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特許7145653合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法、及び合成ガスから炭化水素を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法、及び合成ガスから炭化水素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/75 20060101AFI20220926BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220926BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220926BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20220926BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
B01J23/75 M
B01J37/02 101C
B01J37/04 102
C10G2/00
C07C1/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018110378
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019209304
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-01-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山根 典之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公仁
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0202613(US,A1)
【文献】特開2008-073687(JP,A)
【文献】特開2006-205019(JP,A)
【文献】国際公開第2004/085055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 2/00
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを主成分とする触媒担体にコバルト成分を担持して製造する触媒の製造方法であって、
前記触媒担体に、硝酸コバルトを主体とする前駆体溶液と酢酸を混合した溶液を用い、コバルト成分を担持する工程を有し、
前記触媒担体中のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの合計含有量が、金属換算で1000ppm以下であり、
前記溶液において、前記硝酸コバルトに対する前記酢酸のモル比(酢酸/硝酸Co)が、2~7であることを特徴とする合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
【請求項2】
前記触媒担体へのコバルト成分の担持率が、前記触媒担体の質量と、前記触媒担体に担持されるコバルト成分の金属換算での質量との合計質量を100%とした場合、金属換算で5~50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
【請求項3】
前記コバルト成分を担持する工程の前に、
前記触媒担体に、ジルコニウム前駆体の溶液を用いてジルコニウム成分を担持する工程を実施することを特徴とする請求項1に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
【請求項4】
前記触媒担体へのコバルト成分の担持率が、前記触媒担体の質量と、前記触媒担体に担持されるコバルト成分の金属換算での質量と、前記触媒担体に担持される前記ジルコニウム成分の酸化物換算での質量との合計質量を100%とした場合、金属換算で5~50質量%であることを特徴とする請求項3に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
ただし、前記触媒担体へジルコニウム成分を担持しない場合は、前記合計質量を算出する際には、前記ジルコニウム成分の酸化物換算での質量には0を代入する。
【請求項5】
前記触媒担体に担持されるジルコニウム成分とコバルト成分との比Zr/Coが、モル比で0.03~0.6の範囲内となるようジルコニウム成分の担持量を調整することを特徴とする請求項3または4に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
【請求項6】
前記コバルト成分を担持する工程を2回以上行うことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
【請求項7】
前記触媒担体が球状のシリカであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法で製造した触媒を用いて、炭化水素を製造することを特徴とする合成ガスから炭化水素を製造する方法。
【請求項9】
スラリー床を用いた液相反応で前記炭化水素を製造することを特徴とする、請求項に記載の合成ガスから炭化水素を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素と水素を主成分とする、いわゆる合成ガスから炭化水素を製造するための触媒の製造方法、及び該製造方法で製造された触媒を用いた合成ガスから炭化水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の環境問題が顕在化し、他の炭化水素燃料、石炭等と比較してH/Cが高く、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素排出量を抑えることができ、埋蔵量も豊富な天然ガスの重要性が見直されてきており、今後ますますその需要は増加するものと予想されている。そのような状況の中、東南アジア・オセアニア地域等には、パイプライン・LNGプラント等のインフラが未整備の遠隔地で発見されたものの、その可採埋蔵量が巨額の投資を必要とするインフラ建設には見合わず、未開発のまま残されている数多くの中小規模ガス田が存在し、その開発促進が望まれている。その有効な開発手段の一つとして、天然ガスを合成ガスに変換した後、合成ガスからFischer-Tropsch(F-T、フィッシャー・トロプシュ)合成反応を用いて輸送性・ハンドリング性の優れた灯・軽油等の液体炭化水素燃料に転換する技術の開発が各所で精力的に行われている。
【0003】
【化1】
【0004】
このF-T合成反応は、触媒を用いて合成ガスを炭化水素に転換する発熱反応であるが、プラントの安定操業のためには反応熱を効果的に除去することが極めて重要である。現在までに実績のある反応形式には、気相合成プロセス(固定床、噴流床、流動床)と、液相合成プロセス(スラリー床)があり、それぞれ特徴を有しているが、近年、熱除去効率が高く、生成した高沸点炭化水素の触媒上への蓄積やそれに伴う反応管閉塞が起こらないスラリー床液相合成プロセスが注目を集め、精力的に開発が進められているところである。
【0005】
