(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】地盤の凍上・沈下量予測方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/115 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
E02D3/115
(21)【出願番号】P 2018038400
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸司
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-227032(JP,A)
【文献】特開平08-189038(JP,A)
【文献】特開2009-121174(JP,A)
【文献】特開平09-041356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め
施工対象である現場での凍結
状態を予測する所定の対象範囲において、凍土の施工区分毎に2次元のブロック形状の2次元での表面積が面積等価となるように凍土をモデル化するとともに、施工区分毎の平均凍上・沈下率を算出する第一の工程と、
前記施工区分毎のそれぞれの施工時期に応じて各凍土区分を「未凍土範囲」、「凍土範囲」、「解凍土範囲」に分類する第二の工程と、
前記「未凍土範囲」、「凍土範囲」、「解凍土範囲」の分類範囲に応じ、第一の工程で算出した平均凍上・沈下率を選択し、地盤の変位を三次元凍上変位計算法により求める第三の工程とを備えることを特徴とする地盤の凍上・沈下量予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍土工法により地盤を凍結する際の地盤の凍上・沈下量を予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の安定化、防水層の形成などを図る防護工として、耐力壁や止水壁を凍土壁によって形成する凍結工法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、凍結工法においては、地盤の凍結膨張により、凍土周辺の構造物(建物、地下埋設管、トンネルなど)が変位するおそれがある。このため、鉛直方向の変位量を予測することが重要であり、この予測手法として、戸部・秋元(1979)により地表面変位を、ガウス分布曲線を使用した近似式(「三次元凍上変位計算法」と呼ぶ)を用いた手法、有限要素法(FEM)解析を用いた手法が多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に使用されている三次元凍上変位計算法では、凍土をブロック形状にモデル化し、凍上率・沈下率に応じた膨張量・収縮量が地表面に伝達され、地表面変位をガウス分布曲線で表示する。凍土の施工範囲が複数に分かれており、凍結開始時期および終了時期が異なる場合には、任意の施工時期における地表面変位を計算するためには、
図1(a)に示すように、その施工時期に応じた「未凍土範囲」「凍土範囲」「解凍土範囲」の面積を計算した上でブロック形状で面積等化となるようにモデル化し、さらに地質(凍上・沈下率が異なる地質)に応じてブロックを細分化したのちに、三次元凍上変位計算法を適用する。
【0006】
これにより、従来手法で凍結・解凍の施工順序、つまり各凍土範囲の凍結開始時期および終了時期を検討するためには、施工時期に応じて毎回始めからモデル化が必要となり、多大な手間、時間、労力を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、より簡便且つ精度よく、凍土工法により地盤を凍結する際の地盤の凍上・沈下量を予測することを可能にする地盤の凍上・沈下量予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の地盤の凍上・沈下量予測方法は、予め施工対象である現場での凍結状態を予測する所定の対象範囲において、凍土の施工区分毎に2次元のブロック形状の2次元での表面積が面積等価となるように凍土をモデル化するとともに、施工区分毎の平均凍上・沈下率を算出する第一の工程と、前記施工区分毎のそれぞれの施工時期に応じて各凍土区分を「未凍土範囲」、「凍土範囲」、「解凍土範囲」に分類する第二の工程と、前記「未凍土範囲」、「凍土範囲」、「解凍土範囲」の分類範囲に応じ、第一の工程で算出した平均凍上・沈下率を選択し、地盤の変位を三次元凍上変位計算法により求める第三の工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の地盤の凍上・沈下量予測方法においては、予め凍土の施工区分毎にブロック形状で面積等価となるようモデル化し、施工区分毎の平均凍上・沈下率を算出しておくことで、何度でも容易に、凍結・解凍の施工順序を検討することができる。
【0011】
さらに、従来の手法では実際の凍土位置から離れた場所でモデル化するのに対し、本発明の地盤の凍上・沈下量予測方法では、実際の凍土位置でブロック形状にモデル化できることから、予測精度の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来手法(a)と、本発明に係る一実施形態の地盤の凍上・沈下量予測方法(b)のモデルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1を参照し、本発明の一実施形態に係る地盤の凍上・沈下量予測方法について説明する。ここで、本実施形態では、凍結工法を用いて地盤を凍結する際の地盤(凍土)の凍上・沈下量を予測する方法に関するものである。
【0014】
本実施形態の地盤の凍上・沈下量予測方法では、
図1(b)に示すように、第一の工程で、予め凍土の施工区分毎にブロック形状で面積等価となるように凍土をモデル化する。また、施工区分毎の平均凍上・沈下率を算出しておく(未凍土の場合は0%)。
【0015】
第二の工程で、施工時期に応じて各凍土区分を「未凍土範囲」、「凍土範囲」、「解凍土範囲」に分類する。
【0016】
第三の工程で、分類範囲に応じ、第一の工程で算出した平均凍上・沈下率を選択し、地表面変位(地盤の変位、地盤の応力状態)を三次元凍上変位計算法により計算する。
【0017】
本実施形態の地盤の凍上・沈下量予測方法においては、上記の第一から第三の工程の手順で地表面変位(地盤変位)を算出するため、手間のかかる第一の工程の検討を行った後は、凍結・解凍の施工順序を検討する際に、第二、第三の工程を繰り返すだけで簡単に地表面変位を算出することができる。
【0018】
よって、本実施形態の地盤の凍上・沈下量予測方法によれば、より簡便且つ精度よく、凍土工法により地盤を凍結する際の地盤の凍上・沈下量を予測することが可能になる。
【0019】
以上、本発明による地盤の凍上・沈下量予測方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。