IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社NTTファシリティーズの特許一覧

特許7145602情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
<>
  • 特許-情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム 図1
  • 特許-情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム 図2
  • 特許-情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム 図3
  • 特許-情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム 図4
  • 特許-情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム 図5
  • 特許-情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム 図6
  • 特許-情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム 図7
  • 特許-情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20220926BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20220926BHJP
   G06T 7/33 20170101ALI20220926BHJP
   G01B 11/28 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H04N7/18 K
H04N7/18 D
H04N7/18 U
G06T7/62
G06T7/33
G01B11/28 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017206506
(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公開番号】P2019080206
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 祐光
(72)【発明者】
【氏名】北林 泰彰
(72)【発明者】
【氏名】平賀 慎
(72)【発明者】
【氏名】木村 龍之介
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-259656(JP,A)
【文献】特開2004-000505(JP,A)
【文献】特開2010-039956(JP,A)
【文献】特開平11-183313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 5/222
G06T 1/00-7/00
G01B 11/00
A61B 1/00
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水又は水道水の漏水が建物内に生じて、前記生じた漏水の程度を識別可能にする情報処理システムであって、
前記建物内の漏水箇所の内装材の表面に、前記内装材が濡れたことにより生じた染み状の漏水の跡が生じていて、可視カメラを用いて撮影された前記漏水箇所における漏水状況を示す画像であって互いに前記漏水の跡の撮影時点が異なる第1画像と第2画像とを含む複数の画像を取得する表示制御部であって、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とを対応させて、前記第1画像と前記第2画像に共通する漏水範囲が重なるように、前記第1画像と前記第2画像を重ねて表示させるように制御する表示制御部と、
前記第1画像と前記第2画像の双方の画像に示された漏水の跡に基づいて、前記双方の画像における漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を定量化する定量化部と、
前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像に示された漏水の跡に基づく変化率を定量化する状況変化判定部と、
端末装置からの要求を受けて、前記要求に応じた処理をする要求処理部であって、前記定量化の結果を要求する要求元端末装置からの要求に対し、前記定量化の結果を前記要求元端末装置の表示部に表示させるように前記定量化の結果を前記要求元端末装置に提供する要求処理部と、
を備え、
前記表示制御部は、
要求に応じて過去画像である前記第1画像を前記端末装置に提供し、前記端末装置のモニタに前記第1画像を透過させて表示させることで前記第2画像の撮影時の位置調整を可能にして、前記端末装置の撮像部によって撮像された前記第2画像を前記取得して、
前記定量化部は、
前記第1画像と前記第2画像とに共通する範囲内で前記漏水の跡の外に定められた複数の基準点を用いて、前記複数の基準点における前記複数の基準点の明るさの経時変化を検出して、前記漏水の跡の変化を算出して、
前記状況変化判定部は、
前記第1画像と前記第2画像に映った前記漏水の跡の内部の面積を検出して、前記検出した面積の変化を定量化する、
情報処理システム。
【請求項2】
前記状況変化判定部は、
前記漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を、前記双方の画像に共通する範囲内の漏水範囲に関わる前記漏水の跡の内外の面積の比から算出する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記定量化部は、
前記双方の画像に共通する範囲内に複数の基準の位置が定められ、漏水範囲に関わる前記漏水の跡の内外の前記基準の位置の明るさの分布に基づいて、前記漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を算出する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記定量化部は、
前記双方の画像に共通する範囲内において、前記漏水の跡の内外の前記基準の位置の明るさの比に基づいて前記漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を算出する
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記状況変化判定部は、
前記漏水によって一旦濡れた後に乾いてできた前記漏水の跡によって識別される範囲の大きさ又は面積に基づいて前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像における変化率で示す