一般的に触媒の活性は、高ければ高いほど好ましいことは言うまでもないが、特にスラリー床では、良好なスラリー流動状態を保持するためにはスラリー濃度を一定の値以下にする必要があるという制限が存在するため、触媒の高活性化は、プロセス設計の自由度を拡大する上で、非常に重要な要素となる。
【0006】
高活性化を目的として、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の不純物が触媒の活性に与える影響を詳細に検討した結果、不純物濃度を一定範囲の触媒とすることで、従来の触媒と比較して活性を大きく向上させた例が報告されている(特許文献1参照)。
【0007】
一方、F-T反応により副生する水が多量に存在する反応雰囲気下(特にCO転化率が高い雰囲気下)では、主に活性金属である担持コバルトとシリカ担体の界面でコバルトシリケートを形成したり、担持コバルト自体が酸化されたり、凝集合体することによると思われる、触媒活性が低下するという現象が発生する問題があった。その他にも、耐水性が十分でない担体を使用した際には担体の比表面積、細孔容積等の構造変化が生じることで触媒活性が低下したり、強度が低下して触媒粉化が生じ易くなるという問題もあった。副生する酸化性の水と還元性の原料ガスの混合状態が良好な場合には、反応器内は一定の酸化性雰囲気に保たれるが、スラリー床では実機規模になると局所的に混合状態が良くないことがあり、副生する水が活性金属である担持コバルト近傍に滞留する場合には活性低下が生じることとなる。
【0008】
副生する水による耐性(耐水性)を改善する検討としては、コバルト化合物、シリカを主成分とする触媒担体の他にジルコニウム化合物を含有した触媒が開発されており、ジルコニウム化合物を含有することで、ジルコニウム化合物を含有しない触媒と比較して、副生する水が多量に存在する反応雰囲気下での活性低下が抑制されることが報告されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-322085号公報
【文献】特開2008-73687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、これまで、副生する水による耐性(耐水性)を改善する技術が種々検討されてきているが、合成ガスから液体炭化水素燃料に転換する技術開発の活発化にともない、耐水性をさらに向上させ、活性の低下を十分に抑制することが可能な触媒が求められている。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、合成ガスから炭化水素を製造する際に用いる触媒の、反応雰囲気中での安定性を向上させて触媒活性の低下を抑制することで、触媒を使用可能な期間(寿命)の延長を目的とするものである。すなわち、本発明の課題は、副生水が大量に存在する条件下でも活性低下が小さく安定的に使用することが可能である、合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法、及び、当該触媒を用いた合成ガスから炭化水素を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、触媒の製造工程において、シリカを主成分とする触媒担体に、硝酸コバルトを主体とする前駆体溶液と酢酸を混合した溶液を用いて、コバルト成分を含浸担持する工程を含むと、得られた触媒を用いて炭化水素を製造する際、副生する水の分圧が比較的高い条件下においても活性低下が抑制されることを見出し、本発明に至った。
【0013】
本発明は、合成ガスから炭化水素を製造する際に用いる触媒の製造方法及び該製造方法によって得られた触媒を用いた炭化水素の製造方法に関する。更に詳しくは、以下に記す通りである。
【0014】
(1)シリカを主成分とする触媒担体にコバルト成分を担持して製造する触媒の製造方法であって、前記触媒担体に、硝酸コバルトを主体とする前駆体溶液と酢酸を混合した溶液を用い、コバルト成分を担持する工程を有し、
前記触媒担体中のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの合計含有量が、金属換算で1000ppm以下であり、前記溶液において、前記硝酸コバルトに対する前記酢酸のモル比(酢酸/硝酸Co)が、2~7であることを特徴とする合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
(2)前記触媒担体へのコバルト成分の担持率が、前記触媒担体の質量と、前記触媒担体に担持されるコバルト成分の金属換算での質量との合計質量を100%とした場合、金属換算で5~50質量%であることを特徴とする上記(1)に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
(3)前記コバルト成分を担持する工程の前に、前記触媒担体に、ジルコニウム前駆体の溶液を用いてジルコニウム成分を担持する工程を実施することを特徴とする上記(1)に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
(4)前記触媒担体へのコバルト成分の担持率が、前記触媒担体の質量と、前記触媒担体に担持されるコバルト成分の金属換算での質量と、前記触媒担体に担持される前記ジルコニウム成分の酸化物換算での質量との合計質量を100%とした場合、金属換算で5~50質量%であることを特徴とする上記(3)に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
ただし、前記触媒担体へジルコニウム成分を担持しない場合は、前記合計質量を算出する際には、前記ジルコニウム成分の酸化物換算での質量には0を代入する。
(5)前記触媒担体に担持されるジルコニウム成分とコバルト成分との比Zr/Coが、モル比で0.03~0.6の範囲内となるようジルコニウム成分の担持量を調整することを特徴とする上記(3)または(4)に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
(6)前記コバルト成分を担持する工程を2回以上行うことを特徴とする上記(1)~(5)のいずれか一項に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法
(7)前記触媒担体が球状のシリカであることを特徴とする上記(1)~()のいずれか1項に記載の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法。
【0015】
)上記(1)~()のいずれか1項に記載の製造方法で製造した触媒を用いて、炭化水素を製造することを特徴とする合成ガスから炭化水素を製造する方法。
)スラリー床を用いた液相反応で前記炭化水素を製造することを特徴とする上記()に記載の合成ガスから炭化水素を製造する方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、副生水が大量に生成する高いCO転化率条件下でも、活性低下が小さく安定性の高い触媒の製造方法、及び当該製造方法によって得られた触媒を用いた合成ガスから炭化水素を製造する方法を提供できる。従って、本発明の製造方法によって製造された触媒によれば、触媒を使用可能な期間を延長することができるため、安価に炭化水素を生産可能となる。また、本発明の製造方法で製造される触媒は、特にF-T合成用として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法、ならびに合成ガスから炭化水素を製造する方法の実施形態を詳述する。
