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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】間隙測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/14 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G01B7/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017155823
(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公開番号】P2019035614
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】後藤 忠格
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄貴
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-049950(JP,U)
【文献】国際公開第2004/081508(WO,A1)
【文献】特開2005-178453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面と第2面との間隙を測定する間隙測定装置であって、
前記第1面と前記第2面との間に配置される第1磁束発生源と、
前記第1面と前記第2面との間に配置され、前記第1磁束発生源に対向して配置される第2磁束発生源と、
前記第1磁束発生源と前記第2磁束発生源により生じた磁力を測定する磁力測定装置と、
前記磁力測定装置が測定した磁力に基づいて距離を算出する距離算出装置と、
底部を備える第1部材であって、前記底部に前記第1面と接触する前記第1磁束発生源が設けられて前記第1磁束発生源から力を受ける第1部材と、
前記第2面に接触し、前記第2磁束発生源から力を受ける第2部材と、を備え、
前記第1磁束発生源が接している前記第1部材の底部に設けられる所定の穴またはメッシュ状の穴を介して、前記第1磁束発生源は前記第2磁束発生源と対向させられ
前記第1磁束発生源と前記第2磁束発生源により生じた磁力によって、前記第1部材と前記第2部材とが互いに離間させられる
ことを特徴とする間隙測定装置。
【請求項2】
前記第1磁束発生源と前記第2磁束発生源はそれぞれ永久磁石であり、同極が対向するように配置される請求項1に記載の間隙測定装置。
【請求項3】
前記第1磁束発生源及び前記第2磁束発生源の少なくとも1つは、発生する磁束の大きさを切り替えることができる電磁石である請求項1に記載の間隙測定装置。
【請求項4】
前記磁力測定装置は、前記第1磁束発生源または前記第2磁束発生源から受ける前記磁力に起因する荷重を測定する荷重測定装置である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の間隙測定装置。
【請求項5】
前記距離算出装置は、予め記憶された前記磁力と前記距離との対応関係を参照して、前記磁力測定装置が測定した磁力に基づいて前記距離を特定する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の間隙測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向する2面の距離を測定する間隙測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いに対向する2面の距離を測定するための装置が開発されている。例えば、特許文献1には、互いに対向する車両ドアとボデーパネルの距離を測定する装置が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の間隙寸法測定装置は、測定方向に伸縮可能なケースの内部にスプリングとロードセルが収納され、スプリングの張力をロードセルが検出することにより、スプリングの長さ、すなわち間隙の大きさを検出する。この場合において、スプリングは、間隙の測定時に、間隙を形成する壁面にケースを押し付ける向きに弾性力を作用させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-49950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の考案では、長い時間にわたって荷重が弾性体に作用した場合に、弾性体は永久変形させられる。