(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】抗酸化活性およびサルモネラ検出能を有するヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム、および、その調製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/00 20060101AFI20220926BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20220926BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C07K1/00
C12Q1/04
C12M1/34 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020155644
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】201911301048.5
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518427292
【氏名又は名称】シャンシー・ユニヴァーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】SHAANXI UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】6 XUEFU ROAD, WEIYANG DISTRICT, XI’AN, 710021 SHAANXI, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,カンシオン
(72)【発明者】
【氏名】リャン,チェンユアン
(72)【発明者】
【氏名】マオ,ゲンニエン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ムーダン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,チエンチエン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ダン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ジンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】プー,フアイン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ウェンボ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0031840(US,A1)
【文献】国際公開第2017/094654(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/020138(WO,A1)
【文献】特開2019-110899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/04
C12M 1/34
C07K 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗酸化活性およびサルモネラ検出能を有するヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを調製する方法であって、下記の工程、
(1)ニュートラルレッド指示薬溶液と蒸留水とを、室温で1:65~1:70(v:v)の比で混合し混合溶液を得て、前記混合溶液に、変色するまで1mol/LのNaHCO
3溶液を加えてアルカリ性溶液を得る工程と、
(2)工程(1)で得られた前記アルカリ性溶液を、チョウザメ皮ゼラチン:蒸留水=1:8~1:12(w/w)の比でのチョウザメ皮ゼラチンと蒸留水との混合物に加えてアルカリ性ゼラチン溶液を得る工程と、
(3)チョウザメ皮ゼラチン:ヒドロキシチロ
ソール:グリセリン=1:0.3:0.2~1:0.6:0.4(w:w:w)の比でのヒドロキシチロ
ソールとグリセリン、並びに、プロピレングリコールを前記アルカリ性ゼラチン溶液に加えて、ヒドロキシチロ
ソールゼラチン溶液を得て、40~70℃で前記ヒドロキシチロ
ソールゼラチン溶液を加熱する工程と、
(4)工程(3)からの前記ヒドロキシチロ
ソールゼラチン溶液を超音波処理し、前記ヒドロキシチロ
ソールゼラチン溶液を清浄なプレキシガラスプレート上に均一に置き、前記ヒドロキシチロ
ソールゼラチン溶液を超清浄な作業台上で室温にて乾燥させて、前記ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを得る工程と、を含
み、
ここで、前記ニュートラルレッド指示薬溶液は、ニュートラルレッドとエタノールとを5:95(w:w)の比で含み、前記ニュートラルレッド指示薬溶液の前記蒸留水に対する比は1:67(v:v)であり、
サルモネラは前記プロピレングリコールを分解して酸を生成し、前記ニュートラルレッド指示薬は赤色に変わり、前記サルモネラの迅速な同定を導く、方法。
【請求項2】
