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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ラミネート型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/284 20210101AFI20220926BHJP
   H01M 50/298 20210101ALI20220926BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20220926BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20220926BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20220926BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20220926BHJP
   H01M 50/595 20210101ALI20220926BHJP
【FI】
H01M50/284
H01M50/298
H01M50/105
H01M50/588
H01M50/591
H01M50/593
H01M50/595
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018040681
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019160406
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古城 義明
(72)【発明者】
【氏名】土畑 忠義
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001717(JP,A)
【文献】特開2006-093131(JP,A)
【文献】特開2007-335289(JP,A)
【文献】特開2008-159570(JP,A)
【文献】特開2002-260608(JP,A)
【文献】特開2010-118296(JP,A)
【文献】特表2014-522089(JP,A)
【文献】特開2016-171063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素を可撓性を有するラミネートシートで外装した、略矩形の平面視形状を有するラミネートセルと、保護回路部品が実装され且つ外部配線が接続された回路基板とを備えたラミネート型電池であって、
前記ラミネートセルは、前記ラミネートシートが重ね合わされてシールされたシール領域と、前記シール領域に対して少なくとも一方の側に突出した、前記発電要素に対応するエンボスとを備え、
前記シール領域は、前記発電要素に接続された正極タブ及び負極タブが導出された辺に沿ったテラス部と、前記テラス部の両端に接続され且つ前記テラス部が沿う前記辺に対して垂直な方向に沿った第1耳部及び第2耳部とを含み、
前記回路基板は、前記テラス部に対して前記エンボスが突出する側に、前記テラス部に対向して配置されており、
前記第1耳部は、前記回路基板と同じ側に、前記テラス部に対して略直角に、上下方向に略平行になるように折り曲げられており、
前記外部配線は、前記第1耳部の側から前記テラス部の長手方向に平行に、水平方向に導出されており、
前記外部配線と、上下方向に略平行に折り曲げられた前記第1耳部の上端とが、交差するように上下方向に対向し、
前記外部配線の、前記第1耳部の前記上端が上下方向に対向する部分に絶縁材料が設けられており、
前記回路基板と前記テラス部との間に、圧縮変形可能なクッション材が設けられていることを特徴とするラミネート型電池。
【請求項2】
前記絶縁材料は、前記外部配線を構成するケーブルの絶縁被覆を前記第1耳部から保護するように、前記外部配線に設けられている請求項1に記載のラミネート型電池。
【請求項3】
前記絶縁材料は、前記外部配線に外挿された熱収縮チューブである請求項1又は2に記載のラミネート型電池。
【請求項4】