それにより、弾性体の長さとロードセルが検出する荷重との関係が変化するため、間隙寸法の測定精度が低下するという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、間隙寸法の測定精度の低下を抑制できる間隙測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における間隙測定装置は、互いに対向する第1面と第2面との間隙を測定する間隙測定装置であって、第1面と第2面との間に配置される第1磁束発生源と、第1面と第2面との間に配置され、第1磁束発生源に対向して配置される第2磁束発生源と、第1磁束発生源と第2磁束発生源により生じた磁力を測定する磁力測定装置と、磁力測定装置が測定した磁力に基づいて距離を算出する距離算出装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態における間隙測定装置において、第1面に接触し、第1磁束発生源から力を受ける第1部材と、第2面に接触し、第2磁束発生源から力を受ける第2部材と、を備え、第1磁束発生源と第2磁束発生源により生じた磁力によって、第1部材及び第2部材が互いに離間させられていてもよい。
【0008】
本発明の一実施形態における間隙測定装置において、第1磁束発生源と第2磁束発生源はそれぞれ永久磁石であり、同極が対向するように配置されていてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態における間隙測定装置において、第1磁束発生源及び第2磁束発生源の少なくとも1つは、発生する磁束の大きさを切り替えることができる電磁石であってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態における間隙測定装置において、磁力測定装置は、第1磁束発生装置または第2磁束発生装置から受ける磁力に起因する荷重を測定する荷重測定装置であってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態における間隙測定装置において、距離算出装置は、予め記憶された磁力と距離との対応関係を参照して、磁力測定装置が測定した磁力に基づいて距離を特定してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、永久変形が発生する弾性体の弾性力ではなく、磁力を用いるため、間隙寸法の測定精度の低下を抑制できる間隙測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態における間隙測定システムの構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態における間隙測定装置の断面図を示す図である。
図3】第1の実施形態における間隙測定システムの動作例を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態における間隙測定システムの他の動作例を示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態における荷重と面間距離の関係を示すグラフの例である。
図6】第2の実施形態における間隙測定装置の構成例を示す他の図である。
図7】第3の実施形態における間隙測定装置の構成例を示す他の図である。
図8】第4の実施形態における間隙測定装置の構成例を示す他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における間隙測定システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、間隙測定システム1は、間隙測定部10と、制御ユニット30と、表示器37とを含む。
【0016】
(間隙測定部10の構成)
図1に示すように、間隙測定部10は、第1部材11と第2部材12とを備える。第1部材11と第2部材12は一端が開口する開口部が設けられた筒状の部材である。第1部材11と第2部材12との開口部は、第1部材11と第2部材12との距離が変わる向きに互いにスライド可能に結合されており、第1部材11と第2部材12とによって、筐体が形成される。筐体の内部には、第3部材13、ロードセル20、第1磁束発生源21、第2磁束発生源22が格納されている。
【0017】
第1部材11及び第2部材12はそれぞれに底部と、底部からのびる壁部とを備える。底部の形状は、例えば、円盤状や四角形状である。なお、第1部材11の底部と第2部材12の底部の形状は、互いに異なっていてもよく、例えば、第1部材11の底部が円盤状で、第2部材12の底部が四角形状であっても、その逆であってもよい。また、第1部材11の底部と、第2部材12の底部とは、互いに平行となるように形成される。
【0018】
間隙測定部10は、磁力測定装置として、第2部材12の底部に接し、荷重を測定するロードセル20を含む。ロードセル20は、例えば、荷重を電気信号の大小に変換することで、該荷重を測定することができる。そして、間隙測定部10は、ロードセル20で測定した荷重に基づいて、面間距離を算出可能である。荷重から面間距離を算出する方法は、後述する。なお、磁力測定装置は、荷重を電気信号の大小に変換するロードセル20に限られず、磁力を測定可能な装置であれば、どのような装置を用いてもよい。ロードセル20は、荷重に対応する電気信号を、制御ユニット30に出力する。