前記アルカリ性溶液のチョウザメ皮ゼラチンと蒸留水との前記混合物に対する比は1:100(v:v)であり、ここで、チョウザメ皮ゼラチンと蒸留水の比は1:10(w:w)であり、チョウザメ皮ゼラチン:ヒドロキシチロソール:グリセリンは1:0.4:0.3(w:w:w)の比である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシチロ
ソールゼラチン溶液は60℃で加熱される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2019年12月17日に出願された中国特許出願第201911301048.5号の優先権を主張し、これは、本明細書に完全に記載されているかのように、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は食品包装の分野、特には、抗酸化活性およびサルモネラ(Salmonella)検出能力を有するヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム、ならびに、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
持続可能な発展のために、環境資源の有効活用は今日の社会で注目されている。食品や医薬品の包装安全性も人々の注目を集めている。無毒で分解性のグリーンパッケージング材料の使用は、食品包装材料の分野における重要な研究領域となっている。ゼラチンはコラーゲンの加水分解により得られ、良好なフィルム形成能、ガスバリア性、耐酸化性、生体適合性、生分解性を有し、理想的な包装フィルム材料である。同時に、水産物加工産業の発展は、魚の皮のような廃棄物の量の増加をもたらした。それを使用すると資源の無駄を減らすだけでなく、環境保全にも役立つ。また、魚皮の優れた性質を十分に活用している。魚皮・魚皮ゼラチン製品の開発が盛んになっている。
【0004】
ヒドロキシチロソールはオリーブ中の有効成分である。ヒドロキシチロソールは、抗炎症性、血管拡張、抗細菌性、抗アテローム性動脈硬化症および抗癌作用を有すること、特にヒドロキシチロソールの抗酸化活性が見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、チョウザメ皮ゼラチンフィルムにヒドロキシチロソールを加えて、フィルムの酸化抵抗性をさらに増強することを意図する。
【0006】
サルモネラはグラム陰性のブラントエンド(blunt-ended)のバシラス・ブレビス(bacillus brevis)である。サルモネラに対する日常的な試験手順の使用は複雑であり、時間がかかり、そして、手間がかかる。したがって、迅速かつ正確な検出方法の確立が必要である。サルモネラ試験では、プロピレングリコールとニュートラルレッドを培地に加え、サルモネラはプロピレングリコールを分解して酸を生成することができ、ニュートラルレッド指示薬は赤色に変わる。これは、サルモネラの迅速な同定を導く。
【0007】
本発明は、あまり研究されていないチョウザメ皮ゼラチンフィルムを使用する。チョウザメ皮ゼラチン溶液にヒドロキシチロソールを加え、次に膜液プレート敷設法(membrane liquid plate laying method)によりヒドロキシチロソールチョウザメ皮フィルムを調製する。実験結果はヒドロキシチロソールはチョウザメ皮ゼラチンフィルムの抗酸化効果を有意に増強し、チョウザメ皮ゼラチンフィルムの機械的特性を効果的に改善することができることを示す。さらに、酸を生成するプロピレングリコールのサルモネラ特異的分解を検出する方法を食品包装フィルムに適用して、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを調製し、これを、サルモネラの迅速検出に使用することができる。食品の保存および貯蔵に有益であるだけでなく、食品または薬物がサルモネラによって汚染されているかどうかを迅速かつ正確に判断することができる包装材料が開発される。ヒドロキシチロソール含有チョウザメ皮ゼラチンフィルムは、食品包装において広範な用途を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
1つの実施形態において、抗酸化活性およびサルモネラ検出能力を有するヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを調製する方法は、下記の工程、
(1)ニュートラルレッド指示薬溶液と蒸留水とを、室温で1:65~1:70(v:v)の比で混合し、混合溶液を得て、前記混合溶液に変色するまで1mol/LのNaHCO3溶液を加えてアルカリ性溶液を得る工程と、
(2)工程(1)で得られた前記アルカリ性溶液を、チョウザメ皮ゼラチン:蒸留水=1:8~1:12(w:w)の比でのチョウザメ皮ゼラチンと蒸留水との混合物に加えてアルカリ性ゼラチン溶液を得る工程と、
(3)チョウザメ皮ゼラチン:ヒドロキシチロソール:グリセリン=1:0.3:0.2~1:0.6:0.4(w:w:w)の比でのヒドロキシチロソールとグリセリン、並びに、プロピレングリコールを前記アルカリ性ゼラチン溶液に加えて、ヒドロキシチロソールゼラチン溶液を得て、40~70℃で前記ヒドロキシチロソールゼラチン溶液を加熱する工程と、
