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特許7145591音響スペクトル分析機、及びそれに具備された共振器の配列方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】音響スペクトル分析機、及びそれに具備された共振器の配列方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/10 20060101AFI20220926BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H04R17/10
H01L41/113
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2017143075
(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公開番号】P2018023103
(43)【公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】10-2016-0099059
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金 載 興
(72)【発明者】
【氏名】姜 誠 贊
(72)【発明者】
【氏名】尹 容 燮
(72)【発明者】
【氏名】李 忠 鎬
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-264879(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00-17/10
H01L 41/00-41/47
H01L 27/20
G01N 29/00-29/52
G01H 1/00-17/00
H03H 3/007-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板に一端が固定部において固定されるように配列され、中心周波数が互いに異なる複数の共振器と、を含み、
前記複数の共振器において、中心周波数がすぐ隣接する2つの共振器間の離隔距離が、前記複数の共振器間の離隔距離のうち最も短い距離より長くなるように、前記複数の共振器が配列され、
前記複数の共振器それぞれの前記固定部が配置された軌跡は、1直線に沿って配列されるか、または、円形または閉曲線の形状に沿って配列されている、スペクトル分析機。
【請求項2】
前記複数の共振器それぞれは、
前記支持基板に固定される固定部と、
音響信号に反応して可動する可動部と、
前記可動部の動きをセンシングする感知部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のスペクトル分析機。
【請求項3】
前記支持基板には、貫通ホールが具備され、
前記複数の共振器は、
前記複数の共振器それぞれの前記可動部が、前記貫通ホールと対向するように配置されることを特徴とする請求項2に記載のスペクトル分析機。
【請求項4】
前記複数の共振器は、互いに重ならず、平面的に配列されることを特徴とする請求項3に記載のスペクトル分析機。
【請求項5】
前記複数の共振器の前記固定部が配置された軌跡は、前記貫通ホールの断面形状に沿って形成されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のスペクトル分析機。
【請求項6】
前記複数の共振器において、空間的にすぐ隣接する2つの共振器間の中心周波数差が、前記複数の共振器間の中心周波数差のうち最も小さい値より大きくなるように、前記複数の共振器が配列されることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のスペクトル分析機。
【請求項7】
前記複数の共振器の個数は、N個であり、前記複数の共振器が、中心周波数の順に、Rk(kは、1からNまでの自然数)と命名されるとき、
前記複数の共振器Rkは、m個のサブグループSG_j(jは、1からmまでの自然数)にグルーピングされ、mは、Nの約数のうち、1及びNを除いたいずれか一つであり、
前記サブグループSG_jは、
j≠mであるとき、(k mod m)=jを満足する共振器Rkから構成され、
j=mであるとき、(k mod m)=0を満足する共振器Rkから構成され、
同じ前記サブグループSG_jに属した共振器Rkが互いに隣接し、中心周波数の順に配列されることを特徴とする請求項2~のいずれか一項に記載のスペクトル分析機。
【請求項8】
前記サブグループSG_jは、j値の順に配列されることを特徴とする請求項7に記載のスペクトル分析機。
【請求項9】
mは、Nの約数を順に並べたとき、真ん中の1値、または中央の2値のうちいずれか一つであることを特徴とする請求項または請求項に記載のスペクトル分析機。
【請求項10】
mは、2より大きい自然数であり、
前記複数の共振器それぞれの前記固定部が配置された軌跡は、多角形、円形または閉曲線の形状を形成することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載のスペクトル分析機。
【請求項11】
前記複数の共振器それぞれの前記固定部が配置された軌跡は、辺の個数がmである多角形であることを特徴とする請求項10のいずれか一項に記載のスペクトル分析機。
【請求項12】
mは、偶数であり、
前記複数の共振器それぞれの前記固定部が配置された軌跡は、互いに平行な2本の直線状であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載のスペクトル分析機。
【請求項13】
前記サブグループSG_jのうち、jが1からm/2までである前記サブグループSG_jに属した共振器の前記固定部が配置された軌跡は、第1直線状であり、
前記サブグループSG_jのうち、jが(m/2)+1からmまでである前記サブグループSG_jに属した共振器の前記固定部が配置された軌跡は、前記第1直線と対向して平行な第2直線状であることを特徴とする請求項12に記載のスペクトル分析機。
【請求項14】
前記サブグループSG_jにおいて、前記固定部が互いに異なる2本の直線軌跡に配置され、互いに対向する2つの前記サブグループSG_j内の共振器は、中心周波数による配列順序が互いに反対であることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のスペクトル分析機。
【請求項15】