【0019】
間隙測定部10において、ロードセル20は、第2部材12の底部と第3部材13との間に配置される。第3部材13は、第1部材11の底部及び第2部材12の底部の各々と互いに平行な面を含む。すなわち、第3部材13に含まれる面は、第1部材11と第2部材12のスライド方向に垂直である。第3部材13に含まれる面は、例えば、円盤状や四角形状の面である。
【0020】
間隙測定部10は、第1部材11の底部に接する第1磁束発生源21と、第3部材13に接する第2磁束発生源22とを含む。図1に例示するように、第1磁束発生源21は、第1部材11の底部において、測定対象の一面とは逆側の面(すなわち、第1部材11と第2部材12とで形成される筐体の内面)に設けられる。また、第2磁束発生源22は、第3部材13の面において、ロードセル20と接する面とは逆側の面に設けられる。その結果、図1に例示するように、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22とは、互いに対向するように設けられる。ここで、第1磁束発生源21及び第2磁束発生源22とは、例えば、永久磁石や電磁石であり、磁束を発生させる部材である。なお、第1磁束発生源21及び第2磁束発生源22とは、これらの例に限られず、磁束を発生可能であれば、どのような部材であってもよい。第1磁束発生源21及び第2磁束発生源22とは、異なる極が向い合っている場合には引力を、同じ極が向い合っている場合には斥力を生じる。
【0021】
なお、図1に例示するように、第1部材11の底部と、第3部材13と、第2部材12の底部は、この順番で、測定対象の2つの面の間に設けられる。また、第3部材13の面と、第2部材12の底部との間に、ロードセル20が設けられる。さらに、第1部材11の底部には第1磁束発生源21が、第3部材13には第2磁束発生源22が、それぞれ対向するように設けられる。
【0022】
(制御ユニット30の構成例)
間隙測定システム1は、距離算出装置として、制御ユニット30及び、表示機37を含む。図1に例示するように、制御ユニット30は、A/D変換器31と、入力ポート32と、バス33と、演算部34と、記憶部35と、出力ポート36を含む。
【0023】
A/D変換器31は、アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する機能を備える。A/D変換器31は、ロードセル20からのアナログ電気信号を、デジタル電気信号に変換して、入力ポート32に入力する。
【0024】
入力ポート32は、A/D変換器31からのデジタル電気信号の入力を受ける。入力ポート32は、ロードセル20によって測定された荷重に関するデジタル電気信号の入力を受け付け、バス33を介して、演算部34に送信する。
【0025】
バス33は、制御ユニット30において、各要素(入力ポート32や演算部34など)がデータ等を交換するための経路である。入力ポート32や演算部34、記憶部35、出力ポート36の各々は、バス33を介して、互いにデータ等を送受信する。
【0026】
演算部34は、入力ポート32からバス33を介して入力された、ロードセル20によって測定された荷重に関するデジタル電気信号に基づいて、間隙距離Lを算出又は特定する。演算部34は、例えば、所定の方法に基づいて、荷重に関するデジタル電気信号から間隙距離Lを算出する。また、演算部34は、例えば、記憶部35を参照して、荷重に関するデジタル電気信号に対応する磁石間距離dを特定し、その後間隙距離Lを算出してもよい。なお、演算部34は、例えば、中央処理装置(CPU)やマイクロプロセッサ(microprocessor)、ASIC(application―specific integrated circuit)、FPGA(field programmable gate array)により実現される。
【0027】
記憶部35は、ロードセルが検出する荷重(電気信号)と、磁石間距離dとの関係を記憶する。また、記憶部35は、ロードセルが検出する荷重(電気信号)と、間隙距離Lとの関係を記憶していてもよい。なお、記憶部35は、HDD(hard disk drive)、SSD(solid state drive)、フラッシュメモリ、RAM(random access memory)、ROM(read only memory)などにより実現される。
【0028】
出力ポート36は、演算部34からバス33を介して受信した間隙距離Lに関するデータを、表示器37に出力する機能を備える。
【0029】
表示器37は、出力ポート36から受け付けた間隙距離Lに関するデータを、所定の形式で表示する。表示器37は、例えば、液晶ディスプレイやOELD(Organic Electroluminescence Display)により実現される。