(4)工程(3)からの前記ヒドロキシチロソールゼラチン溶液を超音波処理し、前記ヒドロキシチロソールゼラチン溶液を清浄なプレキシガラスプレート上に均一に置き、前記ヒドロキシチロソールゼラチン溶液を超清浄な作業台上で室温にて乾燥させて、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを得る工程と、を含む方法。
【0009】
別の実施形態では、前記ニュートラルレッド指示薬溶液は、ニュートラルレッドとエタノールとを5:95(w:w)の比で含む。
【0010】
別の実施形態では、前記ニュートラルレッド指示薬溶液の蒸留水に対する比は1:67(v:v)である。
【0011】
別の実施形態では、前記アルカリ性溶液のチョウザメ皮ゼラチンと蒸留水との混合物に対する比は1:100(v:v)である。
【0012】
別の実施形態において、チョウザメ皮ゼラチンと蒸留水との比は、1:10(w:w)である。
【0013】
別の実施形態では、チョウザメ皮ゼラチン:ヒドロキシチロソール:グリセリンの比は1:0.4:0.3(w:w:w)である。
【0014】
別の実施形態では、前記ヒドロキシチロソールゼラチン溶液は60℃で加熱される。
【0015】
1つの実施形態において、抗酸化活性およびサルモネラ検出能力を有するヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムは、請求項1の方法に従って調製される。
【0016】
上記した一般的な説明と、下記の詳細な説明とは、どちらも例示的および説明的であり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供するように意図されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は本発明の実施形態を示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【
図1】
図1は、チョウザメ皮ゼラチンフィルムの表面構造のSEM画像である。
【
図2】
図2は、チョウザメ皮ゼラチンフィルムの断面構造のSEM画像である。
【
図3】
図3は、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム(実施例1)の表面構造のSEM画像である。
【
図4】
図4は、オキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの横断構造のSEM画像である(実施例1)。
【
図5】
図5は、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム(実施例1)のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)である。
【
図6】
図6は、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム(実施例1)の熱重量分析(TGA)結果を示す。
【
図7】
図7は、水滴とヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム(実施例1)との間の接触角を示す。
【
図8】
図8は、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムのサルモネラ検出能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図示の実施形態の詳細な説明
次に、本発明の実施形態を詳細に参照し、その実施例を添付の図面に示す。下記の実施例は本発明を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
本実施例は、出発物質として706gのオリーブ葉および235gのチョウザメ皮を使用する。ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを調製する方法は、下記の工程を含む。
【0020】
(1)ヒドロキシチロソールの調製:
706gのオリーブ葉粉末を3530mLの0.2M塩酸溶液に加えた。この溶液を水浴中で80℃にて4時間加熱し、2Mの水酸化ナトリウムで中和し、遠心分離して濾液を回収した。濾液を濃縮し、4倍温水で希釈した濃縮濾液をマクロポーラス樹脂で精製し、溶出液は45%エタノールであり、流速は1.5BVであった。溶出液を蒸発濃縮し、4倍量のメタノールを加えて60℃で再結晶し、20gのヒドロキシチロソールの粗生成物を、収率2.83%で得た。
【化1】
【0021】
(2)チョウザメ皮ゼラチンの調製:
235gのチョウザメ皮を、1%のH2O2(v/v)を含む0.1MのNaOH溶液と混合して、1/20(w/v)のチョウザメ皮/アルカリ性溶液比を有する混合物を形成した。この混合物を室温で400rpmの速度で24時間撹拌し、アルカリ性溶液を8時間ごとに交換した。アルカリ処理した魚皮を10%のイソプロパノール(v/v)で4時間脱脂し、氷水で洗浄して中性または弱アルカリ性にした。脱脂したチョウザメ皮を、0.05Mの酢酸中に、4℃にて、チョウザメ皮/酸溶液比1:10(w/v)で、4時間浸漬し、穏やかに撹拌し、中性になるまで蒸留水で洗浄し、次いで蒸留水の10倍(w/v)に浸漬した。処理したチョウザメ皮は、チョウザメ皮ゼラチンが抽出されるまで、継続的に攪拌された。ゼラチン溶液を室温で30分間遠心分離し、上清を濃縮し、凍結乾燥し、4℃で保存した。チョウザメ皮ゼラチンは50gであり、収率は21.28%であった。
