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特許7145417水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物、及びそれから得られるフレキソ印刷用感光性樹脂原版
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物、及びそれから得られるフレキソ印刷用感光性樹脂原版
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220926BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20220926BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/037
G03F7/00 502
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019540932
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2018032375
(87)【国際公開番号】W WO2019049786
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2017170178
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】川島 渉
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 準
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-514159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/037
G03F 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)ポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体、(b)1つ以上の不飽和基を有する架橋剤、(c)光重合開始剤、及び(d)脂肪酸エステルを含有する水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物であって、(d)脂肪酸エステルが、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、又はモノベヘン酸グリセロールであること、及び感光性樹脂組成物中の(d)脂肪酸エステルの含有量が、0.2~6重量%であることを特徴とする水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
感光性樹脂組成物が、(a)ポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体を40~60重量%、(b)1つ以上の不飽和基を有する架橋剤を20~50重量%、(c)光重合開始剤を0.1~10重量%含有すること、及び(a)ポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体が、分子中に、アミド結合で構成された構造単位をブロック状に50重量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物から構成される感光性樹脂層、支持体、及びそれらを接着するための接着層を含むことを特徴とするフレキソ印刷用感光性樹脂原版。
【請求項4】
UVインキ又はUVニスを用いたフレキソ印刷に用いることを特徴とする請求項に記載のフレキソ印刷用感光性樹脂原版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レリーフへの塵、埃、紙粉等の付着を抑制し、印刷物欠損を防止した、水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物及びフレキソ印刷用感光性樹脂原版に関する。なお、本発明は、本願と同一出願人の先願であるPCT/JP2017/005672の関連出願であり、この先願の国際調査報告において指摘されたサポート性不足のために上記先願では権利範囲から除外した範囲((d)脂肪酸エステルが、2個以上のヒドロキシル基と24個又は25個の炭素原子を分子内に有する脂肪酸エステルであって、炭素数12~22の脂肪酸から選ばれる化合物の脂肪酸エステルである範囲)について、権利を取得しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキソ印刷用版材として一般的な感光性樹脂印刷版は、下記のようにして形成される。まず、原材料となる感光性樹脂に活性光線が照射され、ラジカル重合反応によってレリーフ部分の感光層のみが硬化される(露光工程)。次に、レリーフ部分以外の未硬化樹脂が、所定の洗浄液(現像液)で溶解除去され、あるいは膨潤分散されて機械的に除去される(現像工程)。当該形成方法は、硬化部分のみをレリーフとして版表面に出現させる方法である。その形成方法は、短時間で微細レリーフを形成し得ることから好ましく用いられている。
【0003】
感光性樹脂版の中でもポリアミド系感光性樹脂組成物を用いた高硬度版は、紫外線照射により塗膜を形成するインキに耐性を有するため、UVインキ、UVニスを用いた印刷用途に用いられている。しかし、フレキソ印刷に用いることが可能な低硬度の凸版印刷版では、柔軟性が原因と考えられる表面粘着の問題があり、塵、埃、紙粉等が印刷版表面に付着することが問題となっていた。
【0004】
一般に、作業時に発生した塵、埃、紙粉が印刷工程においてレリーフの版表面に付着すると、印刷不良(印刷抜け)が生じる。ここで印刷抜けとは、インクがフィルムや紙である被写体に転写されないためにインクが塗布されず、抜けてしまうことである。また、版表面に付着した紙片、紙粉を除去するために、印刷を一旦停止する必要がある。これらの問題は、作業時間の増大、生産性の低下及び生産コストの増大につながる。また、近年、印刷品質が益々高まっているため、印刷において塵、埃、紙粉に起因する問題の影響を軽減し得る感光性樹脂印刷版が求められている。
【0005】
