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特許7145413プリント回路板、電子機器、および熱伝導シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】プリント回路板、電子機器、および熱伝導シート
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20220926BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220926BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220926BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20220926BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H05K9/00 U
H05K1/02 F
H05K7/20 F
H01L23/36 M
H01L23/36 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018201227
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020068336
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】大森 俊之
(72)【発明者】
【氏名】松崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】川口 康弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 政宏
(72)【発明者】
【氏名】三ツ矢 堅祐
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-192978(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164406(WO,A1)
【文献】特開2018-073912(JP,A)
【文献】特開2007-221064(JP,A)
【文献】特開2001-185893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 1/02
H05K 7/20
H01L 23/373
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側を向く実装面を有するプリント配線板と、
前記実装面に設けられた電子素子と、
前記電子素子に対して前記第1の側に配置され、前記電子素子に対して熱的に接続された放熱部材と、
前記電子素子と前記放熱部材との間に配置された熱伝導部材と、
を備え、
前記熱伝導部材は、
磁性体を含む高比透磁率部と、
前記高比透磁率部の比誘電率よりも小さい比誘電率を有する低比誘電率部と、
を有し、
前記高比透磁率部は、前記熱伝導部材が有する前記第1の側を向く第1面と前記第1の側に対して逆側の第2の側を向く第2面とのうち、少なくとも前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲み、
前記低比誘電率部は、前記実装面に垂直な所定方向に沿った平面視において、前記電子素子に対して少なくとも一部が重なっていることを特徴とするプリント回路板。
【請求項2】
前記低比誘電率部の比誘電率は、8.0以下である、請求項1に記載のプリント回路板。
【請求項3】
第1の側を向く実装面を有するプリント配線板と、
前記実装面に設けられた電子素子と、
前記電子素子に対して前記第1の側に配置され、前記電子素子に対して熱的に接続された放熱部材と、
前記電子素子と前記放熱部材との間に配置された熱伝導部材と、
を備え、
前記熱伝導部材は、
磁性体を含む高比透磁率部と、
比誘電率が8.0以下である低比誘電率部と、
を有し、
前記高比透磁率部は、前記熱伝導部材が有する前記第1の側を向く第1面と前記第1の側に対して逆側の第2の側を向く第2面とのうち、少なくとも前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲み、
前記低比誘電率部は、前記実装面に垂直な所定方向に沿った平面視において、前記電子素子に対して少なくとも一部が重なっていることを特徴とするプリント回路板。
【請求項4】
前記高比透磁率部は、前記低比誘電率部を囲む枠状であり、前記熱伝導部材の前記第1面および前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲んでいる、請求項1から3のいずれか一項に記載のプリント回路板。
【請求項5】
前記高比透磁率部は、前記所定方向において前記低比誘電率部と前記放熱部材との間に位置する部分を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のプリント回路板。
【請求項6】
前記熱伝導部材は、前記所定方向に沿った平面視において、前記電子素子よりも大きく、前記電子素子の全体と重なっている、請求項1から5のいずれか一項に記載のプリント回路板。
【請求項7】
前記熱伝導部材の前記第2面における前記低比誘電率部が設けられた領域は、前記所定方向に沿った平面視において、前記電子素子よりも大きく、前記電子素子の全体と重なっている、請求項6に記載のプリント回路板。
【請求項8】
前記熱伝導部材は、シート状である、請求項1から7のいずれか一項に記載のプリント回路板。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のプリント回路板を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
第1面と、前記第1面の逆側の第2面と、を有する熱伝導シートであって、
磁性体を含む高比透磁率部と、
前記高比透磁率部の比誘電率よりも小さい比誘電率を有する低比誘電率部と、
を備え、
前記高比透磁率部は、前記第1面と前記第2面とのうち、少なくとも前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲むことを特徴とする熱伝導シート。
【請求項11】
第1面と、前記第1面の逆側の第2面と、を有する熱伝導シートであって、
磁性体を含む高比透磁率部と、
比誘電率が8.0以下である低比誘電率部と、
を備え、
前記高比透磁率部は、前記第1面と前記第2面とのうち、少なくとも前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲むことを特徴とする熱伝導シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路板、電子機器、および熱伝導シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、プリント基板に設けられたICに対して放熱用金属板が取り付けられた電子機器ユニットが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-17921号公報
【文献】特開平7-14950号公報