請求項3又は請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記建物内の漏水箇所が、前記建物の内装部材により隠蔽される前記建物の躯体側にあり、
前記建物内の漏水状況を示す画像は、前記建物内の漏水箇所の像を含まない前記建物の内装部材の表面の画像である
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記状況変化判定部は、
前記建物内の漏水箇所に対応付けて、前記複数の画像のそれぞれと、その特徴点と撮影段階の条件の組情報とを記憶部に格納する
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記第1画像と前記第2画像は、前記漏水状況を示す像の他に、前記漏水状況によって変化しない被写体の像を含み、
前記表示制御部は、前記漏水状況によって変化しない被写体の像に基づいて、前記第1画像と前記第2画像が重なるように調整する
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
雨水又は水道水の漏水が建物内に生じて、前記生じた漏水の程度を識別可能にする情報処理システムのコンピュータが、
前記建物内の漏水箇所の内装材の表面に、前記内装材が濡れたことにより生じた染み状の漏水の跡が生じていて、可視カメラを用いて撮影された前記漏水箇所における漏水状況を示す画像であって互いに前記漏水の跡の撮影時点が異なる第1画像と第2画像とを含む複数の画像を取得して、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とを対応させて、前記第1画像と前記第2画像に共通する漏水範囲が重なるように、前記第1画像と前記第2画像を重ねて表示させるように制御し、
前記第1画像と前記第2画像の双方の画像に示された漏水の跡に基づいて、前記双方の画像における漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を定量化し、
前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像に示された漏水の跡に基づく変化率を定量化するステップと、
端末装置からの要求を受けて、前記要求に応じた処理をして、前記定量化の結果を要求する要求元端末装置からの要求に対し、前記定量化の結果を前記要求元端末装置の表示部に表示させるように前記定量化の結果を前記要求元端末装置に提供するステップと、
要求に応じて過去画像である前記第1画像を前記端末装置に提供し、前記端末装置のモニタに前記第1画像を透過させて表示させることで前記第2画像の撮影時の位置調整を可能にして、前記端末装置の撮像部によって撮像された前記第2画像を前記取得するステップと、
前記第1画像と前記第2画像とに共通する範囲内で前記漏水の跡の外に定められた複数の基準点を用いて、前記複数の基準点における前記複数の基準点の明るさの経時変化を検出して、前記漏水の跡の変化を算出するステップと、
前記第1画像と前記第2画像に映った前記漏水の跡の内部の面積を検出して、前記検出した面積の変化を定量化するステップと
を含む情報処理方法。
【請求項10】
雨水又は水道水の漏水が建物内に生じて、前記生じた漏水の程度を識別可能にする情報処理システムのコンピュータに、
前記建物内の漏水箇所の内装材の表面に、前記内装材が濡れたことにより生じた染み状の漏水の跡が生じていて、可視カメラを用いて撮影された前記漏水箇所における漏水状況を示す画像であって互いに前記漏水の跡の撮影時点が異なる第1画像と第2画像とを含む複数の画像を取得させて、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とを対応させて、前記第1画像と前記第2画像に共通する漏水範囲が重なるように、前記第1画像と前記第2画像を重ねて表示させるように制御させて、
前記第1画像と前記第2画像の双方の画像に示された漏水の跡に基づいて、前記双方の画像における漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を定量化させて、
前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像に示された漏水の跡に基づく変化率を定量化させるステップと、
端末装置からの要求を受けて、前記要求に応じた処理をさせて、前記定量化の結果を要求する要求元端末装置からの要求に対し、前記定量化の結果を前記要求元端末装置の表示部に表示させるように前記定量化の結果を前記要求元端末装置に提供させるステップと、
前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像に示された漏水の跡に基づく変化率を算出させるステップと、
要求に応じて過去画像である前記第1画像を前記端末装置に提供し、前記端末装置のモニタに前記第1画像を透過させて表示させることで前記第2画像の撮影時の位置調整を可能にして、前記端末装置の撮像部によって撮像された前記第2画像を前記取得させるステップと、
前記第1画像と前記第2画像とに共通する範囲内で前記漏水の跡の外に定められた複数の基準点を用いて、前記複数の基準点における前記複数の基準点の明るさの経時変化を検出して、前記漏水の跡の変化を算出させるステップと、
前記第1画像と前記第2画像に映った前記漏水の跡の内部の面積を検出して、前記検出した面積の変化を定量化させるステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の壁等にひび割れが生じて、雨等によって建物の内部に漏水することがある。このような漏水に対する対策を講じるため、漏水が生じた箇所における漏水の程度を識別できることが望まれる。
【0003】
また、各種点検作業で、点検を行うべき点検ポイントの画像を残して、その点検ポイントの経年変化を、残した画像を目視で見比べて検出する運用が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-143983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、漏水が生じている状態で立ち会えばその漏水の程度を特定することは容易であるが、漏水が生じた箇所の漏水が止まっている状況で、発生した漏水の程度を識別することは困難である。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、漏水が生じた箇所の画像から、発生した漏水の程度を識別する情報処理システム、情報処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様の情報処理システムは、雨水又は水道水の漏水が建物内に生じて、前記生じた漏水の程度を識別可能にする。