この塵、埃、紙粉に対する影響低減について、特許文献1には、特定の安息香酸誘導体を粘着減少添加剤として含むポリウレタンプレポリマーから成る感光性樹脂組成物が提案されている。同文献には、かかる感光性樹脂組成物に対して露光現像処理を施した後、殺菌放射線を照射することにより、レリーフ表面を非粘着化させることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、洗浄(現像)工程と後露光工程とを含む製造方法で得られる多くのフレキソ印刷版の表面を非粘着化する方法が提案されている。この方法は、水素引き抜き剤(例えばベンゾフェノン)を含有する洗浄液を用いる方法である。同文献には、かかる洗浄液を用いて未硬化樹脂を洗い流した後に、水素引き抜き剤を活性化する放射線(例えばベンゾフェノンに対しては殺菌光線等)を照射することにより、フレキソ印刷版レリーフの表面を非粘着化させることが記載されている。
【0007】
これらの方法は、粘着減少添加剤を感光性樹脂組成物もしくは洗浄液に含有させ、紫外線照射により改善しようとしているが、紫外線の照射時間により効果が変化する恐れがあった。また、印刷時の紙紛付き(印刷時、インクもしくは印刷支持体もしくは環境下に存在する紙粉等がレリーフに付着し、その箇所に印刷抜けが発生する現象)に露光時間が左右されるという問題があった。
【0008】
これらの問題を解消するために、出願人は、特定の範囲の炭素数を有する長鎖脂肪酸を感光性樹脂組成物中に含有させることにより、フレキソ印刷版のレリーフ表面の粘着性を低下させる技術を提案した(特許文献3)。しかし、特許文献3の技術では、フレキソ印刷版のレリーフ表面の粘着性を十分に低下させることができるが、この感光性樹脂組成物から構成される感光性樹脂層を有するフレキソ印刷原版を長期間保存すると、感光性樹脂組成物中の長鎖脂肪酸が感光性樹脂層の表面にブリードアウトしてくる問題があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-206677号公報
【文献】特開平09-288356号公報
【文献】PCT/JP2015/074140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の従来技術の、特に特許文献3の技術の問題点を解消するために創案されたものであり、その目的は、フレキソ印刷に用いられる低硬度版でありながら、レリーフへの塵、埃、紙粉の付着の低減とUVインキ耐性だけでなく、印刷原版の長期保存性も満足させた高品質のフレキソ印刷原版用感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特許文献3の技術において、感光性樹脂組成物中に含有させる脂肪酸をエステル化してヒドロキシル基を分子内に有するように改変することにより、感光性樹脂組成物中の他の成分との親和性を高め、フレキソ印刷版のレリーフ表面の粘着性を低下させる能力を保持したままで印刷原版の長期保存時のブリードアウトを効果的に防止することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の(1)~()の構成からなる。
(1)少なくとも(a)ポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体、(b)1つ以上の不飽和基を有する架橋剤、(c)光重合開始剤、及び(d)脂肪酸エステルを含有する水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物であって、(d)脂肪酸エステルが、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、又はモノベヘン酸グリセロールであること、及び感光性樹脂組成物中の(d)脂肪酸エステルの含有量が、0.2~6重量%であることを特徴とする水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
(2)感光性樹脂組成物が、(a)ポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体を40~60重量%、(b)1つ以上の不飽和基を有する架橋剤を20~50重量%、(c)光重合開始剤を0.1~10重量%含有すること、及び(a)ポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体が、分子中に、アミド結合で構成された構造単位をブロック状に50重量%以上含有することを特徴とする(1)に記載の水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
)(1)又は(2)に記載の水現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂組成物から構成される感光性樹脂層、支持体、及びそれらを接着するための接着層を含むことを特徴とするフレキソ印刷用感光性樹脂原版。
)UVインキ又はUVニスを用いたフレキソ印刷に用いることを特徴とする()に記載のフレキソ印刷用感光性樹脂原版。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物は、分子内に水酸基を有しかつ特定の数の炭素原子を有する長鎖脂肪酸エステルを特定量含有させているので、これを使用して形成される感光性樹脂原版は、レリーフ再現性を維持しつつ、レリーフ表面の粘着性を著しく低下させることができ、結果としてレリーフに塵、埃、紙粉が付着しにくくなり、印刷物の抜けの欠点を起こしにくくすることができるだけでなく、印刷原版の長期保存性も維持できる。本発明のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物は、特にUVインキ又はUVニスを用いたフレキソ印刷原版に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物を詳述する。本発明のフレキソ印刷用感光性樹脂原版は、本発明のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物から構成される感光性樹脂層、接着層、及び支持体を含み、接着層は、支持体と感光性樹脂層の接着性を向上するためにそれらの間に設けられる。
【0015】
本発明の感光性樹脂原版に用いられる支持体は、可撓性であるが、寸法安定性に優れた材料が好ましく、例えばスチール、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属製支持体、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、またはポリカーボネートフィルムなどの熱可塑性樹脂製支持体を挙げることができる。これらの中でも、寸法安定性に優れ、充分に高い粘弾性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みは、機械的特性、形状安定化あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から50~350μm、好ましくは100~250μmが望ましい。
