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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】車両用内装構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20220926BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20220926BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
B60N2/06
B62D25/20 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018081584
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019188917
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】保坂 雅裕
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-096336(JP,U)
【文献】特開2000-168626(JP,A)
【文献】実開昭62-087944(JP,U)
【文献】特開2015-089728(JP,A)
【文献】特開2016-168869(JP,A)
【文献】特開2006-298030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0158687(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00-99/00
B60N 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネル上には、車両幅方向に延びる前側クロスメンバ及び後側クロスメンバが車両前後方向に間隔を空けて設けられているとともに、シートを摺動自在に支持する一対のスライドレールが前記前側クロスメンバと前記後側クロスメンバとを架け渡すように配置され、前記フロアパネルには、車両上方から覆うカーペットが設けられ、前記フロアパネルの車両幅方向の側部には、車両前後方向に延びるサイドシルと、該サイドシルを車両上方から覆うサイドシルスカッフが設けられ、該サイドシルスカッフは、車両上方を向く上壁部と該上壁部の車両幅方向内側から車両下方へ向かって延びる側壁部とを有している車両用内装構造において、
前記フロアパネルと前記カーペットとの間には嵩上部材が配置され、該嵩上部材は、前記カーペットを間に挟んで前記サイドシルスカッフの側壁部の下端を支持する位置に設けられ、
前記サイドシルスカッフの側壁部と前記スライドレールとは並んで配置され、前記嵩上部材は、前記一対のスライドレールのうち、車両上下方向下側のロアスライドレールの車両下方であって、車両幅方向において少なくとも部分的に前記ロアスライドレールと重なる位置に、かつ、前記後側クロスメンバの車両前方に配置されていることを特徴とする車両用内装構造。
【請求項2】
前記サイドシルスカッフの上壁部は、前記サイドシルよりも車両幅方向内側に延びる幅広形状を有し、前記サイドシルスカッフの裏面側には、前記上壁部と前記側壁部とを跨ぐように配置される補強部が突出して設けられ、該補強部は、前記カーペットを間に挟んで前記嵩上部材の上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装構造。
【請求項3】
前記サイドシルスカッフの上壁部と前記ロアスライドレールの上端部とは、同じ高さ位置となるように揃えて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装構造。
【請求項4】
フロアパネル上には、車両幅方向に延びる前側クロスメンバ及び後側クロスメンバが車両前後方向に間隔を空けて設けられているとともに、シートを摺動自在に支持する一対のスライドレールが前記前側クロスメンバと前記後側クロスメンバとを架け渡すように配置され、前記フロアパネルには、車両上方から覆うカーペットが設けられ、前記フロアパネルの車両幅方向の側部には、車両前後方向に延びるサイドシルと、該サイドシルを車両上方から覆うサイドシルスカッフが設けられ、該サイドシルスカッフは、車両上方を向く上壁部と該上壁部の車両幅方向内側から車両下方へ向かって延びる側壁部とを有している車両用内装構造において、
前記フロアパネルと前記カーペットとの間には嵩上部材が配置され、該嵩上部材は、前記カーペットを間に挟んで前記サイドシルスカッフの側壁部の下端を支持する位置に設けられ、