【0030】
図2は、第1の実施形態における間隙測定部10の構成例を示す図である。以下では、図2に示すように、第1の実施形態における間隙測定部10によって、測定対象の第1面41と、第2面42との間の距離を測定する方法について説明する。ここで、本実施形態において第1面41は、例えば、自動車におけるボディーの所定面に該当し、第2面42は、ドアの所定面に該当する。なお、第1面41と第2面42とは、あくまでも例示であって、第1面41と第2面42とはどのような面に対応するものであってもよい。
【0031】
間隙測定部10には、第1磁束発生源21として第1永久磁石が、第2磁束発生源22として第2永久磁石が設けられている。また、本実施形態においては、第1磁束発生源21と、第2磁束発生源22とは同じ極が向かい合っているため、互いに斥力が働く。第1部材21と第2部材22のスライド方向と、斥力が働く方向は、いずれも第1部材21及び第2部材22の底部と垂直な向きであるため、第1部材21及び第2部材22は、互いに離間する向きに斥力を受ける。つまり、第1部材21及び第2部材22は、可能な限り距離が長くなるように維持される。換言すると、筐体はできる限り長くなるように維持される。このような筐体を、測定対象の間隙を形成する第1面41と第2面42の双方に接触させることによって間隙が測定されるのだから、筐体の最大の長さよりも測定対象の間隙が短い場合に、間隙が測定できることになる。
【0032】
間隙測定部10は、第1部材21と第2部材22のスライド方向に押し縮められながら、第1面41と、第2面42との間に配置される。そして、第1部材21と第2部材22とが第1磁束発生源と第2磁束発生源により生じた磁力によって互いに離間することによって、第1部材21は第1面41に接触し、第2部材22は第2面42に接触する。ここで、第1部材11の底部と、第2部材12の底部とが互いに平行に形成されているのが好ましい。このような形態であれば、第1部材21と第2部材22とが、第1面41と第2面42と広い範囲で接触できるため、第1部材21と第2部材22とが安定し、精度良く間隙を測定できる。
【0033】
ここで、第1面41と第2面42との距離L(以下ではこの距離Lを面間距離Lと呼称する)に基づいて、第1部材11の底部に設けられた第1磁束発生源(第1永久磁石)21と、第3部材13の面に設けられた第2磁束発生源(第2永久磁石)22との距離dが定められる。そのため、第1磁束発生源(第1永久磁石)21と第2磁束発生源(第2永久磁石)22との間の磁力(斥力)により、第2磁束発生源(第2永久磁石)22が接する第3部材13に対して、第2面42を押圧する方向の力が加わり、第3部材13に接するロードセル20に荷重Fが加わる。
【0034】
そこで、ロードセル20に加わる荷重Fを計測し、当該計測した荷重Fに基づいて、第1部材11の底部に設けられた第1磁束発生源(第1永久磁石)21と、第3部材13の面に設けられた第2磁束発生源(第2永久磁石)22との距離dを算出する。そして、算出された距離dから、面間距離Lを算出(又は特定)する。
【0035】
(制御ユニット30の動作例)
図3は、制御ユニット30が、ロードセル20に加わる荷重から、面間距離Lを算出する場合の動作例を示すフローチャートである。
【0036】
図3に示すように、ロードセル20が、荷重Fを検出する(S101)。荷重Fは、A/D変換器31によってデジタル電気信号に変換され、入力ポート32及びバス33を介して、演算部34に入力される。
【0037】
続いて、制御ユニット30の演算部34は、荷重Fから、第2磁束発生源(第2永久磁石)22の重力など磁力以外の力f0を減算する(S102)。これにより、演算部34は、第1磁束発生源(第1永久磁石)21と第2磁束発生源(第2永久磁石)22の間の磁力F’を測定する。
【0038】
次に、制御ユニット30の演算部34は、数1に基づいて、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22の間の距離dを算出する(S103)。なお、数1において、kはクーロンの法則の比例定数、m1は第1磁束発生源(第1永久磁石)21である永久磁石の磁気量、m2は第2磁束発生源(第2永久磁石)22である永久磁石の磁気量である。
【0039】
【数1】
【0040】
最後に、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22の間の距離dに対して、第1磁束発生源21(第1永久磁石)の厚さ、第2磁束発生源(第2永久磁石)22の厚さ、第1部材11の厚さ、第2部材12の厚さ、及び、ロードセル20の大きさの合計値であるDを加算し、測定対象の第1面41と第2面42との間の面間距離Lを算出する(S104)。
【0041】
(演算部34の他の動作例)
図4は、演算部34が、ロードセル20に加わる荷重から、面間距離Lを算出する場合の他の動作例を示すフローチャートである。
