IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ターンオン有限会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】充電式イベント用発光具
(51)【国際特許分類】
   F21L 4/00 20060101AFI20220926BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20220926BHJP
   F21V 23/04 20060101ALI20220926BHJP
   F21V 25/04 20060101ALI20220926BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220926BHJP
【FI】
F21L4/00 450
F21L4/00 100
F21V23/00 140
F21V23/04
F21V25/04
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022067621
(22)【出願日】2022-04-15
【審査請求日】2022-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502458567
【氏名又は名称】ターンオン有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】金野 隆
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-327524(JP,A)
【文献】特開2005-235565(JP,A)
【文献】実開平06-021102(JP,U)
【文献】特開平10-069802(JP,A)
【文献】特開昭61-133501(JP,A)
【文献】特表2009-503805(JP,A)
【文献】特表2014-505327(JP,A)
【文献】登録実用新案第3131601(JP,U)
【文献】特開平09-180536(JP,A)
【文献】特開2008-258083(JP,A)
【文献】特開2015-022962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 23/00-99/00
F21L 2/00-27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色を照らすカバーで覆われた発光部と、
把持部と、
前記発光部に光を供給する光源と、
前記光源の点灯及び消灯を制御する制御手段であって、前記光源と直接又は間接的に接続されこれと通電する制御手段と、
前記光源を点灯及び消灯するためにユーザーが操作し前記制御手段に指令を与える点滅手段と、
前記光源及び前記制御手段と直接又は間接的に接続されこれらと通電する充電可能な電源と、
前記電源の正極から負極までの通電をいずれかの箇所において遮断するための断電手段と、
を有し、
前記断電手段が、前記充電可能な電源からの電力により前記光源が点灯しているときに、前記電源の正極から負極までの通電のための接続をいずれかの箇所において物理的に切り離すことにより前記いずれかの通電を遮断する物理的断電手段であり、
該物理的断電手段が、前記電源の正極から負極までの通電のための接続のいずれかの箇所に取り付けられる切替部を有し、前記切替部により前記接続の物理的な切り離しと接触を切り替える
ことを特徴とする充電式イベント用発光具。
【請求項2】
前記切替部が摺動式切替部であり、該摺動式切替部が摺動されることにより前記接続の物理的な切り離しと接触を切り替える請求項に記載の充電式イベント用発光具。
【請求項3】
前記切替部が螺子状切替部であり、該螺子状切替部の締め付けと弛緩により前記接続の物理的な切り離しと接触を切り替える請求項に記載の充電式イベント用発光具。
【請求項4】
前記切替部が引張式部材であり、該引張式部材により前記接続の物理的な切り離しと接触を切り替える請求項に記載の充電式イベント用発光具。
【請求項5】
前記断電手段が、前記電源から給電される電力が既定の数値を超えると給電を自動的に遮断する回路である請求項1に記載の充電式イベント用発光具。
【請求項6】
