5(b)に示すように、幅狭の金属個片であっても、当該金属個片(金属個片として予定されている平面形状P1)のほぼ全面に渡って膜状に接着剤Adを接着剤塗布パターンP2の範囲で塗布することができる
これにより、接着剤Adが金属個片として予定されている平面形状P1の全体に行き渡り、金属個片を積層した際に積層関係にある金属個片同士で十分な固着力(結合力)を得ることができる。
【0065】
したがって、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法によれば、幅狭の金属個片であっても、当該金属個片のほぼ全面に渡って膜状に接着剤を塗布することができる。
【0066】
(2)実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1は、接着剤塗布パターンP2を平面視したときに、接着剤塗布パターンP2の領域が、金属個片として予定されている平面形状P1の領域と同等の領域である、又は、金属個片として予定されている平面形状P1の領域に包含される領域であり、この領域に接着剤Adが塗布されるように構成されている(
図3及び後述する
図6参照)。
【0067】
このように構成することによって、複数の金属個片PM片を所定の押圧力をもって積層したときに、金属個片の平面形状P1の領域の外に接着剤Adがはみ出さないようすることができる。つまり、金属個片積層体LMを構成する面のうち、金属個片が積まれた状態が外部から見える面(金属個片積層体LMの側面)に接着剤Adがはみ出すことを防止することができる(
図6も併せて参照)。
【0068】
(3)実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1は、ヘッド押え130及び塗布ヘッド120を断面視したときに、ヘッド押え130の押え面132の幅W3は、塗布ヘッド120の転写部123の幅W2よりも小さくなるように構成されている。
【0069】
図6は、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1及び製造方法の効果を説明するための要部断面図である。なお、図においてFで示された各矢印は、多孔質樹脂でなる塗布ヘッド120内に接着剤Adが含浸していく様子を模式的に例示して説明するためのものである。矢印の方向は接着剤Adが含浸していく方向を示し、矢印の長さは接着剤Adが含浸していく速度・度合いを示している。
【0070】
図6の矢印Fで示すように、塗布ヘッド120の裏面126においては、主にE以外の領域において接着剤Adが多孔質樹脂でなる塗布ヘッド120内に染み渡るようにして含浸していく。主にはこのようにして接着剤Adが塗布ヘッド120に供給される。
ここで、上記したようにヘッド押え130の押え面132の幅W3が塗布ヘッド120の転写部123の幅W2よりも小さくなるように構成されているため、
図6のEで示すような「付加的な接着剤供給部E」を更に確保することができる。
塗布ヘッド120の内部を断面視したとき、接着剤Adは主に転写部123直下付近で消費されるため、かかる転写部123直下付近では接着剤Adが枯渇傾向にある。そこで、上記したように転写部123の直下に「付加的な接着剤供給部E」を更に設けることにより、「付加的な接着剤供給部E」からの流入経路も相まって、接着剤Adを枯渇傾向にある付近へ積極的に誘導することができ、塗布ヘッド120への接着剤Adの含浸を促進することができる(
図6参照)。
また、接着剤Adを薄鋼板SSに転写するときには、ヘッド押え130の抗力により塗布ヘッド120が僅かに弾性変形して圧縮することとなる(後述)。転写が完了し塗布ヘッド120が薄鋼板SSとの接触から解放されると今度は塗布ヘッド120が元の形に復帰するすることとなる。その際、最も変位が大きい「付加的な接着剤供給部E」付近から、より多くの接着剤Adが流入することも期待できる。
【0071】
(4)実施形態1の塗布ヘッド120は、弾性材料からなり、ヘッド押え130の押え面132の硬さは、塗布ヘッド120の硬さよりも硬くなるように構成されている。
【0072】
このようにヘッド押え130の押え面132の硬さを設定することにより、力のロスを少なくしながら、転写の際には押え面132から塗布ヘッド120に対して適切に抗力を発生することができる。
また、ヘッド押え130により塗布ヘッド120が押圧されると、塗布ヘッド120は相対的に弾性変形するように構成してもよい。
【0073】
(5)実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1は、薄鋼板SSを挟んで、接着剤塗布ユニット100が配設された位置とは反対側の位置に、塗布ヘッド受け180が配設されており、塗布ヘッド受け180は、接着剤Adの転写を行う際に塗布ヘッド120が薄鋼板SSを押圧する力である押圧力を、薄鋼板SSの反対側から受けるように構成されている。そして、ストリッパー20が塗布ヘッド受け180としての機能を兼ね備えている。