【0016】
本発明の感光性樹脂原版に用いられる接着層は、支持体と感光性樹脂層の間に存在して両者を結合するために設けられる。接着層は、一つの層から形成されていても複数の層から形成されていてもよい。また、接着層は、バインダー成分および顔料を含有し、さらにレベリング剤および硬化剤を含有することが好ましい。
【0017】
接着層に用いられるバインダー成分としては、例えばポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン-ポリイソプレン共重合体樹脂等を挙げることができ、これらを単独でまたは混合して使用することができる。これらのうち特に好ましいバインダー成分は、耐溶剤性の点でポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂である。
【0018】
本発明の感光性樹脂原版に用いられる感光性樹脂層は、本発明の感光性樹脂組成物から構成される。本発明の感光性樹脂組成物は、(a)ポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体、(b)1つ以上の不飽和基を有する架橋剤、(c)光重合開始剤、及び(d)ヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸エステルから構成される。感光性樹脂組成物には、(a)~(d)の成分以外にさらに他の添加剤、例えば熱重合防止剤、可塑剤、染料、顔料、香料又は酸化防止剤を含んでも良い。
【0019】
(a)ポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体としては、分子中にアミド結合で構成された構造単位をブロック状に50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する高分子化合物であることができる。例えばポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、三級窒素含有ポリアミド、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体などが挙げられ、そのなかでもアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドが好ましい。また、三級窒素原子含有ポリアミドおよびアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドを含有させる場合、有機酸を含有させると現像性が向上する。有機酸としては、酢酸、乳酸、メタクリル酸が挙げられるが、これらに限定されるものでない。
【0020】
本発明のポリアミドブロック共重合体は、アミド結合以外に、ウレア結合及び/又はウレタン結合を有していても良い。一般的にUVインキは、印刷原版に用いる感光性樹脂組成物と類似した組成成分が使用されるために感光性樹脂層のUVインキ耐性が悪いが、本発明では感光性樹脂層において分子内にアミド結合を有するポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体を用いることでUVインキへの耐性を向上させることができる。感光性樹脂組成物中の(a)成分の割合は、40~60重量%であることが好ましい。また、ポリアミドブロック共重合体は、柔軟性を付与することができる点でポリアルキレングリコールが好ましい。具体的なアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコールやそれらの共重合体が挙げられる。
【0021】
(b)1つ以上の不飽和基を有する架橋剤としては、例えばジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、フタル酸、のエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAやビスフェノールFのジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのような多価グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の付加反応物、アジピン酸のような多価カルボン酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応付加物、プロピレンジアミンのような多価アミンとグリシジル(メタ)アクリレートの付加反応物などが挙げられるが、これらに限定されるものでない。(b)成分は、単一種類の化合物だけでなく、二種以上混合しても使用することができる。感光性樹脂組成物中の(b)成分の割合は、20~50重量%であることが好ましい。
【0022】
(c)光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン、クロロベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジイソプロピルケタール、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-アリルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。感光性樹脂組成物中の(c)成分の割合は、0.1~10重量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
(d)脂肪酸エステルは、2個以上のヒドロキシル基と24個又は25個の炭素原子を分子内に有する脂肪酸エステルであって、炭素数12~22の脂肪酸から選ばれる化合物の脂肪酸エステルであり、具体的には、2個以上のヒドロキシル基を含有する多価アルコールと炭素数12~22の脂肪酸から得られる脂肪酸エステルを使用すればよい。特許文献3の技術では、脂肪酸をそのままフレキソ印刷版のレリーフ表面の粘着性低下剤として使用していたのに対して、本発明では、脂肪酸をエステル化してヒドロキシル基を分子内に有するように改変することにより、感光性樹脂組成物中の他の成分との親和性を高め、フレキソ印刷版のレリーフ表面の粘着性を低下させる能力を保持したままで印刷原版の長期保存時のブリードアウトを効果的に防止している。
【0024】
