IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オンダ製作所の特許一覧

<>
  • 特許-管継手の製造方法 図1
  • 特許-管継手の製造方法 図2
  • 特許-管継手の製造方法 図3
  • 特許-管継手の製造方法 図4
  • 特許-管継手の製造方法 図5
  • 特許-管継手の製造方法 図6
  • 特許-管継手の製造方法 図7
  • 特許-管継手の製造方法 図8
  • 特許-管継手の製造方法 図9
  • 特許-管継手の製造方法 図10
  • 特許-管継手の製造方法 図11
  • 特許-管継手の製造方法 図12
  • 特許-管継手の製造方法 図13
  • 特許-管継手の製造方法 図14
  • 特許-管継手の製造方法 図15
  • 特許-管継手の製造方法 図16
  • 特許-管継手の製造方法 図17
  • 特許-管継手の製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】管継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20220926BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/14
B29C33/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021091260
(22)【出願日】2021-05-31
(62)【分割の表示】P 2019134983の分割
【原出願日】2015-01-30
(65)【公開番号】P2021120233
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-05-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】森部 浩成
(72)【発明者】
【氏名】井村 元
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-163938(JP,A)
【文献】実開平04-115627(JP,U)
【文献】特開2006-153260(JP,A)
【文献】実開昭52-065929(JP,U)
【文献】実開昭54-107666(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
F16L 13/00 - 15/08
F16L 29/00 - 35/00
F16L 41/00 - 49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部を有する接続部を備えた管継手の製造方法であって、前記管継手を構成する管継手本体とは別のインサート部材で前記ねじ部を形成し、前記管継手は、前記管継手本体に前記インサート部材が固定されることで、前記インサート部材が前記管継手本体から抜け止めされかつ前記管継手本体に対する周方向への回転が規制される構成であり、前記管継手の成形時に金型内に前記インサート部材を配置した後、前記金型のゲートから前記金型内のキャビティに溶融樹脂を射出して前記管継手本体を成形し、次いで前記金型を型開きすることで前記管継手を製造し、
前記インサート部材は内空間の中心部が、前記金型の前記ゲートにおいて前記金型内の前記キャビティとの境界部分に対し、前記インサート部材の中心軸線に沿う方向において対向して配置されている管継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水系統や給湯系統の配管システムで使用されるヘッダーを構成するヘッダーピース等の管継手を射出成形法(インサート成形法)で成形するための管継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には脱型装置が開示されている。すなわち、キャビティは固定側金型と、可動側金型と、回転金型部品(コア型)とにより形成され、脱型装置は可動側金型に設けられ、モータとそのモータによって回転駆動される回転体とからなっている。そして、射出成形後に可動側金型を固定側金型から型開きすると、成形品は可動側金型側に残る。