(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】金属化フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/20 20060101AFI20220926BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20220926BHJP
C23C 14/22 20060101ALI20220926BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20220926BHJP
H05K 3/14 20060101ALI20220926BHJP
H05K 3/16 20060101ALI20220926BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C23C14/20 A
C23C14/14 G
C23C14/22 C
H05K1/09 C
H05K3/14 A
H05K3/16
H05K3/38 B
H05K3/38 C
(21)【出願番号】P 2018507755
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2018004601
(87)【国際公開番号】W WO2018179904
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2017062341
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391057421
【氏名又は名称】東レKPフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】藤 信男
(72)【発明者】
【氏名】都地 輝明
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-283099(JP,A)
【文献】特開2004-006668(JP,A)
【文献】特許第4646580(JP,B2)
【文献】特開2006-049892(JP,A)
【文献】特開2007-173818(JP,A)
【文献】特開2010-163654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/20
C23C 14/14
C23C 14/22
H05K 1/09
H05K 3/14
H05K 3/16
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線形成に必要な電解めっきを行うためのフッ素樹脂フィルムの片面または両面に金属膜を有する金属化フィルムであって、
前記金属膜はフッ素樹脂フィルムと接している側から下地金属膜、銅膜2の2層からなり、
下地金属膜は1nm以上20nm以下の膜厚であり、
下地金属膜が、ニッケル、チタン、ニッケルまたはチタンを含む合金のいずれかであり、
銅膜2は0.1μm以上2.0μm以下の膜厚の柱状結晶であり、金属膜を成膜した24時間後の硫酸200g/Lの10分浸漬で金属膜が剥離せず、
銅膜2にめっき処理をして銅厚みを10μmとした後の密着強度が0.4N/mm以上である、
金属化フィルム。
【請求項2】
配線形成に必要な電解めっきを行うためのフッ素樹脂フィルムの片面または両面に金属膜を有する金属化フィルムであって、
前記金属膜はフッ素樹脂フィルムと接している側から下地金属膜、銅膜2の2層からなり、
下地金属膜は1nm以上20nm以下の膜厚であり、
下地金属膜が、ニッケル、チタン、ニッケルまたはチタンを含む合金のいずれかであり、
銅膜2は0.1μm以上2.0μm以下の膜厚の柱状結晶であり、金属膜を成膜した24時間後の硫酸200g/Lの10分浸漬で金属膜が剥離せず、
銅膜2にめっき処理をして銅厚みを10μmとした後の密着強度が0.4N/mm以上であり、
銅膜2の上に電解銅めっきを施す、金属化フィルム。
【請求項3】
該銅膜2は表面粗さRaが0.01μm以上0.10μm以下である請求項1
または2に記載の金属化フィルム。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の金属化フィルムの製造方法であって、
フッ素樹脂フィルム表面にプラズマ処理し、スパッタリング法にて該下地金属膜を形成し、スパッタリング法でなく真空蒸着法にて該銅膜2を形成する金属化フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれかに記載の金属化フィルムを用いるフッ素樹脂回路基板の製造方法であって、金属化フィルムの該銅膜2上に電解めっきを用いて銅膜3を形成して配線回路形成することを特徴とするフッ素樹脂回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波ディジタル信号を伝送するために適した信号配線を有する配線基板用途等に好適に使用される金属化フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではインターネットの高速化等を実現するために携帯通信機器は大容量の信号処理が必要となってきている。したがって、このような大容量の信号を処理するため高速信号に対応できるプリント配線板が求められている。高速信号は電気信号を高周波化しているため、これらの電子機器に使用されるプリント配線板には、高周波領域で用いた際の伝送損失を抑制できることが要求されている。電気信号の周波数が1GHz以上の高速化になると、電流が導体の表面にだけ流れる表皮効果の影響が顕著になり、表面の凹凸で電流伝送経路が変化することにより伝送損失が増大する。よって、高周波信号処理用のプリント配線板に使用される配線は、表面粗さが小さいことが望まれる。
【0003】
一方、プリント配線板用基板の絶縁基材として、フッ素樹脂を主成分とするベースフィルムが知られている。フッ素樹脂は、低誘電率、低誘電正接であることから、高周波信号伝送時の伝送損失が小さく、フッ素樹脂を主成分とするベースフィルムは、高周波信号処理用のプリント配線板の絶縁基材に適している。
【0004】
