(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】浮腫を検出するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61B10/00 E
(21)【出願番号】P 2019500467
(86)(22)【出願日】2017-07-06
(86)【国際出願番号】 US2017040910
(87)【国際公開番号】W WO2018009670
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507252100
【氏名又は名称】ケムイメージ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ステュアート、ショーナ
(72)【発明者】
【氏名】ポスト、ジェイ.クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】トレッド、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】コーエン、ジェフリー
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104757949(CN,A)
【文献】特表2009-515663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253921(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0106210(US,A1)
【文献】Georgios N.Stamatas,In Vivo Monitoring of Cutaneous Edema using Spectral Imaging in the Visible and Near Infrared,Journal of Investigative Dermatology,Volume 126, Issue 8,2006年,Pages 1753-1760,doi:10.1038/sj.jid.5700329
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の浮腫を検出するシステムであって、前記システムは、
患者の組織に光を照射するように構成された光源と、
前記患者の組織から反射光を収集し、前記反射光に関するデータを作成するように構成された検出器と、
前記検出器に操作可能に接続された処理装置であって、
前記反射光に関するデータを受信し、
前記反射光の強度を計算し、かつ
前記患者の組織が浮腫の症状を示すか否かを決定するように構成され、
前記処理装置が、
フィルターにかけると、前記フィルターが浮腫に関連する1またはそれ以上の組織タイプに関連するスペクトル形状のフィルター光を生成することを可能にする複数の電圧を含むルックアップテーブル(LUT)を含むコンピューター可読媒体にアクセスするように
さらに構成された前記処理装置と、
を有する、システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記処理装置は、さらに、対照サンプルの対照測定を決定するように構成されるシステム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、前記処理装置は、さらに、
前記反射光の計算強度を前記対照測定と比較し、かつ
前記患者の浮腫スコアを決定するように構成され、
前記浮腫スコアは前記患者が浮腫を有しているか否か、及び前記患者の浮腫の重症度のうちの少なくとも1つを表すシステム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムであって、さらに、前記反射光をフィルターするように構成された少なくとも1つのフィルターを有するシステム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのフィルターが、特定の波長範囲の前記反射光をフィルターするように構成されたチューナブルフィルターであるシステム。
【請求項6】
請求項4記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのフィルターが、短波長赤外チューナブルフィルター、ファブリー・ペローチューナブルフィルター、マルチ結合結晶チューナブルフィルター、および共形フィルターの少なくとも1つであるシステム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムであって、さらに、複数のチューナブルフィルターを有するシステム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムにおいて、前記複数のチューナブルフィルターが、900nm~1100nm、1150nm~1300nm、および1400nm~1550nmの少なくとも1つの波長範囲に前記反射光をフィルターするように構成されるシステム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、前記光源は、レーザー照射源、広帯域光源、および環境光源の少なくとも1つを有するシステム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、前記検出器は、電荷結合素子検出器、相補型金属酸化膜半導体検出器、インジウムガリウムヒ素検出器、および焦点面アレイ検出器の少なくとも1つを有するシステム。
【請求項11】
請求項1記載のシステムにおいて、前記処理装置はさらに、2またはそれ以上の画像診断技術からの強度データを融合するように構成されるシステム。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、前記2またはそれ以上の画像診断技術が、可視画像、ハイパースペクトル画像、短波長赤外ハイパースペクトル画像、中波長赤外ハイパースペクトル画像、長波長赤外ハイパースペクトル画像、およびそれらの組み合わせを有するシステム。
【請求項13】
請求項1記載のシステムであって、さらに、前記処理装置に操作可能に接続し、前記処理装置から受信した1またはそれ以上の画像を表示するように構成された少なくとも1つのディスプレイ装置を有し、前記1またはそれ以上の画像は患者の組織を表すシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願書類の相互参照
本出願書類は、2016年7月6日に提出された表題「浮腫を検出するシステムおよび方法」の米国仮特許出願第62/359,030号の優先権と利益を請求し、その内容はこの参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、患者の健康状態を非侵襲的に検出するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、患者の浮腫を非侵襲的に検出することに関する。
【背景技術】
【0003】