次いで、モータにより回転体を回転させるとコア型が回転し、成形品がコア型から抜き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-35533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、インサート部材を金型内において安定して支持できる管継手の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の管継手の製造方法は、ねじ部を有する接続部を備えた管継手の製造方法であって、前記管継手を構成する管継手本体とは別のインサート部材で前記ねじ部を形成し、前記管継手は、前記管継手本体に前記インサート部材が固定されることで、前記インサート部材が前記管継手本体から抜け止めされかつ前記管継手本体に対する周方向への回転が規制される構成であり、前記管継手の成形時に金型内に前記インサート部材を配置した後、前記金型のゲートから前記金型内のキャビティに溶融樹脂を射出して前記管継手本体を成形し、次いで前記金型を型開きすることで前記管継手を製造し、前記インサート部材は内空間が前記金型の前記ゲートに対向して配置されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の管継手の製造方法によれば、インサート部材を金型内において安定して支持できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)は第1実施形態におけるヘッダーを構成する3つのヘッダーピースを分解して示す断面図、(b)はヘッダーピースを連結したヘッダーを示す断面図。
図2】第1ヘッダーピースを示す拡大断面図。
図3】第2ヘッダーピースを示す拡大断面図。
図4】(a)は第3ヘッダーピースを示す拡大断面図、(b)はアンダーカット部を示す部分拡大断面図。
図5】ヘッダーに主配管及び分岐配管を接続した状態を示す正面図。
図6】(a)は外ねじインサート部材を示す断面図、(b)は外ねじインサート部材を示す正面図。
図7】(a)は内ねじインサート部材を示す断面図、(b)は内ねじインサート部材を示す側面図、(c)は内ねじインサート部材を示す正面図。
図8】管継手を成形するための金型を示し、固定型及び可動型としての第1スライド型、第2スライド型及び第3スライド型並びに外ねじインサート部材及び内ねじインサート部材を分解して示す断面図。
図9図8において、外ねじインサート部材を第2スライド型に装着し、内ねじインサート部材を第3スライド型に装着した状態を示す断面図。
図10】固定型と可動型とを型締めしてキャビティを形成した後、ゲートからキャビティにゴム状弾性体入りの溶融樹脂を射出した状態を示す断面図。
図11図10において、固定型を型開きした後、可動型を抜き出す状態を示す断面図。
図12】第2実施形態における管継手を成形するための金型を示し、固定側金型と可動側金型を型開きした状態を示す断面図。
図13】固定側金型と可動側金型を型締めするとともに、第3スライド型を型締めした後、キャビティに溶融樹脂を射出した状態を示す断面図。
図14図13の状態から可動側金型を固定側金型から型開きするとともに、第3スライド型を後退させた状態を示す断面図。
図15図14の状態から、エジェクタスリーブを押し出してアンダーカット成形部を無理抜きしてアンダーカット部を成形する状態を示す断面図。
図16】本発明の別例を示し、チーズ継手を示す拡大断面図。
図17】本発明のさらなる別例を示し、チーズ継手を示す拡大断面図。
図18】本発明の別例を示し、直管状の継手を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図11に従って詳細に説明する。
図1(b)に示すように、ヘッダー10は管継手としての3つのヘッダーピース10a、10b、10cが連結されて構成されている。図1(a)に示すように、第1ヘッダーピース10a〔図1(a)の右端部〕には第2ヘッダーピース10b〔図1(a)の中央部〕が連結され、その第2ヘッダーピース10bには第3ヘッダーピース10c〔図1(a)の左端部〕が連結される。これらのヘッダーピース10a、10b、10cについて順に説明する。
【0009】
図5に示すように、第1ヘッダーピース10aにはユニオン継手29を介して主配管30が接続されるとともに、継手65を介して分岐配管66が接続される。第2ヘッダーピース10bは第1ヘッダーピース10a及び第3ヘッダーピース10cに連結されるとともに、継手65を介して分岐配管66が接続される。第3ヘッダーピース10cは第2ヘッダーピース10bに連結され、主配管26が接続されるとともに、継手65を介して分岐配管66が接続される。そして、第3ヘッダーピース10cに接続された主配管26からヘッダー10内に流体(水又は湯)が流入され、第1ヘッダーピース10aの主配管30へと流通するとともに、各分岐配管66に分岐されるようになっている。
【0010】