発光色を照らすカバーで覆われた発光部と、前記発光部と接続する把持部と、前記発光部に光を供給する光源と、前記光源の点灯及び消灯を制御する制御手段であって、前記光源に直接又は間接的に接続されこれと通電する制御手段と、前記光源を点灯及び消灯するためにユーザーが操作し前記制御手段に指令を与える点滅手段と、前記光源及び前記制御手段と直接又は間接的に接続されこれと通電する充電可能な電源と、を有する充電式イベント用発光具の断電方法であって、
前記充電可能な電源からの電力により前記光源が点灯しているときに、前記電源の正極から負極までの通電のための接続のいずれかの箇所において接続を物理的に切り離すことにより通電遮断されるように構成されると共に、前記電源の正極から負極までの通電のための接続のいずれかの箇所における切替により、前記接続の物理的な切り離しと接触が切り替えられるように構成される
ことを特徴とする充電式イベント用発光具の断電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンサートや各種イベントなど(本明細書において、総称して「イベント」という)で主に観客や参加者が用いるペンライト、スティックライトなどの発光器具(本明細書において、「イベント用発光具」と称する。本発明における「イベント用発光具」はこのような発光器具全般を指す。)に関する。なお、本発明の発光部の形状は、ペン型や棒状のものに限られず、例えば、ハート形、星形、円盤状、その他の形状が含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年のイベントの特色の一つとして、観客がイベント用発光具を発光させてイベントに参加し、出演者と共にイベントを盛り上げたり楽しんだりすることが挙げられる。特にアイドルのコンサートなどにおいては、観客がイベント用発光具を用いて参加することが必須ともいえる状況である。
【0003】
イベント用発光具は、イベント用グッズないし自己が応援するアーティストやアイドルのグッズとしても定着しており、アーティストの名前が記載されたり特定のデザインが施されたりするなど、様々な種類のものが販売されるに至っている。例えばアイドルグループの場合、構成メンバーそれぞれを応援するための異なる種類のイベント用発光具が販売されることが多い。また、例えば同じアーティストでも、イベントごとに新たなイベント用発光具が販売されるのが一般的になっている。そのため、複数のイベント用発光具を所持する需要者が多く、これを多数所持する者も少なくない。
【0004】
従来のイベント用発光具は、電源に一次電池(主に、単三型や単四型の乾電池、ボタン電池。以下、「一般的な一次電池」ともいう。)が用いられている。一般的な一次電池を用いた製品は、その構成上設計や製造が容易で、販売においても各種法令の規制に合致し易い。かかる製品は、製造コスト及び販売価格を比較的抑えることもできるため、上記状況における需要者のニーズにも応えられる点で便宜である。このような事情から、現在のところ、ほとんどのイベント用発光具は一般的な一次電池を電源としている。
【0005】
もっとも、これらの一次電池を電源とする場合にも問題点は存する。例えばボタン電池(LR44型/1.5v/120mA)を3個使用するイベント用発光具の場合、稼働できる時間は5~6時間程度である。コンサート等イベントの1回の公演時間は1時間30分~4時間程度のことが多いため、一般的な一次電池を電源とするイベント用発光具では、1回の公演で保有電力のかなりの部分が消費されてしまい、電池交換を頻繁に行わなければならないという問題が存する。
【0006】
上記の点に対しては、電源の保有電力を増加させることで対応することが挙げられる。保有電力を増加させることにより、SDGs(Sustainable Development Goals website)、特に目標12「つくる責任 つかう責任」にも合致するものとなり得る。
【0007】
また、例えば複数のメンバーが在籍するアイドルグループのコンサート等のイベントにおいては、観客(イベント参加者)は、自己が応援するメンバーが舞台に登場したときに、そのメンバーの(各自異なる)イメージカラーの発光色でイベント用発光具を発光させて応援するといったことを行う。そのため、1本のイベント用発光具で多数の発光色が得られる多色ペンライトが普及している。しかし、上記のように電力容量が比較的少ない一般的な一次電池を電源としつつ、1本のイベント用発光具で多数の発光色を得ようとすると、電力消耗に従い所望の発光色が得られにくくなるという現象(問題)が生じる。このような点から、これに対処するための技術が提案されているが(特許文献1)、もし電源の保有電力を増加させることができれば、この問題に対しても更に効果的に対処することが可能となる。
