(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置、電圧波形の作成方法、電場応答性高分子アクチュエータの駆動方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220926BHJP
G06F 3/04847 20220101ALI20220926BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G06F3/01 560
G06F3/04847
(21)【出願番号】P 2019113712
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2021-06-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代ロボット中核技術開発/革新的ロボット要素技術分野/スライドリングマテリアルを用いた柔軟センサーおよびアクチュエータの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】椙山 慶太
(72)【発明者】
【氏名】神崎 武彦
(72)【発明者】
【氏名】堀邊 隆介
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一将
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510346(JP,A)
【文献】特開2018-109984(JP,A)
【文献】特表2010-528394(JP,A)
【文献】特開2014-2729(JP,A)
【文献】特開2017-33228(JP,A)
【文献】特開2008-123061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/04847
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を有する電場応答性高分子アクチュエータと、
1周期分の電圧の変化を示す駆動波形データに基づいて変化する電圧を、前記一対の電極の間に繰り返し印加することにより前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する駆動部と、
使用者の操作に基づいて編集波形データを変更する波形編集部とを備え、
前記電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に前記編集波形データが変更されたとき、前記編集波形データを新たな前記駆動波形データとするように前記駆動波形データを更新し、更新された前記駆動波形データに基づいて前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動するアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記編集波形データが変更されているか否かを定期的に判定する変更判定部を備え、
前記変更判定部により前記編集波形データが変更されていると判定された場合に、前記駆動波形データを更新する請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記編集波形データに対応する波形を示す画像を表示部に表示させる画像処理部を備え、
前記波形編集部は、前記表示部に表示された前記画像を、ポインティングデバイスを用いて変更する操作に基づいて前記編集波形データを変更する請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記電場応答性高分子アクチュエータの伸縮に基づく動作を触感として認識させる触感提示装置として適用される請求項1~3のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記触感提示装置は、前記電場応答性高分子アクチュエータの伸縮に基づく振動を脈動の触感として認識させる脈動発生装置である請求項4に記載のアクチュエータ装置。
【請求項6】
前記電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に、予め記憶されている電圧波形データを呼び出す操作が行われた場合、前記編集波形データを前記電圧波形データに変更する請求項1~5のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のアクチュエータ装置を用いて、前記電場応答性高分子アクチュエータに特定の動きをさせるための印加電圧の波形を作成する電圧波形の作成方法。
【請求項8】
電場応答性高分子アクチュエータの駆動方法であって、
1周期分の電圧の変化を示す駆動波形データに基づいて変化する電圧を繰り返し印加することにより前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する工程と、
使用者の操作に基づいて編集波形データを変更する工程とを有し、
前記電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に前記編集波形データが変更されたとき、前記編集波形データを新たな前記駆動波形データとするように前記駆動波形データを更新し、更新された前記駆動波形データに基づいて前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動することを特徴とする電場応答性高分子アクチュエータの駆動方法。