【0022】
(3)ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの調製:
500mLの水に7mLのニュートラルレッド指示薬溶液を加え、適量の1MのNaHCO3溶液を加えた。工程(2)で得られた50gのチョウザメ皮ゼラチンを溶液に加え、均一に撹拌した。得られた溶液を3~4時間保持した。溶液を完全に膨潤させた後、20gのヒドロキシチロソール、15mLのグリセロール、および適切な量のプロピレングリコールを加え、60℃で30分間連続的に撹拌し、次いで二重層濾紙で濾過した。濾液を超音波脱泡処理し、清浄なプレキシガラス板(15×15cm2)上に均等に広げ、25℃、50±5%相対湿度(RH)の対流式オーブン内で24時間乾燥した。乾燥したフィルム(ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム)を手で剥離し、乾燥機中でヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを保存した。
【0023】
実施例2
本実施例は、出発物質として706gのオリーブ葉および235gのチョウザメ皮を使用する。ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを調製する方法は、下記の工程を含む。
【0024】
(1)ヒドロキシチロソールの調製:
706gのオリーブ葉粉末を3530mLの0.2M塩酸溶液に加えた。この溶液を水浴中で80℃にて4時間加熱し、2Mの水酸化ナトリウムで中和し、遠心分離して濾液を回収した。濾液を濃縮し、4倍温水で希釈した濃縮濾液をマクロポーラス樹脂で精製し、溶出液は45%エタノールであり、流速は1.5BVであった。溶出液を蒸発濃縮し、4倍量のメタノールを加えて60℃で再結晶し、20gのヒドロキシチロソールの粗生成物を、収率2.83%で得た。
【0025】
(2)チョウザメ皮ゼラチンの調製:
235gのチョウザメ皮を、1%のH2O2(v/v)を含む0.1MのNaOH溶液と混合して、1/20(w/v)のチョウザメ皮/アルカリ性溶液比を有する混合物を形成した。この混合物を室温で400rpmの速度で24時間撹拌し、アルカリ性溶液を8時間ごとに交換した。アルカリ処理した魚皮を10%のイソプロパノール(v/v)で4時間脱脂し、氷水で洗浄して中性または弱アルカリ性にした。脱脂したチョウザメ皮を、0.05Mの酢酸中に、4℃にて、チョウザメ皮/酸溶液比1:10(w/v)で、4時間浸漬し、穏やかに撹拌し、中性になるまで蒸留水で洗浄し、次いで蒸留水の10倍(w/v)に浸漬した。処理したチョウザメ皮は、チョウザメ皮ゼラチンが抽出されるまで、継続的に攪拌された。ゼラチン溶液を室温で30分間遠心分離し、上清を濃縮し、凍結乾燥し、4℃で保存した。チョウザメ皮ゼラチンは50gであり、収率は21.28%であった。
【0026】
(3)ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの調製:
500mLの水に7mLのニュートラルレッド指示薬溶液を加え、適量の1MのNaHCO3溶液を加えた。工程(2)で得られた50gのチョウザメ皮ゼラチンを溶液に加え、均一に撹拌した。得られた溶液を3~4時間保持した。溶液を完全に膨潤させた後、20gのヒドロキシチロソール、15mLのグリセロール、および適切な量のプロピレングリコールを加え、50℃で30分間連続的に撹拌し、次いで二重層濾紙で濾過した。濾液を超音波脱泡処理し、清浄なプレキシガラス板(15×15cm2)上に均等に広げ、25℃、50±5%相対湿度(RH)の対流式オーブン内で24時間乾燥した。乾燥したフィルム(ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム)を手で剥離し、乾燥機中でヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを保存した。
【0027】
実施例3
本実施例は、出発物質として706gのオリーブ葉および235gのチョウザメ皮を使用する。ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを調製する方法は、下記の工程を含む。
【0028】
(1)ヒドロキシチロソールの調製:
706gのオリーブ葉粉末を3530mLの0.2M塩酸溶液に加えた。この溶液を水浴中で80℃にて4時間加熱し、2Mの水酸化ナトリウムで中和し、遠心分離して濾液を回収した。濾液を濃縮し、4倍温水で希釈した濃縮濾液をマクロポーラス樹脂で精製し、溶出液は45%エタノールであり、流速は1.5BVであった。溶出液を蒸発濃縮し、4倍量のメタノールを加えて60℃で再結晶し、20gのヒドロキシチロソールの粗生成物を、収率2.83%で得た。
【0029】
(2)チョウザメ皮ゼラチンの調製:
235gのチョウザメ皮を、1%のH2O2(v/v)を含む0.1MのNaOH溶液と混合して、1/20(w/v)のチョウザメ皮/アルカリ性溶液比を有する混合物を形成した。この混合物を室温で400rpmの速度で24時間撹拌し、アルカリ性溶液を8時間ごとに交換した。アルカリ処理した魚皮を10%のイソプロパノール(v/v)で4時間脱脂し、氷水で洗浄して中性または弱アルカリ性にした。脱脂したチョウザメ皮を、0.05Mの酢酸中に、4℃にて、チョウザメ皮/酸溶液比1:10(w/v)で、4時間浸漬し、穏やかに撹拌し、中性になるまで蒸留水で洗浄し、次いで蒸留水の10倍(w/v)に浸漬した。チョウザメ皮は、チョウザメ皮ゼラチンが抽出されるまで、継続的に攪拌された。ゼラチン溶液を室温で30分間遠心分離し、上清を濃縮し、凍結乾燥し、4℃で保存した。チョウザメ皮ゼラチンは50gであり、収率は21.28%であった。
【0030】
(3)ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの調製:
500mLの水に7mLのニュートラルレッド指示薬溶液を加え、適量の1MのNaHCO3溶液を加えた。工程(2)で得られた50gのチョウザメ皮ゼラチンを溶液に加え、均一に撹拌した。得られた溶液を3~4時間保持した。溶液を完全に膨潤させた後、20gのヒドロキシチロソール、15mLのグリセロール、および適切な量のプロピレングリコールを加え、70℃で30分間連続的に撹拌し、次いで二重層濾紙で濾過した。濾液を超音波脱泡処理し、清浄なプレキシガラス板(15×15cm2)上に均等に広げ、25℃、50±5%相対湿度(RH)の対流式オーブン内で24時間乾燥した。乾燥したフィルム(ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム)を手で剥離し、乾燥機中でヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを保存した。
【0031】
上記実施例1~3で調製したヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを比較することにより、実施例1の条件が好ましい。
【0032】
実施例4
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの抗酸化活性測定-DPPH法
【0033】
まず、実施例1のヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを5%のSDSに溶解し、85℃の水浴中に1時間保持した後、不溶性のフラグメントを室温で5分間遠心分離することにより除去した。1.5mLのフィルム溶液および1mLの95%エタノールを1.5mLの0.1MのDPPH溶液と混合し、混合物を完全に混合し、室温で30分間反応させた。混合物を8000×gで5分間濃縮した。517nmにおける混合物の吸光度Aiを分光光度計によって測定した。1.5mLのフィルム溶液と混合した1.5mLの95%エタノールの吸光度Ajおよび0.1MのDPPH溶液と混合した1.5mLの95%エタノールの吸光度Aoも測定した。牛皮(cowhide)ゼラチンフィルムを比較として使用した。牛皮ゼラチンフィルムの抗酸化活性をDPPHクリアランス法により測定し、吸光度の変化に応じて消去速度を分光光度法により算出した。DPPHラジカル消去活性は、下記のように計算した。
【0034】
クリアランス率(%)=〔1-(Ai-Aj)/Ao〕×100%
【0035】
DPPH試験結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
上記の表1に示すように、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムのクリアランス率は33.1%であり、牛皮ゼラチンフィルムのクリアランス率は20.0%であった。従って、ヒドロキシチロソールチョウザメの皮ゼラチンフィルムの抗酸化活性は、牛皮ゼラチンフィルムよりも高かった。
【0038】
実施例5
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの抗酸化活性測定-還元法
【0039】
酸性溶液中では、還元性物質がフェリシアン化カリウムと反応してフェロシアン化カリウムを生成する。次いで、Fe2+はフェリシアン化カリウム(高濃度)と反応して可溶性プルシアンブルーを生成する。プルシアンブルーは、700nmでの吸光度によって測定することができる。700nmにおけるより高い吸光度は、物質のより大きな還元能力を示す。
【0040】
実施例1の2mLのヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの水溶液を、2.5mLの0.2Mリン酸緩衝液(pH6.6)および2.5mLの1%フェリシアン化カリウムに加えた。混合物を50℃で20分間反応させ、2.5mLの10%トリクロロ酢酸を加えた。混合物を50℃で20分間反応させた後、2000×g、22℃で10分間遠心分離した。上清(2.5mL)を2.5mLの脱イオン水および0.5mLの0.1%塩化第二鉄(ferricchloride)と混合した。反応10分後、溶液の吸光度を700nmで測定した。1.0mg/mLのビタミンCを含有する薄フィルム溶液を陽性対照として使用した。吸光度が高いほど還元能が強い。フィルム溶液およびビタミンCを含む対照フィルム溶液の吸光度を3回測定し、その平均値を吸光度値とした。表2に結果が示される。