【0042】
図4に示すように、演算部34は、ロードセル20が、荷重Fを検出する(S101)。荷重Fは、A/D変換器31によってデジタル電気信号に変換され、入力ポート32及びバス33を介して、演算部34に入力される。
【0043】
その後、演算部34は、荷重Fと面間距離Lとの対応関係が記憶された記憶部35を参照して、測定対象の第1面41と第2面42との間の距離Lを特定する(S102)。演算部34は、記憶部35を参照して、荷重Fに対応する面間距離Lを特定する。
【0044】
(記憶部35に記憶されるマップの例)
図5は、記憶部35に記憶される、荷重Fと面間距離Lの関係を示すマップの例である。荷重Fと面間距離Lの関係は、縦軸は荷重F、横軸は面間距離Lとすると、例えば、単調減少のグラフで与えられる。演算部34は、記憶部35に記憶されたマップを参照することにより、荷重Fから、面間距離Lを特定することができる。具体的には、演算部34は、図5に例示する荷重Fと面間距離Lとの対応関係を参照して、測定対象の第1面41と第2面42との間の距離Lを特定することができる。
【0045】
上記のとおり、第1の実施形態の間隙測定部10は、互いに対向する第1面41と第2面42との間隙を測定し、第1面41と第2面42との間に配置される第1磁束発生源(第1永久磁石)21と、第1面41と第2面42との間に配置され、第1磁束発生源21に対向して配置される第2磁束発生源(第2永久磁石)22とを備える。そして、第1磁束発生源と第2磁束発生源とにより生じた磁力を測定する磁力測定装置(ロードセル)20と、磁力測定装置が測定した磁力に基づいて、面間距離Lを算出する距離算出装置(制御ユニット)30とを備える。このように、第1の実施形態の間隙測定部は、永久変形が発生する弾性体の弾性力ではなく、磁力を用いて面間距離Lを測定するため、間隙寸法の測定精度の低下を抑制できる。
【0046】
また、第1部材11と第2部材12が互いに離間するので、第1面41と第2面42との間に間隙測定部10を配置した場合に、第1部材11と第2部材12が第1面41と第2面42に安定して接触し、測定精度が高められる。また、永久磁石である第1磁束発生源21と第2磁束発生源22の同極が対向するように配置されているので、間隙測定部10の体格を小さくしつつ、第1部材11と第2部材12の間を離間させ、測定精度を高めることができる。また、ロードセル20によって測定するので、間隙測定部10の体格が小さくできる。さらに、記憶部35が磁力と距離との対応関係を記憶しておくため、記憶された対応関係に基づいて間隙距離を特定することにより、間隙距離の算出が簡素になる。
【0047】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態における間隙測定部10の構成例を示す図である。第2の実施形態における間隙測定部10は、永久磁石に代えて、電磁石を用いる場合の形態である。
【0048】
図6に例示するように、第2磁束発生源22は、電磁石である。電磁石は、磁性材料によって形成された芯の周囲にコイルが形成されており、コイルに電流が印加された場合に、コイルの巻回方向とは垂直な向きに磁束を発生させる。本実施形態においては、電磁石である第2磁束発生源22は、図6に例示するように、電源38と、切り替えスイッチ39に接続される。
【0049】
電源38は、本実施形態においては電池である。電源38は、電磁石である第2磁束発生源22に対して電流を供給することができれば、どのようなものであってもよい。ここで、電源38は直流電源であるのが好ましい。なぜならば、面間距離Lを測定する間は、一方向に磁束が発生され続けているほうがより精度良く測定できるためである。また、切り替えスイッチ39は、通電状態に切り替えられた場合に、電磁石である第2磁束発生源22に電流を供給し、磁束を発生させる機能を備える。第2の実施形態における間隙測定部10では、面間距離Lを測定する場合に、切り替えスイッチ39を通電状態に切り替えることで、電磁石である第2磁束発生源22に電流を供給し、磁束を発生させる。
【0050】
図6に例示するように、間隙測定部10は、第1面41と第2面42との間の面間距離Lを測定する。なお、間隙測定部10は、面間距離Lを直接求めるのではなく、第1磁束発生源(永久磁石)21と第2磁束発生源(電磁石)22との間の距離dから、当該面間距離Lを求める。なお、第2磁束発生源22の代わりに第1磁束発生源21が電磁石であってもよいし、第1磁束発生源21及び第2磁束発生源22の双方が電磁石であってもよい。
【0051】
測定対象の第1面41には、間隙測定部10の第1部材11の底部が接する。一方、測定対象の第2面42には、間隙測定部10の第2部材12の底部が接する。第1部材11と第2部材12とは、第1面41と第2面42との間の面間距離(L)に応じて、第1面41及び第2面42に垂直な方向にスライド可能である。
【0052】