前記回路基板の、前記外部配線が接続された面が、前記テラス部に向いている請求項1~3のいずれか一項に記載のラミネート型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電要素をラミネートシートで外装したラミネートセルと外部配線とを備えたラミネート型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯情報端末や携帯ゲーム機などの電源として利用されている。このような用途では、小型化と大容量化という相反する要求を満たすため、薄板状の発電要素を可撓性を有するラミネートシートで外装した、略矩形の平面視形状を有するラミネート型リチウムイオン二次電池(以下「ラミネートセル」という)が多く使用されている。ラミネートセルを過放電及び過充電から保護するための保護回路部品(安全回路部品)が実装された回路基板が、ラミネートセルに一体化されてラミネート型電池が構成される。
【0003】
ラミネートセルは、発電要素の外側に、ラミネートシートが重ね合わされてシールされたシール領域を備えている。シール領域は、略矩形のラミネートセルの3辺又は4辺に沿っている。シール領域に対して一方の側に、発電要素に対応するエンボスが突出する。ラミネートセルの一辺から、発電要素に接続された正極タブ及び負極タブが導出される。シール領域のうち、正極タブ及び負極タブが導出された辺に沿ったシール領域は、テラス部と呼ばれる。ラミネート型電池を小型化する観点から、回路基板は、テラス部に対向して、エンボスと同じ側に配置されることが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-114475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラミネート型電池と、それが組み込まれる機器との電気的接続を行うために、回路基板に外部配線が接続されることがある。外部配線の先端には、機器との接続を行うためのコネクタが設けられる。機器内での外部配線の取り回しの観点から、外部配線を、回路基板からテラス部の長手方向に沿って引き出すことが要望されることがある。
【0006】
一般に、ラミネートセルの外寸法を小さくするために、シール領域のうち、テラス部の両端につながる耳部はエンボスと同じ側に折り曲げられる。このため、外部配線を回路基板からテラス部の長手方向に沿って引き出す場合、外部配線が、折り曲げられた耳部に衝突する可能性がある。外部配線を構成するケーブルの絶縁被覆は、耳部が衝突することによって傷つけられ、遂にはケーブルの導電性ワイヤと耳部(即ち、ラミネートシート)の基層(例えばアルミニウム)とが短絡する事態が起こりうる。
【0007】
本発明の目的は、外部配線が回路基板からテラス部の長手方向に沿って引き出されたラミネート型電池において、外部配線が耳部によって傷付けられるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のラミネート型電池は、発電要素を可撓性を有するラミネートシートで外装した、略矩形の平面視形状を有するラミネートセルと、保護回路部品が実装され且つ外部配線が接続された回路基板とを備える。前記ラミネートセルは、前記ラミネートシートが重ね合わされてシールされたシール領域と、前記シール領域に対して少なくとも一方の側に突出した、前記発電要素に対応するエンボスとを備える。前記シール領域は、前記発電要素に接続された正極タブ及び負極タブが導出された辺に沿ったテラス部と、前記テラス部の両端に接続され且つ前記テラス部が沿う前記辺に対して垂直な方向に沿った第1耳部及び第2耳部とを含む。前記回路基板は、前記テラス部に対して前記エンボスが突出する側に、前記テラス部に対向して配置されている。前記第1耳部は、前記回路基板と同じ側に、前記テラス部に対して略直角に、上下方向に略平行になるように折り曲げられている。前記外部配線は、前記第1耳部の側から前記テラス部の長手方向に平行に、水平方向に導出されている。前記外部配線と、上下方向に略平行に折り曲げられた前記第1耳部の上端とが、交差するように上下方向に対向している。前記外部配線の、前記第1耳部の前記上端が上下方向に対向する部分に絶縁材料が設けられている。前記回路基板と前記テラス部との間に、圧縮変形可能なクッション材が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外部配線に設けられた絶縁材料が、第1耳部が外部配線の絶縁被覆に直接接触しないように、絶縁被覆を第1耳部から保護する。従って、外部配線が第1耳部によって傷付けられるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態1にかかるラミネート型電池の分解斜視図である。
図2図2Aは、本発明の実施形態1にかかるラミネート型電池を構成するラミネートセルの斜視図である。図2Bは、図2Aのラミネートセルの、対向する2辺に沿ったシール領域(耳部)を折り曲げた状態を示した斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態1にかかるラミネート型電池を製造する一過程を示した斜視図である。