前記複数の共振器の中心周波数は、等差間隔に設定されることを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のスペクトル分析機。
【請求項16】
前記複数の共振器の中心周波数は、等比間隔に設定されることを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のスペクトル分析機。
【請求項17】
分析対象である周波数fの範囲(F1≦f≦F2)、及び分析に使用される複数の共振器Rk(kは、1からNまでの自然数)の個数Nを設定する段階と、
前記複数の共振器Rkの中心周波数を、前記範囲内の互いに異なる値に設定し、共振器Rkの配置周期pを設定する段階と、
中心周波数がすぐ隣接する共振器Rk中心間の距離が、pの2倍以上になるように、前記複数の共振器Rkを配列する段階と、を含み、
前記複数の共振器において、中心周波数がすぐ隣接する2つの共振器間の離隔距離が、前記複数の共振器間の離隔距離のうち最も短い距離より長くなるように、前記複数の共振器が配列され、
前記複数の共振器それぞれの固定部が配置された軌跡は、1直線に沿って配列されるか、または、円形または閉曲線の形状に沿って配列される、スペクトル分析機の共振器配列方法。
【請求項18】
前記複数の共振器Rkの中心周波数を、それぞれF1+(k-1)(F2-F1)/(N-1)(kは、1からNまでの自然数)に設定し、
空間的にすぐ隣接する共振器Rk間の中心周波数差が(F2-F1)/(N-1)の2倍以上になるように、前記複数の共振器を配列することを特徴とする請求項17に記載のスペクトル分析機の共振器配列方法。
【請求項19】
前記複数の共振器Rkの中心周波数を等比r間隔に設定し、
空間的にすぐ隣接する共振器Rk間の中心周波数間の比は、rの2倍以上になるように、前記複数の共振器を配列することを特徴とする請求項17に記載のスペクトル分析機の共振器配列方法。
【請求項20】
前記複数の共振器Rkは、m個のサブグループSG_j(jは、1からmまでの自然数)にグルーピングされ、mは、Nの約数のうち、1及びNを除いたいずれか一つであり、
前記サブグループSG_jは、
j≠mであるとき、(k mod m)=jを満足する共振器Rkから構成され、
j=mであるとき、(k mod m)=0を満足する共振器Rkから構成され、
同じ前記サブグループSG_jに属した共振器Rkが互いに隣接し、中心周波数の順に配列されることを特徴とする請求項1719のいずれか一項に記載のスペクトル分析機の共振器配列方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響スペクトル分析機、及びそれに具備された共振器の配列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音響または振動のスペクトルを分析するスペクトル分析機は、携帯電話(cellphones)、コンピュータ、家電機器、自動車またはスマートホーム環境などにおいて、状況認識、音声認識、話者認識などに活用されたり、家電機器、自動車、建築物などに搭載されて、振動情報分析に活用されたりする。
【0003】
一般的に、音響信号の周波数ドメイン情報は、広帯域(wideband)特性を有するマイクロフォン(microphone)に入力された音響信号が、ADC(analog digital converter)を経て、フーリエ変換(Fourier transform)されることによって得られる。かような周波数情報獲得方式は、フーリエ変換による計算量負担が大きく、周波数分解能と時間分解能とがトレードオフ(trade-off)関係を有し、時間情報と周波数情報との分解能を同時に向上させ難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2010/0033058号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、分解能が向上した音響スペクトル分析機を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題はまた、中心周波数が異なる共振器間において、カップリングを低減させる共振器配列方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一類型によれば、支持基板と、前記支持基板に一端が固定されるように配列され、中心周波数が互いに異なる複数の共振器と、を含むスペクトル分析機が提供される。
【0008】
前記複数の共振器それぞれは、前記支持基板に固定される固定部と、音響信号に反応して可動する可動部と、前記可動部の動きをセンシングする感知部と、を含んでもよい。
【0009】
前記支持基板には、貫通ホールが具備され、前記複数の共振器は、前記複数の共振器それぞれの前記可動部が、前記貫通ホールと対向するように配置されてもよい。
【0010】
前記複数の共振器は、互いに重ならず、平面的に配列されてもよい。
【0011】
前記複数の共振器の前記固定部が配置された軌跡は、前記貫通ホールの断面形状に沿って形成されてもよい。
【0012】
前記貫通ホールの断面形状は、長方形であり、前記複数の共振器の前記固定部が配置された軌跡は、前記長方形の互いに平行する2辺に沿って形成されてもよい。
【0013】
前記複数の共振器において、中心周波数がすぐ隣接する2つの共振器間の離隔距離が、前記複数の共振器間の離隔距離のうち最も短い距離より長くなるように、前記複数の共振器が配列されてもよい。
【0014】
前記複数の共振器において、空間的にすぐ隣接する2つの共振器間の中心周波数差が、前記複数の共振器間の中心周波数差のうち最も小さい値より大きくなるように、前記複数の共振器が配列されてもよい。
【0015】
前記複数の共振器の個数は、N個であり、前記複数の共振器が、中心周波数の順に、R(kは、1からNまでの自然数)と命名されるとき、前記複数の共振器Rは、m個のサブグループSG_j(jは、1からmまでの自然数)にグルーピングされ、mは、Nの約数のうち、1及びNを除いたいずれか一つであり、前記サブグループSG_jは、j≠mであるとき、(k mod m)=jを満足する共振器Rから構成され、j=mであるとき、(k mod m)=0を満足する共振器Rから構成され、同じ前記サブグループSG_jに属した共振器Rが互いに隣接し、中心周波数の順に配列されてもよい。
【0016】
前記サブグループSG_jは、j値の順に配列されてもよい。
【0017】
mは、Nの約数を順に並べたとき、真ん中の1値、または中央の2値のうちいずれか一つであってもよい。
