(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物、液状組成物、インク組成物、薄膜、及び有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
C07D 405/14 20060101AFI20220926BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20220926BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220926BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20220926BHJP
C07D 405/10 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C07D405/14 CSP
C09K11/06 690
H05B33/14 B
H05B33/22 B
C09D11/037
C07D405/10
(21)【出願番号】P 2017244291
(22)【出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-12-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光則
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0057660(KR,A)
【文献】国際公開第2017/018795(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/099490(WO,A1)
【文献】特開2014-116454(JP,A)
【文献】特開2013-069905(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078494(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/105161(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175068(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/196081(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/099471(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107226811(CN,A)
【文献】特開2013-110262(JP,A)
【文献】特開2012-028548(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163083(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/180020(WO,A1)
【文献】Gilman, H. et al.,Dibenzofuran. II. Metalation,Journal of the American Chemical Society,1934年,(1934), 56, 1415-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
H01L
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式1-1~1-24:
で表される、有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物。
【請求項2】
分子量が850~3000である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物。
【請求項3】
ホスト材料又は電荷輸送材料として用いられる、請求項1
又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物と、溶媒とを含有する、液状組成物。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を含有する、インク組成物。
【請求項6】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を含有する、薄膜。
【請求項7】
第1電極と、
前記第1電極に対向して設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた有機層と
を備え、
前記有機層は、請求項1~
3のいずれか一項に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物、液状組成物、インク組成物、薄膜、及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)は、薄型に構成可能な自己発光型の表示装置である。当該表示装置は、視認性及び視野角特性に優れ、消費電力も低いため、需要が高い。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、一般に、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を有する。有機エレクトロルミネッセンス素子は各々、基板上に形成された第1電極と、第1電極上に形成された有機層と、有機層上に形成された第2電極とを備えている。そして、電界を印加することにより、第1電極及び第2電極より各々注入された正孔及び電子が有機層において再結合し、有機層を形成する発光材料が発光する構成となっている。上記有機層は、一般に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層を備えた積層構造を有する。
【0004】
このような有機エレクトロルミネッセンス素子には、高効率化及び長寿命化が求められている。そのため、各層に用いられる有機エレクトロルミネッセンス材料の研究が進められ、様々な材料が提案されている。例えば、特許文献1には、ジベンゾフラン化合物を発光層のホスト材料として用いることが記載されている。
【0005】
一方、近年、有機層の各層を形成する方法として塗布法が注目されている。塗布法は、有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を溶媒に溶解して得られた溶液を塗布することによって成膜する方法である。塗布法は、蒸着法に比べて、製造工程を簡素化でき、製造コストを低減できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2016/0111657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたようなジベンゾフラン化合物は、溶媒への溶解性が低く、塗布法を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造には適さない。そのため、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び長寿を向上させ得る塗布法に適用可能な化合物が求められている。
【0008】
上記の点に鑑みて、本発明の一形態は、塗布法による成膜性に優れ、且つ高発光効率及び長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造できる有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一形態では、下記式(1)で表される化合物であって、当該化合物に含まれる芳香環の数が9~60である有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物が提供される。
【0010】
【0011】
式(1)中、
Aは、式(2)
【0012】
【0013】
[式(2)中、
Xは、酸素原子、又は硫黄原子であり、
Azは、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の含窒素芳香族複素環基であり、
Czは、置換若しくは無置換のカルバゾール、置換若しくは無置換のアザカルバゾール、置換若しくは無置換のベンゾカルバゾール、置換若しくは無置換のヒドロカルバゾール、置換若しくは無置換のアクリジン、置換若しくは無置換のインドール、置換若しくは無置換のキサンテン、置換若しくは無置換のフェノキサジン、又は置換若しくは無置換のジフェニルアミンから誘導された基であり、複数の置換基を有する場合、隣接する置換基が結合して新たな環を形成してもよく、
L11及びL12は、それぞれ独立に、単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であり、
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であり、
R2~R7は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であり、隣接する基と結合して新たな環を形成してもよく、
mは1~4の整数であり、
pは1~4の整数であり、pが2以上の場合、L12は、p個のCzのいずれに結合してもよい]で表される化合物であり、
Lは、複数のAのいずれに結合してもよい連結基、又は単結合を表し、
nは1~4の整数であり、nが1の場合には、式(1)と式(2)とは同一の化合物を表す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一形態によれば、塗布法による成膜性に優れ、且つ高発光効率及び長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造できる有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一形態による有機エレクトロルミネッセンス素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一形態による有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0017】
【0018】
式(1)中、Aは下記式(2)で表される化合物である。
【0019】
【0020】
式(2)中、
Xは、酸素原子、又は硫黄原子であり、
Azは、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の含窒素芳香族複素環基であり、