【0008】
ここで、電源の保有電力を増加させる技術として、充電式電池・蓄電池といった二次電池、特に一般的な一次電池に比し多くの電力を繰り返し充電できるリチウムイオン電池等の高性能バッテリーを電源としてイベント用発光具を構成することが考えられる。イベント用発光具の電源に充電式電池を用いることは、特許文献2でも示唆されている(段落[0035]。ただし、リチウムイオン電池等の高性能バッテリーについては記載されていない)。
【0009】
高性能バッテリーを用いれば、イベント用発光具における上記のような問題点に対処することが可能となるため、今後、これを安価に組み込む技術が一般化すれば、電源を高性能バッテリーとするイベント用発光具が普及していくことも予想される。
【0010】
ところが、かかる二次電池、特にリチウムイオン電池は、一般的な一次電池に比し電圧及びエネルギー密度が高い。イベント用発光具はユーザーが振って使用するのみならず、例えば興奮したユーザーが、両手に持ったイベント用発光具どうしをぶつけたり、イベント用発光具で前の椅子等を叩いたりするといったことも少なくない。また、屋内においては、イベント会場に設置された空気清浄機等によって静電気が発生することがあり、野外公演においては、雨や雪が降ることなどもある。これらの外部要因により予期せず配線がショートするなど、イベント用発光具は使用環境如何で電気系統に故障を生じるおそれがある器具であり、リチウムイオン電池等を用いた場合、電力容量が大きいことから何らかの原因で電流値又は電圧値が急激に上昇する可能性もあり得る。電流値又は電圧値が急激に上昇すると、イベント用発光具は高温発熱したり、ひいては発火したりするおそれもあると考えられる。
【0011】
イベント用発光具に高性能バッテリーを用いる場合の上記問題点については、これまで提起されることがなく、またこれを解決するための技術や製品も存していない。
【0012】
上記のとおり、イベント用発光具は、コンサートにおいて定着しているのみならず、ユーザーは複数ないし多数のイベント用発光具を所持する場合が少なくない。にもかかわらず、高性能バッテリーを用いたイベント用発光具が上記安全面での問題に対処することなく普及してしまうと、これに起因する事故が発生するおそれは高まることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2015-141754
【文献】特開2022-12665
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、何らかの原因で電流値又は電圧値が急激に上昇した場合に、高温発熱や発火を防ぐ手段を有する充電式イベント用発光具を提供することを課題としてなされたものである。
【0015】
また、本発明は、イベント用発光具が高温発熱や発火状態となった場合にかかる状態の更なる悪化を防ぐ手段を有する充電式イベント用発光具を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、
第1の側面として、
発光部と、
把持部と、
前記発光部に光を供給する光源と、
前記光源の点灯及び消灯を制御する制御手段であって、前記光源と直接又は間接的に接続されこれと通電する制御手段と、
前記光源を点灯及び消灯するためにユーザーが操作し前記制御手段に指令を与える点滅手段と、
前記光源及び前記制御手段と直接又は間接的に接続されこれらと通電する充電可能な電源と、
前記電源の正極から負極までの通電をいずれかの箇所において遮断するための断電手段と、
を有することを特徴とする充電式イベント用発光具
を提供する。
【0017】
第2の側面として、本発明は、
前記断電手段が、前記電源の正極から負極までの通電のための接続をいずれかの箇所において物理的に切り離すことにより前記いずれかの通電を遮断する物理的断電手段である上記の充電式イベント用発光具
を提供する。
【0018】
第3の側面として、本発明は、
前記物理的断電手段が、前記電源の正極から負極までの通電のための接続のいずれかの箇所に取り付けられる切替部を有し、該切替部により前記接続の物理的な切り離しと接触を切り替える上記の充電式イベント用発光具
を提供する。
【0019】
第4の側面として、本発明は、
前記切替部が摺動式切替部であり、該摺動式切替部が摺動されることにより前記接続の物理的な切り離しと接触を切り替える上記の充電式イベント用発光具