情報処理システムは、前記建物内の漏水箇所の内装材の表面に、前記内装材が濡れたことにより生じた染み状の漏水の跡が生じていて、可視カメラを用いて撮影された前記漏水箇所における漏水状況を示す画像であって互いに前記漏水の跡の撮影時点が異なる第1画像と第2画像とを含む複数の画像を取得する表示制御部であって、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とを対応させて、前記第1画像と前記第2画像に共通する漏水範囲が重なるように、前記第1画像と前記第2画像を重ねて表示させるように制御する表示制御部と、前記第1画像と前記第2画像の双方の画像に示された漏水の跡に基づいて、前記双方の画像における漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を定量化する定量化部と、前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像に示された漏水の跡に基づく変化率を定量化する状況変化判定部と、端末装置からの要求を受けて、前記要求に応じた処理をする要求処理部であって、前記定量化の結果を要求する要求元端末装置からの要求に対し、前記定量化の結果を前記要求元端末装置の表示部に表示させるように前記定量化の結果を前記要求元端末装置に提供する要求処理部と、を備える。前記表示制御部は、要求に応じて過去画像である前記第1画像を前記端末装置に提供し、前記端末装置のモニタに前記第1画像を透過させて表示させることで前記第2画像の撮影時の位置調整を可能にして、前記端末装置の撮像部によって撮像された前記第2画像を前記取得して、前記定量化部は、前記第1画像と前記第2画像とに共通する範囲内で前記漏水の跡の外に定められた複数の基準点を用いて、前記複数の基準点における前記複数の基準点の明るさの経時変化を検出して、前記漏水の跡の変化を算出して、前記状況変化判定部は、前記第1画像と前記第2画像に映った前記漏水の跡の内部の面積を検出して、前記検出した面積の変化を定量化する。
【0008】
(2)また、上記の情報処理システムにおいて、前記定量化部は、前記漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を、前記双方の画像に共通する範囲内の漏水範囲に関わる前記漏水の跡の内外の面積の比から算出する。
【0009】
(3)また、上記の情報処理システムにおいて、前記定量化部は、前記双方の画像に共通する範囲内に複数の基準の位置が定められ、漏水範囲に関わる前記漏水の跡の内外の前記基準の位置の明るさの分布に基づいて、前記漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を算出する。
【0010】
(4)また、上記の情報処理システムにおいて、前記定量化部は、前記双方の画像に共通する範囲内において、前記漏水の跡の内外の前記基準の位置の明るさの比に基づいて前記漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を算出する。
【0011】
(5)また、上記の情報処理システムにおいて、前記状況変化判定部は、前記漏水によって一旦濡れた後乾いてできた前記漏水の跡によって識別される範囲の大きさ又は面積に基づいて前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像における変化率で示す。
【0012】
(6)また、上記の情報処理システムにおいて、前記建物内の漏水箇所が、前記建物の内装部材により隠蔽される前記建物の躯体側にあり、前記建物内の漏水状況を示す画像は、前記建物内の漏水箇所の像を含まない前記建物の内装部材の表面の画像である。
【0013】
(7)また、上記の情報処理システムにおいて、前記状況変化判定部は、前記建物内の漏水箇所に対応付けて、前記複数の画像のそれぞれと、その特徴点と撮影段階の条件の組情報とを記憶部に格納する。
【0014】
(8)また、上記の情報処理システムにおいて、前記第1画像と前記第2画像は、前記漏水状況を示す像の他に、前記漏水状況によって変化しない被写体の像を含み、前記表示制御部は、前記漏水状況によって変化しない被写体の像に基づいて、前記第1画像と前記第2画像が重なるように調整する。
【0015】
(9)また、本発明の一態様の情報処理方法において、雨水又は水道水の漏水が建物内に生じて、前記生じた漏水の程度を識別可能にする情報処理システムのコンピュータが、前記建物内の漏水箇所の内装材の表面に、前記内装材が濡れたことにより生じた染み状の漏水の跡が生じていて、可視カメラを用いて撮影された前記漏水箇所における漏水状況を示す画像であって互いに前記漏水の跡の撮影時点が異なる第1画像と第2画像とを含む複数の画像を取得して、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とを対応させて、前記第1画像と前記第2画像に共通する漏水範囲が重なるように、前記第1画像と前記第2画像を重ねて表示させるように制御し、前記第1画像と前記第2画像の双方の画像に示された漏水の跡に基づいて、前記双方の画像における漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を定量化し、前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像に示された漏水の跡に基づく変化率を定量化するステップと、端末装置からの要求を受けて、前記要求に応じた処理をして、前記定量化の結果を要求する要求元端末装置からの要求に対し、前記定量化の結果を前記要求元端末装置の表示部に表示させるように前記定量化の結果を前記要求元端末装置に提供するステップと、要求に応じて過去画像である前記第1画像を前記端末装置に提供し、前記端末装置のモニタに前記第1画像を透過させて表示させることで前記第2画像の撮影時の位置調整を可能にして、前記端末装置の撮像部によって撮像された前記第2画像を前記取得するステップと、前記第1画像と前記第2画像とに共通する範囲内で前記漏水の跡の外に定められた複数の基準点を用いて、前記複数の基準点における前記複数の基準点の明るさの経時変化を検出して、前記漏水の跡の変化を算出するステップと、前記第1画像と前記第2画像に映った前記漏水の跡の内部の面積を検出して、前記検出した面積の変化を定量化するステップと、を含む情報処理方法である。
【0016】