前記サイドシルスカッフの側壁部と前記スライドレールとは並んで配置され、前記嵩上部材は、前記一対のスライドレールのうち、車両上下方向下側のロアスライドレールの車両下方であって、前記後側クロスメンバの車両前方に配置されており、
前記嵩上部材は、第1の嵩上部材として構成されているとともに、該第1の嵩上部材の車両後方側には、前記後側クロスメンバを間に置いて第2の嵩上部材が配置され、
前記フロアパネルは、前記後側クロスメンバの車両後方へ向かうほど車両上方に位置するように傾斜した形状に形成されている一方、前記第2の嵩上部材は、前記後側クロスメンバの車両後方へ向かうほど車両下方に位置するように傾斜した形状に形成されていることを特徴とする車両用内装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用内装構造の中には、後席乗員の足元スペースを確保するため、後席側クロスメンバや後席側フロアパネルを立ち上げて形成した段部により、後席側スライドレールを支持する構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。このような内装構造においては、後席側フロアパネルが前席側フロアパネルよりも高い位置に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-268560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車両用内装構造では、車体側部に設けられるドア開口部に対して前席側フロアパネルが低くなっているので、サイドシルに取付けられ、該サイドシルを上方から覆うサイドシルスカッフの側壁部が車両上下方向に長い形状を有して十分な剛性が得られないことなり、乗降時に乗員に踏まれると、上方からの荷重によって撓み易いという問題を有していた。
また、前席側フロアパネルが低い分、前席側スライドレールと前席側フロアパネルとの間に隙間が形成されることになるので、乗降時に、乗員の足のつま先が当該隙間に侵入するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、嵩上部材を設けることによって、サイドシルスカッフの側壁部の車両上下方向の長さを短く形成するとともに、サイドシルスカッフが受ける荷重を分散させ、荷重入力時におけるサイドシルスカッフの撓みを抑えることが可能な車両用内装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明の一態様は、フロアパネル上には、車両幅方向に延びる前側クロスメンバ及び後側クロスメンバが車両前後方向に間隔を空けて設けられているとともに、シートを摺動自在に支持する一対のスライドレールが前記前側クロスメンバと前記後側クロスメンバとを架け渡すように配置され、前記フロアパネルには、車両上方から覆うカーペットが設けられ、前記フロアパネルの車両幅方向の側部には、車両前後方向に延びるサイドシルと、該サイドシルを車両上方から覆うサイドシルスカッフが設けられ、該サイドシルスカッフは、車両上方を向く上壁部と該上壁部の車両幅方向内側から車両下方へ向かって延びる側壁部とを有している車両用内装構造において、前記フロアパネルと前記カーペットとの間には嵩上部材が配置され、該嵩上部材は、前記カーペットを間に挟んで前記サイドシルスカッフの側壁部の下端を支持する位置に設けられ、前記サイドシルスカッフの側壁部と前記スライドレールとは並んで配置され、前記嵩上部材は、前記一対のスライドレールのうち、車両上下方向下側のロアスライドレールの車両下方であって、車両幅方向において少なくとも部分的に前記ロアスライドレールと重なる位置に、かつ、前記後側クロスメンバの車両前方に配置されている。
本発明の他の一態様は、フロアパネル上には、車両幅方向に延びる前側クロスメンバ及び後側クロスメンバが車両前後方向に間隔を空けて設けられているとともに、シートを摺動自在に支持する一対のスライドレールが前記前側クロスメンバと前記後側クロスメンバとを架け渡すように配置され、前記フロアパネルには、車両上方から覆うカーペットが設けられ、前記フロアパネルの車両幅方向の側部には、車両前後方向に延びるサイドシルと、該サイドシルを車両上方から覆うサイドシルスカッフが設けられ、該サイドシルスカッフは、車両上方を向く上壁部と該上壁部の車両幅方向内側から車両下方へ向かって延びる側壁部とを有している車両用内装構造において、前記フロアパネルと前記カーペットとの間には嵩上部材が配置され、該嵩上部材は、前記カーペットを間に挟んで前記サイドシルスカッフの側壁部の下端を支持する位置に設けられ、前記サイドシルスカッフの側壁部と前記スライドレールとは並んで配置され、前記嵩上部材は、前記一対のスライドレールのうち、車両上下方向下側のロアスライドレールの車両下方であって、前記後側クロスメンバの車両前方に配置されており、前記嵩上部材は、第1の嵩上部材として構成されているとともに、該第1の嵩上部材の車両後方側には、前記後側クロスメンバを間に置いて第2の嵩上部材が配置され、前記フロアパネルは、前記後側クロスメンバの車両後方へ向かうほど車両上方に位置するように傾斜した形状に形成されている一方、前記第2の嵩上部材は、前記後側クロスメンバの車両後方へ向かうほど車両下方に位置するように傾斜した形状に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