を提供する。
【0020】
第5の側面として、本発明は、
前記切替部が螺子状切替部であり、該螺子状切替部の締め付けと弛緩により前記接続の物理的な切り離しと接触を切り替える上記の充電式イベント用発光具
を提供する。
【0021】
第6の側面として、本発明は、
前記切替部が引張式部材であり、該引張式部材により前記接続の物理的な切り離しと接触を切り替える上記の充電式イベント用発光具
を提供する。
【0022】
第7の側面として、本発明は、
前記断電手段が、前記電源から給電される電力が既定の数値を超えると給電を自動的に遮断する回路である上記の充電式イベント用発光具
を提供する。
【0023】
第8の側面として、本発明は、
発光部と、前記発光部と接続する把持部と、前記発光部に光を供給する光源と、前記光源の点灯及び消灯を制御する制御手段であって、前記光源に直接又は間接的に接続されこれと通電する制御手段と、前記光源を点灯及び消灯するためにユーザーが操作し前記制御手段に指令を与える点滅手段と、前記光源及び前記制御手段と直接又は間接的に接続されこれと通電する充電可能な電源と、を有する充電式イベント用発光具の断電方法であって、
前記電源の正極から負極までの通電のための接続のいずれかの箇所において接続を物理的に切り離すことにより通電を遮断することを特徴とする充電式イベント用発光具の断電方法
を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、イベント用発光具において何らかの原因で電流値又は電圧値が急激に上昇した場合に、高温発熱や発火を防ぐことができる。
【0025】
また、本発明によれば、イベント用発光具が高温発熱や発火状態となった場合に、かかる状態の更なる悪化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施例におけるイベント用発光具を示す図である。
図2】本発明の一実施例におけるイベント用発光具を示す図であり、一部を拡大した図である。(A)は通電し得る状態を示す図であり、(B)は通電しない(断電した)状態を示す図である。
図3】本発明の他の実施例におけるイベント用発光具を示す図である。
図4】本発明の他の実施例におけるイベント用発光具を示す図であり、一部を拡大した図である。(A)は通電し得る状態を示す図であり、(B)は通電しない(断電した)状態を示す図である。
図5】本発明の他の実施例におけるイベント用発光具を示す図である。
図6】本発明の他の実施例におけるイベント用発光具を示す図であり、一部を拡大した図である。(A)は通電し得る状態を示す図であり、(B)は通電しない(断電した)状態を示す図である。
図7】本発明の他の実施例におけるイベント用発光具を示す図である。
図8図1のイベント用発光具を別に示す図であり、(A)は右側面から、(B)は正面から示す図である。
図9図3のイベント用発光具を示す図であり、(A)は右側面から、(B)は正面から示す図である。
図10図5のイベント用発光具を示す図であり、(A)は右側面から、(B)は正面から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施例を、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
(実施例1)
図1は、本発明に係るイベント用発光具の一例を示すものであり、その内部構造が示されている。図8(A)は図1のイベント用発光具を右側面から示したものであり、図8(B)は図1のイベント用発光具を正面から示したものである。
【0029】
本発明に係るイベント用発光具(1)は、発光する発光部(2)と、把持部(3)と、発光部に光を供給する光源(4)を有する。ここでの把持部は基本的にはユーザーが手で持つものをいうが、必ずしもユーザーが使用時に握る箇所だけを指すのではなく、ユーザーが実際に握る部分と発光部との間にこれらを接続する何らかの部材(中間部材)が加えられても、かかる中間部材も本発明の把持部に含まれ得る。本実施例においては典型的な例として光源を把持部の上部に設けており、光源からの光は発光部に向かって発せられる。光源にはLEDなどを用いることができる。
【0030】
本発明のイベント用発光具は、光源を点灯、消灯する点滅手段(5)を有する。これは、一般的な一次電池を電源とする通常のイベント用発光具のタクトスイッチ(電源のON-OFFを切り替える一般的なスイッチ)に相当するものである。換言すれば、本発明の点灯手段は点灯と消灯を自動的に繰り返すためのものではなく、一般に電源スイッチ等と呼ばれるものにあたる。