【文献】特開平11-307974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器ユニット(プリント回路板)において、放熱用金属板(放熱部材)とIC(電子素子)との間に、例えば、特許文献2に示すような放熱シート等の熱伝導部材を設ける場合がある。しかし、このような熱伝導部材を設けると、ICを不要輻射源として電子機器ユニットから放出される不要輻射ノイズ(電磁ノイズ)が増大する問題があった。この問題に対して、例えば、特許文献3に示すように、シールドケースによってIC全体を囲むことで、不要輻射ノイズを遮蔽することが考えられる。しかし、この場合には、電子機器ユニットの部品点数が増加する、電子機器ユニットが大型化する等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント回路板の一つの態様は、第1の側を向く実装面を有するプリント配線板と、前記実装面に設けられた電子素子と、前記電子素子に対して前記第1の側に配置され、前記電子素子に対して熱的に接続された放熱部材と、前記電子素子と前記放熱部材との間に配置された熱伝導部材と、を備え、前記熱伝導部材は、磁性体を含む高比透磁率部と、前記高比透磁率部の比誘電率よりも小さい比誘電率を有する低比誘電率部と、を有し、前記高比透磁率部は、前記熱伝導部材が有する前記第1の側を向く第1面と前記第1の側に対して逆側の第2の側を向く第2面とのうち、少なくとも前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲み、前記低比誘電率部は、前記実装面に垂直な所定方向に沿った平面視において、前記電子素子に対して少なくとも一部が重なっていることを特徴とする。
【0006】
前記低比誘電率部の比誘電率は、8.0以下である構成としてもよい。
【0007】
本発明のプリント回路板の一つの態様は、第1の側を向く実装面を有するプリント配線板と、前記実装面に設けられた電子素子と、前記電子素子に対して前記第1の側に配置され、前記電子素子に対して熱的に接続された放熱部材と、前記電子素子と前記放熱部材との間に配置された熱伝導部材と、を備え、前記熱伝導部材は、磁性体を含む高比透磁率部と、比誘電率が8.0以下である低比誘電率部と、を有し、前記高比透磁率部は、前記熱伝導部材が有する前記第1の側を向く第1面と前記第1の側に対して逆側の第2の側を向く第2面とのうち、少なくとも前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲み、前記低比誘電率部は、前記実装面に垂直な所定方向に沿った平面視において、前記電子素子に対して少なくとも一部が重なっていることを特徴とする。
【0008】
前記高比透磁率部は、前記低比誘電率部を囲む枠状であり、前記熱伝導部材の前記第1面および前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲んでいる構成としてもよい。
【0009】
前記高比透磁率部は、前記所定方向において前記低比誘電率部と前記放熱部材との間に位置する部分を有する構成としてもよい。
【0010】
前記熱伝導部材は、前記所定方向に沿った平面視において、前記電子素子よりも大きく、前記電子素子の全体と重なっている構成としてもよい。
【0011】
前記熱伝導部材の前記第2面における前記低比誘電率部が設けられた領域は、前記所定方向に沿った平面視において、前記電子素子よりも大きく、前記電子素子の全体と重なっている構成としてもよい。
【0012】
前記熱伝導部材は、シート状である構成としてもよい。
【0013】
本発明の電子機器の一つの態様は、上記のプリント回路板を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の熱伝導シートの一つの態様は、第1面と、前記第1面の逆側の第2面と、を有する熱伝導シートであって、磁性体を含む高比透磁率部と、前記高比透磁率部の比誘電率よりも小さい比誘電率を有する低比誘電率部と、を備え、前記高比透磁率部は、前記第1面と前記第2面とのうち、少なくとも前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲むことを特徴とする。
【0015】
本発明の熱伝導シートの一つの態様は、第1面と、前記第1面の逆側の第2面と、を有する熱伝導シートであって、磁性体を含む高比透磁率部と、比誘電率が8.0以下である低比誘電率部と、を備え、前記高比透磁率部は、前記第1面と前記第2面とのうち、少なくとも前記第2面において、前記低比誘電率部を一周に亘って囲むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のプロジェクターを示す概略構成図である。
図2】第1実施形態のプリント回路板を示す断面図である。
図3】第1実施形態の熱伝導部材を下側から見た平面図である。
図4】第2実施形態のプリント回路板を示す断面図である。
図5】実施例および比較例1,2における不要輻射ノイズのうち水平偏波の測定結果を示すグラフである。
図6】実施例および比較例1,2における不要輻射ノイズのうち垂直偏波の測定結果を示すグラフである。
図7】各サンプルにおける不要輻射ノイズのうち水平偏波の測定結果を示すグラフである。
図8】各サンプルにおける不要輻射ノイズのうち垂直偏波の測定結果を示すグラフである。
図9】比較形態のプリント回路板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るプリント回路板、およびプリント回路板を備える電子機器について説明する。以下の実施形態では、電子機器としてプロジェクターを例に挙げて説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態のプロジェクター(電子機器)1を示す概略構成図である。
本実施形態のプロジェクター1は、スクリーンSCR上にカラー画像を投射する投射型画像表示装置である。図1に示すように、プロジェクター1は、光源装置2と、均一照明光学系40と、色分離光学系3と、光変調装置4Rと、光変調装置4Gと、光変調装置4Bと、合成光学系5と、投射光学装置6と、制御装置50と、を備えている。光源装置2は、照明光WLを均一照明光学系40に向けて射出する。
【0019】
均一照明光学系40は、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳光学系33と、を備えている。インテグレーター光学系31は、第1レンズアレイ31aと、第2レンズアレイ31bと、を備えている。均一照明光学系40は、光源装置2から射出された照明光WLの強度分布を、被照明領域である光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれにおいて均一化する。均一照明光学系40から射出された照明光WLは、色分離光学系3へ入射する。
【0020】
色分離光学系3は、白色の照明光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、第3反射ミラー8cと、第1リレーレンズ9aと、第2リレーレンズ9bと、を備えている。
【0021】
第1ダイクロイックミラー7aは、光源装置2からの照明光WLを赤色光LRと、その他の光(緑色光LGおよび青色光LB)とに分離する。第1ダイクロイックミラー7aは、分離された赤色光LRを透過させると共に、その他の光(緑色光LGおよび青色光LB)を反射する。一方、第2ダイクロイックミラー7bは、その他の光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。第2ダイクロイックミラー7bは、分離された緑色光LGを反射し、青色光LBを透過させる。