まず、本実施形態に係る、合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法(以下、触媒の製造方法とも称する。)について説明する。
【0018】
本実施形態における合成ガスから炭化水素を製造する触媒の製造方法においては、シリカを主成分とする触媒担体に、コバルト成分を担持して製造するが、コバルト成分の担持を、硝酸コバルトを主体とする前駆体溶液と酢酸を混合した溶液を用いて、含浸法によって担持する工程を含むものである。
また、本実施形態では、コバルト成分を担持する工程の前に、触媒担体に、ジルコニウム前駆体の溶液を用いてジルコニウム成分を担持する工程を実施することが好ましい。すなわち、予め触媒担体にジルコニウム成分を担持させた上で、前述のコバルト成分を担持する工程を行うことが好ましい。
【0019】
本実施形態の製造方法によって製造する触媒は、F-T合成反応に活性を有するコバルト系触媒である。すなわち、本実施形態によって得られる触媒は、コバルト金属やコバルト酸化物として存在するコバルト成分を触媒活性種とするものである。
【0020】
また、触媒担体(以下、単に担体とも称する。)としてはシリカを主成分とするものを選定し、使用するものである。ここでいうシリカを主成分とする担体とは、シリカ含有量が50質量%以上で100質量%未満のものである。担体のシリカ以外の含有化合物としては、例えば、生成する炭化水素のクラッキングや異性化を促進させることを目的として、酸点を導入したい場合などに、当該担体にアルミナ及び/またはゼオライトを含めたものも含む(以下、シリカを主成分とする担体を、単に「シリカ担体」とも言う)。
【0021】
尚、シリカ担体は不可避的不純物を含むことが多いが、この不可避的不純物とは、シリカ担体の製造工程で使用される洗浄水に含有される不純物、シリカ担体の出発原料に含有される不純物、及び、反応装置から混入する不純物で、触媒能力に影響を及ぼす金属を含む不純物(金属及び金属化合物)である。一般的にF-T合成反応に使用される装置、原料、洗浄水を用いると、当該不純物の金属元素としてはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムが挙げられる。但し、不純物元素のアルミニウムは、シリカ担体の出発原料である珪砂に含まれるアルミニウム酸化物が殆どで、シリカ担体中ではアルミナやゼオライトの形態で存在するため、本実施形態における触媒能力に影響を及ぼす不可避的不純物とはならない。また、鉄は触媒能力に影響を及ぼすものの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムと比較すると、影響度合いは著しく小さい。
従って、本実施形態における触媒能力に影響を及ぼす触媒中の不純物とは、一般的なF-T合成反応用触媒の製造に使用される装置、原料、洗浄水を用いた場合、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムである。尚、ナトリウム、カリウムはシリカ担体製造の原料として使用する珪酸ソーダより、カルシウム、マグネシウムは洗浄水より、そして鉄は原料である珪砂や洗浄水より、主に混入する。また、触媒製造において設備や操業条件によっては他の不純物混入も有り得、その場合にはそれらの不純物も考慮する必要がある。触媒中、及び触媒担体中のシリカ含有量の測定方法は、酸分解やアルカリ溶融等の前処理後にICP-AES法にて測定する方法とする。
【0022】
シリカを主成分とする触媒担体中のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの含有量合計は、それぞれの金属換算の質量割合の合計で1,000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。また、シリカを主成分とする触媒担体中のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムのそれぞれの含有量は、金属換算の質量割合で、好ましくはそれぞれ400ppm以下であり、より好ましくはそれぞれ300ppm以下、更に好ましくはそれぞれ200ppm以下である。触媒活性等の性能の観点からはこれら不純物は少ないほど好ましいが、完全に含有しないものを製造しようとすると、酸処理等が必要となり製造コストが高くなる場合がある。従って、通常は製造コストを踏まえて適切な含有量に抑えることが望ましい。また、またこれら不純物を完全に含有しないものを製造しようとしても、実際には検出限界以下が最低量となる。また、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの中でも、ナトリウムが最も触媒活性への影響が大きいことから、ナトリウムは150ppmを下回る範囲にすると更に望ましい。
【0023】
上記のような不可避的不純物の触媒担体への混入経路としては、主に、触媒担体自体を製造する際と、触媒担体に金属成分を担持する際が考えられる。
触媒担体製造時においては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムはシリカを主成分とする担体の製造工程で使用される洗浄水に含有されるものや、出発原料に含有される金属によるものがある。
また、触媒担体にコバルト成分やジルコニウム成分のような金属成分を担持する際には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムは担持する金属成分の前駆体や担持の際の処理水や洗浄水に含有されるものや、担持後の乾燥工程や焼成工程で入り込む可能性がある。触媒性能へ最も影響が大きいのは、アルカリ金属のナトリウム、及びカリウムであり、次に影響が大きいのはアルカリ土類金属のカルシウムとマグネシウムである。
【0024】
本実施形態の触媒の製造方法においては、上記のようなシリカを主成分とする担体へコバルト成分を担持するが、コバルト成分の担持方法は、通常の含浸法でよい。ジルコニウム成分を担持する場合にも同様に含浸法を採用できる。含浸法にはインシピエントウェットネス(Incipient Wetness)法、ポアフィリング(Pore Filling)法、吸着法、蒸発乾固法、噴霧法などがあるが、本実施形態では、金属前駆体溶液を担体に少しずつ滴下し、担体表面が均一に濡れた状態かつ過剰な溶液が存在しない状態で滴下を終了するインシピエントウェットネス法、担体の細孔容積と同容積の金属前駆体溶液を含浸するポアフィリング法が好ましい。
【0025】
また、本発明者らがシリカを主成分とする触媒担体へコバルト成分を含浸担持する際に用いる溶液について鋭意検討した結果、硝酸コバルト前駆体を主体とする前駆体溶液と酢酸を混合した溶液を用いると、副生水が大量に存在する雰囲気下でも、触媒の活性低下が抑制されることが明らかとなった。前駆体溶液として酢酸コバルトを主体とする前駆体溶液を使用して触媒の活性低下を抑制する方法もあるが、酢酸コバルトは水への溶解性が低く、含浸担持の回数が多くなり、製造コストが増大するおそれがある。しかし、本実施形態では水への溶解性が高い硝酸コバルトを使用することで、触媒の活性低下を十分に抑制するとともに、含浸担持の回数増加を抑え、製造コストの増大を抑制することができる。