脂肪酸エステルに用いる多価アルコールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、ポリグリセリンなどが挙げられる。多価アルコールの有するヒドロキシル基の個数の上限は、特に限定されないが、一般的に10個以下である。また、脂肪酸エステルに用いる脂肪酸は、炭素数12~22の脂肪酸から選ばれる化合物であり、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸が好ましく、より好ましくは、炭素数が16~22であるパルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸である。炭素数が上記範囲より少ない場合、粘着性を低減することができず、また、炭素数が上記範囲より多い場合、粘着性を低減することは可能であるが、版の透明感が失われ、露光、現像後のレリーフの深度(スリットパターンの深度)が浅くなり、レリーフの再現性を著しく損なう。感光性樹脂組成物中の(d)成分の割合は、0.2~6重量%であり、好ましくは0.4~5重量%である。(d)成分の割合が上記範囲より少ない場合、粘着性を低減することができず、また、(d)成分の割合が上記範囲より多い場合、粘着性を低減することは可能であるが、版の透明感が失われ、露光、現像後のレリーフの深度(スリットパターンの深度)が浅くなり、レリーフの再現性を著しく損なう。なお、多価アルコール及び脂肪酸はそれぞれ、単一種類だけでなく、二種以上混合しても使用することができる。
【0025】
これらの多価アルコールと脂肪酸とから得られる脂肪酸エステルとしては、具体的には、モノベヘン酸グリセロール、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートなどが挙げられる。
【0026】
熱重合禁止剤は、感光性樹脂層の熱安定性を向上するために使用される。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、ベンゾキノン類、フェノール類、カテコール類、芳香族アミン化合物類、ビクリン酸類、フェノチアジン、α-ナフトキノン類、アンスラキノン類、ニトロ化合物類、イオウ化合物類などが挙げられる。熱重合禁止剤の使用量は、感光性樹脂組成物の好ましくは0.001~2重量%、より好ましくは0.005~1重量%である。これらの化合物は、単一種類だけでなく、二種以上混合しても使用することができる。
【0027】
本発明では、感光性樹脂組成物の柔軟性を向上させるために、可塑剤を感光性樹脂組成物に配合することが好ましい。可塑剤としては、ポリアミド樹脂と相溶性の良い化合物が好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類、N-エチルトルエンスルホン酸アミド、N-ブチルベンゼンスルホン酸アミド、N-メチルベンゼンスルホン酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、多価アルコール類は、感光性樹脂組成物の柔軟性をより高めることが可能であるので好ましく、多価アルコール類の中でも、ジエチレングリコールや1,2-ブタンジオールが特に好ましい。可塑剤の使用量は、感光性樹脂組成物の好ましくは30重量%以下である。これらの化合物は、単一種類だけでなく、二種以上混合しても使用することができる。
【0028】
感光性樹脂層の厚みは、0.1~10mmであることが好ましい。感光性樹脂層の厚みが小さいと、印刷版材として用いるのに必要なレリーフ深度が得られず、厚みが大きいと、印刷版材の重量が抑えられ、取り扱いに実用上の不備が生じるおそれがある。
【0029】
感光性樹脂版組成物は、溶融成形法の他、例えば、熱プレス、注型、或いは、溶融押出し、溶液キャストなど公知の任意の方法により感光性樹脂層に成形することができる。
【0030】
感光性樹脂原版は、シート状に成形した感光性樹脂層を、接着層を介して支持体に積層することによって作製することができる。また、シート状の感光性樹脂層を支持体上に積層した積層体にして供給する場合は、感光性樹脂層の上に保護層(カバーフィルム)がさらに積層されることが好ましい。保護層は、プラスチックフィルム、例えば125μm厚のポリエステルフィルムに粘着性のない透明で現像液に分散又は溶解する高分子化合物を1~3μmの厚みで塗布したものが用いられる。この薄い高分子の皮膜を有する保護層を感光性樹脂層の上に設けることによって、感光性樹脂層の表面粘着性が強い場合であっても次の露光操作時に行う保護層の剥離を容易に行うことができる。
【0031】
このような積層構成の感光性樹脂原版は、感光性樹脂層に透明画像部を有するネガフィルムまたはポジフィルムを密着して重ね合せ、その上方から活性光線を照射して露光が行なわれる。これにより露光部のみが不溶化ならびに硬化する。活性光線は、通常300~450nmの波長を中心とする高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、ケミカルランプなどの光源を用いることが好ましい。
【0032】
次いで、適当な溶剤、特に中性の水により非露光部分を溶解除去することによって、鮮明な画像部を有する印刷版を得る。このためには、スプレー式現像装置、ブラシ式現像装置などを用いることが好ましい。
【実施例
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物を使用する効果を以下の実施例によって示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中の部は重量部を意味する。また、表中の組成割合を示す数値も重量部を意味する。
【0034】
(高分子化合物1の作製)
ε-カプロラクタム50部、N,N’-ビス(γ-アミノプロピル)ピペラジンアジペート56部、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート6.3部および水10部を反応器に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉して徐々に加熱した。内圧が10kg/cmに達した時点から、反応器内の水を徐々に留出させて1時間で常圧に戻し、その後1.0時間常圧で反応させた。最高重合温度は220℃であった。比粘度1.5の透明淡黄色のアルコール可溶性の両末端が実質的に第1級アミノ基であり、アミド結合がブロック状に結合した数平均分子量が約3,000のオリゴマーを得た。このオリゴマー46部をメタノール200部に溶解した後に、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量:1000)1000部とヘキサメチレンジイソシアネート369部を反応させて得られた実質的に両末端にイソシアネート基を有する有機ジイソシアネート化合物9部を撹拌下徐々に添加した。両者の反応は、65℃、約15分で完了した。この溶液をテフロン(登録商標)コートしたシャーレに取り、メタノールを蒸発除去した後、減圧乾燥して、ポリアミドブロック共重合体(高分子化合物1)を得た。このポリアミドブロック共重合体は、比粘度が2.0であり、アミド結合からなる構造単位のブロック成分を82重量%含有し、アミド結合以外にウレア結合及びウレタン結合を含有する高分子化合物であった。