【0018】
mは、2より大きい自然数であり、前記複数の共振器それぞれの前記固定部が配置された軌跡は、多角形、円形または閉曲線の形状を形成することができる。
【0019】
前記複数の共振器それぞれの前記固定部が配置された軌跡は、辺の個数がmである多角形であってもよい。
【0020】
mは、偶数であり、前記複数の共振器それぞれの前記固定部が配置された軌跡は、互いに平行な2本の直線状であってもよい。
【0021】
前記サブグループSG_jのうち、jが1からm/2までである前記サブグループSG_jに属した共振器の前記固定部が配置された軌跡は、第1直線状であり、前記サブグループSG_jのうち、jが(m/2)+1からmまでである前記サブグループSG_jに属した共振器の前記固定部が配置された軌跡は、前記第1直線と対向して平行な第2直線状であってもよい。
【0022】
前記サブグループSG_jにおいて、前記固定部が互いに異なる2本の直線軌跡に配置され、互いに対向する2つの前記サブグループSG_j内の共振器は、中心周波数による配列順序が互いに反対であってもよい。
【0023】
前記複数の共振器の中心周波数は、等差間隔に設定されてもよい。
【0024】
前記複数の共振器の中心周波数は、等比間隔に設定されてもよい。
【0025】
また、一類型によれば、分析対象である周波数fの範囲(F1≦f≦F2)、及び分析に使用される複数の共振器R(kは、1からNまでの自然数)の個数Nを設定する段階と、前記複数の共振器Rの中心周波数を、前記範囲内の互いに異なる値に設定し、共振器Rの配置周期pを設定する段階と、中心周波数がすぐ隣接する共振器R中心間の距離が、pの2倍以上になるように、前記複数の共振器Rを配列する段階と、を含むスペクトル分析機の共振器配列方法が提供される。
【0026】
前記複数の共振器Rの中心周波数を、それぞれF1+(k-1)(F2-F1)/(N-1)(kは、1からNまでの自然数)に設定し、空間的にすぐ隣接する共振器R間の中心周波数差が(F2-F1)/(N-1)の2倍以上になるように、前記複数の共振器を配列することができる。
【0027】
または、前記複数の共振器Rの中心周波数を等比r間隔に設定し、空間的にすぐ隣接する共振器R間の中心周波数間の比は、rの2倍以上になるように、前記複数の共振器を配列することができる。
【0028】
前記複数の共振器Rは、m個のサブグループSG_j(jは、1からmまでの自然数)にグルーピングされ、mは、Nの約数のうち、1及びNを除いたいずれか一つであり、前記サブグループSG_jは、j≠mであるとき、(k mod m)=jを満足する共振器Rから構成され、j=mであるとき、(k mod m)=0を満足する共振器Rから構成され、同じ前記サブグループSG_jに属した共振器Rが互いに隣接し、中心周波数の順に配列されてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明のスペクトル分析機によれば、中心周波数が異なる複数の共振器により、所定帯域の周波数が選択的に感知され、入力信号に対する周波数情報分析が容易である。
【0030】
本発明のスペクトル分析機は、フーリエ変換が必要ではなく、また、周波数分解能及び時間分解能を独立して向上させることができる。
【0031】
本発明のスペクトル分析機の共振器配列方法によれば、中心周波数が隣接した共振器間の空間的離隔距離を確保し、及び/または空間的に隣接した共振器間の中心周波数離隔を確保することにより、共振器間のカップリング現象を減らすことができる。
【0032】
本発明のスペクトル分析機の共振器配列方法によれば、サブグルーピング方式で共振器が配列された場合、隣接共振器間のカップリングが少なく、スペクトル分析の正確度が向上する。また、必要により、一部サブグループのみを選択的に駆動することもでき、消費電力の減少を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態によるスペクトル分析機の概略的な構造を示す斜視図である。
図2A】一断面において、図1のスペクトル分析機に具備された共振器1つの構造を詳細に示した断面図である。
図2B】他の断面において、図1のスペクトル分析機に具備された共振器1つの構造を詳細に示した断面図である。
図2C】1つの共振器の周波数応答特性を例示的に示したグラフである。
図3図1のスペクトル分析機により、音響信号の周波数成分が分析されるところを概念的に示す図面である。
図4図1のスペクトル分析機によって具現される周波数分解能、時間分解能を、フーリエ変換方法を使用する場合と比較して示したグラフである。
図5】空間的に隣接するように配列される共振器間の中心周波数差により、カップリング効果が異なることを概念的に示す図面である。
図6】中心周波数が隣接する共振器間の離隔距離により、カップリング効果が異なることを概念的に示す図面である。
図7】一実施形態による共振器配列方法について概略的に説明するフローチャートである。
図8】一実施形態による共振器配列方法について概略的に説明するフローチャートである。
図9A】共振器個数が12個であるとき、サブグループの個数を1にした場合の共振器配列例を示す図面である。
図9B】共振器個数が12個であるとき、サブグループの個数を2にした場合の共振器配列例を示す図面である。
図9C】共振器個数が12個であるとき、サブグループの個数を3にした場合の共振器配列例を示す図面である。
図9D】共振器個数が12個であるとき、サブグループの個数を4にした場合の共振器配列例を示す図面である。
図9E】共振器個数が12個であるとき、サブグループの個数を6にした場合の共振器配列例を示す図面である。
図10】複数の共振器を、m個のサブグループに分け、各サブグループを円形に配列した例を示す図面である。
図11図10の各サブグループ内において、共振器が中心周波数順に配列された例を示す図面である。
図12】他の実施形態によるスペクトル分析機の概略的な構造を示す斜視図である。
図13図12のスペクトル分析機において、空間的に隣接するように配置された3つの共振器による周波数応答特性を示すグラフである。
図14図12のスペクトル分析機において、中心周波数が隣接する3つの共振器による周波数応答特性を示すグラフである。
図15】他の実施形態によるスペクトル分析機において、複数の共振器を、m個のサブグループに分け、サブグループを長方形に配列した例を示す図面である。
図16図15の各サブグループ内において、共振器が中心周波数順に配列された例を示す図面である。
図17図16の変形例であり、対向するサブグループの共振器が、中心周波数に係わる順序について、互いに反対に配列された例を示す図面である。