【請求項9】
一対の電極を有する電場応答性高分子アクチュエータと、
1周期分の電圧の変化を示す駆動波形データに基づいて変化する電圧を、前記一対の電極の間に繰り返し印加することにより前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する駆動部と、
使用者の操作に基づいて編集波形データを変更する波形編集部とを備えるアクチュエータ装置を制御するプログラムであって、
前記電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に前記編集波形データが変更されたとき、前記編集波形データを新たな前記駆動波形データとするように前記駆動波形データを更新し、更新された前記駆動波形データに基づいて前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する処理を前記アクチュエータ装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置、電圧波形の作成方法、電場応答性高分子アクチュエータの駆動方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電場応答性高分子アクチュエータの伸縮に基づく振動等の動作を触感として認識させる触感提示装置が開示されている。上記触感提示装置は、電場応答性高分子アクチュエータに印加する電圧の波形を変更することにより、電場応答性高分子アクチュエータの動作パターンが変化し、動作パターンに応じた様々な触感を使用者に提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記触感提示装置を用いて特定の触感を使用者に提示するためには、まず、特定の触感を提示するように電場応答性高分子アクチュエータを動作させるための電圧波形を作成する必要がある。上記電圧波形は、例えば、基礎となる電圧波形を用意し、その電圧波形を変更する編集作業と、編集後の電圧波形を用いた電場応答性高分子アクチュエータの動作試験とを繰り返し、電場応答性高分子アクチュエータから提示される触感を特定の触感に近づけていく作業を行うことにより作成される。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電場応答性高分子アクチュエータに特定の動きをさせるための電圧波形を作成する作業を効率化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するアクチュエータ装置は、一対の電極を有する電場応答性高分子アクチュエータと、1周期分の電圧の変化を示す駆動波形データに基づいて変化する電圧を、前記一対の電極の間に繰り返し印加することにより前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する駆動部と、使用者の操作に基づいて編集波形データを変更する波形編集部とを備え、前記電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に前記編集波形データが変更されたとき、前記編集波形データを新たな前記駆動波形データとするように前記駆動波形データを更新し、更新された前記駆動波形データに基づいて前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する。
【0007】
上記構成によれば、電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に編集波形データを変更した場合に、変更後の編集波形データの保存や送信等の操作を行わずとも、電場応答性高分子アクチュエータの動作が変更後の編集波形データに基づく動作に切り替わる。これにより、編集波形データを編集しながら、電場応答性高分子アクチュエータに特定の動きをさせる電圧波形を探索する作業をよりスムーズに行うことができ、上記電圧波形を効率的に作成できる。
【0008】
上記アクチュエータ装置において、前記編集波形データが変更されているか否かを定期的に判定する変更判定部を備え、前記変更判定部により前記編集波形データが変更されていると判定された場合に、前記駆動波形データを更新することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、電場応答性高分子アクチュエータの駆動に用いられる駆動波形データの更新頻度を少なくすることができる。
上記アクチュエータ装置において、前記編集波形データに対応する波形を示す画像を表示部に表示させる画像処理部を備え、前記波形編集部は、前記表示部に表示された前記画像を、ポインティングデバイスを用いて変更する操作に基づいて前記編集波形データを変更することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、波形を編集する操作を直感的に行うことができる。そのため、機械や情報処理に関する知識が少ない使用者であっても、電場応答性高分子アクチュエータに特定の動きをさせるための電圧波形を容易に作成できる。
【0011】
上記アクチュエータ装置において、前記電場応答性高分子アクチュエータの伸縮に基づく動作を触感として認識させる触感提示装置として適用されることが好ましい。