図4図4Aは、本発明の実施形態1にかかるラミネート型電池の斜視図である。図4Bは、図4Aの矢印4Bに沿って見たラミネート型電池の側面図である。
図5図5Aは、本発明の実施形態2,3にかかるラミネート型電池を構成するラミネートセルの斜視図である。図5Bは、図5Aの矢印5Bに沿って見た本発明の実施形態2,3にかかるラミネートセルの側面図である。
図6図6Aは、本発明の実施形態2にかかるラミネート型電池を構成するラミネートセルの、対向する2辺に沿ったシール領域(耳部)を折り曲げた状態を示した斜視図である。図6Bは、図6Aの矢印6Bに沿って見た本発明の実施形態2にかかるラミネートセルの側面図である。
図7図7Aは、本発明の実施形態2にかかるラミネート型電池の斜視図である。図7Bは、図7Aの矢印7Bに沿って見たラミネート型電池の側面図である。
図8図8Aは、本発明の実施形態3にかかるラミネート型電池を構成するラミネートセルの、対向する2辺に沿ったシール領域(耳部)を折り曲げた状態を示した斜視図である。図8Bは、図8Aの矢印8Bに沿って見た本発明の実施形態3にかかるラミネートセルの側面図である。
図9図9Aは、本発明の実施形態3にかかるラミネート型電池の斜視図である。図9Bは、図9Aの矢印9Bに沿って見たラミネート型電池の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の本発明のラミネート型電池において、前記絶縁材料は、前記外部配線を構成するケーブルの絶縁被覆を前記第1耳部から保護するように、前記外部配線に設けられていてもよい。これにより、外部配線が第1耳部によって傷付けられるのをより確実に防止することができる。
【0012】
前記絶縁材料は、前記外部配線に外挿された熱収縮チューブであってもよい。これにより、絶縁材料を外部配線に容易且つしっかりと設けることができる。
【0013】
前記回路基板の、前記外部配線が接続された面が、前記テラス部に向いていてもよい。これにより、厚さ方向の両面が、突起がない、実質的に平坦面であるラミネート型電池を提供することができる。
【0014】
前記回路基板と前記テラス部との間に、圧縮変形可能なクッション材が設けられていてもよい。これにより、回路基板がテラス部に異常に接近するのを防止できる。これは、第1耳部やテラス部を構成するラミネートシートが損傷するのを防止するのに有利である。
【0015】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるラミネート型電池(以下、単に「電池」という)1の分解斜視図である。電池1は、ラミネートセル(以下、単に「セル」という)10a及び回路基板20を備える。
【0017】
図2Aは、セル10aの斜視図である。セル10aは、略矩形の平面視形状を有し、当該略矩形の縦横寸法に比べて厚みが薄い薄板形状を有する。このセル10aは、ラミネートシート13からなる外装内に、略矩形の平面視形状を有する薄板状の発電要素(図示せず)が電解液とともに封入されたものである。発電要素は、正極集電体の所定領域の両面に正極活物質を含む正極合剤層が塗布形成された正極と、負極集電体の所定領域の両面に負極活物質を含む負極合剤層が塗布形成された負極とが、セパレータを介して交互に積層されてなる電極積層体である。電池の種類は特に制限はないが、二次電池、中でもリチウムイオン二次電池が好ましい。
【0018】
ラミネートシート13は、発電要素に比べて薄く、且つ、可撓性を有している。ラミネートシート13は、例えば、アルミニウム等からなる基層の、発電要素に対向する側の面に熱融着性樹脂層(例えば変性ポリオレフィン層)が積層された可撓性を有する多層シートであってもよい。1枚の矩形のラミネートシート13が、発電要素を挟むように二つ折りにされ、発電要素の外側で重ね合わされてヒートシール法などによりシールされている。ラミネートシート13がシールされたシール領域14a,14b,14cは、略矩形のセル10aの3辺に沿っている。シール領域14a,14b,14cは共通する一平面に沿っている。発電要素に対応する略矩形のエンボス12が、シール領域14a,14b,14cに対して一方の側に突出している。セル10aのように、シール領域14a,14b,14cに対して一方の側のみにエンボス12が突出したセルは、一般に、「片エンボス型」、または、ラミネートシート13の成形形状に着目して「片絞り型」と呼ばれる。本発明では、説明の便宜のために、片エンボス型のセル10aにおいて、エンボス12が突出した側の面をセル10aの「正面」と呼び、これと反対側の面をセル10aの「裏面」と呼ぶ。また、正面と裏面とを結ぶ方向を「厚さ方向」又は「上下方向」と呼ぶ。シール領域14a,14b,14cに共通する平面に平行な方向を「水平方向」と呼ぶ。