【0035】
(高分子化合物2の作製)
ε-カプロラクタム50部、N,N’-ビス(γ-アミノプロピル)ピペラジンアジペート56部、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート6.3部および水10部を反応器に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉して徐々に加熱した。内圧が10kg/cmに達した時点から、反応器内の水を徐々に留出させて1時間で常圧に戻し、その後1.0時間常圧で反応させた。最高重合温度は220℃であった。比粘度1.5の透明淡黄色のアルコール可溶性の両末端が実質的に第1級アミノ基であり、アミド結合がブロック状に結合した数平均分子量が約3,000のオリゴマーを得た。このオリゴマー46部をメタノール200部に溶解した後に、ポリエチレングリコール(重量平均分子量:400)400部とヘキサメチレンジイソシアネート369部を反応させて得られた実質的に両末端にイソシアネート基を有する有機ジイソシアネート化合物5部を撹拌下徐々に添加した。両者の反応は、65℃、約15分で完了した。この溶液をテフロン(登録商標)コートしたシャーレに取り、メタノールを蒸発除去した後、減圧乾燥して、ポリアミドブロック共重合体(高分子化合物2)を得た。このポリアミドブロック共重合体は、比粘度が2.1であり、アミド結合からなる構造単位のブロック成分を90重量%含有し、アミド結合以外にウレア結合及びウレタン結合を含有する高分子化合物であった。
【0036】
(高分子化合物3の作製)
ε-カプロラクタム55部、N,N’-ビス(γ-アミノプロピル)ピペラジンアジペート40部、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンアジペート7.5部および水100部を反応器に入れ、充分な窒素置換を行った後に密閉して徐々に加熱した。内圧が10kg/cmに達した時点から、反応器内の水を徐々に留出させて1時間で常圧に戻し、その後1.0時間常圧で反応させ、ポリアミド(高分子化合物3)を得た。このポリアミドの比粘度は2.4であり、アミド結合のみからなる高分子化合物であった。
【0037】
(支持体の作製)
紫外線吸収剤としてジヒドロチオ-p-トルイジン0.5部をジメチルアミノアセトアミド3.6部に溶解させて、ポリエステル樹脂溶液として“バイロン30SS”(東洋紡(株)製品、固形分濃度30%、分子量20000~25000)100部、触媒として“U-CAT SA102”(サンアプロ(株)製品、DBU-オクチル酸塩組成物)0.2部をジオキサン0.7部に溶解して調合した。次に、多官能イソシアネートとして“コロネートL“(日本ポリウレタン工業(株)製品)10.2部を酢酸エチル1.4部で溶解させて調合し、接着剤組成物溶液を得た。この溶液を188μm厚みの透明ポリエステルフィルム支持体に均一に塗布し、120℃熱風乾燥機で1分間乾燥して塗膜20μmの透明な接着層を有する支持体を得た。
【0038】
(カバーフィルムの作製)
125μmのポリエステルフィルム上に厚み2μmのポリビニルアルコール(AH-26、日本合成化学(株)製)の被膜をコートし、カバーフィルムを作製した。
【0039】
実施例1
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、モノベヘン酸グリセロール2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。
【0040】
(感光性樹脂版の作製)
上記の支持体の接着層に接して上記の感光性樹脂組成物を流延し、上記のカバーフィルムの被膜側を感光性樹脂組成物に接するようにして、ラミネーター全厚みが1390μm、感光性樹脂層の厚みが932μmのシート状積層体の感光性樹脂版を作製した。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0041】
実施例2
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0042】
実施例3
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノオレエート2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0043】
実施例4
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9.0部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、モノベヘン酸グリセロール1部、ソルビタンモノオレエート1部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例5
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート0.3部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物29.7部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0045】
実施例6
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート0.6部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物29.4部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0046】
実施例7
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート1部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物29部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0047】