しかし、フッ素樹脂は、他の部材との反応性が乏しいため、他の部材との間の密着力(剥離強度)が低いといった問題がある。よって、フッ素樹脂をプリント配線板用基板のベースフィルムに適用する場合、粗化処理液等で表面が粗化された銅箔にベースフィルムを積層させることにより、ベースフィルムと銅箔との間の密着性(以下、単に「密着性」ともいう)を確保している(特許文献1)。
【0005】
一方、平滑なフッ素樹脂フィルム表面にスパッタリングにより薄い金属層を形成して密着を確保する方法がある(特許文献2)。この場合、形成された金属膜厚は10~200nmと薄く、スパッタリングにより形成された薄い金属膜上に電解銅めっきにて金属膜を形成して厚くする。このとき、プリント配線板の配線パターンを形成する方法としては、サブトラクティブ法とセミアディティブ法が代表的である。サブトラクティブ法は薄い金属膜上、全面に電解めっきにて金属膜を厚くし、不要な銅層部分を取り除いて回路を形成する方法であり、配線として残したい部分にインクや塗料を塗布して覆い、金属腐食性の薬品で銅箔をエッチングして必要な回路を形成する方法である。このとき、電解めっきの給電部としての薄い金属膜は銅膜厚で0.1μm程度必要であり、スパッタリング法にて形成する。一方、セミアディティブ法は絶縁層基板に回路パターンを後から付け加える方法であり、樹脂基板表面全体に薄い銅膜を形成後、パターンを形成しない部分にレジストを形成し、レジストのない部分に電解めっきを施し、めっき後にレジスト剥離し、全面にソフトエッチングを行い、配線間の薄い銅膜を除去してパターンを形成する方法である。セミアディティブ法で電解めっきの給電部としての薄い金属膜は銅膜厚で0.1~2.0μm程度必要であり、スパッタリング法のみでの膜形成では生産性が悪い。そのため、一部ではスパッタリングで薄い金属膜を形成後、その表面全面に1.5μm~2.0μm厚の電解銅めっきを形成し、これを薄い銅膜としてセミアディティブ法で配線形成を行っている。
【0006】
いずれのパターン形成にしても高周波領域では配線長が短いことが求められ、電子部品等が搭載するプリント基板の小型化、部品実装密度を向上させ狭小領域に配置されるため、ファインピッチ回路を形成することが求められてきた。このファインピッチ化実現には、配線部分のエッチングバラツキの抑制やエッチングの配線ヤセの抑制が必須となる。そのための配線間金属除去性向上目的に表面粗さの平滑化がより求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-6668号公報
【文献】特許第4646580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
平滑なフッ素樹脂フィルム表面にスパッタリングにて密着させる技術(特許文献2)はあるものの、配線形成時の密着力安定性および高速信号配線に実採用できないなどで実際の配線基板への採用が進んでいない。大きな理由の一つとしてスパッタリングによるフッ素樹脂へのダメージおよびスパッタリングにより形成された金属膜と遊離したフッ素によるフッ化物の生成があげられる。
【0009】
配線基板の配線形成の電解銅めっき給電のためにはスパッタリングにより銅膜の場合およそ0.1μm厚の金属膜が必要となる。そのため、スパッタリング時に発生するプラズマに必要以上にフッ素樹脂表面が露出され、ダメージを受けることになる。また、この時に発生する遊離フッ素をスパッタリングにより形成した金属膜中に取り込むことになる。ダメージを受けたフッ素樹脂表面は少しのテンションでクラックが発生し、配線断線の原因となりうる。特にフッ素樹脂フィルムの場合、ロール加工で張力をかけるだけで、フッ素樹脂フィルムにクラックが発生する。また、スパッタリングにより形成した金属膜が電損損失の低い銅の場合、膜中に取り込まれた遊離フッ素と経時によりフッ化銅を形成する。フッ化銅は水溶性であり、水に溶けるとフッ化水素酸を生成して、金属を腐食させる。フッ化銅が形成後は配線形成のウエット工程で腐食が進み、スパッタリングで形成した金属膜部で配線剥離が発生してしまう。
【0010】
そこで本発明は、物理蒸着法を用いて平滑なフッ素樹脂上に平滑な薄膜銅膜を形成し、かつ、物理蒸着法の種類を適宜選択することによって、フッ素樹脂と銅膜の間で密着強度を確保し、配線形成できる金属化フィルムを作製することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、スパッタリングによる金属膜の厚みを最小限にコントロールし、真空蒸着法を組み合わせることで、電解めっきを可能とし、密着強度を安定した配線形成が可能な金属化フィルムを得るに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、フッ素樹脂フィルムの片面または両面に銅膜を有する金属化フィルムであって、前記銅膜はフッ素樹脂フィルムと接している側から銅膜1、銅膜2の2層からなり、銅膜1は10nm以上40nm以下の膜厚の柱状結晶であり、銅膜2は0.1μm以上2.0μm以下の膜厚の柱状結晶であることを特徴とする金属化フィルムに関する。
【0013】
また、フッ素樹脂フィルムの片面または両面に金属膜を有する金属化フィルムであって、前記金属膜はフッ素樹脂フィルムと接している側から下地金属膜、銅膜2の2層からなり、下地金属膜は1nm以上20nm以下の膜厚であり、銅膜2は0.1μm以上2.0μm以下の膜厚の柱状結晶であって、金属膜を成膜した24時間後の硫酸200g/Lの10分浸漬で金属膜が剥離しない金属化フィルムに関する。
【0014】
好ましい態様は該銅膜2は表面粗さRaが0.01μm以上0.10μm以下である金属化フィルムに関する。
【0015】
好ましい形態は下地金属膜が ニッケル、チタン、ニッケルまたはチタンを含む合金のいずれかである金属化フィルムに関する。
【0016】
好ましい態様は金属化フィルムの製造方法であって、フッ素樹脂フィルム表面にプラズマ処理し、スパッタリング法にて該銅膜1を形成し、真空蒸着法にて該銅膜2を形成する金属化フィルムの製造方法に関する。
【0017】
好ましい態様は金属化フィルムの製造方法であって、フッ素樹脂フィルム表面にプラズマ処理し、スパッタリング法にて該下地金属膜を形成し、真空蒸着法にて該銅膜2を形成するこ金属化フィルムの製造方法に関する。
