(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】半導体装置の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/60 311S
(21)【出願番号】P 2022505659
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030434
(87)【国際公開番号】W WO2022030006
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-94725(JP,A)
【文献】特開2016-213384(JP,A)
【文献】特開平9-153522(JP,A)
【文献】特開平9-153525(JP,A)
【文献】特開2017-34282(JP,A)
【文献】特開平11-145196(JP,A)
【文献】特開平5-21529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するステージと、
その底面にバンプが設けられたチップを保持する実装ツールと、前記チップを加熱するべく前記実装ツールに搭載されるツールヒータと、前記実装ツールを鉛直方向に移動させる昇降機構と、を有するボンディングヘッドと、
前記ボンディングヘッドの駆動を制御して、前記チップを前記基板にボンディングするボンディング処理を行うコントローラと、
を備え、前記コントローラは、前記ボンディング処理において、
前記チップを前記基板に接地させた後に、前記ツールヒータおよび前記昇降機構を駆動して、前記チップの加熱を開始するとともに前記チップを前記基板に加圧する第一処理と、
前記第一処理の後かつ前記バンプの溶融前において、前記昇降機構を上昇方向に駆動することで、前記ボンディングヘッドの歪みを解消する歪み解消処理と、
前記歪み解消処理の後に、前記ボンディングヘッドの熱膨縮を相殺するように前記昇降機構を位置制御することで、前記チップの底面と前記基板の上面とのギャップを規定の目標値に保つ第二処理と、
を含む、ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記コントローラは、前記ボンディング処理に先だって、歪み解消量検出処理を行い、
前記歪み解消量検出処理では、前記実装ツールおよび前記ステージを予め定めた温度に保った状態で、前記昇降機構を駆動して、前記実装ツールで前記基板を押圧させた後、前記昇降機構を上昇方向に駆動させつつ前記実装ツールによる前記基板への押圧荷重を検出し、前記上昇方向への駆動を開始してから前記押圧荷重の変動が停止するまでの前記昇降機構の移動量を歪み解消量として記憶し、
前記歪み解消処理では、前記歪み解消量に基づいて前記昇降機構を上昇方向に駆動する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記コントローラは、前記チップを前記基板にボンディング処理するに先だって、前記バンプの溶融タイミングを検出する溶融タイミング検出処理を行い、
前記溶融タイミング検出処理では、前記チップを前記基板に接地させた後、規定の温度プロファイルに従って前記チップを加熱し、前記加熱の開始から前記バンプが溶融するまでの時間を溶融時間として記憶し、
前記コントローラは、前記溶融時間に基づいて、前記歪み解消処理の実行タイミングを決定する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造装置であって、
前記昇降機構は、前記実装ツールに機械的に接続されたスライド軸と、前記スライド軸を昇降させる駆動源と、前記スライド軸の軸方向位置を検出位置として検出する位置センサと、を有しており、
前記コントローラは、前記ボンディング処理に先立って、目標プロファイル生成処理を行い、
前記目標プロファイル生成処理では、前記昇降機構を駆動して、前記実装ツールを前記基板にまたはステージに接地させた後、規定の温度プロファイルに従って前記実装ツールを加熱し、その際に得られる前記位置センサで検出される検出位置の変化に基づいて、前記ボンディングヘッドの熱膨張量を取得し、前記熱膨張量を相殺した移動プロファイルを目標プロファイルとして生成し、
前記第二処理では、前記目標プロファイルに従って前記昇降機構を位置制御する、
ことを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項5】
実装ツールと前記実装ツールに搭載されるツールヒータと前記実装ツールを鉛直方向に移動させる昇降機構とを有するボンディングヘッドを駆動して、前記実装ツールに保持されたチップを、ステージに支持された基板にボンディングする半導体装置の製造方法であって、
前記実装ツールを下降させて前記チップを前記基板に接地させた後に、前記ツールヒータおよび前記昇降機構を駆動して、前記チップの加熱を開始するとともに前記チップを前記基板に加圧する第一ステップと、
前記第一ステップの後かつ前記チップの底面に設けられたバンプの溶融前において、前記昇降機構を上昇方向に駆動することで、前記ボンディングヘッドの歪みを解消させる歪み解消ステップと、
前記歪み解消ステップの後に、前記ボンディングヘッドの熱膨縮を相殺するように前記昇降機構を位置制御することで、前記チップの底面と前記基板の上面とのギャップ量を規定の目標値に保つ第二ステップと、
を含む、ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、実装ツールで保持したチップを基板にボンディングすることで、半導体装置を製造する製造装置および製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板にチップを実装する技術として、フリップチップボンダが知られている。フリップチップボンダでは、チップの底面にバンプと呼ばれる突起電極が形成されている。そして、実装ツールにより、このチップを基板に押圧するとともに、チップを加熱してバンプを溶融させ、基板の電極にチップのバンプを接合、すなわち、ボンディングする。
【0003】