実施例8
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド7部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート5部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物27部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0048】
実施例9
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物2の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0049】
実施例10
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物3の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0050】
実施例11
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の50部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート5部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてグリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物30部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0051】
実施例12
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の50部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてジエチレングリコール9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート4部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてグリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物31部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0052】
実施例13
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の50部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤として1,2-ブタンジオール9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート6部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてグリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物29部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド11部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0054】
比較例2
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ステアリン酸3部、乳酸4部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0055】
比較例3
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物2の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、エキセパール MY‐M(花王株式会社製:ミリスチン酸ミリスチル)3部、乳酸4部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0056】
比較例4
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、モノリグノセリン酸グリセロール2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0057】
比較例5
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、モノカプリン酸グリセロール2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0058】
比較例6
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド6部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、ソルビタンモノステアレート8部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物25部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0059】
比較例7
(感光性樹脂版組成物の作製)
水100部、トルエン10部に対して、NBRラテックス(日本ゼオン製:Nipol LX531B)を固形分が55部になるよう添加し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9.0部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、ソルビタンモノステアレート2部、乳酸5部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、ニーダーを用いて、混練りと水分の除去を行い、固形の感光性樹脂組成物を得た。
【0060】
参考例1
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、モノステアリン酸グリセロール2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0061】
参考例2