【0031】
また、本発明のイベント用発光具には、点滅手段からの指令に基づき光源の点灯又は消灯を制御する制御手段(7)が設けられる。本発明の制御手段には公知のものを用いることができ、IC等が用いられる。
【0032】
イベント用発光具にIC等を用いる場合、一般に、光源の点灯、消灯の制御のほか、複数の発光色の発光順序を設定、記憶、制御したり、設定された発光順序とは関係なく特定の発光色を直ちに発光したりできるようにするなど(一例に過ぎない)、様々な機能を有するように構成されること、ユーザーが各種の発光条件を設定、記憶させて自己のイベント用発光具をカスタマイズできるように構成されることが多い。
【0033】
例えば、前述のとおり近時は1本のイベント用発光具で多数の発光色が得られる多色ペンライトが普及しており、かかる多色ペンライトにおいては、20色~30色程度の発光色で発光させることができる。これらの発光色は、一例として、初期設定された発光順序で発光できるほか、ユーザーが発光順序を自由に設定し、その順序で発光させたり(特許文献1では第1ボタン111を押下するものとされている。本発明では例えば図8(B)のボタン24を押すように構成することができる)、また設定した順序の逆の順序で発光させたりすることができる(特許文献1では第4ボタン114を押下するものとされている。本発明では例えば図8(B)のボタン25を押すように構成することができる)。これらはすべてIC等により記憶、制御、実行される。
【0034】
ここで、点滅手段により光源を消灯(電源OFF)にする場合、IC等には静止電流が留保される。そのため、通常、電源をOFFする前にIC等にユーザーによって設定、記憶された条件が電源をOFFにしても消去されることなく、次に光源を点灯(電源ON)にしたときにも、以前設定、記憶した条件を用いてイベント用発光具を発光、使用することができるように構成されている。換言すれば、点滅手段を欠けばこれらの設定、記憶は消去されてしまう。このように、制御手段を用いるイベント用発光具においては、点滅手段は制御手段とリンクしており、IC等に静止電流を残したまま消灯する点滅手段を用いること自体は現実的要請である。
【0035】
本発明のイベント用発光具は、光源に給電するための電源(6)を把持部(3)に備えている。この電源は充電可能であり、好適にはリチウムイオン電池、またはこれと同等の高性能バッテリーが用いられる。
【0036】
以上の構成のイベント用発光具においては、一般的な一次電池を用いたものに比べ、稼働可能時間が飛躍的に長くなる。そのため、充電が必要となるまでの期間が、一般的な一次電池における電池交換が必要となるまでの時期に比し、飛躍的に減少し得るとともに、所望の発光色がより安定して得られやすいものとなる。
【0037】
ところで、一般的な一次電池を用いる従来のイベント用発光具において、光源と電源は通電するように接続されている。すなわち、光源と電源は、プリント基板上のIC等の制御手段や配線、導線などの部材によって物理的に接続されている(電源から光源まで部材が実際に接続している)。光源の点灯、消灯は、この物理的な接続状態が維持されたまま、電源からの電力供給を制御することにより行われる。具体的には、イベント用発光具のユーザーがタクトスイッチを操作し、電源をONにすると制御手段からの指令に基づき発光に必要な電力が電源から光源へ供給され、電源をOFFにするとかかる供給が停止される。
【0038】
前述のとおり、コンサート等イベントの1回の公演時間は1時間30分~4時間程度のことが多い。イベント用発光具は公演中の多くの時間で点灯され、長時間連続して点灯させることも多く、長時間連続して点灯することにより、イベント用発光具の温度が上昇することもあり得る。更に、前述のとおり、イベント用発光具は電気系統に故障を生じるおそれがある環境で使用されるものであり、その電源に出力可能電力が大きいリチウムイオン電池等を用いた場合、何らかの原因で電源からの電流値又は電圧値が急激に上昇する可能性も考えられる。電流値又は電圧値が急激に上昇すると、イベント用発光具は高温発熱したり、ひいては発火したりするおそれがあるが、制御手段や電気系統の故障によりイベント用発光具が高温になるなどの場合、タクトスイッチをOFFにしたとしても、従来のイベント用発光具では、電源からの電力が供給される状態(物理的な接続状態)が存するため、イベント用発光具が(仮に通常よりも熱くなりつつあることをユーザーが認識したとしても)高温化するのを止めることができない可能性がある。