【0041】
【0042】
表2は試料の抗酸化活性がビタミンCを1.0mg/mL含有するフィルム溶液のそれに近いことを示しており、これは、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムが良好な還元効果を有することを示している。
【0043】
実施例6
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの厚さ測定
【0044】
実施例1のヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの厚さを厚さ計で測定し、ランダムな5箇所のフィルム試料の厚さを測定し、その平均値を厚さ値とした。厚さ測定結果を表3に示す。
【0045】
【0046】
全体:d=(d1+d2+d3)÷3=5.07×10-2mm
【0047】
実験では、プレキシガラスプレートを超清浄な作業台上に置いた。調製したゼラチン溶液をフラットプレート上で均一に膨張させるために、トップリング法を用いた。フィルムの5つのランダムな位置の厚さの差は約0.007mmであり、これはフィルムの厚さが均一で滑らかであることを示している。
【0048】
実施例7
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの力学特性測定
【0049】
フィルムの機械的特性は、膜材料の分子量、架橋度、溶媒および可塑剤含量に依存する。フィルムの機械的特性は、主に引張強さ(TS)および破断点伸び(EAB)によって反映される。TSはフィルムの強度を反映する指標であり、EABはフィルムの可塑性を反映する。実施例1のヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを室温および50±5%RHで72時間置いた。3cmの初期グリップ長を有するEライトフィルム試料(2×5cm2)を、それらの機械的特性を試験するために調製した。各フィルム試料の平均厚さを用いて断面積を推定した。フィルムの初期クランプ分離と機械的クロスヘッド速度を30mm/分に設定した。TSおよびEABは、最大荷重および最終破壊伸長を使用して計算される。ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムをブランク対照として使用した。
【0050】
具体的な計算式は下記の通りである。
【0051】
TS=Fm/(dO×W)
【0052】
式中、TS:引張強度(MPa)、Fm:検体の破壊時の最大張力(N)、d:薄フィルムの厚さ(mm)、W:フィルム幅(mm)
【0053】
EAB=(△L/LO)×100%=[(L1-LO)/LO]×100%
【0054】
式中、LO:フィルムの元の長さ(mm)、△L:フィルムが破損したときに伸張された長さ(mm)、L1:フィルムが破損したときに到達した最大長(mm)。
【0055】
実施例1で調製したヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムのTSおよびEABの結果を表4に示す。
【0056】
【0057】
表4に示すように、ヒドロキシチロソールを含むチョウザメ皮ゼラチンフィルムの機械的特性は、ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムの機械的特性よりも良好である。
【0058】
実施例8
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの水溶性測定
【0059】
実施例1のヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム試料(3×2cm2)を105℃で24時間乾燥し、秤量した(W1)。次に、フィルムを15mLの蒸留水に浸漬し、25℃の振動水浴中に置いた。24時間後、凝固したフィルムを除去し、乾燥させ(105℃、24時間)、秤量した(W2)。ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムをブランク対照として使用した。溶解した乾燥物質の重量は、下記のように計算した。
【0060】
WS(%)=(W1-W2)×100/W1
【0061】
実施例1で調製したヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの溶解性は74.26±0.18%であり、ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムの溶解性は89.49±0.25%であった。結果はヒドロキシチロソールを含むチョウザメ皮ゼラチンフィルムが一般に水溶性であり、低含水量の食品包装材料に適していることを示した。
【0062】
実施例9
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの水蒸気透過率測定
【0063】
