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特許7145472繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法
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  • 特許-繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法 図1
  • 特許-繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法 図2
  • 特許-繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20220926BHJP
   B29C 70/46 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C70/46
B29C43/58
B29C43/52
B29C70/16
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022034942
(22)【出願日】2022-03-08
【審査請求日】2022-03-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521427210
【氏名又は名称】株式会社河村機械工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100155181
【弁理士】
【氏名又は名称】中 大介
(72)【発明者】
【氏名】河村 護
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-087907(JP,A)
【文献】特開2021-041557(JP,A)
【文献】特開2015-016649(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117593(WO,A1)
【文献】特開2017-080930(JP,A)
【文献】特開2013-010254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00 - 43/58
B29C 70/00 - 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、該ベースから突設されたリブとを備える繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法であって、
連続繊維からなる連続繊維シートが熱可塑性樹脂に含浸されて固化されてなる連続繊維熱可塑性樹脂複合材を準備する複合材準備工程と、
前記連続繊維熱可塑性樹脂複合材からなる前記ベースを200℃以上で加熱するとともに、10t以上の圧力でプレスすることにより加熱プレス成形し、該ベースの一部を前記連続繊維を含んで突状に塑性変形させて、前記リブを形成する成形工程とを含む繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維材料を熱可塑性樹脂に含浸させて得られた繊維強化樹脂が様々な分野において広く利用されており、例えば、高度の機械的特性が要求される自動車、家電の筐体等に用いられている。
【0003】
このような繊維強化熱可塑性樹脂複合材において、複数の短繊維束(「チョップド材」とも称される。)をランダムに配向し、熱可塑性樹脂により予め一体化させた炭素繊維強化熱可塑性樹脂層を、非強化熱可塑性樹脂層の少なくとも一方の面に設けて積層体を構成し、この積層体に対して加熱プレスすることにより、シート状のベース部に突起状のリブ部を形成するようにして繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-049925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の成形品を製造する方法で成形されたものでは、短繊維束がランダムに配向されるとともに、短繊維束の厚みにばらつきがあるため、強度に劣るという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、強度に優れた製品を製造することができる繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するため、請求項1に記載の発明は、ベースと、該ベースから突設されたリブとを備える繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法であって、
連続繊維からなる連続繊維シートが熱可塑性樹脂に含浸され固化されてなる連続繊維熱可塑性樹脂複合材を準備する複合材準備工程と、
前記連続繊維熱可塑性樹脂複合材からなる前記ベースを200℃以上で加熱するとともに、10t以上の圧力でプレスすることにより加熱プレス成形し、該ベースの一部を前記連続繊維を含んで突状に塑性変形させて、前記リブを形成する成形工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強度に優れた製品を製造することができる繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法の一例について説明する図である。
図2】(A)は、本実施形態により成形されたサンプルの正面図であり、(B)は、(A)に示すA-A断面図である。
図3】プレス加工の条件を異ならせてリブを形成した場合の仕上りについて説明する成形品の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品の製造方法について、図面を参照しながら説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0017】