図18】他の実施形態によるスペクトル分析機の概略的な構造を示す斜視図である。
図19図18のスペクトル分析機において、空間的に隣接するように配置された3つの共振器による周波数応答特性を示すグラフである。
図20図18のスペクトル分析機において、中心周波数が隣接する2つの共振器による周波数応答特性を示すグラフである。
図21】他の実施形態によるスペクトル分析機での共振器配列例を示す平面図である。
図22】他の実施形態によるスペクトル分析機での共振器配列例を示す平面図である。
図23A】一実施形態によるスペクトル分析機に採用される共振器の中心周波数を設定する方法の例を示すグラフである。
図23B】一実施形態によるスペクトル分析機に採用される共振器の中心周波数を設定する方法の例を示すグラフである。
図23C】一実施形態によるスペクトル分析機に採用される共振器の中心周波数を設定する方法の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付された図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の図面において、同一参照符号は、同一構成要素を指し、図面上において、各構成要素の大きさは、説明の明瞭性及び便宜さのために誇張されてもいる。一方、以下で説明する実施形態は、ただ例示的なものに過ぎず、かような実施形態から多様な変形が可能である。
【0035】
以下において、「上部」または「上」と記載されているのは、接触して真上にあるものだけではなく、非接触で上にあるものも含んでもよい。
【0036】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0037】
「前記」の用語、及びそれと類似した指示用語の使用は、単数及び複数のいずれにも該当する。
【0038】
方法を構成する各段階について、明白に順序を記載するか、あるいは反する記載がなければ、各段階は、適する順序で実行される。必ずしも各段階の記載順序に限定されるものではない。全ての例、または例示的な用語(例えば、など)の使用は、単に技術的思想について詳細に説明するためのものであり、特許請求の範囲によって限定されない以上、前記例、または例示的な用語により、範囲が限定されるものではない。
【0039】
図1は、一実施形態によるスペクトル分析機100の概略的な構造を示す斜視図である。図2A及び図2Bは、それぞれ異なる断面において、図1のスペクトル分析機100に具備された共振器R1つの構造を詳細に示した断面図であり、図2Cは、1つの共振器Rの周波数応答特性を例示的に示したグラフである。
【0040】
図1を参照すれば、スペクトル分析機100は、支持基板110及び共振器アレイ120を含む。共振器アレイ120は、支持基板110に一端が固定されるように配列され、中心周波数が互いに異なる複数の共振器Rを含む。
【0041】
図2A及び図2Bに図示されているように、共振器Rは、支持基板110に固定される固定部10と、信号に反応して可動する可動部30と、可動部30の動きをセンシングする感知部20と、を含む。共振器Rは、また、可動部30に所定の質量mを提供するための質量体40をさらに含んでもよい。
【0042】
支持基板110には、貫通ホールTHが形成され、複数の共振器Rは、複数の共振器Rのそれぞれの可動部30が、貫通ホールTHと対向するように配置されてもよい。貫通ホールTHは、可動部30が外力によって振動する空間を提供し、それを満足する限り、貫通ホールTHの形状や大きさは、特別に限定されるものではない。支持基板110は、シリコン基板など多様な材質から形成されてもよい。
【0043】
複数の共振器Rは、互いに重ならず、平面的に配列され、すなわち、物理的信号の入力経路に全体的に同時に露出されるように配列される。複数の共振器Rの固定部10が配置された軌跡は、貫通ホールTHの断面形状に沿って形成されてもよい。貫通ホールTHは、円形に図示されているが、それに限定されるものではなく、多角形や、それ以外の多様な閉曲線の形状を有することができる。
【0044】
可動部30は、弾性フィルムからなる。該弾性フィルムは、質量体40の質量mと共に、共振器Rの共振特性を決める要素になる長さL、幅Wを有することができる。弾性フィルムとしては、シリコン、金属、ポリマーなどの材質が使用される。
【0045】
感知部20は、可動部30の動きをセンシングするセンサ層を含んでもよい。感知部20は、例えば、圧電素子を含んでもよく、その場合、電極層、圧電物質層、電極層が積層された構造を有することができる。該圧電物質としては、ZnO、SnO、PZT、ZnSnO、PVDF(Polyvinylidene fluoride、P(VDF-TrFE)(poly(vinylidene fluoride-trifluoroethylene)、AlNまたはPMN-PTなどが使用される。該電極層として、金属物質や、その他多様な伝導性材質が使用される。
【0046】
共振器Rは、大体数μm以下の幅、数μm以下の厚み、及び大体数mm以下の長さを有する。かような微細サイズの共振器Rは、MEMS(micro electro mechanical systems)工程によっても製作されうる。
【0047】
共振器Rは、外部信号に反応し、Z方向に沿って上下に振動し、変位z値は、次の運動方程式によって決まる。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、cは、ダンピング係数(damping coefficient)であり、kは、弾性係数であり、Fcosωtは、外力(driving force)であり、共振器Rに入力される信号による作用を示す。k値は、可動部30の物性及び形状によって決まる。
【0050】
前記運動方程式により、共振器Rは、図2Cのように、中心周波数f、バンド幅BWを有する周波数応答特性を示す。
【0051】
中心周波数fは、次の通りである。
【0052】
【数2】
【0053】
バンド幅BWは、中心周波数fによる周波数応答値(z-magnitude)の半分を示す周波数帯域幅を意味する。
【0054】
かように、スペクトル分析機100に具備された共振器Rは、設計された、互いに異なる中心周波数を有し、中心周波数を中心にする所定帯域の周波数を感知することができる。
【0055】
図3は、図1のスペクトル分析機100によって音響信号の周波数成分が分析されるところを概念的に示している。
【0056】
