(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】便座ユニット
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20220926BHJP
A47K 13/12 20060101ALI20220926BHJP
A47K 13/24 20060101ALI20220926BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
E03D9/08 A
A47K13/12
A47K13/24
E03D11/02 Z
E03D9/08 Z
(21)【出願番号】P 2018063356
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕志
(72)【発明者】
【氏名】五味田 愼一
(72)【発明者】
【氏名】渡 光次郎
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-068132(JP,A)
【文献】特開2004-353201(JP,A)
【文献】特開2002-054216(JP,A)
【文献】実開昭63-045885(JP,U)
【文献】実開昭52-028955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
A47K 13/12
A47K 13/24
E03D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体に設置される機能装置と、
前記機能装置に回動可能に取り付けられる便座と、を備え、
前記機能装置は、前記便座とは別体に設けられるとともに、前記便器本体に回動可能に取り付けられるケーシングを有し、
前記便座は、前記ケーシングとは独立して、その前端側を後方に向けて前記便器本体に対して回動可能であ
り、
前記ケーシングは、前記便器本体に対して前記便座が起立する起立位置にあるとき、前記便座とは独立して前記便器本体に対して回動可能で
ある便座ユニット。
【請求項2】
前記便座の裏面又は前記便器本体の便鉢部の内面を洗浄するための洗浄液を吐出可能な吐出部を備え、
前記吐出部は、前記ケーシングに設けられる請求項
1に記載の便座ユニット。
【請求項3】
前記ケーシングは、ヒンジ機構を用いて、前記便器本体に回動可能に取り付けられ、
前記ヒンジ機構の内部には、前記ケーシングの外部から内部に洗浄液を供給するための給液路の一部が設けられる請求項
2に記載の便座ユニット。
【請求項4】
前記ヒンジ機構の構成部品には、前記給液路の一部を形成する液路形成面が設けられる請求項
3に記載の便座ユニット。
【請求項5】
便器本体に設置される機能装置と、
前記機能装置に回動可能に取り付けられる便座と、を備え、
前記機能装置は、前記便座とは別体に設けられるとともに、前記便器本体に回動可能に取り付けられるケーシングを有し、
前記便座は、前記ケーシングとは独立して、その前端側を後方に向けて前記便器本体に対して回動可能であ
り、
前記便座は、前記便器本体に第1ヒンジ軸を介して前記第1ヒンジ軸周りに回動可能に連結され、
前記ケーシングは、前記便器本体に第2ヒンジ軸を介して前記第2ヒンジ軸周りに回動可能に連結され、
前記第2ヒンジ軸は、前記第1ヒンジ軸より前記便器本体の前方に配置され
る便座ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座ユニット及び便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便座の裏面に吐出部(吐水手段)から洗浄液を吐出することで、便座の裏面を洗浄可能な便器装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の便器装置では、便器本体に機能装置が設置され、機能装置は、便座とは別体に設けられるケーシングを有している。本発明者は、特許文献1の開示技術を検討したところ、便器本体の清掃性を良好にする観点から、改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本発明のある態様は、このような課題に鑑みてなされ、その目的の1つは、便座の裏面や便器本体の便鉢部の内面の洗浄を実現するにあたり、便器本体の清掃性を良好にできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本発明の第1態様は便座ユニットである。第1態様の便座ユニットは、便器本体に設置される機能装置と、前記機能装置に回動可能に取り付けられる便座と、を備え、前記機能装置は、前記便座とは別体に設けられるとともに、前記便器本体に回動可能に取り付けられるケーシングを有する。
【0007】
第1態様によれば、ケーシングを回動させることで、便器本体の上面部の一部を露出させることができる。また、便器本体の上面部を露出させたとき、その露出箇所の上側にケーシングの大部分が位置しなくなる。これに伴い、その露出箇所の視認性が良好となり、その露出箇所の清掃性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1実施形態の便器装置の一部の側面断面図である。
【
図3】第1実施形態の便座ユニットを下側から見た図である。
【
図4】第1実施形態の便座ユニットと便器本体の位置関係を示す図である。
【
図5】第1実施形態の便器装置の一部の上面図である。
【
図6】第1実施形態の第1吐出部が吐出する洗浄液が便座の第1鉢対向面を伝う範囲を示す図である。
【
図7】第1実施形態の第2吐出部が吐出する洗浄液が便座の第1鉢対向面を伝う範囲を示す図である。
【
図9】
図9(a)は、第1特定領域を示す説明図であり、
図9(b)は、第2特定領域を示す説明図である。
【
図10】第1実施形態の便座の内周側凸部と溜水の位置関係を示す図である。
【
図11】第1実施形態の第1吐出部の側面断面図である。
【
図13】第1実施形態の便座の第1鉢対向面の勾配を示す説明図である。
【
図15】
図15(a)は、第1変形例の便座の裏面を模式的に示す図であり、
図15(b)は、第1実施形態の便座の裏面を模式的に示す図であり、
図15(c)は、
図15(b)の便座の裏面の一部の拡大図である。
【
図16】
図2の第2ケーシングを前方から見た正面図である。
【
図17】
図16の第1吐出部を通る第2ケーシングの側面断面図である。
【
図19】
図18の第1吐出部周りの構成を下側から見た斜視図である。
【
図20】第1実施形態の便器装置の機能の一部を示すブロック図である。
【
図21】
図21(a)は、第1吐出動作と第2吐出動作を同時に実行している状態を示す図であり、
図21(b)は、第1吐出動作のみを実行している状態を示す図であり、
図21(c)は、第2吐出動作のみを実行している状態を示す図である。
【
図22】
図22(a)は、第1シャッター、第2シャッターの動作状態を示し、
図22(b)は、他の動作状態を示す図である。
【
図23】
図23(a)は、第1座裏流れを示す説明図であり、
図23(b)は、第1鉢内流れを示す説明図である。
【
図24】
図24(a)は、第2座裏流れを示す説明図であり、
図24(b)は、第2鉢内流れを示す説明図である。
【
図25】
図2のE-E線断面の一部を示す図である。
【
図28】第2鉢内流れと第3鉢内流れを示す説明図である。
【
図29】第1実施形態のノズルを通る第2ケーシングの側面断面図である。
【
図30】
図30(a)は、第1実施形態の第1吐出部が吐出する洗浄液を模式的に示す図であり、
図30(b)は、第2変形例の第1吐出部が吐出する洗浄液を模式的に示す図である。
【
図31】第1実施形態の便座ユニットの一部の拡大側面図である。
【
図32】第1実施形態の便座と第2ケーシングの位置関係を示す図である。
【
図39】第2実施形態の便器装置の一部を示す図である。
【
図40】第3実施形態の便座の一部を模式的に示す図である。
【
図41】第4実施形態の便器装置の一部を模式的に示す図である。
【
図42】第5実施形態の便器装置の一部を模式的に示す図である。
【
図43】第6実施形態の便器装置を模式的に示す側面断面図である。
【
図44】第6実施形態の便器装置を模式的に示す他の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、構成要素の寸法を適宜拡大、縮小して示す。
【0010】
(第1の実施の形態)
(1)第1実施形態の便器装置10を説明する。まず、便器装置10の第1の工夫点から説明する。
図1は、便器装置10の側面図であり、
図2は、その一部の側面断面図である。
【0011】
便器装置10は、前部に便鉢部12を有する便器本体14と、便器本体14に取り付けられる便座ユニット16とを備える。便器本体14は、便鉢部12の他に、便鉢部12の上端開口の周縁部を形成するリム部18と、を有する。便座ユニット16は、主に、機能装置20と、便座22と、を備える。以下、便器装置10の構成要素の位置関係に関して、互いに直交する三つの方向を用いて説明する。この方向とは、便器本体14の前後方向X、左右方向Y及び上下方向Zである。前後方向X、左右方向Yは水平方向であり、便座22に通常の姿勢で座る着座者の前後左右と対応する。上下方向Zは鉛直方向である。
【0012】
機能装置20は、便器本体14の後部に設置される第1ケーシング24と、第1ケーシングの前方に配置される第2ケーシング26と、を有する。
図2では、第1ケーシング24及び第2ケーシング26の断面の輪郭のみ示す。
【0013】
図3は、便座ユニット16を下側から見た図である。便座22は、便座22の中央部に設けられ、着座者が排泄した汚物を通すための中央開口部32を有する。本明細書では、便座22を上下方向Zから見て、その中央開口部32の中心Cp周りの周方向を単に「周方向」といい、その中心Cpを中心とする径方向を単に「径方向」という。以下、便座22の中央開口部32の中心Cpに関して、単に、「便座22の中心Cp」ともいう。ここでいう中心Cpとは、便座22を上下方向Zから見たときの、便座22の中央開口部32の幾何学的な重心をいう。
【0014】
図4は、便座ユニット16と便器本体14の位置関係を示す図である。便器本体14の便鉢部12の内面と上下方向Zに重なる箇所を実線で示し、それ以外の箇所を二点鎖線で示す。便座22の外面となる裏面には、便鉢部12の内面と上下方向Zに対向する第1鉢対向面34が設けられる。第1鉢対向面34は、便鉢部12の内部空間に露出しており、便鉢部12で受けた汚物の飛沫等が付着することで汚れが付き易い。本実施形態の第1鉢対向面34は周方向に連続する環状を呈する。
【0015】
第1鉢対向面34は、第1鉢対向面34の左右方向Yの一方側となる右側(図中の紙面の左側)の半部を構成する右半部領域38R(第1半部領域)と、その他方側となる左側の半部を構成する左半部領域38L(第2半部領域)とを有する。便座22の裏面視において、第1鉢対向面34の左右方向Yの外形寸法を二等分する前後方向Xに沿った左右中心線をCaとする。このとき、右半部領域38Rは、第1鉢対向面34を構成する領域のうち、左右中心線Caに対して右側に位置する領域をいい、左半部領域38Lは、左右中心線Caに対して左側に位置する領域をいう。ここでの裏面視とは、便座22が倒伏位置(後述する)にあるときに便座22を上下方向の下側から見ることをいう。以下、右半部領域38Rの前側の周方向端部38Raと、左半部領域38Lの前側の周方向端部38Laとをまとめて前端領域39という。
【0016】
図5は、便器装置10の一部の上面図である。
図4、
図5に示すように、便器装置10は、タンク等の給液源から供給される洗浄液を吐出可能な複数の吐出部50A~50Cを備える。本実施形態の洗浄液は、主成分が水の洗浄水であるが、水以外のアルコール等を主成分としてもよい。
【0017】
本実施形態の吐出部50A~50Cには、便座22の裏面を洗浄するための座裏用吐出部50A、50Bが含まれる。座裏用吐出部50A、50Bには、第1吐出部50Aと、第2吐出部50Bとが含まれる。第1吐出部50Aは、便器本体14の右半部の上側に配置される。第2吐出部50Bは、便器本体14の左半部の上側に配置される。本実施形態において、第1吐出部50Aは、便鉢部12の右半部の後端部の上側に配置され、第2吐出部50Bは、便鉢部12の左半部の後端部の上側に配置される。
【0018】
図6は、第1吐出部50Aが吐出する洗浄液が便座22の第1鉢対向面34を伝う範囲Saを示す図である。第1吐出部50Aは、第1鉢対向面34の右半部領域38Rを前方に伝うように洗浄液を吐出する。第1吐出部50Aは、便座22の周方向の一方側Paに向けて第1鉢対向面34を伝うように洗浄液を吐出するとも捉えられる。
【0019】
図7は、第2吐出部50Bが吐出する洗浄液が便座22の第1鉢対向面34を伝う範囲Sbを示す図である。第2吐出部50Bは、第1鉢対向面34の左半部領域38Lを前方に伝うように洗浄液を吐出する。第2吐出部50Bは、便座22の周方向の他方側Pbに向けて第1鉢対向面34を伝うように洗浄液を吐出するとも捉えられる。
【0020】
図4に示すように、便座22の裏面視において、便座22の中心Cpから延びる仮想的な半直線La上で第1鉢対向面34を二等分する二等分線をLbとする。第1鉢対向面34は、この二等分線Lbより内周側の内周側部分52と、二等分線Lbより外周側の外周側部分54とを有する。
【0021】
図8は、
図2のA-A線断面図である。本図は、便座22の中心Cpを通る鉛直断面でもある。便座22は、
図4、
図8に示すように、第1鉢対向面34の内周側部分52から下方に突き出る内周側凸部56と、第1鉢対向面34の外周側部分54から下方に突き出る外周側凸部58とを有する。内周側凸部56は、第1鉢対向面34の内周縁部から径方向の途中位置に亘る範囲に設けられる。内周側凸部56は、第1鉢対向面34の内周縁部を少なくとも構成していると捉えられる。外周側凸部58は、第1鉢対向面34の外周縁部から径方向の途中位置に亘る範囲に設けられる。外周側凸部58は、第1鉢対向面34の外周縁部を少なくとも構成していると捉えられる。
【0022】
(A-1)内周側凸部56の外周面56aは、径方向内側に向かうにつれて下向きに延びるように形成される。この条件を満たす形状として、本実施形態の内周側凸部56の外周面56aは、便座22の中心Cpを通る鉛直断面において、凹曲面状をなしている。
【0023】
便座22の中央開口部32には、便座22の中心Cpを通る鉛直断面において、便座22の表面から裏面にかけて連なる平坦面60が形成される。本実施形態の内周側凸部56の内周面56bは、この平坦面60の一部を構成する。
【0024】
(A-2)外周側凸部58の内周面58aは、径方向外側に向かうにつれて下向きに延びるように形成される。この条件を満たす形状として、本実施形態の外周側凸部58の内周面58aは、便座22の中心Cpを通る鉛直断面において、凹曲面状をなしている。