特許文献1には、こうしたフリップチップボンダ技術が開示されている。特許文献1では、実装ツールでチップを基板に接地させた後、当該チップを一定荷重で加圧しつつ加熱してバンプを溶融させる。そして、特許文献1では、バンプが溶融すれば、チップ底面と基板とのギャップ量が所望の値になるように、実装ツールを上昇させた後、ヒータをオフして、バンプを硬化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、バンプが完全に溶融するまで、チップを一定荷重で加圧し続ける。この場合、バンプが溶融した直後に、実装ツールの先端が大きく下降し、溶融したバンプが大きく潰れるおそれがある。特に、通常、チップを一定荷重で加圧した場合、実装ツールに若干の歪みが生じる。バンプが溶融し、チップから実装ツールに作用する反力が低下すると、この歪みが瞬時に解消され、実装ツールの先端が溶融したバンプを押し潰す方向に動く。その結果、溶融したバンプが予想以上に大きく潰れることがある。この場合、押し潰されたバンプが面方向に広がり、隣接するバンプとの間でショート不良を発生させるおそれもあった。
【0006】
つまり、従来の技術では、ショート不良が発生するおそれがあり、半導体装置の品質を適切に保つことができなかった。そこで、本明細書では、半導体装置の品質を適切に保つことができる半導体装置の製造装置および製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する半導体装置の製造装置は、基板を支持するステージと、その底面にバンプが設けられたチップを保持する実装ツールと、前記チップを加熱するべく前記実装ツールに搭載されるツールヒータと、前記実装ツールを鉛直方向に移動させる昇降機構と、を有するボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッドの駆動を制御して、前記チップを前記基板にボンディングするボンディング処理を行うコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記ボンディング処理において、前記チップを前記基板に接地させた後に、前記ツールヒータおよび前記昇降機構を駆動して、前記チップの加熱を開始するとともに前記チップを前記基板に加圧する第一処理と、前記第一処理の後かつ前記バンプの溶融前において、前記昇降機構を上昇方向に駆動することで、前記ボンディングヘッドの歪みを解消する歪み解消処理と、前記歪み解消処理の後に、前記ボンディングヘッドの熱膨縮を相殺するように前記昇降機構を位置制御することで、前記チップの底面と前記基板の上面とのギャップを規定の目標値に保つ第二処理と、を含む、ことを特徴とする。
【0008】
この場合、前記コントローラは、前記ボンディング処理に先だって、歪み解消量検出処理を行い、前記歪み解消量検出処理では、前記実装ツールおよび前記ステージを予め定めた温度に保った状態で、前記昇降機構を駆動して、前記実装ツールで前記基板を押圧させた後、前記昇降機構を上昇方向に駆動させつつ前記実装ツールによる前記基板への押圧荷重を検出し、前記上昇方向への駆動を開始してから前記押圧荷重の変動が停止するまでの前記昇降機構の移動量を歪み解消量として記憶し、前記歪み解消処理では、前記歪み解消量に基づいて前記昇降機構を上昇方向に駆動してもよい。
【0009】
また、前記コントローラは、前記チップを前記基板にボンディング処理するに先だって、前記バンプの溶融タイミングを検出する溶融タイミング検出処理を行い、前記溶融タイミング検出処理では、前記チップを前記基板に接地させた後、規定の温度プロファイルに従って前記チップを加熱し、前記加熱の開始から前記バンプが溶融するまでの時間を溶融時間として記憶し、前記コントローラは、前記溶融時間に基づいて、前記歪み解消処理の実行タイミングを決定してもよい。
【0010】
また、前記昇降機構は、前記実装ツールに機械的に接続されたスライド軸と、前記スライド軸を昇降させる駆動源と、前記スライド軸の軸方向位置を検出位置として検出する位置センサと、を有しており、前記コントローラは、前記ボンディング処理に先立って、目標プロファイル生成処理を行い、前記目標プロファイル生成処理では、前記昇降機構を駆動して、前記実装ツールを前記基板に接地させた後、規定の温度プロファイルに従って前記実装ツールを加熱し、その際に得られる前記位置センサで検出される検出位置の変化に基づいて、前記ボンディングヘッドの熱膨張量を取得し、前記熱膨張量を相殺した移動プロファイルを目標プロファイルとして生成し、前記第二処理では、前記目標プロファイルに従って前記昇降機構を位置制御してもよい。
【0011】
本明細書で開示する半導体装置の製造方法は、実装ツールと前記実装ツールに搭載されるツールヒータと前記実装ツールを鉛直方向に移動させる昇降機構とを有するボンディングヘッドを駆動して、前記実装ツールに保持されたチップを、ステージに支持された基板にボンディングする半導体装置の製造方法であって、前記実装ツールを下降させて前記チップを前記基板に接地させた後に、前記ツールヒータおよび前記昇降機構を駆動して、前記チップの加熱を開始するとともに前記チップを前記基板に加圧する第一ステップと、前記第一ステップの後かつ前記チップの底面に設けられたバンプの溶融前において、前記昇降機構を上昇方向に駆動することで、前記ボンディングヘッドの歪みを解消させる歪み解消ステップと、前記歪み解消ステップの後に、前記ボンディングヘッドの熱膨縮を相殺するように前記昇降機構を位置制御することで、前記チップの底面と前記基板の上面とのギャップ量を規定の目標値に保つ第二ステップと、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本明細書で開示する技術によれば、バンプの溶融前にボンディングヘッドの歪みが解消され、その後、ボンディングヘッドの熱膨縮を相殺するように昇降機構が制御される。これにより、溶融したバンプが過度に押し潰されることが防止されるため、半導体装置の品質を適切に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】半導体装置の製造装置の構成を示すイメージ図である。
【
図2】半導体チップのボンディングの様子を示すイメージ図である。
【
図3】ボンディングヘッドが熱膨張した様子を示す図である。