<連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材の製造方法>
本実施形態に係る連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100の製造方法の一例について、図1を参照しながら説明する。
【0018】
先ず、本実施形態では、図1(1)に示すように、連続炭素繊維からなる連続繊維部100aを用意する。連続繊維部100aは、炭素繊維に限らず、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維、ボロン繊維等の金属繊維、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられ、これらのうちのいずれか一つ又は二以上を組み合わせたものを適用することができる。これらの連続繊維は、機械的強度の向上が期待できる連続繊維である。なお、本実施形態における連続繊維は複数層により構成されているが、単層により構成されてもよい。層厚にするほど強度は増すが、材料コストもそれだけ上がるため、本実施形態では、後述するように、連続繊維を単層により構成し、加熱プレス加工によりリブを成形することで強度を高めることができる。なお、言うまでもないが、本実施形態において、連続繊維を複数層にすることを否定するものではなく、複数層により構成してもよい。
【0019】
続いて、図1(2)に示すように、容器Cに加熱溶融された熱可塑性樹脂Rを注入し、熱可塑性樹脂Rが注入された容器Cに連続繊維部100aを浸し、熱可塑性樹脂Rを連続繊維部100aに含浸させる。本実施形態では、熱可塑性樹脂Rとして熱可塑性ポリウレタンを採用したが他の熱可塑性樹脂であってもよく、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン(登録商標)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、アクリル、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のいずれか一つ又は二以上を混合させたものであってもよい。
【0020】
連続繊維部100aを容器Cに所定時間浸した後、連続繊維部100aを取り出すと、図1(3)に示すように、溶融された熱可塑性樹脂Rが連続繊維部100aに含浸されて樹脂部100bを構成し、これにより連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100が成形される。その後は、樹脂部100bが固化するまで冷却する。このように、本実施形態では、図1(1)~同図(3)に示す工程が複合材準備工程に相当する。なお、予め上述したようにして形成された連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100を購入等により手に入れて複合材準備工程としてもよい。
【0021】
その後、上述したようにして成形された連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100をプレス機200による加熱プレスを行う。具体的には、図1(4)に示すように、プレス機200には、連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100が設置される第一の金型200aと、第一の金型200aの上方に配置され、第一の金型200aとともに連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100をプレスする第二の金型200bとが備えられている。また、第一の金型200a及び第二の金型200bはともに加熱されている。このように構成されたプレス機200を用いて連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100に対して加熱プレスを行う場合には、先ず、連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100をプレス機200の第一の金型200a上に設置し、その後、第一の金型200aの上方に配置された第二の金型200bを下方に移動させ、連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100に対して加熱プレス加工を行う。本実施形態におけるプレス機200の第二の金型200bの下面の適宜位置に凹状の1又は複数のリブ形成部200cが形成されている。本実施形態では、所定温度以上及び所定圧力以上でもって連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100に対して所定時間の加熱プレスを行う。好適な加熱温度と圧力については後述する。
【0022】
すると、図1(5)に示すように、樹脂部100bが溶融されながら連続繊維部100aとともに塑性変形して(すなわち、ベース部101が塑性変形して)、第二の金型200bに形成されたリブ形成部200cに入り込み、リブ102が形成される。すなわち、連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100に対して第一の金型200aと第二の金型200bとにより加熱プレスを行うと、樹脂部100bと連続繊維部100aとが第二の金型200bに形成されたリブ形成部200cに移動することでリブ102が形成される。本実施形態では、リブ102の高さが約2.5mmとなり、幅が2mm以上となるように第二の金型200bのリブ形成部200cが設定されているとともに、加熱温度、プレス圧力及び加熱プレス時間が調整されている。高さに対し、リブ形成部200cの幅が狭いと連続繊維部100aがリブ形成部200cに入り込み難くなるため、適宜設定されるのが好ましい。
【0023】