フィルムの水蒸気透過係数とは、単位時間および単位蒸気圧力差におけるフィルムの単位厚さおよび単位面積を通過する蒸気量をいう。フィルムの水蒸気透過係数は、フィルムの水分透過性を測定するための非常に重要なパラメータである。水蒸気透過係数が小さいほど、通過する水蒸気が少なくなり、耐水性が向上する。水蒸気透過係数はフィルム構造の密度を測定する指標である。
【0064】
実施例1で調製したヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルム試料を、乾燥シリカゲル(0% RH)を含むボトル中に、シリカゲル真空グリースおよびゴムガスケットで封入した。ボトルを、蒸留水を含む乾燥機に入れ、乾燥したゼラチンフィルムを水蒸気透過器で測定する。
【0065】
実施例1で調製したヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムのWVP値は1.99±0.29×10-10gm-1Pa-1s-1である。ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムのWVP値は2.65±0.07×10-10gm-1Pa-1s-1であり、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムはコンパクトで防水性能が良好であることを示した。
【0066】
実施例10
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの光および透明度測定
【0067】
実施例1で作製したゼラチンフィルム試料から、表面が平滑な鋳型試料を選び、4cm×1cmの大きさに切断し、比色皿(キュベット)(1cm)の片側に取り付け、UV-vis分光光度計の試料プールに入れ、600nmでの吸光度を測定した。このようにして、薄フィルムの光透過率と透明度を計算した。ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムをブランク対照として使用した。
【0068】
実施例1で作製したヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの波長600nmにおける光透過率および透明度は、それぞれ83.31%および2.49±0.03であった。600nm波長におけるヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムの光透過率は91.84%であり、透明度は0.74±0.02である。実験データは、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの光透過率がヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムのそれより低いことを示した。これは良好な光耐性を有し、対応する透明性はヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムよりも高く、このことは生鮮食品の元の色および外観を良好に反映することができ、食品包装に適している。
【0069】
実施例11
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの特性評価
【0070】
フィルムの微細構造測定
走査型電子顕微鏡(SEM)分析:実施例1で調製した薄フィルム試料の断面を液体窒素中で破壊し、試料の表面および断面を電子顕微鏡テーブルに固定し、金スプレー処理を行い、走査型電子顕微鏡下に置いた。フィルムの表面および断面構造を観察し、ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムをブランク対照として使用した。
図1は、ブランク標準物質の表面を示す。
図2は、ブランク標準の断面を示す。
図3は、ヒドロキシ
チロソールフィルムを含む試料の表面を示す。
図4は、ヒドロキシ
チロソールフィルムを含む試料の断面を示す。ブランク標準物質の表面は滑らかで均一であり、脆化領域はなく、分子は規則正しく配列していた。ヒドロキシチロソールを含むチョウザメ皮ゼラチンフィルムの顕微鏡写真は同様の特徴を示し、表面は対照群のものより滑らかで均一であった。破断面では、ヒドロキシチロソールを含むフィルムは対照フィルムよりもコンパクトな構造を示し、粒子または明白な層状化現象はなく、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムが食品包装および保存に使用できる均一分散システムであることを示した。
【0071】
(2)フーリエ変換赤外分光法(FTIR)
実施例1のヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムのFTIRスペクトルをFTIR分光計で測定した。分析の前に、フィルムを、P2O5を含有する乾燥機中に室温で10日間置いて、最大の脱水を達成した。500~4000cm-1の範囲では、4cm-1の解像度で32スキャンを行い、スペクトル画像を自動的に収集して解析した。FTIRスペクトルを用いて、分子レベルでの薄フィルム試料における官能基および構造変化をモニターする。
【0072】
3315.1cm-1は、N-HおよびOHの伸縮振動ピークである。
【0073】
1600cm-1:アミドI帯(コリオ(Corio)およびイミンHの伸縮振動ピーク)。