上記アクチュエータ装置において、前記触感提示装置は、前記電場応答性高分子アクチュエータの伸縮に基づく振動を脈動の触感として認識させる脈動発生装置であることが好ましい。
【0012】
上記アクチュエータ装置において、前記電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に、予め記憶されている電圧波形データを呼び出す操作が行われた場合、前記編集波形データを前記電圧波形データに変更することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、駆動中の電場応答性高分子アクチュエータの動作を、予め記憶されている電圧波形データに基づく動作に容易に変更できる。
上記課題を解決する電圧波形の作成方法は、上記アクチュエータ装置を用いて、前記電場応答性高分子アクチュエータに特定の動きをさせるための印加電圧の波形を作成する。
【0014】
上記課題を解決する電場応答性高分子アクチュエータの駆動方法は、電場応答性高分子アクチュエータの駆動方法であって、1周期分の電圧の変化を示す駆動波形データに基づいて変化する電圧を繰り返し印加することにより前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する工程と、使用者の操作に基づいて編集波形データを変更する工程とを有し、前記電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に前記編集波形データが変更されたとき、前記編集波形データを新たな前記駆動波形データとするように前記駆動波形データを更新し、更新された前記駆動波形データに基づいて前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する。
【0015】
上記課題を解決するプログラムは、一対の電極を有する電場応答性高分子アクチュエータと、1周期分の電圧の変化を示す駆動波形データに基づいて変化する電圧を、前記一対の電極の間に繰り返し印加することにより前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する駆動部と、使用者の操作に基づいて編集波形データを変更する波形編集部とを備えるアクチュエータ装置を制御するプログラムであって、前記電場応答性高分子アクチュエータの駆動中に前記編集波形データが変更されたとき、前記編集波形データを新たな前記駆動波形データとするように前記駆動波形データを更新し、更新された前記駆動波形データに基づいて前記電場応答性高分子アクチュエータを駆動する処理を前記アクチュエータ装置に実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電場応答性高分子アクチュエータに特定の動きをさせるための電圧波形を作成する作業を効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】誘電エラストマーアクチュエータの断面構造を示す断面図。
【
図7】誘電エラストマーアクチュエータの駆動中における波形編集装置側の制御を示すフローチャート。
【
図8】誘電エラストマーアクチュエータの駆動中における駆動部側の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のアクチュエータ装置を、印加電圧に応じて発生する振動を人体の脈動の触感として使用者に認識させる脈動発生装置に具体化した一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、脈動発生装置は、人体の前腕及び手の外側形状を模擬した柔軟材料からなる模擬体10を備えている。模擬体10を構成する柔軟材料としては、例えばシリコーンやウレタン等のエラストマーが挙げられる。
【0019】
模擬体10の内部には、人体の橈骨及び尺骨をそれぞれ模擬した第1芯部11及び第2芯部12と、橈骨動脈を模擬したシート状の誘電エラストマーアクチュエータ13(DEA:Dielectric Elastomer Actuator)を備えている。
【0020】
図3に示すように、DEA13は、誘電エラストマーからなるシート状の誘電層20と、誘電層20の厚さ方向の両側に配置された電極層としての正極電極21及び負極電極22とが複数積層された多層構造体である。DEA13の最外層には絶縁層23が積層されている。DEA13は、正極電極21と負極電極22との間に直流電圧が印加されると、印加電圧の大きさに応じて、誘電層20が厚さ方向に圧縮されるとともに誘電層20の面に沿った方向であるDEA13の面方向に伸張するように変形する。
【0021】
誘電層20を構成する誘電エラストマーは特に限定されるものではなく、公知のDEAに用いられる誘電エラストマーを用いることができる。上記誘電エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら誘電エラストマーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。誘電層20の厚さは、例えば、20~200μmである。
【0022】
正極電極21及び負極電極22を構成する材料としては、例えば、導電エラストマー、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック(登録商標)、金属蒸着膜が挙げられる。上記導電エラストマーとしては、例えば、絶縁性高分子及び導電性フィラーを含有する導電エラストマーが挙げられる。