浮腫は、例えばうっ血性心不全を含む心疾患、例えば肝硬変を含む肝疾患、血液またはリンパ液の流れを妨げる血餅または腫瘍、アレルギー反応、低アルブミン、腎疾患、妊娠、薬物に対する有害反応、および他の同様の病状など、多数の疾患および病状の症状である。これらの病状と関連する浮腫は、典型的には四肢、特に手、足、足首、および腓腹筋などに認められる。場合によっては、浮腫は腹部、または例えばアレルギー反応時の炎症部位に検出することができる。浮腫は運動後に発生する可能性もあり、労作の症状を示す可能性がある。
【0004】
臨床条件では、末梢浮腫の重症度の検出は、困難で生命に危険を及ぼすことも多い状態の治療選択肢の決定において重要な要因である。例えば、心不全は65歳以上の主要な入院原因であり、すべての形態の癌を合わせた入院件数よりも多くを占める。心不全のため入院し、治療した患者のうち、約25%は退院から30日以内に再入院している。再入院は、心不全患者に処方される利尿薬が頻回の調節を必要とする可能性があるために必要となることが多い。投与し忘れた、または薬物量の調節をモニターしていない場合、浮腫の増強は、患者の治療法に修正が必要となる最初の指標の1つである。経時的には、浮腫の増強によって生命に危険を及ぼす状態になる可能性がある。
【0005】
再入院の推定2/3は、治療できる可能性がある要因によって引き起こされている。例えば、退院計画が悪い、食事および治療の推奨に遵守していない、追跡調査が十分ではない、社会的支援が少ない、受診が遅いなど様々な要因が患者再入院の要因となる可能性がある。
【0006】
現在、臨床医には退院後の患者をモニターする様々な技術がある。例えば、臨床医は定期的な追跡診察の予約をする、患者の運動許容度および症状を追跡する、患者の電解質濃度をモニターする、患者の薬の副作用をモニターする、例えば、血圧、心拍数、体重、およびその他の患者の関連健康パラメーターのモニタリングを含む遠隔モニタリング法を指示することができる。
【0007】
しかし、最近の研究では、例えば心不全患者の体重および様々なバイタルサインをルーチンな治療の補助としてモニタリングすることによる現在の遠隔モニタリング技術は、罹患率および死亡率に有意な追加の影響を与えないことが示された。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第6,332,091号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2014/0253921号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2008/0192246号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
患者の浮腫を検出するシステムが本明細書で説明される。前記システムには、患者の組織に光を照射するように構成された光源、前記患者の組織から反射した光を収集し、反射光に関連するデータを作成するように構成された検出器、および前記検出器に操作可能に接続された処理装置を含む。前記処理装置は、前記反射光に関連するデータを受け取り、前記反射光の強度を計算し、前記患者の組織が浮腫の症状を示すか否かを判定するように構成される。
【0009】
上記システムの一部の実装では、前記処理装置はさらに、対照サンプルの対照測定を決定するように構成される。一部の実施例では、前記処理装置がさらに、前記対照測定に対して前記反射光の強度計算値を比較し、前記患者の浮腫スコアを決定するように構成され、前記浮腫スコアは前記患者に浮腫があるか否か、および前記患者の浮腫の重症度の少なくとも1つを表す。
【0010】
上記システムの一部の実装では、前記システムがさらに、前記反射光をフィルターするように構成された少なくとも1つのフィルターを含む。一部の実施例では、前記少なくとも1つのフィルターが、特定の波長範囲の反射光をフィルターするように構成されたチューナブルフィルターである。一部の実施例では、前記少なくとも1つのフィルターが、短波長赤外チューナブルフィルター、ファブリー・ペローチューナブルフィルター、マルチ結合結晶チューナブルフィルター、および共形フィルターの少なくとも1つである。
【0011】
上記システムの一部の実装では、前記システムがさらに、複数のチューナブルフィルターを含む。一部の実施例では、前記複数のチューナブルフィルターが、900nm~1100nm、1150nm~1300nm、および1400nm~1550nmの少なくとも1つの波長範囲に前記反射光をフィルターするように構成される。
【0012】
上記システムの一部の実装では、前記光源が、レーザー照射源、広帯域光源、および環境光源の少なくとも1つを含む。
【0013】
上記システムの一部の実装では、前記検出器が電荷結合素子検出器、相補型金属酸化膜半導体検出器、インジウムガリウムヒ素検出器、および焦点面アレイ検出器の少なくとも1つを含む。
【0014】
上記システムの一部の実装では、前記プロセッサがさらに、2またはそれ以上の画像診断技術からの強度データを融合するように構成される。一部の実施例では、前記2またはそれ以上の画像診断技術が、可視画像、ハイパースペクトル画像、短波長赤外ハイパースペクトル画像、中波長赤外ハイパースペクトル画像、長波長赤外ハイパースペクトル画像、およびその組み合わせを含む。
【0015】
上記システムの一部の実装では、前記システムはさらに、前記処理装置に操作可能に接続し、前記処理装置から受信した1またはそれ以上の画像を表示するように構成された少なくとも1つのディスプレイ装置を含み、前記1またはそれ以上の画像は患者の組織を表す。
【0016】
患者の浮腫を検出する方法も本明細書で説明される。前記方法は、光源によって光で患者の組織を照射する工程、検出器によって前記患者組織からの反射光を回収する工程、前記検出器によって前記反射光に関連するデータを作成する工程、前記検出器に操作可能に接続された処理装置によって前記反射光を受け取る工程、前記処理装置によって前記反射光の強度を計算する工程、および前記処理装置によって前記患者組織が浮腫の症状を示すか否かを判定する工程を含む。
【0017】
上記方法の一部の実装では、前記方法はさらに、前記処理装置によって対照サンプルの対照測定を決定する工程を含む。一部の実施例では、前記方法がさらに、前記処理装置によって前記対照測定に対して前記反射光の強度計算値を比較し、前記処理装置によって前記患者の浮腫スコアを決定する工程を含み、前記浮腫スコアは前記患者に浮腫があるか否か、および前記患者の浮腫の重症度の少なくとも1つを表す。
【0018】
上記方法の一部の実装では、前記方法がさらに、少なくとも1つのフィルターによって前記反射光をフィルターする工程を含む。一部の実施例では、前記少なくとも1つのフィルターが、特定の波長範囲の反射光をフィルターするように構成されたチューナブルフィルターである。一部の実施例では、前記少なくとも1つのフィルターが、短波長赤外チューナブルフィルター、ファブリー・ペローチューナブルフィルター、マルチ結合結晶チューナブルフィルター、および共形フィルターの少なくとも1つである。
【0019】