Czは、置換若しくは無置換のカルバゾール、置換若しくは無置換のアザカルバゾール、置換若しくは無置換のベンゾカルバゾール、置換若しくは無置換のヒドロカルバゾール、置換若しくは無置換のアクリジン、置換若しくは無置換のインドール、置換若しくは無置換のキサンテン、置換若しくは無置換のフェノキサジン、又は置換若しくは無置換のジフェニルアミンから誘導された基であり、複数の置換基を有する場合、隣接する置換基が結合して新たな環を形成してもよく、
L11及びL12は、それぞれ独立に、単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であり、
R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であり、
R2~R7は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であり、隣接する基と結合して新たな環を形成してもよく、
mは1~4の整数であり、
pは1~4の整数であり、pが2以上の場合、L12は、p個のCzのいずれに結合してもよい。
【0021】
また、上式(1)中、
Lは、複数のAのいずれに結合してもよい連結基、又は単結合を表し、
nは1~4の整数であり、nが1の場合には、上式(1)と上式(2)とは同一の化合物を表す。そして、上式(1)で表される化合物に含まれる芳香環の数は、9~60である。
【0022】
現在、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層の製造方法としては、主として蒸着法及び塗布法が知られている。このうち、蒸着法(真空蒸着法ともいう)は、材料を真空で加熱、気化させて成膜を行う方法である。この方法には、精度が良い積層構造が得られ、また純度の良い膜を形成できるという利点がある。しかし、生産性及び歩留まりが課題となっている。これに対し、塗布法(溶液塗布法、湿式成膜法ともいう)は、装置及び製造エネルギーに関するコストが低いこと、材料の利用効率が高いこと等から、大面積化及び高生産性が期待できる方法である。
【0023】
塗布法で用いる化合物には、塗布液調製のための溶媒への高い溶解性が求められる。しかし、従来の化合物の溶解性は低く、塗布法による素子製造において利用するのは難しかった。一方、塗布液を良好に調製でき、塗布法による成膜が可能な化合物であっても、得られる有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び寿命が十分でない場合もある。
【0024】
これに対し、本発明の一形態による有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物は式(1)によって表される特定の構造を有し、且つ当該化合物に含まれる芳香環の数が9~60となっている。このような構成により、化合物の溶媒への高い溶解性を実現でき、塗布法による良好な成膜が可能になる。すなわち、当該化合物は、塗布法による成膜性に優れている。加えて、当該化合物は、得られる有機エレクトロルミネッセンス素子の高発光効率及び長寿命も実現可能である。
【0025】
なお、本明細書において芳香環とは、芳香族性を有する環状構造を指し、環状共役した(4n+2)個のπ電子(nは整数)を有するものである。芳香環は、炭化水素芳香環であってもよいし、複素環であってもよい。また、縮合環であっても非縮合環であってもよく、単環式芳香族基中の環であっても多環式芳香族基中の環であってもよい。
【0026】
式(1)中、nは1~4の整数であってよい。すなわち、式(1)で表される化合物は、式(2)で表される化合物Aの単量体であってもよいし、複数のAがLを介して互いに結合されたn量体であってよい。nが1の場合、Lは存在せず、式(1)で表される化合物は、Aと同じ構造を有する。また、nが2以上の場合、Lは、複数のAとそれぞれ結合するn価の連結基であってよい。ここで、nが2の場合には、Lは単結合であってもよい。また、Lは、Aのいずれの位置に結合してもよい。複数のAがある場合、その複数のAにおけるLの結合位置は、同じであってもよいし異なっていてもよい。また、複数のAの構造は、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0027】
式(2)中、Xは酸素原子又は硫黄原子であってよい。すなわち、Aは、ジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造を有する化合物であってよく、一部の炭素原子が窒素原子に置き換わったアザジベンゾフラン骨格構造又はアザジベンゾチオフェン骨格構造を有していてもよい。そして、Aにおいては、このようなジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造の特定の2つ位置(ジベンゾフランの場合には6、8位、ジベンゾチオフェンの場合には2、4位)に、異なる特定の芳香族複素環基がそれぞれ結合されている。このような構成によって、当該化合物を用いて製造される素子の高効率化及び長寿命化を図ることができる。
【0028】
式(2)において、Azは、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の含窒素芳香族複素環基である。Azは、単環式又は多環式の含窒素芳香族複素環基であってよく、5員環基、6員環基、又は、これらの環が2以上結合若しくは縮合された芳香族複素環基であってもよい。
【0029】
Azは、より具体的には、置換若しくは無置換のピロール、置換若しくは無置換のピラゾール、置換若しくは無置換のイミダゾール、置換若しくは無置換のトリアゾール、置換若しくは無置換のピリジン、置換若しくは無置換のピリミジン、置換若しくは無置換のピリダジン、置換若しくは無置換のピラジン、置換若しくは無置換のトリアジン、置換若しくは無置換のインドール、置換若しくは無置換のイソインドール、置換若しくは無置換のインダゾール、置換若しくは無置換のベンゾイミダゾール、置換若しくは無置換のキノリン、置換若しくは無置換のイソキノリン、置換若しくは無置換のフタラジン、置換若しくは無置換のナフチリジン、置換若しくは無置換のシンノリン、置換若しくは無置換のキノキサリン、置換若しくは無置換のキナゾリン、又は置換若しくは無置換のイミダゾピリジンから誘導された基であってよい。このうち、素子を作成した場合の電圧の観点から、置換若しくは無置換の、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、又はトリアジンから誘導された基が好ましく、置換若しくは無置換のトリアジンから誘導された基がより好ましい。
【0030】
なお、本明細書において、「誘導された」とは、所定の化合物の基本的な構造及び性質を変えることなく、改変が加えられたことを指す。よって、例えば、芳香族化合物から誘導された基は、その芳香族化合物の骨格構造を維持している。また、所定の化合物から誘導された基とは、所定の化合物から水素原子又は置換基を任意のp個除いて得られるp価の基を指すことができる。
【0031】
Azは、以下の式で表されるものが好ましい。以下の式において、*は、AzとL11とが結合する位置を表す(L11が単結合である場合には、ジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造に結合する位置を表す)。
【0032】
【0033】
上式中、R21は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であってよい。このうち、本形態による化合物の溶媒への溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0034】
R21は、より具体的には、置換若しくは無置換の、ベンゼン、インデン、ナフタレン、アセナフチレン、ビフェニル、ターフェニル、テトラフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ペリレン、ベンゾフルオレン等の芳香族炭化水素から誘導された基;置換若しくは無置換の、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、フラン、チオフェン、オキサゾリン、イソオキサゾリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、イソオキサジアゾール、チアジアゾール、イソチアジアゾール、ピラン、インダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シノリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、イソインドール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、ジアザベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジアザベンゾチオフェン、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾカルバゾール、ヒドロカルバゾール、ナフトベンゾフラン、ナフトベンゾチオフェン、イミダゾピリミジン、イミダゾピリジン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族複素環式化合物から誘導された基;又は、これらの基の2以上が連結した1価の基であってよい。
【0035】
このうち、R21は、置換若しくは無置換のベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラフェニル、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素から誘導された基;ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン等の芳香族複素環式化合物から誘導された基;又は、上記基の2以上が連結した基であってよい。なお、R21が、上記基の2以上が連結した基である場合であって、各基が芳香族炭化水素又は芳香族複素環式化合物から誘導された6員環基を含む場合、その6員環基の結合位置は、メタ位又はパラ位であると好ましい。
【0036】
上式中、a21は0~4の整数であってよく、a22は0~3の整数であってよく、a23は0~2の整数であってよい。a21~a23はそれぞれ、2以上であることが好ましい。また、R21が複数ある場合、複数のR21は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
式(2)に示されているように、Czは、一方で、L12(L12が単結合の場合にはジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造)に結合し、他方で、R1(pが2以上の場合には別のCz)に結合する2価の基である。これらのL12又はジベンゾフラン骨格構造若しくはジベンゾチオフェン骨格構造、及びR1又は別のCz(合せてCzに結合する構造と呼ぶ)とは、Czのいずれの位置に結合してもよい。また、Czが置換基を有する場合には、Czは、Czに結合する構造とその置換基で結合していてもよい。