【0018】
好ましい態様はフッ素樹脂回路基板の製造方法であって、金属化フィルムの該銅膜2上に電解めっきを用いて銅膜3を形成して配線回路形成するフッ素樹脂回路基板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明ではフッ素樹脂フィルムにスパッタリングによる銅金属膜の厚みを最小限にコントロールし、真空蒸着法による銅膜を組み合わせた金属化フィルムは、経時劣化することなく電解めっき工程の安定通過性を有し、平滑で導電損失の少ない高速信号伝送が可能な回路基板形成が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について以下詳細に説明する。
【0021】
本発明の金属化フィルムは、フッ素樹脂フィルムの片面または両面に銅膜が形成されているものである。
【0022】
本発明における前記銅膜はフッ素樹脂フィルムと接している側から銅膜1、銅膜2の2層からなり、銅膜1は、かかるフッ素樹脂フィルムの上にスパッタリング法で形成されることが好ましい。また、銅膜1を形成する前にフッ素樹脂表面にプラズマ処理することが好ましい。フッ素樹脂フィルムの表面には安定的にフッ素原子が存在し、金属との結合を阻害する。そこで、スパッタリング法やプラズマ処理によりフッ素樹脂フィルム表面のフッ素を乖離させ、代わりに官能基を生成し、この官能基の極性や反応性により、金属層との間の密着性を改善させる。ただし、スパッタリング法やプラズマ処理を行う際、フッ素原子を乖離させるエネルギーをフッ素樹脂表面に与え続けると、フッ素樹脂表面はダメージを受けるので、プラズマ処理およびスパッタリング法による銅膜1形成も、フッ素樹脂ダメージを与えず、かつフッ素乖離量を最小限に抑えるために最小限に抑える必要がある。
【0023】
本発明におけるプラズマ処理とは、高圧印加電極と対向電極の間に直流または交流の高電圧を印加して得られる放電に、被処理物であるフッ素樹脂フィルムを曝してフッ素樹脂フィルムの表面を改質することである。放電する雰囲気の圧力は、5Pa以上1,000Pa以下が好ましく、10Pa以上100Pa以下がより好ましい。5Pa未満では真空排気装置が大型化し、1,000Paより大きい場合は、放電が開始しづらくなる。
【0024】
本発明において、プラズマ処理する雰囲気は、Ar、N2、He、Ne、CO2、CO、空気、水蒸気、H2、NH3、CnH2n+2(ただしn=1~4の整数)で表される炭化水素などの各種ガスが単独または混合して使用できるが、雰囲気中に含まれる酸素濃度は500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。酸素は、放電によって生成したラジカル等の活性種を失活させる性質があるため、500ppmより濃度が高い場合は、処理効果が小さくなったり、効果が全くなくなったりする場合がある。
【0025】
高圧印加電極の形状は任意のものを用いることができるが、例えば、フィルムを搬送しながら連続的に処理することができる点で棒状のものが好ましい。対向電極は、フィルムを密着させて処理できるものであれば特に限定されないが、フィルム搬送を支持できるドラム状電極が好ましい。ドラム状電極の場合は、例えば前記棒状高圧印加電極の直径の2倍以上の直径を持つようにすることが好ましい。高圧印加電極と、対向電極は同数である必要はなく、対向電極1個に対して高圧印加電極を2個以上にすると、省スペースで処理効率を高めることができ好ましい。電極間の距離は、ガスの圧力条件、処理強度に応じて適切に設定すればよく、例えば0.05~10cmの範囲である。
【0026】
処理強度は、処理電力密度で10W・min/m2以上2,000W・min/m2以下であることが好ましく、50W・min/m2以上1,000W・min/m2以下であることがより好ましい。ここで処理電力密度とは、放電に投入した電力と時間の積を放電面積で割った値であり、長尺フィルムの処理の場合は投入電力を放電部分の幅とフィルムの処理速度で割った値である。処理電力密度が10W・min/m2未満の場合は、十分なエネルギーを与えられずに処理効果が得られない場合があり、2,000W・min/m2より大きい場合は、フィルムがダメージを受けて損傷する場合がある。
【0027】
本発明における銅膜1の厚みは10nm以上40nm以下であることが好ましく、更に10nm以上20nm以下であることが更に好ましい。厚みが10nm未満であると十分な密着力が得られないことがある。一方で、厚みが40nmを超えるとフッ素樹脂表面にダメージを与え、フィルムとしての柔軟性を低下させ、フッ素樹脂表面にクラックが発生する問題が発生する。このクラックは樹脂表面を伝搬し、配線形成後の断線の原因になりうる。このクラックは銅膜1形成後、銅膜2形成前に発生する。銅膜が厚くなると、銅膜の強度があり、クラックは発生しない。スパッタリング開始から銅膜が厚くなるまでに、熱等の影響でフィルム収縮が発生した際に、フィルム樹脂表面で脆い層が生成しクラックが発生すると考えられる。また、フッ素樹脂表面から乖離したフッ素を多く膜中に取り込むため、銅膜内に耐酸性が弱いフッ化銅を形成すると推測される。回路形成のウエットプロセス時にフッ化銅からフッ化水素酸が生成され、銅膜1の腐食の原因となる。フッ化銅は、成膜直後の銅膜では生成しておらず、経時により金属膜中に取り込まれたフッ素と銅が反応して形成される。成膜直後でフッ素が銅膜中に取り込まれると、成膜後24時間以上の酸浸漬で銅膜とフッ素樹脂界面付近が溶解し、銅膜が剥離する。回路基板形成時には硫酸濃度200g/Lくらいの電解銅めっき液に10分以上浸漬させる必要があり、硫酸濃度200g/Lの10分以上の浸漬の耐酸性が必須である。スパッタリング法の出力が強く処理時間が長いほど、樹脂のダメージと乖離フッ素の銅膜1中への取り込み量は大きくなるため、銅膜1の厚みは薄い方が好ましく、20nm以下であることが更に好ましい。
【0028】