上記方法の一部の実装では、前記方法がさらに、複数のフィルターによって、900nm~1100nm、1150nm~1300nm、および1400nm~1550nmの少なくとも1つの波長範囲に前記反射光をフィルターする工程を含む。
【0020】
上記方法の一部の実装では、前記光源が、レーザー照射源、広帯域光源、および環境光源の少なくとも1つを含む。
【0021】
上記方法の一部の実装では、前記検出器が電荷結合素子検出器、相補型金属酸化膜半導体検出器、インジウムガリウムヒ素検出器、および焦点面アレイ検出器の少なくとも1つを含む。
【0022】
上記方法の一部の実装では、前記方法はさらに、前記処理装置によって2またはそれ以上の画像診断技術の強度データを融合する工程を含む。一部の実施例では、前記2またはそれ以上の画像診断技術が、可視画像、ハイパースペクトル画像、短波長赤外ハイパースペクトル画像、中波長赤外ハイパースペクトル画像、長波長赤外ハイパースペクトル画像、およびその組み合わせを含む。
【0023】
上記方法の一部の実装では、前記方法はさらに、前記処理装置に操作可能に接続した少なくとも1つのディスプレイ装置によって、前記処理装置から受信した1またはそれ以上の画像を表示する工程を含み、前記1またはそれ以上の画像は前記患者の組織を表す。
【0024】
患者の浮腫をモニタリングする方法も本明細書で説明される。前記浮腫をモニタリングする方法は、光源によって患者の組織に光を照射する工程、検出器によって前記患者組織からの反射光を回収する工程、前記検出器によって前記反射光に関連するデータを作成する工程、前記検出器に操作可能に接続された処理装置によって前記反射光を受け取る工程、前記処理装置によって前記反射光の強度を計算する工程、前記処理装置によって前記反射光の強度を対照測定と比較し、現在の浮腫スコアを決定する工程、および前記現在の浮腫スコアとすでに収集された浮腫情報との比較に基づき、前記患者の浮腫レベルの変化を決定する工程を含む。
【0025】
上記方法の一部の実装では、前記浮腫をモニタリングする方法はさらに、前記処理装置によってすでに収集された浮腫情報を決定する工程を含む。
【0026】
上記方法の一部の実装では、前記浮腫をモニタリングする方法はさらに、前記処理装置によって対照サンプルの対照測定を決定する工程を含む。
【0027】
上記方法の一部の実装では、前記浮腫をモニタリングする方法はさらに、前記処理装置に操作可能に接続した少なくとも1つのディスプレイ装置によって、前記処理装置から受信した1またはそれ以上の画像を表示する工程を含み、前記1またはそれ以上の画像は患者の組織を表す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本明細書に説明される実施形態の態様、特徴、利益、および利点は以下の説明、添付の請求項、および添付の図に関して明白となる:
【
図1】
図1は、本開示の1またはそれ以上の実施形態に従い、患者組織の液体含有量を測定するため、撮像システムを利用することができるサンプル環境を示す。
【
図2】
図2は、本開示の1またはそれ以上の実施形態に従い、実例となる撮像および処理システムを示す。
【
図3】
図3は、本開示の1またはそれ以上の実施形態に従い、実例となる撮像装置を示す。
【
図4】
図4は、本開示の1またはそれ以上の実施形態に従い、患者が浮腫を有する可能性を決定する工程を図示したサンプルフローチャートを示す。
【
図5】
図5は、本開示の1またはそれ以上の実施形態に従い、患者の浮腫レベルをモニタリングする工程を図示したサンプルフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、本開示の1またはそれ以上の実施形態に従い、患者の手のサンプル比較画像を示す。
【
図7】
図7は、本開示の1またはそれ以上の実施形態に従い、患者の手のサンプル吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、変更される可能性があるため、説明される特定のシステム、装置、および方法に限定されない。説明に使用される用語は、特定の変形形態または実施形態のみを説明する目的であり、その範囲を制限する意図はない。
【0030】
本書に使用される通り、単数系の「a」、「an」、および「the」は、内容が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の言及も含む。それ以外に指定のない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は当業者の1人に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の中で、本開示に説明される実施形態は先行発明に基づきそのような開示に先行する権利はないことの承認として解釈されるものはない。本書に用いるとおり、「~を有する」の用語は、「~に限定されることはないが、含む」を意味する。
【0031】
本開示は、浮腫を検出するシステムおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、患者の体液貯留を継続的にモニタリングし、それによって臨床医に様々な疾患状態の治療をガイドする浮腫レベルの客観的決定方法を提供する上で役立つ可能性を提供する、非侵襲的浮腫検出システムおよび方法に関する。
【0032】
様々な実施形態の「被験者」は、一般に哺乳類であり、特定の実施形態ではヒトとすることができる。前記被験者は健康である、1またはそれ健康状態を有していることが既知である、または1またはそれ以上の健康状態を有していることが疑われる可能性がある。実施形態では、浮腫レベルを決定するために前記患者の組織を照射することができる。前記照射組織は前記被験者のいずれの組織であってもよく、特定の実施形態では、前記組織は、上述の方法の実施中、前記患者の四肢、手、足、足首、腓腹筋、腹部、炎症部位、またはその組み合わせに関係する組織とすることができる。特定の実装では、前記照射組織は、例えば上記の部位に加え、患者の顔面を含むすべての照射された身体組織とすることができる。
【0033】
様々な実施形態の「対照」は、例えば、上腕、大腿、または背部の組織など、前記被験者の非罹患組織からの反射光を収集することで得られ、または「対照」は非罹患被験者または被験者集団から得ることができる。例えば、一部の実施形態では、対照測定が多数の非罹患被験者の四肢、手、足、足首、腓腹筋、腹部、またはその組み合わせから得られた吸光度の平均であってもよい。
【0034】
1またはそれ以上の実装では、本明細書に説明される浮腫を検出する方法および関連工程が、被験者の組織に光を照射する工程、約900nm~約1100nm、約1150nm~約1300nm、約1400nm~約1550nm、またはその組み合わせの波長の反射光を収集する工程、前記反射光の強度を計算する工程、および前記反射光の強度を正常組織などの対照または正常組織のベースライン強度と比較する工程を含む。一部の実施例では、患者の対照測定と比較し、これらの波長で吸収された光の増加に基づき、浮腫を検出することができる。一部の実装では、本明細書で説明される浮腫を検出するシステムが、光源、画像検出器、および約900nm~約1100nm、約1150nm~約1300nm、約1400nm~約1550nm、またはその組み合わせの波長の反射光の強度を正常組織などの対照または正常組織のベースラインと比較するように構成されたプロセッサを含むことができる。