【0074】
このように塗布ヘッド受け180を設けることにより、上流の工程でパイロット穴5a、スロット穴5b等予備穴の打抜を行った結果、部分的に開口に囲まれた不安定な部分を有する薄鋼板SSについても、塗布ヘッド受け180が塗布ヘッド120の反対側で後ろ盾となるため、安定的に接着剤Adの転写・塗布を行うことができる。
また、新たなユニットを追加することなく、ストリッパー20が塗布ヘッド受け180としての機能を兼ねているため、部品点数の削減により構造を単純化することができる。
【0075】
(6)薄鋼板SSは帯状をなすフープ材としている。また実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1は、上金型51及び下金型52を備えた順送り金型装置であり、下金型52には接着剤塗布ユニット100が配設され、上金型51には外形打抜パンチ230が配設されており、フープ材を間欠的に移送しつつ、フープ材の下側の面8に接着剤Adを塗布した後に、フープ材の上側から外形打抜パンチ230で外形打抜を行うよう構成されている。
【0076】
このように薄鋼板SSは帯状をなすフープ材であるため、連続的に薄鋼板SSを装置内に搬入/搬出することができる。金属個片積層体の製造装置1はこのようなフープ材を扱う上金型51及び下金型52を備えた順送り金型装置であるため量産性の優れたものとなる。
【0077】
(7)実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1は、金属個片積層体LMとして積層鉄心を製造するよう構成されていることも好ましい。
【0078】
実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1を、好適な態様により金属個片積層体LMとして積層鉄心を製造するよう構成すれば、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1の作用・効果を最大限に発揮させることができる。
【0079】
(8)実施形態1に係る金属個片積層体の製造方法は、主に実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1を用いることを前提としている。このため、実施形態1に係る金属個片積層体の製造方法は、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1で得られる効果のうち該当する効果を同様に奏する。
【0080】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る金属個片積層体の製造装置2について説明する。
図7は、実施形態2に係る金属個片積層体の製造装置2を説明するために示す要部拡大断面図である。実施形態2において、基本的な構成及び特徴が実施形態1と同じ構成要素については、実施形態1と同じ符号を使用し、説明を省略する。
【0081】
実施形態2に係る個片積層体の製造装置2は、基本的には実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1と同様の構成を有するが、塗布ヘッド120の表面122における転写部及び非転写部の構成の仕方において実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1とは異なる。
【0082】
すなわち、
図7に示すように、実施形態2に係る金属個片積層体の製造装置2は、転写部123をメサ状の凸部123bによって構成している。
この転写部123たる凸部123bは、非転写部124たる凹部124bに対して所定の段差129bを有している。この段差129bは、塗布ヘッド120が薄鋼板SSに押し付けられ接着剤Adが薄鋼板SSに転写される際に、転写部123(凸部123bの先端面)は薄鋼板SSに当接するものの、非転写部124は薄鋼板SSに接触しないような高低差に設定されている。
非転写部124(凹部124b)は、
図7に示すように、実施形態1に係る非転写部124(マスク部124a)のような閃光による溶融を特段に施さない状態のままで構成することができる。もっとも、閃光による溶融で非転写部124(凹部124b)の多孔質樹脂の孔を塞ぐ処理を施すことを妨げるものではない。
【0083】
実施形態2に係る金属個片積層体の製造装置2は、実施形態1のような閃光による溶融等の処理を特段に要せず、転写部123をメサ状の凸部123bによって構成することで接着剤Adの転写を行うことができるため、製造装置の造り込み作業を単純化することができ、経済的にも有利な装置とすることができる。
【0084】