【0038】
また、Czが複数ある場合(pが2以上の場合)、複数のCzの構造は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。また、Czが複数ある場合、連結基L12(L12が単結合である場合には、ジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造)は、いずれのCzに結合していてもよい。
【0039】
式(2)においては、mは1以上の整数である。mが1の場合、L12に結合している-(Cz)p-R1は、1価の置換基となり、mが2以上の場合には、m価の連結基となり得る。mが2以上の場合、複数のL12(L12が単結合である場合には、ジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造)が-(Cz)p-R1に結合する位置は、互いに同じであってもよく異なっていてもよい。例えば、mが2以上であり、且つpが2以上の場合には、複数のL12(L12が単結合である場合には、ジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造)はそれぞれ、異なるCzに結合していてもよい。
【0040】
式(2)において、Czは、置換若しくは無置換のカルバゾール、置換若しくは無置換のアザカルバゾール、置換若しくは無置換のベンゾカルバゾール、置換若しくは無置換のヒドロカルバゾール、置換若しくは無置換のアクリジン、置換若しくは無置換のインドール、置換若しくは無置換のキサンテン、置換若しくは無置換のフェノキサジン、又は置換若しくは無置換のジフェニルアミンから誘導された基であってよい。
【0041】
Czが、置換又は無置換のカルバゾールから誘導された基である場合、下記式(3)又は(4)で表される基であると好ましい。なお、各式中の*は、Czに結合する構造との結合位置を指す。
【0042】
【0043】
式(3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であってよい。また、R31及びR32は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。中でも、本形態による化合物の溶媒への溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0044】
R31及びR32の具体的な例は、それぞれ独立に、Azにおける置換基R21について説明したものと同様であってよく、好ましい例も同様であってよい。
【0045】
なお、R31及びR32の少なくとも一方が複数である場合には、隣接する置換基同士が結合して新たな環を形成することもできる。この形成される新たな環は、置換又は無置換の、芳香環又は脂環式の環であってよく、複素環であってもよい。また、単環であってもよいし、2以上の環が縮合した縮合環であってもよい。
【0046】
L31は連結基であり、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であってよい。L31も、溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0047】
a31は0~4の整数であってよく、0~2の整数であると好ましい。また、a32も0~4の整数であってよく、0~2の整数であると好ましい。
【0048】
【0049】
式(4)中のR31及びR32は、式(3)におけるR31及びR32と同様であってよい。
【0050】
RNは、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であってよい。このうち、溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。中でも、置換若しくは無置換のベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラフェニル、ナフタレン、フルオレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素から誘導された基、置換若しくは無置換の、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン等の芳香族複素環式化合物から誘導された基、又は、上記基の2以上が連結した基であってよい。
【0051】
a31及びa32も、式(3)におけるa31及びa32と同様である。また、式(4)においても、R31及びR32の少なくとも一方が複数である場合、隣接する置換基同士が結合して新たな環を形成することもできる。
【0052】
Czが、置換又は無置換のジフェニルアミンから誘導された基である場合、下記式(5)又は(6)で表される基であると好ましい。各式中の*は、Czに結合する構造との結合位置を指す。
【0053】
【0054】
式(5)中、R31、R32、及びL31は、式(3)におけるR31、R32、及びL31と同様であってよい。式(5)においては、a31は0~5の整数であってよく、0~2の整数であると好ましい。また、a32も0~5の整数であってよく、0~2の整数であると好ましい。
【0055】
式(3)における場合と同様、式(5)においても、R31及びR32の少なくとも一方が複数である場合、隣接する置換基同士が結合して新たな環を形成することもできる。
【0056】
【0057】
式(6)中、R31、R32、RNは、式(4)におけるR31、R32、及びRNと同様である。a31は0~5の整数であってよく、0~2の整数であると好ましい。また、a32は0~5の整数であってよく、0~2の整数であると好ましい。式(6)においても、R31及びR32の少なくとも一方が複数である場合、隣接する置換基同士が結合して新たな環を形成することもできる。
【0058】
Czが、アザカルバゾールから誘導された基である場合、下記式で表される化合物から誘導された基であると好ましい。
【0059】
【0060】
また、Czが、ベンゾカルバゾールから誘導された基である場合、下記式で表される化合物から誘導された基であると好ましい。
【0061】
【0062】
Czが、ヒドロカルバゾールから誘導された基である場合、下記式で表される化合物から誘導された基であると好ましい。
【0063】
【0064】
上述のように、Czがアザカルバゾール、ベンゾカルバゾール、又はヒドロカルバゾールから誘導された基である場合、Czに結合する構造(上述)が、上述の化合物に結合する位置はどこでもよい。すなわち、Czに結合する構造は、上述の化合物の炭素原子又は窒素原子に結合していてもよい。また、上に例示したアザカルバゾール、ベンゾカルバゾール、又はヒドロカルバゾールは、いずれかの炭素原子又は窒素原子上に置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、Czに隣接する構造は、Czに置換基で結合していてよい。
【0065】
Czが、アクリジンから誘導された基である場合、下記式で表される化合物から誘導された基であると好ましい。
【0066】
【0067】
上式において、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、又は、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の炭素数1~10のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3~10のシクロアルキル基であってよい。このうち、溶解性を向上させる観点から、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0068】
Czに結合する構造が、上記アクリジンに結合する位置はどこでもよい。すなわち、Czに結合する構造は、上記アクリジンに、炭素原子で結合しても窒素原子で結合してもよく、R41及びR42で結合してもよい。また、上記アクリジンが芳香環に置換基を有する場合には、Czに結合する構造は、その置換基でアクリジンと結合していてよい。
【0069】
Czが、インドールから誘導された基である場合、下記式で表される化合物から誘導された基であると好ましい。
【0070】
【0071】
Czに結合する構造が、上記インドールに結合する位置はどこでもよい。Czがベンゾカルバゾール等から誘導された基である場合について上述したものと同様である。
【0072】
Czが、キサンテンから誘導された基である場合、下記式で表される化合物から誘導された基であると好ましい。
【0073】
【0074】
上式において、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、又は、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基、置換若しくは無置換の炭素数1~10のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3~10のシクロアルキル基であってよい。このうち、溶解性を向上させる観点から、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。さらに、置換若しくは無置換の、ベンゼン、ナフタレン、フルオレン、ピリジン、又はピリミジンから誘導された基(すなわち、置換若しくは無置換の、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ピリジニル基、又はピリミジニル基);又は、これらの基の2以上が単結合を介して連結した基であるとより好ましい。
【0075】
Czに結合する構造が、上記キサンテンに結合する位置はどこでもよい。Czがアクリジンから誘導された基である場合について上述したものと同様である。
【0076】
Czが、フェノキサジンから誘導された基である場合、下記式で表される化合物から誘導された基であると好ましい。
【0077】
【0078】
Czに結合する構造が、上記フェノキサジンに結合する位置はどこでもよい。Czがベンゾカルバゾール等から誘導された基である場合について上述したものと同様である。
【0079】
式(2)中、R1は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であってよい。このうち、溶媒への溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0080】