その後、連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100を冷却して硬化させた後、プレス機200から連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100を取り出すと、図1(6)に示すように、1又は複数のリブ102がベース101から突設された状態で連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100の成形品が形成される。このように、本実施形態では、図1(4)~同図(6)に示す工程が成形工程に相当する。
【0024】
このようにして成形された成形品は、例えば、図3(b)や同図(c)に示すように、連続繊維部100aに含まれる少なくとも一部の繊維束がリブ102に突出するように複数の変曲点を形成し、ベース101からリブ102を経由して再びベース101に戻るように湾曲形成された湾曲部が樹脂部100bに被覆されてリブ102の延在方向に連続して分布されるように形成される。このとき、湾曲部は対称性のある分布を有している。また、上述したようにして成形された成形品は、ベース101よりもリブ102の方が樹脂の含有割合が大きくなる。そのため、従来の複数の短繊維束(チョップド材)をランダムに配向し、熱可塑性樹脂により予め一体化させた炭素繊維強化熱可塑性樹脂層と比較してリブの強度が大幅に増大し、連続炭素繊維が湾曲してリブに入り込んでいることにより破断し難くなる。
【0025】
また、本実施形態によれば、金属プレス成型技術と高温樹脂成型の技術とを組み合わせ、連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材100を加工する際に併せてリブ102を成形することで、樹脂部100bのみならず連続繊維部100aも含めてベース101からリブ102にかけて層状をなすようにしてリブ102を連続的に分布した成形品を成形することができるので、リブ102をベース101に対して固着する等により後付けしたものよりも、リブ102が破断されにくくなり、安定して良好な強度を得ることができるようになる。
【0026】
また、従来のように、熱硬化樹脂を複数層貼り合わせて焼き固めして複合材を形成するよりも、簡便な方法で短時間で複合材を加工することができるので、製造コストにも優れ、量産にも有利である。
【実施例
【0027】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
連続炭素繊維を用いた炭素繊維熱可塑性樹脂複合材について、成形条件を変えて加熱プレス加工を行った。
【0029】
[比較例2-1]
連続炭素繊維に熱可塑性ポリウレタンを含浸させて、厚さが約1.0mmとなるようにCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics;繊維体積含有率(Vf)=45%;サンワトレーディング社製)を成形し、このCFRTPを適宜大きさに切断し、プレス機に所定の金型をセットした。使用する金型は、上面が平坦に形成された第一の金型と、広葉樹の葉っぱ様の外形となるような薄葉部301(図2参照)、薄葉部301の上面の長手方向の中央に延在して突設される第一の葉脈部302(図2参照)、及び、第一の葉脈部302から左右方向にそれぞれ突出するようにして薄葉部分の上面から突設される複数の第二の葉脈部303(図2参照)が少なくとも形成されるような凹部がプレス面に形成された第二の金型とを備えている。なお、第一の葉脈部302及び第二の葉脈部302がリブとして機能している。このような条件で成形されたサンプル300を図2に示す。
上記CFRTPを上記プレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、100℃に加熱し6tの圧力にてプレス加工を行った。
【0030】
[比較例2-2]
比較例2-1により成形したCFRTPをプレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、100℃に加熱し8tの圧力にてプレス加工を行った。
【0031】
[比較例2-3]
比較例2-1により成形したCFRTPをプレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、100℃に加熱し10tの圧力にてプレス加工を行った。
【0032】
[実施例2-1]
比較例2-1により成形したCFRTPをプレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、160℃に加熱し6tの圧力にてプレス加工を行った。
【0033】
[実施例2-2]
比較例2-1により成形したCFRTPをプレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、160℃に加熱し8tの圧力にてプレス加工を行った。
【0034】
[実施例2-3]
比較例2-1により成形したCFRTPをプレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、160℃に加熱し10tの圧力にてプレス加工を行った。
【0035】
[実施例2-4]
比較例2-1により成形したCFRTPをプレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、200℃に加熱し6tの圧力にてプレス加工を行った。
【0036】
[実施例2-5]
比較例2-1により成形したCFRTPをプレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、200℃に加熱し8tの圧力にてプレス加工を行った。
【0037】
[実施例2-6]
比較例2-1により成形したCFRTPをプレス機にセットし、第一葉脈部及び第二葉脈部の高さが2.5mm程度となることを目標に、200℃に加熱し10tの圧力にてプレス加工を行った。