【0026】
コバルト成分の原料(前駆体)としては、硝酸コバルトを主体とするものである。具体的には、硝酸コバルト、酢酸コバルト、ギ酸コバルト、シュウ酸コバルト、塩化コバルト、炭酸コバルト、硫酸コバルトからなる群のうち、硝酸コバルトを少なくとも含む混合物からなり、硝酸コバルトが過半となるような割合で混合したものを用いて水に溶解させた水溶液をコバルト前駆体溶液とする。そして本実施形態では、このコバルト前駆体溶液と酢酸を混合した溶液を用いて、含浸法によってシリカを主成分とする担体にコバルト成分を担持するものである。
【0027】
前記コバルト前駆体溶液と混合する酢酸の量は特に限定されないが、硝酸コバルトに対する酢酸のモル比(酢酸/硝酸Co)で0.05~7が好ましい。酢酸/硝酸Coが0.05を下回ると、酢酸を混合することで発現する触媒の活性低下抑制効果が小さくなり、一方、酢酸/硝酸Coが7を上回ると含浸担持における溶液体積が多くなるため、担持工程を何度も繰り返すことになり製造コストが増大するおそれがある。これらのことから、硝酸コバルトに対する酢酸のモル比(酢酸/硝酸Co)は、より好ましくは0.1~6、更に好ましくは0.2~5である。
【0028】
コバルトの担持率の適正範囲は、活性を発現するための最低量以上であり、担持したコバルトの分散度が極端に低下して、反応に寄与できないコバルトの割合が増大してしまう担持率以下であればよい。具体的には、触媒担体の質量と、触媒担体に担持される金属換算したコバルト成分の質量と、酸化物換算したジルコニウム成分の質量との合計質量(触媒総質量)を100%とした場合(ただし、触媒担体へジルコニウム成分を担持しない場合、当該合計質量を算出する際には、ジルコニウム成分の酸化物換算量は0として計算する)の好ましいコバルト担持率は5~50質量%であり、より好ましくは10~40質量%である。なお、この好ましい範囲を下回ると活性を十分発現できないケースが生じる可能性があり、また、この範囲を上回ると分散度が低下して、担持したコバルトの利用効率が低下して不経済となる。ここでいうコバルトの担持率とは、担持したコバルトが最終的に100%還元されるとは限らないため、100%還元されたと考えた場合の金属コバルトの質量が触媒総質量に占める割合を指す。また、コバルト担持率の測定には、酸分解やアルカリ溶融等の前処理後のICP-AES法を好適に用いることができる。
【0029】
本実施形態では、上記のようにコバルト成分を担持する工程の前に、予め、触媒担体にジルコニウム成分を担持させておくことが好ましい。すなわち、まずジルコニウム前駆体の溶液を用いてジルコニウム成分をシリカ担体へ担持する工程を行い、その後、ジルコニウム成分を担持させたシリカ担体へ上記のようにコバルト成分を担持させることが好ましい。このように、コバルト成分に加えてジルコニウム成分を担持する場合にも、コバルト成分の担持と同様の方法によればよい。担持において使用する原料(前駆体)であるジルコニウム成分としては、担持後に乾燥処理及び還元処理、又は、乾燥処理、焼成処理及び還元処理を行う際に、カウンターイオンが揮散するものであり、溶媒に溶解するものであれば特に制限はない。例えば、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物、アセチルアセトナート等が使用可能であるが、担持操作をする際に水溶液を用いることができる水溶性の化合物を用いることが製造コストの低減や安全な製造作業環境の確保のためには好ましい。具体的には、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウムは、焼成時にジルコニウム酸化物に容易に変化するため好ましい。なお、ジルコニウム成分の担持後の乾燥処理は省略することもできる。
【0030】
ジルコニウムの担持率の適正範囲は、活性向上効果、液状生成物選択性向上効果、耐水性向上効果、寿命延長効果を発現するための最低量以上であり、担持したジルコニウムの分散度が極端に低下して、添加したジルコニウムのうち効果発現に寄与しないジルコニウムの割合が高くなり不経済となる担持率以下であればよい。具体的には、コバルト金属およびコバルト酸化物の担持量とジルコニウム担持量とのモル比で、Zr/Co=0.03~0.6となるようジルコニウムの担持率を調整することが好ましい。Zr/Coが0.03を下回ると活性向上効果、液状生成物選択性向上効果、耐水性向上効果、寿命延長効果を十分発現することができず、また、Zr/Coが0.6を上回ると担持したジルコニウムの利用効率が低下して不経済となる。これらのことから、Zr/Coは、より好ましくは0.04~0.4、さらに好ましくは0.05~0.3である。ジルコニウム担持率の測定には、コバルト担持率の測定と同様に、酸分解やアルカリ溶融等の前処理後のICP-AES法を好適に用いることができる。
【0031】
上述の活性向上効果、液状生成物選択性向上効果、耐水性向上効果、ならびに寿命延長効果を発現するためには、シリカ担体上にジルコニウム酸化物が存在し、活性を示すコバルト粒子がジルコニウム酸化物上に存在する触媒構造が好ましいと推定している。活性を示すコバルト粒子は、還元処理によって全部が金属化されたコバルト粒子であっても、大部分は金属化されるが一部はコバルト酸化物が残存したコバルト粒子であってもよい。活性向上効果は、ジルコニウム酸化物が存在することでコバルト粒子がより高分散で担持されるため、活性表面積が増大することが要因と推定される。液状生成物選択性向上効果は、ジルコニウム酸化物が存在することでコバルト表面の電子状態が一酸化炭素の吸着を促進し、中間体であるCHを生成し易いためであると推定される。中間体であるCHの存在量が多くなると連鎖成長が起こり易くなり、液状生成物が生成し易くなる。耐水性向上効果は、シリカ担体上にジルコニウム酸化物が存在することで、活性を示すコバルト粒子とシリカ担体の界面を減少することにより、副生水により形成が加速されるコバルトシリケートの形成が抑制されることが関与していると推察される。また、ジルコニウム酸化物と活性を示すコバルト粒子の相互作用はシリカ担体と活性を示すコバルト粒子の相互作用よりも大きいため、コバルト化合物とジルコニウム化合物を担持してなる触媒の活性を示すコバルト粒子間ではシンタリングが比較的起こり難く、シンタリングが起こり易い副生水が存在する雰囲気においても耐水性は向上すると考えられる。寿命延長効果は、上記の耐水性向上とシンタリング抑制により、活性を発現する触媒構造をより長く保持できることによると考えられる。
【0032】
コバルト成分、ジルコニウム成分のシリカを主成分とする担体への担持は、前述の担持方法によって行うことが可能であるが、最初にジルコニウム成分を担持させ、次いでコバルト成分を担持させることが好ましい。これは前述のように、ジルコニウム酸化物が、活性を示すコバルト粒子とシリカ担体の界面において、コバルトの高分散化による活性向上、副生水存在下におけるコバルトシリケート形成抑制の機能を発現しているためであると考えており、活性を示すコバルト粒子とシリカ担体の間にジルコニウム酸化物を存在させた方が有効であるためと推定される。
【0033】