第2部材12の底部において、第2面42の反対側には、ロードセル20の一端が接している。また、ロードセル20の他端は、第3部材13に接している。すなわち、第2部材12と第3部材13の間に、ロードセル20が設けられる。そして、第3部材13において、ロードセル20の反対側には、第2磁束発生源(電磁石)22が設けられる。なお、第2部材12と、ロードセル20と、第3部材13と、第2磁束発生源(電磁石)22とは、互いに一体となって第2面42(及び第1面41)に垂直な方向にスライド可能である。
【0053】
また、第1部材11の底部の第1面41の反対側には、第1磁束発生源(永久磁石)21が設けられる。その結果、図2に例示するように、第1磁束発生源(永久磁石)21と第2磁束発生源(電磁石)22とは、距離dだけ離れた位置に、互いに対向して設けられる。なお、第1磁束発生源(永久磁石)21と、第2磁束発生源(電磁石)22とは、同じ極が向い合っており、両者には斥力が働く。
【0054】
以下では、図6に示すように、第2の実施形態における間隙測定部10によって、測定対象の第1面41と、第2面42との間の距離を測定する方法について説明する。まず、切り替えスイッチ39が、通電しない状態に切り替えられた状態において、間隙測定部10が、第1面41と第2面42との間に配置される。このとき、電磁石には電流が印加されていないため、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22との間に斥力は発生せず、第1部材11と第2部材12との距離が最も短い状態に維持される。このため、間隙測定部10を縮める向きの力が測定者によって加えられることなく、第1面41と第2面42との間に間隙測定部10が配置される。
【0055】
切り替えスイッチ39は、測定対象の第1面41と、第2面42との間の距離を測定する場合に、通電状態に切り替える。その結果、第1面41に第1部材11の底部が接するとともに、第2面42に第2部材12の底部が接触し、測定対象の第1面41と、第2面42との間の距離が測定される。
【0056】
ここで、第1面41と第2面42との距離Lに基づいて、第1部材11の底部に設けられた第1磁束発生源(永久磁石)21と、第3部材13の面に設けられた第2磁束発生源(電磁石)22とが定められる。そのため、第1磁束発生源(永久磁石)21と第2磁束発生源(電磁石)22との間の磁力(斥力)により、第2磁束発生源(電磁石)22が接する第3部材13の面に対して、第2面42方向の力が加わり、第3部材13の面に接するロードセル20に荷重Fが加わる。
【0057】
そこで、ロードセル20に加わる荷重Fを計測し、当該計測した荷重Fに基づいて、第1部材11の底部に設けられた第1磁束発生源(永久磁石)21と、第3部材13の面に設けられた第2磁束発生源(電磁石)22との間の距離dを算出する。そして、算出された距離dから、面間距離Lを算出(又は特定)する。
【0058】
上記のとおり、第2の実施形態の間隙測定装置は、第1磁束発生源(永久磁石)21と第2磁束発生源(電磁石)22との少なくとも1つは、発生する磁束の大きさを切り替えることができる電磁石である。
【0059】
磁束発生源22として電磁石を用いるため、間隙測定部10を、磁束を発生させない状態で、第1面41と第2面42との間に配置することができる。そして、間隙測定部10に磁束発生源22としての電磁石を設けた後、切り替えスイッチ33を通電することにより、当該電磁石に磁束を発生させるという使い方が可能である。このように、磁束を発生させない状態で間隙測定部10を第1面41と第2面42との間に配置することができるため、間隙測定部10の測定場所(第1面41と第2面42との間)への配置が容易になる。
【0060】
このように、第2の実施形態の間隙測定システム1は、電磁石を用いて磁束を発生させることにより、面間距離Lを測定することができる。そのため、第2の実施形態の間隙測定システム1は、永久変形が発生する弾性体の弾性力ではなく、電磁石による磁力を用いているため、間隙寸法の測定精度の低下を抑制できる。
【0061】
<第3の実施形態>
図7は、第3の実施形態における間隙測定部10の構成例を示す図である。第3の実施形態における間隙測定部10は、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22とは、異なる極が向い合っており、両者には引力が働く場合の形態である。なお、第3の実施形態において、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22とは、永久磁石であっても、電磁石であってもよい。
【0062】
図7に例示するように、間隙測定部10は、第1面41と第2面42との間の面間距離Lを測定する。なお、間隙測定部10は、面間距離Lを直接求めるのではなく、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22との間の距離dから、当該面間距離Lを求める。