なお、実施形態2に係る金属個片積層体の製造装置2は、塗布ヘッド120の表面122における転写部及び非転写部の構成の仕方以外の構成においては、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態1に係る金属個片積層体の製造装置1が有する効果のうち該当する効果を同様に奏する。
【0085】
[変形例]
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0086】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
例えば、各実施形態において用いる接着剤Adはいわゆる一液性のものを想定したため、接着剤塗布ステーション100Sは1箇所に配置した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。接着剤Adをいわゆる二液性のものを想定して、接着剤塗布ステーション100Sを2箇所配置してもよい。
【0087】
(2)実施形態1及び実施形態2において、ヘッド押え130の押え面132の幅W3は、塗布ヘッド120の転写部123の幅W2よりも小さい構成を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ヘッド押えとして、
図8(a)及び
図8(b)に示すようなヘッド押え130’,130’’を構成することにより、ヘッド押え130’,130’’の押え面132の幅W3を、塗布ヘッド120の転写部123の幅W2よりも大きくするように構成してもよい。
なお、
図8は、変形例に係る金属個片積層体の製造装置3及び金属個片積層体の製造装置4を説明するために示す要部拡大断面図である。
図8(a)は実施形態1に対応した変形例を示し、
図8(b)は実施形態2に対応した変形例を示している。
【0088】
ヘッド押え130’,130’’をこのように構成することにより、塗布ヘッド120に対しては、転写部123を含む広い範囲でヘッド押え130’,130’’による抗力が掛かるため、安定的に接着剤Adの転写を行うことできる。
【0089】
(3)各実施形態において塗布ヘッド120の側面128の下端と、塗布ヘッド120の裏面126の周縁とが一致するものとして図示して説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、塗布ヘッド120の裏面側を、側壁(図示を省略)を有するカップ状に形成してもよい。
【0090】
(4)
図2(b)において、ストリッパー20は各ステーションに共通的に用いられる一体のものとして図示したがこれに限定されるものではない。前後(上流/下流)の工程の間で分割しているストリッパーであってもよい。
【0091】
(5)各実施形態における上金型51及び下金型52の関係はこれまで説明してきた構成・配置に限定されるものではない。例えば、パンチ30及びストリッパー20を下方に配置し、ダイ20、接着剤塗布ユニット100を上方に配置してもよい。また、これらの構成を水平に対して90度回転させ、パンチ30及びストリッパー20が水平方向に進退するような配置としてもよい。
【0092】
(6)各実施形態において、金属個片積層体LMの応用例としてモータ、ソレノイド等向けの積層鉄心に焦点を当てて説明をしたが、それに限定されるものではない。複数の金属個片が積層され一定程度厚みを有する金属個片積層体の態様のものを活用する製品であれば、如何なる製品も本発明が扱う金属個片積層体LMとして応用することができる。例えば、カムのような工業部品を本発明が扱う金属個片積層体LMと適用することもできる。
【符号の説明】
【0093】
1,2,3,4…製造装置、5a…パイロット穴、5b…スロット穴、8…薄鋼板の下側の面、10…ダイ、20…ストリッパー、30…パンチ、51…上金型、52…下金型、60S…予備穴打抜ステーション、100…接着剤塗布ユニット、100S…接着剤塗布ステーション、110…接着剤貯留室、120…塗布ヘッド、122…塗布ヘッドの表面、123…転写部、123b…凸部、124…非転写部、124a…マスク部、124b…凹部、126…塗布ヘッドの裏面、127…塗布ヘッドのフランジ部、128…塗布ヘッドの側面、129b…段差、130,130',130''…ヘッド押え、132…押え面、138…押え面とは反対側の面、140…ヘッド固定体、142…ヘッド固定体の内壁、143…ヘッド固定体の固定用凸部、145…接着剤投入口、150…ヘッド基部、160…接着剤供給源、162…チューブ、180…塗布ヘッド受け、200S…外形打抜・積層ステーション、210…外形打抜パンチに対応したダイ、212…外形打抜に対応したダイの内部、230…外形打抜パンチ、240…積層体保持部材、242…積層体保持部材の内壁、244…ヒーター、245…積層体受け台、246…積層体受け台シャフト