より具体的には、R1は、置換若しくは無置換の、ベンゼン、インデン、ナフタレン、アセナフチレン、ビフェニル、ターフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ペリレン、ベンゾフルオレン等の芳香族炭化水素から誘導された基;置換若しくは無置換の、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、フラン、チオフェン、オキサゾリン、イソオキサゾリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、イソオキサジアゾール、チアジアゾール、イソチアジアゾール、ピラン、インダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シノリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、イソインドール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、ジアザベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジアザベンゾチオフェン、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾカルバゾール、ヒドロカルバゾール、ナフトベンゾフラン、ナフトベンゾチオフェン、イミダゾピリミジン、イミダゾピリジン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族複素環式化合物から誘導された基;又は、これらの基の2以上が連結した1価の基であってよい。
【0081】
上記の基のうち、R1は、置換若しくは無置換の、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラフェニル、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、フルオレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素から誘導された基;置換若しくは無置換の、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、カルバゾール、アザカルバゾール、ベンゾカルバゾール、ヒドロカルバゾール、アクリジン、インドール、キサンテン、フェノキサジン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族複素環式化合物から誘導された基;又は、上記基の2以上が連結した基であってよい。これらのうち、R1は、置換若しくは無置換の、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラフェニル、ナフタレン、フルオレン、ピリジン、又はピリミジンから誘導された基(すなわち、置換若しくは無置換の、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ピリジニル基、又はピリミジニル基)、又は、これらの基の2以上が単結合を介して連結した基であると好ましい。
【0082】
なお、R1が、上記基の2以上が連結した基である場合であって、各基が芳香族炭化水素又は芳香族複素環式化合物から誘導された6員環基を含む場合、その6員環基の結合位置は、メタ位又はパラ位であると好ましい。
【0083】
R2~R7は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であってよい。中でも、溶媒への溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0084】
R2~R7の例は、それぞれ独立に、R1について説明したものと同様であってよい。但し、R2~R7は、それぞれ独立に、隣接する基と結合して新たな環を形成してもよい。ここで、形成される新たな環は、置換又は無置換の、芳香環又は脂環式の環であってよく、複素環であってもよい。また、単環であってもよいし、2以上の環が縮合した縮合環であってもよい。
【0085】
式(2)において、L11は2価の連結基であって、単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であってよい。中でも、ジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造とAzとの近接を避け、溶媒への溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0086】
L11は、より具体的には、置換若しくは無置換の、ベンゼン、インデン、ナフタレン、アセナフチレン、ビフェニル、ターフェニル、テトラフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ペリレン、ベンゾフルオレン等の芳香族炭化水素から誘導された基;置換若しくは無置換の、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、フラン、チオフェン、オキサゾリン、イソオキサゾリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、イソオキサジアゾール、チアジアゾール、イソチアジアゾール、ピラン、インダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シノリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、イソインドール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、ジアザベンゾフラン、アザジベンゾチオフェン、ジアザベンゾチオフェン、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾカルバゾール、ヒドロカルバゾール、ナフトベンゾフラン、ナフトベンゾチオフェン、イミダゾピリミジン、イミダゾピリジン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族複素環式化合物から誘導された基;又は、これらの基の2以上が連結した2価の基であってよい。
【0087】
上記の基のうち、L11は、置換若しくは無置換のベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、テトラフェニル、フルオレン、又はフェナントレンから誘導された基;置換若しくは無置換の、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、カルバゾール、アザカルバゾール、ベンゾカルバゾール、ヒドロカルバゾール、アクリジン、インドール、キサンテン、フェノキサジン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族複素環式化合物から誘導された基;又は、上記基の2以上が連結した基であってよい。これらのうち、R1は、置換若しくは無置換のベンゼン、ナフタレン、フルオレン、ピリジン、又はピリミジンから誘導された基(すなわち、置換若しくは無置換の、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレニレン基、ピリジニレン基、又はピリミジニレン基)、又は、これらの基の2以上が単結合を介して連結した基であると好ましい。
【0088】
なお、L11が、上記基の2以上が連結した基である場合であって、各基が芳香族炭化水素又は芳香族複素環式化合物から誘導された6員環基を含む場合、その6員環基の結合位置は、メタ位又はパラ位であると好ましい。
【0089】
また、L11における置換基は、後述の置換基のいずれであってもよいが、Azについて説明した基とすることもできる。例えば、L11には、置換若しくは無置換の、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、インドール、イソインドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、シンノリン、キノキサリン、キナゾリン、又はイミダゾピリジンから誘導された基が結合していてもよい。
【0090】
式(2)において、L12は、L11について説明したものと同様の基であってよい。L12も、ジベンゾフラン骨格構造又はジベンゾチオフェン骨格構造とCzとの近接を避け、溶媒への溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0091】
なお、L12における置換基は、後述の置換基のいずれであってもよいが、Czについて説明した基とすることができる。例えば、L11は、置換若しくは無置換の、カルバゾール、アザカルバゾール、ベンゾカルバゾール、ヒドロカルバゾール、アクリジン、インドール、キサンテン、フェノキサジン、又はジフェニルアミンから誘導された基が結合していてもよい。
【0092】
L11及びL12の少なくとも一方には、芳香環が含まれていることが好ましく、L11及びL12の両方に芳香環が含まれていることがより好ましい。L11及びL12に含まれる芳香環の数は2以上、好ましくは3以上とすることができる。これにより、本形態による化合物の溶媒への溶解性を向上させることができ、塗布法によって高性能の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造が可能となる。
【0093】
式(1)におけるLは、上述のように、n価の連結基であってよい。Lは、単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であってよい。Lも、溶媒への溶解性を向上させる観点から、芳香環を含む基、すなわち、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は、置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基であると好ましい。
【0094】
Lにおける、置換若しくは無置換の環形成炭素数6~60の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5~60の芳香族複素環基の例としては、L11について説明したものと同様の基であってよい。但し、nが3以上の場合には、Lは、L11について説明した基からさらに水素原子又は置換基を除いて生成する3価以上の基となる。
【0095】
Lが単結合でない場合、Lは、置換若しくは無置換のベンゼン、ナフタレン、フルオレン、ピリジン、又はピリミジンから誘導されたn価の基(nは2~4の整数)、又は、これらの基の2以上が単結合を介して連結した基であると好ましい。また、Lが、上記基の2以上が連結した基である場合であって、各基が芳香族炭化水素又は芳香族複素環式化合物から誘導された6員環基を含む場合、その6員環基の結合位置は、メタ位又はパラ位であると好ましい。
【0096】