【0039】
また、上記のような物理的な接続状態が常に維持される(不変である)従来のイベント用発光具には、上記とは別に、次のような問題点があることも判明した。イベント用発光具は、電源がOFFの状態においても、IC等の制御手段は静止電流を保有するように設定されている。そのため、従来のイベント用発光具は、タクトスイッチにより電源をOFFにしたとしても、電源から微量の電流が制御手段に供給されているので、電源の電力は消費されてしまう。
【0040】
これらの事態に対処するため、イベント用発光具から電池を取り外すことも考えられる。しかし、電源にリチウムイオン電池等を用いる場合、電気用品安全法その他の法令、規則の要請等により、一般的な一次電池を用いる場合とは異なり、ユーザー等が電池を取り出すことができないようにイベント用発光具を構成せざるを得ないことが少なくない。
【0041】
本実施例においては、これらの事態に対処するため、電源(電池)の正極から負極への接続(制御手段や光源を介して通電)のいずれかの箇所において物理的な断絶が生じ通電が物理的に(強制的に)遮断されるように構成する。より具体的には、イベント用発光具を次のように構成する。
【0042】
まず、本発明においても、光源(4)と電源(6)は、制御手段(7)及び配線ないし導線(8)を介して通電するように接続される。なお、光源、電源、制御手段は直接接続されることもでき、また他の部材を介在しつつ(すなわち間接的に)接続されることもできる。
【0043】
そして、必要な際にこの接続が物理的に断絶され通電が物理的に(強制的に)遮断されるように構成する。この構成として、本実施例においては、物理的断電手段(9)を把持部に設ける。なお、「断電手段」は通電を断絶させることを意味し、物理的断電手段とは、電源と制御手段等の接続、すなわち電源(電池)の正極から負極への接続(制御手段や光源を介して通電のための接続)をいずれかの箇所において(物理的に)切断することを意味する。
【0044】
図2に本実施例の断電手段の拡大図が示されている。図2(A)は電源から電力が供給される(通電し得る)状態を示す図であり、図2(B)は電源からの電力が供給されない(断電した)状態を示す図である。
【0045】
図2に示されるように、電源(6)から接続する配線(8)には断絶箇所(10)が設けられる。断電手段(9)は通電補助部(11)を有し、電源と制御手段等が通電し得る状態(図2(A))では、通電補助部(11)は断絶箇所(10)における配線の一端(12)と配線の他端(13)の両方に接触するように配置される。イベント用発光具を使用する(発光させる)際はこの状態となる。また、点滅手段により電源をOFFにする際(従来のイベント用発光具における電源OFFに相当)も、この状態となる。
【0046】
これに対し、イベント用発光具が何らかの原因により高温化した場合や、長期間イベント用発光具を使用しない場合は、通電補助部(11)が、少なくとも配線の一端(12)又は他端(13)のいずれか一方に接触しない状態となるように断電手段を移動させる。図2(B)には、この状態の一例として、通電補助部(11)が配線の一端(12)及び配線の他端(13)の両方に接触しない場合が示されている。通電補助部(11)が少なくとも配線の一端(12)又は他端(13)のいずれか一方に接触しないことにより、断絶箇所(10)が接続されないものとなり、電源から制御手段等への電力供給が断絶される状態(断電した状態)となる。
【0047】
本発明の断電手段は、通電状態と断電した状態とを相互に切り替え可能となるように構成することができる。例えば、本実施例の物理的断電手段は摺動(スライド)式に移動するように構成することができるが、これに限られるものではない。電源と制御手段等が物理的に接続されることとこの接続が断絶されることの両者が切り替えられるものであればよい。
【0048】
本発明の上記構成によれば、イベント用発光具が高温化しそうな状態や高温化した状態、発火直後などにおいて、物理的断電手段を操作することにより通電状態から断電状態に変更できる。そのため、更なるイベント用発光具の高温化を回避することが可能となる。
【0049】