【0025】
本実施形態の外周側凸部58の外周面58bは、便鉢部12の上端縁部12aの内周面の外形に合わせた外形に形成され、その内周面に沿うように配置される。便鉢部12の上端縁部12aの内周面は、凹曲面状をなしており、外周側凸部58の外周面58bは、その上端縁部12aの内周面がなす凹曲面と同等の曲率半径を持つ凸曲面状をなす。
【0026】
本実施形態において、内周側凸部56の外周面56aと外周側凸部58の内周面58aは滑らかに連なる凹曲面62の一部を構成している。また、内周側凸部56の外周面56aと外周側凸部58の内周面58aは、周方向に連続する溝部の一部を構成している。
【0027】
図4を参照する。内周側凸部56は、第1鉢対向面34において周方向に連続する突条である。本実施形態の内周側凸部56は、第1鉢対向面34の右半部領域38Rの前後方向Yの中央部38Rbから、右半部領域38Rの前側の周方向端部38Raまでの範囲で周方向に連続するように設けられる第1誘導部40を有する。この右半部領域38Rの中央部38Rbとは、第1鉢対向面34の前後中心線Cbと重なる箇所や周辺部分を含む箇所をいう。この前後中心線Cbとは、便座22の裏面視において、第1鉢対向面34の前後方向Xの寸法を二等分する左右方向Yに沿った線をいう。第1誘導部40は、右半部領域38Rの前後中心線Cbと重なる箇所から、右半部領域38Rの周方向端部38Raまでの範囲で周方向に連続するように設けられるともいえる。
【0028】
内周側凸部56は、第1鉢対向面34の左半部領域38Lの前後方向Yの中央部38Lbから、左半部領域38Lの前側の周方向端部38Laまでの範囲で周方向に連続するように設けられる第2誘導部42を有する。この左半部領域38Lの中央部38Lbとは、第1鉢対向面34の前後中心線Cbと重なる箇所や周辺部分を含む箇所をいう。第2誘導部42は、左半部領域38Lの前後中心線Cbと重なる箇所から、左半部領域38Lの周方向端部Laまでの範囲で周方向に連続するように設けられるともいえる。
【0029】
本実施形態の内周側凸部56は、右半部領域38Rの後端部から、前端領域39を経由して、左半部領域38Lの後端部までの範囲で周方向に連続するように設けられる。外周側凸部58も同様の構成である。内周側凸部56と外周側凸部58が構成する溝部も同様の構成である。
【0030】
図8を参照する。内周側凸部56や外周側凸部58は、便器本体14のリム部18の上面18aより下側に位置するように設けられる。本実施形態の内周側凸部56の下端部は、外周側凸部58の下端部より下側に位置するように設けられる。
【0031】
便器装置10は、便器本体14のリム部18と便座22との間を通して径方向外側に向かおうとする洗浄液の流れを規制するための流れ規制構造64を備える。本実施形態の流れ規制構造64は、便器本体14の便鉢部12の上端縁部12aである。
【0032】
以上の便器装置10の動作を説明する。本実施形態の便器装置10は、詳細は後述するが、第1吐出部50Aから洗浄液を吐出する動作を終了してから、第2吐出部50Bから洗浄液を吐出する動作を開始するように構成される。
【0033】
図6に示すように、第1吐出部50Aから吐出された洗浄液は、便座22の第1鉢対向面34の右半部領域38Rの後部に当たり、その当たった箇所Spaから吐出方向Pcに広がりつつ、第1鉢対向面34を伝わるような第1座裏流れFaを形成する。ここでの吐出方向Pcとは、言及している吐出部の洗浄液出口76(後述する)の中心軸線に沿った方向をいう。第1座裏流れFaの一部は、前述の流れ規制構造64や便座22の外周側凸部58に当たることで、その流れ方向が径方向内側に曲がるように変えられ、主に、第1鉢対向面34の外周側部分54を周方向の一方側Paに伝うように誘導される(方向Da参照)。
【0034】
便座22の裏面視において、第1吐出部50Aから吐出方向Pcに洗浄液が直進し得る範囲Scには、内周側凸部56の外周面56a、詳しくは、第1誘導部40の外周面が位置している。これにより、第1吐出部50Aから吐出される洗浄液の一部は、内周側凸部56の外周面56aを周方向に伝うように流れる。第1吐出部50Aは、内周側凸部56の外周面56a(第1誘導部40)を周方向に伝うように洗浄液を吐出することになる。
【0035】
第1吐出部50Aから吐出される洗浄液の一部は、内周側凸部56の外周面56a(第1誘導部40)を周方向に伝う過程で、コアンダ効果によって、その流れ方向を径方向内側に曲げつつ、その外周面56aに沿って流れようとする(方向Db参照)。洗浄液の一部は、その流れ方向が径方向内側に曲がるように変えられつつ、第1鉢対向面34の内周側部分52を周方向の一方側Paに伝うように誘導される。このように、内周側凸部56の第1誘導部40は、第1吐出部50Aから吐出された洗浄液の一部の流れ方向を径方向内側に曲げつつ、第1鉢対向面34の内周側部分52を伝うように洗浄液の一部を誘導可能である。
【0036】
図7に示すように、第2吐出部50Bから吐出された洗浄液は、第1鉢対向面34の左半部領域38Lの後部に当たり、その当たった箇所Spbから吐出方向Pcに広がりつつ、第1鉢対向面34を伝わるような第2座裏流れFbを形成する。第2座裏流れFbの一部も、第1座裏流れFaと同様、流れ規制構造64や便座22の外周側凸部58に当たることで、その流れ方向が径方向内側に曲がるように変えられ、主に、第1鉢対向面34の外周側部分54を周方向の他方側Pbに伝うように誘導される(方向Dc参照)。
【0037】
便座22の裏面視において、第2吐出部50Bから吐出方向Pcに洗浄液が直進し得る範囲Sdには、内周側凸部56の外周面56a、詳しくは、第2誘導部42の外周面が位置している。これにより、第2吐出部50Bから吐出される洗浄液の一部も、内周側凸部56の外周面56a(第2誘導部42)を周方向に伝うように流れる。
【0038】
第2吐出部50Bから吐出される洗浄液の一部も、内周側凸部56の外周面56a(第2誘導部42)を周方向に伝う過程で、コアンダ効果によって、その流れ方向が径方向内側に曲げつつ、その外周面56aに沿って流れようとする(方向Dd参照)。洗浄液の一部は、その流れ方向が径方向内側に曲がるように変えられつつ、第1鉢対向面34の内周側部分52を周方向の他方側Pbに伝うように誘導される。このように、内周側凸部56の第2誘導部42は、第2吐出部50Bから吐出された洗浄液の一部の流れ方向を径方向内側に曲げつつ、第1鉢対向面34の内周側部分52を伝うように洗浄液の一部を誘導可能である。
【0039】
以上の構成により、第1座裏流れFaは、便座22の右半部領域38Rの前後方向Yの中央部38Rbや周方向端部38Raを経由するように、第1鉢対向面34を周方向の一方側Paに伝わる。また、第2座裏流れFbは、便座22の左半部領域38Lの前後方向Yの中央部38Lbや周方向端部38Laを経由するように、第1鉢対向面34を周方向の他方側Pbに伝わる。第1座裏流れFaと第2座裏流れFbは、互いに部分的に重なる領域として、第1鉢対向面34の前端領域39を伝わるように流れる。
【0040】
以上の便器装置10の効果を説明する。便器装置10は、便座22の第1鉢対向面34の内周側部分52を伝うように洗浄液の一部を誘導可能な誘導部40、42(内周側凸部56)を備える。よって、第1鉢対向面34を伝い始めた箇所Spa、Spbから離れた箇所で、その伝い始めた箇所Spa、Spbから洗浄液が直進し得る領域外において、第1鉢対向面34の内周側部分52に洗浄液を伝わせ易くできる。これは、たとえば、後述する領域88A、88B(
図9参照)に洗浄液を伝わせ易くできることを意味する。このため、第1鉢対向面34の広範囲に洗浄液を届かせられるようになり、その第1鉢対向面34での洗い残しを抑制できる。
【0041】
図9(a)は、第1特定領域66Aを示す説明図であり、
図9(b)は、第2特定領域66Bを示す説明図である。便座22の裏面視において、座裏用吐出部50A、50Bから洗浄液の吐出方向Pcに延びる仮想線であって、便座22の中央開口部32の輪郭に外接する線を外接線LcA、LcBとする。外接線LcA、LcBは、便座22の裏面視において、座裏用吐出部50A、50Bの洗浄液出口76の中心位置から延びている。外接線LcA、LcBには、第1吐出部50Aに対応する第1外接線LcAと、第2吐出部50Bに対応する第2外接線LcBとが含まれる。
【0042】
便座22の第1鉢対向面34において、第1外接線LcAより便座22の中心Cp寄りの領域であって、第1外接線LcAの外接箇所より第1吐出部50Aの吐出方向Pcに位置する領域を第1特定領域66Aという。便座22の第1鉢対向面34において、第2外接線LcBより便座22の中心Cp寄りの領域であって、第2外接線LcBの外接箇所より第2吐出部50Bの吐出方向Pcに位置する領域を第2特定領域66Bという。第1特定領域66Aは、第1吐出部50Aが吐出した洗浄液が届き難い領域であり、第2特定領域66Bは、第2吐出部50Bが吐出した洗浄液が届き難い領域である。
【0043】
このとき、第1誘導部40は、第1鉢対向面34の内周側部分52で第1特定領域66Aと重なる箇所の一部(
図9(a)のダブルハッチングの領域88A)を伝うように洗浄液の一部を誘導可能である。また、第2誘導部42は、第1鉢対向面34の内周側部分52で第2特定領域66Bと重なる箇所の一部(
図9(b)のダブルハッチングの領域88B)を伝うように洗浄液の一部を誘導可能である。これにより、吐出部50A、50Bから吐出された洗浄液が届き難い箇所まで洗浄液を届かせ易くなる。
【0044】
半部領域38Rの前側の周方向端部38Raは、半部領域38Rを前方に伝うように吐出部50Aから洗浄液を吐出するうえで、洗浄液が届き難い箇所となる。内周側凸部56の第1誘導部40は、半部領域38Rの前後方向Yの中央部38Rbから前側の周方向端部38Raまでを少なくとも含む範囲で周方向に連続するように設けられる。これにより、半部領域38Rを前方に伝うように洗浄液を吐出するうえで、洗浄液が届き難い半部領域38Rの前側の周方向端部38Raまで洗浄液を届かせ易くなる。
【0045】
座裏用吐出部50A、50Bは、内周側凸部56の外周面56aを周方向に伝うように洗浄液を吐き出す。よって、前述の通り、コアンダ効果を利用して、第1鉢対向面34の内周側部分52の広範囲に洗浄液を誘導できる。また、洗浄液が伝い始めた箇所Spa、Spbから洗浄液が直進し得る領域外では、内周側凸部56の外周面56aには、洗浄液を直接に当てることができず、洗浄液を届かせ難い。本実施形態によれば、このように洗浄液が届き難い箇所にある内周側凸部56の外周面56aの一部にでも、コアンダ効果を利用して洗浄液を届かせることができ、その一部を効果的に洗浄できる利点がある。
【0046】
図8に示すように、内周側凸部56の外周面56aは、径方向内側に向かうにつれて下向きに延びるように形成される。よって、内周側凸部56の外周面56aを洗浄液の一部が径方向内側に向けて伝おうとしたとき、その勢いを失うこと無く内周側凸部56の下端部まで洗浄液が伝い易くなる(方向De参照)。このため、洗浄液が径方向内側に向かう勢いを利用して内周側凸部56の外周面56aを洗浄し易くなる。
【0047】
外周側凸部58の内周面58aは、径方向外側に向かうにつれて下向きに延びるように形成される。よって、外周側凸部58の内周面58aを洗浄液の一部が径方向外側に向けて伝おうとしたとき、その勢いを失うこと無く外周側凸部58の下端部まで洗浄液が伝い易くなる(方向Df参照)。このため、洗浄液が径方向外側に向かう勢いを利用して外周側凸部58の内周面58aを洗浄し易くなる。
【0048】
便器装置10の他の特徴を説明する。
図2に示すように、便器本体14は、便鉢部12の底部に接続されるトラップ部70を有する。トラップ部70は、便鉢部12内の洗浄水や汚物を下水側水路に排出するための排出通路部の一部を構成する。トラップ部70の内部空間は、便鉢部12の底部に形成される入口70aを通して便鉢部12の内部空間に連通する。本実施形態のトラップ部70は、便鉢部12の底部の前側に設けられる。トラップ部70は、上流側から下流側にかけて順に、上昇水路部70bと、下降水路部70cとを有する。上昇水路部70bは、トラップ部70の下流側に向かうにつれて上昇するように設けられる。下降水路部70cは、トラップ部70の下流側に向かうにつれて下降するように設けられる。
【0049】
便鉢部12の底部やトラップ部70の上昇水路部70bには溜水72が溜められる。溜水72は、トラップ部70の上昇水路部70bでの通水方向での空気の流れを遮断する封水として機能し、下水側水路からの臭気の逆流を防止する。
【0050】
図10は、便座22の内周側凸部56と溜水72の位置関係を示す便器本体14の平面図である。内周側凸部56は、平面視において、座裏用吐出部50A、50Bから吐出される洗浄液が伝わる範囲Seにおいて、溜水72を避けた箇所で便鉢部12と上下方向Zに重なる位置に配置される。内周側凸部56は、座裏用吐出部50A、50Bから吐出される洗浄液が伝わる範囲Seにおいて、溜水72と上下方向Zに重ならない位置に設けられるということである。ここでの洗浄液が伝わる範囲Seとは、本実施形態では、第1鉢対向面34の左半部領域38Lや右半部領域38Rの後部から前側の周方向端部38La、38Raに至る全範囲をいう。これにより、洗浄液による便座22の洗浄後、内周側凸部56から洗浄液の一部が垂れ落ちたとしても、溜水72に直接に落ち難くなり、異音の発生を抑制できる。
【0051】
図11は、第1吐出部50Aの側面断面図である。
図12(a)は、
図11のB-B線断面図であり、
図12(b)は、
図12(a)を矢視Cから見た図である。第1吐出部50Aと第2吐出部50Bは大半の構成が共通するため、その共通する構成に関して第1吐出部50Aを示す図面を参照しながら説明する。座裏用吐出部50A、50Bには洗浄液を吐出するための吐出孔74が形成される。吐出孔74は、上流側の第1部分74aと、第1部分74aの下流側に連なるとともに自らの下流端部に洗浄液出口76が形成される第2部分74bとを有する。
【0052】
第1部分74aは、吐出孔74の下流側に向かって通路断面積が同等の大きさとなるように形成される。本実施形態の第1部分74aは、吐出孔74の下流側に向かって直線状に延びるように形成される。
【0053】
第2部分74bは、便座22の裏面視において、洗浄液出口76に近づくにつれて連続的に水平方向Pdでの内幅が広がるように形成される。ここでの水平方向Pdとは、便座22の裏面視において、言及している座裏用吐出部50A、50Bの吐出方向Pcと直交する方向をいう。第2部分74bは、吐出孔74の下流側に向かって通路断面積が連続的に大きくなるように形成されることになる。本実施形態の第2部分74bの断面形状は、水平方向Pdを長軸方向とする楕円状をなしており、その長軸方向の長さである長径が洗浄液出口76に近づくにつれて大きくなるように形成される。なお、第2部分74bは、洗浄液出口76に向かって吐出方向Pc及び水平方向Pdに直交する方向Peでの内幅が同等の大きさとなるように形成される。