一方、フッ素樹脂フィルムの中には、スパッタリング法により銅膜1を形成するときに、より多くのフッ素を乖離するものがある。この場合、銅膜1を薄くするだけでは不十分であり、硫酸濃度200g/Lの耐酸性を確保するためにも銅膜1の代わりに下地金属膜を設けることが好ましい。下地金属膜としてはフッ素に対して耐腐食性があるものが好ましく、ニッケル、チタン、ニッケルまたはチタンを含む合金が挙げられる。ニッケルを含むステンレス合金もフッ素に対して耐食性が強い。これらの金属はフッ素に対して安定した不動態層を形成することで、耐腐食性に対して優れており、ニッケルは特に優れる。しかし、一方でこれらの金属は高速信号の伝送を考慮したときに、伝送損失が銅と比較すると大きい。高速信号で配線の表層に電気信号が偏る表皮効果を考えると、配線の表層部のあたる樹脂と金属層の界面にニッケル、チタン、ニッケルまたはチタンを含む合金の金属層は無いことが好ましく、フッ素乖離が多いフッ素樹脂に限り、最小の厚さで適応することが好ましい。このとき、下地金属膜は1nm以上20nm以下の膜厚であることが好ましい。下地金属膜厚みが1nm未満の場合は、十分な密着力が得られないことがある。また、下地金属膜が20nm超の場合は、高速伝送時に伝送損失が大きくなってしまい、高速信号が減衰し、高周波ディジタル信号を伝送する回路基板用材料として使用できなくなる。
【0029】
本発明における銅膜2は0.1μm以上2.0μm以下の膜厚で真空蒸着法にて形成されていることが好ましい。更に銅膜2は0.1μm以上0.5μm以下の膜厚で真空蒸着にて形成されていることが好ましい。銅膜2は回路基板作製時の電解銅めっきの給電層としての役割がある。しかし、膜厚が0.1μm未満では抵抗が高く、電解めっきの前処理時の膜消失や膜厚バラツキ、電解めっき不析出部発生の原因となる。一方、配線形状が微細化してくると、ファインピッチに有利なセミアディティブ法が採用され、エッチングによる配線幅の減少が電解めっきの給電層の2倍以上となる。高速信号のインピーダンス整合のために配線幅制御はエッチングバラツキを減らすことであり、設計上、銅膜2は薄い方が好ましい。給電層が2.0μmより大きいと配線幅のエッチングによる配線幅減少は4.0μmより大きいことになり、それに伴うエッチングバラツキはインピーダンス整合の障害となる。配線のラインスペースのピッチが100μm以下であれば、銅膜2は2.0μm以下、配線のラインスペースのピッチが50μmピッチ以下であるならば、銅膜は0.5μm以下であることが好ましい。
【0030】
銅膜2はフッ素樹脂にダメージを与えにくい真空蒸着法で形成することが好ましい。本発明における真空蒸着法には誘導加熱蒸着法、抵抗加熱蒸着法、レーザービーム蒸着法、電子ビーム蒸着法などがある。どの蒸着法を用いても構わないが高い成膜速度を有する観点から電子ビーム蒸着法が好適に用いられる。真空蒸着法はスパッタリング法と異なりフッ素樹脂のフッ素を乖離することはないので、熱以外でフッ素樹脂へダメージを与えることはなく、フッ素を銅膜2に取り込むことはない。下地金属層の上に真空蒸着法で銅膜2を形成すると、銅膜中にフッ素を取り込むことがなくなるため、フッ化銅が生成しなくなり、成膜後24時間以降の耐酸性が向上する。フッ素が取り込まれないため、24時間以上経過してもフッ化銅が生成されず、硫酸濃度200g/Lで10分以上の浸漬をしても、下地金属膜と銅膜2からなる金属膜は剥離しない。一方、銅膜2をスパッタリング法で形成した場合、下地金属膜上であっても、フッ素樹脂へのダメージによりフッ素が乖離し、下地金属膜を透過して銅膜2に取り込まれ、経時変化によりフッ化銅が生成され、耐酸性が低下してしまう。このとき成膜後24時間以降の硫酸濃度200g/Lでの10分の浸漬で銅膜2が剥離してしまう。
【0031】
蒸着中は熱ダメージを与えないためにフッ素樹脂フィルムを冷却しながら蒸着を行う。フッ素樹脂フィルムが十分冷却されフィルム表面の温度が低く保持できていれば、スパッタリング法で形成された銅膜1と真空蒸着法で形成された銅膜2はともに柱状結晶となる。
【0032】
スパッタリング法で形成された金属膜および真空蒸着法で形成された金属膜の結晶構造は成膜温度に依存されることが知られている。一般的に金属膜の融点Tm、成膜温度Tdとしたとき、Td<0.7Tmのとき、成膜される金属膜は柱状結晶となる。銅の融点は1083℃なので、成膜温度が0.7Tmである758℃より十分小さいと銅膜は柱状結晶の構造をとる。銅膜の成膜温度はフッ素樹脂フィルム上の温度とほぼ同じであると考えられるため、銅膜が柱状結晶であることで、フッ素樹脂フィルム上の温度が十分低く維持でき、熱ダメージを少なくできたことが確認できる。結晶構造については、金属膜の断面積をEBSD(Electron Backscattered Diffraction) 法を用いることで観測することが可能である。尚、銅膜の成膜時にフッ素樹脂フィルムが熱により大きな収縮や変形しない場合は、十分冷却されており、結晶構造は柱状結晶の構造となる。
【0033】
本発明では真空蒸着法によってロールトゥロールでフッ素樹脂フィルム上に銅膜を形成することが好ましく例示される。その場合、フィルムは蒸着時に熱に曝される。フィルムは裏面に接している冷却ロールにより冷却されるが、このときフィルムの耐熱温度が低かったり、フィルムの熱収縮が大きかったりすると、フィルムの変形に伴って冷却ロールから浮いてしまい、冷却が十分にされず溶融により穴が空いてしまったりする。よって耐熱温度が高く、また、熱収縮が小さいフィルムが好ましい。電子ビーム法によって銅膜を形成するときの蒸着時のフィルム上の温度は100~120℃程度であることが想定される。このため耐熱温度が120℃以上あり、120℃での熱収縮率がフィルムの長手方向(MD方向ともいう)、幅方向(TD方向ともいう)のいずれも2.0%以下であることが好ましい。フィルムの熱収縮率が2.0%を超えると張力変更やロールの冷却によってフッ素樹脂フィルムの変形を制御することが難しく、上記銅層の厚みを形成しようとするとフッ素樹脂フィルムがロールから離れてフィルムの温度が上昇し溶融して穴が空いてしまうおそれがある。より好ましくは熱収縮率が1.8%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。フッ素樹脂フィルムの熱収縮率は所定の温度で30分間処理した前後の寸法変化率より求めることが出来る。
【0034】