図2に示すように、前記第1ヘッダーピース10aを構成する管継手本体11は断面略逆T字状に形成され、内周面にアンダーカット部12を有する第1の接続部13と、外周面に外ねじ部(雄ねじ部)14を有する第2の接続部15と、内周面に内ねじ部(雌ねじ部)16を有する第3の接続部17とを有している。第3の接続部17は、第1の接続部13と第2の接続部15との間を流通する流体を分岐する分岐配管66を接続するためのものである。前記管継手本体11は、ゴム状弾性体入りの樹脂により形成され、ゴム状弾性を発現する。
【0011】
前記ゴム状弾性体としては、熱可塑性エラストマー、ゴム等が好適に用いられる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)等が挙げられる。これらのゴム状弾性体は、使用目的等に応じて1種又は2種以上が適宜選択して用いられる。
【0012】
また、前記樹脂(合成樹脂又は天然樹脂)としては、機械的強度、耐熱性等の観点からエンジニアリングプラスチックが好ましい。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアミド(ナイロン)樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらのエンジニアリングプラスチックのうち、耐熱水特性等の物性に優れている点から、PPS樹脂が好ましい。
【0013】
前記ゴム状弾性体入りの樹脂中におけるゴム状弾性体の含有量は、10~40質量%であることが好ましい。ゴム状弾性体の含有量が10質量%より少ない場合には、成形される管継手本体11の弾力性が不足し、後述する第1スライド型54がアンダーカット部12から抜き出し難く、アンダーカット部12の成形が困難になり、その結果アンダーカット部12が損傷を受ける結果を招いて好ましくない。その一方、40質量%より多い場合には、アンダーカット部12の成形は容易にできるが、得られる管継手本体11の機械的物性等が低下する傾向を示して好ましくない。
【0014】
前記第1の接続部13は円筒状に形成され、アンダーカット部12はその内周面において、断面円弧状に形成された環状溝により形成されている。このアンダーカット部12は、第1の接続部13を成形するための後述する第1スライド型54を第1の接続部13の軸線方向の外方へ引き抜くときの障害となるものであるが、管継手本体11がゴム状弾性体入りの樹脂により形成されていることから、アンダーカット部12の損傷を抑えて第1スライド型54を引き抜くことができる。
【0015】
前記第2の接続部15は、管継手本体11とは別体の外ねじインサート部材28が管継手本体11の外周に設けられて構成されている。この外ねじインサート部材28は、青銅、黄銅等の金属又は前記ゴム状弾性体入りの樹脂よりも融点(凝固点)の高い樹脂が使用され、インサート成形時に溶融樹脂の熱による変形が防止される。そのような樹脂としては、ガラス繊維入りのPPS樹脂、炭素繊維入りのPPS樹脂等が好適に用いられる。ガラス繊維や炭素繊維の融点はPPS樹脂の融点より高いため、ガラス繊維入りのPPS樹脂や炭素繊維入りのPPS樹脂の融点はPPS樹脂の融点より高くなる。ガラス繊維や炭素繊維の含有量は、通常20~40質量%程度である。
【0016】
図6(a)、(b)に示すように、前記外ねじインサート部材28の内周面には、螺旋溝64が内周面全体に渡って連続して形成されている。図2に示すように、この螺旋溝64により、外ねじインサート部材28の内周部に形成される管継手本体11の薄い筒部11aが、インサート成形後における後記第2スライド型55の抜き出しによって剥れ等の損傷を受けるおそれを抑制できるようになっている。
【0017】
図2及び図6(a)、(b)に示すように、前記外ねじインサート部材28の内端側外周には、一対の環状突起により形成された抜け止め部34が設けられ、管継手本体11の係合凹部63に係合して外ねじインサート部材28が抜け止めされている。これらの抜け止め部34の外周面にはローレット加工が施されて図示しない凹凸部が形成され、外ねじインサート部材28の周方向への回転が規制されている。この外ねじインサート部材28の外端部外周面には外ねじ部14が形成され、その外ねじ部14に前記ユニオン継手29が螺合される。
【0018】
続いて、前記第3の接続部17について説明する。図2及び図7(a)~(c)に示すように、この第3の接続部17は管継手本体11の内周に管継手本体11とは別体の内ねじインサート部材35が設けられて構成されている。該内ねじインサート部材35の外周面には、周方向に90度間隔をおいて円柱状に形成された4つの突起による抜け止め部34が設けられ、管継手本体11の係合凹部63に係合して内ねじインサート部材35が抜け止めされるとともに、内ねじインサート部材35の周方向への回転が規制されている。この内ねじインサート部材35の内周面には前記内ねじ部16が形成され、前記継手65の雄ねじ37が螺合される。