本形態による化合物における芳香環の総数は、9~60であってよい。上記総数は、10以上であると好ましく、11以上であるとより好ましく、12以上であるとさらに好ましい。芳香環の総数を9以上とすることで、溶媒への溶解に寄与できる十分な数のフレキシブルな芳香環が確保でき、有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物の溶媒への溶解性を向上させることがでる。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子を塗布法により製造可能にすることができる。
【0097】
なお、本形態による化合物中、芳香環である6員環(例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環等)の個数が、9~60であると好ましく、10以上であると好ましく、11以上であるとより好ましく、12以上であるとさらに好ましい。
【0098】
また、本形態による化合物の分子量は、850~3000であると好ましい。分子量を上記範囲とすることで、塗布法で用いられる溶媒への溶解性を向上させることができ、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層において高性能の塗膜を形成することが可能になる。
【0099】
本明細書において、「置換」、「置換の」、「置換された」等の語は、任意の置換基にて置換されていることを表す。この任意の置換基は、本明細書中で説明されているアルキル基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基等を含む本明細書中で説明されている基のいずれであってもよい。また、置換基は、重水素原子、ハロゲン原子、-CD3、CD2H、-CDH2、-CF3、-CF2H、-CFH2、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、及びこれらの塩、スルホン酸基及びその塩、ホスホン酸及びその塩、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~10のヘテロシクロアルキル基、炭素数3~10のシクロアルケニル基、炭素数1~10のヘテロシクロアルケニル基、炭素数6~60の芳香族炭化水素基、炭素数6~60のアリールオキシ基、炭素数6~60のアリールチオ基、炭素数1~30の芳香族複素環基、1価の非芳香族縮合多環式基、又は、1価の非芳香族縮合複素多環式基であってよい。
【0100】
置換基としての芳香族炭化水素基は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、テトラフェニル基、インデニル基、ナフチル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、又は、これらの基の2個以上を単結合により連結した基であってよい。
【0101】
置換基としての芳香族複素環基は、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、フラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、イソオキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、イソチアジアゾール基、ピラニル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シノリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、イソインドリル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾフラニル基、ジアザベンゾフラニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ジアザベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ナフトベンゾフラニル基、ナフトベンゾチオフェニル基、イミダゾピリミジニル基、イミダゾピリジニル基、若しくはこれらのうち2個以上の芳香族複素環基が縮合した1価の芳香族複素環基、又は、これらの基が単結合により連結した1価の基であってよい。
【0102】
また、置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等や、これらの分岐型アルキル基等が挙げられる。置換基としてのシクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0103】
上述した本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物は、ホスト材料又は電荷輸送材料として用いることができる。より具体的には、当該化合物は、発光層における電子輸送性ホスト材料、又は電子輸送層における電子輸送材料として用いることが好ましい。
【0104】
本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を、発光層における電子輸送性ホスト材料として用いる場合には、発光層におけるホスト材料全体に対する本形態による化合物の割合は、1~99質量%であると好ましく、5~95質量%であるとより好ましく、10~90質量%であるとより好ましい。
【0105】
本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物は、有機層を塗布法で形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造において好適に用いることができる。すなわち、本形態による化合物は、塗布溶液調製用の溶媒への溶解性が高く、高性能の膜を形成することが可能である。よって、本形態による化合物を用いることで、高い発光効率及び長い寿命を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。
【0106】
本明細書において、塗布法は、有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を含む材料を溶媒に溶解して溶液を調製する工程、この溶液を所望の面に塗布することによって塗膜を形成する工程、塗膜に含まれている溶媒を除去する工程を含む成膜方法を指す。
【0107】
塗布法の具体例としては、スピンコート(spin coating)法、キャスティング(casting)法、マイクログラビアコート(micro gravure coating)法、グラビアコート(gravure coating)法、バーコート(bar coating)法、ロールコート(roll coating)法、ワイアーバーコード(wire bar coating)法、ディップコート(dip coating)法、スプレーコート(spray coating)法、スクリーン(screen)印刷法、フレキソ(flexographic)印刷法、オフセット(offset)印刷法、インクジェット(ink jet)印刷法等が挙げられる。
【0108】
塗布法で使用される溶媒は、有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を溶解して塗布液を調製できるものであれば、特に限定されないが、例えば、ケトン、エステル(脂肪族エステル及び芳香族エステルを含む)、ハロゲン化炭化水素、非フッ化アルコール、フッ化アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族炭化水素の置換化合物等の有機溶剤を用いることができる。
【0109】
好適な溶媒としては、例えば、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、エチルベンゼン(ethylbenzene)、ジエチルベンゼン(diethylbenzene)、メチシレン(mesitylene)、プロピルベンゼン(propylbenzene)、シクロヘキシルベンゼン(cyclohexylbenzene)、ジメトキシベンゼン(dimethoxybenzene)、アニソール(anisole)、エトキシトルエン(ethoxy toluene)、フェノキシトルエン(phenoxytoluene)、イソプロピルビフェニル(isopropylbiphenyl)、ジメチルアニソール(dimethylanisole)、酢酸フェニル(phenyl acetate)、酢酸イソプロピル(isopropyl acetate)、プロピオン酸フェニル(phenyl propionic acid)、安息香酸メチル(methyl benzoate)、安息香酸エチル(ethyl benzoate)等の有機溶剤が挙げられる。このうち、製膜性の観点から、エステル系の有機溶剤、好ましくは芳香族エステル、より好ましくは安息香酸メチル及び安息香酸エチルを用いることができる。但し、製膜プロセスの適用性に応じて、いかなる有機溶剤を用いることも可能である。
【0110】
本形態による化合物は、塗布法で使用される上述の有機溶剤に良好に溶解させることができる。例えば、室温(20℃)でのエステル系有機溶剤に対する溶解度は、0.5質量%以上であると好ましく、1質量%以上であるとより好ましい。また、室温での安息香酸メチルに対する溶解度が0.5質量%以上であると好ましい。
【0111】
以下、本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物の具体例を示す。但し、本形態による化合物は、以下の例に限定されるわけではない。
【0112】
単量体、すなわち上式(1)においてn=1である場合の本形態の化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
また、多量体の本形態の具体例、すなわち、上式(1)においてnが2以上である場合の本形態の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
本発明の一形態は、式(1)で表される上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物と溶媒とを含有する液状組成物であってよい。
【0127】
本形態による化合物を含有する組成物を用いて、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法による塗布により有機層の形成(成膜)を行うこともできる。すなわち、本発明の一形態は、式(1)で表される上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を含有するインク組成物であってよい。
【0128】
上記液状組成物又はインク組成物中には、式(1)で表される有機エレクトロルミネッセンス化合物の含有量は、液状組成物又はインク組成物全量に対して0.1~20質量%であってよく、0.5~10質量%であると好ましい。