本発明で好適に用いられるフッ素樹脂フィルムとは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。これらの樹脂の中でも、高度の耐熱性フィルムが得られる点で、ETFE、PFA、FEPが好ましい。これらのフッ素樹脂フィルムは単独で用いても構わないし、フッ素樹脂以外のフィルムを複合されたものを用いても構わない。またフィルム表面に樹脂や粘着剤等をコーティングしたものを用いても構わないし、離型層を有したものを用いても構わない。また、5~50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PETと略すことがある)に離型層をキャリアとしてフッ素樹脂フィルムの蒸着しない面に貼り合せて使用しても構わない。
【0035】
またかかるフッ素樹脂フィルムの厚みは4μm以上75μm以下であることが好ましい。フィルムの厚みが4μm未満であると蒸着中に生じる応力によってフィルムが変形したり破れたりしてしまう可能性がある。また75μmを超えるとフィルムを張力で制御できなくなり巻きズレ等をおこしてしまう可能性があり、また一度の蒸着で投入できる量が減ってしまい生産性を悪くしてしまう。より好ましくは6μm以上75μm以下である。
【0036】
また本発明の金属化フィルムは、銅膜の表面粗さRaが0.01μm以上0.10μm以下であることが好ましい。表面が粗くなると回路基板の配線形成を行ったときに、高速信号の表皮効果により伝送損失が大きくなり好ましくない。より好ましくは表面粗さRaが0.01μm以上0.08μm以下、さらに好ましくは表面粗さRaが0.01μm以上0.06μm以下である。
【0037】
また本発明の金属化フィルムは回路材料用途、タッチパネルなどに用いることができる。
【0038】
なお、本発明は、上記に説明した各構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0040】
(金属化フィルムを用いた配線形成の実施形態1)
本発明の金属化フィルムの銅膜2上にめっきレジストを形成した。めっきレジストとしては東京応化(株)の“PMER P-LA900PM”を使用し、レジスト厚20μmでL/S=10/10μmの配線パターンのめっきレジストを形成した。電解Cuめっき液は、硫酸銅五水和塩50g/L、硫酸200g/L、塩素50ppm、メルテックス(株)の添加剤“カパーグリーム”ST-901A 2ml/L、“カパーグリーム”ST-901B 20ml/Lの液とした。めっき条件は噴流方式、電流密度1.0A/dm2で銅膜3の厚みを10μm厚にした。電解めっき後はめっきレジストをアルカリ性の剥離液で除去した後、過酸化水素―硫酸系のエッチング液を用いて配線間にある給電目的の銅膜1および銅膜2を除去して配線形成した。
【0041】
尚、下地金属膜としてニッケルやチタンを含む金属膜を形成した金属化フィルムを使用した場合、下地金属膜が過酸化水素―硫酸系のエッチング液で除去しにくいため、銅膜2をエッチング除去後に、メック(株)の“メックリムーバー”を使用して下地金属膜を除去した。
【0042】
配線形成の実施評価についてはこの実施形態1で評価し、配線形成できたものを○、配線形成できなかったものを×とした。
【0043】
(金属化フィルムを用いた配線形成の実施形態2)
配線形成の実施形態1と同じ電解めっき液を用い、めっき条件は噴流方式、電流密度1.0A/dm2で、フッ素樹脂フィルムの金属化フィルムの銅膜2表面全面に15μm厚の銅膜3を形成した。
【0044】
次に前記銅膜3上にエッチングレジストを形成した。めっきレジストとしては東京応化(株)の“PMER P-LA900PM”を使用し、レジスト厚20μmでL/S=50/50μmの配線パターンのエッチングレジストを形成した。めっきレジスト形成後、塩化第二鉄系のエッチング液を用いて、銅膜1および銅膜2、銅膜3をシャワー方式でエッチングした。エッチング後はエッチングレジストをアルカリ性の剥離液で除去し配線を形成した。
【0045】
(表面粗さの測定)
表面粗さRaはJIS B 0601-1994に定義される算術平均粗さのことであり、粗さ曲線からその平均線の方向に基準粗さ(l)だけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、X軸と直行する方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)であらわしたときに、次の式によって求められる値である。
【0046】
【0047】
フィルムおよび離型フィルム付銅箔をレーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-8500)を用いて表面観察を行いJIS B0601-1994に準拠して行った。解析は株式会社キーエンス製の解析アプリケーションソフトVK-H1Wを用い、カットオフ値は0.25μmとした。該ソフトにおいて、100μmの長さを指定して表面粗さRaを求めた。測定はサンプルのある一方向とその垂直な方向で測定して値の大きな方を表面粗さRaとした。
【0048】
(銅層の厚み測定)
フッ素樹脂フィルムへの銅膜2の厚みは蛍光X線膜厚計(エスエスアイ・ナノテクノロジー製、SFT9400)にて測定した。
【0049】
(スパッタ金属層の厚み)
透明PETフィルムに成膜したスパッタ金属層の透過率を透過率計で測定し、得られた値からランバート・ベールの法則
【0050】
【0051】
から膜厚を算出した。ここでI0は薄膜通過前の光量、Iは薄膜通過後の光量、αは吸光係数、Zは膜厚、kは消衰係数、λは波長である。I/I0を透過率として波長555nmのときの消衰係数を銅は2.5765、ニッケルは3.2588の値を採用し、スパッタ金属層の膜厚とした。
【0052】
(樹脂との密着強度)
フッ素樹脂フィルムで作製した金属化フィルムの銅膜2にめっき処理をして銅厚みを10μmまでの銅厚みとした。その後サンプルを10mm幅に切り取り両面テープで銅膜側をアクリル板に固定した。その後テンシロン試験機でフッ素樹脂を50mm/minの速度で引き剥がし、密着強度を測定した。密着強度は0.5N/mm以上を密着強度が良好な範囲で◎、0.4N/mm以上0.5N/mm未満の範囲を密着強度が十分な範囲で○とした。
【0053】
(耐酸性評価)