【0019】
次に、第2ヘッダーピース10bについて説明する。
図3に示すように、この第2ヘッダーピース10bの第1の接続部13及び第3の接続部17は、前記第1ヘッダーピース10aの第1の接続部13及び第3の接続部17と同じ構成である。第2の接続部15は円筒状に形成され、その内端側外周面には環状凹部67が形成され、伸縮可能に構成された係止リング68が装着されている。第2の接続部15の外端側外周面には一対の嵌着溝69が形成され、それぞれシールリング70が嵌着されている。
【0020】
そして、第2ヘッダーピース10bが第1ヘッダーピース10aに連結されたとき、第2ヘッダーピース10bの第2の接続部15の係止リング68が第1ヘッダーピース10aの第1の接続部13のアンダーカット部12に係合される。
【0021】
次に、第3ヘッダーピース10cについて説明する。
図4(a)、(b)に示すように、この第3ヘッダーピース10cの第2の接続部15及び第3の接続部17は前記第2ヘッダーピース10bの第2の接続部15及び第3の接続部17と同じ構成である。第1の接続部13は円筒状に形成され、その先端内周部にはアンダーカット部12が形成されるとともに、外周面には一対の係止凸部74が形成されている。この第1の接続部13にはキャップ25が被嵌され、キャップ25の内周部と第1の接続部13との間には主配管26を抜け止めする抜け止めリング27が介装されている。キャップ25の内端部内周面には一対の係止凹部71が形成され、第1の接続部13の係止凸部74が係止される。キャップ25の基端部外周にはステンレス鋼製のカバー体44が被嵌され、キャップ25の開きが規制されている。
【0022】
そして、第3ヘッダーピース10cが第2ヘッダーピース10bに連結されたとき、第3ヘッダーピース10cの第2の接続部15の係止リング68が第2ヘッダーピース10bの第1の接続部13のアンダーカット部12に係合される。また、第1の接続部13には主配管26が挿入され、抜け止め保持されるように構成されている。
【0023】
以上のように構成されたヘッダーピース10a、10b、10cを成形するための製造装置について説明する。なお、管継手としての第1ヘッダーピース10a、第2ヘッダーピース10b及び第3ヘッダーピース10cの製造装置は類似していることから、代表して第1ヘッダーピース10aの製造装置について説明する。
【0024】
図8及び図10に示すように、第1ヘッダーピース10aを成形するための金型50は、固定された型としての固定型(外型)51、可動する型としての可動型(内型)52及び固定型51と可動型52との間に形成される成形用のキャビティ53により構成されている。前記可動型52は、第1の接続部13を成形する第1スライド型54、第2の接続部15を成形する第2スライド型55及び第3の接続部17を成形する第3スライド型56により構成されている。
【0025】
前記固定型51は、第1の接続部13、第2の接続部15及び第3の接続部17の全体を成形するように構成され、2分割されている。これらの固定型51と可動型52とが型締めされることにより、固定型51と可動型52との間に樹脂成形用の前記キャビティ53が形成される。固定型51と可動型52の型割り面には、溶融樹脂を射出するためのゲート57が設けられている。前記第1スライド型54の外周には、前記アンダーカット部12を成形するためのアンダーカット成形部60が円環状に突出形成されている。
【0026】
前記外ねじ部14を有する外ねじインサート部材28と、内ねじ部16を有する内ねじインサート部材35は、管継手本体11とは別体で予め成形される。前記第2スライド型55及び第3スライド型56には、それぞれ外ねじインサート部材28及び内ねじインサート部材35を支持する外ねじインサート支持部58及び内ねじインサート支持部59がそれぞれ設けられている。外ねじインサート支持部58は第2スライド型55の先端面に凹設された円環状の凹部により形成され、内ねじインサート支持部59は円柱状をなす第3スライド型56の段差部により形成されている。
【0027】
前記第3スライド型56及び内ねじインサート部材35は、ゲート57に対向するように配置されて、ゲート57から射出される溶融樹脂の圧力により、内ねじインサート部材35が内ねじインサート支持部59に押し付けられる。この内ねじインサート部材35の配置に関し、内ねじインサート部材35を第3スライド型56の段差状をなす内ねじインサート支持部59の最奥部まで嵌挿させて配置するという簡単な手順で内ねじインサート部材35を的確に配置できる。前記第2スライド型55は、固定型51の下方に配置されて外ねじインサート支持部58が上方に向かって開口され、外ねじインサート部材28が自重で外ねじインサート支持部58に位置決めされるようになっている。