(10)また、本発明の一態様のプログラムは、雨水又は水道水の漏水が建物内に生じて、前記生じた漏水の程度を識別可能にする情報処理システムのコンピュータに、前記建物内の漏水箇所の内装材の表面に、前記内装材が濡れたことにより生じた染み状の漏水の跡が生じていて、可視カメラを用いて撮影された前記漏水箇所における漏水状況を示す画像であって互いに前記漏水の跡の撮影時点が異なる第1画像と第2画像とを含む複数の画像を取得させて、前記第1画像の特徴点と前記第2画像の特徴点とを対応させて、前記第1画像と前記第2画像に共通する漏水範囲が重なるように、前記第1画像と前記第2画像を重ねて表示させるように制御させて、前記第1画像と前記第2画像の双方の画像に示された漏水の跡に基づいて、前記双方の画像における漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を定量化させて、前記定量化された漏水の跡によって識別される範囲の大きさの変化を前記双方の画像に示された漏水の跡に基づく変化率を定量化させるステップと、端末装置からの要求を受けて、前記要求に応じた処理をさせて、前記定量化の結果を要求する要求元端末装置からの要求に対し、前記定量化の結果を前記要求元端末装置の表示部に表示させるように前記定量化の結果を前記要求元端末装置に提供するステップと、要求に応じて過去画像である前記第1画像を前記端末装置に提供し、前記端末装置のモニタに前記第1画像を透過させて表示させることで前記第2画像の撮影時の位置調整を可能にして、前記端末装置の撮像部によって撮像された前記第2画像を前記取得させるステップと、前記第1画像と前記第2画像とに共通する範囲内で前記漏水の跡の外に定められた複数の基準点を用いて、前記複数の基準点における前記複数の基準点の明るさの経時変化を検出して、前記漏水の跡の変化を算出させるステップと、前記第1画像と前記第2画像に映った前記漏水の跡の内部の面積を検出して、前記検出した面積の変化を定量化させるステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、漏水が生じた箇所の画像から、発生した漏水の程度を識別する情報処理システム、情報処理方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る情報処理システムの概要を説明するための図である。
図2図1の情報処理システムを適用して画像を取得する処理を説明するための図である。
図3】実施形態の履歴管理DBを説明するための図である。
図4】実施形態の携帯端末装置10の操作により画像を記録する処理を説明するための図である。
図5】実施形態の携帯端末装置10の操作により画像を記録する処理の手順を示すフローチャートである。
図6】実施形態の情報端末装置30の操作により画像を記録する処理を説明するための図である。
図7】実施形態の情報端末装置30の操作により画像を記録する処理の手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態の輪郭の識別機能について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の情報処理システム及び情報処理方法について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理システムの概要を説明するための図である。
【0021】
図1に示す情報処理システム1は、携帯端末装置10と、管理装置20と、操作端末装置30とを含む。携帯端末装置10と、管理装置20と、操作端末装置30とは、無線通信によりネットワークNWを介して接続される。
【0022】
建物BLを形成する外壁等にひび割れが生じると、建物BLの防水性の低下を招く。その結果、雨水がひび割れを伝わって建物BLの内部に侵入し漏水が生じることがある。ひび割れが生じた個所が、建物BLの内装等に覆われたふかし壁の位置にあると、漏水が生じたか否か、或いはその漏水の程度を直接的に視認することが困難である。
【0023】
ところで、漏水が生じたことにより建物BLの内装材が濡れることがある。このような場合、雨が上がり漏水が止まって建物BLの内装材が乾いても、漏水時に濡れた範囲が染みとなって残る。また、ひび割れが生じた個所の漏水状況が悪化すると、内装材が濡れる範囲が広くなり、それに伴い内装材の染みの範囲も大きくなる。
【0024】
そこで、実施形態の情報処理システム1は、内装材に生じた染みの範囲を検出することにより漏水の発生状況を間接的に識別する。例えば、このような識別方法をとることにより、建物BLの外壁などに生じたひび割れが、建物BLの内装材に覆われた個所に発生していても、情報処理システム1は、漏水個所が存在することや、その程度を識別可能にする。以下、情報処理システム1について一例を示して説明する。
【0025】
図2は、図1の情報処理システムを適用して画像を取得する処理を説明するための図である。
【0026】
(携帯端末装置)
図2に示す携帯端末装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、表示操作部14と、撮像部15を備える。携帯端末装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、表示操作部14と、撮像部15が、1つの筐体内に設けられていてもよく、その一部が異なる筐体に設けられていてもよい。例えば、携帯端末装置10の通信部11と、記憶部12と、制御部13とが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性記憶装置,可搬型記録媒体ドライブ装置、撮像部15などを含むコンピュータとして構成されていてもよい。
【0027】
通信部11は、無線通信によりネットワークNWに接続され、制御部13の制御により管理装置20と通信する。
【0028】
記憶部12は、撮像部15により撮像された画像データ、管理装置20から受信した情報、表示操作部14に表示する情報、表示操作部14により検出した操作に関する情報、等の他、制御部13を機能させるためのプログラム(OS(operating system)、アプリケーションプログラム)等を格納する。
【0029】
制御部13は、通信部11を制御して管理装置20と通信する。その場合、制御部13は、予め定められた管理装置20のURI等を含む通信の相手先(宛先)情報を用いて、管理装置20と通信する。
【0030】
例えば、携帯端末装置10は、OS、又は、アプリケーションプログラムの実行により、管理装置20と通信する。携帯端末装置10は、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)等のプロトコルを利用して、管理装置20等に格納されたコンテンツを閲覧すること等ができる。例えば、そのコンテンツは、HTML(HyperText Markup Language)等で記述されたもの、画像データ等である。携帯端末装置10がコンテンツ等を取得する手法は、上記の他、一般的な手法を適用してもよい。
【0031】
また、制御部13は、ユーザの操作によって撮像部15を制御して、撮像部15によって撮像された画像を取得する。制御部13は、管理装置20から得たコンテンツ、画像データ等の情報を、表示操作部14に表示するように制御する。制御部13は、管理装置20から得た画像データを、単独で表示操作部14に表示することの他、撮像部15により撮像された画像に重ね合わせて表示するように制御してもよい。
【0032】