スペクトル分析機100に、多様な周波数成分を有する音響信号Wiが入力されると、各共振器は、音響信号Wiに含まれた周波数成分のうち、各共振器のセンシング周波数帯域に反応して振動する。共振器全体によって、大体20Hz~20kHz範囲の可聴周波数帯域、20kHz以上の超音波帯域、または20Hz以下の超低周波帯域の音響信号を受信することができるように、共振器それぞれの中心周波数が設定されてもよい。
【0057】
入力された音響信号により、共振器が振動を行い、各共振器は、互いに異なる帯域の音響周波数に対応して振動するので、互いに異なる周波数帯域が感知される。
【0058】
例示的に図示されているように、中心周波数が、それぞれf、f、fである共振器において、当該周波数成分に反応した信号を出力する。すなわち、各共振器の出力がそのまま該当周波数情報になるので、周波数分解能は、共振器の個数によって独立して決定される。時間分解能は、各共振器からの即時出力速度と同じである。
【0059】
図4は、図1のスペクトル分析機100によって具現される周波数分解能、時間分解能を、フーリエ変換方法を使用する場合と比較して示したグラフである。
【0060】
STFT(short time Fourier tansform)方法によれば、経時的な周波数分布の変化を知るために、入力される信号を一定時間間隔であるフレーム(frame)に分け、フレーム別FFT(fast Fourier transform)を行う。フレームを小さく切れば、経時的な変化を容易に観測することができる代わりに、フレーム内情報が少なく、周波数情報が鈍くなり、フレームを広く切れば、周波数情報が明確になる代わりに、時間的変化に鈍感になる。それを、Gaborの不確定性(Gabor uncertainty)あるいはフーリエの不確定性(Fourier uncertainty)といい、(ΔT)(ΔF)の値は、グラフに図示された点線上に限られる。一実施形態の場合、かような制約なしに、周波数分解能及び時間分解能を独立して確保することができ、斜線領域内の任意の値で、選択的設計が可能である。
【0061】
図1のスペクトル分析機100は、複数の共振器Rが、中心周波数のサイズ順に配列されたところを例示しているが、それに限定されるものではなく、出力特性を向上させることができる他の配列方式で配列することが可能である。
【0062】
図2Cで例示したように、共振器Rの周波数応答グラフは、所定のバンド幅(band width)を有し、従って、f/BWと定義されるQ値は、有限である。Q値が大きいほど、周波数応答特性は敏感であり、Q値が小さくなるほど、中心周波数以外に、隣接帯域の周波数にも反応するようになる。かような複数の共振器Rは、限定された空間内に集約的に配置されるために、共振器R間のカップリング(coupling)が発生する。カップリング効果は、共振器R間の空間的距離、及び隣接した共振器R間の中心周波数差のいずれとも係わるので、カップリングを減らすために、かようないくつかの点が考慮されなければならない。
【0063】
図5は、空間的に隣接するように配列される共振器間の中心周波数差により、カップリング効果が異なることを概念的に示す。
【0064】
図5は、空間的離隔距離がdで同一であり、中心周波数差がそれぞれ(Δf)、(Δf)、(Δf)である3つの場合について、2つの共振器による周波数応答特性を示している。
【0065】
図5を参照すれば、中心周波数差が小さいほど、カップリングは強く示される。中心周波数差が(Δf)である場合、fの中心周波数を有する共振器は、周波数fi+1に対しても反応してピークを示しており、fi+1の中心周波数を有する共振器も、周波数fに反応したピークを示している。
【0066】
中心周波数差が(Δf)に大きくなった場合、fの中心周波数を有する共振器は、周波数fi+1に反応したピークを示さないが、fi+1の中心周波数を有する共振器は、周波数fに反応したピークを示している。
【0067】
中心周波数差が(Δf)にさらに大きくなった場合、fの中心周波数を有する共振器は、周波数fi+1に反応したピークを示さず、fi+1の中心周波数を有する共振器も、周波数fに反応したピークを示さない。すなわち、2つの共振器間のカップリングは、示されない。
【0068】
かような分析から、空間的離隔距離が近く配置される共振器の中心周波数差を所定値以上にし、例えば、隣接した共振器それぞれのバンド幅より大きくし、カップリングを減らすことができるということが分かる。
【0069】
図6は、中心周波数が隣接する共振器間の離隔距離により、カップリング効果が異なることを概念的に示す。
【0070】
図6は、中心周波数差がΔfである2つの共振器間の離隔距離を、d、d、dと増大させた3つの場合について、2つの共振器による周波数応答特性を示している。
【0071】
図6を参照すれば、共振器間の離隔距離が短いほど、カップリングは、大きく示される。2つの共振器間離隔距離がdである場合、fの中心周波数を有する共振器は、周波数fi+1にも反応し、ピークを示しており、fi+1の中心周波数を有する共振器も、周波数fに反応したピークを示している。
【0072】
共振器間の離隔距離がdに増大した場合、fの中心周波数を有する共振器が周波数fi+1に反応したピークの大きさと、fi+1の中心周波数を有する共振器が周波数fに反応したピークの大きさとは、共振器間の離隔距離がdの場合に比べ、小さく示されている。
【0073】
共振器間の離隔距離がdにさらに増大した場合、fの中心周波数を有する共振器は、周波数fi+1に反応したピークを示さず、fi+1の中心周波数を有する共振器も、周波数fに反応したピークを示さない。すなわち、2つの共振器間のカップリングは、示されない。
【0074】
かような分析から、中心周波数差が小さい共振器は、空間的離隔距離を所定値以上にし、相互間のカップリングを減らすことができるということが分かる。
【0075】
上記を考慮し、図1のスペクトル分析機100で例示した共振器アレイ120の共振器Rの配列形態は、カップリングを減らすことができる形態に変形される。
【0076】
例えば、複数の共振器Rにおいて、中心周波数がすぐ隣接する2つの共振器R間の離隔距離が、複数の共振器R間の離隔距離のうち最も短い距離より長くなるように、複数の共振器Rが配列されてもよい。
【0077】
または、中心周波数がすぐ隣接する2つの共振器R間の離隔距離が、2つの共振器Rそれぞれのバンド幅より大きくなるように、複数の共振器Rが配列されてもよい。
【0078】
または、空間的にすぐ隣接する2つの共振器R間の中心周波数差が、複数の共振器R間の中心周波数差のうち最も小さい値より大きくなるように、複数の共振器Rが配列されてもよい。