【0035】
上記の波長範囲は実施例のためのみに提供されるものであることに注意する。特定の実装では、前記収集波長は使用したセンサーのタイプによって変化する可能性がある。例えば、例えば近赤外(NIR)波長の反射光を検出するように構成されたシリコンセンサーを用いた場合、前記検出器は波長約700nm~1100nmの光を収集するように構成することができる。
【0036】
一部の実施例では、前記方法が、さらに、計算された光強度データを処理する工程を含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、前記方法が、例えば、可視画像、ハイパースペクトル画像、短波長赤外(SWIR)ハイパースペクトル画像、中波長赤外(MWIR)ハイパースペクトル画像、長波長赤外(LWIR)ハイパースペクトル画像など、およびその組み合わせなど、1またはそれ以上の画像診断技術の強度データを融合する工程を含んでもよい。そのような融合は、当該分野で既知のとおり、融合アルゴリズムを適用することで達成可能である。
【0037】
図1は、患者の浮腫を検査することができるサンプル環境を図示している。例えば、
図1に示すとおり、撮像および処理装置100は、例えば病院ベッドに横になっている患者105に隣接して配置することができる。実施例のためのみ、撮像および処理装置100は三脚に取り付けられているものとして示されるいることに注意する。特定の実装では、前記撮像および処理装置100は、例えば看護師または医師などの介護者が持つ、携帯型装置とすることができる。他の実施例では、前記撮像および処理装置100を、病院、介護施設、医師の診察室、または患者105などの患者が様々な部屋または区域で位置する可能性のある他の同様の場所を移動するストレッチャーまたは他の同様の用意に移動できる構造に取り付けることができる。
【0038】
前記患者105に対する前記撮像および処理装置100の位置は、前記撮像および処理装置100の照明および画像キャプチャの特徴など、様々な因子に基づく可能性がある。例えば、特定の実装では、前記撮像および処理装置100は前記患者105から1メートル未満に配置してもよい。別の実施例では、前記撮像および処理装置100は前記患者から1~2メートルに配置してもよい。別の実施例では、前記撮像および処理装置は前記患者から2メートル以上離して配置してもよい。前記撮像および処理装置100と前記患者105との実際の距離は、前記患者に現在浮腫があるか否かを正確に処理し、検出するために必要な反射光またはシグナルの質に基づき、決定することができる。
【0039】
図2は、サンプル撮像および処理システム200を図示する。特定の実装では、前記撮像および処理システム200は、上述の撮像および処理装置100と同様の環境に組み込むことができる。
【0040】
図2に示されるとおり、前記撮像および処理システム200は、様々な要素および/またはサブシステムを含むことができる。例えば、特定の実装では、前記撮像および処理システム200は、撮像要素205および処理装置210を含むことができる。一部の実施形態では、前記撮像および処理システム200は、さらに、前記処理装置に操作可能に接続し、画像を表示するように構成されたディスプレイ装置215および患者の浮腫の検出に関連した他の情報を含むことができる。
【0041】
特定の実装では、前記撮像要素205は、カメラ、または可視および不可視光を捉えるように構成された他の同様の撮像装置とすることができる。例えば、前記撮像要素205は、SWIRセンサー、赤/青/緑(RGB)センサー、NIRセンサー、共形センサー、または対象によって反射した光を収集するように構成された他の同様のセンサーを含むことができ、前記収集光を、前記収集光に関連したデータを表す、対応電子シグナルに変換することができる。前記撮像要素は、以下の
図3の考察でさらに詳細に説明する。
【0042】
図2に示されるとおり、前記撮像要素205は、前記処理装置210に操作可能に接続することができる。特定の実装では、前記処理装置210は、前記収集された反射光に関連するデータを受信し、前記反射光の強度を計算し、前記反射光の強度を対照と比較するように構成することができる。さらに、様々な実施形態において、前記処理装置210は前記ディスプレイ装置215、または例えば、プリンター、ルーター、他の同様の出力装置、およびその組み合わせなどの別の出力装置に操作可能に接続することができる。
【0043】
特定の実装では、前記処理装置210は、前記撮像要素205によって受け取ったデータから1またはそれ以上の画像を作成するように構成することができる。前記1またはそれ以上の画像は、例えば、ディスプレイ装置215に表示させることができる。一部の実施形態では、前記処理装置210は、前記ディスプレイ装置215に表示される単一画像を作成することができる。代わりの実施形態では、前記処理装置210は、前記撮像要素205から取得したデータを基に、複数の画像を作成することができる。
【0044】
他の実装では、前記処理装置210は2またはそれ以上のフィルターから前記撮像要素205によって収集したスペクトルデータに対応する2つの画像(またはスペクトル画像)を切り替える、高速スイッチ開閉装置を含むことができる。例えば、
図3を参照して以下にさらに詳細に考察するとおり、前記撮像要素は、前記収集光を波長帯にフィルターするように構成された1またはそれ以上のチューナブルフィルターを含むことができる。したがって、単一画像が表示される場合、前記画像は1つのフィルターから得られたスペクトルデータから作成されてもよく、または複数のフィルターのスペクトルデータを合わせるまたは重ねることで単一画像としてもよく、これはコントラストまたは強度が増加することで、前記重ね合わせた画像を比較できるようにする。他の実施形態では、各フィルターから得られたデータに対応する別の画像が、並列表示されてもよい。
【0045】
一部の実施形態では、前記処理装置210が1またはそれ以上の非一過性コンピューター可読保存媒体と通信することができる。例えば、前記処理装置210は、第1のコンピューター可読保存媒体にアクセスし、前記処理装置に指示を提供するように構成された様々なソフトウェア211にアクセスするように構成されてもよい。前記指示が実行されると、前記処理装置は、本明細書で説明される浮腫検出プロセスなどの様々な機能を実行することができる。
【0046】
前記処理装置は、さらに、ルックアップテーブル212(「LUT」)を含む第2のコンピューター可読媒体にアクセスするように構成されてもよい。特定の実装では、前記LUT 212は、前記処理装置210によってアクセスすると、前記処理装置を前記撮像要素205の1またはそれ以上のフィルターを調整し、特定組織の浮腫を検出できるようにする情報を含むことができる。例えば、前記LUT 212はフィルターにかけると、前記フィルターを、様々な程度の浮腫と関連した1またはそれ以上の組織タイプに関連するスペクトル形状のフィルター光を生成できるようにする多数の電圧を含んでもよい。多段階フィルターの場合、前記LUT 212は様々な程度の浮腫と関連した組織タイプに関連するフィルター光を生成するため、前記フィルターの各段階にかけることができる電圧を含むことができる。