【0129】
また、本発明の一形態は、式(1)で表される上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を含む薄膜であってよい。この薄膜は、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機層中の発光層、電子輸送層、又は電子注入層であると好ましく、発光層であるとより好ましい。
【0130】
なお、本形態による化合物は、公知の有機合成方法を用いることで合成することが可能である。本形態による重合体の具体的な合成方法は、後述する実施例を参照した当業者であれば、容易に理解することが可能である。
【0131】
本発明の一形態は、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子である。以下、
図1を参照して、本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子を詳細に説明する。
図1は、本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す模式図である。
【0132】
図1に示すように、本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層(HIL)130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層(HTL)140と、正孔輸送層140上に配置された発光層(EML)150と、発光層150上に配置された電子輸送層(ETL)160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層(EIL)170と、電子注入層170上に配置された第2電極180とを備える。
【0133】
本形態による化合物は、例えば、第1電極120と第2電極180との間に配置されたいずれかの有機層中に含まれる。具体的には、本形態による化合物は、電荷輸送性(電子輸送性)ホスト材料としてとして発光層150に含まれることが好ましい。また、当該化合物は、発光層150以外の有機層に含まれていてもよい。例えば、本形態による化合物は、電荷輸送材料として、電子輸送層160又は電子注入層170等に含まれていてもよい。
【0134】
本形態による化合物を含む有機層は、上述の溶液塗布法によって形成することができる。上記塗布法により、本形態による化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、具体的には液状組成物を塗布することで有機層を形成することができる。当該化合物を塗布法で用いる場合には、液状組成物は溶媒、例えば有機溶剤を含んでいてよい。このような溶媒を含む有機エレクトロルミネッセンス素子用の液状組成物としては、例えば、インクジェット印刷法等にて用いられるインク組成物、及びスピンコート法等に使用する成膜用組成液等を例示することができる。有機エレクトロルミネッセンス素子用の液状組成物に含まれる溶媒は、本形態による化合物を溶解することができるものであれば特に限定されない。
【0135】
なお、本形態による化合物を含む有機層は、真空蒸着法で成膜することもできる。また、本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子100の他の周辺層の成膜方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法やその他の成膜方法により成膜されていてよいし、塗布法にて成膜されていてもよい。
【0136】
基板110は、一般的な有機エレクトロルミネッセンス素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板等の半導体基板、又は透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0137】
基板110上には、第1電極120が形成される。第1電極120は、具体的には、陽極であり、金属、合金、又は導電性化合物等のうち仕事関数が大きいものによって形成される。例えば、第1電極120は、透明性及び導電性に優れる酸化インジウムスズ(In2O3-SnO2:ITO)、酸化インジウム亜鉛(In2O3-ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等によって透過型電極として形成されてもよい。また、第1電極120は、上記透明導電膜に対して、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)等を積層することによって反射型電極として形成されてもよい。
【0138】
第1電極120上には、正孔注入層130が形成される。正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする層であり、具体的には、約10nm~約1000nm、より具体的には、約10nm~約100nmの厚さにて形成されてもよい。
【0139】
正孔注入層130は、公知の正孔注入材料にて形成することができる。正孔注入層130を形成する公知の正孔注入材料としては、例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(poly(ether ketone)-containg triphenylamine:TPAPEK)、4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(4-isopropyl-4'-methyldiphenyliodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate:PPBI)、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4'-ジアミン(N,N'-diphenyl-N,N'-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4,4'-diamine:DNTPD)、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)、4,4',4"-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4',4"-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine:m-MTDATA)、N,N'-ジ(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニルベンジジン(N,N'-di(1-naphthyl)-N,N'-diphenylbenzidine:NPB)、4,4',4"-トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4',4"-tris(diphenylamino)triphenylamine:TDATA)、4,4',4"-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4',4"-tris(N,N-2-naphthylphenylamino)triphenylamine:2-TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(polyaniline/dodecylbenzenesulphonic acid)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/poly(4-styrenesulfonate))、及びポリアニリン/10-カンファースルホン酸(polyaniline/10-camphorsulfonic acid)等を挙げることができる。
【0140】
正孔注入層130上には、正孔輸送層140が形成される。正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を備えた層であり、例えば、約10nm~約150nmの厚さにて形成されてもよい。なお、正孔輸送層140は、本形態による化合物にて形成されてもよい。
【0141】
正孔輸送層140は、公知の正孔輸送材料にて形成することができる。公知の正孔輸送材料としては、例えば、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1-bis[(di-4-tolylamino)phenyl]cyclohexane:TAPC)、N-フェニルカルバゾール(N-phenylcarbazole)及びポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)等のカルバゾール(carbazole)誘導体、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4'-ジアミン(N,N'-bis(3-methylphenyl)-N,N'-diphenyl-[1,1-biphenyl]-4,4'-diamine:TPD)、4,4',4"-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4',4"-tris(N-carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、ならびにN,N'-ジ(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニルベンジジン(N,N'-di(1-naphthyl)-N,N'-diphenylbenzidine:NPB)等を挙げることができる。
【0142】
正孔輸送層140上には、発光層150が形成される。発光層150は、蛍光、りん光等によって光を発する層である。発光層150は、本形態による化合物を含み、スピンコーティング法、インクジェット法等の塗布法によって形成される。発光層150は、例えば、約10nm~約60nmの厚さにて形成されてもよい。なお、発光層150に用いられる正孔輸送性ホスト(HT-Host)材料、及びドーパント(dopant)材料には、公知の材料を用いることができる。
【0143】
本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光層150に含まれる発光材料は、三重項励起子からの発光(すなわち、りん光による発光)が可能な発光材料であることが好ましい。このような場合、有機エレクトロルミネッセンス素子100の発光寿命をさらに向上させることができる。
【0144】