コバルト成分を担持させる前にジルコニウム成分を担持させる場合には、具体的に次のような方法にて実施できる。まず、上述したようなコバルト成分の溶液、ジルコニウム成分の溶液をそれぞれ調製し、最初にジルコニウム成分の溶液を用いてシリカを主成分とする担体へジルコニウム成分を担持し、乾燥または乾燥及び焼成処理する。その後、コバルト成分の溶液を用い、ジルコニウム成分が担持されたシリカ担体へコバルト成分を担持する。コバルト成分担持後は必要に応じて乾燥処理を行い、引き続き還元処理、又は焼成処理及び還元処理を行う。このような処理を施すことにより、コバルト成分の全部を金属化、又は一部を酸化物化し残りを金属化して、且つ、ジルコニウム成分を酸化物化する。
【0034】
上述のようにして得られたコバルト成分を担持する触媒、もしくはコバルト成分とジルコニウム成分を担持する触媒の、副生水の分圧が高い条件下での活性低下挙動を評価する方法としては、触媒をオートクレーブに溶媒と共に仕込み強撹拌状態として、合成ガスを供給しながら昇温・昇圧することでオートクレーブ内を完全混合状態に保ちながらF-T合成反応を行い、断続的に撹拌を停止する手法が挙げられる。完全混合状態では、活性点で副生した水は直ちに原料ガス、生成ガスと混合するが、撹拌を停止した状態では活性点で副生した水は直ちに原料ガス、生成ガスとの混合が進まず、副生した水は活性点近傍に滞留することになり、水への耐性が低い触媒は急速に活性低下することとなる。撹拌停止によって触媒を活性低下させた後、再度完全混合状態として触媒活性を評価し、撹拌停止前後での活性低下の度合を評価することで副生水への耐性を把握できる。
【0035】
その他には、高圧ポンプで強制的に水をオートクレーブ内に導入して、水分圧が高い条件を作り出す手法や、反応温度やW(触媒重量)/F(合成ガス供給量)を一時的に高く設定することで、CO転化率を一時的に増加させ水分圧が高い条件とする手法でも評価することができる。いずれも副生水への耐性は、水分圧を高い条件とした前後での活性の比率で評価する。
【0036】
以下に、本実施形態の触媒の製造方法の一例として、ジルコニウム成分を含まず、コバルト成分のみが担持された触媒を得る方法を示す。
【0037】
硝酸コバルト前駆体の水溶液に、硝酸コバルトに対する酢酸のモル比(酢酸/硝酸コバルト)が0.35となるように酢酸を混合した水溶液を調製する。この水溶液に、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの合計含有量が400ppmであるシリカを主成分とする触媒担体を含浸して処理後、乾燥を行う。乾燥後は焼成処理を行ってもよい。また、必要に応じて乾燥後に還元処理、又は焼成後に還元処理を行ってもよい。これらの処理によって、二酸化炭素と水素を原料として炭化水素を製造する触媒を得ることができる。
【0038】
前記水溶液の含浸担持を行った後、必要に応じて乾燥処理を行い、引き続き担体表面のコバルト化合物をコバルト金属に還元(例えば、常圧水素気流中450℃-15h、通常は250~600℃程度の範囲であるが、特に限定されない。)することで触媒が得られるが、焼成して酸化物に変化させた後に還元処理を行っても、焼成せずに直接還元処理を行ってもよい。
【0039】
還元処理の温度を高くしたり時間を長くしたりすることにより還元条件を厳しくすると、還元処理後にコバルト化合物が酸化物の状態から金属状態まで還元される比率が高くなり、極端に厳しい還元処理を行うと活性金属のみの状態にすることも可能となる。しかし、一般的な還元条件ではコバルト酸化物を一部含有する化学状態となることが多い。
【0040】
還元処理後の触媒は、大気に触れて酸化失活しないように取り扱う必要があるが、担体上のコバルト金属の表面を大気から遮断するような安定化処理を行うと、大気中での取り扱いが可能となり好適である。この安定化処理には、低濃度の酸素を含有する窒素、二酸化炭素、不活性ガスを触媒に触れさせて、担体上の活性金属の極表層のみを酸化するいわゆるパッシベーション(不動態化処理)を行ったり、二酸化炭素と水素を原料として炭化水素を製造する反応を液相で行う場合には反応溶媒や溶融したワックス等に浸漬して大気と遮断したりする方法があり、状況に応じて適切な安定化処理を行えばよい。
【0041】
また、以下に、本実施形態の触媒の製造方法のさらなる例として、ジルコニウム成分とコバルト成分が担持された触媒を得る方法を示す。
【0042】
まず、ジルコニウム前駆体溶液として硝酸酸化ジルコニウム水溶液を調整する。この水溶液にナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの合計含有量が400ppmであるシリカを主成分とする触媒担体を含浸して処理後、乾燥、又は乾燥と焼成処理を行う。次いで、硝酸コバルト前駆体の水溶液に、硝酸コバルトに対する酢酸のモル比(酢酸/硝酸コバルト)が0.35となるように酢酸を混合した水溶液を調製し、この水溶液にジルコニウム成分を担持した触媒担体を含浸して処理後、乾燥を行う。乾燥後は焼成処理を行ってもよい。また、必要に応じて乾燥後に還元処理、又は焼成後に還元処理を行ってもよい。これらの処理によって、二酸化炭素と水素を原料として炭化水素を製造する触媒を得ることができる。
【0043】
ジルコニウム成分の含浸担持を行った後、必要に応じて乾燥処理を行い、引き続き担体表面のジルコニウム化合物をジルコニウム酸化物に変換(例えば、空気気流中450℃-2h、通常は300~550℃程度の範囲であるが、特に限定されない。)することでジルコニア担持シリカが得られる。ジルコニウム成分の担持後には乾燥処理(例えば空気中100℃-1h)を行い、引き続き焼成処理を行っても、乾燥処理を行うだけで次工程であるコバルト含浸担持を行ってもよいが、ジルコニウム成分がコバルト成分含浸担持操作中にコバルト成分の中に取り込まれることでジルコニウムの添加効率が低下しないようにするためには、焼成処理を行ってジルコニウム酸化物に変換しておくとよい。次いで、硝酸コバルト前駆体溶液と酢酸の混合溶液への含浸担持を行った後、必要に応じて乾燥処理を行い、引き続き担体表面のコバルト化合物をコバルト金属に還元(例えば、常圧水素気流中450℃-15h、通常は250~600℃程度の範囲であるが、特に限定されない。)することで触媒が得られるが、焼成して酸化物に変化させた後に還元処理を行っても、焼成せずに直接還元処理を行ってもよい。還元後の安定化処理等の処理は上記のジルコニウム成分を含まない触媒と同様に実施することができる。
【0044】
また、ジルコニウム成分の有無に関わらず、コバルト成分、ジルコニウム成分、担体構成元素以外の触媒中の不純物、すなわちアルカリ金属、アルカリ土類金属を低減し、ある範囲内に制御することが、活性向上、選択性向上および触媒コストに対して極めて効果的である。本実施形態のように、触媒担体としてシリカを主成分とする担体とした場合では、前記したように、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが担体中に含まれることが多い。活性、選択性への影響はナトリウム、カリウムの影響が強く、中でもナトリウムの存在の影響が最も強い。なお、カリウムは、影響が強いものの、製造方法や担体の種類によって、含有量が極微量もしくは担体中に存在しないことも多い。
【0045】