【0054】
これにより、吐出孔74の第2部分74bを洗浄液が方向Pdに広がりつつ流れ、吐出孔74の洗浄液出口76から方向Pdの速度成分を持った洗浄液を吐出できる。よって、便座22の第1鉢対向面34を吐出方向Pcに伝わる過程で洗浄液が方向Pd(
図6、
図7も参照)に広がり易くなり、第1鉢対向面34の広範囲に洗浄液を届かせ易くなる。特に、第1鉢対向面34を洗浄液が伝い始めた箇所Spa、Spbから洗浄液が直進し得る領域外にて、洗浄液を届かせ易くなる利点がある。これは、たとえば、前述の
図9の領域88A、88Bに洗浄液を伝わせ易くなることを意味する。
【0055】
便器装置10の他の特徴を説明する。
図13は、便座22の第1鉢対向面34の勾配を示す説明図である。本図では、勾配が高位置から低位置に向かう方向を矢印により示す。
【0056】
図6、
図13に示すように、第1鉢対向面34には、第1吐出部50Aから吐出される洗浄液が伝わる少なくとも一部の範囲において、周方向の一方側Paに向かって第1勾配80で下り勾配となる第1傾斜面82が設けられる。本実施形態の第1傾斜面82は、第1鉢対向面34の右半部領域38Rの前後方向Yの中央部38Rbから、右半部領域38Rの前側の周方向端部38Raまでを少なくとも含む範囲で設けられる。本実施形態の第1傾斜面82は、右半部領域38Rの後端部から前側の周方向端部38Raまでの範囲に設けられる。
【0057】
図7、
図13に示すように、第1鉢対向面34には、第2吐出部50Bから吐出される洗浄液が伝わる少なくとも一部の範囲において、周方向の他方側Pbに向かって第2勾配84で下り勾配となる第2傾斜面86が設けられる。本実施形態の第2傾斜面86は、第1鉢対向面34の左半部領域38Lの前後方向Yの中央部38Lbから、左半部領域38Lの前側の周方向端部38Laまでを少なくとも含む範囲で設けられる。本実施形態の第2傾斜面86は、左半部領域38Lの後端部から前側の周方向端部38Laまでの範囲に設けられる。
【0058】
図14は、
図13のD-D線断面図である。便座22の第1鉢対向面34には、第1傾斜面82の下端部と第2傾斜面86の下端部とが構成する山部88が設けられる。山部88は、便座22の第1鉢対向面34に下向きの凸状をなすように設けられる。本実施形態の山部88は、第1傾斜面82の下端部と第2傾斜面86の下端部とが下向きに尖る角部を構成するように設けられる。
【0059】
第1傾斜面82や第2傾斜面86には、第1鉢対向面34の径方向の途中位置から第1鉢対向面34の内周縁部に向かって下り勾配となる第3勾配90が設けられる。第3勾配90は、内周側凸部56の外周面56aに設けられる。第1傾斜面82や第2傾斜面86には、第1鉢対向面34の径方向の途中位置から第1鉢対向面34の外周縁部に向かって下り勾配となる第4勾配92が設けられる。第4勾配92は、外周側凸部58の内周面58aに設けられる。
【0060】
以上の特徴の効果を説明する。
図15(a)は、第1変形例の便座22の裏面を模式的に示す図であり、
図15(b)は、第1実施形態の便座22の裏面を模式的に示す図である。第1変形例の便座22の裏面には第1傾斜面82が設けられていない。
図15(a)、(b)に示すように、便座22の裏面に傾斜面82が設けられている場合、第1吐出部50Aから吐出された洗浄液94が便座22の裏面を伝わり易くなる。この理由を説明する。
【0061】
図15(c)は、
図15(b)の便座22の裏面の一部の拡大図である。洗浄液94に付与される自重による重力をFgとし、この重力Fgを第1傾斜面82の法線方向の力成分Fg1と、第1傾斜面82と平行な下り勾配となる方向の力成分Fg2とに分解する。このとき、第1傾斜面82を伝う洗浄液には、第1傾斜面82が水平面に対してなす角度θの正弦値(sinθ)と重力Fgとを乗算した大きさの力成分Fg2が作用している。これは、便座22の第1傾斜面82を洗浄液が伝ううえで、洗浄液の自重による重力を用いて、その第1傾斜面82が下り勾配となる方向(力成分Fg2の方向)に洗浄液を伝わせ易くなることを意味している。よって、本実施形態によれば、便座22に第1傾斜面82がない場合と比べ、便座22の裏面の広範囲に洗浄液を届かせ易くなる。
【0062】
また、便座22の第2傾斜面86を洗浄液が伝ううえで、洗浄液の自重による重力を用いて、その第2傾斜面86が下り勾配となる方向に洗浄液を伝わせ易くなる。よって、便座22に第2傾斜面86がない場合と比べ、便座22の裏面の広範囲に洗浄液を届かせ易くできる。
【0063】
これらの効果を得る観点から、第1傾斜面82が水平面に対してなす角度θは、好ましくは、1°~15°の範囲内に設定される。角度θが1°未満の場合、第1傾斜面82が下り勾配となる方向の力成分Fg2が不十分となり、その下り勾配となる方向に洗浄液を伝わせ難くなる。第1勾配が15°超の場合、便座22の上下方向Zでの寸法が大きくなり過ぎ、便座22の大型化を招く。このような観点から、角度θは、より好ましくは、3°~8°の範囲内に設定される。第1傾斜面82の水平面に対する角度θと同様の理由で、第2傾斜面86が水平面に対してなす角度は、好ましくは、1°~15°の範囲内に設定され、より好ましくは、3°~8°の範囲内に設定される。
【0064】
便座22の裏面には、
図14に示すように、第1傾斜面82の下端部と第2傾斜面86の下端部とが少なくとも一部を構成する山部88が設けられる。よって、第1傾斜面82が下り勾配となる方向に伝う洗浄液や、第2傾斜面86が下り勾配となる方向に伝う洗浄液を山部88で液切りし易くなる。このため、第1傾斜面82や第2傾斜面86を伝う洗浄液の一部が山部88の近傍の下方で便器本体14の便鉢部12内に落下するようにコントロールし易くなる。これに伴い、便鉢部12内に洗浄液が着く着液箇所をコントロールし易くなり、その着液箇所を含む範囲で便鉢部12内を洗浄液により洗浄し易くなる。
【0065】
本実施形態の第1傾斜面82は、便座22の右半部領域38Rの前後方向Yの中央部Rbから前側の周方向端部38Raまでを少なくとも含む範囲で設けられる。よって、このような第1傾斜面82を用いることで、第1吐出部50Aから吐出された洗浄液の届き難い箇所となる右半部領域38Rの前側の周方向端部38Raまで、その洗浄液を届かせ易くなる。
【0066】
また、第2傾斜面86は、便座22の左半部領域38Lの前後方向Yの中央部Lbから前側の周方向端部38Laまでを少なくとも含む範囲で設けられる。よって、このような第2傾斜面86を用いることで、第2吐出部50Bから吐出された洗浄液の届き難い箇所となる左半部領域38Lの前側の周方向端部38Laまで、その洗浄液を届かせ易くなる。
【0067】
(2)便器装置10の第2の工夫点を説明する。
図2に示すように、第1ケーシング24は、便鉢部12の内面と上下方向Zに重なる位置を避けて便鉢部12より後方に配置される。第2ケーシング26の一部は、便鉢部12の内面と上下方向に重なる位置に配置される。
【0068】
図16は、
図2の第2ケーシング26を前方から見た正面図である。
図17は、
図16の第1吐出部50Aを通る第2ケーシング26の側面断面図である。第2ケーシング26は、機能部品を内部に収容する収容部材として機能する。ここでの機能部品とは、便器装置10に付随する所定の機能を発揮するためのものである。機能部品には、前述の座裏用吐出部50A、50B、後述する開閉弁126A、126B、126Dが含まれる。
【0069】
第2ケーシング26は、便鉢部12の上端開口12bより便鉢部12の内面の上方にはみ出すはみ出し部26aを有する。はみ出し部26aには、はみ出し部26aから下向きに突き出る突出部26bが設けられる。突出部26bは、便鉢部12の上端開口12bより下方に配置される。突出部26bの後面部は、便鉢部12の上端縁部12aの内周面の外形に合わせた外形に形成され、その内周面に沿うように配置される。突出部26bは、便鉢部12の上端縁部12aの後側部分の内側に嵌め込まれる。突出部26bの前面部には、前方に向かって斜め下側を向く斜面部26cが形成される。
【0070】
【0071】
第2ケーシング26の下面部には開口部102A、102Bが形成される。開口部102A、102Bは第2ケーシング26の斜面部26cに形成される。開口部102A、102Bには、第1吐出部50Aに対応する第1開口部102Aと、第2吐出部50Bに対応する第2開口部102Bとが含まれる。第1開口部102Aは、便器本体14の右半部の上側に設けられ、第2開口部102Bは、便器本体14の左半部の上側に設けられる。
【0072】
便器装置10は、第2ケーシング26の開口部102A、102Bを開閉可能なシャッター104A、104Bを備える。シャッター104A、104Bには、第1吐出部50Aに対応する第1シャッター104Aと、第2吐出部50Bに対応する第2シャッター104Bとが含まれる。第1シャッター104Aは第1開口部102Aを開閉可能であり、第2シャッター104Bは第2開口部102Bを開閉可能である。第1シャッター104A及び第1開口部102Aと、第2シャッター104B及び第2開口部102Bとは、大半の構成が共通するため、その共通する構成に関して、前者を示す図面を参照しながら説明する。
【0073】
図11、
図17に示すように、シャッター104A、104Bは、第2ケーシング26の開口部102A、102Bを開閉可能に第2ケーシング26に取り付けられる。シャッター104A、104Bは、開口部102A、102Bを開閉可能な本体部104aと、本体部104aの背面から突き出る複数の軸固定部104bとを有する。本図では単数の軸固定部104bのみ示す。
【0074】
本体部104aは左右方向Yに長尺な板状をなす。複数の軸固定部104bの先端部には軸固定部104bを貫通する回動軸106が固定される。回動軸106は、第2ケーシング26の内部に設けられる軸支持部26dに回動自在に支持される。本実施形態のシャッター104A、104Bは、第2ケーシング26(収容部材)に回動軸106を介して回動軸106周りに回動可能に取り付けられることになる。本実施形態の回動軸106は水平方向に沿って延びている。シャッター104A、104Bは、回動軸106周りの一方向Pg1に回動することによって開口部102A、102Bを開き、それとは反対方向Pg2に回動することによって開口部102A、102Bを閉じる。
【0075】
シャッター104A、104Bは、自らの対応する吐出部50A、50Bの吐出孔74を外部から隠蔽する隠蔽位置Pf1(
図16、
図17参照)と、吐出孔74を外部に露出させる露出位置Pf2(
図11、
図18参照)との間を移動可能である。本実施形態のシャッター104A、104Bは、隠蔽位置Pf1にあるとき、自らが開閉する第2ケーシング26の開口部102A、102Bを閉じており、開口部102A、102Bを閉じることで吐出孔74を外部から隠蔽する。本実施形態のシャッター104A、104Bは、露出位置Pf2にあるとき、開口部102A、102Bを開いており、開口部102A、102Bを開くことで吐出孔74を外部に露出させる。シャッター104A、104Bが露出位置Pf2にあるとき、そのシャッター104A、104Bに対応する吐出部50A、50Bの吐出孔74から吐出した洗浄液を便座22の裏面に当てることが可能となる。
【0076】
図17に示すように、シャッター104A、104Bは、隠蔽位置Pf1にあるとき、対応する吐出部50A、50Bの吐出孔74への外部からの飛沫の入り込みを規制する。本実施形態のシャッター104A、104Bは、隠蔽位置Pf1にあるとき、自らが開閉する開口部102A、102Bを閉じることで、その開口部102A、102Bへの外部からの飛沫の入り込みも規制する。
【0077】
本実施形態のシャッター104A、104Bは、自らが開閉する開口部102A、102Bの一部となる開口部102A、102Bの上縁部に当たることで可動範囲が規制され、その開口部102A、102Bを閉じる閉じ位置に保持される。
図11に示すように、本実施形態のシャッター104A、104Bは、自らが開閉する開口部102A、102Bの一部となる開口部102A、102Bの下縁部に当たることで可動範囲が規制され、第1開口部102Aを開く開き位置に保持される。
【0078】
図5に示すように、便器装置10は、シャッター104A、104Bを隠蔽位置Pf1と露出位置Pf2の間で移動させるように駆動可能な駆動機構108A、108Bを備える。駆動機構108A、108Bには、第1シャッター104Aに対応する第1駆動機構108Aと、第2シャッター104Bに対応する第2駆動機構108Bとが含まれる。駆動機構108A、108Bは、たとえば、モータ等の駆動源を用いて構成される。本実施形態の駆動機構108A、108Bは第2ケーシング26内に配置される。本実施形態の駆動機構108A、108Bは、シャッター104A、104Bを回動軸106周りに回動軸106と一体的に回動させることでシャッター104A、104Bを駆動する。
【0079】
図11、
図17に示すように、本実施形態の吐出部50A、50Bは、自らに対応するシャッター104A、104Bと一体化されている。本明細書での「一体化」とは、言及している二つの要素が一体的に移動可能であることを意味し、その二つの要素が同じ部材の一部であるか否かは問わない。本実施形態の吐出部50A、50Bは、自らに対応するシャッター104A、104Bと同じ部材の一部として構成される。これにより、吐出部50A、50Bとシャッター104A、104Bを別部材とするより部品点数の削減を図れ、組み立て工数の削減により製品コストの低減を図れる。
【0080】
吐出部50A、50Bは、シャッター104A、104Bや回動軸106を介して第2ケーシング26に回動可能に取り付けられる。吐出部50A、50Bは、回動軸106周りに回動することによって、自らが対応する開口部102A、102Bに対して進退可能である。詳しくは、吐出部50A、50Bは、回動軸106周りの一方向Pg1に回動することによって開口部102A、102Bから外部に進出する進出位置Ph1に移動する。また、吐出部50A、50Bは、回動軸106周りの他方向Pg2に回動することによって開口部102A、102Bより内部に退避する退避位置Ph2に移動する。
【0081】
図11、
図19に示すように、吐出部50A、50Bは、洗浄液を吐出するための吐出孔74が形成される孔形成部110と、吐出部50A、50Bが進出位置Ph1にあるときに対応する開口部102A、102Bを塞ぐ塞ぎ部112と、を有する。
【0082】
孔形成部110は、洗浄液が流出する洗浄液出口76が下流端部に形成される出口側部分110aと、上流側から供給される洗浄液を下流側の出口側部分110aに導くための入口側部分110bとを有する。出口側部分110a及び入口側部分110bは筒状をなしている。本実施形態の出口側部分110a及び入口側部分110bは曲げ部分110cを介してつながるとともに直線状に延びている。出口側部分110aは板状のシャッター104A、104Bの面内方向に延びている。入口側部分110bは、シャッター104A、104Bより離れる方向に曲げ部分110cから延びている。