【0047】
特定の実装では、前記処理装置210は、ユーザーの入力または画像処理に基づき、前記LUT 212からの適切な情報を取得するように構成することができる。前記処理装置210は、この後この情報を前記撮像要素205のコントローラーに通信することができ、これは今度、各フィルターまたは各フィルターの各段階に適切な電圧をかける。一部の実施形態では、このプロセスはリアルタイムまたはほぼリアルタイムで発生し、ほぼリアルタイムで対象の複数の組織タイプを検出する柔軟性を提供してもよい。これによって、術中光学診断装置を使用中に、前記ユーザーは前記表示画像を修飾または完全に変更することができる。
【0048】
ソフトウェア211およびLUT 212は別のコンピューター可読媒体で使用されるものとして示されているが、これは実施例のためのみに提供されていることに注意する必要がある。利用できる資源および前記撮像および処理システム200のデザインによって、前記ソフトウェア211およびLUT 212は、単一のコンピューター可読媒体で実行することができる。ただし、特定の実装では、前記LUT 212は、例えば有線または無線ネットワーク通信によって、前記処理装置210にアクセス可能な遠隔地で保存可能である。そのような配置では、前記LUT 212は、中央部(例えば、前記撮像および処理装置のサーバー製造業者)でアップデートし、現在運転しているすべての撮像および処理装置200は前記中央部でアップデートされたLUT 212にアクセス可能である。
【0049】
図3は、
図2で上述したとおり、前記撮像要素205のサンプル構造を図示する。
図3に示されるとおり、前記撮像要素205は、様々な追加要素およびサブシステムを含むことができる。例えば、前記撮像要素205は、照明サブシステム305、画像受信光学系315、および光ファイバー320に操作可能に接続および構成されるコントローラー310を含むことができる。
図3に示すとおり、前記フィルター320は選択的要素として示されていることに注意する。以下にさらに詳細に説明するとおり、前記撮像要素205の埋め込み、およびそこに組み込まれる様々な要素の機能性によって、前記フィルター320の機能性は、例えば、前記画像受信光学系315などの追加要素に組み込むことができる。
【0050】
再び
図3を参照し、前記コントローラー310は、前記撮像および処理装置205およびそこに組み込まれる様々な要素の操作と関連する一連の指示を実行するように構成された処理装置として実行することができる。前記指示は、前記コントローラー310(
図3には示されていない)に操作可能に接続される、コンピューター可読媒体に保存することができる。特定の実装では、前記コントローラー310は、前記撮像および処理システム205の様々な要素をコントロールするように特異的にプログラムされた専用処理装置とすることができる。そのような配置では、前記コントローラー310の操作に関する指示を、前記コントローラー310に直接組み込まれたコンピューター可読媒体に含めることができる。
【0051】
特定の実装では、前記照明サブシステム305は、例えばレーザー照射源、広帯域光源、および/または環境光源などの統合光源を用いて画像化された組織を照射するように構成することができる。一部の実施形態では、前記光源は、上記方法を実行する前記撮像および処理装置205とは独立した要素(例えば遠隔接続されている)であってもよい。他の実施形態では、前記光源には前記撮像および処理装置205が組み込まれてもよい。
【0052】
一部の実施形態では、前記照射サブシステム305は、1またはそれ以上の光源にフィルターを含むことができる。例えば、特定の実施形態では、赤外(IR)ロングパスフィルターを光源に含め、光源から放射される可視光を排除することができる。IR光は眼に安全であり、可視センサーには映らない。
【0053】
特定の実装では、前記画像受信光学系315を照射された組織に反射される光を収集するように構成することができる。特定の実装では、前記画像受信光学系315は、例えば、SWIR検出器316および/またはRGB検出器317などの画像検出器を含むことができる。代わりの実装では、前記画像受信光学系315は、電荷結合素子(CCD)検出器または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)検出器を含むこともでき、これらは典型的には写真用の可視光を収集するため、および/またはラマン分光撮像システム、またはインジウムガリウムヒ素(InGaAs)または焦点面アレイ(FPA)検出器と併用して使用され、これらは典型的には近赤外分光撮像システムで使用される。
【0054】
特定の実装では、さらなるNIRおよびSWIRカメラおよび/または検出器を画像受信光学系に組み込むことができる。例えば、前記画像受信光学系は、さらに、水銀カドミウムテルル(MCT)IR検出器、アンチモン化インジウム(InSb)IR検出器またはフォトダイオード、量子ドットカメラ、および/または他の同様のNIRおよびSWIRカメラおよび検出器を含むことができる。
【0055】
特定の実施形態では、前記画像受信光学系315は、前記組織から収集した集束光の光学系を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、前記画像受信光学系315が、組織に位置し焦点を当てる、および/または前記組織から光を収集するという目的の少なくとも1つを目的に構成された、望遠鏡または他の同様の集束光学系を含むことができる。
【0056】
上記のとおり、前記撮像および処理装置205は、さらに、前記画像受信光学系315が受信した収集光の情報をフィルターするように構成されたフィルター320を含むことができる。特定の実装では、前記フィルター320は、これに限定されるものではないが、SWIR多重共役液晶チューナブルフィルター、SWIR液晶チューナブルフィルター、ファブリー・ペロー角度同調フィルター、音響光学チューナブルフィルター、液晶チューナブルフィルター、リオ・フィルター、エバンス・スプリット・エレメント液晶チューナブルフィルター、Solc液晶チューナブルフィルター、固定波長ファブリー・ペローチューナブルフィルター、空気調整ファブリー・ペローチューナブルフィルター、機械調整ファブリー・ペローチューナブルフィルター、および液晶ファブリー・ペローチューナブルフィルターを含む、当該分野で既知のすべてのチューナブルフィルターを含むことができる。特定の実施形態では、前記フィルター320は多重共役液晶チューナブルフィルター(MCF)とすることができる。MCFは、偏向器、抑制剤、および液晶から成る一連のステージを含む。本配列の結果として、前記MCFは単一ステージ分散単色光分光器と一致した回折限界空間分解能およびスペクトル分解を提供することができる。前記MCFは、特定のフィルター範囲ですべての波長に調整可能である。一部の実施形態では、前記MCFがプロセッサによってコントロールされてもよい。