不純物であるナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムは主に化合物の形態で存在し、特に酸化物の形態で存在するが、金属単体や酸化物以外の形態でも少量存在し得る。良好な触媒活性、寿命及び高い耐水性を発現させるためには、触媒中の不純物の総量は金属換算で1,500ppm以下に抑えることが好ましい。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの合計量がこの量を上回ると活性が大きく低下する。より好ましくは金属換算で800ppm以下、更に好ましくは400ppm以下、最も好ましくは金属換算で300ppm以下である。しかし、不純物量を必要以上に低減することは純度向上にコストがかかり不経済となるため、触媒中の不純物量は金属換算で100ppm以上とすることが好ましい。ここで、触媒中のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの定量方法は、酸分解やアルカリ溶融等の前処理後にICP-AES法にて測定する方法とする。
【0046】
シリカ担体の製造工程で不純物が入らないような工夫が可能な担体であれば、製造中に不純物が混入しないような施策を施すことが好ましい。一般にシリカの製造方法は、乾式法と湿式法に大別される。乾式法としては燃焼法、アーク法等、湿式法としては沈降法、ゲル法等があり、いずれの製造方法でも触媒担体を製造することは可能である。しかしながら、ゲル法を除く上記方法では担体を球状に成形することが技術的、経済的に困難である為、シリカゾルを気体媒体中又は液体媒体中で噴霧させて容易に球状に成形することが可能であるゲル法が好ましい。
【0047】
例えば、上記ゲル法にてシリカ担体を製造する際には、通常多量の洗浄水を用いるが、工業用水等の不純物を多く含んだ洗浄水を用いると、担体中に多量の不純物が残留することになり、触媒の活性が大幅に低下して好ましくない。しかし、この洗浄水として不純物の含有率が低い、あるいはイオン交換水などの不純物を全く含まないものを用いることで、不純物含有量の少ない良好なシリカ担体を得ることが可能となる。この場合、洗浄水中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の各元素の含有量はそれぞれ金属換算で0.06質量%以下とすることが好ましく、これを上回ると、シリカ担体中の不純物含有量が多くなり、調製後の触媒の活性が大きく低下するため好ましくない。理想的にはイオン交換水の使用が好ましく、イオン交換水を得るためには、イオン交換樹脂などを用いて製造してもよいが、シリカの製造ラインにて規格外品として発生するシリカゲルを用いてイオン交換を行い、製造することも可能である。
【0048】
原理的に、洗浄水中の不純物をシリカが捕捉するのは、シリカ表面のシラノール中水素とアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンなどの不純物イオンとがイオン交換することによる。よって、少々不純物を含んだ洗浄水であっても、洗浄水のpHを低めに調整することで、不純物の捕捉をある程度防ぐことが可能となる。また、イオン交換量(不純物混入量)は用いる洗浄水の量に比例するため、洗浄水量を低減すること、換言すれば水洗終了までの水の使用効率を上げることでも、シリカ担体中の不純物量の低減が可能となる。
【0049】
触媒担体の物理的、化学的特性を大きく変化させずに、水による洗浄、酸による洗浄、アルカリによる洗浄等の前処理を施すことで、シリカ担体中の不純物を低下させることができる場合には、これらの前処理が触媒の活性向上に極めて有効である。
【0050】
例えば、シリカ担体の洗浄には、硝酸、塩酸、酢酸等の酸性水溶液にて洗浄することや、イオン交換水にて洗浄することが特に効果的である。これらの酸による洗浄処理の後に、酸の一部が担体中に残留することが障害となる場合には、イオン交換水等の清浄な水で更に洗浄するのが効果的である。
【0051】
また、シリカの製造においては、粒子強度向上、表面シラノール基活性向上などを目的とした焼成処理がよく行われる。しかしながら、担体中の不純物が比較的多い状態で、焼成を行うと、シリカ担体を洗浄して不純物濃度を低下させる際に、シリカ骨格内に不純物元素が取り込まれて、不純物含有量を低減させることが困難となる。よって、シリカ担体を洗浄して不純物濃度を低下させたい場合には、未焼成シリカゲルを用いることが好ましい。
【0052】
以上述べたような担体を用いて触媒を製造することにより、F-T合成反応における活性が非常に高く、長寿命で、また耐水性の高い触媒を得ることが可能となる。
【0053】
なお、金属の分散度を高く保ち、担持した活性金属の反応に寄与する効率を向上させるためには、高比表面積の担体を使用することが好ましい。しかし、比表面積を大きくするためには、気孔径を小さくする、細孔容積を大きくする必要があるものの、この二つの要因を増大させると、耐摩耗性や強度が低下することになり、好ましくない。担体の物理性状としては、細孔径が8~50nm、比表面積が80~550m/g、細孔容積が0.2~1.5ml/gを同時に満足するものが、触媒用の担体として好適である。細孔径が8~30nm、比表面積が100~450m/g、細孔容積が0.2~1.0ml/gを同時に満足するものであればより好ましく、細孔径が8~20nm、比表面積が100~350m/g、細孔容積が0.3~0.8ml/gを同時に満足するものであれば更に好ましい。特にスラリー床では触媒の強度が必要となることから、細孔容積は0.3~0.6ml/gであることが特に好ましい。上記の比表面積はBET法で、細孔容積は水銀圧入法や水滴定法で測定することができる。また、細孔径はガス吸着法や水銀ポロシメーターなどによる水銀圧入法で測定可能であるが、比表面積、細孔容積から計算で求めることもできる。
【0054】
F-T合成反応に十分な活性を発現する触媒を得るためには、触媒担体の比表面積は80m/g以上であることが好ましい。この比表面積を下回ると、担持した金属の分散度が低下してしまい、活性金属の反応への寄与効率が低下するため好ましくない。また、比表面積を550m/g超とすると、細孔容積と細孔径が上記範囲を同時に満足することが困難となり好ましくない。
【0055】
触媒担体の細孔径を小さくするほど比表面積を大きくすることが可能となるが、8nmを下回ると、細孔内のガス拡散速度が水素と一酸化炭素では異なり、細孔の奥へ行くほど水素分圧が高くなるという結果を招き、F-T合成反応では副生成物といえるメタンなどの軽質炭化水素が、多量に生成することになるため、好ましくない。加えて、生成した炭化水素の細孔内拡散速度も低下し、結果として、見かけの反応速度を低下させることとなり、好ましくない。また、一定の細孔容積で比較を行うと、細孔径が大きくなるほど比表面積が低下するため、細孔径が50nmを超えると、比表面積を増大させることが困難となり、活性金属の分散度が低下してしまうため、好ましくない。
【0056】
触媒担体の細孔容積は0.2~1.5ml/gの範囲内にあるものが好ましい。0.2ml/gを下回るものでは、細孔径と比表面積が上記範囲を同時に満足することが困難となり好ましくなく、また、1.5ml/gを上回る値とすると、極端に強度が低下してしまうため、好ましくない。
【0057】
