(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】コーティング剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 183/02 20060101AFI20220926BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220926BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220926BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220926BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C09D183/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/20
C09D5/16
(21)【出願番号】P 2018236885
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛明
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/217513(WO,A1)
【文献】特開2005-002185(JP,A)
【文献】特開2003-119424(JP,A)
【文献】特開2015-098531(JP,A)
【文献】特開2014-114364(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217474(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/129488(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)~(D)成分を含むコーティング剤組成物。
(A)溶媒
(B)部分加水分解シリケート
(C)pH6以上の溶媒中で
シリカゾルを形成した球状のシリカ粒子
(D)メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェートおよびブトキシエチルアシッドホスフェートからなる群から少なくとも1以上選択される化合物。
【請求項2】
前記(A)成分が水およびアルコールであ
って、(A)成分中1~60質量%のアルコールを含む請求項1に記載のコーティング剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分の粒径が1~30nmである請求項1または請求項2に記載のコーティング剤組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、
加水分解性シリル基からなるモノマーを加水分解および重縮合することにより得られる縮合物である請求項1~3に記載のコーティング剤組成物。
【請求項5】
前記(D)成分が
エチルアシッドホスフェートおよび/またはブトキシエチルアシッドホスフェートである請求項1~4に記載のコーティング剤組成物。
【請求項6】
前記(A)成分が、水およびアルコールであって、(A)成分中1~40質量%のアルコールを含む請求項1に記載のコーティング剤組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が(A)成分100質量部に対して、0.001~
3質量部含んでいる請求項1~6に記載のコーティング剤組成物。
【請求項8】
前記(C)成分が(A)成分100質量部に対して、0.002~6質量部含む請求項1~7に記載のコーティング剤組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のコーティング剤組成物から形成された塗膜
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載のコーティング剤組成物を塗布した後に乾燥する塗膜の形成方法。
【請求項11】
請求項9に記載のコーティング剤組成物から形成された塗膜を有する部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、プラスチック、金属などの多様な部材に対して優れた密着性、耐久性を示すコーティング剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設物や自動車の窓ガラスや鏡などは、温度差を生ずるような使用条件のときや使用温度が急激に変化したとき、空気中の水蒸気が表面で凝結して細かい水滴となって付着し、曇りが生じる。そこで表面に親水性のコーティング剤を塗布し、水滴をつくらないことで、曇り止めや汚れ防止を行う方法が従来からよく用いられている(特許文献1)。しかし、近年では、加工性が容易であり、部材を軽量化できることから、ガラスなどの無機材料の代わりにプラスチック材料を使用することが検討されている。このような背景もあり、最近ではプラスチックに対して防汚、防曇効果を有する親水性コーティング剤が多く開示されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-262368
【文献】特開2013-203774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の親水性コーティング剤は、ガラスやプラスチックに対して、それぞれ耐久性に優れた塗膜を形成することができるが、ガラス、プラスチック、金属など多様な部材に対して使用できるコーティング剤がなく、部材によってコーティング剤を使い分ける必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、ガラス、プラスチック、金属などの多様な部材に対して優れた防汚性、防曇性、透明性と耐久性をもつコーティング剤組成物を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
[1](A)~(D)成分を含むコーティング剤組成物。
(A)溶媒
(B)部分加水分解シリケート