発光層150は、正孔輸送性ホスト(HT-Host)材料又は本形態による化合物以外の電子輸送性ホスト(ET-Host)材料として、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(tris(8-quinolinato)aluminium:Alq3)、4,4'-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(4,4'-bis(carbazol-9-yl)biphenyl:CBP)、ポリ(n-ビニルカルバゾール)(poly(n-vinyl carbazole):PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(9,10-di(naphthalene)anthracene:ADN)、4,4',4"-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4',4"-tris(N-carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(1,3,5-tris(N-phenyl-benzimidazol-2-yl)benzene:TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン(3-tert-butyl-9,10-di(naphth-2-yl)anthracene:TBADN)、ジスチリルアリーレン(distyrylarylene:DSA)、4,4'-ビス(9-カルバゾール)-2,2'-ジメチル-ビフェニル(4,4'-bis(9-carbazole)2,2'-dimethyl-bipheny:dmCBP)等を含んでもよい。
【0145】
また、発光層150は、ドーパント材料として、例えば、ペリレン(perlene)及びその誘導体、ルブレン(rubrene)及びその誘導体、クマリン(coumarin)及びその誘導体、4-ジシアノメチレン-2-(p-ジメチルアミノスチリル)-6-メチル-4H-ピラン(4-dicyanomethylene-2-(p-dimethylaminostyryl)-6-methyl-4H-pyran:DCM)及びその誘導体、ビス[2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(bis[2-(4,6-difluorophenyl)pyridinate]picolinate iridium(III):FIrpic)、ビス(1‐フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(bis(1-phenylisoquinoline)(acetylacetonate)iridium(III):Ir(piq)2(acac))、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2-phenylpyridine)iridium(III):Ir(ppy)3)、トリス(2-(3-p-キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)(tris(2-(3-p-xylyl)phenyl)pyridine iridium(III))等のイリジウム(Ir)錯体、オスミウム(Os)錯体、白金錯体等を含んでもよい。
【0146】
発光層150上には、電子輸送層160が形成される。電子輸送層160は、電子を輸送する機能を備えた層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法等を用いて形成される。電子輸送層160は、例えば、約15nm~約50nmの厚さにて形成されてもよい。
【0147】
電子輸送層160は、公知の電子輸送材料にて形成されてもよい。公知の電子輸送材料としては、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(tris(8-quinolinato)aluminium:Alq3)、(8-ヒドロキシキノリノラト)リチウム(リチウムキノレート、(8-hydroxyquinolinato)lithium:Liq)、及び含窒素芳香環を有する化合物等を挙げることができる。含窒素芳香環を有する化合物の具体例としては、例えば、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン(1,3,5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzene)のようなピリジン(pyridine)環を含む化合物、2,4,6-トリス(3'-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(2,4,6-tris(3'-(pyridin-3-yl)biphenyl-3-yl)-1,3,5-triazine)のようなトリアジン(triazine)環を含む化合物、2-(4-(N-フェニルベンゾイニダゾリル-1-イル-フェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン(2-(4-(N-phenylbenzoimidazolyl-1-yl-phenyl)-9,10-dinaphthylanthracene)のようなイミダゾール(imidazole)環を含む化合物、KLET-01、KLET-02、KLET-03、KLET-10、KLET-M1(以上、ケミプロ化成株式会社製)等を挙げることができる。
【0148】
電子輸送層160上には、電子注入層170が形成される。電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層であり、真空蒸着法等を用いて形成される。電子注入層170は、約0.3nm~約9nmの厚さにて形成されてもよい。電子注入層170は、電子注入層170を形成する材料として公知の材料ならば、いずれも使用することができる。例えば、電子注入層170は、(8-ヒドロキシキノリノラト)リチウム((8-hydroxyquinolinato)lithium:Liq)及びフッ化リチウム(LiF)等のリチウム(lithium)化合物、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)、又は酸化バリウム(BaO)等にて形成されてもよい。
【0149】
電子注入層170上には、第2電極180が形成される。第2電極180は、具体的には、陰極であり、金属、合金、又は導電性化合物等のうち仕事関数が小さいものによって形成される。例えば、第2電極180は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の金属、又はアルミニウム-リチウム(Al-Li)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)等の合金で反射型電極として形成されてもよい。また、第2電極180は、上記金属材料の20nm以下の薄膜、酸化インジウムスズ(In2O3-SnO2)及び酸化インジウム亜鉛(In2O3-ZnO)等の透明導電性膜によって透過型電極として形成されてもよい。
【0150】
本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子100は、本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物を含む有機層を有することにより、発光効率及び発光寿命をより向上させることができる。
【0151】
なお、本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子100の積層構造は、上記例示に限定されない。本形態による有機エレクトロルミネッセンス素子100は、他の公知の積層構造にて形成されてもよい。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子100は、正孔注入層130、正孔輸送層140、電子輸送層160及び電子注入層170のうちの1層以上が省略されてもよく、また、追加で他の層を備えていてもよい。また、有機エレクトロルミネッセンス素子100の各層は、それぞれ単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
【0152】
例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子100は、励起子又は正孔が電子輸送層160に拡散することを防止するために、正孔輸送層140と発光層150との間に正孔阻止層をさらに備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、又は、フェナントロリン(phenanthroline)誘導体等によって形成することができる。
【実施例】
【0153】
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0154】
<有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物の合成>
(合成例1)
米国特許出願公開第2016/0111657号明細書に準拠して、本形態による化合物有機エレクトロルミネッセンス素子用化合物であるHost-1を以下の通りに合成した。
【0155】
まず、下記反応式1に従って、中間体Aを合成した。具体的には、アルゴン雰囲気下において、200ml三口フラスコに、3-ブロモ-9H-カルバゾール(3-bromo-9H-carbazole)(12.3g、50mmol)、2-([1,1':3',1''-ターフェニル]-3-イル)-4,4,5,5-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2-([1,1':3',1''-terphenyl]-3-yl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane)(18.0g、50.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(tetrakis(triphenylphosphine)palladium)(1.73g、1.50mmol)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-demethoxyethane)100ml、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(Na2CO3aq)75mlを加え、80℃で8時間、混合物を撹拌した。混合物を室温に放冷した後、セライトを用いて不純物をろ別した。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラムを用いて精製し、中間体Aを得た(14.6g、36.9mmol、収率73.8%)。
【0156】
【0157】