めっき工程通過性評価として以下の耐酸性の確認試験を実施した。作製後24時間以上時間が経過した金属化フィルムで評価を行う。めっき工程通過性で耐酸性低下させるフッ化銅は、成膜直後の銅膜では生成しておらず、経時により金属膜中に取り込まれたフッ素と銅が反応して形成されるため、成膜後24時間以上放置した金属化フィルムを用いる。フッ素樹脂フィルムで作製した金属化フィルムの銅膜2を上面にして、上からカッターナイフを用いて2mmピッチで直線状に切り目を6本入れ、直線状に切り目に90クロスさせるように、同様に2mmピッチで直線状に切り目を6本入れサイの目状にクロスカッターする。このとき、金属膜(下地金属膜、銅膜1、銅膜2)を完全に切断する。クロスカッターした金属膜を硫酸200g/Lに10分浸漬し、金属膜が剥離しなかったものを耐酸性があり、めっき工程通過性があると評価し、○とした。浸漬中に金属膜が剥離したものはめっき工程通過性不可とし、×とした。
【0054】
(クラック確認)
作製した金属化フィルムの銅膜2を光学顕微鏡(50倍)で確認した。銅膜2に光学顕微鏡の視野全体にまたがるようなクラックが発生したものを×、クラック発生しなかったものを○とした。
【0055】
(実施例1)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理条件はAr/CH4/CO2混合ガス雰囲気下で圧力50Pa、処理強度は500W・min/m2とした。次に、プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で銅膜1を10nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に銅膜1の上に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度4.0m/minで0.5μmの厚さに銅膜2を真空蒸着し、金属化フィルムを得た。
【0056】
この金属化フィルムの密着強度は0.40N/mmで評価は○、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.05μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0057】
(実施例2)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、銅膜1を20nm厚形成した以外は全て実施例1と同じ条件で金属化フィルムを得た。
【0058】
この金属化フィルムの密着強度は0.51N/mmで評価は◎、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.05μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0059】
(実施例3)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、銅膜1を40nm厚形成した以外は全て実施例1と同じ条件で金属化フィルムを得た。
【0060】
この金属化フィルムの密着強度は0.52N/mmで評価は◎、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.05μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0061】
(実施例4)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で銅膜1を20nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に銅膜1の上に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度20m/minで0.1μmの厚さに銅膜2を真空蒸着し、金属化フィルムを得た。
【0062】
この金属化フィルムの密着強度は0.50N/mmで評価は◎、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.05μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0063】
(実施例5)
厚さ50μmのPFAフィルム(ダイキン工業(株)製、“ネオフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、プラズマ処理したPFAフィルムに実施例2と同じ条件で銅膜1、銅膜2を形成することで金属化フィルムを得た。
【0064】
この金属化フィルムの密着強度は0.55N/mmで評価は◎、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.08μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0065】
(実施例6)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で銅膜1を20nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に銅膜1の上に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1m/minで2.0μmの厚さに銅膜2を真空蒸着し、金属化フィルムを得た。
【0066】
この金属化フィルムの密着強度は0.51N/mmで評価は◎、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.05μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1を形成した場合、エッチングにより配線幅が4~3μmと細くなる部分が発生したが、かろうじて配線形成は可能であった。配線形成実施形態2での配線形成は、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0067】
(実施例7)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、実施例1と同じ条件で銅膜1および銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0068】