【
図4】ボンディングヘッドが歪む様子を示す図である。
【
図5】ボンディング処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】ボンディング処理における各種パラメータの時間変化を示すグラフである。
【
図7】歪み解消量検出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】歪み解消量検出処理における各種パラメータの時間変化を示すグラフである。
【
図9】溶融タイミング検出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】溶融タイミング検出処理における各種パラメータの時間変化を示すグラフである。
【
図11】目標プロファイル生成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】目標プロファイル生成処理における各種パラメータの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して半導体装置の製造装置10について説明する。
図1は、半導体装置の製造装置10の構成を示すイメージ図である。製造装置10は、電子部品である半導体チップ100をフェースダウンの状態で基板110上に実装することで半導体装置を製造する装置である。製造装置10は、実装ツール20を有したボンディングヘッド14、半導体チップ100を実装ツール20に供給するチップ供給手段(図示せず)、基板110を支持するステージ12、ステージ12をXY方向(水平方向)に移動させるXYステージ18、および、これらの駆動を制御するコントローラ16等を備えている。
【0015】
基板110は、ステージ12に吸引保持されており、ステージ12に設けられたステージヒータ(図示せず)により加熱される。また、半導体チップ100は、チップ供給手段により、実装ツール20に供給される。チップ供給手段の構成としては、種々考えられるが、例えば、ウェーハステージに載置されたウェーハから、半導体チップを中継アームでピックアップして、中継ステージに移送するような構成が考えられる。この場合、XYステージ18は、中継ステージを実装ツール20の真下に移送し、実装ツール20は、真下に位置する中継ステージから半導体チップをピックアップする。
【0016】
実装ツール20で半導体チップがピックアップされれば、続いて、XYステージ18により、基板110が実装ツール20の真下に移送される。この状態になれば、実装ツール20は、基板110に向かって下降し、末端に吸引保持した半導体チップ100を基板110に圧着し、ボンディングする。
【0017】
実装ツール20は、半導体チップ100を吸引保持するとともに、この半導体チップ100を加熱する。そのため、実装ツール20には、真空源に連通された吸引孔(図示せず)や、半導体チップ100を加熱するためのツールヒータ26等が設けられている。ボンディングヘッド14には、こうした実装ツール20に加え、さらに、当該実装ツール20を昇降させる昇降機構が設けられている。
【0018】
本例の昇降機構は、第一ユニット24aと第二ユニット24bとに大別される。第一ユニット24aは、実装ツール20をZ軸方向(すなわち鉛直方向)に移動させることで、半導体チップ100を基板110に押し付け、当該半導体チップ100に押圧荷重を付加する。第一ユニット24aは、ボイスコイルモータ30(以下「VCM30」と略す)と、スライド軸32と、板バネ34と、ガイド部材36と、を有している。VCM30は、第一ユニット24aの駆動源である。このVCM30は、移動体46に固着された固定子30aと、当該固定子30aに対してZ軸方向に可動の可動子30bと、を有している。可動子30bは、スライド軸32を介して実装ツール20に機械的に連結されている。また、スライド軸32は、Z軸方向に歪むことが可能な板バネ34を介して移動体46に取り付けられている。さらに、移動体46には、ガイド部材36が固着されている。スライド軸32は、このガイド部材36に形成された貫通孔に挿通されており、貫通孔に沿って、スライド可能となっている。
【0019】
VCM30に電流を印加すると、可動子30bは、移動体46に対してZ軸方向に移動する。このとき、スライド軸32およびスライド軸32に固着された実装ツール20は、板バネ34を弾性変形させながら、可動子30bとともにZ軸方向に移動する。このスライド軸32の移動を検出するために、第一ユニット24aには、リニアエンコーダ50が設けられている。リニアエンコーダ50は、スライド軸32の上端近傍に設けられた可動部50aと、位置固定の固定部50bと、を有しており、リニアエンコーダ50は、両者の相対的な変位量を出力する。かかるリニアエンコーダ50は、変位を磁気的に検出する磁気式エンコーダでもよいし、変位を光学的に検出する光学式エンコーダでもよい。光学式エンコーダの場合、固定部50bは、変位方向に複数のスリット孔が形成されたスケールを含み、可動部50aは、スケールを挟んで両側に配される光源および受光素子を含む。また、磁気式エンコーダの場合、固定部50bは、磁気スケールを含み、可動部50aは、磁気センサを含む。リニアエンコーダ50での検出値は、コントローラ16に出力される。
【0020】
第二ユニット24bは、第一ユニット24aをベース部材38に対してZ軸方向に昇降させる。かかる第二ユニット24bは、駆動源として昇降モータ40を有している。この昇降モータ40には、軸方向に延びるリードスクリュー42が、カップリングを介して連結されており、昇降モータ40の駆動に伴い、リードスクリュー42が、自転する。リードスクリュー42には、移動ブロック44が螺合されており、この移動ブロック44は、VCM30の固定子30aの上面に固着されている。また、固定子30aの側面には、移動体46が固着されている。この移動体46は、ベースに固着されたガイドレール48に沿ってスライド可能となっている。昇降モータ40に電流を印加すると、リードスクリュー42が自転し、これに伴い、移動ブロック44が、Z軸方向に昇降する。そして、移動ブロック44が昇降することで、当該移動ブロック44に固着された第一ユニット24aおよび実装ツール20も昇降する。第二ユニット24bによる第一ユニット24aの昇降量も、センサ(例えば昇降モータ40に取り付けられたエンコーダ等)で検知され、コントローラ16に送られる。
