IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウシオ電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】蛍光光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20220926BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20220926BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/60
G02B5/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018113934
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019216220
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕貴
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526751(JP,A)
【文献】特開2017-111287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0279915(US,A1)
【文献】特表2017-526103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向を長手方向とし、前記第一方向に直交する第二方向に係る幅が、所定の箇所から前記第一方向に係る一方の端部である第一端部に近づくに連れて実質的に減少する傾斜面又は曲面を含む形状を呈し、第一波長の光が入射されると前記第一波長とは異なる第二波長の蛍光を生成する蛍光体と、
前記蛍光体の前記第二方向に係る外側において、前記第一方向に沿って配置された、前記第一波長の励起光を出射する励起光源と、
前記蛍光に対する透過性を示し、且つ、空気の屈折率よりは大きく前記蛍光体の屈折率よりは小さい屈折率の値を示す材料からなり、前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面に一部の面が接合して配置された、ガラス部材とを備えたことを特徴とする、蛍光光源装置。
【請求項2】
前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面が形成されている領域の前記第二方向に係る外側の位置に配置された、前記蛍光に対する反射性を示すミラー部材を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の蛍光光源装置。
【請求項3】
前記ミラー部材は、前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面に対して、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に係る外側の位置にも配置され、前記第一方向から見たときにコの字形状又は四角形状を呈することを特徴とする、請求項に記載の蛍光光源装置。
【請求項4】
前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面が形成されていない領域における前記第二方向に係る幅の長さが、前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面が形成されている領域における前記第二方向に係る幅の長さと、前記ガラス部材の前記第二方向に係る幅の長さとの合計値に実質的に等しいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の蛍光光源装置。
【請求項5】
前記蛍光体は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向から見たときに、前記第一方向に関して、前記第一端部とは反対側の端部である第二端部から前記所定の箇所までの領域が長方形状を示し、前記所定の箇所から前記第一端部までの領域が台形状、三角形状、円弧形状、又は楕円弧形状を示すことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の蛍光光源装置。
【請求項6】
前記蛍光体の前記第一端部よりも外側の位置に配置され、少なくとも前記蛍光体の前記第一端部から前記第一方向に出射された前記蛍光を集光する屈折光学系と、
前記屈折光学系によって集光された前記蛍光が入射される後段光学系とを備えたことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の蛍光光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光源と蛍光体とを含む蛍光光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED(発光ダイオード)から出射される励起光を、板形状又はロッド形状の蛍光体の面に入射して、入射面に対して対向しない別の面から蛍光を取り出す技術が知られている(下記特許文献1参照)。この文献によれば、励起光が入射される蛍光体の面の面積に対して、蛍光が出射される蛍光体の面の面積が小さくできるため、蛍光の輝度が高められるとされている。
【0003】
また、別の技術として、ロッド形状の蛍光体からの蛍光の取り出し効率を高めるため、蛍光体の出射面側に、複合放物面型集光器(CPC:Compound Parabolic Concentrator)を配置する技術が知られている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2008-521233号公報
【文献】国際公開第2009/021079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、蛍光体を板形状又はロッド形状とすることで、ある方向に長さを持たせている(以下、「長手方向」と呼ぶ。)。蛍光体内で生成された蛍光は、全反射しながらこの長手方向に沿って伝搬して出射面側に導かれる。しかし、この方法によれば、図29に示すように、蛍光体100内をd1方向に伝搬し、出射面101に到達した蛍光L100の一部が、出射面101においても全反射してしまい、再び蛍光体100内に戻されるということが起こり得る。つまり、蛍光体100内で生成された蛍光L100のうち、外部に取り出すことのできる割合が低くなってしまう。
【0006】
特許文献2の技術は、蛍光の取り出し効率を高めることを意図したものである。例えば、図30に示すように、図29に示す蛍光体100の出射面101側に連結するように、集光器110を配置した場合を検討する。なお、厳密に言えば、図30では、蛍光体100の出射面101は蛍光L100を集光器110に導く面であって、蛍光L100を外部に出射する面ではないが、集光器110に対して出射するという意味において、図29の構成にならって「出射面101」という表記をする。