【0028】
次に、前記のように構成された第1ヘッダーピース10aの製造方法を作用とともに説明する。
図8及び図9に示すように、第1ヘッダーピース10aを製造する場合には、まず第2スライド型55の外ねじインサート支持部58に外ねじインサート部材28を配置し、第3スライド型56の内ねじインサート支持部59に内ねじインサート部材35を配置する。この場合、外ねじインサート部材28及び内ねじインサート部材35は、管継手本体11とは別体で予め成形され、かつ両インサート部材28、35を形成する樹脂の融点が管継手本体11を形成する樹脂の融点よりも高い。このため、外ねじインサート部材28の外ねじ部14及び内ねじインサート部材35の内ねじ部16は、管継手本体11の成形時にねじ溝が潰れることなく形成される。
【0029】
続いて、図10に示すように、固定型51に可動型52を挿入して型締めし、固定型51と可動型52との間にキャビティ53を形成する。次いで、ゲート57からゴム状弾性体入りの溶融樹脂をキャビティ53内に射出し、常法に従ってインサート成形を行なうことにより、管継手本体11を成形することができる。
【0030】
図11に示すように、インサート成形後には、2分割された固定型51を型開きする。その後、図11の二点鎖線に示すように、第1スライド型54を管継手本体11の第1の接続部13から抜き出す。このとき、管継手本体11はゴム状弾性体入りの樹脂で形成されていることから、第1スライド型54をその軸線方向の外方へ引くことによって第1の接続部13が弾性的に拡開し、アンダーカット部12が拡径してアンダーカット部12に損傷を与えることなく第1スライド型54を無理抜きすることができる。
【0031】
同じく図11の二点鎖線に示すように、前記第2スライド型55及び第3スライド型56は、第2の接続部15及び第3の接続部17にアンダーカット部12が設けられていない。このため、第2スライド型55及び第3スライド型56を各軸線の外方向へ引くことによって第2スライド型55及び第3スライド型56を管継手本体11から抵抗なく、速やかに抜き出して離型することができる。このようにして、第1の接続部13と、第2の接続部15と、第3の接続部17とを有する第1ヘッダーピース10aを簡易な操作で製造することができる。
【0032】
以上の第1実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
(1)この第1実施形態における第1ヘッダーピース10aの製造方法では、管継手本体11をゴム状弾性体入りの樹脂で形成し、ねじ部14、16を管継手本体11とは別のインサート部材28、35で形成する。そして、第1ヘッダーピース10aの成形時には金型50内にインサート部材28、35を配置した後、キャビティ53にゴム状弾性体入りの溶融樹脂を射出して管継手本体11を成形する。次いで、固定型51を型開きし、第1の接続部13においては第1スライド型54を無理抜きし、第2の接続部15及び第3の接続部17においては第2スライド型55及び第3スライド型56を抜き出すことにより第1ヘッダーピース10aが製造される。
【0033】
このため、管継手本体11をインサート成形法の常法により速やかに成形できるとともに、インサート成形後には第1の接続部13、第2の接続部15及び第3の接続部17の離型を簡単な操作により進めることができる。
【0034】
従って、本実施形態の第1ヘッダーピース10aの製造方法によれば、生産性の低下を招くことなく、アンダーカット部12を有する第1ヘッダーピース10aを円滑に製造することができる。
【0035】
(2)前記ゴム状弾性体入りの樹脂は熱可塑性エラストマー入りのエンジニアリングプラスチックである。この場合、第1ヘッダーピース10aは機械的強度、耐熱性等の特性を発揮することができる。さらに、前記エンジニアリングプラスチックはポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂である。この場合、第1ヘッダーピース10aは特に耐熱水特性を発揮することができる。
【0036】
(3)前記インサート部材28、35を形成する樹脂は、ガラス繊維入りのポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂又は炭素繊維入りのポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂である。従って、インサート部材28、35は高い耐熱性を示し、第1ヘッダーピース10aのインサート成形を安定した状態で行うことができる。
【0037】