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、モノパルミチン酸グリセロール2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0062】
参考例3
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、モノラウリン酸グリセロール2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0063】
参考例4
(感光性樹脂版組成物の作製)
上記の高分子化合物1の55部をメタノール100部に65℃で加熱溶解し、可塑剤としてN-エチルトルエンスルホン酸アミド9部、1,4-ナフトキノン0.001部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部を添加して30分撹拌溶解させた。その後、モノミリスチン酸グリセロール2部、乳酸5部、水18部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1部、光重合性不飽和化合物としてプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物28部を添加して30分撹拌溶解させた。次いで、徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃となるまで濃縮した。この段階で流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物を得た。(感光性樹脂版の作製)は、実施例1と同様に行った。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0064】
(感光性樹脂版の作製)
上記の支持体の接着層に接して上記の感光性樹脂組成物を配置し、上記のカバーフィルムの被膜側を感光性樹脂組成物に接するようにして、全厚みが1390μm、感光性樹脂層の厚みが932μmのシート状積層体になるよう100℃に加熱したヒートプレスにより感光性樹脂版を作製した。感光性樹脂組成物の詳細と評価結果を表1に示す。
【0065】
(現像性評価)
露光していない版において、ブラシ式ウォッシャー(120μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW-A2-PD型)で水道水を現像液として使用し、30℃での現像時間を指標に現像性を評価した。
評価結果は以下の基準で表示した。
○:3分以内に現像できたもの
△:3分超5分以内に現像できたもの
×:7分以内に現像できなかったもの
××:水道水で現像できなかったもの
【0066】
(レリーフ画像再現性評価)
生版を7日間以上25℃の環境下で保管した後に、125μmのポリエステルフィルムを剥離して検査ネガフィルムを真空密着させ、活性光線(光源Philips10R、365nmにおける照度9mW/cm)を用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離からステップガイドが16段を示す露光時間で照射した。
検査ネガフィルムの画像は
網点 150線 2%~95%
独立点 直径200μm、300μmの点
独立細線 40μm、50μmの線
レリーフ深度 スリット幅300μmの線
ステップガイド 感度測定用グレイスケールネガフィルム
があるものを使用した。
【0067】
次にブラシ式ウォッシャー(120μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW-A2-PD型)で水道水を現像液として使用し、30℃で現像してレリーフ画像を得た。なお、上述の現像性評価において水道水で現像できなかったものは、粉石けん(自然丸の粉石けん)を用いてpH11の石鹸水を現像液として使用し、40℃で現像してレリーフ画像を得た。このようにしてレリーフ画像を得た後、更に70℃で10分間、温風乾燥し、同一の化学線にて2分間後露光して得られたレリーフを評価した。評価結果は、レリーフの上記の部分の画像が欠け、よれがなく再現された網点、独立点、独立細線で評価した。
評価結果は以下の基準で表示した。
○:画像が欠け、よれがなく網点、独立点、独立細線が再現され、かつスリット幅300μmのスリット深度が50μm以上再現できたもの
×:画像が欠け、よれがなく網点、独立点、独立細線が再現されず、かつスリット幅300μmのスリット深度が50μm以下で再現したもの
【0068】
(球体転がり評価)
生版を7日間以上保管した後に、125μmのポリエステルフィルムを剥離して150×100mmのベタ画像(150×100mmの全面露光可能な画像)があるネガフィルムを真空密着させ、活性光線(光源Philips10R、365nmにおける照度9mW/cm)を用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離からステップガイドが16段を示す露光時間で照射した。次にブラシ式ウォッシャー(120μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW-A2-PD型)で水道水を現像液として使用し、30℃で現像してレリーフ画像を得た。また、上記現像評価で×になったものは感光性樹脂組成物の作製に使用したメタノールを現像液として使用し、120μmφナイロンブラシを用いて20℃で現像を行った。その後、70℃で10分間、温風乾燥した後に同一の活性光線にて2分間後露光して得られた印刷用レリーフを作製した。更に、上記現像評価で××になったものは、感光性樹脂組成物の作製に使用したトルエンを現像液として使用し、120μmφナイロンブラシを用いて20℃で現像を行った。その後、70℃で10分間、温風乾燥した後に同一の活性光線にて2分間後露光して得られた印刷用レリーフを作製した。
【0069】
作製したレリーフの接着層フィルム面を鉄板に両面テープで貼り付け、傾斜角度が5°になるようにレリーフを傾け設置した。その後、直径11mm、重さ5.5gの鋼鉄製の球体をレリーフ上部の表面に置き、120mm転がった時間を計測して評価した。
評価結果は以下の基準で表示した。
○:3秒以内に転がったもの
△:3秒超10秒以内に転がったもの
×:転がるのに10秒以上かかったもの
【0070】
(印刷性評価)