【0079】
図7及び図8は、一実施形態によるスペクトル分析機の共振器配列方法について概略的に説明するフローチャートである。
【0080】
図7を参照すれば、まず、分析対象である周波数fの範囲(F1≦f≦F2)、及び分析に使用される複数の共振器R(kは、1からNまでの自然数)の個数Nを設定する(S100)。
【0081】
次に、複数の共振器それぞれの中心周波数と、共振器の配置周期pとを設定する(S200)。配置周期pは、隣接した共振器中心間の距離であり、共振器幅がwであり、離隔距離がdである場合、(d+w)に該当する値である。複数の共振器Rの中心周波数は、前記設定された周波数範囲(F1≦f≦F2)内の互いに異なる値に設定する。複数の共振器Rを命名するインデックスkは、中心周波数が大きい順に決めることができる。中心周波数を設定する規則は、多様に決めることができる。例えば、中心周波数は、等差間隔や等比間隔で設定されてもよく、または、任意の間隔で設定されてもよく、例えば、特定の周波数区間では中心周波数間隔を詰め、他の周波数区間では中心周波数間隔を空けることもできる。
【0082】
次に、中心周波数が設計された複数の共振器Rを配列する。カップリングができる限り発生しないように、中心周波数がすぐ隣接する共振器R中心間の距離が、pの2倍以上になるように、複数の共振器Rを配列する(S300)。
【0083】
それと共に、または選択的に、空間的にすぐ隣接する共振器R間の中心周波数差が、所定値以上になるように、複数の共振器Rを配列することもできる。
【0084】
例えば、複数の共振器Rの中心周波数が等差間隔に設定され、すなわち、中心周波数が、それぞれF1+(k-1)(F2-F1)/(N-1)(kは、1からNまでの自然数)である場合、空間的にすぐ隣接する共振器R間の中心周波数差が、(F2-F1)/(N-1)の2倍以上になるように、複数の共振器Rを配列することができる。
【0085】
または、複数の共振器Rの中心周波数が等比r間隔に設定された場合、すなわち、中心周波数がすぐ隣接する2つの共振器の中心周波数の比率が一定値rである場合、中心周波数が空間的にすぐ隣接する共振器R間の中心周波数間の比は、rの2倍以上になるように、複数の共振器Rを配列することができる。
【0086】
かような方式の共振器配列は、図5及び図6で説明したように、中心周波数がすぐ隣接した共振器間の間隔を可能な限り大きくし、それと共に、または選択的に、空間的にすぐ隣接した共振器間の中心周波数差を可能な限り大きくするためである。すなわち、2つの要件の最適の組み合わせ、あるいはある1要件に重きをおいた共振器配列が選択的に使用される。
【0087】
図8を参照して、複数の共振器Rをサブグループにグルーピングする方法について説明する。
【0088】
複数の共振器Rは、m個のサブグループSG_j(jは、1からmまでの自然数)にグルーピングされ、このとき、mに係わる法(modulus)を基準に、複数の共振器Rをグルーピングすることができる(S310)。
【0089】
サブグループSG_jは、共振器の中心周波数順序を示すkを、サブグループの個数mで割った余りの値によって定義されてもよい。すなわち、SG_j(j≠m)は、(k mod m)=jを満足する共振器Rから構成され、SG_j(j=m)は、(k mod m)=0を満足する共振器Rから構成される。
【0090】
サブグループの個数mは、Nの約数であってもよく、Nの約数のうち、1及びNを除いたいずれか一つであってもよい。mをNの約数にする場合、各サブグループに含まれた共振器個数をいずれも同一にすることができるが、mは、Nの約数に必ずしも限定されるものではない。
【0091】
同じサブグループSG_jに属した共振器Rが互いに隣接するように配列され、中心周波数の順に配列される(S320)。また、各サブグループSG_jは、サブグループを定義するインデックスjの順に配列されてもよい。
【0092】
図9Aないし図9Eは、共振器個数が12個であるとき、サブグループの個数を、それぞれ1、2、3、4、6にした場合の共振器配列例を示す。
【0093】
図9Aは、サブグループの個数が1、すなわち、グルーピングをせず、複数の共振器が中心周波数順に配列された例を示す。その配列は、空間的に隣接した共振器間の中心周波数差が最も小さい形態である。すなわち、共振器は、一定の配列周期pを有し、隣接した共振器間の中心周波数離隔は、Δfである。
【0094】
Δfは、共振器の中心周波数設定方法により、異なる定義を有することができる。例えば、中心周波数が等差間隔に設定された場合、Δfは、(F2-F1)/(N-1)と定義される。中心周波数が等比r規則によって設定された場合、Δfは、rと定義される。
【0095】
図9Bは、2つのサブグループを形成した場合であり、サブグループSG_1は、R(k=1,3,5,7,9,11)を含み、サブグループSG_2は、R(k=2,4,6,8,10,12)を含む。サブグループSG_1,SG_2内の共振器Rを中心周波数順に配列し、サブグループSG_1,SG_2を順に配列した結果、空間的にすぐ隣接した共振器R,R間の周波数離隔が2Δfになり、中心周波数がすぐ隣接した共振器R,R間の空間離隔は、6pになる。
【0096】
図9Cは、3つのサブグループを形成した場合であり、サブグループSG_1は、R(k=1,4,7,10)を含み、サブグループSG_2は、R(k=2,5,8,11)を含み、サブグループSG_3は、R(k=3,6,9,12)を含む。サブグループSG_1,SG_2,SG_3内の共振器Rを中心周波数順に配列し、サブグループSG_1,SG_2,SG_3を順に配列した結果、空間的にすぐ隣接した共振器R,R間の周波数離隔が3Δfになり、中心周波数がすぐ隣接した共振器R,R間の空間離隔は、4pになる。
【0097】
図9Dは、4つのサブグループを形成した場合であり、サブグループSG_1は、R(k=1,5,9)を含み、サブグループSG_2は、R(k=2,6,10)を含み、サブグループSG_3は、R(k=3,7,11)を含み、サブグループSG_4は、R(k=4,8,12)を含む。サブグループSG_1,SG_2,SG_3,SG_4)内の共振器Rを中心周波数順に配列し、サブグループSG_1,SG_2,SG_3,SG_4を順に配列した結果、空間的にすぐ隣接した共振器R,R間の周波数離隔が4Δfになり、中心周波数がすぐ隣接した共振器R,R間の空間離隔は、3pになる。
【0098】
図9Eは、6個のサブグループを形成した場合である。前述の方法通りに共振器を配列した結果、空間的にすぐ隣接した共振器R,R間の周波数離隔が6Δfになり、中心周波数がすぐ隣接した共振器R,R間の空間離隔は、2pになる。