また、本発明のイベント用発光具の充電はUSBケーブル等接続器具を用いてパソコン等から行うことが出来るが、本発明の上記構成によれば、充電を一時停止したい場合や充電中にイベント用発光具の温度が上昇した場合などにおいて、接続器具はそのままの状態(接続した状態)で物理的断電手段を操作することにより通電状態から断電状態に変更し、充電を停止することが可能となる。
【0050】
更に、本発明の上記構成によれば、長期間イベント用発光具を使用しない場合、電池からの放電を可及的に回避することが可能となる。例えば100%充電した18500(18mmφ×50mm)/3.7v/1400mAhのリチウムイオン電池において、IC等部品における静止電流が0.05mAとした場合、本発明の断電手段を用いないと、イベント用発光具を全く使用しなくても、7~8か月程度で充電の20%が失われ(1400mA×0.2=280mA、280mA÷0.05mA=5600時間、5600時間÷24時間=233,33・・日)、28,000時間(1400mA÷0.05mA=28,000時間)ですべての電池残量が消滅する。本発明の断電手段を用い、図2(B)に示されるような状態としておけば、かかる電力消費を可及的に回避することができる。その後、通電状態に切り替えれば、通常のイベント用発光具として使用することができる。
【0051】
(実施例2)
図3は、本発明に係るイベント用発光具の一例、特に他の断電手段の一例を示すものであり、その内部構造が示されている。図9(A)は図1のイベント用発光具を右側面から示したものであり、図9(B)は図1のイベント用発光具を正面から示したものである。
【0052】
本実施例の断電手段は、実施例1のものと同じく、電源と制御手段等の接続をいずれかの箇所において実際に断絶する物理的断電手段である。
【0053】
図4には本実施例の物理的断電手段の拡大図が示されている。図4(A)は電源から電力が供給される(通電し得る)状態を示す図であり、図4(B)は電源からの電力が供給されない(断電した)状態を示す図である。本実施例の物理的断電手段は螺子状に構成され、捩じ込んだり緩めたりすることにより、通電状態と断電状態を切替える。
【0054】
図4に示されるように、電源(6)と制御手段等を接続する配線(18)には切断箇所(20)が設けられる。切断箇所を構成する配線の一端(22)に物理的断電手段(19)が接続されており、この物理的断電手段を捩じ込むと、切断箇所を構成する配線の一端(22)が、切断箇所を構成する配線の他端(23)に接触し、電源と制御手段等が通電し得る状態(図4(A))となる。イベント用発光具はこの状態で使用する。また、点滅手段により電源をOFFにする場合(従来のイベント用発光具における電源OFFに相当)は、この状態のままである。
【0055】
これに対し、イベント用発光具が何らかの原因により高温化した場合や、長期間イベント用発光具を使用しない場合は、図4(B)に示されるように、物理的断電手段を緩め、切断箇所(20)を構成する配線の一端(22)と他端(23)が隔離させる。これにより、断絶箇所(20)が接続されないものとなり、電源からの電力供給が断絶される状態(断電した状態)となる。
【0056】
本実施例における作用効果は、実施例1におけるものと同じである。
【0057】
(実施例3)
図5は、本発明に係るイベント用発光具の一例、特に他の断電手段の一例を示すものであり、その内部構造が示されている。図10(A)は図1のイベント用発光具を右側面から示したものであり、図10(B)は図1のイベント用発光具を正面から示したものである。
【0058】
本実施例の断電手段は、実施例1、2のものと同じく、電源と制御手段等の物理的な接続を断絶する物理的断電手段である。
【0059】
図6には本実施例の物理的断電手段の拡大図が示されている。図6(A)は電源から電力が供給される(通電し得る)状態を示す図であり、図6(B)は電源からの電力が供給されない(断電した)状態を示す図である。この物理的断電手段は引張式であり、これが引かれることにより、制御手段等と電源が通電している状態から、これらが断電した状態に切替わる。この引張式部材は、図6では紐状の部材が図示されているが、紐状に限られるものでなく、例えば棒状、ワイヤ状等としてもよい。
【0060】