【0023】
上記絶縁性高分子としては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら絶縁性高分子のうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。上記導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、銅や銀等の金属粒子が挙げられる。これら導電性フィラーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。正極電極21及び負極電極22の厚さは、例えば、1~100μmである。
【0024】
絶縁層23を構成する絶縁エラストマーは特に限定されるものではなく、公知のDEAの絶縁部分に用いられる公知の絶縁エラストマーを用いることができる。上記絶縁エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら絶縁エラストマーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。絶縁層23の厚さは、例えば、10~100μmである。
【0025】
図1及び
図4に示すように、脈動発生装置は、DEA13の正極電極21及び負極電極22により構成される一対の電極の間に周期的に変化する電圧を印加する駆動部30と、駆動部30がDEA13に印加する電圧の波形を編集する波形編集装置40とを備えている。駆動部30は、駆動側記憶部31と制御部32とを備えている。駆動側記憶部31には、波形編集装置40から送信された1周期分の電圧の変化を示す駆動波形データが記憶されている。制御部32は、駆動側記憶部31に記憶されている駆動波形データに基づく波形の電圧をバッテリ等の電源(図示略)からDEA13に繰り返し印加する。
【0026】
波形編集装置40は、入力部としてのポインティングデバイス41、表示部42、第1記憶部43、第2記憶部44、第3記憶部45、波形編集部46、変更判定部47、条件設定部48、画像処理部49を備えるコンピュータとして構成される。
【0027】
ポインティングデバイス41は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス等のポインティングデバイスであり、操作者からの操作指示等を受け付ける。表示部42は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示デバイスである。
【0028】
図5に示すように、表示部42の上部には、DEA13への電圧の印加のオン・オフを切り替える出力ボタン51が表示される。表示部42の左側部分には、登録済みの電圧波形データを呼び出すための呼び出しボタン52、新たな電圧波形データを登録するための保存ボタン53が表示される。
【0029】
表示部42の中央部分には、後述するアンカーポイントPの追加及び削除を行うアンカーポイントボタン54が表示されるとともに、編集対象となる波形を示す第1波形編集画面55が表示される。表示部42の右側上部には、DEA13に印加されている電圧を示す駆動状況画面56が表示される。表示部42の中央下部には、出力の大きさ(Amp)、オフセット電圧の大きさ(Offset)、最大電圧(Max voltage)を変更するスライダーを有する第2波形編集画面57が表示される。表示部42の右側下部には、駆動部30において、駆動波形データに基づく波形の電圧を印加する際の駆動条件を設定するスライダーを有する条件設定画面58が表示される。上記駆動条件としては、例えば、1周期の速さ(BeatCount)、周期間に設けられる待機時間の長さ(Interval)が挙げられる。
【0030】
操作者は、ポインティングデバイス41を操作して表示部42に表示される各種ボタンや第1波形編集画面55及び第2波形編集画面57の表示内容を変更することにより、DEA13を動作させること及びDEA13に印加する電圧の波形の編集を行うことができる。また、ポインティングデバイス41を操作して条件設定画面58の表示内容を変更することにより、駆動条件を設定することができる。
【0031】
第1記憶部43には、登録済みの電圧波形データが呼び出しボタン52に対応付けて記憶されている。登録済みの電圧波形データは、平脈や滑脈等の既知の脈動パターンを再現する1周期分の電圧波形データ、及び使用者が作成した1周期分の電圧波形データを含む。平脈は、平生の健康なときの動脈の振動パターンであり、滑脈は、妊娠中等に生じる動脈の振動パターンである。なお、既知の脈動パターンを再現する電圧波形データは、「平脈」等の脈の名称が付されている呼び出しボタン52に対応付けられており、使用者が作成した電圧波形データは、「User」の名称が付されている呼び出しボタン52に対応付けられている。
【0032】
第2記憶部44には、駆動部30に直前に送信した駆動波形データ(以下、前回波形データと記載する。)と、後述する編集波形データとが記憶されている。
第3記憶部45には、波形編集装置40及び駆動部30に後述するステップS11~13及びステップS21~S24の処理を実行させるプログラムが記憶されている。波形編集装置40及び駆動部30は、そのプログラムに従ってステップS11~13及びステップS21~S24の処理を実行する。
【0033】