(C)pH6以上の溶媒中で安定したシリカゾルが形成可能なシリカ粒子
(D)下記の構造を有する化合物(ここで、Rは水素原子、アルキル基またはアルコキシアルキル基から1つ選択される構造を有する)
[2]前記(A)成分が水および/またはアルコールである[1]に記載のコーティング剤組成物。
[3]前記(C)成分の粒径が1~30nmである[1]または[2]に記載のコーティング剤組成物。
[4]前記(C)成分の粒子形状が球状である[1]~[3]に記載のコーティング剤組成物。
[5]前記(D)成分のRが炭素数1~8のアルキル基および/またはアルコキシアルキル基を有する[1]~[4]に記載のコーティング剤組成物。
[6]前記(D)成分がメチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェートからなる群から少なくとも1以上選択される[1]~[5]に記載のコーティング剤組成物。
[7]前記(B)成分が(A)成分100質量部に対して0.001~10質量部含んでいる[1]~[6]に記載のコーティング剤組成物。
[8]前記(C)成分が(A)成分100質量部に対して0.002~6質量部含んでいる[1]~[7]に記載のコーティング剤組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のコーティング剤組成物から形成された塗膜。
[10][1]~[8]のいずれかに記載のコーティング剤組成物を塗布した後に乾燥する塗膜の形成方法。
[11][9]に記載のコーティング剤組成物から形成された塗膜を有する部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコーティング剤組成物を用いることにより、ガラス、プラスチック、金属などの各種部材に優れた密着性を有し、優れた防汚性、防曇性、透明性を示すため、幅広い部材に適用がきることから、親水性コーティング剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細を次に説明する。本発明で使用される(A)成分は溶媒であり、(B)、(C)、(D)成分を分散させる能力があれば良いが、環境負荷が少なく、対象部材を侵すこと無く塗膜を形成できることから、水が好ましい。(A)成分の具体例としては、水道水、精製装置による精製水、イオン交換水、蒸留水などを使用することができるが、不純物が少ないという点でより好ましいのは精製水、イオン交換水、蒸留水である。
【0009】
また(A)成分は水とアルコールの混合溶媒であることが好ましい。アルコールをさらに含むことで、常温での乾燥性に優れ、塗膜の乾燥速度を調整することができる。本発明に使用するアルコールは(B)、(C)、(D)成分との相溶性の観点から、水に溶解するものであることが好ましく、塗膜の成膜性の観点から炭素数1~5の低級アルコールであることがさらに好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
前記(A)成分の含有量は適宜設定されるが、組成物中20質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましく、60質量%以上含まれることが最も好ましい。上限は、他の添加成分を考慮して適宜設定されるが、通常99質量%以下程度となる。(A)成分にアルコールを含む場合、(A)成分中のアルコールの割合は1~60質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは1~40質量%含むことが好ましい。アルコールの割合が1~60質量%であることで、(B)、(C)、(D)成分との相溶性と優れた成膜性を維持することができある。
【0011】
本発明で使用することができる(B)成分としては、部分加水分解シリケートである。部分加水分解シリケートとは加水分解性シリル基からなるモノマーを加水分解および重縮合反応することにより得られる縮合物のことである。(B)成分は水により加水分解し、SiOHをもつため、親水性を有する。(B)成分を含有していることで良好な硬化性と乾燥後の塗膜の耐久性を実現することができる。これらの化合物は、単独で用いても良く、2種類以上混合して用いても良い。
【0012】
加水分解性シリル基としては、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基が挙げられる。また、コーティング剤組成物の安定性と硬化性の観点から、アルコキシシリル基が好ましい。
【0013】
前記(B)成分には触媒を含有しているものが好ましい。触媒としてはスズ触媒、チタン触媒、ジルコニウム触媒、亜鉛触媒や、有機酸、無機酸、塩基触媒などが使用できる。触媒を含有していることで、硬化性や塗膜の強度を適宜調整することができる。
【0014】
前記(B)成分は組成物中の(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部含むことが好ましく、0.001~5質量部含むことがさらに好ましく、0.01~3質量部含むことが最も好ましい。0.001~10質量部であることで、良好な硬化性と塗膜の耐久性を実現することができる。
【0015】
前記(B)成分の市販品としては、コルコート株式会社製のコルコートN-103X、コルコートPXが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明で使用することができる(C)成分としては、pH6以上の溶媒中で安定したシリカゾルを形成可能なシリカ粒子である。(C)成分を含むことで乾燥後の塗膜を親水性にすることができるため、優れた防汚、防曇効果を発揮することができる。(C)成分の形状は塗膜の透明性を維持できる観点から球状が好ましい。
【0017】
前記(C)成分の平均粒径は1~30nmであることが好ましく、1~20nm未満であることがさらに好ましい。1~30nmであることで、硬化後の被膜は優れた透明性を維持することができる。粒度分布の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置やゼータ電位・粒径測定装置などで測定できる。本発明においては、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置によって測定された値を採用する。本発明において、平均粒径とは当該粒度分布のピークトップの粒径を指す。