この金属化フィルムは電解銅めっき時に銅1が溶解し、銅膜2が剥離され、密着強度は測定不可であった。クラックは発生しないが、耐酸性は×、表面粗さRaは0.03μmであった。電解銅めっき時に銅膜剥離が発生するため、この金属化フィルムを用いて配線形成は不可であった。
【0069】
(実施例8)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてニッケル膜を1nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に実施例2と同じ条件でニッケル膜上に銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0070】
この金属化フィルムの密着強度は0.40N/mmで評価は○、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.03μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0071】
(実施例9)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてニッケル膜を20nm厚形成した以外は実施例8と同じ条件でニッケル膜上に銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0072】
この金属化フィルムの密着強度は0.41N/mmで評価は○、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.03μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0073】
(実施例10)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてニッケル膜を0.5nm厚形成した以外は実施例8と同じ条件でニッケル膜上に銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0074】
この金属化フィルムは電解銅めっき時に銅が溶解し、銅膜2が剥離され、密着強度は測定不可であった。クラックは発生しないが、耐酸性は×、表面粗さRaは0.03μmであった。電解銅めっき時に銅膜剥離が発生するため、この金属化フィルムを用いて配線形成は不可であった。
【0075】
(実施例11)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてニッケル膜を25nm厚形成した以外は実施例8と同じ条件でニッケル膜上に銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0076】
この金属化フィルムの密着強度は0.41N/mmで評価は○、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.03μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0077】
ただし、この配線にかんしてはニッケル膜20nm厚よりも高く、高速信号伝送の伝道損失が大きくなり、高周波用途にはより不向きな傾向にある。
【0078】
(実施例12)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で銅膜1を20nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に銅膜1の上に引き続き同じ条件でスパッタリングにて0.1μmの厚さに銅膜2を成膜し、金属化フィルムを得た。
【0079】
この金属化フィルムは電解銅めっき時に銅1および銅膜2が溶解し、電解銅めっき膜が剥離され、密着強度は測定不可であった。クラックは発生しないが、耐酸性は×、表面粗さRaは0.05μmであった。電解銅めっき時に銅膜剥離が発生するため、この金属化フィルムを用いて配線形成は不可であった。
【0080】
(実施例13)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてチタン膜を1nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に実施例2と同じ条件でチタン膜上に銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0081】
この金属化フィルムの密着強度は0.40N/mmで評価は○、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.03μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0082】
(実施例14)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてチタン膜を20nm厚形成した以外は実施例13と同じ条件でチタン膜上に銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0083】
この金属化フィルムの密着強度は0.40N/mmで評価は○、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.03μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0084】
(実施例15)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてチタン膜を0.5nm厚形成した以外は実施例13と同じ条件でチタン膜上に銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0085】
この金属化フィルムは電解銅めっき時に銅が溶解し、銅膜2が剥離され、密着強度は測定不可であった。クラックは発生しないが、耐酸性は×、表面粗さRaは0.03μmであった。電解銅めっき時に銅膜剥離が発生するため、この金属化フィルムを用いて配線形成は不可であった。