【0063】
測定対象の第1面41には、間隙測定部10の第1部材11の底部が接する。一方、測定対象の第2面42には、間隙測定部10の第2部材12の底部が接する。第1部材11と第2部材12とは、第1面41と第2面42との間の面間距離Lに応じて、第1面41及び第2面42に垂直な方向にスライド可能である。
【0064】
第2部材12の底部において、第2面42の反対側には、ロードセル20の一端が接している。また、ロードセル20の他端は、第3部材13に接している。すなわち、第2部材12と第3部材13の間に、ロードセル20が設けられる。そして、第3部材13において、ロードセル20の反対側には、第2磁束発生源22が設けられる。なお、第2部材12と、ロードセル20と、第3部材13と、第2磁束発生源22とは、互いに一体となって第2面42(及び第1面41)に垂直な方向にスライド可能である。
【0065】
ここで、図7に例示するように、第1部材11は第1面41に接する底部と、底部に対向する保持部が設けられ、保持部に第1磁束発生源21が設けられる。一方、第3部材13はロードセル20に接する底部と、底部に対向する保持部が設けられ、保持部に第2磁束発生源22が設けられる。そして、第1部材11において底部と保持部との間に、第3部材13の保持部が位置するように、第1部材11と第3部材13とが、互いに噛み合う(嵌め合う)位置に設けられる。すなわち、間隙測定部10において、図7に例示するように、第1部材11において第1面41に接する底部と、第3部材13において第2磁束発生源22が設けられる保持部と、第1部材11において第1磁束発生源21が設けられる保持部と、第3部材13においてロードセル20が接する底部とは、この順番で、測定対象の2つの面(第1面41と第2面42)の間に設けられる。
【0066】
なお、第3の実施形態の間隙測定部10において、第1磁束発生源21と、第2磁束発生源22とは、異なる極が向い合っており、両者には引力が働く。その結果、図7に例示するように、第1部材11において、第1磁束発生源21が設けられる面に対して、第1面41方向の磁力が働く。一方、第3部材13において、第2磁束発生源22が設けられる面に対して、第2面42方向の磁力が働く。その結果、第3部材13全体に第2面42方向の力が加わり、第3部材13の面に接するロードセル20に荷重Fが加わる。
【0067】
そこで、ロードセル20に加わる荷重Fを計測し、当該計測した荷重Fに基づいて、第1部材11の底部に設けられた第1磁束発生源(永久磁石)21と、第3部材13の面に設けられた第2磁束発生源(永久磁石)22との間の距離dを算出する。そして、算出された距離dから、面間距離Lを算出(又は特定)する。
【0068】
上記のとおり、第3の実施形態の間隙測定システム1は、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22とは、異なる極が向い合っており、両者には引力が働く。このように、第3の実施形態の間隙測定システム1は、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22との間に働く引力に基づいて、間隙距離を測定することが可能となる。
【0069】
<第4の実施形態>
図8は、第4の実施形態における間隙測定部10の構成例を示す図である。第4の実施形態における間隙測定部10は、第1磁束発生源21が、第1部材11の外側に設けられている場合の形態である。
【0070】
図8に例示するように、第1磁束発生源21は、第1部材11の底部において、測定対象の一面に接する位置(すなわち、第1部材11と第2部材12とで形成される筐体の外面)に設けられる。すなわち、第1磁束発生源21は、測定対象の第1面41に接するように設けられる。
【0071】
第1磁束発生源21が、第1部材11において、測定対象の第1面41に接するように設けられるため、第1磁束発生源21の厚み分だけ、間隙測定部10の大きさを小さくすることが可能となる。
【0072】
また、図8に例示するように、間隙測定部10の第1部材11のうち、第1磁束発生源21が接している部分には、“所定の穴110”が設けられる。所定の穴110は、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22とを直接対向させることにより、当該第1磁束発生源21と第2磁束発生源22との間に生じる磁力が、第1部材11によって妨げられないようにするために設けられる。所定の穴110は、第1磁束発生源21の大きさと、略同一の大きさ及び形状である。また、所定の穴110は、完全な空間(穴)である必要はなく、例えば、メッシュ状であってもよい。なお、所定の穴110は、第1磁束発生源21の大きさと、略同一の大きさ及び形状である必要はなく、第1磁束発生源21の一部が、第2磁束発生源22と対向すれば、どのような大きさ、形状であってもよい。
【0073】