【0074】
1542.9cm-1:アミドII帯(NH曲げ振動ピーク)。
【0075】
1240cm-1:アミドIII帯(NH変形ピーク)。
【0076】
1336cm-1:アミドIV帯、プロリンの側鎖上のCH2の左右の揺れによって引き起こされる。
【0077】
1452cm-1は、N-H伸張またはN-H変形のピークである。
【0078】
1045cm-1は、C-O-CおよびC-O-Hの伸縮振動ピークである。
【0079】
FTIRの結果は、ヒドロキシチロソールの添加がゼラチンとの架橋を増強し、よりコンパクトな膜ネットワークを形成したことを示す。
【0080】
(3)熱重量分析(TGA)
分析の前に、実施例1のヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルターを、室温で10日間P2O5を含む乾燥機に入れた。熱重量分析装置を用いて、脱水フィルムを10℃/分の速度で20℃から600℃までスキャンした。窒素を精製ガスとして使用し、流速は20mL/分であった。表4に、ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの熱分解温度(Td、Δ℃)および重量損失(Δw、%)を示す。
【0081】
【0082】
注記:Δ1、およびΔ2は、それぞれ、フィルムの第1および第2ステージの重量損失を表す。
【0083】
TGAの結果を
図6に示す。ゼラチンフィルムは、重量損失の2つの主要な段階を示す。第1段階は51.2℃~98.6℃である。ゼラチンフィルムの重量損失はゆっくりで、重量は約9.89%減少した。ゼラチンフィルムの重量減少は、ゼラチンフィルムによって吸着された遊離水、構造の結合水、およびグリセロールプロピレングリコールから構成され得る。第2段階は198.4℃~397.5℃で、重量は約39.74%減少した。この段階は、フィルム中の分子量ペプチドおよびゼラチン鎖の分解によるものであり得る。420℃の後、熱分析曲線はほとんど変化せず、タンパク質は基本的に完全に分解した。チョウザメ皮ゼラチンフィルムは良好な熱安定性を有し、熱安定性の改善は食品包装フィルムの開発に良好に適用できることが見出された。
【0084】
実施例12
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムの疎水性測定
【0085】
実施例1のヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムを0.5cm×5cmの大きさの矩形試料に切断し、平坦で清潔なガラスシート上に固定した。水滴と薄フィルムとの間の接触角を、ビデオ光学接触角試験機によって測定して、フィルムの疎水性度を測定した。水滴容量を5μLに設定し、薄フィルム試料上で3滴をランダムに選択し、接触角を記録し、平均値を計算した。結果を
図7および表6に示す。
【0086】
【0087】
表6および
図7は、ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムの接触角が90°を超え、疎水性であることを示す。ヒドロキシチロソールの接触角は全体として減少するが、その接触角は依然として90°を超え、疎水性であり、少量の水を含む食品包装に使用することができる。
【0088】
実施例13
ヒドロキシチロソールチョウザメ皮ゼラチンフィルムのサルモネラ検出能
【0089】
(1)実施例1のヒドロキシチロソールを含むチョウザメ皮ゼラチンフィルムを、サルモネラ検出能について試験した。ヒドロキシチロソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムをブランク対照として使用した。
【0090】
(2)サルモネラを比濁管と同じ直径の試験管に入れ、無菌蒸留水を加え、No.3比濁管と同じ濃度の細菌懸濁液を調製した。
【0091】
(3)調製した細菌懸濁液を、実施例1のヒドロキシチロソールを含むチョウザメ皮ゼラチンフィルムおよびヒドロキシチロ
ソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルム上に噴霧した。フィルムの色の変化を観察した。結果を
図8に示す。
【0092】
フィルム上に細菌溶液を噴霧した後、フィルムの変化を観察した。
図8に示すように、ヒドロキシチロソール、プロピレングリコールおよびニュートラルレッドを含有するフィルムはサルモネラ感染により橙色から紫色赤色に変化し、サルモネラがプロピレングリコールを分解して酸を生成し、ニュートラルレッドを赤色に変化させたことを示した。その結果、本法はサルモネラの検出に感受性があり、感染前後で明らかに変化し、サルモネラの迅速検出に適していることが分かった。ヒドロキシチロ
ソールを含まないチョウザメ皮ゼラチンフィルムには色の変化はなかった。
【0093】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明において様々な改変および変更を行うことができることは、当業者には明らかである。したがって、本発明の目的は添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内にある限り、本発明の改変形態および変形形態を包含することである。