前述したように、スラリー床を用いたF-T合成反応用の触媒(F-T合成触媒)には、耐摩耗性、強度が要求される。また、F-T合成反応では、多量の水が副生するために、水の存在下で破壊、粉化するような触媒又は担体を用いると、前述したような不都合が生じることになるために注意を要する。よって、予亀裂が入っている可能性が高く、鋭角な角が折損、剥離し易い破砕状の担体ではなく、鋭角な角のない球状の担体を用いた触媒が好ましい。具体的には、円形度が0.7以上の担体を用いることが好ましい。この円形度とは、粒子を画像解析した際の二次元画像における面積と周囲長を元に数値で表現する、形状の複雑さを測る指標である。球状の担体を製造する際には、一般的なスプレードライ法などの噴霧法を用いればよい。特に、20~250μm程度の粒径の球状シリカ担体を製造する際には、噴霧法が適しており、耐摩耗性、強度、耐水性に優れた球状シリカ担体が得られる。更に好ましくは、球状シリカ担体を20~150μm程度の粒径に制御できると、耐摩耗性、強度の面で有利となる。
【0058】
このようなシリカ担体の製造法を以下に例示する。
珪酸アルカリ水溶液と酸水溶液とを混合し、pHが2~10.5となる条件で生成させたシリカゾルを、空気などの気体媒体中又は前記ゾルと不溶性の有機溶媒中へ噴霧してゲル化させ、次いで、酸処理、水洗、乾燥する。ここで、珪酸アルカリとしては珪酸ソーダ水溶液が好適で、NaO:SiOのモル比は1:1~1:5、シリカの濃度は5~30質量%が好ましい。用いる酸としては、硝酸、塩酸、硫酸、有機酸等が使用できるが、製造する際の容器への腐食を防ぎ、有機物が残留しないという観点からは、硫酸が好ましい。酸の濃度は1~10mol/lが好ましく、この範囲を下回るとゲル化の進行が著しく遅くなり、また、この範囲を上回るとゲル化速度が速すぎてその制御が困難となり、所望の物性値を得ることが難しくなるため、好ましくない。また、有機溶媒中へ噴霧する方法を採用する場合には、有機溶媒として、ケロシン、パラフィン、キシレン、トルエン等を用いることができる。
【0059】
以上、本実施形態に係る触媒の製造方法を説明してきたが、上記のような構成あるいは製造法を用いた触媒担体によれば、強度や耐摩耗性を損なうことなく、高活性を発現するF-T合成反応用として好適な触媒の提供が可能となる。
【0060】
また、本実施形態による製造方法によって製造した触媒を用いることにより、高効率かつ低コストでF-T合成反応を行うことができ、安定して炭化水素を製造することが可能となる。即ち、本実施形態に得られる触媒を用いてスラリー床を用いた液相反応でF-T合成反応を行うと、主製品である炭素数が5以上の液体生成物の選択率が高く、また、触媒単位質量あたりの液体生成物の製造速度(炭化水素生産性)も極めて大きい。更に、本実施形態によって得られた触媒は、使用中の触媒粉化の程度や副生水などによる活性の低下も非常に小さいために触媒寿命が長いという特徴を有する。これらの特徴により、効率の高い低コストでのF-T合成反応の実行が可能となる。
【0061】
また、本実施形態による製造方法によって製造した触媒を用いて、合成ガスから炭化水素を製造すれば、副生水などによる活性の低下が非常に小さいために、副生水の分圧が非常に高くなるワンパスCO転化率が60~95%という条件下でも良好なF-T合成反応を行うことができる。ここでいうワンパスCO転化率とは、反応器から排出される未反応原料ガスを含むガスを再度反応器に供給するものとは異なり、原料ガスを反応器に一度通すのみでCOの転化率を求めたものである。ワンパスCO転化率が40~60%の比較的低い場合でも、副生水などによる活性低下が非常に小さいため触媒寿命が長くなり、触媒コストを低減することが可能となる。ワンパスCO転化率が40%以下になるとテールガスリサイクル設備の設備コストが増大するため、40%以上で操業することが一般的である。なお、CO転化率は反応器前後のガス組成、ガス流量から計算することが可能であり、ガス組成はガスクロマトグラフィーで分析することができる。
【0062】
尚、本実施形態の炭化水素の製造方法におけるF-T合成反応に使用する合成ガスには、水素と一酸化炭素の合計が全体の50体積%以上であるガスが生産性の面から好ましく、特に、水素と一酸化炭素のモル比(水素/一酸化炭素)が0.5~4.0の範囲であることが望ましい。これは、水素と一酸化炭素のモル比が0.5未満の場合には、原料ガス中の水素の存在量が少な過ぎるため、一酸化炭素の水素化反応(F-T合成反応)が進みにくく、液状炭化水素の生産性が高くならないためであり、一方、水素と一酸化炭素のモル比が4.0を超える場合には、原料ガス中の一酸化炭素の存在量が少な過ぎるため、触媒活性に関わらず液状炭化水素の生産性が高くならないためである。
【実施例
【0063】
以下、本発明に係る実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
まず、シリカを主成分とする触媒担体として、スプレードライ法によって平均粒径100μmの球状のシリカ担体(Na:110ppm、Ca:20ppm、Mg:10ppm、Kは検出限界以下、表面積:250m/g、細孔容積:0.7ml/g、細孔径:11nm)を製造した。次に、硝酸コバルト前駆体溶液と酢酸を、モル比で酢酸/硝酸コバルト(酢酸/硝酸Co)=0.2となるよう混合した溶液を用い、インシピエントウェットネス法で、上記球状のシリカ担体上にコバルト担持率(Co担持率)が30質量%となるようにして担持し、さらに空気雰囲気下で乾燥処理(120℃×10hr)、焼成処理(400℃まで加熱)を施した。これら、含浸、乾燥処理および焼成処理の一連工程を2回繰り返して担持した後、還元処理(水素気流下、400×2hr)を行ったあと、安定化処理として、パッシベーションを施してCo/SiO触媒を調製した。なお、表中に、ICP-AES法によって測定した触媒中のNa、Ca、Mg含有量の合計を示す。
【0065】
次に、内容積300mlのオートクレーブを用い、2.0gのCo/SiO触媒と50mlのn-C16(n-ヘキサデカン)を仕込んだ後、2.0MPa-G、W(触媒質量)/F(合成ガス流量)=3(g・h/mol)の条件下で合成ガス(H/CO=2.0(モル比))を流通させて、オートクレーブの撹拌速度を800min-1に保持した条件で、CO転化率が70%程度となるように反応温度を調整し、F-T合成反応を行った。
【0066】
反応開始より20h経過した時点で、撹拌を停止して1h保持した後、再度、撹拌速度を800min-1に設定して7h保持した。その後、撹拌停止して1h保持、撹拌を再開して7h保持を繰り返し、これら操作を試験中に6回実施した。6回目の撹拌停止状態より撹拌を800min-1で再開後、同様に7h保持して反応を停止した。反応中は供給ガス及びオートクレーブ出口ガスの組成をガスクロマトグラフィーにより求め、CO転化率を得た。なお、撹拌停止中は活性点近傍では局所的に副生する水が滞留し、触媒が失活し易い条件となるため、撹拌停止による活性低下の度合を把握することで、触媒寿命を評価することが可能である。
【0067】
以下の実施例に記載したCO転化率、活性保持率は、それぞれ次に示す式により算出した。
【0068】
【数1】
【0069】
【数2】
【0070】
撹拌停止中には反応器内は混合状態では無くなり、触媒粒子は底部に沈降する。触媒の活性金属であるコバルト金属上ではF-T合成反応が進行し、炭化水素と共に水が副生する。副生した水は撹拌状態であれば還元性の原料ガスと直ちに混合するため、活性金属近傍の局所的な水分圧は高くないが、撹拌停止中には活性金属近傍に水が滞留することになり、局所的な水分圧は高くなる。このような状況下、活性金属であるコバルト金属は酸化や、凝集・合体が進行し易くなる。