(4)前記インサート部材28、35には、管継手本体11の係合凹部63に係合してインサート部材28、35を抜け止めする抜け止め部34が設けられている。このため、インサート部材28、35を、周方向への回転をも規制して、管継手本体11に強固に固定することができる。
【0038】
(5)前記外ねじインサート部材28の内周面には螺旋溝64が形成されている。そのため、第1ヘッダーピース10aのインサート成形後に第2スライド型55を抜き出すとき、成形される管継手本体11の筒部11aに対する損傷を抑制することができる。
【0039】
(6)前記第3の接続部17を形成する内ねじインサート部材35はゲート57に対向して配置されるとともに、第2の接続部15を形成する外ねじインサート部材28は外ねじインサート支持部58に対して上方から下方へ挿入されて支持される。そのため、内ねじインサート部材35をゲート57から射出される溶融樹脂の圧力によって内ねじインサート支持部59に安定した状態で支持できるとともに、外ねじインサート部材28をその自重により外ねじインサート支持部58に対して簡単に支持させることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図12図15に従って説明する。なお、この第2実施形態では前記第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0041】
図12に示すように、金型50は固定された型としての固定側金型81と、可動する型としての可動側金型82とにより構成されている。第1実施形態におけるアンダーカット部12を有する第1の接続部13を形成する第1スライド型54及び第3の接続部17を形成する第3スライド型56は可動側金型82に設けられ、第2の接続部15を形成する第2スライド型55は固定側金型81に設けられている。すなわち、第1スライド型54は可動側金型82と一体形成されて可動する型としての可動側一体型83となり、可動側金型82の収容孔84内から先端部が突出するように形成されている。可動側一体型83の外周にはエジェクタスリーブ85が配置され、成形された管継手本体11を抜き出すように構成されている。
【0042】
前記第2スライド型55は固定側金型81から突出形成されて固定側一体型86となり、その外周にはインサート部材28が嵌挿される。可動する型としての第3スライド型56は可動側金型82から突出して形成され、可動側金型82の移動方向と直交方向に移動可能に構成され、その外周にはインサート部材35が嵌挿される。なお、可動側金型82の固定側金型81と対向する部位には管継手本体11の外周部を成形する外側スライドコア87が配置され、図12の紙面と直交方向にスライドできるようになっている。この外側スライドコア87に対応する固定側金型81の端部には、外側スライドコア87を支持する支持部材88が突出形成されている。
【0043】
続いて、図13に示すように、可動側金型82を固定側金型81に型締めし、その状態でキャビティ53に溶融樹脂を射出することにより管継手本体11を成形することができる。
【0044】
次いで、図14に示すように、可動側金型82を固定側金型81から離間することにより管継手本体11が固定側一体型86から抜き出されるとともに、第3スライド型56を図14の下方へスライドさせることにより管継手本体11及びインサート部材35内から第3スライド型56が抜き出される。
【0045】
その後、図15に示すように、エジェクタスリーブ85を固定側金型81方向(図15の左方向)へ押し出すことにより管継手本体11が可動側一体型83から抜き出され、アンダーカット成形部60が無理抜きされ、アンダーカット部12が成形される。
【0046】
このように、第2実施形態では、可動側一体型83が可動側金型82に一体に設けられ、固定側一体型86が固定側金型81に一体に設けられている。従って、金型50の構成を簡単にできるとともに、可動側一体型83を可動側金型82と連動させることができ、金型50の動作を簡素化することができる。加えて、第3スライド型56が可動側金型82に対してスライド可能に設けられていることから、可動側金型82が第3スライド型56のスライドを案内でき、第3スライド型56のスライドを容易かつ安定化させることができる。
【0047】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・前記管継手をチーズ継手に具体化してもよい。例えば、図16に示すように、チーズ継手72は、その第1の接続部13を前記第3ヘッダーピース10cの第1の接続部13とし、第2の接続部15を前記第1ヘッダーピース10aの第2の接続部15とし、第3の接続部17を前記第1ヘッダーピース10aの第3の接続部17としたものである。