上述の如く、本発明に係る車両用内装構造は、フロアパネル上には、車両幅方向に延びる前側クロスメンバ及び後側クロスメンバが車両前後方向に間隔を空けて設けられているとともに、シートを摺動自在に支持する一対のスライドレールが前記前側クロスメンバと前記後側クロスメンバとを架け渡すように配置され、前記フロアパネルには、車両上方から覆うカーペットが設けられ、前記フロアパネルの車両幅方向の側部には、車両前後方向に延びるサイドシルと、該サイドシルを車両上方から覆うサイドシルスカッフが設けられ、該サイドシルスカッフは、車両上方を向く上壁部と該上壁部の車両幅方向内側から車両下方へ向かって延びる側壁部とを有しており、前記フロアパネルと前記カーペットとの間には嵩上部材が配置され、該嵩上部材は、前記カーペットを間に挟んで前記サイドシルスカッフの側壁部の下端を支持する位置に設けられ、前記サイドシルスカッフの側壁部と前記スライドレールとは並んで配置され、前記嵩上部材は、前記一対のスライドレールのうち、車両上下方向下側のロアスライドレールの車両下方であって、前記後側クロスメンバの車両前方に配置されている。
したがって、本発明の車両用内装構造においては、嵩上部材がサイドシルスカッフの側壁部の下端を支持する位置に設けられているので、サイドシルスカッフの側壁部の車両上下方向の長さを短く形成できるとともに、サイドシルスカッフが受ける荷重を嵩上部材やフロアパネルなどに分散させることができ、荷重が掛かってもサイドシルスカッフが撓み難くなり、荷重入力時に発生するサイドシルスカッフの変形を効果的に抑えることができる。
また、本発明の車両用内装構造においては、嵩上部材が車両上下方向下側のロアスライドレールの車両下方位置まで延びているので、当該嵩上部材によりロアスライドレールとフロアパネルとの間に乗員の足が侵入するのを防ぐことができるとともに、サイドシルスカッフの上壁部を車両幅方向内側に延ばして幅広に形成でき、乗員が円滑に乗降することができる。特に、本発明のシートがウォークイン機構を有するシートである場合、本発明の車両用内装構造では、最も車両前方にスライドさせた状態にあるシートの後端と車両上下方向で重なる位置まで嵩上部材を延ばすことが可能であるので、後席乗員が乗降するスペースの狭いウォークイン機構を有するシートでは、乗員がロアシートレールの後端及びサイドシルスカッフを踏む機会が多くなっても、乗員の乗降に支障が生じることは起こらない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車両用内装構造が適用された車室内側をシートスライド前の状態で車両外側から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用内装構造が適用された車室内側をシートスライド後の状態で後席乗員側から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用内装構造が適用された車室内側をシートスライド前の状態で車両側方内側から見た一部断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用内装構造が適用された車室内側をシートスライド後の状態で車両側方内側から見た一部断面図である。
図5図2におけるA-A線断面図である。
図6図2におけるB-B線断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る車両用内装構造が適用されるサイドシルスカッフを側壁部側から見た側面図である。
図8図7におけるサイドシルスカッフを裏面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1図8は本発明の実施形態に係る車両用内装構造を示すものである。なお、図において、矢印Fr方向は車両前方を示し、矢印U方向は車両上方を示している。
【0010】