撹拌停止操作を6回繰り返す前後のCO転化率、すなわち、反応開始より20h経過後に撹拌を停止した時点のCO転化率(20h時点のCO転化率)と、撹拌と停止の各操作を6回繰り返した後のCO転化率(撹拌停止を6回繰り返した後のCO転化率)とを比較し、時間経過によるCO転化率の変動(触媒活性の変動)の度合を表す活性保持率を比較することで副生する水の分圧が高い条件下での触媒の耐性を比較することが可能である。この活性保持率が高い触媒である程、活性の低下が抑制された触媒であると言え、副生する水の分圧が高い条件下での耐性が高く、長期間に亘って連続的に使用可能な触媒であると評価できる。
【0071】
本実施例1では、上記の方法によって212℃で合成反応を行った結果、20h時点でのCO転化率は68.2%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は52.9%、活性保持率は77.6%であった。なお、実施例1は参考例として掲載した。
【0072】
(実施例2)
前駆体として硝酸酸化ジルコニウムを用い、モル比でZr/Co=0.1となるようにまずZrを担持した後、実施例1と同様にして、Coを含浸担持、乾燥、焼成からなる一連の工程を2回繰り返して担持してCo/ZrO/SiO触媒を調製した。このCo/ZrO/SiO触媒を使用する他は、実施例1と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は213℃、20h時点でのCO転化率は69.6%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は53.9%、活性保持率は77.4%であった。なお、実施例2は参考例として掲載した。
【0073】
(実施例3)
Na:360ppm、Ca:80ppm、Mg:20ppm、Kは検出限界以下を含み、他の構成は実施例1と同様のシリカ担体を使用する他は実施例1と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は215℃、20h時点でのCO転化率は70.2%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は52.1%、活性保持率は74.2%であった。なお、実施例3は参考例として掲載した。
【0074】
(実施例4)
Na:800ppm、Ca:150ppm、Mg:30ppm、Kは検出限界以下を含み、他の構成は実施例1と同様のシリカ担体を使用する他は実施例1と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は219℃、20h時点でのCO転化率は71.3%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は50.8%、活性保持率は71.2%であった。なお、実施例4は参考例として掲載した。
【0075】
(実施例5)
Na:1900ppm、Ca:200ppm、Mg:80ppm、Kは検出限界以下を含み、他の構成は実施例1と同様のシリカ担体を使用する他は実施例1と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は242℃、20h時点でのCO転化率は68.1%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は47.7%、活性保持率は70.0%であった。なお、実施例5は参考例として掲載した。
【0076】
(実施例6)
Co担持率を20質量%として、含浸、乾燥処理および焼成処理の一連工程を1回実施して調製したCo/SiO触媒を使用する他は実施例1と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は218℃、20h時点でのCO転化率は70.5%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は53.8%、活性保持率は76.3%であった。なお、実施例6は参考例として掲載した。
【0077】
(実施例7)
前駆体として硝酸酸化ジルコニウムを用い、モル比でZr/Co=0.3となるようにしてまずZrを担持した後、実施例1と同様にして、Coを含浸、乾燥、焼成からなる一連の工程を2回繰り返して担持してCo/ZrO/SiO触媒を調製した。このCo/ZrO/SiO触媒を使用する他は、実施例2と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は213℃、20h時点でのCO転化率は68.5%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は54.5%、活性保持率は79.6%であった。なお、実施例7は参考例として掲載した。
【0078】
(実施例8)
触媒調製時の酢酸/硝酸Co(モル比)を2として、Coを含浸、乾燥、焼成からなる一連の工程を3回繰り返して担持して調製したCo/SiO触媒を使用する他は、実施例1と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は213℃、20h時点でのCO転化率は68.7%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は53.9%、活性保持率は78.5%であった。
【0079】
(実施例9)
触媒調製時の酢酸/硝酸Co(モル比)を5として、Coを含浸、乾燥、焼成からなる一連の工程を5回繰り返して担持して調製したCo/SiO触媒を使用する他は、実施例1と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は214℃、20h時点でのCO転化率は71.0%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は56.5%、活性保持率は79.6%であった。
【0080】
(比較例1)
硝酸コバルト前駆体を使用して酢酸を添加せずに溶液を調整し、Coを含浸、乾燥、焼成からなる一連の工程を2回繰り返して担持して調製したCo/SiO触媒を使用する他は、実施例1と同様にして反応評価を行った。その結果、反応温度は212℃、20h時点でのCO転化率は70.3%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は47.1%、活性保持率は67.0%であった。
担体中のNa、Ca、Mg濃度が同等である実施例1と比較してみると、活性保持率が77.6%から67.0%まで低下していることが分かる。
【0081】
(比較例2)
硝酸コバルト前駆体を使用して酢酸を添加せずに溶液を調整し、Coを含浸、乾燥、焼成からなる一連の工程を2回繰り返して担持して調製したCo/ZrO/SiO触媒を使用する他は、実施例2と同様にして反応評価を行った。反応温度は212℃、20h時点でのCO転化率は70.7%、6回の撹拌停止操作を繰り返した後のCO転化率は50.1%、活性保持率は70.9%であった。
担体中のNa、Ca、Mg濃度およびZr/Co(モル比)が同等である実施例2と比較してみると、活性保持率が77.4%から70.9%まで低下していることが分かる。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】