【0019】
シール領域14aから、正極タブ11p及び負極タブ11nが導出されている。正極タブ11p及び負極タブ11nは、短冊形状を有し、シール領域14aの長手方向に対して直交する方向(即ち、シール領域14aの両端につながる一対のシール領域14b,14cと平行な方向)に沿って延びている。正極タブ11pは、例えばアルミニウムの薄板からなり、発電要素を構成する複数の正極集電体(図示せず)と電気的に接続されている。また、負極タブ11nは、例えばニッケルの薄板等からなり、発電要素を構成する複数の負極集電体(図示せず)と電気的に接続されている。
【0020】
本発明では、正極タブ11p及び負極タブ11nが導出されたシール領域14aを「テラス部」という。また、テラス部14aの両端に接続されたシール領域14b,14cを「耳部」という。第1耳部14b及び第2耳部14cは、テラス部14aが沿うセル10aの辺に対して垂直な辺に沿って延びる。セル10aの外寸法を小さくするために、図2Bに示すように、耳部14b,14cは、エンボス12と同じ側にテラス部14aに対して略直角に折り曲げられる。折り曲げられた耳部14b,14cは、エンボス12の側面に、両面粘着テープ等を用いて固定される。テラス部14aは、エンボス12と耳部14b,14cとによってその三方向が囲まれる。
【0021】
図1に戻り、回路基板20は、細長い薄板状物であり、テラス部14aと略同じかこれより短い長手方向寸法を有する。回路基板20の第1面には、FET素子等の電子部品からなる保護回路部品(安全回路部品)22が実装されており、任意に充電回路が形成されていてもよい。本実施形態では、2つの保護回路部品22が実装されているが、保護回路部品22の数は、これに限定されず任意である。回路基板20の第1面には、さらに、正極入力端子21p及び負極入力端子21nが設けられている。
【0022】
外部配線24が、回路基板20の第1面に設けられた端子(図1では見えない)に接続されている。封止部24bが、回路基板20の第1面に設けられた端子(図示せず)と外部配線24との電気的接続部を封止し絶縁している。封止部24bは、公知のグルー(glue)や、絶縁性を有する樹脂や接着剤からなる。外部配線24は、回路基板20の長手方向の一方の側(第1耳部14b側)の端の近傍に接続され、回路基板20からテラス部14a(または回路基板20)の長手方向に平行に導出されている。外部配線24の先端には、コネクタ24aが設けられている。コネクタ24aは、電池1が組み込まれる機器に設けられたコネクタ(機器側コネクタ)に接続される。外部配線24を介して、電池1に対して充放電を行うことができる。外部配線24は、可撓性を有する複数本(本実施形態1では3本)のケーブルの集合体である。外部配線24を構成する各ケーブルは、銅などの導電性を有するワイヤ(導電性ワイヤ)と、当該導電性ワイヤを被覆するポリウレタンなどの絶縁性材料(絶縁被覆)とを備え、被覆線とも呼ばれる。本実施形態の外部配線24は、複数のケーブルの絶縁被覆が互いに融着して連結されたフラットケーブルである。複数本のケーブルの種別は特に制限はないが、例えば、正極ケーブル、負極ケーブル、ラミネートセル10aの温度検出を行うための温度検出用ケーブル等を含んでいてもよい。外部配線24を構成するケーブルの数や、各ケーブルの機能は、本実施形態に限定されず、任意に変更しうる。コネクタ24aは省略されてもよい。
【0023】
外部配線24の回路基板20近傍の位置に、熱収縮チューブ25が装着されている。熱収縮チューブ25は、加熱すると収縮する特性(熱収縮性)を有する材料からなるチューブ状(筒状)物である。熱収縮チューブ25は、更に絶縁性を有する。熱収縮チューブ25の材料としては、制限はないが、ポリオレフィン、フッ素系ポリマー、熱可塑性エラストマー、塩化ビニール、シリコンゴムなどの熱収縮性と絶縁性とを有する公知の材料を用いることができる。チューブ25に外部配線24を挿入した状態でチューブ25を加熱すると、チューブ25は縮径するように収縮し、外部配線24にしっかりと密着し固定される。好ましくは、外部配線24を構成する全てのケーブルに1つのチューブ25が外挿される。
【0024】