表示操作部14は、表示部としての液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどを備えており、併せて、操作を受け付けるタッチパネルとして形成されていている。
【0033】
撮像部15は、図示しない光学系と撮像デバイスとを含み、その撮像デバイスからの信号に基づいた画像データを生成する。
【0034】
(管理装置)
次に、管理装置20について説明する。
図2に示す管理装置20は、記憶部21と、要求処理部22と、データ取得部23と、表示制御部24と、定量化部25と、状況変化判定部26と、通信部27と、表示部28を備える。管理装置20は、記憶部21と、要求処理部22と、データ取得部23と、表示制御部24と、定量化部25と、状況変化判定部26と、通信部27と、表示部28と、が、1つの筐体内に設けられていてもよく、その一部が異なる筐体に設けられていてもよい。例えば、管理装置20の記憶部21と、要求処理部22と、データ取得部23と、表示制御部24と、定量化部25と、状況変化判定部26と、通信部27とが、CPU、RAM、不揮発性記憶装置,可搬型記録媒体ドライブ装置などを含むコンピュータとして構成されていてもよい。
【0035】
記憶部21は、履歴情報DB211などを格納する。
図3は、実施形態の履歴管理DBを説明するための図である。
【0036】
履歴管理DB211には、建物IDと、階と、平面図IDと、部屋IDと、内装面IDと、位置データと、原画像IDと、撮影日データと、撮影条件データと、範囲特定画像IDと、範囲データと、変化データ等のデータが含まれる。
【0037】
建物IDには、対象の建物BL(対象建物)を識別するためのデータ(BL01等)が格納される。階には、建物BLにおける各階を特定するためのデータ(F1,F2等)が格納される。平面図IDには、対象建物における各階ごとの平面図のデータが格納される。例えば、平面図IDをBL011とする図面は、建物IDがBL01で識別される建物BLのF1階の図面(平面図)を示し、BL011とする図面は建物BLのF2階の図面を示す。部屋IDには、建物BLにおける対象の部屋を特定するための情報が格納される。RM01は部屋IDの一例である。
【0038】
内装面IDには、天井(C)、壁、床(F)などを特定するためのデータが格納される。例えば、壁の特定は、その部屋の略中心からその壁を見込む方位(N/E/W/S)を適用してもよい。
【0039】
位置データには、平面図上の位置を示すデータが格納される。P01,P02,P03などは、位置データの一例である。
【0040】
原画像IDには、建物において撮影した画像データのファイル名が格納される。例えば、画像データのファイルは、このファイル名から一意に識別される。なお、建物において撮影された画像の画像データは、原画像IDにファイル名とともに格納されていてもよく、他の記憶領域に格納されていてもよい。撮影日データには、建物において画像を撮影した年月を特定するデータが含まれる。撮影条件データは、画像を撮影した当日又はその前日などにおける対象建物の周囲の環境などを示すデータが格納される。例えば、その撮影条件データには、画像を撮影した当日又はその前日などの天気に係る情報や、室内の照明の点灯状態などが含まれる。
【0041】
範囲特定画像IDには、上記の画像データに基づいて漏水範囲を特定した結果が追加された画像データのファイル名が格納される。例えば、漏水範囲を特定した結果が追加された画像データのファイルは、ファイル名から一意に識別される。なお、漏水範囲を特定した結果が追加された画像データは、範囲特定画像IDにファイル名とともに格納されていてもよく、他の記憶領域に格納されていてもよい。
【0042】
範囲データには、画像データに基づいて特定した漏水範囲に関するデータが格納される。例えば、特定した漏水範囲に関するデータは、画像データによる画像内における漏水個所の位置と範囲を示すデータである。
【0043】
変化データには、過去の画像データに基づいて検出された漏水範囲に対して、本画像データに基づいて検出された漏水範囲の変化に関する情報が格納される。
【0044】
例えば、建物IDがBL01で識別される建物BLのF1階に位置する部屋であって、部屋IDがRM01で特定される部屋において、P01,P02,P03などによって特定される位置があると仮定する。
現在までに、P01とP02で識別される位置の画像(IM1701とIM1702)のファイル名が原画像IDに格納されている。これらの画像を撮影した日の環境は、撮影条件データの項目から「晴」であったことが識別できる。
なお、この履歴管理DB211には、当年分のP03で識別される位置の画像のファイル名はまだ格納されていない状態(NA)にある。
【0045】
上記は、当年分の画像データに関する一例を説明したものであるが、過年度の画像データも履歴管理DB211に同様に格納されている。例えば、撮影日データが、2016M1、2016M2などの画像データは過年度のものである。
【0046】
図2に戻り、要求処理部22とデータ取得部23は、通信部27を制御して携帯端末装置10又は操作端末装置30と通信する。その場合、要求処理部22とデータ取得部23は、予め定められた携帯端末装置10又は操作端末装置30の相手先(宛先)情報を用いて通信する。
【0047】
例えば、管理装置20は、OS、又は、アプリケーションプログラムの実行により、携帯端末装置10又は操作端末装置30と通信する。管理装置20は、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)等のプロトコルを利用して、管理装置20等に格納されたコンテンツや画像データを、携帯端末装置10又は操作端末装置30から閲覧可能に提供すること等ができる。例えば、そのコンテンツは、HTML(HyperText Markup Language)等で記述されたもの、画像データ等である。管理装置20がコンテンツ等を提供する手法は、上記の他、一般的な手法を適用してもよい。
【0048】
要求処理部22は、携帯端末装置10又は操作端末装置30からの各種要求を受け、その要求に応じた処理を各部に実行させるとともに、その要求に対する応答を各端末装置に返す。
【0049】
データ取得部23は、携帯端末装置10から、漏水個所の画像データを取得して、関連する各種情報を付与して履歴情報DB211に書き込み、格納する。
【0050】
表示制御部24は、携帯端末装置10又は操作端末装置30からの各種要求に応じて、建物、階、部屋、位置などにより指定された位置の図面、画像などを、履歴情報DB211等から読み出して、要求元の各端末装置に提供する。
【0051】
定量化部25は、漏水箇所の画像に基づいて、漏水の跡から特定される漏水範囲を定量化する。その詳細については後述する。
【0052】
状況変化判定部26は、漏水範囲の変化の比率(変化率)に基づいて、状況の変化を判定する。
【0053】
通信部27は、通信によりネットワークNWに接続され、要求処理部22とデータ取得部23の制御により携帯端末装置10又は操作端末装置30と通信する。