本発明の実施形態に係る車両用内装構造が適用される車両は、図1図4に示すように、車室床面を構成するフロアパネル1と、サイドボディ100の側部に設けられるドア開口部101を備えている。フロアパネル1上には、車両幅方向に延びる前側クロスメンバ2及び後側クロスメンバ3が車両前後方向に所定の間隔を空けて前後の位置に設けられているとともに、前席側のシート4を摺動自在に支持する一対のスライドレール(シートレールともいう)41,42が前側クロスメンバ2と後側クロスメンバ3とを架け渡すように配置されている。前側クロスメンバ2は、後側クロスメンバ3よりも高くなるような大きさに形成されている。
また、前側クロスメンバ2及び後側クロスメンバ3は、前後左右の端部にフランジ部2a,3aを有する下向き開口の断面略ハット型形状に形成されており、これらフランジ部2a,3aをフロアパネル1の上面などにスポット溶接等で接合することにより、フロアパネル1の上部に設けられている。そして、フロアパネル1、前側クロスメンバ2及び後側クロスメンバ3には、図2図6に示すように、車両上方からこれらパネル及びメンバの上部を覆うカーペット5が設けられている。一方、スライドレール41,42は、前後のクロスメンバ2,3に取付けられる車両上下方向下側のロアスライドレール41と、シート4におけるシートクッション4aの下面に取付けられる車両上下方向上側のアッパスライドレール42とから構成されており、それぞれ一定の長さに渡り車両前後方向に沿って延び、摺動可能に係合している。
【0011】
本実施形態のフロアパネル1の車両幅方向の側部には、図5及び図6に示すように、ドア開口部101の下側に配置され、車両前後方向に延びるサイドシル6と、該サイドシル6を車両上方から覆うサイドシルスカッフ7が設けられている。サイドシル6は、車両内側のサイドシルインナパネル61とサイドシルアウタパネル(サイドシルストレングスともいう)62とから構成されており、車両後方視で閉断面形状を有している。そのため、サイドシルインナパネル61及びサイドシルアウタパネル62は、開口側が横向きで互いに向き合うように配置した断面略ハット型形状に形成されており、対向する上部フランジ61a,62a及び下部フランジ61b,62bを重ね合わせた状態で溶接することにより、それぞれ接合されている。そして、サイドシルインナパネル61の内側側面には、フロアパネル1の上方へ折り曲げた外側端部1aが接合されている。
一方、サイドシルスカッフ7は、図5図7に示すように、車両上方を向く上壁部71と、該上壁部71の車両幅方向内側から車両下方へ向かって延びる側壁部72とを有し、これら上壁部71及び側壁部72は、一体成形されている。なお、サイドシル6の車両外側には、サイドシルアウタパネル62の上下部フランジ62a,62bに接合されるサイドボディアウタパネル10が設けられており、サイドボディアウタパネル10の上面には、上部フランジ62aとの接合部を越えて車両外側に延びるサイドシルスカッフ7の車両幅方向外側の側壁部73が配置されている。
【0012】
また、本実施形態の車両用内装構造において、フロアパネル1とカーペット5との上下間には、図3図5に示すように、断面四角形状の嵩上部材(例えば、パット材)8が配置されており、該嵩上部材8は、カーペット5を間に挟んでサイドシルスカッフ7の側壁部72の下端72aを支持する位置に設けられている。このため、カーペット5の車両幅方向外側の側部は、嵩上部材8によって車両上方に持ち上げられ、嵩上部材8の高さ相当分だけ高い位置となるように構成され、かつ、サイドシルスカッフ7の側壁部72の車両上下方向の長さLは、図7に示すように、嵩上部材8が配置されない箇所と比べて短くなるように構成されている。しかも、カーペット5の車両幅方向外側の側部は、下側に位置する一般面5aから上側に位置する嵩上部材面5bまでの箇所が緩やかな上り傾斜面5cになっており、側部全体が連続した形状を有している。
そして、サイドシルスカッフ7の側壁部72とスライドレール41,42とは、図2図4に示すように、車両幅方向に並んで配置されており、嵩上部材8は、一対のスライドレール41,42のうち、車両上下方向下側のロアスライドレール41の車両下方であって、後側クロスメンバ3の車両前方に配置されている。これに伴い、ロアスライドレール41は、嵩上部材8の高さ相当分だけ高く配置されていることになる。
【0013】
本実施形態のサイドシルスカッフ7の上壁部71は、図5及び図6に示すように、サイドシル6よりも車両幅方向内側に延びる幅広形状を有しており、サイドシル6、サイドボディアウタパネル10の一部、ワイヤハーネス11等を覆うことが可能な大きさに形成されている。