【0007】
蛍光体100の出射面101に対して臨界角を超える入射角θaで入射した蛍光L100は、図29の構成であれば、出射面101で全反射して蛍光体100側に戻される。これに対し、図30の構成であれば、そのまま集光器110内に入射され、集光器110の側面111で全反射される。集光器110は、出射面112に向かって幅広となるような形状を呈している。このため、側面111で反射された蛍光L100が出射面112に入射されるときの入射角θbは、蛍光体100の出射面101における入射角θaよりも大幅に低下でき、臨界角未満とすることができる。この結果、集光器110の出射面112における蛍光L100の全反射が抑制され、外部に取り出される蛍光L100の光量が増加する。
【0008】
しかし、図30に示すように、集光器110は、蛍光体100に近い側から出射面112に向かって幅広となるような形状を示す。この結果、蛍光L100が実際に出射される出射面112上の面積が大きくなってしまい、輝度を高める効果が低下すると共に、後段に配置される光学系の規模が拡大してしまう。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑み、出射面の面積の拡大を抑制しながらも、蛍光の取り出し効率を高めた、蛍光光源装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る蛍光光源装置は、
第一方向を長手方向とし、前記第一方向に直交する第二方向に係る幅が、所定の箇所から前記第一方向に係る一方の端部である第一端部に近づくに連れて実質的に減少する傾斜面又は曲面を含む形状を呈し、第一波長の光が入射されると前記第一波長とは異なる第二波長の蛍光を生成する蛍光体と、
前記蛍光体の前記第二方向に係る外側において、前記第一方向に沿って配置された、前記第一波長の励起光を出射する励起光源と、
前記蛍光に対する透過性を示し、且つ、空気の屈折率よりは大きく前記蛍光体の屈折率よりは小さい屈折率の値を示す材料からなり、前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面に一部の面が接合して配置された、ガラス部材とを備えたことを第一の特徴とする。
【0011】
前記蛍光光源装置において、蛍光体は、所定の箇所から第一端部側に向かって、第二方向に係る幅が減少するような傾斜面又は曲面を有している。この結果、蛍光体内を全反射して第一端部側に伝搬する蛍光は、傾斜面又は曲面における反射を繰り返すたびに、蛍光体の面に対する入射角が減少していく。
【0012】
蛍光体の面のうち、傾斜面又は曲面(以下、「面A1」と記載する。)は、空気よりは屈折率が高く蛍光体よりは屈折率の低い材料からなるガラス部材と接触している。一方で、蛍光体の面のうち、面A1と第二方向に対向する側に配置された面(以下、「面B1」と記載する。)は、空気と接触している。このため、蛍光体の面A1における臨界角は、蛍光体の面B1における臨界角よりも大きくなる。
【0013】
従って、蛍光体内において、面A1と面B1とで全反射を繰り返しながら第一端部側に伝搬した蛍光は、ある時点において、面A1に対して臨界角未満の角度で入射し、ガラス部材内に進行する。ガラス部材は蛍光体よりも屈折率が低いため、ガラス部材内における蛍光の進行方向は、直前に蛍光体の面A1に入射されたときよりも、第一方向に近づく方向に屈折される。この結果、ガラス部材内を実質的に第一方向に進行し、第一端部側のガラス部材の端面から第一方向に蛍光を取り出すことができる。
【0014】
つまり、この構成によれば、蛍光体の第一端部側の面と、ガラス部材の第一端部側の面とから、第一方向に蛍光が取り出される。
【0015】
そして、上述したように、蛍光体は、所定の箇所から第一端部に近づくに連れて実質的に減少する傾斜面又は曲面を含む形状を呈し、ガラス部材は、この傾斜面又は曲面に一部の面が接合して配置されている。このため、上記構成によれば、ガラス部材を追加的に備えるものの、第一端部近傍における第二方向に係る幅の拡大は抑制されるため、高い輝度の蛍光を取り出すことができる。
【0016】
なお、上記構成において、前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面が形成されていない領域における前記第二方向に係る幅の長さが、前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面が形成されている領域における前記第二方向に係る幅の長さと、前記ガラス部材の前記第二方向に係る幅の長さとの合計値に実質的に等しいものとしても構わない。かかる構成によれば、出射面側の蛍光体の面とガラス部材の面とをほぼ同一面上に構成できるため、後段の光学系の設計を容易化できる。
【0017】
本発明に係る蛍光光源装置は、
第一方向を長手方向とし、前記第一方向に直交する第二方向に係る幅が、所定の箇所から前記第一方向に係る一方の端部である第一端部に近づくに連れて実質的に減少する傾斜面又は曲面を含む形状を呈し、第一波長の光が入射されると前記第一波長とは異なる第二波長の蛍光を生成する蛍光体と、
前記蛍光体の前記第二方向に係る外側において、前記第一方向に沿って配置された、前記第一波長の励起光を出射する励起光源と、
前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面が形成されている領域の前記第二方向に係る外側の位置に配置された、前記蛍光に対する反射性を示すミラー部材とを備えたことを第二の特徴とする。
【0018】
上記の構成においても、蛍光体は、所定の箇所から出射面側の端部である第一端部側に向かって、第二方向に係る幅が減少するような傾斜面又は曲面を有している。このとき、上述したように、蛍光体内を全反射して第一端部側に伝搬する蛍光は、全反射を繰り返すたびに、蛍光体の面に対する入射角が減少していく。
【0019】
ここで、蛍光体の面のうちの、傾斜面又は曲面(以下、「面A2」と記載する。)に入射されるときの入射角は、その直前において、面A2に対して第二方向に対向する側に配置された面(以下、「面B2」と記載する。)に対して入射されたときの入射角よりも小さくなる。この結果、蛍光体内において、面A2と面B2とで全反射を繰り返しながら第一端部側に伝搬した蛍光は、ある時点において、面A2に対して臨界角未満の角度で入射し、蛍光体から第二方向に係る外側に出射される。このとき、空気は蛍光体よりも屈折率が低いため、蛍光の進行方向は、直前に蛍光体の面A2に入射されたときよりも、第一方向に近づく方向に屈折される。
【0020】