【0054】
表示部28は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどを備えており、併せて、操作を受け付けるタッチパネルとして形成されていている。
【0055】
(操作端末装置)
図2に示す操作端末装置30は、通信部31と、記憶部32と、制御部33と、表示部34とを備える。操作端末装置30の上記各部の構成は、携帯端末装置10の構成に準じる。
【0056】
図4は、実施形態の携帯端末装置10の操作により画像を記録する処理を説明するための図である。図5は、実施形態の携帯端末装置10の操作により画像を記録する処理の手順を示すフローチャートである。
【0057】
携帯端末装置10は、ユーザの操作を受け付けて、ユーザの操作により選択された建物に関する情報を管理装置20に通知して、建物に関する図面情報を要求する(ステップSA11)。管理装置20は、携帯端末装置10からの要求を受け付けて(ステップSA21)、その要求に応じて、ユーザの操作により選択された建物に関する図面情報を、携帯端末装置10に提供する(ステップSA22)。
【0058】
携帯端末装置10は、ユーザの操作により選択された建物に関する図面情報を、管理装置20から受信して、それを表示操作部14に表示する(ステップSA12)。例えば、図4(a)に、表示部に表示される図面(平面図BL01F1)の一例を示す。この平面図BL01F1には、過去に漏水が検出された位置にそれを示すマーカー(P01,P02,P03等)が示されている。
【0059】
ユーザは、表示部に表示された平面図BL01F1を参照して、平面図BL01F1に記された所望の位置に対応するマーカー(P01,P02,P03等)を選択する。例えば、ユーザは、P03のマーカーを選択するための操作をしたものとする。
【0060】
携帯端末装置10は、ユーザの操作を受け付けて、選択された所望の位置の過去の画像データを、管理装置20に要求する(ステップSA13)。管理装置20は、携帯端末装置10からの要求を受け付けて(ステップSA23)、その要求に応じて、ユーザにより選択された所望の位置の過去の画像データを携帯端末装置10に提供する(ステップSA24)。
【0061】
携帯端末装置10は、ユーザにより選択された所望の位置の過去の画像データを、管理装置20から受信して、それを表示部に表示する(ステップSA14)。例えば、図4(b)に、表示操作部14に表示される画像(IM1601等)の一例を示す。この画像IM1601には、過去に漏水が検出された位置で漏水状況を撮影した画像(IM1601PA)が示されている。
【0062】
携帯端末装置10は、図4(c)に示すように上記の過去の画像データを表示操作部14に表示しつつ、撮影処理を実行して、撮像部15により画像を撮像する(ステップSA15)。
携帯端末装置10は、撮像部15により撮像した画像の画像データをアップロードする(ステップSA16)。管理装置20は、アップロードされた画像データを取得して、履歴情報DB211に格納する(ステップSA26)。
【0063】
なお、上記のステップSA15における撮影処理を実行する際に、携帯端末装置10は、上記の過去の画像と、撮像部15により撮像された現在の画像IMNOWとについて、何れか一方が透過するように調整して、2つの画像が重なった1つの画像を表示操作部14に表示する。符号SI1601が過去の画像における漏水箇所を示し、符号SI1701が当年の画像における漏水箇所を示す。図4(c)では、現在の画像IMNOWを実線で示し、過去の画像を点線で示す。これにより、画像を撮像する位置、撮像系等の条件が一致していることにより、被写体の像が重なった状態で表示される。このような状態で撮影された画像は、撮影対象の漏水箇所の状況の画像を含むものになる。
【0064】
ただし、携帯端末装置10は、定点設置されたものではなく、ユーザによって携行される。そのため、ユーザが、画像を撮像する位置を、過去に画像を撮影した位置に合わせることを試みたとしても、2つの画像を完全に一致させることは困難なことがある。
【0065】
そこで、本実施形態では、上記のように、画像を撮像する位置の不一致などにより、被写体の像が完全に重ならない場合の補正について説明する。
【0066】
(漏水範囲の検出)
図6は、実施形態の情報端末装置30の操作により画像を記録する処理を説明するための図である。図7は、実施形態の情報端末装置30の操作により画像を記録する処理の手順を示すフローチャートである。
【0067】
まず、操作端末装置30は、ユーザの操作により選択された建物に関する情報を管理装置20に通知して、建物に関する図面情報を要求する(ステップSB31)。管理装置20は、操作端末装置30からの要求を受け付けて(ステップSB21)、その要求に応じて、ユーザの操作により選択された建物に関する図面情報を、操作端末装置30に提供する(ステップSB22)。
【0068】
操作端末装置30は、ユーザの操作により選択された建物に関する図面情報を、管理装置20から受信して、それを表示部34に表示する(ステップSB32)。例えば、図6(a)に、表示部に表示される図面(平面図BL01F1)の一例を示す。この平面図BL01F1には、過去に漏水が検出された位置にそれを示すマーカー(P01,P02,P03等)が示されている。
【0069】
ユーザは、表示部に表示された平面図BL01F1を参照して、平面図BL01F1に記された所望の位置に対応するマーカー(P01,P02,P03等)を選択する。例えば、ユーザは、P03のマーカーを選択するための操作をしたものとする。
【0070】
操作端末装置30は、ユーザの操作を受け付けて、選択された所望の位置の画像データを、管理装置20に要求する(ステップSB33)。管理装置20は、操作端末装置30からの要求を受け付けて(ステップSB23)、その要求に応じて、ユーザにより選択された所望の位置の互いに異なる時に撮影された少なくとも2つ以上の画像データを、操作端末装置30に提供する(ステップSB24)。
【0071】
操作端末装置30は、ユーザにより選択された所望の位置の互いに異なる時に撮影された少なくとも2つ以上の画像データを、管理装置20から受信して、それらを表示部34に表示する(ステップSB34)。
【0072】
例えば、図6(b)に、表示部34に表示される画像(IM1601とIM1701等)の一例を示す。上記の2つ以上の画像には、過去に検出された漏水の発生状況を示す画像IM1601(以下、第1画像という。)と、上記の過去(画像IM1601を撮影した時点)より後に検出された漏水の発生状況を示す画像IM1701(以下、第2画像という。)とが含まれている。管理装置20は、操作端末装置30に表示された画面上に上記の第1画像と第2画像とのそれぞれを、領域を分けて並べて配置するようなデータを生成して送信する。その結果、操作端末装置30が、上記の第1画像と第2画像の画像データとを、領域を分けて並べて配置して表示させたことで、ユーザは、表示部34に表示された第1画像と第2画像を参照することが可能になる。