波形編集部46は、駆動部30に送信した前回波形データを基礎とする1周期分の編集波形データを作成し、第2記憶部44に記憶させる。そして、使用者の操作に基づいて、第2記憶部44に記憶されている編集波形データを変更する。また、波形編集部46は、所定のタイミングにおいて、現在の編集波形データを駆動波形データとして駆動部30に送信するとともに、第2記憶部44に記憶されている前回駆動波形データを更新する。
【0034】
変更判定部47は、第2記憶部44に記憶されている前回波形データと編集波形データとの比較に基づいて、編集波形データが変更されているか否かを判定する。
条件設定部48は、使用者の操作に基づいて設定された駆動条件を駆動部30に送信する。
【0035】
画像処理部49は、編集波形データに対応する波形を示す画像を作成し、表示部42の第1波形編集画面55に表示する。第1波形編集画面55には、1周期分の波形の始点、終点、及び変曲点に該当する数点のアンカーポイントPと、アンカーポイントP間を接続するベジェ曲線とにより構成される波形が表示される。また、画像処理部49は、第2記憶部44に記憶されている前回駆動波形データに現在の駆動条件を反映させた波形を示す画像を作成し、表示部42の駆動状況画面56に表示する。
【0036】
実施形態の各種の電圧波形データは、波形を特定するパラメータとして、1周期分の波形が有する全てのアンカーポイントPの座標、アンカーポイントP間を接続するベジェ曲線、出力の大きさ、オフセット電圧の大きさ、最大電圧に関する情報を含む。なお、始点及び終点に該当するアンカーポイントPの値は同値である。
【0037】
図7に示すように、波形編集装置40は、DEA13が駆動中の間、以下に記載するステップS11~S13の処理を、数ミリ秒~数十ミリ秒の周期で繰り返し実行する。
ステップS11として、第2記憶部44に記憶されている前回波形データ及び編集波形データを比較し、前回波形データと現在の編集波形データとが異なるか否かを判定する。前回波形データと現在の編集波形データとの相違は、波形データに含まれる上記パラメータが全て一致しているか否かに基づいて判定する。
【0038】
ステップS11において、前回波形データと現在の編集波形データとが異なると判定された場合(YES)、ステップS12として、波形編集部46は、現在の編集波形データを駆動波形データとして駆動部30に送信する。次に、ステップS13として、波形編集部46は、第2記憶部44に記憶されている前回波形データを更新して処理を終了する。また、ステップS12において、前回波形データと現在の編集波形データとが異ならないと判定された場合(NO)、処理を終了する。
【0039】
図8に示すように、駆動部30の制御部32は、DEA13が駆動中の間、以下に記載するステップS21~S24の処理を、数ミリ秒~数十ミリ秒の周期で繰り返し実行する。
【0040】
ステップS21として、駆動側記憶部31に記憶されている駆動波形データ、及び波形編集装置40の条件設定部48から入力される駆動条件に基づいて、次に印加すべき電圧Vnを演算する。次に、ステップS22として、演算された電圧VnをDEA13に印加する。
【0041】
次に、ステップS23として、波形編集装置40の波形編集部46から新たに駆動波形データを受信しているか否かを判定する。ステップS23において、新たに駆動波形データを受信している場合(YES)、ステップS24として、駆動側記憶部31に記憶されている駆動波形データを新たに受信した駆動波形データに更新して処理を終了する。また、ステップS23において、新たに駆動波形データを受信していない場合(NO)、処理を終了する。
【0042】
次に、本実施形態の脈動発生装置を用いて、特定の触感を提示するようにDEA13を動作させるための電圧波形を作成する方法について説明する。以下では、平脈に対応する登録済みの電圧波形データを編集して、実際の触診時に熟練者が感じる平脈の脈動パターンにより近い触感を提示するようにDEA13を動作させるための電圧波形を作成する場合を例に挙げて説明する。
【0043】
まず、準備工程として、平脈に対応する登録済みの電圧波形データに基づく脈動パターンで模擬体10を動作させるようにDEA13を駆動する。
詳述すると、出力ボタン51がオフの状態、即ち、駆動部30からDEA13に電圧が印加されておらず、DEA13が駆動していない駆動停止時において、ポインティングデバイス41を操作して平脈に対応する呼び出しボタン52をクリックする。これにより、波形編集装置40において、平脈に対応する登録済みの電圧波形データが駆動波形データとして駆動部30に送信されるとともに、第2記憶部44に記憶されている前回波形データが更新される。そして、駆動部30において、波形編集装置40から送信された駆動波形データにより駆動側記憶部31に記憶されている駆動波形データが更新される。
【0044】
また、波形編集装置40の波形編集部46によって、平脈に対応する登録済みの電圧波形データを複製した編集波形データが新規に作成されるとともに、第2記憶部44に記憶されている編集波形データが更新される。そして、画像処理部49によって、編集波形データに対応する波形を示す画像が作成され、当該画像が表示部42の第1波形編集画面55に表示される。また、第2波形編集画面57に表示される各スライダーの位置が、平脈に対応する登録済みの電圧波形データの値に調整される。
【0045】
その後、ポインティングデバイス41を操作して出力ボタン51をオンの状態にすると、駆動部30において、