【0083】
出口側部分110aには前述した第1部分74aや第2部分74bが形成される(
図12参照)。出口側部分110aは塞ぎ部112の前壁部112a(後述する)を貫通しており、その前壁部112aから突き出るように設けられる。入口側部分110bには給液路(後述する)の一部が内部に形成されるホース114が接続される。ホース114は可とう性を持ち、第2ケーシング26の内部に収容される。
【0084】
塞ぎ部112は、吐出部50A、50Bが進出位置Ph1にあるとき、吐出部50A、50Bに対応する開口部102A、102Bに外部から飛沫が入り込まないように、その開口部102A、102Bの全体を塞いでいる。塞ぎ部112は、回動軸106の軸方向(左右方向Y)に沿って延びる前壁部112aと、前壁部112aの軸方向の端部から吐出部50A、50Bの吐出方向Pcとは反対側に向けて延びる側壁部112bとを有する。
【0085】
前壁部112aは、開口部102A、102Bを吐出部50A、50Bが進退するとき、開口部102A、102Bの上下方向の縁部(本例では上縁部)と上下方向Zに対向する位置を通るように設けられる。側壁部112bは、開口部102A、102Bを吐出部50A、50Bが進退するとき、開口部102A、102Bの左右方向Yの縁部と前述の回動軸106の軸方向(左右方向Y)に対向する位置を通るように設けられる。
【0086】
第2の工夫点の効果を説明する。前述の便器装置10によれば、隠蔽位置Pf1に位置するシャッター104A、104Bにより吐出部50A、50Bの吐出孔74を隠蔽することで、吐出孔74内への飛沫の入り込みを防止でき、良好な衛生性を得られる。
【0087】
シャッター104A、104Bは、隠蔽位置Pf1にあるとき、第2ケーシング26の開口部102A、102Bを閉じている。よって、第2ケーシング26内への飛沫の入り込みもシャッター104A、104Bにより防止でき、より良好な衛生性を得られる。
【0088】
吐出部50A、50Bは、回動軸106周りに回動することによって第2ケーシング26の開口部102A、102Bに対して進退可能である。よって、吐出部50A、50Bが直進することによって、第2ケーシング26の開口部102A、102Bを進退可能な構造(
図39参照)とするより、吐出部50A、50Bの進退方向Pmでの寸法の小型化を図れる。これに伴い、第2ケーシング26(収容部材)内での吐出部50A、50Bの収容に要するスペースを小さくできる。
【0089】
吐出部50A、50Bは、吐出部50A、50Bが進出位置Ph1にあるとき、吐出部50A、50Bに対応する開口部102A、102Bを塞ぐ塞ぎ部112を有する。よって、吐出部50A、50Bが進出位置Ph1にあるときでも、第2ケーシング26の開口部102A、102Bへの飛沫の入り込みを防止でき、より良好な衛生性を得られる。
【0090】
(3)便器装置10の第3の工夫点を説明する。
図20は、便器装置10の機能の一部を示すブロック図である。本実施形態の便器装置10(便座ユニット16)は、給液路120と、切替機構122と、制御部124とを更に備える。
【0091】
図5、
図20に示すように、給液路120は、タンク等の給液源(不図示)から吐出部50A、50Bに供給される洗浄液の通り道となる。給液路120は、ホース等の液路形成部材が構成する。給液路120は、第1吐出部50Aに洗浄液を供給するための第1液路120aと、第2吐出部50Bに洗浄液を供給するための第2液路120bとを有する。本実施形態の給液路120は、上流側から洗浄液が供給される共通液路120cを有し、共通液路120cから第1液路120a及び第2液路120bが分岐している。
【0092】
切替機構122は、複数の吐出部50A、50Bに対して給液路120を通して供給される洗浄液の供給の有無を切り替え可能である。本実施形態の切替機構122は、第1液路120aの途中に設けられる第1開閉弁126Aと、第2液路120bの途中に設けられる第2開閉弁126Bと、共通液路120cに設けられる共通開閉弁126Cと、有する。第1開閉弁126A及び第2開閉弁126Bは、第2ケーシング26内に収容される。
【0093】
共通開閉弁126Cは、第2ケーシング26外に配置される。本実施形態の共通開閉弁126Cは、図示はしないが、便器本体14の内部に収容される。共通開閉弁126Cが共通液路120cを閉じることで、第1開閉弁126Aや第2開閉弁126Bに洗浄液に付与される供給圧力が作用しなくなる。これに伴い、各開閉弁126A、126Bの小型化を図れ、これらを収容する第2ケーシング26の小型化を図れる。
【0094】
切替機構122は、複数の開閉弁126A~126Cの開閉状態を切り替えることで、次の供給停止状態、第1供給状態、第2供給状態のいずれかに、複数の吐出部50A、50Bに対する洗浄液の供給状態を切り替え可能である。第1供給状態にあるとき、第1吐出部50Aに供給される洗浄液が第1吐出部50Aから吐出される。第2供給状態にあるとき、第2吐出部50Bに供給される洗浄液が第2吐出部50Bから吐出される。
(供給停止状態)洗浄液の供給を停止した状態である。
(第1供給状態)第1吐出部50Aに対して給液路120の第1液路120aを通して洗浄液が供給される状態である。
(第2供給状態)第2吐出部50Bに対して給液路120の第2液路120bを通して洗浄液が供給される状態である。
【0095】
本実施形態の切替機構122は、供給停止状態にあるとき、共通開閉弁126Cが給液路120の共通液路120cを閉じている。第1供給状態にあるとき、共通開閉弁126Cが共通液路120cを開き、第1開閉弁126Aが第1液路120aを開き、かつ、第2開閉弁126Bが第2液路120bを閉じている。第2供給状態にあるとき、共通開閉弁126Cが共通液路120cを開き、第2開閉弁126Bが第2液路120bを開き、かつ、第1開閉弁126Aが第1液路120aを閉じている。
【0096】
制御部124は、便器装置10の一部の構成要素を制御可能である。本実施形態の制御部124は、切替機構122を制御可能である。制御部124は、ワンチップマイクロコンピュータ等であり、CPU、RAM、ROM等を組み合わせて構成される。本実施形態の制御部124は、第2ケーシング26外に配置される。
【0097】
制御部124は、所定の洗浄開始条件を満たすと、切替機構122を制御することによって、便座22の裏面を洗浄する洗浄動作を実行する。洗浄開始条件には、たとえば、レバー等の操作部材、または、リモートコントローラ、スマートフォン等の電気機器に対する操作を通じて洗浄開始指令を受けたことが条件に含まれる。
【0098】
制御部124は、次の一連の動作を経るように切替機構122を制御することで、一回の洗浄動作を実行する。この一連の動作とは、所定の第1給液時間に亘り、第1吐出部50Aに洗浄液が供給される第1供給状態に保持し、その後に所定の第2給液時間に亘り第2吐出部50Bに洗浄液が供給される第2供給状態に保持することである。便座22の裏面を伝うように第1吐出部50Aが洗浄液を吐出する動作を第1吐出動作とし、その裏面を伝うように第2吐出部50Bが洗浄液を吐出する動作を第2吐出動作という。このとき、本実施形態の制御部124は、一回の洗浄動作のなかで、第1吐出動作を実行している間は第2吐出動作を実行せず、第2吐出動作を実行している間は第1吐出動作を実行しないように切替機構122を制御することになる。ここでの「便座22の裏面を伝うように吐出部50A、50Bが洗浄液を吐出する動作」には、便座22の裏面を伝うことなく流れ落ちる洗浄液を吐出部50A、50Bが吐出する動作は含まれない。
【0099】
制御部124は、第1吐出部50Aに洗浄液が供給される第1供給状態を終了してから、第2吐出部50Bに洗浄液が供給される第2供給状態を開始するように切替機構122を制御することになる。便器装置10(便座ユニット16)は、第1吐出動作を終了してから第2吐出動作を開始するように構成されることになる。
【0100】
このとき、制御部124は、第1供給状態が終了してから、予め定められた待機時間の経過後、第2供給状態を開始するように切替機構122を制御する。制御部124は、前述の第1吐出動作を終了してから、待機時間の経過後、第2吐出動作を開始するように切替機構122を制御することになる。この待機時間は、便座22の裏面において、第1吐出部50Aが吐出した洗浄液と、第2吐出部50Bが吐出した洗浄液との衝突を回避するために設定される。この待機時間は、たとえば、0.5秒以上3.0秒以下、好ましくは、1.0秒以上2.0秒以下に設定される。
【0101】
第3の工夫点の効果を説明する。
図21(a)は、第1吐出動作と第2吐出動作を同時に実行している状態を示す図である。この場合、第1吐出部50Aが吐出した洗浄液が形成する第1座裏流れFaと、第2吐出部50Bが吐出した洗浄液が形成する第2座裏流れFbとが便座22の裏面で衝突する可能性がある。本実施形態では、主に、便座22の裏面の前端領域39で衝突する可能性がある。
【0102】
これに対して、便座ユニット16は、
図21(b)に示すような第1吐出動作が終了してから、
図21(c)に示すような第2吐出動作を開始するように構成される。これにより、第1吐出部50Aが吐出した洗浄液と、第2吐出部50Bが吐出した洗浄液とが衝突したとしても、その衝突時間を短縮できる。よって、複数の吐出部50A、50Bが吐出した洗浄液の衝突に伴う飛沫の発生を抑制できる。
【0103】
複数の吐出部50A、50Bには、互いに周方向の逆向きに便座22の裏面を伝わるように洗浄液を吐出する第1吐出部50A、第2吐出部50Bが含まれる。よって、便座22の裏面で互いに部分的に重なる領域を伝うような第1座裏流れFaと第2座裏流れFbを形成でき、その領域を効果的に洗浄できる利点がある。
【0104】
第3の工夫点に関連する他の特徴を説明する。前述の通り、便器装置10(便座ユニット16)は、
図5、
図20に示すように、第1吐出部50Aに対応する第1シャッター104Aと、第2吐出部50Bに対応する第2シャッター104Bとを備える。便器装置10は、第1シャッター104Aに対応する第1駆動機構108Aと、第2シャッター104Bに対応する第2駆動機構108Bとを備える。駆動機構108A、108Bは、自らと対応するシャッター104A、104Bを駆動可能である。前述の制御部124は、第1駆動機構108Aや第2駆動機構108Bも制御可能である。
【0105】
図22(a)は、第1シャッター104A、第2シャッター104Bの動作状態を示し、
図22(b)は、他の動作状態を示す。制御部124は、
図22(a)に示すように、第1吐出部50Aが洗浄液を吐出しているとき、第2シャッター104Bを隠蔽位置Pf1に移動させるように第2駆動機構108Bを制御する。このとき、制御部124は、第1シャッター104Aを露出位置Pf2に移動させるように第1駆動機構108Aを制御する。
【0106】
また、制御部124は、
図22(b)に示すように、第2吐出部50Bが洗浄液を吐出しているとき、第1シャッター104Aを隠蔽位置Pf1に移動させるように第1駆動機構108Aを制御する。このとき、制御部124は、第2シャッター104Bを露出位置Pf2に移動させるように第2駆動機構108Bを制御する。
【0107】
これにより、第1吐出部50A及び第2吐出部50Bのうちの一方の吐出部50A、50Bが洗浄液を吐出しているとき、その洗浄液の飛沫が他方の吐出部50A、50Bの吐出孔74内に入り込み難くなり、良好な衛生性を得られる。
【0108】
なお、制御部124は、第1シャッター104Aの隠蔽位置Pf1から露出位置Pf2への移動が完了してから、第1吐出部50Aから洗浄液を吐出する第1供給状態を開始するように切替機構122を制御してもよい。また、制御部124は、第2シャッター104Bの露出位置Pf2から隠蔽位置Pf1への移動が完了してから、第1吐出部50Aから洗浄液を吐出する第1供給状態を開始するように切替機構122を制御してもよい。
【0109】
(4)便器装置10の第4の工夫点を説明する。
図23(a)は、第1座裏流れFaを示す説明図であり、
図23(b)は、第1鉢内流れFcを示す説明図である。
図24(b)は、第2座裏流れFbを示す説明図であり、
図24は、第2鉢内流れFdを示す説明図である。
図23(a)、
図24(a)は、便座22と便器本体14の平面図であり、
図24(b)、
図24(b)は、便器本体14の平面図である。
【0110】
便器装置10(便座ユニット16)は、次の条件(a)を満たすように構成される。この条件(a)は、次の条件(a1)かつ条件(a2)を満たすことである。条件(a1)は、
図6、
図23(a)に示すように、第1吐出部50Aが吐出する洗浄液により便座22の裏面で周方向の一方側Paに伝う第1座裏流れFaを形成することである。条件(a2)は、
図23(b)に示すように、第1座裏流れFaを形成する洗浄液を用いて、便器本体14の便鉢部12内で周方向の一方側Paに旋回する第1鉢内流れFcを形成することである。本図では、第1座裏流れFaを形成する洗浄液が便鉢部12内で伝う主な範囲Sfを示す。
【0111】
また、便器装置10(便座ユニット16)は、次の条件(b)を満たすように構成される。この条件(b)は、次の条件(b1)かつ条件(b2)を満たすことである。条件(b1)は、
図7、
図24(a)に示すように、第2吐出部50Bが吐出する洗浄液により便座22の裏面で周方向の他方側Pbに伝う第2座裏流れFbを形成することである。条件(b2)は、
図24(b)に示すように、第2座裏流れFbを形成する洗浄液を用いて、便器本体14の便鉢部12内で周方向の他方側Pbに向けて旋回する第2鉢内流れFdを形成することである。本図では、第2座裏流れFbを形成する洗浄液が便鉢部12内で伝う主な範囲Sgを示す。
【0112】
本実施形態の第1座裏流れFaは、便座22の裏面の右半部領域38Rの後部から前側の周方向端部38Raまでを含む範囲に形成される(
図6参照)。本実施形態の第2座裏流れFbは、便座22の裏面の左半部領域38Lの後部から前側の周方向端部38Laまでを含む範囲に形成される。第1座裏流れFaや第2座裏流れFbを形成する洗浄液の多くは、便座22の裏面で水平方向の速度成分を持ったまま垂れ落ちる。本実施形態の洗浄液の多くは、前述の通り、便座22の裏面に設けられる山部88や山部88の近傍から垂れ落ちる。
【0113】
座裏流れFa、Fbを形成する洗浄液は、便座22の裏面から垂れ落ちた後、便鉢部12の内面に当たってから、その水平方向の速度成分の勢いを持ったまま流れることで鉢内流れFc、Fdを形成する。平面視において、便鉢部12の上端開口の中心Cqを便鉢部12の中心Cqとする。本実施形態の第1鉢内流れFcは、便鉢部12の中心Cqより前側の前側領域から、便鉢部12の中心Cqより左側の左半部領域を経由しつつ、便鉢部12の底部に流れ込むように形成される(