上記の構成によれば、蛍光体の、傾斜面又は曲面が形成されている領域の第二方向に係る外側の位置には、ミラー部材が設けられている。蛍光は、ミラー部材に入射されると、ミラー部材で反射されて再び蛍光体側に向かって進行するか、ミラー部材と蛍光体との間から第二方向に係る外側に出射される。ミラー部材で反射されて再び蛍光体内に進行した蛍光のうち、一部の蛍光は、再び蛍光体の面B2と面A2の間で全反射を繰り返しながら第一端部側に伝搬し、別の一部の蛍光は、再度、面A2から第二方向に係る蛍光体の外側に出射される。第一端部に近い位置において、面A2から第二方向に係る蛍光体の外側に出射された蛍光は、ミラー部材に達する前に、第一方向に関して蛍光体の第一端部の位置を通過する。すなわち、この蛍光は、第二方向に関して、蛍光体の第一端部とミラー部材との間の位置から第一方向に取り出すことができる。
【0021】
つまり、この構成によれば、蛍光体の第一端部側の面、及び、第二方向に関して蛍光体の第一端部側の面とミラー部材との間の位置における空間から、第一方向に蛍光が取り出される。そして、第一の特徴構成と同様、第一端部近傍における第二方向に係る幅の拡大は抑制されており、高い輝度の蛍光を取り出すことができる。
【0022】
前記ミラー部材は、前記第二方向に対して実質的に直交する反射面を有するのが好ましい。ここで、「第二方向に対して実質的に直交する反射面」とは、反射面と、第二方向に関して完全に直交する平面とのなす角度の絶対値が、0°以上10°以下であることを指すものとして構わない。また、反射面は完全な平面である必要はなく、曲面や湾曲部分を有していても構わない。曲面や湾曲部分が存在する場合には、曲面や湾曲部分の接平面と、第二方向に関して完全に直交する平面とのなす角度の絶対値が、0°以上10°以下であるものとして構わない。反射面は、蛍光体の側面から第二方向に係る外側に出射された蛍光を、蛍光体側に戻す機能を示していればよい。
【0023】
前記第一の特徴構成を有する前記蛍光光源装置が、前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面が形成されている領域の前記第二方向に係る外側の位置に配置された、前記蛍光に対する反射性を示すミラー部材を備えるものとしても構わない。
【0024】
前記ミラー部材は、前記蛍光体の前記傾斜面又は前記曲面に対して、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に係る外側の位置にも配置され、前記第一方向から見たときにコの字形状(U字形状)又は四角形状を呈するものとしても構わない。
【0025】
上述したように、蛍光体内において全反射を繰り返しながら第一端部側(出射面側)に導かれた蛍光は、蛍光体の傾斜面又は曲面に対する入射角が臨界角未満となった場合に、前記傾斜面又は曲面を通過して、蛍光体の第二方向に係る外側に出射される。このとき、蛍光体の第二方向に係る外側に配置されたミラー部材によって、蛍光体側に戻された蛍光の一部が、前記傾斜面又は曲面とは異なる位置における蛍光体の側面に入射される場合があり得る。より詳細には、蛍光の一部が、第一方向及び第二方向の双方に直交する第三方向に係る蛍光体の端部に位置する面(側面)に入射されることがあり得る。このときの入射角が臨界角未満である場合には、同側面を通じて蛍光体の第三方向に係る外側に出射されてしまう。
【0026】
上記の構成によれば、蛍光体の傾斜面又は曲面に対して、第三方向に係る外側の位置にもミラー部材が配置されているため、蛍光体の側面から第三方向に係る外側に蛍光が出射された場合であっても、蛍光体側に再び戻すことができ、蛍光の取り出し効率を更に高めることができる。
【0027】
なお、第二方向に関して蛍光体を挟むように対向する2箇所、及び第三方向に関して蛍光体を挟むように対向する2箇所にミラー部材を設けた場合には、このミラー部材を第一方向から見ると四角形状を示す。以下では、蛍光体の第二方向に係る外側の位置に配置されたミラー部材を「第一ミラー部材」と呼ぶ。上記の構成によれば、傾斜面又は曲面を第二方向に通過して、一方の第一ミラー部材によって反射され、蛍光体側に戻された蛍光の一部が、傾斜面又は曲面の第二方向に係る反対側に位置する側面に臨界角未満の入射角で入射された場合であっても、他方の第一ミラー部材によって再び蛍光体側に戻すことができる。
【0028】
なお、傾斜面又は曲面が形成されている領域の第二方向に係る一方の外側の位置にのみ第一ミラー部材を配置している場合であっても、第一ミラー部材の反対側の位置に複数個の励起光源を配列しておくことで、第一ミラー部材と同様の反射機能を実現させることが可能である。この場合には、ミラー部材を第一方向から見たときにコの字形状(U字形状)を示す。
【0029】
前記蛍光体は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向から見たときに、前記第一方向に関して、前記第一端部とは反対側の端部である第二端部から前記所定の箇所までの領域が長方形状を示し、前記所定の箇所から前記第一端部までの領域が台形状、三角形状、円弧形状、又は楕円弧形状を示すものとしても構わない。
【0030】
前記蛍光光源装置は、
前記蛍光体の前記第一端部よりも外側の位置に配置され、少なくとも前記蛍光体の前記第一端部から前記第一方向に出射された前記蛍光を集光する屈折光学系と、
前記屈折光学系によって集光された前記蛍光が入射される後段光学系とを備えることができる。
【0031】
この場合において、前記蛍光光源装置が前記ガラス部材を備える場合には、前記屈折光学系は、前記第一端部側のガラス部材の端面から前記第一方向に出射された蛍光も集光するものとしても構わない。また、前記蛍光光源装置が前記ミラー部材を備える場合には、前記屈折光学系は、前記第二方向に関し、前記蛍光体と前記ミラー部材との間の空間領域から前記第一方向に出射された蛍光も集光するものとしても構わない。
【発明の効果】
【0032】
本発明の蛍光光源装置によれば、出射面の面積の拡大を抑制しながらも、蛍光の取り出し効率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の蛍光光源装置の第一実施形態の構成を模式的に示す平面図である。
図2】蛍光光源装置に含まれる蛍光体及びガラス部材の構成を模式的に示す斜視図である。
図3】第一実施形態の蛍光光源装置が備える蛍光体内で生成された蛍光の一部の動きを模式的に示す図面である。
図4】第一実施形態の蛍光光源装置を出射面側から見たときの模式的な平面図である。
図5】本発明の蛍光光源装置の第一実施形態の別の構成を模式的に示す平面図である。
図6】本発明の蛍光光源装置の第一実施形態の別の構成を模式的に示す平面図である。
図7】本発明の蛍光光源装置の第一実施形態の別の構成を模式的に示す平面図である。
図8】蛍光体の別の構成を模式的に示す斜視図である。
図9】蛍光体の別の構成を模式的に示す斜視図である。
図10】蛍光体の別の構成を模式的に示す斜視図である。
図11】本発明の蛍光光源装置の第一実施形態の別の構成を模式的に示す平面図である。