図8に示す処理が繰り返し実行される。これにより、駆動側記憶部31に記憶されている駆動波形データ、即ち、平脈に対応する登録済みの電圧波形データに基づいて変化する電圧がDEA13に印加されて、DEA13が動作する。また、波形編集装置40において、
図7に示す処理が繰り返し実行される。
【0046】
次に、編集工程として、脈診の熟練者を使用者として、波形の編集を行う。編集工程において、使用者は、片方の手で模擬体10に触れることにより、DEA13の動作に基づいて模擬体10から提示される脈動を体感しながら、もう片方の手でポインティングデバイス41を操作して、編集波形データの編集を行う。
【0047】
図6に示すように、使用者は、ポインティングデバイス41を操作して、第1波形編集画面55に表示された波形の画像に示されるアンカーポイントPを移動させること、及びアンカーポイントPを追加又は削除することにより、第1波形編集画面55に表示された波形を変更する。アンカーポイントPの移動は、例えば、第1波形編集画面55に表示されるポインター59を目的のアンカーポイントPに位置させてドラッグアンドドロップしたり、目的のアンカーポイントPを選択した状態でキーボードの矢印キーを操作したりする等のポインティングデバイスを用いた慣用的な操作により実現できる。アンカーポイントP間はベジェ曲線により自動的に補完される。また、ポインティングデバイス41を操作して、第2波形編集画面57に表示される各スライダーの位置を変更する。また、登録済みの平脈に対応する電圧波形データに戻したい場合や、別の登録済みの電圧波形データを基礎としたい場合等には、目的の登録済みの電圧波形データに対応する呼び出しボタン52をクリックすることにより、第1波形編集画面55に表示された波形を変更する。
【0048】
使用者の操作に基づいて、第1波形編集画面55及び第2波形編集画面57の表示内容が変更されると、波形編集部46により、第2記憶部44に記憶されている編集波形データが、第1波形編集画面55及び第2波形編集画面57の表示内容に基づく編集波形データに変更される。
【0049】
ここで、
図7のフローチャートに示すように、DEA13の駆動中、波形編集装置40は、ステップS11として、第2記憶部44に記憶されている前回波形データと編集波形データとが異なるか否かを判定する処理を定期的に実行している。そのため、編集波形データが変更されると、今回の周期又は次回の周期のステップS11において、前回波形データと現在の編集波形データとが異なると判定されて、現在の編集波形データが駆動波形データとして駆動部30に送信される。
【0050】
また、
図8のフローチャートに示すように、DEA13の駆動中、駆動部30は、ステップS23として、波形編集部46から新たに駆動波形データを受信しているか否かを判定する処理を定期的に実行している。そのため、新たに駆動波形データを受信すると、今回の周期又は次回の周期のステップS23において、新たに駆動波形データを受信していると判定されて、駆動側記憶部31に記憶されている駆動波形データが新たに受信した駆動波形データに更新される。そして、次回の周期又は次々回の周期のステップS21~S22において、新たに受信した駆動波形データに基づいて、次に印加すべき電圧Vnが演算され、演算された電圧VnがDEA13に印加される。これにより、DEA13の動作が新たに受信した駆動波形データ、即ち、使用者が編集した編集波形データに基づく動作に変更される。
【0051】
図7及び
図8の各フローチャートに示す処理は、数ミリ秒~数十ミリ秒の周期で繰り返し実行されている。そのため、使用者が第1波形編集画面55及び第2波形編集画面57の表示内容を変更する操作を行った直後に、DEA13の動作が変更後の編集波形データに基づく動作に変更されて、模擬体10に触れている使用者の手に伝わる脈動の振動パターンが変化する。
【0052】
また、
図7のフローチャートに示すように、ステップS12において現在の編集波形データが駆動波形データとして駆動部30に送信されると、ステップS13において第2記憶部44に記憶されている前回波形データが更新されて、その次の周期のステップS11においては、更新された前回波形データに基づく判定が行われる。
【0053】
使用者は、模擬体10から片方の手に伝わる脈動の振動パターンを、自身の経験に基づく平脈の振動パターンに近づけるように、もう片方の手でポインティングデバイス41を操作し、第1波形編集画面55及び第2波形編集画面57の表示内容を変更して編集波形データを編集する。これにより、編集波形データを編集する毎に模擬体10から伝わる脈動の振動パターンが変化する。そして、模擬体10から伝わる脈動の振動パターンが自身の経験に基づく平脈の振動パターンに一致したところで、保存ボタン53をクリックして、平脈に対応する登録済みの電圧波形データを現在の編集波形データに更新する、又は現在の編集波形データを使用者が作成した電圧波形データとして新たに登録する。これにより、実際の触診時に熟練者が感じる平脈の脈動パターンにより近い触感を提示するようにDEA13を動作させるための電圧波形が得られる。
【0054】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)脈動発生装置は、一対の電極を有するDEA13と、1周期分の電圧の変化を示す駆動波形データに基づいて変化する電圧を、一対の電極の間に繰り返し印加することによりDEA13を駆動する駆動部30と、使用者の操作に基づいて編集波形データを変更する波形編集部46とを備えている。DEA13の駆動中に編集波形データが変更されたとき、編集波形データを新たな駆動波形データとするように駆動波形データを更新し、更新された駆動波形データに基づいてDEA13を駆動する。