【0022】
第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置され、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。一方、第2反射ミラー8bおよび第3反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置され、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置4Bに向けて反射する。また、緑色光LGは、第2ダイクロイックミラー7bによって光変調装置4Gに向けて反射される。
【0023】
第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路中における第2ダイクロイックミラー7bの光射出側に配置されている。第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路長が赤色光LRの光路長および緑色光LGの光路長よりも長いことに起因した青色光LBの照明分布の違いを修正する。
【0024】
光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。
【0025】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられている。また、液晶パネルの入射側および射出側には、偏光板(図示せず)がそれぞれ配置され、特定の方向の直線偏光のみを通過させる構成となっている。
【0026】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの入射側には、それぞれフィールドレンズ10R、フィールドレンズ10G、フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10R、フィールドレンズ10G、およびフィールドレンズ10Bは、それぞれの光変調装置4R、光変調装置4G、光変調装置4Bに入射する赤色光LR、緑色光LG、青色光LBの主光線を平行化する。
【0027】
合成光学系5は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bから射出された画像光が入射することにより、赤色光LR,緑色光LG,青色光LBに対応した画像光を合成し、合成された画像光を投射光学装置6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられる。
【0028】
投射光学装置6は、複数の投射レンズから構成されている。投射光学装置6は、合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上に画像が表示される。
【0029】
次に、制御装置50について説明する。
以下の説明においては、適宜図に示すZ軸方向を上下方向(所定方向)として、各部の相対位置関係等を説明する。Z軸方向のうち正の側(+Z側)を上側(第1の側)と呼び、Z軸方向のうち負の側(-Z側)を下側(第2の側)と呼ぶ。また、上下方向と直交する方向を水平方向と呼ぶ。
なお、上下方向、水平方向、上側および下側は、単に各部の相対位置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示す配置関係等と異なっていてもよい。
【0030】
図2は、制御装置50におけるプリント回路板51を示す断面図である。図3は、制御装置50における熱伝導部材54を下側から見た平面図である。なお、図2における熱伝導部材54の断面図は、図3におけるII-II断面図である。
制御装置50は、光源装置2を含むプロジェクター1の各部を制御するメインボードである。図2に示すように、制御装置50は、プリント回路板51を備えている。プリント回路板51は、プリント配線板52と、電子素子53と、放熱部材57と、熱伝導部材(熱伝導シート)54と、を備えている。
【0031】
プリント配線板52は、板面が上下方向を向く板状である。プリント配線板52は、図示を省略するが、例えば紙フェノール、ガラス・エポキシ等の材料からなる基材の少なくとも1つの面に銅箔からなる配線パターンが設けられた構成を有する。プリント配線板52としては、片面プリント配線板、両面プリント配線板、多層プリント配線板のいずれかが用いられてもよい。また、プリント配線板52としては、可撓性を持たないリジッドプリント配線板が用いられてもよいし、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板が用いられてもよい。本実施形態においてプリント配線板52は、配線パターンが設けられた実装面52aを有する。実装面52aは、プリント配線板52の板面のうち上側を向く面である。本実施形態において実装面52aは、上下方向と直交している。すなわち、上下方向は、実装面52aに垂直な所定方向である。
【0032】
電子素子53は、プリント配線板52の実装面52aに設けられている。電子素子53は、例えば、LSI(Large Scale Integration)等のIC(Integrated Circuit)である。図示は省略するが、電子素子53は、シリコンからなる半導体チップと、半導体チップを覆うパッケージと、パッケージの下面に設けられた複数の端子と、を備えている。電子素子53は、複数の端子を介してプリント配線板52の実装面52aに設けられた配線パターンと電気的に接続されている。また、詳細は後述するが、電子素子53は、発熱源および不要輻射源となる。本実施形態において電子素子53は、例えば、略直方体状である。図3に示すように、電子素子53は、上下方向に沿った平面視において、例えば、正方形状である。
【0033】
放熱部材57は、図2に示すように、電子素子53に対して上側に配置されている。放熱部材57は、熱伝導部材54を介して電子素子53に取り付けられている。本実施形態において放熱部材57は、板面が上下方向を向く板状である。放熱部材57の板面は、例えば、上下方向と直交する。放熱部材57は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53および熱伝導部材54よりも大きく、電子素子53の全体および熱伝導部材54の全体と重なっている。
【0034】
放熱部材57は、例えば、アルミニウム、銅等の比較的熱伝導率の高い金属からなる平板で構成されている。放熱部材57は、電子素子53に対して熱的に接続されている。
なお、本明細書において「ある対象同士が熱的に接続されている」とは、ある対象同士が直接的または間接的に連結されており、ある対象同士の間で熱の移動が生じる状態であればよい。本実施形態では、放熱部材57が熱伝導部材54を介して間接的に電子素子53に連結されており、電子素子53の熱が熱伝導部材54を介して放熱部材57へと移動する。
【0035】
熱伝導部材54は、電子素子53から放熱部材57へと熱を伝達させる部材である。熱伝導部材54は、誘電体である。熱伝導部材54は、上下方向において電子素子53と放熱部材57との間に配置されている。本実施形態において熱伝導部材54は、上下方向と直交する水平方向に拡がるシート状である。すなわち、本実施形態において熱伝導部材54は、熱伝導シートである。熱伝導部材54は、シート面として、上側を向く上面(第1面)54bと、上面54bの逆側の面であり、下側を向く下面(第2面)54aと、を有する。本実施形態において熱伝導部材54の下面54aおよび熱伝導部材54の上面54bは、上下方向に垂直である。