【0038】
比較例2-1~比較例2-3及び実施例2-1~実施例2-6によりそれぞれ得られた炭素繊維熱可塑性樹脂複合材の成形品について、それぞれ圧力をかけた時間(圧力時間)と成形良否と、3点曲げ試験(支点間距離=40mm、試験速度=5mm/min)を行い、各成形品の強度の測定とを行った。その結果を表1に示す。また、比較例2-1によって得らえた成形品を切断し、葉脈部(リブ部分)の断面をデジタルマイクロスコープで観察したものを図3(A)に示し、実施例2-1によって得らえた成形品を切断し、葉脈部の断面をデジタルマイクロスコープで観察したものを図3(B)に示し、実施例2-2によって得らえた成形品を切断し、葉脈部の断面をデジタルマイクロスコープで観察したものを図3(C)に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例2-1~実施例2-6のいずれも、高い最大試験力が得られており、十分な性能なものが得られた。特に実施例2-5及び実施例206では、圧力時間が他の実施例よりも短時間で葉脈部が成形されることがわかった。これら実施例2-1~実施例2-6によれば、葉脈部に連続強化繊維が入り込んで層をなすようにして形成されるので、十分な強度が得られているということができる。
【0041】
一方、比較例2-1~比較例2-3では、いずれも葉脈部が成形されず、最大試験力も実施例2-1~実施例2-6よりも大きく劣ることがわかった。換言すれば、実施例2-1~実施例2-6は、比較例2-1~比較例2-3よりも最大試験力が平均して1.87倍となっており、従来のものよりも強度が大幅に増大していることがいえる。
【0042】
以上から、上記CFRTPをプレス機により加熱プレス加工するにあたり、160℃以上で加熱することで、連続強化繊維が入り込んだリブ部分を形成でき、十分な強度を持ったCFRTP製品を成形可能であるということができ、好ましくは、200℃以上で加熱することで、さらに仕上りを良好にすることができるようになる。
【0043】
また、上記CFRTPをプレス機により加熱プレス加工するにあたり、10t以上の圧力でプレスすることで、短時間で十分な強度を持ったCFRTP製品を成形可能であるということができる。
【0044】
また、実施例2-1~実施例2-6では、サンプル成形前の炭素繊維熱可塑性樹脂複合材では、Vfが45%で熱可塑性樹脂と連続炭素繊維とが略同程度の割合となっているが、サンプル成形後では、ベース部分よりもリブ部分の方が熱可塑性樹脂の割合が多くなる傾向があることがわかる。特に図3(C)で示される実施例2-2によって得らえたサンプル品にあっては、リブ部分では、8割程度の割合で熱可塑性樹脂が含まれていることがわかる。一方で、ベース部分では、連続炭素繊維の割合の方が熱可塑性樹脂よりも大きくなる傾向があることがわかる。
【0045】
また、本実施形態によれば、ベース101と、ベース101から突出するとともに、少なくとも一の方向に延在するリブ102とを備え、連続繊維部100aに含まれる少なくとも一部の繊維束が複数の変曲点を有しており、ベース101からリブ102を経由して再びベース101に戻るように湾曲形成された湾曲部が樹脂部100bに被覆されてリブ101の延在方向に連続して分布している。その結果、繊維束により形成された湾曲部がリブ部の延在方向に延びて形成されているのでリブ部が破断されにくくなり、従来の複数の短繊維束(チョップド材)をランダムに配向し、熱可塑性樹脂により予め一体化させた炭素繊維強化熱可塑性樹脂層と比較して高い強度とすることができ、したがって、強度に優れた製品を製造することができる繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品を提供することができるようになる。
【0046】
また、本実施形態によれば、繊維束が熱可塑性樹脂により被覆されているので、連続繊維がリブ部において露出したり、リブ部の延在方向において熱可塑性樹脂の間欠部を有することなくリブ部を滑らかな仕上りとすることができ、仕上りを良化することができるようになる。
【0047】
なお、本発明の実施の形態に記載された作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0048】
本実施形態では、比較例2-1に示す要領でCFRTPを成形し、これに対して上述した金型をセットして加熱プレスを行ってサンプルを成形するようにしたが、成形したCFRTPに対し、第一の金型の上面及び第二の金型のプレス面がそれぞれ平坦な金型で、所定温度(例えば、100℃)に加熱しつつ所定の圧力(例えば、10t)にて所定時間(例えば、10秒間)プレスする第一プレス加工を行い、第一プレス加工により再加工して得られたCFRTPに対して加熱プレスを行って、サンプルを成形するようにしてもよい。この場合においても、変わらぬ最大試験力が得られる。
【符号の説明】
【0049】
100 連続炭素繊維熱可塑性樹脂複合材
100a 連続繊維部
100b 樹脂部
101 ベース(ベース部)
102 リブ(リブ部)
200 プレス機
R 熱可塑性樹脂
【要約】
【課題】連続繊維を用いた繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品であって、強度に優れた製品を製造することができる繊維強化熱可塑性樹脂複合材を用いた成形品を提供する。
【解決手段】ベース101と、該ベース101から突設されたリブ102とを備える繊維強化熱可塑性樹脂複合材100の製造方法であって、この製造方法は、連続繊維からなる連続繊維シート100aが熱可塑性樹脂Rに含浸されて固化されてなる連続繊維熱可塑性樹脂複合材100を準備する複合材準備工程と、連続繊維熱可塑性樹脂複合材100からなるベース101を加熱プレス成形し、該ベース101の一部を突状に塑性変形させて、リブ102を形成する成形工程とを含む。
【選択図】図1

図1
図2
図3