電池1は、更にブレーカー27を備える。ブレーカー27は、異常過熱時に電流を遮断する電流遮断装置として機能する薄板状の素子本体部を含む。素子本体部から、互いに反対向きに、第1リード27a及び第2リード27bが導出されている。第1リード27a及び第2リード27bは、導電性を有する金属からなる短冊状の薄板である。第1リード27aには、セル10aの正極タブ11pが接続される。第2リード27bは、導電タブ28を介して、回路基板20の第1面に設けられた正極入力端子21pに接続される。導電タブ28は、導電性を有する金属(例えばニッケル)からなる短冊状の薄板である。
【0025】
セル10aの負極タブ11nは、回路基板20の第1面に設けられた負極入力端子21nに接続される。
【0026】
テラス部14aと回路基板20との間に2つのクッション材26a,26bが設けられる。クッション材26a,26bは、略直方体形状を有し、圧縮変形可能な弾性体からなる。クッション材26a,26bとしては、制限はないが、フォーム材やスポンジなどのように、外力を加えると容易に変形し、外力を取り除くと初期形状に復元する材料を用いうる。クッション材26a,26bは、好ましくは絶縁性を有する。クッション材26a,26bは、例えばウレタンフォームやポリエチレンスポンジなどであってもよく、一実施例として株式会社ロジャースイノアック製の「PORON(登録商業)」を例示できる。好ましくは、クッション材26a,26bの上下面には両面粘着テープまたは接着剤が付与される。
【0027】
図3に、電池1を製造する一過程を示す。ブレーカー27がテラス部14aのエンボス12が突出する側と同じ側の面に載置されている。ブレーカー27をテラス部14aに固定する方法は、制限されないが、例えば両面粘着テープまたは接着剤を用いることができる。正極タブ11pは、略「U」字状に折り曲げられている。負極タブ11n及び導電タブ28は、セル10aと回路基板20との間で、互いに平行に延びている。クッション材26a,26bがテラス部14aのエンボス12が突出する側と同じ側の面に取り付けられている。第1クッション材26aは第1耳部14bの近傍に配置され、第2クッション材26bは、第2耳部14cの近傍に配置されている。
【0028】
図3の状態から、回路基板20の、保護回路部品22が実装され且つ外部配線24が接続された第1面がテラス部14aに向くようにして、回路基板20をテラス部14aに対向させる。負極タブ11n及び導電タブ28は、テラス部14aの長手方向に沿って見たとき略「U」字状になるように、折り曲げまたは湾曲される。
【0029】
図4Aは、回路基板20がテラス部14aに重ね合わされた、電池1の斜視図である。回路基板20の第2面(保護回路部品22が実装され且つ外部配線24が接続された第1面とは反対側の面)は、セル10aのエンボス12の頂面と厚さ方向において略同じ位置にある。回路基板20の平坦な第2面と、エンボス12の頂面とは、共通する一平面を構成する。セル10a及び回路基板20を含む電池本体1aの上下方向の両面は、実質的に突起がない略平坦面である。電池本体1aを、必要に応じて外装シート(図示せず)で包装してもよい。外装シートは、制限されないが、例えば絶縁性を有する樹脂又は紙などからなる。
【0030】
図4Bは、図4Aの矢印4Bに沿って見た電池1の側面図である。外部配線24が、回路基板20の第1面(テラス部14aに対向する面)に接続されている。外部配線24は、平面視形状が細長い矩形である回路基板20の長手方向の一方の側(第1耳部14b側)の端の近傍に接続され、第1耳部14bの側から、テラス部14a(または回路基板20)の長手方向に平行に導出されている。これは、電池1が組み込まれる機器内での外部配線24の取り回しの簡単化や当該機器の小型化に有利でありうる。
【0031】
外部配線24は、回路基板20から第1耳部14bを越えて水平方向に導出されている。第1耳部14bは、上下方向に略平行になるようにテラス部14aに対して折り曲げられている。外部配線24は、テラス部14aの長手方向に平行に延び、第1耳部14bは、テラス部14aの長手方向に垂直に延びる。従って、外部配線24と第1耳部14bとは略垂直である。外部配線24と、第1耳部14bの先端(上端)とが、交差するように上下方向に対向している。外部配線24の第1耳部14bが対向する部分に、外部配線24を第1耳部14bから保護するように熱収縮チューブ25が装着されている。
【0032】
ラミネートシート13(図2A参照)は、大面積のラミネートシート原反を所定形状に切断して得られる。第1耳部14bの先端は、ラミネートシート原反を切断することによって形成された切断端である。このため第1耳部14bの先端には、ラミネートシート13を構成する基層(例えばアルミニウム)が露出している可能性がある。