【0099】
かように、サブグループの個数は、中心周波数が隣接した共振器間の距離を確保したり、空間的に隣接した共振器間の中心周波数差を確保したりするという観点を適切に組み合わせ、多様に選択することができる。図9Bの場合、中心周波数が隣接した共振器間の距離確保の側面がさらに強調され、図9Eの場合、空間的に隣接した共振器間の中心周波数差確保の側面がさらに強調されたものであると見られる。
【0100】
前記2つの観点が適切に組み合わせされるように、サブグループの個数mは、Nの約数を順に並べるときの中間値に決めることができる。例えば、Nの約数を順に配列し、真ん中の1値を、または中央の2値のうちいずれか一つを、サブグループの個数として決めることができる。
【0101】
そのように、共振器をサブグルーピングして配列する場合、共振器間のカップリングを減らす効果があるだけではなく、必要によっては、一部サブグループのみを駆動することも可能であるという利点がある。各サブグループでカバーする周波数帯域範囲が類似しているので、サブグループの一部のみを駆動することにより、分解能を若干犠牲にし、電力消耗を減らす駆動が可能である。
【0102】
図10は、複数の共振器Rを、m個のサブグループに分け、各サブグループを円形に配列した例を示し、図11は、図10の各サブグループ内において、共振器が配列された例を示す。
【0103】
複数のサブグループSG_j(j=1からmまでの自然数)は、各共振器Rを命名したインデックスkをmで割った余りが同じ共振器Rの集まりにより構成される。複数のサブグループSG_jは、扇形形状の面積を占め、円周方向に沿って順に配列されてもよい。
【0104】
各サブグループSG_j内において、共振器Rは、中心周波数順に円周方向に沿って配列される。各サブグループSG_j内の共振器Rは、k=i*m+j(iは、0から(N/m)-1までの整数)を満足する。空間的に隣接した、すなわち、角距離(angular distance)が2π/Nラジアン(radian)である2つの共振器、例えば、RとRm+2との周波数離隔は、m*Δfである。ここで、Δfは、共振器Rの中心周波数を設定した方法によって決定される周波数離隔値であり、前述のように、等差間隔に設定された場合は、公差がそれに該当し、等比間隔に設定された場合は、公比がそこに該当する。中心周波数間隔が隣接した、すなわち、中心周波数離隔がΔfになる2つの共振器、例えば、R及びR、またはRm+1とRm+2との物理的離隔距離は、角距離で、2π/mラジアンになる。
【0105】
図12は、他の実施形態によるスペクトル分析機200の概略的な構造を示す斜視図である。
【0106】
スペクトル分析機200は、貫通ホールTHが形成された支持基板210と、共振器アレイ220とを含み、共振器アレイ220は、4個のサブグループSG_1,SG_2,SG_3,SG_4にグルーピングされ、前述の配列方法により、円周方向に沿って配列される。共振器Rの固定部が配置された軌跡は、円形をなしている。
【0107】
図13は、図12のスペクトル分析機200において、空間的に隣接するように配置された3つの共振器による周波数応答特性を示すグラフである。
【0108】
共振器R,R,Rは、同じサブグループSG_1に属し、中心周波数の離隔は、それぞれ4Δfである。空間的には、最も隣接した配置関係であるが、中心周波数離隔が確保されることにより、カップリングは、非常に弱く示されている。
【0109】
図14は、図12のスペクトル分析機200において、中心周波数が隣接する3つの共振器による周波数応答特性を示すグラフである。
【0110】
共振器R,R,Rは、それぞれサブグループSG_1、サブグループSG_2、サブグループSG_3に属し、空間的に離隔した角距離は、2π/4ラジアンである。中心周波数の離隔は、Δfと最も隣接した関係であるが、空間的距離離隔が確保されることにより、カップリングは、ほぼ示されない。
【0111】
図15は、他の実施形態によるスペクトル分析機300において、複数の共振器Rを、m個のサブグループに分け、サブグループSG_j(jは、1からmまでの自然数)を長方形に配列した例を示し、図16は、図15の各サブグループSG_j内において、共振器Rが中心周波数順に配列された例を示す。
【0112】
サブグループSG_jの個数mは、偶数に設定されてもよい。サブグループSG_jのうち、jが1からm/2までであるサブグループSG_jが、長方形の一辺に沿って、縦方向に順に配列され、jがm/2+1からmまでであるサブグループSG_jが、他の一辺に沿って縦方向に順に配列される。
【0113】
かような配列は、例えば、長方形の貫通ホールを具備した支持基板に適用される形態にもなる。すなわち、複数の共振器の固定部は、長方形の互いに平行する2辺に沿って配置されてもよい。すなわち、サブグループSG_jのうち、jが1からm/2までであるサブグループSG_jに属した共振器の固定部が配置された軌跡は、第1直線状であり、前記サブグループSG_jのうち、jが(m/2)+1からmまでであるサブグループSG_jに属した共振器の固定部が配置された軌跡は、前記第1直線と対向して平行な第2直線状であってもよい。
【0114】
各サブグループSG_j内の共振器Rは、k=i*m+j(iは、0から(N/m)-1までの整数)を満足する。各サブグループSG_j内において、共振器Rは、k値の順に配列され、互いに異なるサブグループに属して互いに対向する共振器は、当該サブグループ内において、サイズ順序が同じ関係である。例えば、RとRm/2+1とが対向し、Rm+1とR3m/2+1とが対向する。図16に図示されているように、互いに異なるグループに属して互いに対向する共振器間の離隔距離のうち最も小さい値は、S1である。S1値を考慮し、前述の長方形の横長Aを設定することができる。
【0115】
図17は、図16の変形例のスペクトル分析機400に採用される共振器配列を示す。
【0116】
スペクトル分析機400は、各サブグループSG_jが配列された形態は、図15図16のスペクトル分析機300と同一であり、互いに対向するサブグループSG_jの共振器の中心周波数に係わる順序は、図16と異なり、互いに反対に配列されている。
【0117】
各サブグループSG_j内の共振器Rは、k=i*m+j(iは、0から(N/m)-1までの整数)を満足する。jが1からm/2までのサブグループSG_j内において、共振器Rは、k値が大きくなる順に配列され、jがm/2+1からmまでのサブグループSG_j内では、k値が小さくなる順に、共振器Rが配列される。すなわち、サブグループSG_1において、kが最も小さい共振器Rと、サブグループSG_m/2+1において、kが最大である共振器RN-m/2+1とが互いに対向する。