【0073】
ここで、ユーザは、両方の画像に含まれる像の中から共通する像の特徴点を選択し、選択した特徴点の位置を指定する。例えば、ユーザは、選択した特徴点の位置を各画像上に登録するように、表示部34の画面上でその特徴点の位置をタッチする。ユーザが指定する特徴点は、照明器具の筐体上の点、天井や壁などに張りつめたパネル材同士の境界上の点、点検口などに設けたフレーム上の点などを選択してもよい。例えば、符号TPは、ユーザが指定した特徴点を示す。なお、特徴点TPの個数を下記のように定めてもよい。管理装置20は、ユーザの要求により受け付ける特徴点TPの個数を、画像毎に同数にする。その個数は、例えば少なくとも2個以上である。図に示す例では、4つの特徴点TPを登録したものである。
【0074】
この場合、操作端末装置30は、ユーザの操作により指定された位置を検出し、指定された位置を第1画像と第2画像とに関連付けることを、要求する位置合わせ要求に関する情報を管理装置20宛に送信する(ステップSB35)。なお、上記は、アイコンEC31(「位置合わせ」)の操作が検出された後に実施される。
【0075】
上記の要求を受けた管理装置20は、位置合わせ要求に応じて、各画像のそれぞれにその特徴点TPを関連付ける位置合わせ処理を実施する(ステップSB25)。なお、管理装置20は、上記の位置合わせ処理を次のように実施してもよい。管理装置20は、画像上の特定の位置に特徴点TPを関連付けるように、その特定の位置を示す位置座標を、画像データと特徴点TPの識別情報とに対応付けて履歴情報DB211に格納する。また、操作端末装置30は、並べて表示された2つの画像(第1画像と第2画像)が同じ尺度で見えるように調整することを、管理装置20に要求してもよい。管理装置20は、操作端末装置30からの上記の要求を受け付けて、上記の複数の特徴点TPを用いて第1画像と第2画像の少なくとも何れか一方の尺度を調整する。なお、管理装置20は、この調整に当たり、尺度の調整の他、任意の点を基準にした画像の回転、台形変換等を合わせて実施してもよい。符号IM1601Cの画像は、画像IM1601(第1画像)に基づいて、上記の調整がなされたものである。上記のように調整された2つの画像は、その尺度や方向等が揃い、表示部上の平行移動で互いに対応する各特徴点TPが重なるような画像になる。
【0076】
なお、操作端末装置30は、上記の2つの画像を並べて表示するか、或いは、重ねて表示するかを管理装置20に対して要求し、管理装置20がその要求を処理することにより、上記の要求に応じた画像データの応答を受ける。この表示形態の切り替えについては、操作端末装置30は、適宜要求することができる。
【0077】
次に、操作端末装置30は、図6(c)に示すアイコンEC32(「漏水跡検出」)の操作を検出した後に、管理装置20宛に、上記の2つの画像のそれぞれに、染みが生じた範囲を明確化させた画像を表示するように要求する(ステップSB36)。
【0078】
上記の要求を受けた管理装置20は、図6(d)に示すような染みが生じた範囲を示す表示を、上記の2つの画像のそれぞれに追加して表示するような画像データを生成する。管理装置20は、生成された画像データを、操作端末装置30宛に送信する。管理装置20は、上記の漏水跡検出処理を実施する(ステップSB26)。
【0079】
次に、操作端末装置30は、管理装置20からの応答を受け、上記の2つの画像のそれぞれに染みが生じた範囲を明示した画像を表示する。
【0080】
次に、操作端末装置30は、管理装置20宛に、上記の2つの画像のそれぞれにおいて、染みが生じた範囲を定量化することを、管理装置20に要求する(ステップSB37)。
【0081】
上記の要求を受けた管理装置20は、上記の2つの画像のそれぞれにおいて、染みが生じた範囲を計数し、その結果を操作端末装置30宛に送信する定量評価処理を実施する(SB27)。
【0082】
例えば、操作端末装置30は、その定量評価処理の結果を受けて、その結果を表示する。例えば、操作端末装置30に表示される結果には、図6(e)に示すように、各画像における染みが生じた範囲の面積拡大率と、染みの明度変化率とが含まれていてもよい。
【0083】
(漏水範囲の定量化の手法)
ここで、漏水範囲の定量化の手法について説明する。定量化部25は、画像に示された漏水の跡に基づいて、その画像における漏水範囲を識別し、識別した範囲の大きさを定量化する。
【0084】
さらに、定量化部25は、2つの画像に示された、共通する漏水の跡に基づいて、双方の画像における漏水範囲の大きさの変化を定量化する。このように、2つの画像に示された共通する漏水の跡を評価の対象にすることにより、2つの画像がそれぞれ示す状態の違いが容易になる。
【0085】
なお、状況変化判定部26は、算出された漏水範囲の変化を双方の画像における変化率で示すことにより、変化の程度を定量化する。例えば、定量化部25は、双方の画像に共通する範囲内の漏水範囲内外の面積の比を算出し、その面積比を対比することにより、漏水範囲の変化の程度を算出する。この場合、定量化部25は、双方の画像に共通する範囲内に複数の基準の位置が定められ、漏水範囲内外の前記基準の位置の明るさの分布に基づいて、前記漏水範囲の変化を算出してもよい。
【0086】
例えば、所定の大きさを範囲にもつ画像において、複数の基準の位置を格子状に定める。格子の間隔は、要求する検出精度に合わせて決定してよい。格子は、撮像部の撮像デバイスにおいて、所定の間隔に配置された撮像素子に対応付けられていてもよい。
【0087】
以下、定量化部25の処理を、被写体の輪郭を推定する識別機能を深層学習の手法で実施する事例について説明する。図8は、実施形態の輪郭の識別機能について説明するための図である。上記の識別機能は、セマンティックセグメンテーションとして知られている。セマンティックセグメンテーションを実現する手法として、エンコーダ・デコーダネットワーク、フルコンボリュ―ションネットワーク(FCN)等が知られている。
【0088】
図8(a)に示すエンコーダ・デコーダネットワークは、要求解像度に応じて決定される入力層と、出力層とを有する。入力層の後段に設けられるエンコーダは、複数の畳み込み層と複数のプーリング層とを含み、入力画像を入力層によって取得し、入力画像を低解像度化する。出力層の前段に設けられるデコーダは、複数の逆プーリング層と複数の転置畳み込み層とを含む。エンコーダとデコーダは、低解像度化された階層で接続され、エンコーダによって入力画像から低解像度化された情報(プーリングの位置情報)等を組み合わせて、出力層の解像度まで高精細化した画像を生成する。この過程で、エンコーダ・デコーダネットワークは、所望の条件を満たす領域を、所望の領域として推定する。
【0089】