【0018】
前記(C)成分は溶媒中でシリカゾルを形成したものを使用しても良い。シリカゾルを用いる場合、コーティング剤組成物の安定性の観点から溶媒には水を用いることが好ましい。コーティング剤組成物の安定性および塗膜の透明性を維持できる観点からシリカ粒子を分散させる溶媒はpH6以上であることが好ましく、pH6~10であることがより好ましい。pHの測定はpH計を用いてJIS Z 8802に準じて25℃で測定された値を採用する。
【0019】
前記(C)成分は(A)成分100質量部に対して、0.002~6質量部含むことが好ましく、0.01~3質量部含むことがさらに好ましく、0.2~2.5質量部含むことが最も好ましい。0.002~6質量部であることで、ガラス、金属、プラスチックなどの各種基材に対して良好な濡れ性と塗膜の耐久性を維持することができる。
【0020】
前記(C)成分の市販品としては、日産化学工業株式会社製のスノーテックスシリーズのスノーテックスC、XS、N、30や扶桑化学工業株式会社製のPL-1、PL-2、PL-2L-Dなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の(D)成分は下記の構造を有する化合物である、Rは水素原子、アルキル基またはアルコキシアルキル基から1つ選択される構造を有する。
(D)成分を含有することで、ガラス、プラスチック、金属などの各種部材に対して優れた密着性と耐久性を実現することができる。コーティング組成物の安定性の観点から、(D)成分のRはアルキル基および/またはアルコキシアルキル基であることが好ましい。さらに(D)成分のRに含まれる炭素数は1~8が好ましく、最も好ましくは1~6である。
【0022】
前記(D)成分の具体例としては、リン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、モノイソデシルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、アルキルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート2-ヒドロキシメチルメタクリレートアシッドホスフェートなどが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても良く、2種類以上混合して用いても良い。上記の中でもコーティング剤組成物の安定性の観点から、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェートが好適である。
【0023】
前記(D)成分の市販品としては、城北化学工業株式会社製のJP-502、JP-504、JP-506H、JP-508や大八化学工業株式会社製のAP-1、AP-4、DP-4、AP-10などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
前記(D)成分は(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部含むことが好ましく、0.05~5質量部含むことがさらに好ましく、0.1~3質量部含むことが最も好ましい。0.01~10質量部含むことで、ガラス、金属、プラスチックなどの各種基材への濡れ性やコーティング剤組成物の安定性を維持することができる。
【0025】
コーティング剤組成物のpHは6以上であることが好ましい、より好ましくは6~10である。pHが6以上であることで、コーティング剤組成物の保存安定性が良好である。
【0026】
本発明には、本発明の特性を損なわない範囲において、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、分散剤、pH調整剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により、塗布性、成膜性、保存安定性などに優れた組成物が得られる。
【0027】
本発明のコーティング剤組成物は、各成分を混合することにより製造される。各成分の混合順序は特に限定されず、一括で添加して混合しても、順次添加して混合してもよい。
【0028】
また、本発明は、本発明のコーティング剤組成物を塗布した後に乾燥する塗膜の形成方法も包含する。
【0029】
本発明のコーティング剤組成物を塗布する方法は、ウエスでの塗布、スポンジでの塗布、スピンコートなどあらゆる塗布方法が挙げられる。塗布後に乾燥させることで、塗膜を形成することができる。乾燥温度としては、塗膜が乾燥する温度であれば特に限定されないが、本発明のコーティング剤組成物は、比較的低温であっても塗膜を形成することができるという点を鑑みれば、40℃以下であることが好ましく、-10℃~40℃であることがより好ましい。また、乾燥時間としては、塗膜が乾燥する時間を適宜設定すればよいが、30分~48時間程度が好ましい。
【0030】
特に本発明のコーティング剤組成物は、25℃で乾燥した塗膜を形成することができるため、硬化するための設備を必要としない。さらに部材を選ばず使用することができ、取扱性と汎用性が良好である。また乾燥した塗膜は優れた耐久性を発揮するため、建築物、自動車などの輸送機、太陽光パネルなど屋外で使用される用途に好適である。
【0031】
本発明は、本発明のコーティング剤組成物から形成されてなる塗膜をも包含する。該塗膜の膜厚は、効果が発揮されるように適宜設定すればよいが、通常乾燥膜厚で0.01~30μm程度である。また、該塗膜の水との接触角は、30°以下であることが好ましく、20°以下であることが更に好ましく、15°以下であることが最も好ましい。
【0032】
塗膜が付与される部材としては、特に限定されず、セラミックス、ガラスなどの無機材質;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート,ポリアセタールなどの有機高分子樹脂、ゴム、木、紙などの有機材質;ステンレス、アルミニウム、鋼などの金属などが挙げられる。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