続いて、反応式2に従って、中間体Bを合成し、さらに中間体Cを合成した。具体的には、アルゴン雰囲気下において、300ml三口フラスコに、2-(4'-クロロ-[1,1'-ビフェニル]-3-イル)ジベンゾ[b,d]フラン(2-(4'-chloro-[1,1'-biphenyl]-3-yl)dibenzo[b,d]furan)(3.35g、10.0mmol)、中間体A(4.15g、10.5mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(tris(dibenzylideneacetone)dipalladium)(0.916g、1.00mmol)、テトラフルオロホウ酸トリ-t-ブチルホスフィン(tetrafluoroboric acid tri-t-btylphosphine)(1.16g、4.00mmol)、ナトリウム-t-ブトキシド(sodium-t-butoxide)(1.44g、15.0mmol)、及び脱水キシレン(xylene)30mlを加え、120℃で4時間、混合物を撹拌した。混合物を室温で放冷した後、セライトを用いて不純物をろ別した。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラムを用いて精製し、中間体Bを得た(5.02g、7.03mmol、収率70.3%)。
【0158】
続いて、アルゴン雰囲気下において、300ml三口フラスコに、中間体B(5.00g、7.00mmol)と脱水テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)100mlを加え、溶解し、-78℃まで冷却した。次いで、n-ブチルリチウム、1.6M ヘキサン溶液(n-butyllithium、1.6M Hexane)6.6ml(10.5mmol)を30分かけて滴下した。滴下後、4時間、-78℃を保持したまま撹拌した。次いで、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2-isopropoxy-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane)2.2mlを滴下した。15分反応した後、室温に戻し、5時間撹拌した。その後、イオン交換水を100ml添加し、ジクロロメタンで抽出した後、メタノールで結晶化することで、中間体Cを得た(4.6g、5.48mmol、収率78.2%)。
【0159】
【0160】
得られた中間体Cを用いて、反応式3に従い、Host-1を合成した。具体的には、アルゴン雰囲気下において、100ml三口フラスコに、2-(4'-ブロモ-[1,1'-ビフェニル]-3-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(2-(4'-bromo-[1,1'-biphenyl]-3-yl)-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine)(0.99g、2mmol)、中間体C(1.72g、2.05mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(tetrakis(triphenylphosphine)palladium)(0.07g、0.06mmol)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-demethoxyethane)10m、トルエン(toluene)10ml、及び2M炭酸ナトリウム水溶液(Na2CO3aq)3mlを加え、100℃で8時間、混合物を撹拌した。混合物を室温に放冷した後、セライトを用いて不純物をろ別した。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラムを用いて精製し、Host-1を得た(1.10g、1.0mmol、収率50.0%)。
【0161】
【0162】
なお、Host-1は、LC-MS(liquid chromatography-mass spectrometry)を用いて構造を同定した。具体的には、LC-MSにて測定された化合物H-1の分子量(m/z値)は、1097(M+)であり、Host-1(C81H52N4O)の分子量の計算値である1097と一致することを確認した。また、Host-1中の芳香環の数は14であった。
【0163】
(合成例2)
合成例1と同様にして、Host-2を合成した。但し、合成例2においては、反応式3に代えて、下記反応式4に従って合成を行った。
【0164】
【0165】
Host-2についても、Host-1と同様に構造を同定したところ、Host-2(C87H56N4O)の分子量の計算値である1173と一致することを確認した。また、Host-2中の芳香環の数は15であった。
【0166】
<有機エレクトロルミネッセンス素子の作製>
(実施例1)
第1電極(陽極)としてストライプ(stripe)状の酸化インジウムスズ(ITO)が膜厚150nmにて成膜されたガラス基板上に、PEDOT-PSS(poly(3,4-ethylene dioxythiophene)/poly(4-styrene sulfonate)(Sigma-Aldrich社製)を乾燥膜厚が15nmになるようにスピンコート法にて塗布し、正孔注入層を形成した。
【0167】
次に、P-1とFA-14とをアニソール(溶媒)に溶解し、正孔輸送層用塗布液を調製した。FA-14は正孔輸送層の総質量に対して20質量%とした。上記の正孔注入層上に、正孔輸送層用塗布液をスピンコート法にて成膜し、膜厚125nmの正孔輸送層を形成した。
【0168】
なお、P-1は、国際公開第2011-159872号に記載されたCompound Tの製法に準拠して製造した。P-1の構造式を以下に示す。
【0169】
【化33】
数平均分子量Mn=141,000
重量平均分子量Mw=511,000
【0170】
また、FA-14は、米国特許出願公開第2016/0315259号明細書に記載された化合物であり、定法により合成した。FA-14の構造式を以下に示す。
【0171】
【0172】
次いで、ホスト材料である上記Host-1及びHT-Host-Aと、ドーパント材料であるトリス(2-(3-p-キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)(tris(2-(3-p-xylyl)phenyl)pyridine iridium(III))(TEG)とを安息香酸メチルに溶解し、4質量%の発光層用塗布液を調整した。この際のHost-1とHT-Host-Aとの質量比は5:5であった。また、ドーパント材料のドープ量は、発光層の総質量に対して10質量%になるようにした。
【0173】
次に、上述のように形成した正孔輸送層上に、発光層用塗布液をスピンコート法にて成膜し、膜厚55nmの発光層を形成した。
【0174】
さらに、上記発光層上に、真空蒸着法にて、リチウムキノレート(Liq)及びKLET-03(ケミプロ化成株式会社製)を1:1の比率になるように共蒸着し、厚さ20nmの電子輸送層を形成した。上記電子輸送層上には、リチウムキノレート(Lithium quinolate、Liq)を真空蒸着法にて蒸着し、厚さ3.5nmの電子注入層を電子輸送層上に形成した。さらに、上記電子注入層上に、アルミニウム(Al)を真空蒸着法にて蒸着し、厚さ100nmの電極(陰極)を形成した。以上により、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
【0175】
(実施例2~6)
Host化合物を、表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製、素子特性を評価した。
【0176】
実施例1~5で用いたHT-Host-A及びHT-Host-Bは、正孔輸送性ホスト材料である。各材料の構造式を以下に示す。
【0177】
【0178】
また、上記トリス(2-(3-p-キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)(TEG)の構造式は以下の通りである。
【0179】
【0180】
(比較例1)
発光層用塗布液を調整する際に、ホスト材料として、host-a及びhost-bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。なお、host-aとhost-bとの質量比は5:5とした。
【0181】
【0182】
(比較例2)
発光層用塗布液を調製する際にhost-cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子の作製を試みた。しかし、host-cが、安息香酸メチルに溶解せず、素子作製ができなかった。
【0183】
【0184】
<評価>
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率、及び発光寿命を、以下の方法にて評価した。なお、本実施例では、発光効率は電流効率(cd/A)で評価した。
【0185】
直流定電圧電源(KEYENCE製ソースメータ(source meter))を用いて、各有機エレクトロルミネッセンス素子に対して所定の電圧を加え、有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させた。有機エレクトロルミネッセンス素子の発光を輝度測定装置(Topcom製、SR-3)にて測定しつつ、徐々に電流を増加させ、輝度が6000cd/m2になったところで電流を一定にし、放置した。ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子の面積から単位面積あたりの電流値(電流密度)を計算し、輝度(cd/m2)を電流密度(A/m2)にて除算することで、「電流効率(cd/A)」を算出した。また、輝度測定装置で測定した輝度の値が徐々に低下し、初期輝度の80%になるまでの時間を「発光寿命(LT80、hrs)」とした。
【0186】
評価結果を以下の表1に示す。表1では、電流効率及び発光寿命は、比較例1における測定値を100としたときの相対値として示す。
【0187】
【表1】
※表1中の比は、2種のホスト材料の質量比である。
【0188】
表1より、本発明による化合物を用いた実施例1~5は、溶媒への溶解性に優れ、塗布法への適用に適していることが分かる。また、実施例1~5は、比較例1に対して、発光効率及び発光寿命が向上している。また、比較例2は、従来の低分子蒸着材料の溶解性が低く、塗布法による製膜が困難なことを示している。
【0189】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0190】
100 有機エレクトロルミネッセンス素子
110 基板
120 第1電極
130 正孔注入層
140 正孔輸送層
150 発光層
160 電子輸送層
170 電子注入層
180 第2電極