図12】本発明の蛍光光源装置の第二実施形態の構成を模式的に示す平面図である。
図13】第二実施形態の蛍光光源装置が備える蛍光体内で生成された蛍光の一部の動きを模式的に示す図面である。
図14】第二実施形態の蛍光光源装置を出射面側から見たときの模式的な平面図である。
図15】第二実施形態の蛍光光源装置を出射面側から見たときの別の模式的な平面図である。
図16】第二実施形態の蛍光光源装置を出射面側から見たときの別の模式的な平面図である。
図17】本発明の蛍光光源装置の第二実施形態の別の構成を模式的に示す平面図である。
図18】検証1で用いられた蛍光光源装置の構造を模式的に示す平面図である。
図19】検証1における結果を示すグラフである。
図20】検証1における結果を示す別のグラフである。
図21】検証1で用いられた蛍光光源装置の構造を模式的に示す別の平面図である。
図22】検証1における結果を示す別のグラフである。
図23】検証2で用いられた蛍光光源装置の構造を模式的に示す平面図である。
図24】検証2における結果を示すグラフである。
図25】検証3で用いられた蛍光光源装置の構造を模式的に示す平面図である。
図26】検証3における結果を示すグラフである。
図27】別実施形態の蛍光光源装置の構造を模式的に示す図面である。
図28】別実施形態の蛍光光源装置の構造を模式的に示す図面である。
図29】従来の蛍光光源装置の問題点を説明するための模式的な図面である。
図30】従来の蛍光光源装置の問題点を説明するための別の模式的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る蛍光光源装置の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0035】
図面内において図示されている光線は、光線束に含まれる一つの主光線の動きを模式的に示したものである。しかし、ある入射面上で光線が反射又は屈折される場合における、光線の入射角、反射角、及び屈折角は、説明の便宜上、誇張して図示されている場合があり、必ずしも正しくない。
【0036】
[第一実施形態]
図1は、本発明に係る蛍光光源装置の第一実施形態の構成を模式的に示す平面図である。図1に示されるように、蛍光光源装置1は、蛍光体10、ガラス部材20、及び励起光源30を備える。図2は、図1における蛍光体10及びガラス部材20の構造を模式的に示す斜視図である。
【0037】
図1及び図2に示されるように、本実施形態において、蛍光体10は、X方向を長手方向とする形状を示す。より詳細には、蛍光体10は、X方向に係る長さが、X方向に直交する2方向であるY方向及びZ方向に係る長さよりも長い形状である。以下では、図1及び図2に表記されたXYZ座標系を適宜用いて説明される。
【0038】
本明細書では、ある方向を記載する際に、正負を区別する必要がない場合には、単に「X方向」、「Y方向」、又は「Z方向」と記載する。また、正負を区別する必要がある場合には、適宜「+X方向」、「-X方向」などと記載する。
【0039】
X方向が「第一方向」に対応し、Y方向が「第二方向」に対応し、Z方向が「第三方向」に対応する。
【0040】
蛍光体10は、傾斜面13を有する。より詳細には、蛍光体10は、X座標がx1である箇所(「所定の箇所」に対応する。)からX座標がx2である端部(第一端部11)に近づくに連れて、Y方向に係る幅10yが減少するような傾斜面13を有する。
【0041】
図1に図示された例では、蛍光体10は、X座標がx1である箇所から第一端部11とは反対側の第二端部12(X座標がx0である端部)までの領域においては、Y方向に係る幅10yが同一である形状を示す。より詳細には、蛍光体10は、Z方向から見たときに、X座標がx0からx1までの領域は長方形状を示し、X座標がx1からx2までの領域は台形状を示している。
【0042】
蛍光体10は、励起光源30から出射される励起光L30が入射されると、励起光L30とは波長の異なる蛍光L10を生成する材料を含む。また、蛍光体10の屈折率は、空気及びガラス部材20よりも高い。このような材料の一例としては、YAG(Y3Al512:Ce3+)、βサイアロン(SrSiAlON:Eu2+)、LuAG(Lu3Al512:Ce3+)などが挙げられる。ただし、本発明において、蛍光体10の構成材料は、励起光L30が入射されると励起光L30とは波長の異なる蛍光L10を生成する材料であって、空気及びガラス部材20よりも屈折率の高い材料を含む限りにおいて任意である。
【0043】
ガラス部材20は、蛍光体10よりは屈折率が低く、空気よりは屈折率が高い材料であって、蛍光L10に対する透過性を示す材料からなる。一例として、ガラス部材20は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、BK7、B270(登録商標)などからなる。ただし、本発明において、ガラス部材20の構成材料は、蛍光L10に対する透過性を示し、蛍光体10よりは屈折率が低く、空気よりは屈折率が高い材料である限りにおいて任意である。
【0044】
ガラス部材20は、当該ガラス部材20の一部の面が、例えば光学用接着剤などを介して、蛍光体10の傾斜面13と固定的に接合するように配置されている。図1に図示された例では、Z方向から見たときに、ガラス部材20は三角形状を示している。より詳細には、図1及び図2に示されるように、ガラス部材20は、X座標に関してx1からx2までの領域に配置されている。
【0045】
図1に示すように、蛍光光源装置1は、X方向に沿って配列された、複数の励起光源30を備える。本実施形態において、励起光源30はLED素子で構成される。より具体的な一例として、励起光源30は、GaN、InGaN、AlInGaNなどの窒化物半導体からなる活性層を含むLED素子であって、ピーク波長が400nm以上500nm以下であるLED素子である。ただし、本発明において、励起光源30が出射する励起光L30の波長は限定されない。
【0046】
なお、図示しないが、励起光源30は、Z方向にも複数個配置されているものとしても構わない。また、Y方向に関して、励起光源30と蛍光体10との間には微小な空間が存在し、同空間には空気が存在するものとしても構わない。
【0047】
励起光源30から出射された励起光L30は、実質的にY方向に進行して蛍光体10内に入射される。この励起光L30は、蛍光体10内を進行しながら蛍光L10に変換される。蛍光L10は、蛍光体10の側面で全反射を繰り返しながら、実質的にX方向に拡散する。
【0048】
図3は、蛍光L10の一部である蛍光L10aの光線の動きを模式的に図示したものである。蛍光L10aは、蛍光体10内を、傾斜面13と、傾斜面13に対してY方向に対向する側面14との間で全反射を繰り返しながら、X方向に関して第一端部11側に進行する。
【0049】