図6(A)(B)に示されるように、電源(6)から制御手段(図6には表れない)に接続する配線(28)には切断箇所(30)が設けられる。また、配線(28)の一部に物理的断電手段(29)が取り付けられている。図6(A)において、制御手段と電源の間は通電し得る状態で、配線(28)の切断箇所(30)は接続した状態である。例えばイベント用発光具が何らかの原因により高温化した場合、物理的断電手段(29)を引っ張ると、図6(B)に示されるように配線(28)が切断箇所(30)において分離され、電源から制御手段等への電力供給が断絶される状態(断電した状態)となる。なお、配線(28)につき弾性を有するように構成するなどして、切断箇所(30)において断電した状態から、切断箇所(30)が接続した状態(通電した状態)に戻ることができるように構成してもよい。
【0061】
本実施例における作用効果は、実施例1におけるものと同じである。
【0062】
(実施例4)
本発明の断電手段は、電源から給電される電力が既定の数値を超えると給電を自動的に遮断する回路により構成することもできる。これによると、電源から給電される電力が既定の数値を超えた場合、給電が自動的に遮断されるので、イベント用発光具が高熱する前に温度が上昇することを回避することができる。
【0063】
イベント用発光具は前述のように気象や使い方などの環境の影響を受けるため、上記回路(断電手段)を設けたとしても、何らかの原因で電流値又は電圧値が急上昇するおそれは残り得る。そこで、かかる断電手段(回路)を実施例1~3の物理的断電手段と併用することも可能である。図7には、この回路(39)と実施例1の物理的断電手段(9)を併用した例が図示されている。
【0064】
このような併用の構成とすれば、まずソフトウェア(回路)によって電力が既定の数値を超えて上昇するのを防ぐことができ、更に、この回路が作動したにもかかわらず(あるいは不測の事態により作動せずに)電流値又は電圧値が急激に上昇し、イベント用発光具、特に把持部の温度が上昇した場合には、物理的断電手段によって電源からの通電を物理的に断ち、これによって電流値又は電圧値の上昇による高熱化を防ぐことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
電池交換を行うことなく、より長時間稼働することができ、SDGsの目標にも沿うものとして、今後、充電式のリチウムイオン電池等の高性能バッテリーを電源とするイベント用発光具が普及することが期待される。しかし、このような電池には、上述のような安全面での問題があった。そのため、この問題に起因した事故が起こる可能性があり、また、これが未解決の場合、ユーザーの上記ニーズに応えるイベント用発光具が普及するのを妨げる可能性もあった。
【0066】
本発明によれば、電源にリチウムイオン電池のような高性能バッテリーを用いたイベント用発光具において、何らかの原因で電流値又は電圧値が急激に上昇した場合に、高温発熱や発火を防ぐことができる。また、電源にリチウムイオン電池のような高性能バッテリーを用いたイベント用発光具が高温発熱や発火状態となった場合に、かかる状態の更なる悪化を防ぐことが可能となる。すなわち、本発明は上記安全面の問題を解決するものであり、想定され得る事故を可及的に防き、ユーザーにニーズに応えるイベント用発光具を広く普及させることを可能とするものである。
【0067】
このように、本発明は、需要者、供給者の双方の利益に資するものであり、当業界における産業上の利用可能性は極めて高い。
【符号の説明】
【0068】
1 イベント用発光具
2 発光部
3 把持部
4 光源
5 点滅手段
6 電源
7 制御手段
8、18、28 配線、導線
9、19、29 物理的断電手段
10、20、30 切断箇所
11 通電補助部
12、22 配線の一端
13、23 配線の他端
24、25 ボタン
【要約】      (修正有)
【課題】何らかの原因で電流値又は電圧値が急激に上昇した場合に高温発熱や発火を防ぐ手段を有する充電式イベント用発光具を提供する。また、イベント用発光具が高温発熱や発火状態となった場合にかかる状態の更なる悪化を防ぐ手段を有する充電式イベント用発光具を提供する。
【解決手段】充電式イベント用発光具1を、発光部2と、把持部3と、発光部2に光を供給する光源4と、光源4の点灯及び消灯を制御する制御手段7と、光源4を点灯及び消灯するためにユーザーが操作し制御手段7に指令を与える点滅手段5と、光源4及び制御手段7に接続されこれと通電する電源6を有するとともに、電源6の正極から負極までの通電のための接続のいずれかの箇所において通電を遮断するための断電手段を有するように構成する。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B