【0036】
熱伝導部材54の下面54aは、電子素子53の上面に貼り合わされている。熱伝導部材54の上面54bは、放熱部材57の下面に貼り合わされている。熱伝導部材54と電子素子53とを貼り合わせる方法、および熱伝導部材54と放熱部材57とを貼り合わせる方法は、特に限定されない。熱伝導部材54と電子素子53とは、例えば、接着剤等によって貼り合わされている。同様に、熱伝導部材54と放熱部材57とは、例えば、接着剤等によって貼り合わされている。なお、熱伝導部材54の母材が接着性を有する物質であり、熱伝導部材54と電子素子53とは、接着剤等なしに直接貼り合わされていてもよい。また、同様に、熱伝導部材54と放熱部材57とは、接着剤等なしに直接貼り合わされていてもよい。
【0037】
熱伝導部材54は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53よりも大きく、電子素子53の全体と重なっている。熱伝導部材54は、低比誘電率部(第2部分)55と、高比透磁率部(第1部分)56と、を有している。
【0038】
低比誘電率部55は、比誘電率εが比較的小さい部分である。低比誘電率部55の比誘電率εは、高比透磁率部56の比誘電率εよりも小さい。低比誘電率部55の比誘電率εは、8.0以下である。低比誘電率部55の比誘電率εは、例えば、4.0以下程度が好ましい。これは、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズをより低減できるためである。低比誘電率部55は、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等で構成されている。低比誘電率部55は、磁性体を含んでおらず、非磁性の部分である。非磁性である低比誘電率部55の比透磁率μは、略1.0である。
【0039】
なお、本明細書における比誘電率εは、温度25℃かつ相対湿度30%の条件下で、キーサイト・テクノロジー株式会社製のE4991A RFインピーダンス/マテリアル・アナライザを用いて計測した周波数1GHzにおける値である。また、本明細書における比透磁率μは、温度25℃かつ相対湿度30%の条件下で、キーサイト・テクノロジー株式会社製のE4991A RFインピーダンス/マテリアル・アナライザを用いて計測した周波数1GHzにおける値である。
【0040】
低比誘電率部55の熱伝導率は、電子素子53から放熱部材57へと好適に熱を移動可能な程度に大きく、例えば、0.5以上、20.0以下程度である。低比誘電率部55の熱伝導率は、例えば、高比透磁率部56の熱伝導率よりも大きい。本実施形態において電子素子53の熱は、低比誘電率部55を通って放熱部材57へと伝達される。
【0041】
低比誘電率部55は、熱伝導部材54の中央部分である。本実施形態において低比誘電率部55は、熱伝導部材54を単独で見たときに、上下方向両側の面が熱伝導部材54の外部に露出している。低比誘電率部55の下面55aは、熱伝導部材54の下面54aの一部を構成している。低比誘電率部55の上面55bは、熱伝導部材54の上面54bの一部を構成している。低比誘電率部55は、図3に示すように、上下方向に沿った平面視において、例えば、正方形状である。
【0042】
低比誘電率部55は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53よりも大きく、電子素子53の全体と重なっている。本実施形態では、低比誘電率部55の下面55aおよび上面55bは、上下方向に沿った平面視において、共に電子素子53よりも大きく、電子素子53の全体と重なっている。すなわち、熱伝導部材54の下面54aにおける低比誘電率部55が設けられた領域、および熱伝導部材54の上面54bにおける低比誘電率部55が設けられた領域は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53よりも大きく、電子素子53の全体と重なっている。低比誘電率部55の外縁は、図3に示すように、上下方向に沿った平面視において、電子素子53の外縁よりも外側に離れた位置に配置されており、電子素子53の外縁を囲んでいる。図2に示すように、低比誘電率部55の下面55aは、電子素子53の上面に貼り合わされている。低比誘電率部55の上面55bは、放熱部材57の下面に貼り合わされている。
【0043】
高比透磁率部56は、磁性体を含む部分である。高比透磁率部56の比透磁率μは、1.0よりも大きい。高比透磁率部56の比透磁率μは、例えば、3.0以上、15.0以下程度である。図示は省略するが、高比透磁率部56は、母材中に複数の磁性体を含んだ構成を有する。母材としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等が用いられる。複数の磁性体のそれぞれは、例えば、針状、棒状、板状等の形状を有する小片であり、長手方向を有する。磁性体としては、例えば、酸化鉄を主成分とするフェライト等の軟磁性材料が用いられる。母材中に含まれる磁性体の量を多くする程、高比透磁率部56の比透磁率μは、大きくなる。高比透磁率部56の比誘電率εは、低比誘電率部55の比誘電率εよりも大きい。高比透磁率部56の熱伝導率は、特に限定されない。
【0044】
本実施形態において高比透磁率部56は、図2および図3に示すように、低比誘電率部55を囲む枠状であり、熱伝導部材54が有する複数の面のうち上下方向における両側の面(下面54aおよび上面54b)において、低比誘電率部55を一周に亘って囲んでいる。高比透磁率部56は、例えば、正方形枠状である。本実施形態の高比透磁率部56は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53よりも外側に離れて配置されている。低比誘電率部55は、高比透磁率部56の内側に嵌め合わされている。高比透磁率部56の内縁は、低比誘電率部55の外縁と接触して配置されている。低比誘電率部55と高比透磁率部56とは、例えば、接着剤等を用いて接合されてもよい。本実施形態では、高比透磁率部56の上下方向の寸法は、例えば、低比誘電率部55の上下方向の寸法と同じである。
【0045】
図2に示すように、高比透磁率部56の下面56aは、熱伝導部材54の下面54aの一部を構成している。高比透磁率部56の下面56aは、低比誘電率部55の下面55aと滑らかに繋がっている。本実施形態において熱伝導部材54の下面54aは、低比誘電率部55の下面55aと高比透磁率部56の下面56aとから構成されている。高比透磁率部56の下面56aは、プリント配線板52の実装面52aの上側に位置し、実装面52aと間隔を空けて対向して配置されている。
【0046】
高比透磁率部56の上面56bは、熱伝導部材54の上面54bの一部を構成している。高比透磁率部56の上面56bは、低比誘電率部55の上面55bと滑らかに繋がっている。本実施形態において熱伝導部材54の上面54bは、低比誘電率部55の上面55bと高比透磁率部56の上面56bとから構成されている。高比透磁率部56の上面56bは、放熱部材57の下面と貼り合わされている。
【0047】
以下、本実施形態のプリント回路板51の作用および効果について説明する。
図9は、比較形態のプリント回路板251を示す断面図である。