上述したように、蛍光体10は、X方向に関して第一端部11に近づくに連れて、Y方向に係る幅10yが減少するような、傾斜面13を有する。このため、蛍光L10(L10a)は、傾斜面13における反射が繰り返されるに連れ、傾斜面13又は側面14に入射されるときの入射角θxが小さくなる。
【0050】
上述したように、蛍光体10の傾斜面13は、空気よりは屈折率が高く蛍光体10よりは屈折率の低い材料からなるガラス部材20と接触している。一方で、蛍光体10の側面14(傾斜面13に対してY方向に対向する位置の側面)は、空気と接触している。このため、傾斜面13における臨界角は、側面14における臨界角よりも大きくなる。
【0051】
従って、蛍光体10内において、傾斜面13と側面14とで全反射を繰り返しながら第一端部11側に伝搬した蛍光L10は、ある時点において、傾斜面13に対して臨界角未満の入射角θxで入射する場合がある。図3には、蛍光L10aが、ある箇所17aにおいて傾斜面13に対して臨界角未満の入射角θxで入射した場合の態様が、模式的に図示されている。
【0052】
前記箇所17aにおいて、臨界角未満の入射角θxで傾斜面13に対して入射した蛍光L10aは、全反射が実質的に生じず、ガラス部材20内に進行する。ガラス部材20は、蛍光体10よりは屈折率が低いため、ガラス部材20内に入射された蛍光L10aは屈折する。より詳細には、蛍光L10aは、ガラス部材20に入射される直前の進行方向に比べて、X方向に対する交差角度が小さい方向に進行する。この結果、ガラス部材20内に入射された蛍光L10は、ガラス部材20の端部21側に向かって進行する。
【0053】
ガラス部材20内に入射された、蛍光L10aを含む蛍光L10は、上述したように、X方向に対する交差角度が小さい方向に進行するため、その多くが、ガラス部材20の端部21の面における入射角が臨界角未満となる。この結果、ガラス部材20内に入射された蛍光L10は、その多くがガラス部材20の端部21から外部に出射される。
【0054】
なお、蛍光体10内で生成された蛍光L10には、傾斜面13と側面14との間で全反射を繰り返しながら蛍光体10の第一端部11に到達するものも存在する。この結果、蛍光L10は、蛍光体10の第一端部11、及びガラス部材20の端部21から外側に取り出される。図4は、蛍光光源装置1を出射面側から、すなわち-X方向に見たときの模式的な平面図である。図4において、蛍光L10が取り出される領域には、ハッチングが施されている。なお、図4には、励起光源30がZ方向に3列配置されている態様が図示されているが、励起光源30のZ方向に係る配置列数はあくまで一例である。例えば、励起光源30は、Z方向に1列だけ配置されているものとしても構わない。
【0055】
蛍光光源装置1によれば、蛍光体10が傾斜面13を設けており、且つ、この傾斜面13に接合するように、蛍光体10よりも屈折率の低いガラス部材20を配置したことで、蛍光体10の第一端部11に対して臨界角以上の角度で入射される蛍光L10の光量が大幅に削減される。この結果、蛍光L10の取り出し効率が向上する。この点については、実施例を参照して後述される。
【0056】
更に、図3に図示されるように、蛍光体10は、第一端部11に近づくに連れて幅10yが実質的に減少する傾斜面13を含む形状を呈しており、ガラス部材20は、この傾斜面13に一部の面が接合するように配置されている。このため、本実施形態の蛍光光源装置1は、ガラス部材20を追加的に備えるものの、第一端部11近傍、すなわち出射面側におけるY方向に係る幅の拡大が抑制されている。この結果、高い輝度の蛍光L10を取り出すことができる。
【0057】
以下、第一実施形態の蛍光光源装置1の別構成について、説明する。
【0058】
〈1〉図5に示すように、蛍光体10は、X方向に係る全体の領域にわたって、第一端部11に近づくに連れてY方向に係る幅10yが小さくなるような構造であっても構わない。この場合、図5に示すように、ガラス部材20は、X座標に関し、x0からx2までの領域に配置されているものとしても構わない。
【0059】
〈2〉図6に示すように、蛍光体10をZ方向から見たときに、傾斜面13の傾斜角がX方向に係る座標位置によって変動しても構わない。すなわち、傾斜面13は、単一の平面でなくてもよく、例えば折れ平面であっても構わない。図6に示される例では、蛍光体10をZ方向から見たときに、X座標がx1からxaまでの領域における傾斜面13の傾斜角は、X座標がxcからxdまでの領域における傾斜面13の傾斜角と異なっている。この場合、ガラス部材20も、蛍光体10の折れ平面に対応した折れ平面を備えるものとして構わない。
【0060】
更に、傾斜面13は、一部分に側面14と平行な領域を備えていても構わない。図6の例では、X座標がxbからxcまでの領域の部分は、傾斜面13がY方向に対向する側面14と平行に構成されている。
【0061】
言い換えると、蛍光体10の傾斜面13は、Y方向に係る幅10yが、X方向に関して第一端部11に近づくに連れて実質的に減少する形状であればよい。ここで、幅10yが「実質的に減少する」とは、第一端部11において幅10yが最も小さく、且つ、X方向に関して第一端部11に近づくに連れて幅10yが連続的に減少する領域が存在することを意味する。
【0062】
〈3〉上述したように、蛍光体10は、Y方向に係る幅10yが、X方向に関して第一端部11に近づくに連れて実質的に減少する形状であればよい。従って、蛍光体10は、図7に示されるように、傾斜面13に代えて曲面15を備えるものとしても構わない。この場合も、ガラス部材20は、蛍光体10の曲面15に接合するような曲面を備えるものとして構わない。
【0063】
また、蛍光体10は、傾斜面13と曲面15の双方を備える構成であっても構わない。
【0064】
すなわち、蛍光体10は、Y方向に係る幅10yが、X方向に関して第一端部11に近づくに連れて実質的に減少する形状であればよく、この限りにおいて種々の形状を採用することができる。図8図10に蛍光体10の他の例を示す。
【0065】
なお、蛍光光源装置1が、図8図10に図示されている形状の蛍光体10を備える場合においても、各傾斜面13又は曲面15に接合する面を有するガラス部材20を備えるものとして構わない。この場合、例えば図8及び図10に図示されるように、蛍光体10が、Y方向に係る幅10yに関して、+方向からも-Y方向からも減少する形状を示す場合には、蛍光体10に対して+Y方向に係る外側と、-Y方向に係る外側とにガラス部材20が設けられるものとしても構わない。
【0066】
〈4〉ガラス部材20は、傾斜面13又は曲面15と接合する面を備えていればよく、例えば、図11に示すように、一部分が蛍光体10よりも外側に突出していても構わない。図11には、ガラス部材20の一部が、蛍光体10に対して+Y方向に突出している場合が図示されている。なお、ガラス部材20の一部が、蛍光体10に対してZ方向に突出していても構わないし、X方向に突出していても構わない。
【0067】