【0086】
(実施例16)
厚さ50μmのETFEフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてチタン膜を25nm厚形成した以外は実施例13と同じ条件でチタン膜上に銅膜2を形成して金属化フィルムを得た。
【0087】
この金属化フィルムの密着強度は0.40N/mmで評価は○、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.03μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0088】
ただし、この配線にかんしてはチタン膜20nm厚よりも高く、高速信号伝送の伝道損失が大きくなり、高周波用途にはより不向きな傾向にある。
【0089】
(比較例1)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、プラズマ処理したFEPフィルム表面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度4.0m/minで0.5μmの厚さに銅膜2を真空蒸着し、金属化フィルムを得た。
【0090】
この金属化フィルムの電解銅めっきは可能であったが、密着強度はとても小さく、サンプル自重で銅箔剥離が発生し測定不可であった。クラックは発生しないが、クロスカット時に剥離発生し、酸浸漬前に剥離したため耐酸性は×とした。表面粗さRaは0.05μmであった。配線形成のエッチング工程で銅膜剥離が発生するため、この金属化フィルムを用いて配線形成は不可であった。
【0091】
(比較例2)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、銅膜1を5nm厚形成した以外は全て実施例1と同じ条件で金属化フィルムを得た。
【0092】
この金属化フィルムの密着強度は0.26N/mmで評価は×、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.05mであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施したが、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0093】
(比較例3)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、銅膜1を50nm厚形成した以外は全て実施例1と同じ条件で金属化フィルムを得た。
【0094】
この金属化フィルムは電解銅めっき時に銅1が溶解し、銅膜2が剥離され、密着強度は測定不可であった。クラックは発生しないが、耐酸性は×、表面粗さRaは0.05μmであった。電解銅めっき時に銅膜剥離が発生するため、この金属化フィルムを用いて配線形成は不可であった。
【0095】
(比較例4)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で銅膜1を20nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に銅膜1の上に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度40m/minで0.05μmの厚さに銅膜2を真空蒸着し、金属化フィルムを得た。
【0096】
この金属化フィルムの銅膜1および銅膜2は薄いため、電解めっきの給電層としては高抵抗であり、電解銅めっきが析出せず、一部めっき液によりエッチングされ、膜消失した。クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.05μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1と配線形成実施形態2の両方で配線形成を実施しようとしたが、電解銅めっきが出来ないため、配線形成が不可能であった。
【0097】
(比較例5)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で銅膜1を20nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に銅膜1の上に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度0.7m/minで3.0μmの厚さに銅膜2を真空蒸着し、金属化フィルムを得た。
【0098】
この金属化フィルムの密着強度は0.50N/mmで評価は◎、クラックは発生せず、耐酸性は○、表面粗さRaは0.05μmであった。この金属化フィルムを用いて配線形成実施形態1を形成した場合、エッチングにより配線幅が消失する部分が発生し、配線形成は不可能であった。配線形成実施形態2での配線形成は、特に問題なく配線形成が可能であった。
【0099】
(比較例6)
厚さ75μmのFEPフィルム(東レフィルム加工(株)製、“トヨフロン(登録商標)”の片面にプラズマ処理をした。プラズマ処理としては実施例1と同じ条件で実施した。次に、プラズマ処理したFEPフィルム表面にマグネトロンスパッタリング法で下地金属膜としてニッケル膜を1nm厚形成した。スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。次に下地金属層の上にマグネトロンスパッタリング法で銅膜2を0.1μmの厚さに成膜し、金属化フィルムを得た。銅膜2スパッタリング条件としては、50mm×550mmサイズのターゲットを用い、アルゴンガスを導入しての真空到達度は1×10-2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。
【0100】
この金属化フィルムは電解銅めっき時に銅膜2が溶解し、電解銅めっき膜が剥離され、密着強度は測定不可であった。クラックは発生しないが、耐酸性は×、表面粗さRaは0.03μmであった。電解銅めっき時に銅膜剥離が発生するため、この金属化フィルムを用いて配線形成は不可であった。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】