図9に示すように、比較形態のプリント回路板251は、上述した本実施形態のプリント回路板51に対して、熱伝導部材54の代わりに熱伝導部材254を備えている点が異なる。熱伝導部材254は、全体に亘って同様の性質を有する。熱伝導部材254の比誘電率εは、8.0よりも大きい。熱伝導部材254の比誘電率εは、例えば、10.0以上である。熱伝導部材254の熱伝導率は、例えば、低比誘電率部55の熱伝導率と同程度である。熱伝導部材254は、磁性体を含んでいない非磁性部材である。熱伝導部材254は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53と同様の形状および同様の大きさであり、全体が電子素子53と互いに重なり合っている。
【0048】
プリント回路板251からは、電子素子53を不要輻射源とする不要輻射ノイズ(電磁ノイズ)が放出される。不要輻射ノイズは、電磁波である。プリント回路板251から放出される不要輻射ノイズは、熱伝導部材254が設けられることにより大きくなる。この原理は、以下の通りである。
【0049】
熱伝導部材254は誘電体であるため、電子素子53から放出される不要輻射ノイズの電界によって、熱伝導部材254には誘電分極が生じる。誘電分極が生じると熱伝導部材254が図9に仮想的に示すようなコンデンサーCSとして機能し、電子素子53と放熱部材57との間に電圧が誘起される。このような現象を静電結合と呼ぶ。静電結合が生じることで、電子素子53と放熱部材57との間に変位電流が流れる。なお、以下の説明においては、不要輻射ノイズによって静電結合が生じることを、不要輻射ノイズが結合すると表現する。
【0050】
電子素子53から放出された不要輻射ノイズが放熱部材57に結合することによって、放熱部材57は共振し、不要輻射ノイズを増幅して放出するアンテナとして機能する。以上のような原理により、熱伝導部材254が設けられることで、プリント回路板251から放出される不要輻射ノイズが大きくなる。アンテナとして機能する放熱部材57から放出される不要輻射ノイズは、放熱部材57から上方に放出される不要輻射ノイズNVである。
【0051】
ここで、熱伝導部材254の比誘電率εが大きいほど、仮想的なコンデンサーCSの静電容量が大きくなり、静電結合によって誘起される電圧が大きくなる。すなわち、電子素子53から放出される不要輻射ノイズが放熱部材57に結合しやすくなる。これにより、電子素子53と放熱部材57との間に流れる変位電流が大きくなり、放熱部材57から放出される不要輻射ノイズNVがより大きくなる。したがって、熱伝導部材254の比誘電率εが大きいほど、プリント回路板251から放出される不要輻射ノイズが大きくなる。
【0052】
なお、熱伝導部材254を設けることによってプリント回路板251から放出される不要輻射ノイズが大きくなる現象自体は、従来から知られていたものの、上述した原理については、本発明者らが新たに得た知見である。
【0053】
プリント回路板251から放出される不要輻射ノイズは、上述した放熱部材57から放出される不要輻射ノイズNV以外の不要輻射ノイズも含む。具体的には、プリント回路板251から放出される不要輻射ノイズは、プリント配線板52と放熱部材57との間から上下方向と直交する水平方向に放出される不要輻射ノイズNHを含む。不要輻射ノイズNHが放出される原理は以下の通りである。
【0054】
プリント配線板52と放熱部材57との間の空気も誘電体であるため、電子素子53からの不要輻射ノイズの電界によって誘電分極し、図9に仮想的に示すコンデンサーCAとして機能する。なお、コンデンサーCAの静電容量は、コンデンサーCSの静電容量よりも小さい。空気のコンデンサーCAと熱伝導部材254のコンデンサーCSとプリント配線板52と電子素子53と放熱部材57とによって構成される回路によって、放熱部材57とプリント配線板52との間に流れる変位電流が生じる。この変位電流に起因して、誘電体共振が生じて、プリント配線板52と放熱部材57との間から水平方向に不要輻射ノイズNHが放出される。
【0055】
以上のように、プリント回路板251から放出される不要輻射ノイズは、上方に向けて放出される不要輻射ノイズNVと、水平方向に向けて放出される不要輻射ノイズNHと、を含む。
【0056】
本実施形態によれば、熱伝導部材54は、比誘電率εが高比透磁率部56よりも小さい低比誘電率部55を有している。そのため、低比誘電率部55の比誘電率εを比較的小さくしやすく、低比誘電率部55がコンデンサーCSとして機能する際に、コンデンサーCSの静電容量を小さくできる。これにより、電子素子53から放出された不要輻射ノイズが熱伝導部材54を介して放熱部材57に結合しにくくなる。したがって、電子素子53から放出される不要輻射ノイズが放熱部材57によって増幅されることを抑制でき、放熱部材57から放射される不要輻射ノイズNVを小さくできる。その結果、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズ全体を小さくできる。
【0057】
ここで、上述したように、熱伝導部材54の比誘電率εが不要輻射ノイズの増大に関係していたことは、本発明者らによって新たに得られた知見である。本実施形態のプリント回路板51は、この新たな知見に基づいて、放出される不要輻射ノイズを小さくすることを実現できるプリント回路板である。
【0058】
また、本実施形態によれば、熱伝導部材54は、磁性体を含む高比透磁率部56を有している。磁性体を含むことにより、高比透磁率部56の比透磁率μは、1.0よりも大きくなる。比透磁率μが1.0よりも大きい部材には、磁束が通りやすいため、内部に磁界が生じやすい。そのため、電子素子53から放出される不要輻射ノイズの磁界が引き寄せられて、高比透磁率部56内を不要輻射ノイズが通りやすい。不要輻射ノイズが高比透磁率部56内を通ると、高比透磁率部56内に磁束および電流が生じて熱となり、磁気損失が生じる。これにより、電子素子53から放出される不要輻射ノイズのエネルギーが低下し、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズをさらに小さくできる。このように、電子素子53から放出される不要輻射ノイズのエネルギーを低減できることで、プリント回路板51から水平方向に放出される不要輻射ノイズNHも小さくできる。
【0059】
以上により、本実施形態によれば、低比誘電率部55と高比透磁率部56とが設けられることで、熱伝導部材54によってプリント回路板51から放出される不要輻射ノイズを好適に小さくできる。そのため、放熱部材57および熱伝導部材54を設けて電子素子53の放熱性を向上させた場合であっても、シールドケース等の遮蔽部材を設けることなく、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズを抑制できる。これにより、不要輻射ノイズを抑制しつつ、プリント回路板51が大型化することを抑制できる。したがって、プリント回路板51が搭載されるプロジェクター1の信頼性を向上させつつ、プロジェクター1が大型化することを抑制できる。
【0060】
また、シールドケース等の遮蔽部材を追加で設ける必要がないため、プリント回路板51の部品点数が増加することを抑制できる。これにより、プリント回路板51を組み立てる工数およびコストを低減できる。したがって、プロジェクター1の製造コストを低減できる。また、シールドケース等の遮蔽部材によって電子素子53の放熱性が低下することも抑制できる。
【0061】