図23(b)参照)。本実施形態の第2鉢内流れFdは、便鉢部12の前側領域から、便鉢部12の中心Cqより右側の右半部領域を経由しつつ、便鉢部12の底部に流れ込むように形成される(
図24(b)参照)。
【0114】
条件(a)を満たすうえで、第1吐出部50Aから吐出された洗浄液が便座22の裏面を周方向の一方側Paに伝うように、第1吐出部50Aの洗浄液の吐出方向、便座22に対する第1吐出部50Aの相対位置が少なくとも設定される。条件(b)を満たすうえで、第2吐出部50Bから吐出された洗浄液が便座22の裏面を周方向の他方側Pbに伝うように、第2吐出部50Bの洗浄液の吐出方向、便座22に対する第2吐出部50Bの相対位置が少なくとも設定される。これにより座裏流れFa、Fbを形成できれば、その座裏流れFa、Fbを形成する洗浄液が便座22の裏面から垂れ落ち、その垂れ落ちた洗浄液が便鉢部12内で流れることで鉢内流れFc、Fdを形成できる。
【0115】
これにより、便座22の裏面を第1座裏流れFaで洗浄しつつ、少ない洗浄液で便鉢部12内の広い範囲を洗浄する第1鉢内流れFcを形成でき、便座22の裏面や便鉢部12を効果的に洗浄できる。
【0116】
また、便座22の裏面を第2座裏流れFbでも洗浄しつつ、少ない洗浄液で便鉢部12内の広い範囲を洗浄する第2鉢内流れFdを形成でき、便座22の裏面や便鉢部12を効果的に洗浄できる。特に、第1座裏流れFaで洗浄しきれない範囲を第2座裏流れFbで洗浄しつつ、第1鉢内流れFcで洗浄しきれない範囲を第2鉢内流れFdで洗浄できる点で利点がある。
【0117】
図25は、
図2のE-E線断面の一部を示す図である。
図11、
図25に示すように、機能装置20の下面部には、便器本体14の便鉢部12の内面と上下方向Zに対向する第2鉢対向面130が設けられる。第2鉢対向面130は、第2ケーシング26の突出部26bの下面部に設けられる。第2鉢対向面130は、便鉢部12の内部空間に露出しており、便鉢部12で受けた汚物の飛沫等が付着することで汚れが付きやすい。
【0118】
便器装置10の吐出部50A~50Cには、
図3、
図25に示すように、複数の吐液孔132A、132B、132Cから洗浄液を吐出可能な第3吐出部50Cが含まれる。本実施形態の第3吐出部50Cは、機能装置20の下面部、より詳しくは、第2ケーシング26の突出部26bの下面部に設けられる。本実施形態の第3吐出部50Cは、第2ケーシング26の下面部から下方に突き出るように設けられる。本実施形態の第3吐出部50Cには円弧状の外周面部134が設けられる。本実施形態の外周面部134は前後方向Xに沿って延びる円弧状をなす。外周面部134には洗浄液が流出する吐液孔132A~132Cの洗浄液出口が開口する。
【0119】
本実施形態の第3吐出部50Cは、便器本体14の右半部の上側に配置される。詳しくは、第3吐出部50Cは、左右方向Yで第2吐出部Bが位置する側(左側)とは反対側(右側)に位置する便器本体14の右半部の上側に配置される。本実施形態の第3吐出部50Cは、第1吐出部50Aや第2吐出部50Bより後方に配置される。
【0120】
図26は、
図25の第3吐出部50Cの内部構造を示す断面図である。
図3、
図25、
図26に示すように、複数の吐液孔132A、132B、132Cには、便器本体14の便鉢部12内に下向きに洗浄液を吐出可能な鉢用吐液孔132A、132Bと、鉢用吐液孔132A、132Bの洗浄液の吐出方向とは異なる向きに洗浄液を吐出可能な第3吐液孔132Cとが含まれる。
【0121】
鉢用吐液孔132A、132Bには、複数の第1吐液孔132Aと、複数の第2吐液孔132Bとが含まれる。複数の第1吐液孔132Aは、前後方向Xに列状に並ぶように設けられる。複数の第2吐液孔132Bや複数の第3吐液孔132Cも同様である。
【0122】
図25、
図26に示すように、本実施形態の第1吐液孔132Aは、鉛直方向の下向きの速度成分を持った洗浄液を方向Pk1に吐出可能である。本実施形態の第2吐液孔132Bは、水平方向の速度成分と下向きの速度成分を持った洗浄液を方向Pk2に吐出可能である。
【0123】
図27は、第3鉢内流れFe1~Fe3を示す説明図である。
図27では、第3吐出部50Cが吐出する洗浄液が伝う主な範囲Shを示す。
【0124】
第1吐液孔132Aから吐出された洗浄液は、第1吐液孔132Aの下方で便鉢部12の内周面に当たり、そこから周方向の他方側Pbに流れるように誘導されることで、同方向に旋回する第3鉢内流れFe1を形成する。第1吐液孔132Aから吐出された洗浄液は便鉢部12の中心Cqより後方かつ右側で便鉢部12の内周面に当たる。
【0125】
第2吐液孔132Bから吐出された洗浄液は、便鉢部12の内周面に当たってから、その水平方向の速度成分の勢いを持ったまま流れることで、周方向の他方側Paに旋回する第3鉢内流れFe2を形成する。
【0126】
本実施形態の第3吐液孔132Cは、機能装置20の第2鉢対向面130を伝うように洗浄液を吐出可能である。第3吐液孔132Cは、上向きの速度成分を持つ洗浄液を吐出可能である。本実施形態の第3吐液孔132Cは、上向きの速度成分と、水平方向の速度成分を持つ洗浄液を吐出する。
【0127】
第3吐液孔132Cは、機能装置20の第2鉢対向面130を右側から左側(
図25の紙面の左側から右側)に伝うように洗浄液を吐出する。これにより、第3吐液孔132Cから吐出された洗浄液は、機能装置20の第2鉢対向面130を右側から左側に伝う裏面流れFgを形成する。
図7では、裏面流れFgを形成する洗浄液が伝う範囲Siを示す。裏面流れFgを形成する洗浄液の多くは、機能装置20の第2鉢対向面130の左半部分で水平方向の速度成分を持ったまま垂れ落ちる。機能装置20の第2鉢対向面130から垂れ落ちた洗浄液は、便鉢部12の内周面に当たってから、その水平方向の速度成分の勢いを持ったまま周方向の他方側Paに旋回する第3鉢内流れFe3を形成する。
【0128】
第3鉢内流れFe1~Fe3は、便鉢部12の中心Cqより後方で中心Cq周りに便鉢部12の後部を旋回しつつ、便鉢部12の底部に向けて流れ込む。このような第3鉢内流れFe1~Fe3の旋回方向は周方向の他方側Pbであり、第2吐出部50Bが吐出する洗浄液により便鉢部12内に形成される第2鉢内流れFd(
図24参照)の旋回方向と同じ向きとなる。
【0129】
図20、
図26を参照する。第3吐出部50Cの複数の吐液孔132A~132Cには、第1液路120aから分岐する第3液路120dを通して洗浄液が供給される。前述の切替機構122は、第3液路120dの途中に設けられる第3開閉弁126Dを有する。制御部124は、第2吐出部50Bが洗浄液を吐出する吐出動作を実行するとき、第3開閉弁126Dにより第3液路120dを開くことで、第3吐出部50Cも洗浄液が吐出する吐出動作を実行するように切替機構122を制御する。
【0130】
図28は、第2鉢内流れFdと第3鉢内流れFe1~Fe3を示す説明図である。前述の制御により、第3吐出部50Cが吐出する洗浄液により第3鉢内流れFe1~Fe3が便鉢部12内に形成されたとき、第2吐出部50Bが吐出する洗浄液によって第2鉢内流れFdも便鉢部12内に形成される。第3鉢内流れFe1~Fe3は、第1鉢内流れFcと周方向の同じ方向に旋回しており、便鉢部12の底部で合流する。これにより、便鉢部12の底部で周方向の速度成分が大きい旋回流Fhが形成され、便鉢部12の底部の洗浄能力が良好となる。また、サイホン作用を利用して便鉢部12内の汚物をトラップ部70を通して排出する場合、このような周方向の速度成分が大きい旋回流Fhを便鉢部12内で形成することで、サイホン作用を効果的に得られる利点もある。
【0131】
この第3鉢内流れFe1~Fe3は、第2鉢内流れFdの下向きの速度成分より大きい下向きの速度成分を持って流れている。第2鉢内流れFdは、このような第3鉢内流れFe1~Fe3に便鉢部12の底部より上方で合流することで、便鉢部12の底部に流れ込むことなく便鉢部12内を旋回し続ける事態を避けられ、早期に汚物を排出し易くなる。
【0132】
以上の第1鉢内流れFc、第2鉢内流れFd、第3鉢内流れFe1~Fe3は、全体として、便鉢部12の内周面の全域を流れており、便鉢部12内の全域が洗浄液により洗浄される。
【0133】
(5)便器装置10の第5の工夫点を説明する。前述の通り、吐出部50A~50Cは、
図5等に示すように、機能装置20の第2ケーシング26に設けられる。吐出部50A、50Bは、便器装置10の便座22とは異なる箇所に設けられることになる。この第2ケーシング26には、前述の機能部品として、便座22に着座する着座者の局部を洗浄するための局部洗浄装置140が収容される。局部洗浄装置140は、着座者の局部を洗浄する洗浄水を吐出するための局部洗浄ノズル142(以下、単にノズル142という)を有する。
【0134】
図29は、ノズル142を通る第2ケーシング26の側面断面図である。第2ケーシング26にはノズル用開口部144が形成される。本実施形態のノズル用開口部144は、第2ケーシング26の斜面部26cに形成される。第2ケーシング26にはノズル用開口部144を開閉可能なノズル用シャッター146が取り付けられる。本実施形態のノズル用シャッター146は、左右方向Yに長尺な板状をなす。本実施形態のノズル用シャッター146は、第2ケーシング26に回動軸148を介して回動可能に取り付けられる。本実施形態の回動軸148は水平方向に沿って延びている。ノズル用シャッター146は、回動軸148周りの一方向Pj1に回動することによってノズル用開口部144を開き、それとは反対方向Pj2に回動することによってノズル用開口部144を閉じる。
【0135】
ノズル142は、前方に向かって下方に傾斜するように設けられる。ノズル142の先端部は、ノズル142の下方に位置しており、その先端部には洗浄水を吐出するノズル孔142aが形成される。ノズル142は、モータ等を用いたノズル駆動機構(不図示)によって、ノズル用シャッター146の開閉を伴いノズル用開口部144に対して進退可能に駆動される。ノズル142は、ノズル用開口部144に対して進退可能に設けられることになる。
【0136】
図3に示すように、吐出部50A~50Cやノズル142は、便座22の中心Cpより後方に設けられる。これらは、本実施形態において、便座22の中央開口部32の後端32aより後方に設けられる。また、これらは、本実施形態において、第2ケーシング26に形成される一連なりの内部空間に収容される。
【0137】
図5に示すように、第1吐出部50Aは、ノズル142に対して左右方向Yの一方側となる右側に設けられる。第2吐出部50Bは、ノズル142に対して左右方向Yの他方側となる左側に設けられる。第1吐出部50Aや第2吐出部50Bは、平面視において、ノズル142と左右方向Yに重なる位置に配置される。
【0138】
吐出部50A~50Cは、機能装置20の前端部20aより後方に設けられる。本実施形態の吐出部50A、50Bは、前述の隠蔽位置Pf1にシャッター104A、104Bがあるときに、この条件を満たすように設けられる。機能装置20の前端部20aは、便座22の中心Cpより後方に設けられる(
図3参照)。機能装置20の前端部20aは、便座22の中央開口部32の後端32aより後方に設けられる。ここでの機能装置20の前端部20aとは、第2ケーシング26の前端部をいう。吐出部50A~50Cは、平面視において、機能装置20により隠蔽される位置に設けられる。
【0139】
(E)第5の工夫点の効果を説明する。吐出部50A~50Cは、便座22ではなく、機能装置20の第2ケーシング26に設けられる。よって、吐出部50A、50Bの内部に洗浄液が残った場合でも、その洗浄液の重さが便座22に加わることがなくなり、便座22を移動させるために付与すべき荷重が増大するケースを避けられる。これは、本実施形態でいえば、便座22を起立位置に回動させるために付与すべき荷重が増大するケースをいう。起立位置に回動させるために付与すべき荷重の増大を避けられる。このため、便座22の裏面の洗浄を実現するにあたり、便座22の使い勝手を維持できる。
【0140】
また、吐出部50A、50Bは、便座22の中心Cpより後方であって、ノズル142に対して左側や右側に設けられる。よって、便座22の中心Cpより前方に吐出部50A、50Bが設けられる場合と比べ、吐出部50A、50Bやノズル142を機能装置20のまとまった箇所に設けることができ、機能装置20のコンパクト化を図れる。
【0141】
吐出部50A、50Bには、周方向の一方側Paに向けて便座22の裏面を伝うように洗浄液を吐出可能な第1吐出部50Aと、周方向の他方側Pbに向けて便座22の裏面を伝うように洗浄液を吐出可能な第2吐出部50Bが含まれる。よって、前述のように、便座22の第1鉢対向面34の一部の領域(前端領域39)において、周方向の一方側Paに伝わる第1座裏流れFaと、周方向の他方側Pbに伝わる第2座裏流れFbとを形成でき、その領域を効果的に洗浄できる。
【0142】
特に、便座22の第1鉢対向面34の前端領域39には、便器本体14の便鉢部12で受けた小便の飛沫が当たり易く、汚れが付き易い。このような領域に第1座裏流れFaと第2座裏流れFbを形成でき、その汚れを洗い落とし易くなる点で利点がある。
【0143】
吐出部50A~50Cは、機能装置20の前端部20aより後方に設けられる。よって、便器本体14の便鉢部12内を上側から覗き込んだとき、機能装置20により吐出部50A~50Cが隠れて見え難くなり、良好な意匠性を得られる。
【0144】
便器装置10の他の特徴を説明する。
図2を参照する。便座22の後部の下面部には上向きに窪む凹部150が形成される。凹部150は、機能装置20の上面部の一部と上下方向Zに重なる位置に配置される。凹部150は、機能装置20の上面部の一部の外形に合わせた外形に形成され、その上面部に沿うように配置される。
図11に示すように、吐出部50A~50Cは、便座22の凹部150と上下方向Zに重なる位置に配置される。
【0145】
座裏用吐出部50A、50Bは、便座22の裏面から離れた位置に設けられ、その位置から便座22の裏面に当てるように洗浄液を吐出方向Pcに吐出する。座裏用吐出部50A、50Bは、上向きの速度成分を持つ洗浄液を洗浄液出口76から吐出可能である。座裏用吐出部50A、50Bは、少なくとも洗浄液出口76を流出する時点で上向きの速度成分を持つように洗浄液を吐出可能であるということである。座裏用吐出部50A、50Bの吐出方向Pcは上向きに設定されるともいえる。本実施形態の座裏用吐出部50A、50Bは、鉛直方向で上向きの速度成分と、水平方向の速度成分を持つ洗浄液を吐出する。本実施形態の座裏用吐出部50A、50Bは、上向きの速度成分より水平方向の速度成分の方が大きい洗浄液を吐出する。
【0146】