生版を7日間以上保管した後に、125μmのポリエステルフィルムを剥離して150×100mmのベタ画像(150×100mmの全面露光可能な画像)があるネガフィルムを真空密着させ、活性光線(光源Philips10R、365nmにおける照度9mW/cm)を用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離からステップガイドが16段を示す露光時間で照射した。次にブラシ式ウォッシャー(120μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW-A2-PD型)で水道水を現像液として使用し、30℃で現像してレリーフ画像を得た。また、上記現像評価で×になったものは感光性樹脂組成物の作製に使用したメタノールを現像液として使用し、120μmφナイロンブラシを用いて20℃で現像を行った。その後、70℃で10分間、温風乾燥した後に同一の活性光線にて2分間後露光して得られた印刷用レリーフを作製した。
【0071】
ベタ印刷抜け評価は、フレキソ印刷機(株式会社エム・シーケー製:FPR302)によりインクとしてBestcure((株)T&K TOKA製)、印刷紙として雷鳥コート(中越パルプ社製)を用いて実施した。印刷条件は、アニロックスは800線のアニロックスロール、クッションシートはSA3120LL18(ROGERS CORPORATION製)を用いて、ベタインク濃度が1.6absになるように印圧(レリーフを紙に押し込んだ距離)を調整し、印刷速度40m/分とし、1000ショット印刷した時点の印刷物の印刷抜けの数を評価した。
評価結果は以下の基準で表示した。
○:抜けの数が5個未満
△:抜けの数が5個以上10個未満
×:抜けの数が10個以上
【0072】
(保存安定性評価)
生版を25℃の環境下で7日間保管したサンプルAと、生版を55℃の環境下で90日間保管した後、25℃の環境下で7日間保管したサンプルBを用意し、保存性安定性の評価を行った。
まず、サンプルBについて、125μmのポリエステルフィルムを剥離した際の表層のブリードアウトの有無を確認した。
評価結果は以下の基準で表示した。
○:ブリードアウトしていなかったもの
×:ブリードアウトしていたもの
【0073】
更に、接着性能を確認するため、各々の保管サンプルについて、レリーフ画像再現性評価と同様の条件でレリーフを作製した。作製後、溶剤(メチルエチルケトン)に6時間浸漬させ、レリーフ画像に剥がれが生じたかを確認した。なお、レリーフ画像再現性が悪かった場合には、評価ができなかったために評価不能とした。
評価結果は以下の基準で表示した。
○:AとBともにレリーフ画像に剥がれが確認されなかったもの
×:Aではレリーフ画像の剥がれは確認されなかったが、Bではレリーフ画像の剥がれが確認されたもの
××:AとBともにレリーフ再現性評価で×評価であったもの、もしくはAとBともにレリーフ画像の剥がれが確認されたもの
【0074】
(レリーフ硬度評価)
上記の感光性樹脂組成物を、厚み125μmの2枚のポリエステルフィルムで挟むように配置し、全厚みが1250μm、感光性樹脂層の厚みが1000μmのシート状積層体になるように100℃に加熱したヒートプレスにより感光性樹脂シートを作製した。その後、活性光線(光源Philips10R、365nmにおける照度9mW/cm)を用いて、感光性樹脂シートの表面より高さ5cmの距離から、ステップガイドが16段を示す露光時間で各々のポリエステルフィルム面を照射した。その後、ポリエステルフィルムを剥がし、光硬化させた感光性樹脂層を3cm四方のサンプル片に切り取り、これらのサンプル片を6枚重ねにし、硬度測定用サンプルを作製した。西独ツビック社製、ショアー式デュロメーター(ショアーAタイプ)を用いて、室温下(25℃)でショアーA硬度を測定した。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から明らかなように、本発明の範囲内である実施例1~13はいずれも、版性能(現像性、レリーフ画像再現性)、粘着性評価(球体転がり評価、印刷性評価)、保存安定性評価(ブリードアウトの有無、粘着性能)のいずれにも優れている。これに対して、(d)成分の脂肪酸エステルを含まない比較例1は、粘着性評価(球体転がり評価、印刷性評価)に劣る。(d)成分の脂肪酸エステルの代わりに特許文献3と同様に脂肪酸を含む比較例2は、保存安定性評価(ブリードアウトの有無、接着性能)に劣る。(d)成分の脂肪酸エステルの代わりに、分子内に水酸基を有さずかつ炭素数が多すぎる脂肪酸エステルを含む比較例3は、保存安定性評価(ブリードアウトの有無、接着性能)に劣る。(d)成分の脂肪酸エステルの炭素数が多すぎる比較例4は、レリーフ画像再現性及び保存安定性評価(ブリードアウトの有無、接着性能)に劣る。(d)成分の脂肪酸エステルの炭素数が少なすぎる比較例5は、粘着性評価(球体転がり評価、印刷性評価)に劣る。(d)成分の脂肪酸エステルの含有率が高すぎる比較例6は、レリーフ画像再現性及び接着性能に劣る。(a)成分のポリアミド及び/又はポリアミドブロック共重合体の代わりにラテックスを含む比較例7は、現像性、粘着性評価(球体転がり評価、印刷性評価)、接着性能に劣る。また、レリーフ硬度の点から見ると、可塑剤としてジエチレングリコール又は1,2-ブタンジオールを使用した実施例12,13は、これらの可塑剤以外の可塑剤を使用した実施例1~11と比べてショアーA硬度が低く、柔軟性に優れている。なお、参考例1~4は、本願と同一出願人の先願であるPCT/JP2017/005672の明細書の実施例2~5にそれぞれ相当する。参考例1~4は、(d)脂肪酸エステルが、2個以上のヒドロキシル基と21,19,15又は17個の炭素原子を分子内に有する脂肪酸エステルであって、炭素数18,16,12又は14の脂肪酸から選ばれる化合物の脂肪酸エステルである場合にそれぞれ相当する。参考例1~4も、実施例1~11と同様に、版性能(現像性、レリーフ画像再現性)、粘着性評価(球体転がり評価、印刷性評価)、保存安定性評価(ブリードアウトの有無、粘着性能)のいずれにも優れている。本発明は、上記先願の国際調査報告において指摘されたサポート性不足のために上記先願では権利範囲から除外した範囲((d)脂肪酸エステルが、2個以上のヒドロキシル基と24個又は25個の炭素原子を分子内に有する脂肪酸エステルであって、炭素数12~22の脂肪酸から選ばれる化合物の脂肪酸エステルである範囲)について、権利を取得しようとするものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、長期保存安定性のある樹脂版でありながら、表面の粘着性を低くしたレリーフを作製することができ、さらに印刷時の欠点を低減することが可能となり、印刷品位を向上させることも非常に容易である。従って、本発明は、産業界に大きく寄与することが期待される。