【0021】
コントローラ16は、ツールヒータ26、昇降機構、ステージ12、およびXYステージ18の駆動を制御する。このコントローラ16は、物理的には、プロセッサ16aおよびメモリ16bを有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ16aとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、以下に述べるプロセッサ16aの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。同様に、メモリ16bも、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、メモリ16bは、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。
【0022】
次に、こうした製造装置10による半導体チップ100のボンディング方法について説明する。
図2は、半導体チップ100のボンディングの様子を示すイメージ図である。
図2の左図に示すように、基板110の上面には、複数の電極112が形成されている。また、半導体チップ100は、チップ本体102の底面から突出し、半田等の導電金属からなるバンプ104を複数有している。半導体チップ100を実装する際には、このバンプ104を基板110の電極112に接触させた状態で、半導体チップ100を加熱し、
図2の右図に示すように、バンプ104を電極112に溶着させる。なお、
図2では図示していないが、チップ本体102の底面には、さらに、熱硬化性樹脂層、例えば、非導電性フィルムの層等が設けられていてもよい。
【0023】
ここで、半導体装置の品質を良好に保つためには、バンプ104の過度な潰れを防止し、ボンディング後におけるチップ本体102の底面と基板110の上面とのギャップ量Gを目標値に保つことが必要となる。ボンディングの過程で、溶融したバンプ104が過度に押し潰され、横方向に広がると、隣接する他のバンプ104との間でショート不良を招く恐れがあった。また、ギャップ量Gにばらつきが生じると、半導体装置の品質を適切に保つことができない。そのため、ボンディングの際には、半導体チップ100の軸方向位置、ひいては、実装ツール20の底面の軸方向位置を正確に管理する必要がある。しかし、こうした実装ツール20の軸方向位置を管理する場合、熱膨縮と、歪みが問題となっていた。これについて、
図3、
図4を参照して説明する。
【0024】
上述した通り、半導体チップ100をボンディングする際には、実装ツール20に設けられたツールヒータ26で半導体チップ100を加熱する。この加熱の際に生じる熱で、ツールヒータ26周辺の部材、具体的には、実装ツール20やスライド軸32等(以下「周辺部材」と呼ぶ)が熱膨縮する。
図3の二点鎖線は、周辺部材が熱膨縮した様子を示す図である。周辺部材が熱膨張すると、実装ツール20の底面の軸方向位置に変化が生じていなくても、リニアエンコーダ50の可動部50aの軸方向位置が変化する。そのため、熱膨縮が生じた場合、リニアエンコーダ50等による検出位置Pdから実際の半導体チップ100の位置を正確に把握できず、ひいては、ギャップ量Gを正確に管理できない。
【0025】
また、半導体チップ100をボンディングする際、実装ツール20は、半導体チップ100に規定の標準荷重Fsを付与し、半導体チップ100を基板110に押し付ける。このとき、半導体チップ100から実装ツール20には、所定の反力が作用する。この反力を受けて、スライド軸32が、
図4において二点鎖線示すように、歪む場合があった。スライド軸32が歪むと当然、その分、リニアエンコーダ50の可動部50aの軸方向位置が変化する。そして、この場合も、リニアエンコーダ50等による検出位置Pdから実際の半導体チップ100の位置を正確に把握できず、ひいては、ギャップ量Gを正確に管理できない。
【0026】
また、スライド軸32が歪んだ状態で、バンプ104の加熱および加圧を続けた場合、バンプ104が溶融した時点で、半導体チップ100からの反力が急激に低下する。そして、この場合、スライド軸32の歪みが瞬時に解消され、実装ツール20の底面が、急降下する。この場合、溶融したバンプ104が、実装ツール20により、押されることとなり、バンプ104が過度に押し潰されるおそれがあった。
【0027】
本例では、こうした問題を避けるために、バンプ104の溶融前において、昇降機構を上昇方向に駆動して、スライド軸32の歪みを解消する。また、周辺部材の熱膨縮を相殺するように、実装ツール20を位置制御することで、ギャップ量Gを、所定の目標値に維持する。以下、こうしたボンディングの詳細な手順について、
図5、
図6を参照して説明する。
図5は、ボンディング処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、ボンディング処理における各種パラメータの時間変化を示すグラフである。
図6(a)は、昇降機構に設けられた位置センサ(リニアエンコーダ50等)の検出値から求まる実装ツール20の軸方向位置(以下「検出位置Pd」と呼ぶ)を示すグラフである。
図6(b)は、実装ツール20が半導体チップ100を保持している場合のステージ12の上面を基準とした実装ツール20の底面までの実際の距離(以下「距離Dr」と呼ぶ)を示すグラフである。
図6(c)は、昇降機構で半導体チップ100に付与される押圧荷重Fpの変化を示すグラフである。
図6(d)は、ツールヒータ26の駆動状態を示すグラフである。なお、距離Drは、ステージ12の歪みや熱膨張により距離の基準位置が変化する。
【0028】
半導体チップ100を基板110にボンディングする際、コントローラ16は、昇降機構を駆動して、半導体チップ100を下降させ、半導体チップ100を基板110に接地させる(S10,S12)。具体的には、コントローラ16は、まず、昇降モータ40を駆動して、実装ツール20を基板110の近傍まで高速で下降させる。続いて、昇降モータ40を停止した状態で、VCM30を駆動して、実装ツール20を低速で下降させる。このとき、検出位置Pdの変化を監視し、検出位置Pdが変化しなくなれば、接地したと判断する。なお、上述した通り、スライド軸32等には、若干の歪みが生じるため、現実の接地タイミングと、コントローラ16で検出される接地タイミングには、若干の誤差がある。