図30(a)は、第1吐出部50Aが吐出する洗浄液を模式的に示す図である。座裏用吐出部50A、50Bから吐出される洗浄液は、重力の影響により鉛直方向での速度成分がゼロに近づこうとするが、その速度成分がゼロになる前に便座22の裏面に当たる。座裏用吐出部50A、50Bから吐出される洗浄液は、上向きの速度成分を持った状態で便座22の裏面に当たることになる。便器装置10(便座ユニット16)は、この条件を満たすように構成されるといえる。この条件を満たすうえで、座裏用吐出部50A、50Bの洗浄液の吐出方向Pcの他に、便座22の裏面に洗浄液が当たる箇所から吐出部50A、50Bまでの距離、吐出部50A、50Bに供給される洗浄液に付与される供給圧力等が設定される。この距離が小さいほど、また、洗浄液の供給圧力が高いほど、前述の条件を満たし易くなる。
【0147】
この利点を説明する。
図30(b)は、第2変形例の第1吐出部50Aが吐出する洗浄液を模式的に示す図である。本例の第1吐出部50Aは、水平方向の速度成分のみを持つ洗浄液を吐出する。この例の第1吐出部50Aは、上向きの速度成分を持たない洗浄液を吐出することになる。この場合、第1吐出部50Aの洗浄液出口76から流出した洗浄液の一部は、重力の影響を受けて、便座22の裏面に当たることなく、下向きに流れ落ち易くなる。特に、洗浄液出口76の下端縁に近い位置から流出した洗浄液の一部ほど、その傾向が強くなる。
【0148】
これに対して、本実施形態によれば、
図30(a)に示すように、重力の影響を受けたとしても、その多くを便座22の裏面に当てるように設計し易くなる。よって、
図30(b)の例と比べて、便座22の裏面に当たらずに座裏用吐出部50A、50Bから流れ落ちる洗浄液の量を減らすことで、便座22の裏面を伝う洗浄液の量を増やし易くなり、便座22の裏面を効果的に洗浄できる。
【0149】
(6)便器装置10の第6の工夫点を説明する。
図31は、便座ユニット16の一部の拡大側面図である。前述の通り、機能装置20は、第1ケーシング24と、第2ケーシング26とを備える。第1ケーシング24は、便器本体14の後部の上面部に設置されるベースプレート160と、ベースプレート160を上方から覆うようにベースプレート160に組み付けられるケースカバー162とを有する。本図では、ケースカバー162の一部を省略している。
【0150】
図32は、便座22と第2ケーシング26の位置関係を模式的に示す図である。
図33は、
図32(b)の斜視図であり、
図34は、
図32(c)の斜視図である。便座22は、第1ケーシング24に第1ヒンジ機構164を介して回動可能に取り付けられる。便座22は、自らが回動することによって、便器本体14上に倒伏した倒伏位置(
図32(a)参照)と、便器本体14に対して起立した起立位置(
図32(b)、(c)参照)とに移動可能である。本明細書では、特に記載しない限り、便座22が倒伏位置にあるときを基準に、便座22の位置関係を説明する。
【0151】
第2ケーシング26は、第1ケーシング24のベースプレート160に移動可能に取り付けられる。本実施形態の第2ケーシング26は、第2ヒンジ機構166を介して回動可能に第1ケーシング24に取り付けられる。第2ケーシング26は、便器本体14の上面部に載置される第1位置(
図32(a)、(b)参照)と、第2ケーシング26の少なくとも前部が第1位置より上方に位置する第2位置(
図32(c)参照)とに移動可能である。本実施形態の第2ケーシング26は、自らが回動することによって、便器本体14上に倒伏する第1位置としての倒伏位置と、便器本体14に対して起立する第2位置としての起立位置との間を移動可能である。本明細書では、特に記載しない限り、第2ケーシング26が第1位置にあるときを基準に、第2ケーシング26の位置関係を説明する。
【0152】
図31に示すように、第2ケーシング26は、便座22とは別体に設けられるとともに、便器本体14に第1ケーシング24を介して回動可能に取り付けられる。第2ケーシング26は、第1吐出部50A~50Cが設けられる本体部26eを有する。本体部26eは、第2ケーシング26の回動中心となる第2ヒンジ機構166の第2ヒンジ軸166aより前方に少なくとも一部が位置するように設けられる。第2ヒンジ軸166aは、便器本体14の便鉢部12より後方であって便器本体14の上面部より上方に位置するように設けられる。本実施形態の第2ケーシング26の本体部26eは、この第2ヒンジ軸166aより前方に全体が位置するように設けられる。また、第2ケーシング26の本体部26eは、便器本体14の便鉢部12と上下方向に重なる箇所に少なくとも一部が位置するように設けられる。
【0153】
第2ケーシング26の本体部26eは、
図32(c)に示すように、第2ケーシング26が第2位置にあるとき、この第2ヒンジ軸166aより上方に位置するように設けられる。本実施形態の本体部26eは、図示はしないが、第2ケーシング26が第2位置にあるとき、第1ケーシング24より上方に位置するように設けられる。
【0154】
図33、
図34を参照する。第2ケーシング26が第1位置にあるとき、第2ケーシング26は、便鉢部12のリム部18のうち、リム部18の後部の上面部を上方から覆うように設けられる。
図33では、第2ケーシング26によりリム部18が覆われる範囲Sjにハッチングを付して示す。このとき、第2ケーシング26は、便鉢部12の上端開口12bの後端12cを前後方向Xに跨がる範囲Sjを覆うように設けられる。
【0155】
第2ケーシング26が第2位置にあるとき、便鉢部12のリム部18の上面部は、環状に連続する範囲で露出するように設けられる。このとき、便器本体14のリム部18の上面部は、便鉢部12の上端開口12bの後端12cを前後方向Xに跨がる範囲Sjが露出するように設けられる。
【0156】
便座ユニット16は、第2ケーシング26を単に上側に移動させるのではなく、第2ケーシング26を回動させることで、便器本体14の上面部の一部を露出させることができる。よって、第2ケーシング26を第2位置に移動させて便器本体14の上面部の一部を露出させたとき、その露出箇所の上側に第2ケーシング26の大部分が位置しなくなる。これに伴い、便器本体14の上面部の露出箇所の視認性が良好となり、その露出箇所の清掃性が良好となる。
【0157】
また、第2ケーシング26を第1位置から第2位置に移動させたとき、第2ケーシング26の本体部26eに設けられる吐出部50A~50Cを上方に移動させられる。よって、第2ケーシング26が第2位置にあるとき、第2ケーシング26が第1位置にあるときに吐出部50A、50Bが占有していたスペースの周囲で、便器本体14の上面部の広い範囲Sjを露出させることができる。このため、第2ケーシング26に吐出部50A~50Cを組み込みつつ、便器本体14の上面部の清掃性が良好となる。
【0158】
また、吐出部50A~50Cは、便座22ではなく、第2ケーシング26に設けられるため、前述の(E)の効果を得られる。
【0159】
第6の工夫点に関連する他の特徴を説明する。
図35は、
図31の矢視Fから見た図である。
図36は、
図35の一部を拡大して示す断面図である。
図37は、
図36のG-G線断面図である。第2ケーシング26は、第2ヒンジ機構166を用いて、便器本体14に第1ケーシング24を介して回動可能に取り付けられる。第2ヒンジ機構166は、第2ヒンジ軸166aと、第1ケーシング24に設けられる第2ヒンジベース部166bと、第2ケーシング26に設けられる第2ヒンジ部166cとを有する。第2ヒンジ軸166aは、第2ヒンジ部166cを第2ヒンジベース部166bに回動可能に連結する。第2ケーシング26は、便器本体14に第2ヒンジ軸166aを介して第2ヒンジ軸166a周りに回動可能に連結されることになる。
【0160】
第2ヒンジ軸166aは、第2ヒンジ部166cと一体的に回動可能に設けられる。本実施形態の第2ヒンジ軸166aは、第2ヒンジ部166cと同じ部材の一部を構成しており、第2ヒンジ部166cの左右方向Yの外側に向けて突き出るように設けられる。
【0161】
第2ヒンジベース部166bは、第1ケーシング24のケースカバー162により外部から隠蔽されている(
図31参照)。本実施形態の第2ヒンジベース部166bは、第1ケーシング24のベースプレート160から上方に突き出るように設けられる。本実施形態の第2ヒンジベース部166bには、第2ヒンジ軸166aが挿通されるとともに第2ヒンジ軸166aを回動自在に支持する軸支持孔166dが形成される。本実施形態の軸支持孔166dは、第2ヒンジベース部166bの左右方向Yの内側に向かって開放するように設けられる。
【0162】
図38は、機能装置20の斜視図である。第2ヒンジ部166cは、第2ケーシング26が第1位置(倒伏位置)にあるとき、第2ケーシング26の本体部26eから後方に突き出るように設けられる。第2ヒンジ部166cは、第1ケーシング24に左右方向Yに間を置いて複数(二つ)設けられる。
【0163】
第1ケーシング24の前部には、第2ヒンジ部166cを収容するヒンジ収容部24aが設けられる。ヒンジ収容部24aは、複数の第2ヒンジ部166cのそれぞれに対応して個別に設けられる。ヒンジ収容部24aは、第1ケーシング24の前面部から後方に凹むように設けられる。本実施形態のヒンジ収容部24aには、前方に向かって開くとともに上方に向かって開くように開口24bが形成される。第2ヒンジ部166cは、第2ケーシング26が第1位置にあるとき、ヒンジ収容部24aに嵌め込まれるように収容される。このとき、第2ケーシング26の第2ヒンジ部166cの上面部は、第1ケーシング24の上面部と面一をなすように設けられる。本実施形態では、第2ケーシング26の本体部26eの上面部も、第1ケーシング24の上面部と面一をなすように設けられる。
【0164】
図5に示すように、第2ヒンジ機構166の内部には、第2ケーシング26の外部から内部に洗浄液を供給するための前述の給液路120が設けられる。二つの第2ヒンジ機構166のうちの一方の第2ヒンジ機構166の内部には、第1吐出部50Aに洗浄液を供給するための給液路120の第1液路120aの一部が設けられる。他方の第2ヒンジ機構166の内部には、第2吐出部50Bに洗浄液を供給するための給液路120の第2液路120bの一部が設けられる。
【0165】
図36、
図37を参照する。このような給液路120の一部は、第2ヒンジ機構166の構成部品となる第2ヒンジ軸166a、第2ヒンジベース部166b、第2ヒンジ部166cのそれぞれに形成される。この給液路120の一部は、本実施形態において、ホースが構成しないということである。
【0166】
第2ヒンジ軸166aには、第2ヒンジ軸166aの軸線方向に沿って延びる第1液路形成面172Aが設けられる。第1液路形成面172Aは、第2ヒンジ軸166aの軸線方向のうち第2ヒンジベース部166bが位置する側(
図36の紙面で左側)に向かって開くとともに、それとは軸線方向の反対側(
図36の紙面で右側)に向かって閉じる有底孔を構成する。
【0167】
第2ヒンジベース部166bには、第2ヒンジ軸166aの第1液路形成面172Aの内部空間に連なる内部空間を形成する第2液路形成面172Bが設けられる。第2液路形成面172Bは、第2ヒンジ軸166aの径方向外側に向けて延びる上流側部分172Baと、第2ヒンジ軸166aの軸線方向に沿って延びる下流側部分172Bbとを有する。第2液路形成面172Bの下流側部分172Bbは軸支持孔166dの奥側に形成される。
【0168】
第2ヒンジ部166cには、第2ヒンジ軸166aの第1液路形成面172Aの内部空間に連なる内部空間を形成する第2液路形成面172Cが設けられる。第2液路形成面172Cは、第2ヒンジ軸166aの径方向外側に向けて延びており、その末端部にはホース等の液路形成部材が接続される。
【0169】
本実施形態の第2ヒンジ機構166の内部には給液路120が設けられるため、第2ヒンジ機構166の構成部品が占有しているスペースを利用して、第2ケーシング26内に洗浄液を供給できるようになる。
【0170】
特に、本実施形態では、第2ヒンジ機構166の構成部品に給液路120の一部を形成する液路形成面172A~172Cが設けられる。かりに、第2ヒンジ機構166の内部にホースを挿通して、そのホースに給液路120を設ける場合、第2ケーシング26の回動に伴いホースがねじれてしまうため、その対策が必要となる。この点、本実施形態によれば、ホースのねじれに対する対策を講じることなく、第2ヒンジ機構166の内部に給液路120の一部を設けられる利点がある。
【0171】
便座ユニット16の他の特徴を説明する。
図31、
図36に示すように、便座ユニット16は、第1ケーシング24及び第2ケーシング26の内部を通るように引き回されるケーブル174を備える。ケーブル174は、第2ケーシング26内の機能部品である開閉弁126A等と、第2ケーシング26外に配置される電子部品としての制御部124を接続する。制御部124は、ケーブル174を通して開閉弁126Aに制御信号や電力を供給する。
【0172】
第2ヒンジ機構166の第2ヒンジ部166cには、ケーブル174を挿通するためのケーブル挿通孔166eが形成される。本実施形態のケーブル挿通孔166eは、第2ヒンジ部166cの第2液路形成面172Cの延びる方向と同方向に沿って延びるように形成される。
【0173】
便座22は、
図31に示すように、第1ヒンジ機構164を用いて、便器本体14に第1ケーシング24のベースプレート160を介して回動可能に取り付けられる。第1ヒンジ機構164は、便座22と一体的に回動可能に設けられる第1ヒンジ軸164aと、第1ケーシング24のベースプレート160に設けられ、第1ヒンジ軸164aを回動自在に支持する第1ヒンジベース部164bとを有する。便座22は、便器本体14に第1ヒンジ軸164aを介して第1ヒンジ軸164a周りに回動可能に連結されることになる。
【0174】
第1ヒンジベース部164bは、
図38に示すように、第1ケーシング24のケースカバー162により隠蔽されずに露出している。本実施形態の第1ヒンジベース部164bは、第1ケーシング24の上面部から上方に突き出るように設けられるとともに左右方向Yに延びる筒状をなす。
【0175】
図32に示すように、第2ヒンジ軸166aは、第1ヒンジ軸164aより前方に配置される。これにより、
図32(c)に示すように、便座22が起立位置にあり、第2ケーシング26が第2位置(起立位置)にあるとき、便座22と第2ケーシング26の位置を前後方向Xにずらすことができ、両者の干渉を避けるように設計し易くなる。なお、本実施形態の第2ヒンジ軸166aは、第1ヒンジ軸164aより下方に配置される。
【0176】
図2、
図38に示すように、第1ケーシング24には、便座22が起立位置に回動したとき、便座22の後端部との干渉を避けるための逃げ部24cが形成される。本実施形態の逃げ部24cは、第1ケーシング24の上面部に設けられる下向きに窪む凹部である。また、第1ケーシング24には、便座22と共通の第1ヒンジ軸164aを介して便器本体14に回動可能に便蓋176が取り付けられる。