また、低比誘電率部55は、周波数が比較的低い不要輻射ノイズと放熱部材57との結合を特に抑制しやすい。一方で、低比誘電率部55は、周波数が比較的高い不要輻射ノイズについては、周波数が比較的低い不要輻射ノイズに比べて放熱部材57との結合を生じさせやすい。すなわち、低比誘電率部55によっては、周波数が比較的低い不要輻射ノイズに比べて、周波数が比較的高い不要輻射ノイズを低減しにくい。
【0062】
一方、高比透磁率部56は、特に周波数が高い不要輻射ノイズのエネルギーを損失させやすい。そのため、特に周波数が比較的高い不要輻射ノイズを低減できる。したがって、低比誘電率部55と高比透磁率部56とを組み合わせることで、比較的低い周波数の不要輻射ノイズと比較的高い周波数の不要輻射ノイズとの両方を低減することができる。
【0063】
ここで、本実施形態のプロジェクター1のような映像機器においては、プリント回路板51から、比較的低い周波数の不要輻射ノイズと比較的高い周波数の不要輻射ノイズとの両方が放出されやすい。そのため、比較的低い周波数の不要輻射ノイズと比較的高い周波数の不要輻射ノイズとの両方を低減できる効果は、プリント回路板51が映像機器に搭載される際に、より有用に得られる。
なお、比較的低い周波数とは、例えば、1GHzよりも小さい周波数である。比較的高い周波数とは、例えば、1GHz以上の周波数である。
【0064】
図2では、上述した不要輻射ノイズの抑制効果を、矢印を用いて視覚的に示している。白抜きの矢印EFは、不要輻射ノイズの電界としての挙動を示している。黒い矢印MFは、不要輻射ノイズの磁界としての挙動を示している。なお、各矢印EF,MFは、あくまで不要輻射ノイズの抑制効果を視覚的に説明するために仮想的に示しているものである。
【0065】
図2において矢印EFで示すように、低比誘電率部55は、電子素子53からの不要輻射ノイズが、放熱部材57と結合することを抑制している。なお、図2では、不要輻射ノイズの抑制効果を分かりやすく示すために、電子素子53から放熱部材57側(上側)に放出された不要輻射ノイズが低比誘電率部55によって遮られているように示しているが、実際には、低比誘電率部55が存在するために、電子素子53から放熱部材57側(上側)に放出される不要輻射ノイズ自体が低減する。
【0066】
また、電子素子53から水平方向に放出される不要輻射ノイズは、矢印EFで示すように、電界としては高比透磁率部56を避けるような挙動を示すが、矢印MFで示すように、磁界としては高比透磁率部56に引き寄せられるような挙動を示す。その結果、電子素子53から水平方向に放出される不要輻射ノイズは、高比透磁率部56に引き寄せられて、高比透磁率部56内を通るような挙動を示す。これにより、高比透磁率部56において磁気損失が生じる。
【0067】
本実施形態によれば、低比誘電率部55は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53に対して少なくとも一部が重なっている。そのため、電子素子53の少なくとも一部の直上には低比誘電率部55が位置し、低比誘電率部55と電子素子53とが連結されている。ここで、電子素子53から放熱部材57へと結合する不要輻射ノイズは、電子素子53と熱伝導部材54との連結部を通って放熱部材57へと結合する不要輻射ノイズが多い。そのため、熱伝導部材54における電子素子53と連結される部分の少なくとも一部を低比誘電率部55とすることで、低比誘電率部55によって、より好適に不要輻射ノイズが放熱部材57に結合することを抑制でき、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズをより好適に小さくできる。
【0068】
また、本実施形態によれば、高比透磁率部56は、熱伝導部材54が有する上面54bと下面54aとのうち、少なくとも熱伝導部材54の下面54aにおいて、低比誘電率部55を一周に亘って囲んでいる。そのため、図2において矢印MFで示すように、電子素子53の側面の全周から水平方向に放出される不要輻射ノイズを高比透磁率部56に引き寄せて、高比透磁率部56内に好適に通すことができる。また、高比透磁率部56内において低比誘電率部55の周囲を回転するように磁束および電流を流せるため、磁束および電流が流れる経路を長くできる。これらにより、磁気損失を好適に生じさせて不要輻射ノイズのエネルギーを好適に低減でき、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズをより好適に小さくできる。
【0069】
また、低比誘電率部55内を上下方向に通過しようとする不要輻射ノイズを、低比誘電率部55の周囲の高比透磁率部56に引き寄せることができる。これにより、不要輻射ノイズのエネルギーをより好適に低減でき、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズをより好適に小さくできる。
【0070】
また、本実施形態によれば、低比誘電率部55の比誘電率εは、8.0以下である。そのため、低比誘電率部55の比誘電率εを好適に小さくすることができる。これにより、不要輻射ノイズが放熱部材57に結合することをより好適に抑制できる。したがって、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズをより好適に小さくできる。
【0071】
また、本実施形態によれば、高比透磁率部56は、低比誘電率部55を囲む枠状であり、熱伝導部材54の上面54bおよび下面54aにおいて、低比誘電率部55を一周に亘って囲んでいる。そのため、低比誘電率部55と枠状の高比透磁率部56とを、同じ厚さで別々に製造した後に、低比誘電率部55を高比透磁率部56の内側に嵌め合わせることで、熱伝導部材54を製造することができる。そのため、熱伝導部材54の製造を容易にできる。
【0072】
また、本実施形態によれば、熱伝導部材54は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53よりも大きく、電子素子53の全体と重なっている。そのため、電子素子53から放出される不要輻射ノイズの多くを熱伝導部材54によって抑制しやすい。
【0073】
また、本実施形態によれば、熱伝導部材54の下面54aにおける低比誘電率部55が設けられた領域は、上下方向に沿った平面視において、電子素子53よりも大きく、電子素子53の全体と重なっている。これにより、電子素子53の全体において直上に低比誘電率部55が位置し、熱伝導部材54における電子素子53と連結された部分は、すべて低比誘電率部55となる。したがって、低比誘電率部55によって、より好適に不要輻射ノイズが放熱部材57に結合することを抑制でき、プリント回路板51から放出される不要輻射ノイズをより好適に小さくできる。
【0074】
また、本実施形態によれば、熱伝導部材54は、シート状の熱伝導シートである。そのため、電子素子53の形状に合わせて、熱伝導部材54を電子素子53の上面に貼り付けやすい。また、放熱部材57の形状に合わせて、熱伝導部材54を放熱部材57の下面に貼り付けやすい。これにより、電子素子53と放熱部材57とを熱伝導部材54を介して密着させることができ、電子素子53の放熱性を好適に向上できる。
【0075】
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態に対して、熱伝導部材が異なる。なお、上述した実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0076】
図4は、本実施形態のプリント回路板151を示す断面図である。