【0029】
図6の例では、時刻t1において、半導体チップ100は、基板110に実際に接地しており、時刻t1以降、距離Drは、変化しなくなる。ただし、半導体チップ100が実際に接地した後も、スライド軸32等が歪むことで、検出位置Pdが変化する。そのため、コントローラ16は、スライド軸32等が十分に歪み、検出位置Pdが変化しなくなった時刻t2において接地したと判断する。
【0030】
接地が検出されれば(S12でYes)、コントローラ16は、半導体チップ100を一定荷重で加圧および加熱する第一処理(S14~S18)を実行する。具体的には、コントローラ16は、予め規定された標準荷重Fsが半導体チップ100に付与されるように、昇降機構の荷重制御を開始する(S14)。すなわち、VCM30は、印可された電流に比例したトルクを出力するため、コントローラ16は、VCM30に、標準荷重Fsに応じた一定電流を印可し続ける。
図6では、時刻t2から時刻t4の期間中、半導体チップ100には、標準荷重Fsが付与されている。
【0031】
標準荷重Fsが付与されれば、続いて、コントローラ16は、ツールヒータ26をONし、半導体チップ100の加熱を開始する(S16)。
図6の例では、時刻t4において、ツールヒータ26がONされる。これにより、半導体チップ100の温度が上昇し始める。
【0032】
コントローラ16は、加熱を開始してからの経過時間が、待機時間Taに達したか否かを監視する(S18)。ここで、待機時間Taは、加熱開始してからバンプ104が溶融するまでの時間(以下「溶融時間Tm」という)から若干の余裕分αを減算した時間である。すなわち、Ta=Tm-αである。別の見方をすれば、待機時間Taが経過したタイミングは、バンプ104が溶融する直前であるといえる。かかる待機時間Ta、溶融時間Tmは、予め、実験により取得されるが、これについては、後述する。加熱開始してから待機時間Taが経過した場合(S18でYes)、コントローラ16は、バンプ104が溶融直前であると判断する。
図6の例では、時刻t4が、待機時間Taが経過し、バンプ104が溶融する直前となるタイミングである。
【0033】
溶融直前となれば、コントローラ16は、ボンディングヘッド14の歪みを解消させる歪み解消処理(S20)を実行する。具体的には、コントローラ16は、VCM30を、実装ツール20を上昇させる方向に、規定の歪み解消量Aa分だけ上昇させる(S20)ここで、歪み解消量Aaは、半導体チップ100を標準荷重Fsで加圧した際に昇降機構に生じる歪みを解消するために必要なVCM30の移動量である。この歪み解消量Aaも、待機時間Taおよび溶融時間Tmと同様に、予め、実験により取得されるが、これについても後述する。いずれにしても、歪み解消量Aa分だけ、VCM30を上昇方向に駆動させることで、ボンディングヘッド14、特にスライド軸32の歪みが解消される。
図6の例では、時刻t4から時刻t5の期間中に、検出位置Pdが歪み解消量Aa分だけ上昇するまで、VCM30を駆動する。このとき、実装ツール20距離Drは、変化せず、スライド軸32の歪みが解消され、また、押圧荷重Fpが急激に低下する。
【0034】
歪みが解消できれば、コントローラ16は、ギャップ量Gを目標値に保つための第二処理(S22~S26)を実行する。具体的には、コントローラ16は、予め生成された目標プロファイルに従って、VCM30の位置制御を開始する(S22)。目標プロファイルは、昇降機構の目標移動位置を規定した移動プロファイルである。コントローラ16は、この目標プロファイルから求まる指令位置と検出位置Pdとの差分がゼロに近づくように、VCM30を位置フィードバック制御する。ここで、上述した通り、検出位置Pdは、実装ツール20、ステージ12の熱膨縮の影響を受けており、ステージ12上面と実装ツール20底面の距離Drとの間に乖離が生じている。すなわち、コントローラ16は、ステージ12、実装ツール20の熱膨張により、歪み解消後のステージ12の高さH1からの距離Drとは異なる位置を検出位置Pdとして検出するようになる。目標プロファイルは、この熱膨縮に起因する誤差を相殺し、実際のギャップ量Gが目標値を保つように設定されている。
【0035】
具体的に、
図6を参照して説明する。実装ツール20の距離Drを、歪み解消後の距離D1を基準に一定に保った場合、検出位置Pdは、実装ツール20の熱膨縮の影響を受けるため、
図6(a)における二点鎖線のように変化する。すなわち、Dr=D1に維持した場合の検出位置Pdは、ツールヒータ26をONした時刻t3以上、徐々に上昇し、ツールヒータ26をOFFした時刻t8以降、徐々に降下する。一方、ギャップ量Gを目標値にするためには、距離Drを、高さD1から更に、目標潰し量Gdだけ縮める必要がある。こうした距離Drの動きを実現するためには、二点鎖線で示す位置から目標潰し量Gdだけ減算した位置を指令位置として、昇降機構を位置制御すればよい。
【0036】
ステップS22で用いる目標プロファイルは、この二点鎖線で示す位置から目標潰し量Gdだけ減算した位置を示すプロファイルである。かかる目標プロファイルに従って、VCM30を位置制御することで、距離Drを一定に保つことができ、ギャップ量Gを、目標値に保つことができる。なお、こうした目標プロファイルは、ボンディングに先立って生成されるが、これについても後述する。
【0037】
コントローラ16は、事前に設定した温度プロファイルに従ってツールヒータ26をOFFする(S24)。これにより、一度溶融したバンプ104の温度が急激に低下し、硬化していく。
図6の例では、時刻t8において、ツールヒータ26がOFFされる。これにより、バンプ104が硬化していく。また、ツールヒータ26がOFFされることで、昇降機構(特にスライド軸32)の温度も低下し、昇降機構の熱膨縮が解消されていく。温度が低下した後、または同時に、実装ツール20を目標プロファイルに従って降下させる。