また、サイドシルスカッフ7の裏面7a側には、図5及び図8に示すように、上壁部71と車両幅方向内側の側壁部72とを跨ぐように配置される補強部74が突出して設けられており、車両前方側が開口し、かつ面で接することが可能な箱型の形状を有し、全体が車両後方視で三角形状に形成されている。この補強部74は、カーペット5を間に挟んで嵩上部材8の上に位置しており、当該補強部74が嵩上部材8に支持されるように構成されている。これによって、サイドシルスカッフ7の上壁部71及び車両幅方向内側の側壁部72に加わる荷重の伝達面積が増え、嵩上部材8などへの荷重伝達の効果が高められるようになっている。なお、サイドシルスカッフ7の後部は、図6に示すように、裏面7a側に設けたクリップ75などを後側クロスメンバ3の差込孔31に差し込むことによって、当該後側クロスメンバ3に取付けられている。
【0014】
さらに、本実施形態の車両用内装構造において、サイドシルスカッフ7の上壁部71と車両上下方向下側のロアスライドレール41の上端部41aとは、図6に示すように、同じ高さ位置となるように揃えて配置されている。すなわち、サイドシルスカッフ7の上壁部71の高さH1とロアスライドレール41の上端部41aの高さH2とは、少なくともサイドシルスカッフ7及びロアスライドレール41の後端部において、同じ高さ位置となるように設定されている(H1=H2)。これにより、乗車時などにおいて、乗員の足が、サイドシルスカッフ7の上壁部71とロアスライドレール41の上端部41aを同時に踏めるようになるため、サイドシルスカッフ7に掛かる荷重の負担を減らすとともに、ロアスライドレール41に躓くおそれを無くすような構造にしている。
なお、本実施形態の車両用内装構造では、ロアスライドレール41が車両前方側ほど車両上方に位置するように傾斜して配置され、レール全体の高さが揃っているわけではないので、図6に示すように、サイドシルスカッフ7及びロアスライドレール41の後端部における、後側クロスメンバ3の上方にて同じ高さに設定されている。これにより、サイドシルスカッフ7及びロアスライドレール41に掛かる荷重を後側クロスメンバ3で受けることができ、サイドシルスカッフ7の撓み変形をより一層低減させることができる。
【0015】
また、本実施形態の車両用内装構造において、上記嵩上部材8は、図3及び図4に示すように、第1の嵩上部材8として構成されているとともに、該第1の嵩上部材8の車両後方側には、後側クロスメンバ3を間に置いて第2の嵩上部材9が配置されている。そして、フロアパネル1は、前側クロスメンバ2の車両後方側から第1の嵩上部材8を経て後側クロスメンバ3の車両後方へ向かうほど、車両上方に位置するように上り傾斜した形状に形成されている。第1の嵩上部材8の前端8aは、シート4の車両前方へのスライド後におけるアッパスライドレール42の後端42aと一致する程度の位置に配置されている。一方、第2の嵩上部材9は、車両前後方向に延びる車両側方視で長い四角形状を有しており、後側クロスメンバ3の車両後方へ向かうほど車両下方に位置するように下り傾斜した形状に形成されている。しかも、第2の嵩上部材9は、車両前方側ほど車両上方に位置し、傾斜角度がロアスライドレール41と一致している。
これにより、フロアパネル1が車両後部側から車両中央部にかけて低くなっている構造を採用している場合でも、第2の嵩上部材9が介在していることで後側クロスメンバ3の高さまで滑らかに繋ぎ、後側シートの乗員の足が後側クロスメンバ3やロアスライドレール41の車両後方に置きやすくしている。
【0016】
このように、本発明の実施形態に係る車両用内装構造は、フロアパネル1を備え、フロアパネル1上には、車両幅方向に延びる前側クロスメンバ2及び後側クロスメンバ3が車両前後方向に間隔を空けて設けられているとともに、シート4を摺動自在に支持する一対のスライドレール41,42が前側クロスメンバ2と後側クロスメンバ3とを架け渡すように配置されている。また、フロアパネル1には、車両上方から覆うカーペット5が設けられ、フロアパネル1の車両幅方向の側部には、車両前後方向に延びるサイドシル6と、該サイドシル6を車両上方から覆うサイドシルスカッフ7が設けられている。サイドシルスカッフ7は、車両上方を向く上壁部71と該上壁部71の車両幅方向内側から車両下方へ向かって延びる側壁部72とを有している。そして、フロアパネル1とカーペット5との間には嵩上部材8が配置され、該嵩上部材8は、カーペット5を間に挟んでサイドシルスカッフ7の側壁部72の下端72aを支持する位置に設けられている。サイドシルスカッフ7の側壁部72とスライドレール41,42とは並んで配置され、嵩上部材8は、一対のスライドレール41,42のうち、車両上下方向下側のロアスライドレール41の車両下方であって、後側クロスメンバ3の車両前方に配置されている。
したがって、本実施形態の車両用内装構造においては、嵩上部材8がサイドシルスカッフ7の側壁部72の下端72aを支持する位置に設けられていることになるので、サイドシルスカッフ7の側壁部72の車両上下方向の長さLを短く形成できるとともに、サイドシルスカッフ7からの荷重を嵩上部材8の面で受けて広範囲に分散させることができる。その結果、サイドシルスカッフ7は、荷重が掛かっても撓み難い構造となり、荷重入力時に発生するサイドシルスカッフ7の変形を効果的に抑えることができる。