【0118】
かような配列により、共振器Rが占める面積を、図16の場合より小さくすることができ、さらにコンパクトな構造が具現される。互いに異なるグループに属し、互いに対向する共振器間の離隔距離のうち最も小さい値は、S2であり、長方形の横長のAを、図16の場合と同一にした場合、S2は、図16に示されたS1より大きい値になる。
【0119】
従って、言い換えれば、S2を図16の場合と同一にS1にする場合、互いに対向する共振器Rと共振器RN-m/2+1とが占める長さの和は、図16において、互いに対向するRとRm/2+1とが占める距離の和よりも小さいために、共振器Rの配置のための長方形の横長Aを、図16の場合より小さく設定することができる。
【0120】
図18は、他の実施形態によるスペクトル分析機500の概略的な構造を示す斜視図である。
【0121】
スペクトル分析機500は、長方形の貫通ホールTHが形成された支持基板510と、共振器アレイ520を含む。共振器アレイ520は、2つのサブグループSG_1,SG_2を含む。対向するサブグループSG_1,SG_2の共振器配置順序は、中心周波数に係わる順序を反対にし、複数の共振器Rが占める空間を最小化している。
【0122】
図19は、図18のスペクトル分析機500において、空間的に隣接するように配置された3つの共振器による周波数応答特性を示すグラフである。
【0123】
共振器R,R,Rは、同じサブグループSG_1に属し、中心周波数の離隔は、2Δfである。空間的には、最も隣接した配置関係であるが、中心周波数離隔が確保されることにより、カップリングは、非常に弱く示されている。
【0124】
図20は、図18のスペクトル分析機500において、中心周波数が隣接する2つの共振器による周波数応答特性を示すグラフである。
【0125】
共振器R,Rは、それぞれサブグループSG_1、サブグループSG_2に属し、中心周波数の離隔がΔfと最も隣接している関係であるが、空間的距離離隔が確保されることにより、カップリングは、ほぼ示されない。
【0126】
図21は、他の実施形態によるスペクトル分析機600での共振器配列例を示す平面図である。
【0127】
スペクトル分析機600に具備された共振器Rは、正方形の領域を2本の対角線によって4等分した各領域に、4つのサブグループが配置される。長さの異なる共振器Rが三角形状に4等分された領域に順次に配置されてもよい。
【0128】
共振器Rは、図18で例示したように、四角形状の貫通ホールが形成された支持基板に配置されてもよい。ただし、それに限定されるものではなく、例えば、2つの対角線形状のビーム構造物上に、固定部が固定されるように配置されてもよい。
【0129】
図22は、他の実施形態によるスペクトル分析機700での共振器配列例を示す平面図である。
【0130】
スペクトル分析機700に具備された共振器Rは、m個のサブグループにグルーピングされ、辺の個数がmである多角形の領域に配置される。各サブグループは、対角線によって区画されたm個の領域に割り当てられ、サブグループ内に、長さが異なる共振器が順次に配置される。図面においては、mが8であるように図示されているが、それは、例示的なものであり、それに限定されるものではない。
【0131】
共振器Rは、m角形状の貫通ホールを有する基板に配置されてもよい。ただし、それに限定されるものではなく、m角形の対角線に対応する形状のビーム構造物に配置されることも可能である。
【0132】
図23Aないし図23Cは、一実施形態によるスペクトル分析機に採用される共振器の中心周波数を設定する方法の例を示すグラフである。
【0133】
図23Aは、分析対象である周波数範囲を等差間隔で分けた例を示す。等差間隔で等分された値は、複数の共振器に、中心周波数としてIDと共に割り当てられ、与えられたIDにより、前述の方法で、複数の共振器が4個のサブグループにグルーピングされる。
【0134】
図23Bは、分析対象である周波数範囲を等比間隔で分けた例を示す。等比間隔で設定された周波数値は、複数の共振器に、中心周波数としてIDと共に割り当てられ、与えられたIDにより、前述の方法で、複数の共振器が4個のサブグループにグルーピングされる。
【0135】
図23Cは、分析対象である周波数範囲を任意の間隔で分けた例を示す。任意の間隔は、例えば、公差値を異ならせた等差間隔の混合、公比値を異ならせた等比間隔の混合、または等差間隔と等比間隔との混合などと多様に設定することができる。設定された周波数値は、複数の共振器に、中心周波数としてIDと共に割り当てられ、与えられたIDにより、前述の方法で、複数の共振器が4個のサブグループにグルーピングされる。
【0136】
図23Aないし図23Cは、周波数帯域を4つのサブグループに分割する中心周波数設定方法を例示したが、それらに限定されるものではない。多様な個数のサブグループに分割することが可能であり、中心周波数設定方法も、例示された方法の組み合わせや、他の形態への変形が可能である。
【0137】
以上の説明は、カンチレバー方式で駆動される可動部を有する共振器を例示して説明したが、それに限定されるものではない。周波数隣接、空間隣接によってカップリング現象を示す多様な共振器に、前述の概念の共振器配列方法が適用される。
【0138】
以上、本発明の理解の一助とするために、例示的な実施形態について説明し、添付された図面に図示した。しかし、かような実施形態は、ただ、本発明を例示するためのものであり、それを制限するものではないという点が理解されなければならない。そして、本発明は、図示されて説明された説明に限られるものではないという点が理解されなければならない。それは、多様な異なる変形が、本技術分野で当業者により実施可能であるからである。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の、音響スペクトル分析機、及びそれに具備された共振器の配列方法は、例えば、音響関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0140】
100,200,300,400,500,600,700 スペクトル分析機
110,210,510 支持基板
120,220,520 共振器アレイ
R,R 共振器
SG_j サブグループ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C