【0038】
そして、ツールヒータ26をOFFしてから、所定の硬化時間Tbが経過すれば(S26でYes)、コントローラ16は、バンプ104が硬化したと判断する。なお、硬化時間Tbは、事前の実験や、過去の経験等に基づいて、予め規定される。硬化時間Tbが経過すれば、コントローラ16は、実装ツール20による半導体チップ100の保持を解除したうえで、実装ツール20を上昇させる(S28)。そして、これにより、一つの半導体チップ100のボンディング処理が終了となる。以降、他の半導体チップ100についても同様の処理を繰り返す。
【0039】
以上の説明で明らかなとおり、本例では、バンプ104の溶融直前において、VCM30を上昇方向に駆動することで、ボンディングヘッド14の歪みを解消している。その結果、バンプ104が溶融した際に、実装ツール20が、過度に下方に移動し、バンプ104を過度に押し潰すことを効果的に防止できる。
【0040】
また、本例では、バンプ104が溶融するタイミング(すなわち溶融時間Tm)を予め取得しておき、バンプ104が溶融する前に、荷重制御から位置制御に切り替えている。かかる構成とすることで、バンプ104を過度に押し潰すことを防止できる。すなわち、従来技術の多くは、半導体チップ100に一定の荷重を付与する荷重制御を行い、その際、検出位置Pdが一定以上降下すれば、バンプ104が溶融したと判断する。こうした技術の場合、バンプ104が溶融した時点で、実装ツール20が大きく降下し、ギャップ量Gが、目標値より小さくなる。例えば、特許文献1では、バンプ104が溶融した時点で、ギャップ量Gは目標値より小さくなる。そのため、特許文献1では、ギャップ量Gが目標値より小さくなった後、実装ツールを上昇させることで、ギャップ量Gを目標値に修正している。しかし、特許文献1のように一時的にしろ、バンプ104を大きく押し潰すと、横に広がったバンプ104が隣接するバンプ104と接触し、ショート不良を起こすおそれがあった。一方、本例のように、バンプ104が溶融する直前から位置制御に切り替えることで、バンプ104の過度な潰れがなくなり、ショート不良を効果的に防止できる。
【0041】
次に、こうしたボンディング処理で使用する歪み解消量Aa、待機時間Ta、目標プロファイルの取得について説明する。製造装置10は、半導体装置の製造を開始する前に、歪み解消量検出処理と、溶融タイミング検出処理と、目標プロファイル生成処理と、を行う。以下、これらの処理について説明する。
【0042】
はじめに、歪み解消量検出処理について、
図7、
図8を参照して説明する。上述した通り、ボンディング処理では、バンプ104が溶融する直前において、VCM30を上昇方向に歪み解消量Aa分だけ駆動し、これにより、ボンディングヘッド14(特に実装ツール20およびスライド軸32)の歪みを解消している。この際に用いられる歪み解消量Aaは、ボンディング処理に先立って行われる歪み解消量検出処理で検出される。
図7は、この歪み解消量検出処理の流れを示すフローチャートであり、
図8は、歪み解消量検出処理における検出位置Pdおよび検出荷重Fdの変化を示すグラフである。
【0043】
歪み解消量検出処理を行う際、実装ツール20は、半導体チップ100を保持しない状態で使用される。また、予め、実装ツール20の底面、または、基板110の上面に、荷重センサ(例えばロードセル等)を配置し、実装ツール20による基板110の押圧荷重を検出荷重Fdとして検出できるようにしておく。さらに、実装ツール20および基板110を互いに同じ予め定めた温度にしておく。こうした事前の準備が整えば、コントローラ16は、昇降機構を駆動して、半導体チップ100を保持していない実装ツール20を、基板110に接地するまで下降させる(S30,S32)。
図8の例では、検出位置Pdの変動が停止する時刻t2において接地したと判断される。なお、このとき、実装ツール20が、標準荷重Fsで基板110を押圧するように、VCM30に印可する電流が調整される。なお、予め定めた温度は、例えば室温(20℃)であるが、ヒータによりツール及びステージを加熱して50℃や100℃としてもよい。また、本例では、歪み解消量検出処理で検出された歪み解消量Aaを、歪み解消処理におけるVCM30の上昇量としている。しかし、歪み解消処理におけるVCM30の上昇量は、この歪み解消量Aaに対して何等かの補正を行った値でもよい。
【0044】
実装ツール20が、基板110に接地されれば、コントローラ16は、その時点の検出位置PdをP[0]としてメモリに記憶する(S34)。
図8の例では、時刻t2における検出位置Pdが、P[0]として記憶される。続いて、コントローラ16は、パラメータiを初期化し、i=1とする(S35)。その後、コントローラ16は、VCM30を上昇方向に、所定の単位ピッチだけ駆動する(S36)。すなわち、リニアエンコーダ50で検出される検出位置Pdが、単位ピッチ分だけ変化するまでVCM30を駆動する。単位ピッチの値は、特に限定されないが、スライド軸32の歪みに起因する検出誤差よりも充分に小さい値が設定される。
図8の例では時刻t3において、1回目の単位ピッチ分の上昇駆動が完了している。VCM30が上昇方向に駆動することで、押圧荷重が僅かに低下し、その分、スライド軸32等の歪みも僅かに解消される。
【0045】
単位ピッチ分の上昇方向への駆動が完了すれば、コントローラ16は、その時点の検出荷重Fdおよび検出位置Pdを、それぞれ、F[i]、P[i]として、メモリに記憶する(S38)。続いて、コントローラ16は、現在の検出荷重F[i]と、N回前の検出荷重F[i-N]とを比較する(S40)。なお、Nは、1以上の整数である。比較の結果、F[i]≒F[i-N]が成立しない場合(S40でNo)、単位ピッチの上昇に起因して検出荷重Fdが変化していると判断できる。この場合、コントローラ16は、ステップS42に進み、パラメータiをインクリメントしたうえでステップS38,S40を再度実行する。また、フローチャートには記載していないが、i<Nであり、N回前の検出荷重F[i-N]が存在しない場合にも、ステップS42に進む。
【0046】