【0057】
特定の実装では、前記フィルター320を固定フィルターアレイとして実装することができる。例えば、スナップショット画像分光計を用いて収集した光を処理する場合、固定フィルター配列を、分析のため分光計に通す前に収集光を前処理するために使用することができる。
【0058】
さらなる実施形態では、前記フィルター320は多変量光学成分フィルターとすることができる。特定の実施形態では、前記フィルターはコンフォーマルフィルターとしてもよい。前記「コンフォーマルフィルター」の用語は、一般に、同時に複数の透過帯域、すなわちスペクトル形を伝えるフィルターを指す。コンフォーマルフィルターを使用することで、例えば標的とバックグラウンドを識別し、チューナブルフィルターの処理能力を向上し、それによって解析速度が改善することによって、識別性能が改善する可能性がある。コンフォーマルフィルターは調整可能であり、様々な異なる構成に調整することができる。コンフォーマルフィルターとして使用するために構成可能なチューナブルフィルターの例には、これに限定されるものではないが、液晶チューナブルフィルター、音響光学チューナブルフィルター、リオ液晶チューナブルフィルター、エバンス・スプリット・エレメント液晶チューナブルフィルター、Solc液晶チューナブルフィルター、強誘電性液晶lチューナブルフィルター、ファブリー・ペロー液晶チューナブルフィルター、およびその組み合わせを含む。
【0059】
さらなる実装では、前記撮像および処理装置205は二偏波装置として実装できる。そのような実装では、前記撮像および処理装置205は、前記組織からの反射光を受け取り、前記反射光を2またはそれ以上の光路に分別するように配置された光学分別装置を含むことができる。そのような装置には2またはそれ以上の光路を含むことができるが、簡単にするため、そのような実施形態は「二偏波」装置と呼ぶことに注意する。各光路には、特定波長の光を反射し、それを光路から除き、他の光を前記フィルターに通過させてフィルター光、すなわち「フィルター要素」を作製する、1またはそれ以上のフィルターを含むことができる。前記1またはそれ以上のフィルターは、上述のようなチューナブルフィルターまたはコンフォーマルフィルターのいずれかとすることができる。一部の実施形態では、各光路が、前記フィルター要素を受信および検出するように配置された検出器で終止することができる。他の実施形態では、単一の検出器が配置され、各光路から前記フィルター要素を同時に受信および検出してもよい。したがって、実施形態には、前記構成によって、1またはそれ以上の検出器を含んでもよい。1またはそれ以上の検出器を含むそのような実施形態の撮像および処理装置には、さらに、前記検出器からデータを受信する1またはそれ以上の検出器に電子的に接続されたプロセッサを含んでもよい。前記プロセッサは、本明細書に開示されるとおり、前記データを解析し、画像を作成するように構成されてもよい。
【0060】
図3に上述されるとおり、含まれる要素およびその相対的配置は、例としてのみ提供されることに注意する。前記撮像および処理装置205のデザインおよび意図する機能性によって、そこに含まれる要素、およびその配置は変化してもよい。
【0061】
図4は、患者に浮腫が生じているか否かを検出するサンプルプロセスを図示している。最初に、上述の処理装置210などの処理装置は、前記患者の対照測定を決定405することができる。例えば、上述のとおり、前記対照測定は上腕、大腿、または背部の組織など、前記患者の非罹患組織からの反射光を収集することで決定され、または前記対照測定は非罹患被験者または被験者集団から決定することができる。例えば、一部の実施形態では、対照測定が多数の非罹患被験者の四肢、手、足、足首、腓腹筋、腹部、またはその組み合わせから得られた吸光度の平均であってもよい。
【0062】
対照測定を決定405した後、前記プロセスを進め、前記患者が現在浮腫の症状を示しているか否かを決定することができる。上述のとおり、撮像および処理装置205などの装置は、患者の組織に光を照射410することができる。特定の実装では、前記組織の照射410は、環境光源、または上述のとおり、例えば、レーザー照射源、広帯域光源、および環境光源などの光源を用いて実施することができる。前記光源の実装によって、前記プロセスは選択的に、前記放射光をフィルターする工程411を含むことができる。例えば、一部の実施例では、前記プロセスは、例えば可視スペクトル光を除去することで、前記照射光をフィルターする工程411を含むことができる。
【0063】
上述のとおり、画像受信光学系315などの検出装置は、前記患者組織からの反射光を収集415するように構成することができる。したがって、様々な実施形態では、前記反射光の収集415は、例えば、典型的には、写真用の可視光を収集するため、ラマン分光学的画像システムを用いて使用されるCCD検出器またはCMOS検出器、および/または上述の方法を実施するための装置の独立した要素である近赤外分光学的画像システムに典型的に使用されるInGaAsまたは焦点面アレイFPA検出器などの画像検出器によって実施することができ、または前記画像検出器は光源と結合させることができる。
【0064】
前記反射光が収集415される条件、および前記収集光の意図する処理によって、前記収集光は選択的にフィルター416することができる。例えば、前記反射光は1またはそれ以上の波長帯にフィルター416し、ハイパースペクトル画像を作製することができる。
【0065】
上述の処理装置210などの処理装置は、収集された反射光に関連した情報を受信し、前記収集された反射光の強度を計算420するように構成することができる。特定の実装では、前記処理装置は、波長約900nm~約1300nm、約1400nm~約1550nm、またはその組み合わせ、またはこれらの範囲に含まれる個々の波長すべてまたは範囲を有する収集された反射光の強度を計算420することができる。例えば、一部の実施形態では、前記処理装置は、波長約700nm~約1100nm、約1100nm~約1300nm、約1200nm~約1300nm、約1100nm~約1250nm、約900nm~約1100nm、および/または約900nm~約1150nmなどを有する反射光の強度を計算420してもよい。
【0066】
前記処理装置は、さらに、前記反射光の強度を前記対照測定と比較425するように構成することができる。これらの波長を有する光の吸収の変化は、浮腫を示す可能性がある。そのようなものとして、前記反射光の強度を対照測定と比較425することによって、前記処理装置は前記患者の液体含有量および/または浮腫スコアを決定430aすることができる。本明細書に使用するとおり、浮腫スコアは患者に現在浮腫が生じている可能性を指す。浮腫スコアは前記浮腫重症度の数量的測定を提供してもよい。例えば、前記浮腫スコアは0.0~1.0の範囲の数字とすることができる。0.0の測定は、患者の正常組織の対照測定を表している可能性がある。特定の実装では、より大きな浮腫が重症度の高い浮腫を表していてもよい。そのため、