【0048】
また、図17に示すように、チーズ継手72は、その第1の接続部13を前記第3ヘッダーピース10cの第1の接続部13とし、第2の接続部15及び第3の接続部17を前記第1ヘッダーピース10aの第3の接続部17としたものである。
【0049】
・前記管継手を直管状の継手部材に具体化してもよい。例えば、図18に示すように、直管状の継手部材73は、その第1の接続部13を前記第3ヘッダーピース10cの第1の接続部13とし、第2の接続部15を前記第1ヘッダーピース10aの第3の接続部17としたものである。
【0050】
・前記実施形態の第1ヘッダーピース10aにおいて、第2の接続部15を構成する外ねじ部14を内ねじ部16に変更し、ユニオン継手29を省略して、前記内ねじ部16に主配管30を接続できるように構成してもよい。
【0051】
・前記第1ヘッダーピース10aにおいて、第2の接続部15を、アンダーカット部12を有する接続部とし、その第2の接続部15に継手を介して主配管30を接続するように構成してもよい。
【0052】
・前記外ねじインサート部材28の一対の抜け止め部34を、1つの抜け止め部34で構成したり、各抜け止め部34を1つ又は複数の突起で構成したりしてもよい。また、内ねじインサート部材35の抜け止め部34の個数を変更したり、形状を変更したりしてもよい。
【0053】
・前記ヘッダー10を構成するヘッダーピース10a、10b、10cの数を適宜変更し、変更した複数のヘッダーピースを連結してヘッダー10を構成してもよい。
・前記第2実施形態において、エジェクタスリーブ85を省略し、可動側一体型83を可動側金型82とは別体のスライドコアとし、収容孔84内でスライド可能にした可動する型としてもよい。この場合、管継手本体11の成形後に可動側金型82を固定側金型81から離間し、さらにスライドコアを後退させることにより、アンダーカット成形部60を無理抜きしてアンダーカット部12を成形することができる。
【0054】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)アンダーカット部を有する接続部と、ねじ部を有する接続部とを少なくとも備えた管継手の製造方法であって、前記管継手を構成する管継手本体をゴム状弾性体入りの樹脂で形成し、ねじ部を管継手本体とは別のインサート部材で形成し、管継手の成形時には固定された型と可動する型との間に成形用のキャビティを有する金型内にインサート部材を配置した後、金型のゲートからキャビティにゴム状弾性体入りの溶融樹脂を射出して管継手本体を成形し、次いでアンダーカット部を有する接続部においては可動する型を無理抜きし、ねじ部を有する接続部においては可動する型を抜き出して管継手を製造し、前記ねじ部が外ねじ部であるインサート部材の内周面には螺旋溝が形成されている管継手の製造方法。
【0055】
(2)直管の一端部に形成されアンダーカット部を有する接続部と、直管の他端部に形成された接続部と、直管と直交する分岐管に形成されねじ部を有する接続部とを少なくとも備えた管継手の製造方法であって、前記管継手を構成する管継手本体をゴム状弾性体入りの樹脂で形成し、ねじ部を管継手本体とは別のインサート部材で形成し、管継手の成形時には固定された型と可動する型との間に成形用のキャビティを有する金型内にインサート部材を配置した後、金型のゲートからキャビティにゴム状弾性体入りの溶融樹脂を射出して管継手本体を成形し、次いでアンダーカット部を有する接続部においては可動する型を無理抜きし、ねじ部を有する接続部においては可動する型を抜き出して管継手を製造し、分岐管におけるねじ部を有する接続部を形成するインサート部材は金型のゲートに対向して配置されている管継手の製造方法。
【符号の説明】
【0056】
10…ヘッダー、10a、10b、10c…ヘッダーピース、11…管継手本体、12…アンダーカット部、13…第1の接続部、14…ねじ部としての外ねじ部、15…第2の接続部、16…ねじ部としての内ねじ部、17…第3の接続部、28…外ねじインサート部材、34…抜け止め部、35…内ねじインサート部材、50…金型、51…固定された型としての固定型、52…可動する型としての可動型、53…キャビティ、54…可動する型としての第1スライド型、55…可動する型としての第2スライド型、56…可動する型としての第3スライド型、57…ゲート、58…外ねじインサート支持部、64…螺旋溝、66…分岐管、81…固定された型としての固定側金型、82…可動する型としての可動側金型、83…可動する型としての可動側一体型83。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18