一方、F[i]≒F[i-N]が成立する場合(S40でYes)、すなわち、VCM30を上昇方向に駆動しても、検出荷重Fdが変動しなくなった場合、P[i-N]-P[0]を、歪み解消量Aaとしてメモリに記憶する(S44)。P[i-N]-P[0]は、VCM30の上昇方向への駆動を開始してから検出荷重Fdの変動が停止するまでの、昇降機構の移動量である。
【0047】
N=3として、
図8の例を参照して説明すると、時刻t8の時点において、F[i]は、Fa、F[i-3]はFbとなるため、F[i]≠F[i-N]である。したがって、この場合、コントローラ16は、ステップS44に進まずに、ステップS42に進む。続いて、時刻t9となれば、F[i]=Fa、F[i-3]=Faとなるため、F[i]≒F[i-N]が、成立する。この場合、コントローラ16は、ステップS44に進む。ここで時刻t9において、P[i-3]は、時刻t6における検出位置Pdであり、P[0]は、時刻t2における検出位置Pdである。したがって、この場合、歪み解消量Aaは、
図8に示す通りとなる。このように、歪み解消量Aaを、事前に実験により取得しておくことで、ボンディング処理において、昇降機構の歪みをより確実に解消できる。
【0048】
次に、溶融タイミング検出処理について
図9、
図10を参照して説明する。上述した通り、ボンディング処理では、歪み解消処理を、バンプ104が溶融する直前に実行する。かかるタイミングで、歪み解消処理を実行するためには、バンプ104が溶融するタイミングを事前に把握しておく必要がある。そこで、本例では、ボンディング処理に先立って、溶融タイミング検出処理を行う。
図9は、この溶融タイミング検出処理の流れを示すフローチャートであり、
図10は、溶融タイミング検出処理における検出位置Pd、押圧荷重、および、ツールヒータ26の駆動状態を示すグラフである。
【0049】
溶融タイミング検出処理を行う際には、予め、実装ツール20で半導体チップ100を保持しておく。そして、コントローラ16は、昇降機構を駆動して、半導体チップ100が基板110に接地するまで、実装ツール20を下降させる(S50,S52)。半導体チップ100が基板110に接地すれば(S52でYes)、コントローラ16は、予め規定された標準荷重Fsが半導体チップ100に付与されるように、昇降機構の荷重制御を開始し(S54)、ツールヒータ26をONする(S56)。
図10の例では、時刻t1において、接地が検出され、その後、半導体チップ100に一定荷重が付与される。さらに、時刻t2において、ツールヒータ26が、ONされる。
【0050】
ツールヒータ26が、ONとなれば、コントローラ16は、リニアエンコーダ50で検出される検出位置Pdの変動を監視し、検出位置Pdが所定の基準変位量Δs以上、低下した場合、バンプ104が溶融したと判断する。具体的には、コントローラ16は、パラメータiを初期化して、i=0とする(S58)。続いて、現在の検出位置PdをP[i]として、メモリに記憶する(S60)。さらに、コントローラ16は、現在の検出位置P[i]と前回の検出位置P[i-1]との差分値と、予め規定された基準変位量Δsと、を比較する(S62)。比較の結果、P[i]-P[i-1]<Δsの場合(S62でNo)、コントローラ16は、ステップS64に進んで、パラメータiをインクリメントしたうえで、ステップS60,S62を再度行う。また、フローチャートには記載していないが、i=0で、P[i-1]が存在しない場合にも、ステップS66に進まず、ステップS64に進む。
【0051】
一方、P[i]-P[i-1]≧Δsの場合(S62でYes)、バンプ104が、溶融したと判断できる。この場合、コントローラ16は、ツールヒータ26をONしてからの経過時間を溶融時間Tmとしてメモリに記憶する(S66)。
図10の例では時刻t3において、検出位置Pdが急激に低下しているため、この時刻t3において、バンプ104が溶融したと判断できる。そして、この場合、時刻t2から時刻t3までの時間が、溶融時間Tmとしてメモリに記憶される。溶融時間Tmが取得できれば、コントローラ16は、ツールヒータ26をOFFして、実装ツール20を上昇させる(S68)。これにより、溶融タイミング検出処理は、終了となる。
【0052】
ボンディング処理の際には、この溶融時間Tmから若干の余裕分αを減算した値を待機時間Taとして用いる。このように、ボンディング処理に先立って、実験により、バンプ104の溶融タイミングを検出しておくことで、歪み解消処理を、バンプ104が溶融する直前で行うことができる。その結果、バンプ104が溶融した際に、実装ツール20が瞬間的に大きく降下することが防止できる。そして、結果として、バンプ104の過度な潰れを防止できる。
【0053】
次に、目標プロファイル生成処理について
図11、
図12を参照して説明する。上述した通り、ボンディング処理では、バンプ104が溶融した後は、ボンディングヘッド14の熱膨縮を相殺するように昇降機構を位置制御することで、ギャップ量Gを規定の目標値に保つ。目標プロファイル生成処理では、この位置制御で用いられる目標プロファイルを生成する。
図11は、この目標プロファイル生成処理の流れを示すフローチャートであり、
図12は、目標プロファイル生成処理における各種パラメータの変化を示す図である。より具体的には、
図12(a)は、目標プロファイル生成処理で取得される参照プロファイル90を、(b)は、目標プロファイル生成処理におけるツールヒータ26の駆動状態を示すグラフである。
図12(c)は、オフセット処理した参照プロファイル90*、理想プロファイル92、目標プロファイル94を示すグラフである。
【0054】
目標プロファイル生成処理を行う際、実装ツール20は、半導体チップ100を保持しない状態とする。そして、コントローラ16は、昇降機構を駆動して、半導体チップ100を保持していない実装ツール20を、基板110に接地するまで下降させる(S70,S72)。実装ツール20が、基板110に接地されれば、コントローラ16は、ツールヒータ26の制御を開始する(S76)。このツールヒータ26の制御は、ボンディング処理と同じ温度プロファイルにしたがって行う。すなわち、ボンディング処理では、ツールヒータ26をONするタイミングや、OFFするタイミングが、予め規定されており、こうしたタイミングが温度プロファイルとしてコントローラ16のメモリに記憶されている。ステップS76では、この温度プロファイルに従ったツールヒータ26の制御が開始される。また、コントローラ16は、パラメータiを初期化し、i=0とする(S78)。ツールヒータ26の制御が開始されれば、コントローラ16は、ボンディング処理の終了タイミングに達するまで(S82でYesとなるまで)、現在の検出位置PdをP[i]としてメモリに記憶する処理(S80)と、パラメータiのインクリメント(S84)する処理と、を所定のサンプリング間隔で繰り返す。