【0177】
便器装置10の他の特徴を説明する。便座ユニット16は、前述の通り、洗浄液を吐出可能な第1吐出部50A、第2吐出部50B、第3吐出部50Cを有する。第1吐出部50A~第3吐出部50Cは、自らから吐出される洗浄液により鉢内流れFc、Fd、Fe1~Fe3を形成することによって、便器本体14の便鉢部12内を洗浄する。第1吐出部50A~第3吐出部50Cは、便鉢部12を洗浄するための洗浄液を吐出可能であるといえる。
【0178】
図2に示すように、便鉢部12の上部には、便鉢部12を洗浄するための洗浄液を吐出可能な吐出部が設けられていない。本実施形態においては、便鉢部12に吐出部を設けるのではなく、便座ユニット16に設けた吐出部50A、50B、50Cを利用して、便鉢部12を洗浄することになる。本実施形態の便鉢部12の上部は、便鉢部12の上端開口12bの中心Cq(
図23参照)を通る鉛直線周りで全周に亘り周方向に連続している。また、本実施形態においては、便鉢部12の下部にも、洗浄液を吐出可能な吐出部が設けられていない。
【0179】
(F1)これにより、便鉢部12の上部に吐出部がなくなるため、便鉢部12の上部の内周面をつっかえることなく周方向に拭き掃除し易くなり、便鉢部12の清掃性が良好となる。また、便鉢部12の上部に吐出部がないため、便鉢部12の上部の内周面がすっきりとした構造となり、良好な意匠性を得られる。
【0180】
前述した便器本体14のトラップ部70の入口70aは、便鉢部12の前側の内壁面に開口している。便鉢部12の後側の内壁面にはトラップ部70の入口70aの他に、他の開口部が開口していないということである。これにより、便器本体14の便鉢部12内を前側から覗き込んだとき、トラップ部70の入口70aを視認し難くなる。よって、便鉢部12内を前側から覗き込んだとき、便鉢部12の上部の他にも便鉢部12の底部もすっきりとした構造となり、良好な意匠性を得られる。
【0181】
(第2実施形態)
図39は、第2実施形態の便器装置10の一部を示す図である。
図39(a)は、シャッター104Aが隠蔽位置Pf1にあり、
図39(b)は、シャッター104Aが露出位置Pf2にある。本実施形態は、主に、第2の工夫点に関連している。
【0182】
本実施形態の吐出部50Aは、シャッター104Aと別体に設けられる。また、本実施形態の吐出部50Aは、全体として長尺状をなしており、第2ケーシング26に直線的に進退方向Pmに移動可能に支持される。吐出部50Aの外周面には吐出孔74の洗浄液出口76が開口している。
【0183】
本実施形態の駆動機構108A(不図示)は、吐出部50Aを進退方向Pmに駆動することで、吐出部50Aを進出位置Ph1と退避位置Ph2の間で移動させるとともに、シャッター104Aを隠蔽位置Pf1と露出位置Pf2の間で移動させる。
【0184】
詳しくは、吐出部50Aは、
図39(b)に示すように、駆動機構108Aにより進退方向Pmの一方側(図中左側)に駆動されると、シャッター104Aに押圧力を付与する。これにより、吐出部50Aは、シャッター104Aの回動を伴い開口部102Aを開く方向にシャッター104Aを移動させる。この結果、吐出部50Aは、シャッター104Aが開いた開口部102Aから外部に進出する進出位置Ph1に移動させられる。また、シャッター104Aは、吐出部50Aの吐出孔74を外部に露出させる露出位置Pf2に移動させられる。このとき、吐出部50Aの吐出孔74から吐出方向Pcに吐出した洗浄液を便座22の裏面に当てることで、その洗浄液を便座22の裏面に伝わせることができる。
【0185】
シャッター104Aには、不図示の付勢部材によって、第2ケーシング26の開口部102Aを閉じる方向に向かう付勢力が付与されている。吐出部50Aは、駆動機構108Aにより進退方向Pmの他方側(図中右側)に駆動させられると、
図39(a)に示すように、開口部102Aより内部に退避する退避位置Ph2に移動させられる。これに伴い、シャッター104Aは、付勢部材の付勢力により、自らの回動を伴い開口部102Aを閉じる方向に移動させられる。これにより、シャッター104Aは、吐出部50Aの吐出孔74を外部から隠蔽する隠蔽位置Pf1に移動させられる。
【0186】
このように、第2ケーシング26の開口部102Aに対して吐出部50Aを進退可能に設けるうえで、その具体的な構造は特に限定されない。
【0187】
(第3実施形態)
図40は、第3実施形態の便座22の一部を模式的に示す図である。本実施形態は、主に、第2の工夫点に関連している。本実施形態の吐出部50Aは、機能装置20の第2ケーシング26ではなく、便座22の裏面に設けられる。
【0188】
本実施形態のシャッター104Aは、第2ケーシング26の開口部102Aではなく、吐出部50Aの吐出孔74を開閉可能である。本実施形態のシャッター104Aは、回動軸106周りに回動することによって、自らが対応する吐出部50Aの吐出孔74を開閉可能である。シャッター104Aは、吐出孔74を外部から隠蔽する隠蔽位置Pf1にあるとき、吐出孔74を閉じている。シャッター104Aは、吐出孔74を外部に露出させる露出位置Pf2にあるとき、吐出孔74を開いている。このとき、吐出部50Aの吐出孔74から吐出方向Pcに洗浄液を吐出することで、その洗浄液を便座22の裏面に伝わせることができる。
【0189】
このように、シャッター104Aは、吐出孔74を閉じることで吐出孔74を隠蔽してもよいし、収容部材の開口部102Aを閉じることで吐出孔74を隠蔽してもよい。
【0190】
(第4実施形態)
図41は、第4実施形態の便器装置10の一部を模式的に示す図である。
図41(a)は、便座22が倒伏位置、第2ケーシング26が第1位置にある例を示す。
図41(b)は、便座22が起立位置、第2ケーシング26が第1位置にある例を示す。
図41(c)は、便座22が起立位置、第2ケーシング26が第2位置にある例を示す。
【0191】
本実施形態は、主に、第5の工夫点に関連している。機能装置20の第2ケーシング26に吐出部50Aを設けるうえで、第2ケーシング26は便器本体14に第1ケーシング24を介して回動可能に取り付けられる例を説明した。
【0192】
この他にも、第2ケーシング26は、便器本体14に上下方向に移動可能に取り付けられてもよい。詳しくは、第2ケーシング26は、便器本体14の上面部に載置される第1位置と、便器本体14の上面部から上方に離れた第2位置との間を移動可能である。この場合でも、(E)で説明した効果を得られる。
【0193】
(第5実施形態)
図42は、第5実施形態の便器装置10の一部を模式的に示す図である。
図42(a)は、便座22が倒伏位置、第1ケーシング24が第1位置にある例を示す。
図42(b)は、便座22が倒伏位置、第1ケーシング24が第2位置にある例を示す。
図42(c)は、便座22が起立位置、第1ケーシング24が第2位置にある例を示す。
【0194】
本実施形態は、主に、第5の工夫点に関連している。機能装置20に吐出部50Aを設けるうえで、機能装置20の第1ケーシング24に吐出部50Aを設けることとし、第2ケーシング26を省略してもよい。
【0195】
第1ケーシング24は、便器本体14に上下方向に移動可能に取り付けられる。詳しくは、第1ケーシング24は、便器本体14の上面部に載置される第1位置と、便器本体14の上面部から上方に離れた第2位置との間を移動可能である。この場合でも、(E)で説明した効果を得られる。
【0196】
(第6実施形態)
図43、
図44は、第6実施形態の便器装置10の一部を模式的に示す側面断面図である。
図43は、便座22が倒伏位置にあり、
図44は、便座22が起立位置にある状態を示す。前述の吐出部50Aは、前述の通り、機能装置20の第2ケーシング26に回動軸106を介して回動可能に取り付けられる。
【0197】
水平面に対して吐出部50Aの吐出方向Pcがなす角度を吐出角度θとする。
図43に示すように、吐出方向Pcが上向きとなるときの吐出角度θを負の角度とし、
図44に示すように、吐出方向Pcが下向きとなるときの吐出角度θを正の角度とする。このとき、吐出部50Aは、回動軸106周りに回動することによって、吐出角度θを-90°以上90°以下の範囲で変更可能である。
【0198】
本実施形態の便器装置10は、便座22の回動範囲での位置である回動位置に応じて、吐出部50Aが洗浄液を吐出する吐出方向Pcを変更可能な変更機構180を備える。本実施形態の変更機構180は、便座22の回動位置を検出可能な便座センサ182と、吐出部50Aを駆動可能な駆動機構108Aと、駆動機構108Aを制御可能な制御部124と、を備える。
【0199】
便座センサ182は、たとえば、ホールICと磁石の組み合わせ、または、マイクロスイッチ等である。本実施形態の便座センサ182は、便座22が倒伏位置にあることを検出可能であるとともに、便座22が起立位置にあることを検出可能である。便座センサ182は、便座22の回動位置を検出すると、その回動位置を示す位置信号を制御部124に出力する。
【0200】
駆動機構108Aは、モータ等を用いて構成される。本実施形態の駆動機構108Aは回動軸106に接続され、吐出部50Aを回動軸106周りに回動軸106と一体的に回動させることで、吐出部50Aの吐出方向Pcを上下に変更可能である。なお、駆動機構108Aは、第1実施形態と同様、吐出部50Aとともにシャッター104Aを駆動可能であるが、シャッター104Aとは無関係に吐出部50Aのみを駆動可能であればよい。
【0201】
制御部124は、駆動機構108Aに対する制御を通じて吐出部50Aを駆動することによって、吐出部50Aの吐出方向Pcを変更可能である。本実施形態の制御部124は、駆動機構108Aに対する制御を通じて吐出部50Aの回動位置を変更することによって、吐出部50Aの吐出方向Pcを上下に変更可能である。
【0202】
制御部124は、
図43に示すように、便座22が倒伏位置にあることを示す位置信号を便座センサ182から受けると、洗浄液が上向きに吐出されるように吐出部50Aの吐出方向Pcを変更する。変更機構180は、便座22が倒伏位置にあるとき、洗浄液が上向きに吐出されるように吐出部50Aの吐出方向Pcを設定することになる。このとき、変更機構180は、便座22の裏面に洗浄液が当たるように吐出部50Aの吐出方向Pcを変更する。変更機構180は、便座22が倒伏位置にあるとき、吐出角度θを-90°以上0°未満の範囲に変更する。この状態の吐出部50Aから吐出された洗浄液は、便座22の裏面に当たってから、その裏面を伝わせられる。
【0203】
制御部124は、
図44に示すように、便座22が起立位置にあることを示す位置信号を便座センサ182から受けると、洗浄液が下向きに吐出されるように吐出部50Aの吐出方向Pcを変更する。変更機構180は、便座22が起立位置にあるとき、洗浄液が下向きに吐出されるように吐出部50Aの吐出方向Pcを設定することになる。変更機構180は、便座22が起立位置にあるとき、吐出角度θを0°超90°以下の範囲に変更する。この状態の吐出部50Aから吐出された洗浄液は、便座22の裏面に当たることなく、便器本体14の便鉢部12の内面に当てられる。
【0204】
以上の便器装置10によれば、変更機構180を用いることで、便座22の回動位置に応じて吐出部50Aの吐出方向Pcが所望の条件となるように設計でき、設計上の自由度が高められる。
【0205】
また、便座22が倒伏位置にあるとき、洗浄液が上向きに吐出されるように吐出部50Aの吐出方向Pcを変更することで、便座22の裏面を洗浄液により洗浄できる。また、便座22が起立位置にあるとき、洗浄液が下向きに吐出されるように吐出部50Aの吐出方向Pcを変更することで、洗浄液の便鉢部12外への飛散を防止できる。よって、便座22の裏面の洗浄を実現しつつ、便座22が起立位置にあるときに洗浄液が周囲に飛散してしまう事態を防止でき、良好な使い勝手を得られる。
【0206】
なお、本実施形態の制御部124は、便座センサ182から位置信号を受けたことを契機として、その位置信号に応じて吐出部50Aの吐出方向Pcを変更する。この他にも、制御部124は、前述の洗浄開始指令を受けたとき、その時点で便座センサ182から出力される位置信号に基づき、その位置信号に応じて吐出部50Aの吐出方向Pcを変更してもよい。
【0207】
本実施形態の変更機構180は、制御部124による制御のもと、吐出部50Aの吐出方向Pcを変更可能な例を説明した。変更機構180は、便座22の回動位置に応じて吐出部50Aの吐出方向Pcを変更可能であればよく、制御部124による制御は必須とはならない。
【0208】
たとえば、変更機構180は、便座22の回動動作を吐出部50Aの回動動作として機械的に伝動する伝動機構を有してもよい。伝動機構は、たとえば、歯車、リンク、ベルト等を用いて構成される。伝動機構は、便座22が倒伏位置にあるとき、吐出部50Aの吐出方向Pcを上向きに変更する。また、伝動機構は、便座22が起立位置にあるとき、吐出部50Aの吐出方向Pcを下向きに変更する。
【0209】
また、変更機構180は、吐出部50Aの吐出方向Pcではなく吐出範囲を変更可能でもよい。これを実現するうえで、変更機構180は、たとえば、吐出部50Aの吐出範囲を制限するための制限部材を有する。吐出部50Aは、洗浄液の少なくとも一部が上向きに吐出されるように広角な吐出範囲を有する。制限部材は、吐出部50Aの吐出孔74内や吐出孔74外に配置され、前述の駆動機構または伝動機構により、便座22の回動位置に応じて動作可能である。
【0210】
このような動作態様として、制限部材は、便座22が倒伏位置にあるとき、吐出部50Aの吐出範囲を制限しない位置に動かされる。これにより、変更機構180は、洗浄液の少なくとも一部が上向きに吐出されるように吐出部50Aの上下方向での吐出範囲を設定することになる。このとき、吐出部50Aは上向き及び下向きの両方に洗浄液を吐き出す。
【0211】
また、前述の動作態様として、制限部材は、便座22が起立位置にあるとき、吐出部50Aの吐出範囲を制限する位置に動かされる。このとき、制限部材は、洗浄液が下向きに吐出されるように、吐出部50Aの吐出範囲を制限する。これにより、変更機構180は、洗浄液が下向きに吐出されるように吐出部50Aの上下方向での吐出範囲を設定することになる。変更機構180は、便座22が倒伏位置にあるとき、吐出部50Aの上下方向での吐出範囲を拡大し、便座22が起立位置にあるとき、その吐出範囲を縮小することになる。これにより、便座22の裏面の洗浄を実現しつつ、便座22が起立位置にあるときに洗浄液が周囲に飛散してしまう事態を防止でき、良好な使い勝手を得られる。
【0212】
また、変更機構180を用いることで、便座22の回動位置に応じて吐出部50Aの吐出範囲が所望の条件となるように設計でき、設計上の自由度が高められる。
【0213】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。次に、各構成要素の変形例を説明する。