図4に関する上述のプロセスは、浮腫に関連する疾患または状態を特定するために利用することができる。
【0067】
浮腫に関連した疾患または状態を特定することに加え、本明細書に教示されるプロセスおよび技術は、さらに、すでに末梢浮腫を有すると同定された患者をモニターするために使用することができる。例えば、
図5は、患者の浮腫の変化を検出し、モニターするサンプルプロセスを図示する。最初に、上述の処理装置210などの処理装置は、前記患者の対照測定を決定505することができる。例えば、上述のとおり、前記対照測定は上腕、大腿、または背部の組織など、前記患者の非罹患組織からの反射光を収集することで決定され、または前記対照測定は非罹患被験者または被験者集団から決定505することができる。
【0068】
前記対照測定が決定505された後、前記プロセスを進め、前記患者の現在の浮腫レベルまたはスコアを検出することができる。上述のとおり、撮像および処理装置205などの装置は、患者の組織に光を照射510することができる。前記光源の実装によって、前記プロセスは選択的に、前記放射光をフィルターする工程511を含むことができる。例えば、一部の実施例では、前記プロセスは、例えば可視スペクトル光を除去することで、前記照射光をフィルターする工程511を含むことができる。
【0069】
上述のとおり、画像受信光学系315などの検出装置は、前記患者組織からの反射光を収集515するように構成することができる。前記反射光が収集515される条件、および前記収集光の意図する処理によって、前記収集光は選択的にフィルター516することができる。例えば、前記反射光は1またはそれ以上の波長帯にフィルター516し、ハイパースペクトル画像を作製することができる。
【0070】
上述の処理装置210などの処理装置は、収集された反射光に関連した情報を受信し、前記収集された反射光の強度を計算520するように構成することができる。前記処理装置は、さらに、前記収集された反射光の強度を前記対照測定と比較525し、前記患者の現在の浮腫スコアを決定するように構成することができる。
【0071】
前記処理装置は患者の浮腫病歴情報を決定530することもできる。病歴情報には、この実施例ではこれまでの浮腫測定、レベル、またはスコアに関連した、例えば、患者のカルテ又は他の同様の情報から回収したデータを含むことができる。例えば、上記
図4に関して説明されるプロセスで決定した前記患者の浮腫スコアは、患者のカルテに保存することができる。前記処理装置は、前記カルテからこれまでの浮腫スコアを決定530することができる。
【0072】
前記処理装置は、前記患者の現在の浮腫スコアを患者の浮腫病歴情報と比較し、前記患者の浮腫レベルまたはスコアの変化を決定535することができる。そのような変化は、患者の体液含有量の変化および/またはカルテの変化、悪化、または改善を示す可能性がある。前記患者の担当医などの介護者は、前記患者の浮腫スコアまたはレベルの変化を検討し、それによって患者の治療方法を調節することができる。
【0073】
図6および7は、さらなる解析および/またはレビュー用に、本明細書で説明される技術、システム、およびプロセスを用いて作成可能なサンプル出力画像およびデータを図示する。例えば、
図6は、一連の患者頭部の画像を図示する。左の画像は正常組織を表す。正常な画像では、前記皮下脈管構造が非常に見やすい。しかし、右の画像では、前記患者は末梢浮腫を生じている。前記患者組織の水分含有量が増加しているため、前記脈管構造のコントラストが低下し、そのため、前記反射光の測定強度計算値はこの脈管構造のコントラスト低下を反映する。
図7は、正常組織と末梢浮腫の徴候を示す組織とのSWIR吸収スペクトルの比較を図示する。
【0074】
疾患状態の検出に加え、運動関連浮腫は、個々のトレーニング前後の手の吸収スペクトルを比較した場合、約900nm~約1300nmおよび約1400nm~約1550nmの範囲の波長を有する光の吸収量増加によって検出することができる。したがって、運動誘発性浮腫などの軽度の浮腫であっても、これらの波長の反射光強度の変化によって検出可能である。そのため、上述の実施形態の方法は、必ずしも疾患または他の病気によって生じたものだけではなく、浮腫関連の状態を同定するために適用される。
【0075】
上記の実装詳細は実施例のためにのみ提供されるものであることに注意する。例えば、
図1に示される画像取得システムおよび環境は、説明の目的でのみ提供される。前記処理装置および画像キャプチャ装置の撮像特徴の計算要件に基づき、本明細書に説明するシステム、方法、および処理を様々な装置およびシステムに組み込むことができる。例えば、本明細書で説明および教示されるとおり、浮腫を検出するシステムは、光源および画像検出器を有するスマートフォンを用いて実現することができる。前記スマートフォンには、約900nm~約1300nmおよび約1400nm~約1550nmの範囲、または上記範囲のいずれかの波長で光強度を計算するプログラムまたはアプリがインストールされていてもよい。具体的には、前記プログラムまたはアプリは、約700nm~約1100nmの波長の収集光の強度を計算してもよい。前記スマートフォンは、前記収集光の計算強度と関連した情報を、医師の診察室または他の同様の介護者などの遠隔地に伝達するように構成することができる。前記伝達された情報を利用し、前記患者の末梢浮腫の変化を遠隔モニターし、必要であれば、例えば食事の変化、薬物の変化、運動の推奨、および他の同様の変化など、治療を変化させることができる。
【0076】
スマートフォンに関係するそのようなシステムは、特に心臓病および運動に伴う浮腫を迅速に、前記集団の大部分がすでに所有し、定期的に使用している装置を用いて検出するために有用であってもよい。心不全患者に完全に新しい装置を使用することを教える、または臨床医の診察室、病院、または他の同様の場所で前記患者に定期的に試験を行うのではなく、前記患者が自分個人のスマートフォン、または他の同様の撮像および処理装置を使用し、本明細書に説明されるプロセスおよび技術によって現在の浮腫スコアを測定することができる。
【0077】
他の実施例では、本明細書に説明される浮腫を検出するシステムは、例えば、医療装置で実施することができる。一部の実施形態では、前記システムは分光学的撮像装置であってもよい。そのような実施形態では、分光学的撮像を用い、前記被験者の上腕、大腿、または背部などの非罹患組織、および例えば、前記被験者の足、足首、ふくらはぎ、または手の罹患したまたは罹患する可能性のある組織から対照情報を得てもよい。一部の実施形態では、前記分光学的撮像装置に、1またはそれ以上の波長域に光をフィルターするチューナブルフィルターを含んでもよい。前記波長域は、それによってハイパースペクトル画像を作製する光学的撮像装置を用いて検出することができる。したがって、一部の実施形態の方法には、前記反射光を波長域に分別し、ハイパースペクトル画像を作成する工程を含んでもよい。そのような方法は、さらに、ハイパースペクトル画像をオーバーレイまたは融合する工程、および一部の実施形態では、可視画像でハイパースペクトル画像をオーバーレイまたは融合し、前記ハイパースペクトル画像の個々のピクセルを空間分解する工程を含んでもよい。