【0033】
本実施形態1とは異なり、外部配線24に熱収縮チューブ25が装着されていない場合、第1耳部14bの先端が外部配線24に直接接触する可能性がある。これは、例えば落下等による衝撃が電池1に加えられた場合や、厚さ方向の圧縮力が電池1(特に回路基板20)に加えられた場合に顕著に起こりうる。第1耳部14bの先端は外部配線24を構成するケーブルの絶縁被覆を傷付け、導電性ワイヤを露出させる。そして、遂には、外部配線24の導電性ワイヤと第1耳部14b(即ちラミネートシート13)の基層とが短絡するという事故が起こる可能性がある。
【0034】
本実施形態1では、外部配線24の第1耳部14bが対向する部分に熱収縮チューブ25が装着されている。熱収縮チューブ25は、第1耳部14bの先端が外部配線24を構成するケーブルの絶縁被覆に直接接触しないように、第1耳部14bから絶縁被覆を保護する。このため、外部配線24の絶縁被覆が第1耳部14bによって傷付けられるのを防止することができる。熱収縮チューブ25は絶縁性を有するので、第1耳部14b(即ちラミネートシート13)の基層が熱収縮チューブ25に接触しても短絡は生じない。従って、本実施形態1の電池1は、外部配線24とラミネートシート13との短絡事故が発生する可能性が低減されており、高い安全性を有している。
【0035】
好ましくは、熱収縮チューブ25は、第1耳部14bが対向する部分のみに設けられる。これは、外部配線24の全長にわたって熱収縮チューブ25を装着する場合比べて、外部配線24の可撓性や小さな外径を維持したままで、第1耳部14bによる外部配線24の損傷を効果的に防止するのに有利である。
【0036】
熱収縮チューブ25は、加熱するだけで外部配線24にしっかりと装着することができるので、外部配線24に熱収縮チューブ25を設けることによって電池1の製造が煩雑になることほとんどはない。外部配線24を構成する複数のケーブルを一括して1つの熱収縮チューブ25に挿入すれば、熱収縮チューブ25を装着する作業は容易である。
【0037】
クッション材26a,26bが、回路基板20とテラス部14aとの間に介在している。クッション材26a,26bは以下の作用を有する。
【0038】
第1に、クッション材26a,26bは、回路基板20がテラス部14aに異常に接近するのを防止する。本実施形態1と異なり、クッション材26a,26bが設けられていない場合には、例えば、電池1の製造過程において回路基板20がテラス部14aに対向するように負極タブ11n及び導電タブ28を折り曲げたときや、完成した電池1に落下等による衝撃が加えられたときに、回路基板20がテラス部14aに異常に接近することがある。これは、外部配線24(特にその熱収縮チューブ25)と第1耳部14bとの衝突や、回路基板20(回路基板20に実装された実装部品を含む)とテラス部14aとの衝突を生じさせる。これにより、第1耳部14bやテラス部14aを構成するラミネートシート13が損傷し、ラミネートシート13の破れによる電解液の漏出や水分のセル10a内への侵入、セル10a内での短絡が生じうる。また、第1耳部14bによって、熱収縮チューブ25、更には外部配線24の絶縁被覆が損傷されうる。クッション材26a,26bが設けられた本実施形態1では、上記の衝突を回避することができる。
【0039】
第2に、クッション材26a,26bは、電池1の製造を容易にする。クッション材26a,26bの上下面に両面粘着テープまたは接着剤を付与した場合、一旦、図4A及び図4Bのようにクッション材26a,26bを介して回路基板20をテラス部14aに重ね合わせると、クッション材26a,26bを介して回路基板20とテラス部14aとが連結される。クッション材26a,26bは、回路基板20をテラス部14aから離間させようとする負極タブ11n及び導電タブ28の弾性反発力に対抗し、回路基板20がテラス部14aから離間するをの防ぐ。このため、この後の電池1の製造工程(例えば電池本体1aを外装シートで覆う工程)での電池1の取り扱い性が向上し、電池1の製造が容易になる。
【0040】
好ましくは、第1クッション材26aは、外部配線24が第1耳部14b側に垂れ下がることがないように、外部配線24を回路基板20に向かって押し付ける。これは、外部配線24(特にその熱収縮チューブ25)が第1耳部14bの先端に衝突するのを防止するのに有利である。外部配線24と第1耳部14bとの衝突は、上述したラミネートシート13の損傷や、熱収縮チューブ25及び外部配線24の絶縁被覆の損傷を生じさせうる。第1クッション材26aは、このような事態が生じるのを防止するのに有利である。