【0055】
上記構成によれば、DEA13の駆動中に編集波形データを変更した場合に、変更後の編集波形データの保存や送信等の操作を行わずとも、DEA13の動作が変更後の編集波形データに基づく動作に切り替わる。これにより、編集波形データを編集しながら、DEA13に特定の動きをさせる電圧波形を探索する作業をよりスムーズに行うことができ、上記電圧波形を効率的に作成できる。
【0056】
(2)編集波形データが変更されているか否かを定期的に判定する変更判定部47を備え、変更判定部47により編集波形データが変更されていると判定された場合に、駆動波形データを更新する。
【0057】
上記構成によれば、DEA13の駆動に用いられる駆動波形データの更新頻度を少なくすることができる。
(3)編集波形データに対応する波形を示す画像を表示部42に表示させる画像処理部49を備え、波形編集部46は、表示部42に表示された画像を、ポインティングデバイス41を用いて変更する操作に基づいて編集波形データを変更する。
【0058】
上記構成によれば、波形を編集する操作を直感的に行うことができる。そのため、機械や情報処理に関する知識が少ない使用者であっても、DEA13に特定の動きをさせるための電圧波形を容易に作成できる。
【0059】
(4)DEA13の駆動中に、登録済みの電圧波形データを呼び出す操作が行われた場合、編集波形データが登録済みの電圧波形データに変更される。
上記構成によれば、駆動中のDEA13の動作を、登録済みの電圧波形データに基づく動作に容易に変更できる。
【0060】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・各種の電圧波形データに含まれる波形を特定するパラメータは上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態のパラメータの一部を省略してもよいし、別のパラメータを追加してもよい。
【0061】
・
図8のフローチャートに示す処理に関して、ステップS23~S24の処理、すなわち、波形編集部46から新たに駆動波形データを受信しているか否かを判定し、受信している場合に駆動波形データを更新する処理は、毎回行う必要はなく、その処理を行う頻度及びタイミングを変更してもよい。例えば、駆動波形データに基づく1周期分の電圧の変化の最後となる特定のタイミングにおいて、ステップS23~S24の処理を行い、その他のタイミングにおいては、ステップS23~S24の処理を行わないようにする。この場合、駆動波形データに基づく1周期分、電圧が変化する間に1回のみS23~S24の処理が行われることになる。
【0062】
・変更判定部47を省略してもよい。この場合、
図7のフローチャートにおけるステップS11の処理を省略して、毎回、ステップS12~S13の処理を実行するとともに、
図8のフローチャートにおけるステップS23を省略して、毎回、ステップS24の処理を実行する。
【0063】
・ポインティングデバイス41及び表示部42は、本発明のアクチュエータ装置とは別に用意される外部機器であってもよい。
・模擬体10に設けられるDEA13の数は特に限定されるものではない。
【0064】
・DEA13に代えて、イオン交換ポリマーメタル複合体(IPMC:Ionic Polymer Metal Composite)等の他の電場応答性高分子アクチュエータ(EPA:Electroactive Polymer Actuator)を用いてもよい。
【0065】
・本発明のアクチュエータ装置は、印加電圧に応じて発生する振動等の動作を触感として認識させる脈動発生装置以外の触覚提示装置として適用されるものであってもよい。また、本発明のアクチュエータ装置は、触覚提示装置に限らず、印加電圧を変化させることにより電場応答性高分子アクチュエータに特定の動作を行わせる装置全般に適用できる。
【0066】
・アクチュエータ装置を構成するDEA13等の電場応答性高分子アクチュエータ、駆動部30、及び波形編集装置40は、それらのうちの一部又は全部が一体に構成されるものであってもよい。例えば、電場応答性高分子アクチュエータと駆動部30とが一体に構成されていてもよいし、駆動部30と波形編集装置40とが一体に構成されていてもよいし、電場応答性高分子アクチュエータと駆動部30と波形編集装置40とが一体に構成されていてもよい。
【0067】
・ステップS11~13及びステップS21~S24の処理をアクチュエータ装置に実行させるプログラムは、アクチュエータ装置に備えられる内蔵記憶装置に記憶されるものであってもよいし、リムーバブルメディア等の外部記憶装置に記憶されるものであってもよい。また、上記のプログラムは、WEBサーバに記憶され、WEBサーバにおいて実行されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
P…アンカーポイント、10…模擬体、13…誘電エラストマーアクチュエータ(DEA)、30…駆動部、31…駆動側記憶部、32…制御部、40…波形編集装置、41…ポインティングデバイス、42…表示部、43…第1記憶部、44…第2記憶部、45…第3記憶部、46…波形編集部、47…変更判定部、48…条件設定部、49…画像処理部、55…第1波形編集画面、56…第2波形編集画面。