ただし、後段の光学系の設計を鑑みた場合、出射面を構成するガラス部材20の端部21と、蛍光体10の第一端部11とは、X座標が実質的に一致しているのが好ましい。すなわち、ガラス部材20の一部は、蛍光体10に対して+X方向には突出しないのが好ましい。
【0068】
[第二実施形態]
蛍光光源装置の第二実施形態につき、第一実施形態と異なる箇所を主として説明する。
【0069】
図12は、本発明に係る蛍光光源装置の第二実施形態の構成を模式的に示す平面図である。図12に示されるように、本実施形態の蛍光光源装置1は、第一実施形態と比較して、ガラス部材20を備えず、ミラー部材40を備える。他は、第一実施形態の蛍光光源装置1と共通である。
【0070】
ミラー部材40は、蛍光L10に対する反射性を示す材料からなる。本実施形態では、ミラー部材40は、蛍光体10に対して±Y方向及び±Z方向に取り囲むように、四角形状に配置されている(後述する図14参照)。以下では、蛍光体10に対して+Y方向の外側に配置されたミラー部材40を「ミラー部材40a」、蛍光体10に対して-Y方向の外側に配置されたミラー部材40を「ミラー部材40b」、蛍光体10に対して+Z方向の外側に配置されたミラー部材40を「ミラー部材40c」、蛍光体10に対して-Z方向の外側に配置されたミラー部材40を「ミラー部材40d」とそれぞれ称する。図12には、図示の都合上、ミラー部材40a及びミラー部材40bのみが表示されている。
【0071】
ここで、本実施形態のように、Y方向に関し、励起光源30と蛍光体10との間にミラー部材40bが配置される場合には、ミラー部材40bは、励起光源30から出射される励起光L30に対しては透過性を示し、蛍光L10に対しては反射性を示すような反射面を有するものとして構わない。このようなミラー部材40bは、例えば誘電体多層膜で構成できる。なお、他のミラー部材40a、40c、及び40dは、いずれも蛍光L10に対して反射性を示す材料であればよい。
【0072】
図13は、蛍光L10の一部である蛍光L10b、L10cの光線の動きを模式的に図示したものである。
【0073】
第一実施形態と同様に、蛍光体10は、励起光L30が入射されると蛍光L10を生成する。蛍光L10は、蛍光体10内を、傾斜面13と、傾斜面13に対してY方向に対向する側面14との間で全反射を繰り返しながら、X方向に関して第一端部11側に進行する。このとき、蛍光L10は、傾斜面13における反射が繰り返されるに連れ、傾斜面13又は側面14に入射されるときの入射角θxが小さくなる。
【0074】
従って、蛍光体10内において、傾斜面13と側面14とで全反射を繰り返しながら第一端部11側に伝搬した蛍光L10は、ある時点において、傾斜面13に対して臨界角未満の入射角θxで入射する場合がある。図13には、蛍光L10bが、ある箇所17bにおいて傾斜面13に対して臨界角未満の入射角θxで入射し、蛍光L10cが、別のある箇所17cにおいて傾斜面13に対して臨界角未満の入射角θxで入射した場合の態様が、模式的に図示されている。
【0075】
前記箇所17cにおいて、臨界角未満の入射角θxで傾斜面13に対して入射した蛍光L10cは、全反射が実質的に生じず、蛍光体10の傾斜面13から蛍光体10の外側に出射される。蛍光体10の外側には空気が存在し、空気は蛍光体10よりは屈折率が低いため、蛍光体10の傾斜面13から外側に出射された蛍光L10cは、X方向に対する交差角度が小さい方向に進行方向を変化させる。この結果、蛍光体10の第一端部11とミラー部材40aとの間からX方向に出射される。
【0076】
また、前記箇所17bにおいて、臨界角未満の入射角θxで傾斜面13に対して入射した蛍光L10bは、全反射が実質的に生じず、蛍光体10の傾斜面13から蛍光体10の外側に出射される。このとき、蛍光L10bは、蛍光L10cと同様に、よりX方向に対する交差角度が小さい方向に進行する。しかし、箇所17bは、X方向に関して蛍光体10の第一端部11よりもかなり手前の位置であるため、蛍光L10bは、X座標がx2を示す位置に到達する前にミラー部材40aに入射される。このとき、ミラー部材40aによって蛍光L10bは反射されて、蛍光体10の第一端部11とミラー部材40aとの間からX方向に出射される。
【0077】
なお、蛍光体10内で生成された蛍光L10には、傾斜面13から蛍光体10の外側に出射され、ミラー部材40aによって反射された後、蛍光体10に戻されるものが存在する。かかる蛍光L10の一部は、側面14に対して臨界角未満で入射される場合がある。しかし、上述したように、本実施形態では、蛍光体10の側面14の外側にもミラー部材40bが設けられているため、側面14から蛍光体10の外側に出射された蛍光L10が存在する場合であっても、この蛍光L10を再び蛍光体10側に戻すことができる。すなわち、蛍光L10には、蛍光体10の+Y方向に係る外側に配置されたミラー部材40aと、蛍光体10の-Y方向に係る外側に配置されたミラー部材40bの一方、又は双方で反射された後、蛍光体10の第一端部11とミラー部材40aとの間からX方向に出射されるものが存在する場合がある。
【0078】
ところで、蛍光体10内で生成された蛍光L10には、蛍光体10のYX平面に平行な2側面で全反射を繰り返しながら蛍光体10の第一端部11に向かって進行するものが存在する。ここで、同様に、蛍光体10の側面に対して臨界角未満の入射角で蛍光L10が入射した場合、蛍光L10は、同側面から蛍光体10の外側に出射されてしまう。しかし、かかる場合であっても、蛍光体10に対して±Z方向に係る外側にもミラー部材40(40c,40d)が配置されているため、これらのミラー部材40によって蛍光L10を再び蛍光体10側に戻すことができる。
【0079】
第一実施形態の場合と同様に、蛍光体10内で生成された蛍光L10には、傾斜面13と側面14との間で全反射を繰り返しながら蛍光体10の第一端部11に到達するものも存在する。この結果、蛍光L10は、蛍光体10の第一端部11から、及び、蛍光体10の第一端部11とミラー部材40(40a)との間の位置から、外部に出射される。
【0080】
図14は、第二実施形態の蛍光光源装置1を出射面側から、すなわち-X方向に見たときの模式的な平面図である。図14において、蛍光L10が取り出される領域を模式的にハッチングで示している。本実施形態では、Y方向に関し、蛍光体10の傾斜面13とミラー部材40との間には空間が存在しているため、図14に示すように、蛍光光源装置1を-X方向に見た場合、蛍光体10の傾斜面13が表示される。
【0081】
本実施形態の蛍光光源装置1によれば、蛍光体10が傾斜面13を設け、この傾斜面13に対して屈折率の低い空気が接触していることで、蛍光体10の第一端部11に対して臨界角以上の角度で入射される蛍光L10の光量が大幅に削減される。更に、この傾斜面13に対してY方向に係る外側にミラー部材40を配置したことで、傾斜面13からY方向に出射された蛍光L10についても、出射面側に導くことができ、蛍光L10の取り出し効率が向上する。この点については、実施例を参照して後述される。