【0041】
2つのクッション材26a,26bは、ブレーカー27に対向しないように配置されている。このため、クッション材26a,26bがブレーカー27に外力を加えることはない。これは、ブレーカー27の動作の信頼性を確保するのに有利である。
【0042】
なお、電池1に設けられるクッション材の数や配置は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0043】
(実施形態2)
図5Aは、本発明の実施形態2にかかるラミネート型電池2(後述する図7A図7B参照)を構成するラミネートセル(以下、単に「セル」という)10bの斜視図である。図5Bは、図5Aの矢印5Bに沿って見たセル10bの側面図である。本実施形態2のセル10bでは、発電要素に対応する略矩形のエンボス12a,12bが、シール領域14a,14b,14cに対して厚さ方向の両側に突出している。シール領域14a,14b,14cに対して一方の側に突出した第1エンボス12aの突出高さと、他方の側に突出した第2エンボス12bの突出高さとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。セル10bのように、シール領域14a,14b,14cに対して両側にエンボス12a,12bが突出したセルは、一般に、「両エンボス型」、または、ラミネートシート13の成形形状に着目して「両絞り型」と呼ばれる。第1エンボス12aと第2エンボス12bとを結ぶ方向を「厚さ方向」又は「上下方向」と呼ぶ。
【0044】
図6A及び図6Bに示すように、実施形態1と同様に、セル10bの外寸法を小さくするために、耳部14b,14cは、第1エンボス12aと同じ側にテラス部14aに対して略直角に折り曲げられる。折り曲げられた耳部14b,14cは、第1エンボス12aの側面に、両面粘着テープ等を用いて固定される。テラス部14aは、第1エンボス12aと耳部14b,14cとによってその三方向が囲まれる。
【0045】
図7Aは、ラミネート型電池(以下、単に「電池」という)2の第1エンボス12a側)から見た斜視図である。図7Bは、図7Aの矢印7Bに沿って見た電池2の側面図である。回路基板20は、テラス部14aに対して第1エンボス12aが突出する側に、テラス部14aに対向して配置されている。外部配線24は、回路基板20の長手方向の一方の側(第1耳部14b側)の端の近傍に接続され、第1耳部14bの側から、テラス部14a(または回路基板20)の長手方向に平行に導出されている。外部配線24の第1耳部14bが対向する部分に熱収縮チューブ25が装着されている。ブレーカー27は、テラス部14aの、第1エンボス12aが突出する側と同じ側の面に設けられている。
【0046】
本実施形態2の電池2は、耳部14b,14cが第1エンボス12aと同じ側に折り曲げられた両エンボス型のセル10bを用いる点を除いて、実施形態1の電池1(図4A図4B参照)と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態2にも適宜適用される。
【0047】
(実施形態3)
図8Aは、本発明の実施形態3にかかるラミネート型電池3(後述する図9A図9B参照)を構成するラミネートセル(以下、単に「セル」という)10cの斜視図である。図8Bは、図8Aの矢印8Bに沿って見たセル10cの側面図である。セル10cは、実施形態2のセル10bと同様に、両エンボス型セル(図5A図5B参照)である。但し、実施形態2と異なり、本実施形態3では、第1耳部14bは、第1エンボス12aと同じ側にテラス部14aに対して略直角に折り曲げられ、第2耳部14cは、第2エンボス12bと同じ側にテラス部14aに対して略直角に折り曲げられている。折り曲げられた第1及び第2耳部14b,14cは、第1及び第2エンボス12a,12bの側面に、両面粘着テープ等を用いてそれぞれ固定される。テラス部14aは、第1エンボス12aと第1耳部14bとによってその二方向が囲まれ、また、第2エンボス12bと第2耳部14cとによってその二方向が囲まれる。
【0048】
図9Aは、ラミネート型電池(以下、単に「電池」という)3の第1エンボス12a側)から見た斜視図である。図9Bは、図9Aの矢印9Bに沿って見た電池3の側面図である。実施形態2の電池2と同様に、回路基板20は、テラス部14aに対して第1エンボス12aが突出する側に、テラス部14aに対向して配置されている。外部配線24は、回路基板20の長手方向の一方の側(第1耳部14b側)の端の近傍に接続され、第1耳部14bの側から、テラス部14a(または回路基板20)の長手方向に平行に導出されている。外部配線24の第1耳部14bが対向する部分に熱収縮チューブ25が装着されている。ブレーカー27は、テラス部14aの、第1エンボス12aが突出する側と同じ側の面に設けられている。