図8に例示するように、間隙測定部10は、第1面41と第2面42との間の面間距離Lを測定する。なお、間隙測定部10は、面間距離Lを直接求めるのではなく、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22との間の距離dから、当該面間距離Lを求める。
【0074】
測定対象の第1面41には、間隙測定部10の第1部材11の底部に設けられた第1磁束発生源21が接する。一方、測定対象の第2面42には、間隙測定部10の第2部材12の底部が接する。第1部材11と第2部材12とは、第1面41と第2面42との間の面間距離Lに応じて、第1面41及び第2面42に垂直な方向にスライド可能である。
【0075】
第2部材12の底部において、第2面42の反対側には、ロードセル20の一端が接している。また、ロードセル20の他端は、第3部材13に接している。すなわち、第2部材12と第3部材13の間に、ロードセル20が設けられる。そして、第3部材13において、ロードセル20の反対側には、第2磁束発生源22が設けられる。なお、第2部材12と、ロードセル20と、第3部材13と、第2磁束発生源22とは、互いに一体となって第2面42(及び第1面41)に垂直な方向にスライド可能である。
【0076】
また、第1部材11の底部には、第1面41に接するように第1磁束発生源21が設けられる。そして、図8に例示するように、第1磁束発生源21と第2磁束発生源(永久磁石)22とは、所定の穴110を介して、距離dだけ離れた位置に互いに対向して設けられる。なお、第1磁束発生源21と、第2磁束発生源22とは、同じ極が向い合っており、両者には斥力が働く。
【0077】
ここで、第1面41と第2面42との距離Lに基づいて、第1部材11の底部に設けられた第1磁束発生源21と、第3部材13の面に設けられた第2磁束発生源22とが接近する。そのため、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22との間の磁力(斥力)により、第2磁束発生源22が接する第3部材13の面に対して、第2面42方向の力が加わり、第3部材13の面に接するロードセル20に荷重Fが加わる。
【0078】
そこで、ロードセル20に加わる荷重Fを計測し、当該計測した荷重Fに基づいて、第1部材11の底部に設けられた第1磁束発生源21と、第3部材13の面に設けられた第2磁束発生源22との間の距離dを算出する。そして、算出された距離dから、面間距離Lを算出(又は特定)する。
【0079】
上記のとおり、第4の実施形態の間隙測定部10は、第1磁束発生源21が測定対象の一面と接する場合であっても、所定の穴110を設けることにより、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22とを直接対向するため、当該第1磁束発生源21と第2磁束発生源22との間に生じる磁力が、第1部材11によって妨げられず、第1磁束発生源21と第2磁束発生源22との間の磁力を用いて、面間距離を測定可能となる。その結果、第4の実施形態の間隙測定部10は、第1磁束発生源21が、第1部材11において、測定対象の第1面41に接するように設けられるため、第1磁束発生源21の厚み分だけ、間隙測定部10の大きさを小さくすることができる。
【0080】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合に、これらの各記載は厳密な意味ではない。すなわち、「垂直」「平行」「平面」とは、設計上や製造上等における公差や誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。なお、ここでの公差や誤差とは、本発明の構成・作用・効果を逸脱しない範囲における単位のことを意味するものである。
【0081】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合に、これらの各記載は厳密な意味ではない。すなわち、「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上や製造上等における公差や誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。なお、ここでの公差や誤差とは、本発明の構成・作用・効果を逸脱しない範囲における単位のことを意味するものである。
【符号の説明】
【0082】
1 間隙測定システム
10 間隙測定部
11 第1部材
110 所定の穴
12 第2部材
13 第3部材
20 ロードセル
21 第1磁束発生源
22 第2磁束発生源
30 制御ユニット
31 A/D変換器、32 入力ポート、33 バス、34 演算部、35 記憶部、
36 出力ポート、37 表示器
41 第1面
42 第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8