【0055】
図12の例では、時刻t1において、ツールヒータ26の制御が開始されており、時刻t1において、ツールヒータ26がONされている。この時刻t1における検出位置Pd(
図12(a)のグラフ参照)は、初期位置P[0]としてメモリに記憶される。温度プロファイルがスタートし、ツールヒータ26がオンされることで、実装ツール20およびスライド軸32の温度が徐々に上昇し、これらが熱膨張する。その結果、実装ツール20の底面の位置は変化していないにも関わらず、リニアエンコーダ50で検出される検出位置Pdは、徐々に上昇することになる。さらに、
図12の例では時刻t3において、スライド軸32等の熱膨張が収束し、検出位置Pdも一定となる。その後、時刻t4において、冷却をスタートするために、ツールヒータ26をOFFすると、スライド軸32等の温度が低下して熱膨張が解消されていく。そのため、時刻t4以降では、検出位置Pdが徐々に降下させる。そして、スライド軸32等の温度があらかじめ定めた温度まで戻った時刻t5以降、検出位置Pdは、一定値を保つ。そして、終了タイミングである時刻t6において、検出位置Pdの取得が終了する。ステップS80~ステップS84では、この
図12(a)に示すようなデータが、参照プロファイル90として取得される。この参照プロファイル90から、溶融時間Tm-余裕分α(
図12の時刻ta)の時の位置P[i]の値を減算した値が、ボンディングヘッド14の熱膨張量となる。
【0056】
参照プロファイル90が得られれば、コントローラ16は、予め記憶している理想プロファイル92と、この参照プロファイル90と、に基づいて、目標プロファイル94を生成する(S86)。理想プロファイル92は、ボンディングヘッド14が、熱膨張や歪みが生じない理想状態である場合の移動プロファイルである。
【0057】
図12(c)において、実線は、目標プロファイル94を、二点鎖線は、理想プロファイル92を、一点鎖線は、時刻taにおける位置を理想プロファイル92に合わせた、すなわち、オフセット処理した参照プロファイル90*を、それぞれ示している。
図12に示すように、理想プロファイル92では、バンプ104が溶融した時刻t2において、目標潰し量Gdだけ降下し、以降は、同じ高さ位置を維持する。そして、バンプ104が硬化した時刻t6以降に、上昇する。
【0058】
目標プロファイル94は、この理想プロファイル92に、参照プロファイル90から求まるボンディングヘッド14の熱膨張量を加算することで得られる。熱膨張量は、上述した通り、参照プロファイル90から溶融時間Tm-余裕分α(時刻ta)の時の位置P[i]の値を減算することで求まる。かかる熱膨張量を理想プロファイル92に加算することで、
図12(c)のグラフにおいて実線で示すような目標プロファイル94が得られる。実際のボンディング処理の際には、この目標プロファイル94に従って、昇降機構が位置制御される。そして、かかる目標プロファイル94を使用することで、ボンディングヘッド14が熱膨張したとしても、実装ツール20の底面位置、ひいては、ギャップ量Gを一定に保つことができる。
【0059】
以上の説明で明らかなとおり、本例によれば、事前に、歪み解消量Aa、溶融タイミング、目標プロファイルを取得している。そして、実際のボンディング処理の際には、バンプ104の溶融前に昇降機構を歪み解消量Aa分だけ上昇方向に駆動してボンディングヘッド14の歪みを解消したのち、熱膨張を相殺する目標プロファイルに従って昇降機構を駆動している。かかる構成とすることで、溶融したバンプ104を過度に潰すことを効果的に防止でき、半導体装置の品質を良好に保つことができる。なお、これまで説明した構成は一例であり、バンプ104の溶融前に昇降機構を上昇方向に駆動してボンディングヘッド14の歪みを解消した後、熱膨張を相殺するように昇降機構を駆動するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、歪み解消処理における昇降機構の移動量である歪み解消量Aaを事前の実験(歪み解消量検出処理)で取得しているが、歪み解消量Aaは、別の手段で取得されてもよい。例えば、ボンディングヘッド14の剛性や第一処理で半導体チップ100に付加する標準荷重Fsに基づいて、シミュレーションを行い、歪み解消量Aaを取得するようにしてもよい。
【0060】
また、歪み解消処理の実行タイミングは、バンプ104の溶融前であれば、必ずしも、溶融直前でなくてもよい。また、上述の説明では、溶融タイミング検出処理において、バンプ104の溶融を、検出位置Pdの変化に基づいて判断しているが、他のパラメータ、例えば、押圧荷重の変化等に基づいて、バンプ104の溶融を判断してもよい。また、本例の昇降機構は、VCM30を駆動源とする第一ユニット24aと、昇降モータ40を駆動源とする第二ユニット24bと、を有しているが、昇降機構は、荷重制御および位置制御の双方が行えるのであれば、その構成は、適宜、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 半導体装置の製造装置、12 ステージ、14 ボンディングヘッド、16 コントローラ、18 XYステージ、20 実装ツール、24a 第一ユニット、24b 第二ユニット、26 ツールヒータ、30 ボイスコイルモータ、32 スライド軸、34 板バネ、36 ガイド部材、38 ベース部材、40 昇降モータ、42 リードスクリュー、44 移動ブロック、46 移動体、48 ガイドレール、50 リニアエンコーダ、90 参照プロファイル、92 理想プロファイル、94 目標プロファイル、100 半導体チップ、102 チップ本体、104 バンプ、110 基板、112 電極。