【0082】
また、本実施形態の蛍光光源装置1においても、蛍光体10が、第一端部11に近づくに連れて幅10yが実質的に減少する傾斜面13を含む形状を呈している。ここで、本実施形態の蛍光光源装置1は、ミラー部材40を備えるものの、このミラー部材40は、蛍光体10の外周を取り囲むように配置されているに過ぎないため、出射面の面積を拡大するものではない。この結果、高い輝度の蛍光L10を取り出すことができる。
【0083】
以下、第二実施形態の蛍光光源装置1の別構成について、説明する。
【0084】
〈1〉蛍光光源装置1が、蛍光体10の-Y方向に係る外側に係るXZ平面上に、励起光源30を多数配列させている場合には、この励起光源30によって、蛍光体10の側面14から-Y方向に向けて出射された蛍光L10を+Y方向に反射させる機能が実現される場合がある。このとき、蛍光光源装置1はミラー部材40bを備えないものとしても構わない。この場合、図15に示されるように、蛍光光源装置1をX方向から見た場合に、ミラー部材40(40a,40c,40d)は蛍光体10の3面を覆うような形状(コの字形状又はU字形状)を示す。
【0085】
なお、蛍光体10内を進行する蛍光L10のうち、X座標がx2の値の位置に達する前に蛍光体10の外側に出射される蛍光L10としては、傾斜面13から+Y方向に出射される蛍光L10の光量が最も多い。このため、少なくとも蛍光光源装置1は、ミラー部材40(40a)を備えるものとして構わない(図16参照)。
【0086】
〈2〉図17に示されるように、ミラー部材40は、傾斜面13が存在する領域に係る蛍光体10の外側にのみ配置されているものとしても構わない。すなわち、蛍光体10の外側の領域であって、X座標がx0からx1までの領域にはミラー部材40を設けないものとしても構わない。
【0087】
〈3〉第一実施形態で上述した蛍光光源装置1が備える蛍光体10の形状の各バリエーションは、第二実施形態の蛍光光源装置1が備える蛍光体10に対しても同様に適用が可能である。
【0088】
[実施例]
以下において、本発明に係る蛍光光源装置1によれば、蛍光L10の取り出し効率が向上することにつき、シミュレーション結果を参照して説明する。
【0089】
(検証1)
第一実施形態の蛍光光源装置1を想定し、シミュレーションを行った。すなわち、ガラス部材20を備える蛍光光源装置1をシミュレーションの対象とした。
【0090】
<設定条件1>
シミュレーションに用いられた蛍光光源装置1においては、図18に示すように、蛍光光源装置1が備える蛍光体10を、X方向に係る長さw1が10mmで、第二端部12側に係る形状が1mm×1mmの寸法とした。また、蛍光体10の傾斜面13のX方向に係る起点となるX座標x1と、第一端部11のX座標x2との間の距離w2を6.67mmとした。すなわち、X方向に関して、座標x1とx2の間の距離を、座標x0とx2の間の距離の2/3に設定した。
【0091】
<設定条件2>
蛍光光源装置1が備える蛍光体10のX方向に係る長さw1を120mmとし、蛍光体10の傾斜面13のX方向に係る起点となるX座標x1と、第一端部11のX座標x2との間の距離w2を80mmとした点以外は、設定条件1と共通の条件とした。すなわち、設定条件2では、設定条件1と比べて、蛍光体10の形状がX方向に関してより長細い形状を示すものとした。
【0092】
<結果>
上記各設定条件の下、第一端部11における蛍光体10のY方向に係る長さtを、0mmから1mmまで変化させたときの、蛍光L10の取り出し効率を評価した。設定条件1の下での結果を図19に、設定条件2の下での結果を図20にそれぞれ示す。
【0093】
なお、長さt=0mmである場合とは、X座標がx2の位置における端部が全てガラス部材20で構成されている場合に対応する。また、長さt=1mmである場合とは、ガラス部材20が全く存在しない場合に対応する。長さtを0mmと1mmの間で変化させることで、傾斜面13の傾斜角が変化する。
【0094】
また、蛍光L10の取り出し効率とは、励起光源30から励起光L30を蛍光体10に入射したときに生成された蛍光L10の光量に対する、蛍光体10からX方向に取り出された蛍光L10の光量の比率である。
【0095】
図19によれば、t=1mmの場合、すなわちガラス部材20が存在しない場合と比較して、ガラス部材20を設けた場合、すなわち第一実施形態の蛍光光源装置1の方が蛍光L10の取り出し効率が高められていることが分かる。
【0096】
また、図19によれば、tの値を0.75mmから小さくしていくことで、蛍光L10の取り出し効率が徐々に低下していることが確認される。この結果は、傾斜面13の傾斜角が徐々に大きくなることで、蛍光体10からガラス部材20内に進行した蛍光L10の一部が、ガラス部材20を通過して±Y方向、又は±Z方向に出射される光量が増えたことを意味するものと推察される。ただし、この場合であっても、t=1mmの場合よりは蛍光L10の取り出し効率が大きく向上していることが確認される。
【0097】
図20に示される結果においても、図19と同様に、t=1mmの場合、すなわちガラス部材20が存在しない場合と比較して、ガラス部材20を設けた場合、すなわち第一実施形態の蛍光光源装置1の方が蛍光L10の取り出し効率が高められていることが分かる。
【0098】
なお、図20の結果によれば、t=0.75mmのときと、t=0mmのときとで、蛍光L10の取り出し効率にあまり差が生じていない。この結果は、設定条件2の下では、ガラス部材20が、X方向に関して極めて長細い形状を示していることに起因するものと推察される。より詳細には、t=0mmとした場合、すなわちX座標がx2の位置における端部を全てガラス部材20で構成した場合であっても、傾斜面13の傾斜角は緩やかとなる。このため、t=0mmとした場合であっても、蛍光体10内で生成された蛍光L10のうち、ガラス部材20を通過して±Y方向、又は±Z方向に出射される光量が、t=0.75mmの場合とあまり差が生じていないものと推察される。
【0099】
(検証2)
検証1と同様、第一実施形態の蛍光光源装置1を想定し、シミュレーションを行った。すなわち、ガラス部材20を備える蛍光光源装置1をシミュレーションの対象とした。
【0100】
<設定条件>
シミュレーションに用いられた蛍光光源装置1においては、図21に示すように、蛍光光源装置1が備える蛍光体10を、X方向に係る長さw1が10mmで、第二端部12側に係る形状が1mm×1mmの寸法とした。また、第一端部11における蛍光体10のY方向に係る長さtを0.5mmとした。
【0101】
<結果>
上記設定条件の下、蛍光体10の第二端部12のX座標x0と、蛍光体10の傾斜面13のX方向に係る起点となるX座標x1との間の距離w3を、0mmから10mmまで変化させたときの、蛍光L10の取り出し効率を評価した。この結果を図22に示す。