[実施例1~5、比較例1~5]
コーティング剤組成物を調製するために下記成分を準備した。
【0035】
<(A)成分>溶媒
・精製水(共栄製薬株式会社製)
・n-プロパノール(東京化成工業株式会社製)
<(B)成分>部分加水分解シリケート
・コルコートN-103X(コルコート株式会社製) 有効成分:2質量%
溶媒としてエタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、水を含有
<(B’)成分>部分加水分解シリコーン
・KR-400(信越化学工業株式会社製)
<(C)成分>pH6以上の溶媒に分散されたシリカ粒子
・スノーテックスC(日産化学工業株式会社製) 固形分:20質量%、球状 平均粒径10~20nm 溶媒pH8.5~9 溶媒として水を含有
・スノーテックスN(日産化学工業株式会社製) 固形分:20質量%、球状 平均粒径10~15nm 溶媒pH9~10 溶媒として水を含有
・スノーテックス30(日産化学工業株式会社製)
固形分:30質量%、球状 平均粒径10~15nm 溶媒pH9.5~10.5
溶媒として水を含有
<(C’)成分>
・スノーテックスO(日産化学工業株式会社製)固形分:20質量%、球状 平均粒径10~15nm 溶媒pH2~4 球状 溶媒として水を含有
<(D)成分>
・リン酸(東京化成工業株式会社製)
・JP-502 エチルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製)
・JP-506H ブトキシエチルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製)
<(D’)成分>
・リン酸トリメチル(東京化成工業株式会社製)
【0036】
前記(A)成分を撹拌容器に秤量し、(B)成分と(C)成分を撹拌容器に秤量して、30分間撹拌した。(D)成分を秤量し、5分間撹拌した。詳細な調製量は表1および表2に従い、数値は全て質量部で表記する。いずれの試験も25℃で行った。
【0037】
[硬化性]
ウエスによりコーティング剤組成物をガラス板に塗布し、25℃で24時間放置して被膜を形成させた後、爪で引っ掻いて塗膜が形成できていることを確認する。
<評価基準>(硬化性)
○:塗膜が爪で剥がれない。(塗膜が形成できている)
×:塗膜が爪で剥がれる。(塗膜が形成できていない)
[塗膜外観](透明性)
ウエスによりコーティング剤組成物をガラス板に塗布し、25℃で24時間放置して塗膜を形成させた後、塗膜が形成されたガラスを透かし、塗膜の透明性を目視で確認する。
<評価基準>
○:塗膜が透明である。
×:塗膜が白濁している。
[保存安定性]
50mLの密閉したガラス瓶にコーティング剤組成物を20g秤量し、25℃で2週間静置してコーティング剤組成物の透明性を目視で確認する。
<評価基準>
○:2週間後も透明性を維持している。
△:初期は透明性を維持していたが、2週間後にわずかに白濁がみられた。
×:初期から白濁している。
【0038】
【0039】
表1に示されるように、実施例1~5は優れた硬化性と透明な塗膜を形成することがわかった。一方で酸性溶液である(B’)成分を用いたものはコーティング剤組成物としての安定性が悪く、塗膜が白濁してしまった。酸性溶液である(C’)成分と、(D’)成分を使用したものも塗膜の透明性が悪い結果となった。また(B)成分を含有していないと硬化性が悪く塗膜を形成できなかった。
【0040】
[濡れ性]
ガラス、ポリカーボネート、SUS403に対して、スポイトを用いてコーティング剤組成物を0.5ml滴下し、5秒後の濡れ性を確認した。
<評価基準>
○:水滴を形成せずに濡れ広がる。
×:水滴を形成する。
[水に対する接触角](防汚性、防曇性)
ウエスによりコーティング剤組成物10gをガラス板に膜厚が一定膜厚になるように塗布し、25℃×55%RH条件下で24時間放置して、塗膜を形成した。その後、5μlの水を塗膜上に垂らし、協和界面科学株式会社性の接触角計DM500を用いて水による接触角を測定した。15°以下であれば親水性コーティング剤として優れた性能を有しているといえる。
[摩擦摩耗試験](耐久性)
ウエスによりコーティング剤組成物10gをガラス板に膜厚が一定膜厚になるように塗布し、25℃×55%RH条件下で24時間放置して、塗膜を形成した。その後、協和界面科学株式会社製の接触角計DM500を用いて水による接触角を測定した。
井元製作所製の簡易型摩擦摩耗試験機IMC-1558Aに水で湿らせたウエスをセットし、200gの荷重をかけながら塗膜面にウエスを押し当て、塗膜面を300往復し、試験片を取り出し、接触角を測定した。
摩擦摩耗試験前後での接触角の変化率を以下の式にて算出した。
変化率(%)=(試験後の接触角-試験前の接触角)/試験前の接触角×100(%)
<評価基準>
○:変化率が200%未満
×:変化率が200%以上
【0041】
【0042】
表2の実施例1~5に示されるように本発明の樹脂組成物はガラス、ポリカーボネート、SUS403それぞれに対する濡れ性および水に対する接触角に優れ、親水性コーティング剤として優れた防汚性、防曇性を有しており、摩擦摩耗試験後の接触角の変化率も少ないことから、十分な耐久性を有していることがわかる。一方で、(D)成分を変更した比較例2や(D)成分を含まない比較例5のコーティング剤組成物はガラスへの濡れ性は良いが、ポリカーボネートやSUS403への濡れ性が悪かった。また比較例5は摩擦摩耗試験後のガラスの接触角が高く、親水性コーティング剤として、満足のいくものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の親水性コーティング剤組成物は、ガラス、プラスチック、金属に対して優れた防汚性および防曇性を発揮するため、防汚性または防曇性が必要とされる産業機械部品、輸送機器部品、電気・電子部品、土木・建築、構造材料など多様な部材に適用でき、非常に有用なものである。