【0214】
便座22は、便器本体14に機能装置20を介して回動可能に取り付けられる例を説明したが、便器本体14に直接に回動可能に取り付けられてもよい。この場合、便座ユニット16は、機能装置20を備えてなくともよい。
【0215】
吐出部50A、50Bは、便座22の第1鉢対向面34に加えて、その第1鉢対向面34以外の箇所を伝うように洗浄液を吐出してもよい。
【0216】
(第1の工夫点に関して)
誘導部40、42は、便座22に設けられる例を説明したが、これに限定されない。たとえば、便座22の他にも、便器本体14に設けられていてもよい。第1誘導部40と第2誘導部42は同じ内周側凸部56の別々の部位が構成する例を説明したが、互いに分離した別部分が構成していてもよい。
【0217】
内周側凸部56は、コアンダ効果を利用して、その外周面56aを周方向に伝う洗浄液の流れ方向を径方向内側に曲げるように変えることで、便座22の第1鉢対向面34の内周側部分を伝うように洗浄液を誘導する例を説明した。この他にも、コアンダ効果を利用せず、「内周側凸部56の内周面」を周方向に伝う洗浄液の流れ方向を径方向内側に曲げるように変えることで、第1鉢対向面34の内周側部分を伝うように洗浄液を誘導してもよい。
【0218】
内周側凸部56は、便座22の第1鉢対向面34の内周側部分から下向きに突き出ていればよく、その形状は特に限定されない。外周側凸部58も、第1鉢対向面34の外周側部分から下向きに突き出ていればよく、その形状は特に限定されない。内周側凸部56、外周側凸部58のいずれも、周方向に連続する突条ではなく、単なる突起でもよいということである。また、内周側凸部56や外周側凸部58は、便器本体14の溜水72と関係で任意の位置に配置されてもよい。
【0219】
前述の(A-1)や(A-2)に記載の条件を満たす形状は特に限定されない。この条件を満たす形状として、内周側凸部56の外周面56aは、便座22の中心Cpを通る鉛直断面において、平面状、凸曲面状等をなしてもよい。同様に、外周側凸部58の内周面58aも、同様の鉛直断面において、平面状、凸曲面状等をなしてもよい。
【0220】
吐出孔74は、その具体的な形状は特に限定されない。吐出孔74は、たとえば、洗浄液出口76に向かって内幅が広がらずに同等の大きさとなるように形成されてもよい。
【0221】
流れ規制構造64は、便鉢部12の上端縁部に限定されない。流れ規制構造64は、たとえば、便器本体14と便座22の間に挟み込まれるシール部材等でもよい。
【0222】
第1傾斜面82は、右半部領域38Rの後端部から前側の周方向端部38Raまでの範囲に設けられる例を説明した。第1傾斜面82は、第1吐出部50Aから吐出される洗浄液が伝わる範囲の少なくとも一部に設けられていればよい。たとえば、第1傾斜面82は、第1吐出部50Aから吐出される洗浄液が右半部領域38Rの前後方向Yの中央部38Rbから前側の周方向端部38Raまでの範囲を伝わる場合、その範囲の全体に設けられていてもよいし、その範囲の一部にのみ設けられていてもよい。
【0223】
第2吐出部50Bがない場合、第2吐出部50Bに対応する第2傾斜面86を設けずに、第1吐出部50Aに対応する第1傾斜面82のみが設けられていてもよい。この場合であって、第1吐出部50Aから吐出される洗浄液が右半部領域38Rから左半部領域38Lまでの範囲に伝わる場合、第1傾斜面82は、その範囲の全体に設けられていてもよい。
【0224】
山部88は、第1傾斜面82の下端部と第2傾斜面86の下端部とが少なくとも一部を構成していればよい。たとえば、山部88は、第1傾斜面82の下端部と第2傾斜面86の下端部との他に、これらに連なる平坦面とが構成してもよい。
【0225】
(第2の工夫点に関して)
第1実施形態~第3実施形態において、吐出部50A、50Bは、便座22の裏面を洗浄するための洗浄液を吐出孔74から吐出し、シャッター104A、104Bは、その吐出孔74を隠蔽したり露出したりする例を説明した。この他にも、吐出部50A、50Bは、便器本体14の便鉢部12の内面を洗浄するための洗浄液を吐出孔74から吐出し、シャッター104A、104Bは、その吐出孔74を隠蔽したり露出したりしてもよい。
【0226】
第2ケーシング26は吐出部50A、50Bを内部に収容する収容部材の一例として説明した。収容部材は、第2ケーシング26に限定されるものではなく、たとえば、便座22が構成してもよい。この場合、便器本体14とは別体の収容部材にシャッター104A、104Bが取り付けられることになる。また、収容部材は便器本体14が構成してもよい。
【0227】
吐出部50A、50Bとシャッター104A、104Bは、同じ部材の一部として構成される例を説明したが、別体に構成されてもよい。また、吐出部50A、50Bは、吐出部50A、50Bが進出位置Ph1にあるとき、収容部材の開口部102A、102Bを塞ぐ塞ぎ部112を有する例を説明したが、塞ぎ部112がなくともよい。
【0228】
(第3、第4の工夫点に関して)
便器装置10(便座ユニット16)は、第1吐出部50Aが第1吐出動作を終了してから、第2吐出部50Bが第2吐出動作を開始するように構成するうえで、切替機構122を制御する制御部124を用いる例を説明した。この条件を満たすための具体的手段は特に限定されない。たとえば、給液路120の第1液路120aと第2液路120bの流れ方向での経路長を変えることで実現してもよい。
【0229】
便器装置10(便座ユニット16)は、第1座裏流れFaを形成する洗浄液を用いて、第1鉢内流れFcを形成し、第2座裏流れFbを形成する洗浄液を用いて、第2鉢内流れFdを形成する例を説明した。便器本体14の便鉢部12内で形成される流れの具体的態様は特に限定されない。たとえば、座裏流れFa、Fbを用いて、便鉢部12内で旋回せずに便鉢部12の底部に流れ込む流れを便鉢部12内で形成してもよい。
【0230】
切替機構122は、複数の開閉弁126A~126Dが構成する例を説明したが、その具体例は特に限定されない。たとえば、切替機構122は、単数の切替弁が構成していてもよい。また、実施形態の共通開閉弁126Cはなくともよい。
【0231】
第3吐出部50Cは機能装置20の下面部に設けられる例を説明したが、その位置は特に限定されない。たとえば、第3吐出部50Cは、便座22の裏面に設けられてもよい。また、第3吐出部50Cは、鉢用吐液孔132A、132Bのみを備えていてもよいし、第3吐液孔132Cのみを備えていてもよい。また、第3吐出部50Cはなくともよい。
【0232】
(第5の工夫点に関して)
座裏用吐出部50A、50Bは、便座22の裏面を洗浄するための洗浄液を吐出孔74から吐出する例を説明した。この他にも、吐出部50A、50Bは、便器本体14の便鉢部12の内面を洗浄するための洗浄液を吐出してもよい。いずれの場合も、前述の効果(E)を得る観点から、座裏用吐出部50A、50Bは機能装置20に設けられることが前提となる。
【0233】
便座22は、機能装置20に回動可能に取り付けられる例を説明した。便座22は、前述の効果(E)を得る観点から、その移動態様にかかわりなく、機能装置20に移動可能に取り付けられていればよい。また、前述の効果(E)を得る観点から、便座22は、機能装置20に移動不能に取り付けられている場合でも、機能装置20に着脱可能に取り付けられていてもよい。これにより、メンテナンス等を目的として機能装置20から離脱させた便座22を移動させる際に、吐出部50A、50Bの内部の洗浄液の重さが便座22に加わることがなくなり、便座22を移動させるために付与すべき荷重が増大するケースを避けられる。なお、便座22は、便器本体14に移動可能かつ着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0234】
座裏用吐出部50A、50Bは、上向きの速度成分を持つ洗浄液を吐出可能である例を説明したが、水平方向の速度成分のみを持つ洗浄液を吐出可能でもよい。また、上向きの速度成分のみを持つ洗浄液を吐出可能でもよい。この場合、水平方向の速度成分を持って便座22の裏面を洗浄液が伝わるように、洗浄液の流れを誘導するための構造が便座の裏面に設けられていてもよい。
【0235】
吐出部50A、50B、50Cは、機能装置20の前端部20aより後方に設けられる例を説明したが、その前端部20aより前方に設けられてもよい。吐出部50A、50B、50Cは、ノズル142に対して左右方向Yに設けられる例を説明したが、ノズル142とは無関係の位置に設けられていてもよい。
【0236】
第1吐出部50Aと第2吐出部50Bのそれぞれは、便座22の裏面で互いに逆向きに伝わる座裏流れFa、Fbを形成するように洗浄液を吐出する例を説明した。この互いに逆向きに伝わる座裏流れFa、Fbが形成される領域は、便座22の前端領域39に限定されない。たとえば、便座22の右半部領域38Rの前後方向Yの中央部38Rbでもよい。
【0237】
(第6の工夫点に関して)
機能装置20の第2ケーシング26は、第1ケーシング24を介して便器本体14に回動可能に取り付けられる例を説明したが、便器本体14に直接に回動可能に取り付けられてもよい。第2ケーシング26を便器本体14に回動可能に取り付けるうえで、便座ユニット16は吐出部50A、50Bを備えていなくともよい。また、第2ケーシング26を便器本体14に回動可能に取り付けるうえで、吐出部50A、50Bは第2ケーシング26ではなく便座22に設けられてもよい。
【0238】
第2ヒンジ機構166の内部の給液路120の一部は、第2ヒンジ機構166の構成部品の液路形成面172A~172Cが構成する例を説明した。これに限定されず、第2ヒンジ機構166の内部に挿通されるホースが構成してもよい。
【0239】
第2ケーシング26を便器本体14に回動可能に連結する第2ヒンジ軸166aと、便座22を便器本体14に回動可能に連結する第1ヒンジ軸164aの位置関係は特に限定されない。たとえば、第2ヒンジ軸166aは第1ヒンジ軸164aと前後方向Xで同じ位置に配置されてもよいし、第1ヒンジ軸164aの後方に配置されてもよい。また、第1ヒンジ軸164aと第2ヒンジ軸166aは別体である例を説明したが、同じ部材を用いて構成されてもよい。
【0240】
便器本体14の便鉢部12の上部には、便鉢部12内を洗浄するための洗浄液を吐出可能な吐出部が設けられていない例を説明したが、そのような吐出部が設けられていてもよい。
【0241】
(F1)の効果を得るうえで、便鉢部12の底部には、汚物の排出を促進するための流れを形成するように、トラップ部70に向けて洗浄液を吐出する吐出部が設けられていてもよい。
【0242】
トラップ部70の入口70aは、便鉢部12の前側の内壁面に開口している例を説明したが、その位置は特に限定されない。たとえば、便鉢部12の後側の内壁面に開口していてもよい。
【0243】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0244】
(その他)
また、以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の項目に記載の発明が含まれているともいえる。
【0245】
(第1項目)
便座の裏面を伝うように洗浄液を吐出可能な吐出部を備え、
前記吐出部は、前記便座の裏面視において、洗浄液出口に近づくにつれて連続的に内幅が広がるように形成される吐出孔を有する便座ユニット。
【0246】
(第2項目)
便座の裏面を伝うように洗浄液を吐出可能な吐出部と、
前記便座の回動位置に応じて、前記吐出部が洗浄液を吐出する吐出方向又は吐出範囲を変更可能な変更機構と、を備える便座ユニット。
【0247】
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。以下、発明が解決しようとする課題に記載の態様を用いて説明する。
【0248】
第2態様の便座ユニットは、第1態様において、前記便座の裏面又は前記便器本体の便鉢部の内面を洗浄するための洗浄液を吐出可能な吐出部を備え、前記吐出部は、前記ケーシングに設けられてもよい。
この態様によれば、吐出部の内部に洗浄液が残った場合でも、その洗浄液の重さが便座に加わることがなくなり、便座を移動させるために付与すべき荷重が増大するケースを避けられる。このため、便座の裏面や便器本体の便鉢部の内面の洗浄を実現するにあたり、便座の使い勝手を維持できる。
【0249】
第3態様の便座ユニットは、第2態様において、前記ケーシングは、ヒンジ機構を用いて、前記便器本体に回動可能に取り付けられ、前記ヒンジ機構の内部には、前記ケーシングの外部から内部に洗浄液を供給するための給液路の一部が設けられてもよい。
この態様によれば、ヒンジ機構の構成部品が占有しているスペースを利用して、ケーシング内の機能部品に洗浄液を供給できる。
【0250】
第4態様の便座ユニットは、第3態様において、前記ヒンジ機構の構成部品には、前記給液路の一部を形成する液路形成面が設けられてもよい。
この態様によれば、ヒンジ機構の内部にホースを挿通して、ホースに給液路を設ける場合と比べ、ホースのねじれに対する対策を講じることなく、ヒンジ機構の内部に給液路の一部を設けられる。
【0251】
第5態様の便座ユニットは、第1から第4態様のいずれかにおいて、前記ケーシングは、前記便器本体に第1ヒンジ軸を介して前記第1ヒンジ軸周りに回動可能に連結され、前記便座は、前記便器本体に第2ヒンジ軸を介して前記第2ヒンジ軸周りに回動可能に連結され、前記第1ヒンジ軸は、前記第2ヒンジ軸より前記便器本体の前方に配置されてもよい。
この態様によれば、便座とケーシングの両方が起立位置にあるとき、便座とケーシングの位置を前後方向にずらすことができ、両者の干渉を避けるように設計し易くなる。
【0252】
第6態様は便器装置である。第6態様の便器装置は、便鉢部を有する便器本体と、第1から第5態様のいずれかに記載の便座ユニットと、を備える。
【0253】
第7態様の便器装置は、第6態様において、前記便座ユニットは、前記便座の裏面又は前記便器本体の便鉢部の内面を洗浄するための洗浄液を吐出可能な吐出部を備え、前記便鉢部の上部には、前記便鉢部を洗浄するための洗浄液を吐出可能な吐出部が設けられていなくともよい。
この態様によれば、便鉢部の上部の内周面をつっかえることなく周方向に拭き掃除し易くなり、便鉢部の清掃性が良好となる。
【0254】
第8態様の便器装置は、第7態様において、前記便器本体は、前記便鉢部の底部に接続されるトラップ部を有し、前記トラップ部の入口は、前記便鉢部の前側の内壁面に開口している
この態様によれば、便器本体の便鉢部内を前側から覗き込んだとき、便鉢部の上部の他にも便鉢部の底部もすっきりとした構造となり、良好な意匠性を得られる。
【符号の説明】
【0255】
10…便器装置、12…便鉢部、14…便器本体、16…便座ユニット、20…機能装置、22…便座、26…ケーシング、50A…吐出部、70…トラップ部、70a…入口、120…給液路、164a…第1ヒンジ軸、166a…第2ヒンジ軸、172A…液路形成面。