なお、サイドシルスカッフ7の側壁部72が車両上下方向に長い形状を有していると、剛性を上げるためのリブを設ける必要が生じ、リブの設定でリブの根元が厚くなり、ヒケなどの成形上の問題が発生する。しかも、幅の狭いリブでは、サイドシルスカッフ7からの荷重を面で支えることができないので、リブを多数配置する必要が生じ、これも成形上の問題につながってしまうことになる。
また、本実施形態の車両用内装構造においては、嵩上部材8が車両上下方向下側のロアスライドレール41の車両下方まで延びているので、当該嵩上部材8によりロアスライドレール41とフロアパネル1との間に乗員の足が侵入するのを防止できるだけではなく、サイドシルスカッフ7の上壁部71を車両幅方向内側に延ばして幅広に形成でき、乗員が円滑に乗降することができる。
【0017】
また、本実施形態の車両用内装構造において、サイドシルスカッフ7の上壁部71は、サイドシル6よりも車両幅方向内側に延びる幅広形状を有し、サイドシルスカッフ7の裏面7a側には、上壁部71と側壁部72とを跨ぐように配置される補強部74が突出して設けられ、該補強部74は、カーペット5を間に挟んで嵩上部材8の上に位置している。したがって、本実施形態の車両用内装構造によれば、サイドシルスカッフ7の上壁部71及び車両幅方向内側の側壁部72に加わる荷重の伝達面積が増えることになるので、嵩上部材8などへの荷重伝達の効果を高めることができ、サイドシルスカッフ7の撓みをより一層抑えることができる。特に、本実施形態の補強部74のように、車両前方側が開口する箱型の形状を有し、面で接するような形状であると、幅の狭いリブよりも荷重伝達の効果をより一層高めることができる。
【0018】
さらに、本実施形態の車両用内装構造において、サイドシルスカッフ7の上壁部71とロアスライドレール41の上端部41aとは、同じ高さ位置となるように揃えて配置されているので、乗車時などにおいて、乗員の足が、サイドシルスカッフ7の上壁部71とロアスライドレール41の上端部41aを同時に踏むことができる。したがって、本実施形態の車両用内装構造によれば、サイドシルスカッフ7に掛かる荷重の負担を減らせるので、サイドシルスカッフ7の撓み変形を低減させることができる。しかも、乗員の足がロアスライドレール41に躓くおそれを無くすことが可能となるので、車両への乗車性能を向上させることができる。
【0019】
そして、本実施形態の車両用内装構造において、嵩上部材8は、第1の嵩上部材8として構成されているとともに、該第1の嵩上部材8の車両後方側には、後側クロスメンバ3を間に置いて第2の嵩上部材9が配置されている。また、フロアパネル1は、後側クロスメンバ3の車両後方へ向かうほど車両上方に位置するように傾斜した形状に形成されている一方、第2の嵩上部材9は、後側クロスメンバ3の車両後方へ向かうほど車両下方に位置するように傾斜した形状に形成されている。
したがって、本実施形態の車両用内装構造によれば、フロアパネル1が車両後部側から車両中央部にかけて低くなっている構造を採用している場合でも、第2の嵩上部材9が介在していることで後側クロスメンバ3の高さまで滑らかに繋ぎ、後席(後側シート)の乗員の足を後側クロスメンバ3やロアスライドレール41の車両後方にゆったりと容易に置くことができ、車室内における良好な居住性を確保することができる。
【0020】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0021】
例えば、既述の実施の形態における前側のシート4は、ウォークイン機構を有するシートに適用可能であり、図2に示すように、降車時などにおいて、後席に着座した乗員がペダルPを踏むことにより前席側のシート4を車両前方へスライドできるように構成されていても良い。これにより、本実施形態の車両用内装構造が、乗降スペースの狭いウォークイン機構を有するシートに適用され、乗員がロアスライドレール41の後端及びサイドシルスカッフ7を踏む機会が多くなっても、後席の乗員は円滑に乗降することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 フロアパネル
2 前側クロスメンバ
2a フランジ部
3 後側クロスメンバ
3a フランジ部
4 シート
4a シートクッション
5 カーペット
6 サイドシル
7 サイドシルスカッフ
7a 裏面
41 ロアスライドレール
41a 上端部
42 アッパスライドレール
71 サイドシルスカッフの上壁部
72 サイドシルスカッフの車両幅方向内側の側壁部
72a 下端
74 補強部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8