【0102】
なお、距離w3=10mmである場合とは、蛍光光源装置1がガラス部材20を備えない場合に対応する。つまり、この場合のみ、t=1mmである場合に対応する。距離w3の値を0mmと10mmの間で変化させることで、傾斜面13の傾斜角が変化する。
【0103】
図22に示される結果においても、図19及び図20と同様に、ガラス部材20が存在しない場合(w3=10mm)と比較して、ガラス部材20を設けた場合、すなわち第一実施形態の蛍光光源装置1の方が蛍光L10の取り出し効率が高められていることが分かる。
【0104】
(検証3)
第二実施形態の蛍光光源装置1を想定し、シミュレーションを行った。すなわち、ミラー部材40を備える蛍光光源装置1をシミュレーションの対象とした。より詳細には、蛍光体10の外周の四方にミラー部材40(40a,40b,40c,40d)を備える蛍光光源装置1をシミュレーションの対象とした。
【0105】
<設定条件>
シミュレーションに用いられた蛍光光源装置1においては、図23に示すように、蛍光光源装置1が備える蛍光体10を、X方向に係る長さw1が10mmで、第二端部12側に係る形状が1mm×1mmの寸法とした。また、蛍光体10の傾斜面13のX方向に係る起点となるX座標x1と、第一端部11のX座標x2との間の距離w2を6.67mmとした。すなわち、X方向に関して、座標x1とx2の間の距離を、座標x0とx2の間の距離の2/3に設定した。
【0106】
<結果>
上記設定条件の下、第一端部11における蛍光体10のY方向に係る長さtを、0mmから1mmまで変化させたときの、蛍光L10の取り出し効率を評価した。この結果を図24に示す。
【0107】
図24に示される結果によれば、図19及び図20に示される結果と同様に、t=1mmの場合、すなわちガラス部材20が存在しない場合と比較して、ガラス部材20を設けた場合、すなわち第一実施形態の蛍光光源装置1の方が蛍光L10の取り出し効率が高められていることが分かる。
【0108】
(検証4)
第二実施形態の蛍光光源装置1を想定し、シミュレーションを行った。すなわち、ミラー部材40を備える蛍光光源装置1をシミュレーションの対象とした。より詳細には、蛍光体10の外周の四方にミラー部材40(40a,40b,40c,40d)を備える蛍光光源装置1をシミュレーションの対象とした。なお、この検証では、傾斜面13ではなく曲面15を備えた蛍光体10を含む蛍光光源装置1をシミュレーションの対象とした。
【0109】
<設定条件>
シミュレーションに用いられた蛍光光源装置1においては、図25に示すように、蛍光光源装置1が備える蛍光体10を、X方向に係る長さw1が10mmで、第二端部12側に係る形状が1mm×1mmの寸法とした。また、蛍光体10の曲面15のX方向に係る起点となるX座標x1と、第一端部11のX座標x2との間の距離w2を6.67mmとした。すなわち、X方向に関して、座標x1とx2の間の距離を、座標x0とx2の間の距離の2/3に設定した。
【0110】
<結果>
上記設定条件の下、第一端部11における蛍光体10のY方向に係る長さtを、0mmから1mmまで変化させたときの、蛍光L10の取り出し効率を評価した。この結果を図26に示す。
【0111】
図26に示される結果によれば、図24に示される結果と同様に、t=1mmの場合、すなわちガラス部材20が存在しない場合と比較して、ガラス部材20を設けた場合、すなわち第一実施形態の蛍光光源装置1の方が蛍光L10の取り出し効率が高められていることが分かる。
【0112】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0113】
〈1〉 第一実施形態の蛍光光源装置1において、第二実施形態で上述したミラー部材40を更に備えるものとしても構わない。
【0114】
〈2〉 図27に示される蛍光光源装置2のように、第一実施形態又は第二実施形態で上述された蛍光光源装置1に加えて、集光光学系71及び導光部材72を備えるものとしても構わない。蛍光光源装置1から出射された蛍光L10は、集光光学系71によって導光部材72の入射面72aに集光され、導光部材72から図示しない後段の光学系に入射される。なお、集光光学系71は、例えば凸レンズなどの集光レンズで構成される。導光部材72は、例えばロッドインテグレータ(「ライトパイプ」とも称される。)などの光学部材で構成される。
【0115】
蛍光光源装置2によれば、導光部材72の入射面72aに対して、輝度の高い蛍光L10を入射させることができる。
【0116】
また、図28に示される蛍光光源装置2のように、更に蛍光L10とは波長の異なる光L73を出射する別の光源73を備え、集光光学系71によって、この蛍光L10と光L73との合成光が導光部材72に集光されるものとしても構わない。図28に示される例では、蛍光光源装置2は、屈折光学系(74,75)と、蛍光L10を透過して光L73を反射するダイクロイックミラー76とを備える。蛍光光源装置1から出射されて、屈折光学系74を介して略平行光となった蛍光L10が、ダイクロイックミラー76を透過して集光光学系71に導かれる。また、光源73から出射されて、屈折光学系74を介して略平行光となった光L73が、ダイクロイックミラー76で反射して集光光学系71に導かれる。
【0117】
例えば、光源73から青色の光L73を出射させ、蛍光光源装置1からは黄色系の蛍光L10を出射させることで、導光部材72に対して輝度の高い白色光を入射させることができる。かかる白色光は、プロジェクタなどの光源光として利用することができる。
【0118】
なお、図28において、ダイクロイックミラー76に代えて、蛍光L10を反射して、光L73を透過するダイクロイックミラー(不図示)を備えるものとしても構わない。
【0119】
〈3〉上記各実施形態において、励起光源30がLED素子で構成されるものとして説明したが、レーザダイオード(LD)素子で構成されていても構わない。
【符号の説明】
【0120】
1 : 蛍光光源装置
2 : 蛍光光源装置
10 : 蛍光体
11 : 蛍光体の第一端部
12 : 蛍光体の第二端部
13 : 蛍光体の傾斜面
14 : 蛍光体の側面
15 : 蛍光体の曲面
20 : ガラス部材
30 : 励起光源
40 : ミラー部材
40a,40b,40c,40d : ミラー部材
71 : 集光光学系
72 : 導光部材
72a : 導光部材の入射面
73 : 光源
74,75 : 屈折光学系
76 : ダイクロイックミラー
100 : 従来の蛍光体
101 : 蛍光体の出射面
110 : 集光器
111 : 集光器の側面
112 : 集光器の出射面
L10 : 蛍光
L10a,L10b,L10c : 蛍光
L30 : 励起光
L73 : 光
L100 : 蛍光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30