【0078】
上述の詳細な説明では、その一部を形成する添付の図を参照している。前記図では、内容でそうでないことを示していない限り、典型的には同じ記号が同じ要素を特定する。詳細な説明、図、および請求項で説明される実施形態は、制限することは意図していない。他の実施形態を利用してもよく、本明細書に示された主題の精神および範囲から離れずに、他の変更を行うことも可能である。本開示の態様は、本明細書に一般的に説明され、図に図示されるとおり、様々な異なる構成で配列、置換、結合、分離、および設計できることは容易に理解され、そのすべてが本明細書で明確に検討される。
【0079】
本開示は、本出願書類に説明される特定の実施形態の面から制限されるものではなく、様々な態様を図示することを意図している。当業者に明らかなとおり、多くの変更および変形形態はその精神および範囲から離れることなく行うことができる。本明細書に列挙されたものに加え、本開示の範囲内の機能的に同等の方法および装置が、前述の説明から当業者に明らかとなるだろう。そのような変更および変形形態は、添付の請求項の範囲内に入ることは意図される。本開示は、そのような請求項が権利を与えるものと同等の全範囲とともに、添付の請求項によってのみ制限されるものである。本開示は特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生態系に限定されるものではないことは理解され、これらは当然変化する可能性がある。本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態のみを説明する目的に使用されるもので、制限する意図はないことも理解される。
【0080】
本明細書の実質的にすべての複数および/または単数形の用語の使用について、当業者は、内容および/または適用に適切である場合は、前記複数形を前記単数形に、および/または前記単数形を前記複数形に言い換えることができる。様々な単数/複数の置換は明瞭にするため、本明細書で明示的に示してもよい。
【0081】
一般には、本明細書、特に添付の請求項(例えば、添付の請求項の本文)に使用される用語は、一般に「オープンな」用語(例えば、「~を含んでいる」の用語は「~に限定されるものではないが、含んでいる」と解釈され、「~を有する」の用語は「少なくとも~を有する」と解釈され、「~を含む」の用語は「~に限定されるものではないが、含む」と解釈される)を意図していることは、当業者に理解される。様々な組成物、方法、および装置が様々な要素または工程を「有する」(「~に限定されるものではないが、含んでいる」の意味と解釈される)と説明されるが、前記組成物、方法、および装置は前記様々な要素および工程から「基本的に成る」または「成る」こともでき、そのような用語は基本的に閉じた構成群を定義するものと解釈する必要がある。紹介された請求項の列挙の具体的な数が意図される場合、そのような意図は前記請求項に明白に列挙され、そのような列挙がない場合は、そのような意図はないことは、当業者にさらに理解される。
【0082】
例えば、理解を助けるため、以下の添付の請求項は、請求項の列挙を紹介するため、「少なくとも1つ」および「1またはそれ以上」の導入表現の使用を含んでもよい。しかし、そのような表現の使用は、同じ請求項が導入表現の「1またはそれ以上」または「少なくとも1つ」を含み、および不定冠詞「a」または「an」を含むとしても(例えば、「a」および/または「an」は「少なくとも1つ」または「1またはそれ以上」を意味すると解釈すべきである)、不定冠詞「a」または「an」による請求項の列挙の導入が、そのような列挙のみを含む実施形態に、そのように導入された請求項の列挙を含む特定の請求項すべてを制限することを意味するものと解釈すべきではなく、同じことが請求項の列挙を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。
【0083】
さらに、導入された請求項の列挙の具体的な数が明白に列挙されているとしても、当業者はそのような列挙が少なくとも列挙された数を意味するものと解釈すべきであることを認識するだろう(例えば、他の修飾語のない「2つの列挙」というぎりぎりの列挙は、少なくとも2つの列挙、または2またはそれ以上の列挙を意味する)。さらに、「A、B、およびCの少なくとも1つなど」と類似の慣例が使用されるこのような場合、一般に、そのような構成は当業者が前記慣例を理解する意味で意図される(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、および/またはA、B、およびCを一緒に有するシステムなどを含むが、これに限定されるものではない)。「A、B、またはCの少なくとも1つなど」と類似の慣例が使用されるこのような場合、一般に、そのような構成は、当業者が前記慣例を理解する意味で意図される(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、および/またはA、B、およびCを一緒に有するシステムなどを含むが、これに限定されるものではない)。説明、請求項、または図にあるか否かによらず、事実上すべての離接語および/または2またはそれ以上の代替用語を表す表現は、前記用語の1つ、前記用語のいずれか、または用語の両方を含む可能性を考慮すると理解する必要があることは、当業者にさらに理解される。例えば、「AまたはB」の表現は「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むものと理解される。
【0084】
さらに、前記開示の特徴または態様はマルクーシュグループの面から説明されており、当業者は前記開示も前記マルクーシュグループの個々の要素または要素のサブグループの面で説明されることも認識するだろう。
【0085】
当業者が理解するとおり、すべての目的で、書面での記述を提供するなどの点で、本明細書に開示されたすべての範囲はすべての考えられる部分的な範囲およびその部分的な範囲の組み合わせも含む。すべての記載された範囲は、同じ範囲が少なくとも1/2、1/3、1/4、1/5、1/10などに分割されることを十分に説明し、それが可能であることを容易に認識することができる。制限されない例として、本明細書で考察される各範囲は下部1/3、中央1/3、および上部1/3に容易に分割できる。当業者が理解するとおり、「まで」、「少なくとも」などのすべての言語は引用される数値を含み、その後、上述の部分的な範囲に分割することができる。最後に、当業者が理解するとおり、範囲には個々の数値を含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4または5個の細胞などを有する群を指す。
【0086】
様々な上述および他の特徴および機能、またはその代わりの特徴および機能は、多くの他のシステムまたは用途に組み合わせてもよい。本明細書の現在予見又は予測ではない代替、変更、変形、または改善は、その後当業者が行うことができ、それぞれは開示された実施形態に含まれることも意図される。