本実施形態のプリント回路板151は、図4に示すように、プリント配線板52と、電子素子53と、放熱部材57と、熱伝導部材(熱伝導シート)154と、を備えている。
【0077】
熱伝導部材154は、低比誘電率部(第2部分)55と、高比透磁率部(第1部分)156と、を有している。
高比透磁率部156の下面156aの中央部には、上側に窪む凹部156eが形成されている。図示は省略するが、凹部156eは、上下方向に沿った平面視において、正方形状である。凹部156eには、低比誘電率部55が嵌め合わされている。低比誘電率部55の外縁は、凹部156eの内縁と接触して配置されている。低比誘電率部55と高比透磁率部156とは、例えば、接着剤等により接合されていてもよい。凹部156eが形成されていることで、高比透磁率部156には、低比誘電率部55を囲む枠状の枠部156cと、上下方向において低比誘電率部55と放熱部材57との間に位置する介在部156dと、が形成されている。
【0078】
枠部156cは、第1実施形態の高比透磁率部56と同様の形状である。
介在部156dは、凹部156eの底部である。介在部156dの下面は、低比誘電率部55の上面と接触している。介在部156dの上面は、放熱部材57の下面に貼り合わされている。介在部156dは、水平方向に拡がる板状である。
【0079】
本実施形態において高比透磁率部156は、熱伝導部材154の下面(第2面)154aにおいて、低比誘電率部55を一周に亘って囲んでいる。熱伝導部材154の下面154aは、低比誘電率部55の下面55aと高比透磁率部156の下面156aとによって構成されている。熱伝導部材154の下面154aにおける低比誘電率部55と高比透磁率部156との分布は、第1実施形態の熱伝導部材54の下面54aにおける低比誘電率部55と高比透磁率部56との分布と同様である。一方、本実施形態において熱伝導部材154の上面(第1面)154bは、高比透磁率部156の上面156bのみで構成されている。本実施形態において高比透磁率部156の上下方向の寸法は、低比誘電率部55の上下方向の寸法よりも大きい。
【0080】
本実施形態において高比透磁率部156の熱伝導率は、電子素子53から放熱部材57へと好適に熱を移動可能な程度に大きく、例えば、0.5以上、20.0以下程度である。本実施形態において電子素子53の熱は、低比誘電率部55および高比透磁率部156を通って放熱部材57へと伝達される。
【0081】
高比透磁率部156のその他の構成は、第1実施形態の高比透磁率部56のその他の構成と同様である。プリント回路板151のその他の構成は、第1実施形態のプリント回路板51のその他の構成と同様である。
【0082】
本実施形態によれば、高比透磁率部156は、上下方向において低比誘電率部55と放熱部材57との間に位置する部分として介在部156dを有している。そのため、電子素子53から低比誘電率部55を上下方向に通過して放熱部材57へと結合する不要輻射ノイズが生じた場合、当該不要輻射ノイズは、介在部156dを通ることとなる。これにより、介在部156dにおける磁気損失によって、低比誘電率部55および介在部156dを通って放熱部材57に結合する不要輻射ノイズのエネルギーを低減することができる。したがって、電子素子53から放出される不要輻射ノイズのエネルギーをより小さくすることができ、プリント回路板151から放出される不要輻射ノイズをより好適に低減できる。
【0083】
なお、上述した各実施形態においては、下記の構成を採用することもできる。
低比誘電率部(第2部分)の比誘電率εは、高比透磁率部(第1部分)の比誘電率εよりも小さいか、または8.0以下であるかのいずれか一方であってもよい。すなわち、低比誘電率部の比誘電率εは、高比透磁率部の比誘電率εよりも小さければ、8.0より大きくてもよい。また、低比誘電率部の比誘電率εは、8.0以下であれば、高比透磁率部の比誘電率ε以上であってもよい。低比誘電率部の材質は、上述した比誘電率εの関係を満たし、かつ、熱伝導性を有するならば、特に限定されない。低比誘電率部は、磁性体を含んでいてもよい。低比誘電率部の比透磁率μは、特に限定されない。
【0084】
低比誘電率部は、上下方向に沿った平面視において、電子素子に対して少なくとも一部が重なっていればよい。低比誘電率部は、上下方向に沿った平面視において、電子素子に対して全体が重なっていてもよい。熱伝導部材の下面において低比誘電率部が設けられた領域は、電子素子と同じ大きさか、電子素子より小さくてもよい。
【0085】
高比透磁率部の形状は、少なくとも熱伝導部材の下面において、低比誘電率部を囲んでいるならば、特に限定されない。高比透磁率部は、上下方向に沿った平面視において、電子素子に対して少なくとも一部が重なっていてもよい。高比透磁率部の材質は、磁性体を含んでいるならば、特に限定されない。
【0086】
熱伝導部材は、低比誘電率部および高比透磁率部以外の部分を有していてもよい。熱伝導部材は、例えば、低比誘電率部と高比透磁率部との間に、低比誘電率部および高比透磁率部のいずれとも異なる性質を有する部分を有していてもよい。熱伝導部材は、上下方向に沿った平面視において、電子素子より小さくてもよいし、電子素子の一部のみと重なっていてもよい。熱伝導部材は、シート状でなくてもよい。
【0087】
電子素子は、プリント配線板の実装面に設けられる素子であれば、特に限定されない。電子素子は、例えば、FET(Field Effect Transistor)等のトランジスタ等であってもよい。放熱部材は、電子素子に熱的に接続されて、電子素子の放熱を行えるならば、特に限定されない。放熱部材は、例えば放熱用のフィンを備えたヒートシンクであってもよい。
【0088】
また、上記の第1実施形態において、透過型のプロジェクターに本発明を適用した場合の例について説明したが、本発明は、反射型のプロジェクターにも適用することも可能である。ここで、「透過型」とは、液晶パネル等を含む液晶ライトバルブが光を透過するタイプであることを意味する。「反射型」とは、液晶ライトバルブが光を反射するタイプであることを意味する。なお、光変調装置は、液晶パネル等に限られず、例えばマイクロミラーを用いた光変調装置であってもよい。
【0089】
また、上記の第1実施形態において、3つの光変調装置4R,4G,4Bを用いたプロジェクター1の例を挙げたが、本発明は、1つの光変調装置のみを用いたプロジェクター、4つ以上の光変調装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。
また、プリント回路板が搭載される電子機器は、プロジェクターに限られず、他の電子機器であってもよい。
また、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【実施例
【0090】
実施例と比較例1,2とを比べて本発明の有用性について確認した。実施例は、上述した第1実施形態と同様の熱伝導部材を備えるプリント回路板とした。実施例における低比誘電率部の材質はアクリル樹脂とし、比誘電率εは6.1とした。実施例における低比誘電率部は、磁性体を含まない非磁性の部分とした。すなわち、実施例における低比誘電率部の比透磁率μは、略1.0である。実施例における高比透磁率部は、母材としてのアクリル樹脂にフェライトが混合された構成とした。実施例における高比透磁率部の比透磁率μは、13.0とした。実施例における高比透磁率部の比誘電率εは、10.8とした。実施例の熱伝導部材において、低比誘電率部の厚さと高比透磁率部の厚さとは、互いに同じであり、3.5mmとした。なお、熱伝導部材をプリント回路板に組み込んだ状態では、熱伝導部材が放熱部材と電子素子とに押圧されて潰され、低比誘電率部の厚さと高比透磁率部の厚さとが約3.0mmとなる。