【0049】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態2と同じである。実施形態2の説明が、本実施形態3にも適宜適用される。
【0050】
上記の実施形態1~3は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態1~3に限定されず、適宜変更することができる。
【0051】
上記の実施形態1~3では、外部配線24の第1耳部14bが対向する部分に、絶縁材料としての熱収縮チューブ25が設けられていたが、本発明では、熱収縮チューブ25以外の任意の絶縁材料が外部配線24の第1耳部14bが対向する部分に設けられていてもよい。例えば、絶縁材料が、絶縁性を有する樹脂からなる成型品であってもよい。成型品は、外部配線24を構成する複数のケーブルを覆うように外部配線24に装着することができる。成型品は、熱収縮チューブ25に比べて寸法安定性に優れる。このため、成型品から第1耳部14bまでの距離の管理が容易である。あるいは、絶縁材料が、絶縁性と可撓性とを有する基材層の片面に粘着剤が塗布された絶縁性粘着テープであってもよい。この場合、絶縁性粘着テープを、外部配線24に巻回して装着することができる。あるいは、絶縁材料が、絶縁性接着剤であってもよい。この場合、絶縁性接着剤を外部配線24の外面に塗布し硬化させることができる。絶縁材料は、外部配線24を構成する複数のケーブルの各々に対して独立して設けてもよいが、複数のケーブルが分離しないように複数のケーブルの全体に対して一体的に設けることが好ましい。
【0052】
実施形態1~3では、2つの耳部14b,14cのうち負極タブ11nに近い耳部14bを「第1耳部」と称して、外部配線24を第1耳部14bの側から導出した。しかしながら、外部配線24が導出される側の「第1耳部」は、耳部14b,14cのうちいずれであってもよい。また、正極タブ11p及び負極タブ11nの配置が上記の実施形態1~3とは逆であってもよい。本発明では、外部配線24が導出される側の耳部(14aまたは14b)が、テラス部14aに対して外部配線24と同じ側に略直角に折り曲げられる。
【0053】
回路基板20上の実装部品(保護回路部品22、封止部24b)、正極入力端子21p、負極入力端子21n等の配置は任意に変更しうる。保護回路部品22の数も制限はない。回路基板20上にこれら以外の部品が設けられていてもよい。
【0054】
セルの正極タブ11p及び負極タブ11nと回路基板20との間の接続経路は、上記の実施形態1~3に限定されない。例えば、正極タブ11pとブレーカー27の第1リード27aとが、別の導電性タブを介して接続されてもよい。ブレーカー27は、負極タブ11nと負極入力端子21nとの間に設けられてもよい。
【0055】
ブレーカー27は、テラス部14aに設けられている必要はない。例えば、ブレーカー27が、回路基板20(好ましくは、回路基板20の保護回路部品22が実装されるのと同じ面)に設けられていてもよい。
【0056】
クッション材26a,26bの位置、数、サイズ等は任意に設定することができる。本発明では、クッション材を省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の利用分野は、制限はないが、高い体積エネルギー密度が要求される携帯型電子機器に内蔵される電池として、広範囲に利用することができる。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ノート型パソコン、電子辞書、電子書籍、携帯ゲーム機などの電子機器に内蔵される小型大容量の電池として好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,2,3 ラミネート型電池
10a,10b,10c ラミネートセル
11p 正極タブ
11n 負極タブ
12,12a,12b エンボス
13 ラミネートシート
14a テラス部(シール領域)
14b 第1耳部(シール領域)
14c 第2耳部(シール領域)
20 回路基板
22 保護回路部品
24 外部配線
25 熱収縮チューブ(絶縁材料)
26a,26b クッション材
27 ブレーカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9