また、図8(b)に示すフルコンボリュ―ションネットワークは、要求解像度に応じて決定される入力層と、出力層とを有する。フルコンボリュ―ションネットワークは、入力層より後段の中間層が複数の畳み込み層を含む。入力層が入力画像を取得し、中間層が入力画像を低解像度化する。フルコンボリュ―ションネットワークは、各畳み込み層からのデータに基づいて、要求解像度の出力層のデータを逆畳み込み演算により生成する。この過程で、フルコンボリュ―ションネットワークは、所望の条件を満たす領域を、所望の領域として推定する。
【0090】
上記のエンコーダ・デコーダネットワークとフルコンボリュ―ションネットワークのそれぞれは、教師データを用いて予め学習することにより、その識別能力を高めることができる。その教師データは、過去に発生した漏水が記録された画像を利用してもよい。例えば、ユーザが、その画像の中の漏水個所を識別して、正しく識別した場合の模範データを作成して、それを教師データにするとよい。このように、過去の画像データを教師データに利用することで、推定精度を高めることが可能になる。
【0091】
実施形態の定量化部25は、被写体の輪郭を推定する識別機能を有することにより、検出対象の漏水の跡(輪郭)の形状がまちまちであっても、輪郭の形状の特徴とは異なる特徴を利用してその範囲を抽出する。
なお、漏水が記録された画像を教師データにして学習した定量化部25であれば、形状がまちまちな漏水の跡(輪郭)であっても、抽出することを可能にする。この点、パターンマッチング等の手法とは異なった推定精度を得ることができる。
【0092】
以上の実施形態によれば、表示制御部は、建物BL内の漏水箇所における漏水状況を示す画像であって互いに撮影時点が異なる第1画像と第2画像とを含む複数の画像を取得して、第1画像の特徴点と第2画像の特徴点とを対応させて、第1画像と第2画像に共通する漏水範囲が重なるように、第1画像と第2画像を重ねて表示する。定量化部25は、第1画像と第2画像の双方の画像に示された漏水の跡に基づいて、双方の画像における漏水範囲の変化を定量化することにより、漏水が生じた箇所の画像から、発生した漏水の程度を識別することができる。
【0093】
また、定量化部25は、漏水範囲の変化の程度を、漏水範囲の変化を、双方の画像に共通する範囲内の漏水範囲内外の面積の比から算出する。これにより、2つの画像に共通する範囲内における漏水範囲内外の面積の比から、漏水範囲の変化を検出することができる。
【0094】
また、定量化部25は、双方の画像に共通する範囲内に複数の基準の位置が定められ、漏水範囲内外の前記基準の位置の明るさの分布に基づいて、前記漏水範囲の変化を算出する。これにより、双方の画像に共通する範囲内に定めた複数の基準の位置の明るさの分布に基づいて、前記漏水範囲の変化を算出することができる。また、基準の位置を配置する密度により、検出精度を決定することができる。
【0095】
また、状況変化判定部26は、算出された漏水範囲の変化を上記の双方の画像における変化率で示してもよい。これにより、双方の画像に対応する漏水の大きさを優先とする識別で見落とされがちな規模の小さな漏水であっても、変化率に着目することにより、急に状態が変化している個所を、変化の少ない箇所と識別することができる。
【0096】
また、建物BL内の漏水箇所が、建物BLの内装部材により隠蔽される建物BLの躯体側にある場合であっても、建物BL内の漏水状況を示す画像が、建物BL内の漏水箇所の像を含まない建物BLの内装部材の表面の画像にすることにより、当該位置の内装部材を撤去すること無く漏水の状況を判定することができる。
【0097】
なお、第1画像と第2画像は、漏水状況を示す像の他に、漏水状況によって変化しない被写体の像を含む。表示制御部は、漏水状況によって変化しない被写体の像に基づいて、第1画像と前記第2画像が重なるように調整するようにしたことにより、漏水状況によって変化しない被写体の像に基づいて、2つの画像の対比を容易にする。
【0098】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の状況変化判定部26は、建物BL内の漏水箇所に対応付けて、複数の画像のそれぞれと、その特徴点と撮影段階の条件の組情報とを記憶部に格納する。例えば、撮影日の前日又は当日の天気は、撮影段階の条件の一例である。
【0099】
例えば、定量化部25は、撮影日の前日又は当日の天気に合わせた判定条件を利用するようにしてもよい。撮影日の前日又は当日の天気が雨などで、それによる漏水が生じる場合がある。撮影段階で、内装材が乾いていないと、乾燥時の状態と異なる画像になることがある。
【0100】
そこで、定量化部25は、天候などを特定する撮影段階の条件の情報を判定に利用して、判定基準を調整してもよい。
【0101】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することの他に、定量化部25は、状況変化判定部26は、撮影段階の条件を含めて、状況変化の判定に利用可能にした。
【0102】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の定量化部25は、双方の画像に共通する範囲内において、漏水範囲内外の基準の位置の明るさの比に基づいて漏水範囲の変化を算出する。
【0103】
定量化部25は、第1の画像における漏水箇所の近傍に基準点を定め、第1画像に対応する第2画像における上記の基準点の明るさの比を算出する。例えば、漏水の状況が悪化して、漏水の範囲が広がると、その輪郭(跡)の位置が外側に移動する。このとき、基準点に輪郭が掛かることにより、基準点の明るさが変化する。定量化部25は、この明るさの変化を検出するようにしてもよい。
【0104】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することの他に、定量化部25は、基準の位置の明るさの比を算出するという比較的計算処理の負荷の少ない方法で漏水状態の悪化を検出することができる。
【0105】
なお、情報処理システム1を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより管理装置20が指定する対象のコンテンツに、共有情報を追加するなどの処理動作を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0106】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、ネットワークや通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
1…情報処理システム、BL…建物、10…携帯端末装置、20…管理装置、21…記憶部、22…要求処理部、23…データ取得部、24…表示制御部、25…定量化部、26…状況変化判定部、27通信部、28表示部、30…操作端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8