【0091】
比較例1,2は、全体に亘って一様な性質を有する熱伝導部材を備えるプリント回路板とした。比較例1,2における熱伝導部材の外形状および外形寸法は、実施例における熱伝導部材の外形状および外形寸法と同じとした。比較例1は、全体が実施例の低比誘電率部と同様の材質および物性を有する熱伝導部材とした。比較例2は、全体が実施例の高比透磁率部と同様の材質および物性を有する熱伝導部材とした。
実施例および比較例1,2共に、プリント配線板は、多層プリント配線板とし、電子素子は、LSIとした。放熱部材は、アルミニウム製の放熱板とした。
【0092】
実施例および比較例1,2のそれぞれにおいて、LSIを作動させて、800MHz、1600MHz、2400MHzのそれぞれの周波数を有する不要輻射ノイズの測定を行った。不要輻射ノイズの測定は、周波数ごとに水平偏波と垂直偏波とのそれぞれについて行った。
【0093】
不要輻射ノイズの測定は、国際無線障害特別委員会(CISPR)が定める国際規格に基づいて、電界強度測定システムが備えられた電波暗室で行った。測定結果を図5および図6に示す。図5は、不要輻射ノイズのうち水平偏波の測定結果を示すグラフである。図6は、不要輻射ノイズのうち垂直偏波の測定結果を示すグラフである。図5および図6において、横軸は、不要輻射ノイズのノイズ周波数[MHz]であり、縦軸は、不要輻射ノイズのノイズレベル[dB]である。
【0094】
図5および図6に示すように、実施例のノイズレベルは、水平偏波および垂直偏波における800MHz、1600MHz、2400MHzのいずれにおいても、比較例1,2におけるノイズレベルよりも小さくなっていることが確かめられた。
【0095】
また、800MHzでは比較例2に比べて比較例1の方がノイズレベルを小さくできているのに対して、1600MHzおよび2400MHzでは比較例1に比べて比較例2の方がノイズレベルを小さくできていることが確かめられた。これにより、1GHzよりも低い周波数の不要輻射ノイズに対しては、比誘電率εを小さくすることが不要輻射ノイズの抑制に対して有用である一方、磁性体を含ませて比透磁率μを1.0よりも大きくすることについては、不要輻射ノイズの抑制に対する寄与が比較的小さいことが確かめられた。また、1GHz以上の周波数の不要輻射ノイズに対しては、磁性体を含ませて比透磁率μを1.0よりも大きくすることが有用である一方、比誘電率εを小さくすることについては、抑制に対する寄与が比較的小さいことが確かめられた。したがって、比誘電率εを小さくすることと比透磁率μを大きくすることとは、いずれか一方だけでは、不要輻射ノイズの抑制として不十分であることが確かめられた。
以上により、低比誘電率部と高比透磁率部との両方を有する本実施例の有用性が確かめられた。
【0096】
次に、比誘電率εが異なる複数のサンプルを熱伝導部材として、上述した実施例および比較例1,2と同様の測定を行った。サンプルは、サンプルSA~SHの8つ用意した。各サンプルSA~SHは、それぞれ全体に亘って一様な性質を有する熱伝導部材とした。サンプルSA,SEの母材は、アクリル樹脂とした。サンプルSB,SC,SD,SF,SG,SHは、母材としてのアクリル樹脂にフェライトが混合された構成とした。
【0097】
サンプルSAの比誘電率εは、2.1とした。サンプルSBの比誘電率εは、4.8とした。サンプルSCの比誘電率εは、5.4とした。サンプルSDの比誘電率εは、5.9とした。サンプルSEの比誘電率εは、6.1とした。サンプルSFの比誘電率εは、6.4とした。サンプルSGの比誘電率εは、8.0とした。サンプルSHの比誘電率εは、10.8とした。サンプルSA,SEは、非磁性とし、比透磁率μは、略1.0とした。サンプルSB,SCの比透磁率μは、2.3とした。サンプルSDの比透磁率μは、2.4とした。サンプルSFの比透磁率μは、2.8とした。サンプルSGの比透磁率μは、15.0とした。サンプルSHの比透磁率μは、4.9とした。
各サンプルSA~SHが設けられるプリント回路板の熱伝導部材以外の構成は、上述した実施例および比較例1,2と同様とした。
【0098】
測定は、サンプルSA~SHごとに、800MHzの不要輻射ノイズにおける水平偏波と垂直偏波とのそれぞれについて、上述の不要輻射ノイズの測定と同様の測定環境で行った。測定結果を図7および図8に示す。図7は、不要輻射ノイズのうち水平偏波の測定結果を示すグラフである。図8は、不要輻射ノイズのうち垂直偏波の測定結果を示すグラフである。図7および図8において、横軸は、比誘電率εであり、縦軸は、不要輻射ノイズの相対ノイズレベル[dB]である。相対ノイズレベル[dB]は、サンプルSHのノイズレベルを基準とした場合の相対的なノイズレベルである。
【0099】
図7および図8に示すように、比誘電率εが8.0以下となるサンプルSA~SGでは、比誘電率εが8.0よりも大きいサンプルSHに比べて、大きくノイズレベルを低減できることが確かめられた。サンプルSA~SGにおけるノイズレベルは、サンプルSHのノイズレベルよりも3.0dB以上小さい。比誘電率εが2.1~8.0までの範囲内にあるサンプルSA~SGにおけるノイズレベルの分布範囲の幅が、略1.0dB程度であることに鑑みれば、比誘電率εが10.8から8.0となった際に3.0dB以上ノイズレベルが小さくなることは、ノイズレベル低減効果が顕著に大きいといえる。
【0100】
また、国際無線障害特別委員会(CISPR)の規格における「国際無線障害特別委員会(CISPR)の諸規格について」のうち「無線周波妨害波及びイミュニティ測定装置の技術的条件第1部-第1編:無線周波妨害波及びイミュニティの測定装置-測定用受信機-」では、放射妨害波測定に用いられるアンテナは、測定の正確さが±3dBより良いことと規定されている。そのため、3.0dB以上ノイズレベルを低減できるということは、測定誤差の許容値を超えてノイズレベルを低減できるということであり、有効なノイズレベル低減効果が得られるということである。
【0101】
以上のことから、比誘電率εを8.0以下にすることにより、ノイズ抑制効果をより好適に得られることが確かめられた。
なお、上述したように1GHzよりも低い不要輻射ノイズの抑制に対しては、比透磁率μを大きくすることは、比較的寄与が小さい。そして、上記のサンプルSA~SHにおいて測定した不要輻射ノイズの周波数は、800MHzである。そのため、上記のサンプルSA~SHの比較において、サンプルSA~SHの比透磁率μの数値範囲程度であれば、サンプルSA~SHの比透磁率μが異なることによる影響については十分に無視できる程度である。すなわち、仮にサンプルSA~SHの比誘電率εを変えずに、比透磁率μを互いに同じ値とした場合であっても、上述した結果と同様の傾向を示す結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0102】
1…プロジェクター(電子機器)、51,151…プリント回路板、52…プリント配線板、52a…実装面、53…電子素子、54,154…熱伝導部材(熱伝導シート)、54a,154a…下面(第2面)、54b,154b…上面(第1面)、55…低比誘電率部、56,156…高比透磁率部、57…放熱部材、ε…比誘電率
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9