(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】チャックテープ
(51)【国際特許分類】
A44B 19/16 20060101AFI20220926BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D33/25 A
(21)【出願番号】P 2018119097
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507131159
【氏名又は名称】ハイパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】厚地 善行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙太
(72)【発明者】
【氏名】大澤 梓
(72)【発明者】
【氏名】村上 明良
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃大
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-289401(JP,A)
【文献】特開2013-28732(JP,A)
【文献】特開2017-165486(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147275(WO,A1)
【文献】実開平6-78252(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/00-19/64
B65D30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能である帯状の雄部材及び雌部材からなるチャックテープであって、
前記雄部材及び前記雌部材が樹脂組成物で構成されており、前記樹脂組成物を100μmのフィルムに成形したときの引張弾性率が、400MPa以上であり、かつ
前記雄部材が、根部、並びに前記根部の先端に配置されている第一雄鈎部及び第二雄鈎部を具備しており、
前記雄部材の長手方向に垂直な断面において、前記根部と前記第一雄鈎部との間の角及び前記根部と前記第二雄鈎部との間の角が、いずれも鈍角であ
り、
前記断面において、前記根部と前記第二雄鈎部との間の角が、110°以上であり、かつ
前記断面において、前記根部と前記第一雄鈎部との間の角が、前記根部と前記第二雄鈎部との間の角よりも大きい、
チャックテープ。
【請求項2】
前記断面において、前記根部と前記第二雄鈎部との間の角が、130°以上である、請求項1に記載のチャックテープ。
【請求項3】
前記断面において、前記第一雄鈎部の前記根部からの突出幅が、前記第二雄鈎部の前記根部からの突出幅よりも小さい、請求項1又は2に記載のチャックテープ。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、エチレン-ビニルアルコール
共重合体及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している、請求項1~3のいずれか一項に記載のチャックテープ。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、エチレン-ビニルアルコール共重合体65~95質量%及び酸変性ポリオレフィン系樹脂5~35質量%を含有している、請求項4に記載のチャックテープ。
【請求項6】
前記樹脂組成物における前記エチレン-ビニルアルコール共重合体中のエチレン単量体の含有率が、エチレン-ビニルアルコール共重合体全体のエチレン単量体及びビニルアルコール単量体の合計モル数を基準として、10~70mol%である、請求項4又は5に記載のチャックテープ。
【請求項7】
前記樹脂組成物のJIS K7210-1に準拠するメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、0.4g/10min以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のチャックテープ。
【請求項8】
エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有している非吸着性層を最内層として具備している包装袋用フィルムで構成されている、包装袋、並びに
前記雄部材及び前記雌部材が互いに対向し、かつ前記第一雄鈎部が開口部側に位置するようにして前記非吸着性層に融着されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のチャックテープ
を具備している、チャックテープ付き包装袋。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のチャックテープと、
エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有している非吸着性層を具備している、包装袋用フィルムと
を用いて、チャックテープ付き包装袋を製造する方法であって、
前記非吸着性層に前記チャックテープの前記雄部材及び前記雌部材をそれぞれ融着させること、並びに
前記チャックテープの前記雄部材及び前記雌部材が互いに対向し、かつ前記第一雄鈎部が開口部側に位置するようにして、前記非吸着性層の端部を互いに対向させて融着させて袋状にすること
を含み、
前記非吸着性層の端部を互いに対向させて融着させて袋状にする際に、前記チャックテープの少なくとも一部を、互いに対向している前記非吸着性層の前記端部の間で前記非吸着性層の前記端部と一体として融着及び圧潰させる、
チャックテープ付き包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、薬品等を包装するための包装容器の構成部分として、互いに嵌合可能である帯状の雄部材及び雌部材からなるチャックテープが広く使用されている。かかるチャックテープには、開封強度や密閉性等の性質が求められている。かかる要求を満足するため、種々のチャックテープが提案されている。
【0003】
特許文献1では、雄爪と雌爪が係合してなる一対のプラスチックチャックにおいて、フランジ上に開口側雌鈎部分と内容物側雌鈎部分の二つの爪で構成された雌爪が設けられており、開放力がプラスチックチャックの開口部側から加えられたとき、雌爪の基部に挟まれたフランジの部分が屈曲可能となっていることを特徴とするプラスチックチャックが開示されている。特許文献1では、このプラスチックチャックをポリエチレンで作製することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエチレン等の剛性が低い樹脂を用いて特許文献1のチャックテープを作製した場合には、良好な開封強度や密閉性等の性能が得られる。
【0006】
しかしながら、チャックテープを用いる包装袋の用途によっては、チャックテープそのものに、非吸着性等の種々の機能を付与することが求められる場合がある。かかる場合には、チャックテープを構成する樹脂として、剛性が高い樹脂を用いることを要する場合がある。この場合、ポリエチレンを用いることを想定している特許文献1に記載のチャックテープの形状を適用しても、所望の開封強度が得られないことがあった。
【0007】
そこで、剛性の高い樹脂で構成されており、かつ良好な開封強度を有するチャックテープを提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉互いに嵌合可能である帯状の雄部材及び雌部材からなるチャックテープであって、
前記雄部材及び前記雌部材が樹脂組成物で構成されており、前記樹脂組成物を100μmのフィルムに成形したときの引張弾性率が、400MPa以上であり、かつ
前記雄部材が、根部、並びに前記根部の先端に配置されている第一雄鈎部及び第二雄鈎部を具備しており、
前記雄部材の長手方向に垂直な断面において、前記根部と前記第一雄鈎部との間の角及び前記根部と前記第二雄鈎部との間の角が、いずれも鈍角である、
チャックテープ。
〈態様2〉前記断面において、前記根部と前記第一雄鈎部との間の角が、前記根部と前記第二雄鈎部との間の角よりも大きい、態様1に記載のチャックテープ。
〈態様3〉前記断面において、前記第一雄鈎部の前記根部からの突出幅が、前記第二雄鈎部の前記根部からの突出幅よりも小さい、態様1又は2に記載のチャックテープ。
〈態様4〉前記樹脂組成物が、エチレン-ビニルアルコール及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している、態様1~3のいずれか一項に記載のチャックテープ。
〈態様5〉前記樹脂組成物が、エチレン-ビニルアルコール共重合体65~95質量%及び酸変性ポリオレフィン系樹脂5~35質量%を含有している、態様4に記載のチャックテープ。
〈態様6〉前記樹脂組成物における前記エチレン-ビニルアルコール共重合体中のエチレン単量体の含有率が、エチレン-ビニルアルコール共重合体全体のエチレン単量体及びビニルアルコール単量体の合計モル数を基準として、10~70mol%である、態様4又は5に記載のチャックテープ。
〈態様7〉前記樹脂組成物のJIS K7210-1に準拠するメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、0.4g/10min以上である、態様1~6のいずれか一項に記載のチャックテープ。
〈態様8〉エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有している非吸着性層を最内層として具備している包装袋用フィルムで構成されている、包装袋、並びに
前記雄部材及び前記雌部材が互いに対向し、かつ前記第一雄鈎部が開口部側に位置するようにして前記非吸着性層に融着されている、態様1~7のいずれか一項に記載のチャックテープ
を具備している、チャックテープ付き包装袋。
〈態様9〉態様1~7のいずれか一項に記載のチャックテープと、
エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有している非吸着性層を具備している、包装袋用フィルムと
を用いて、チャックテープ付き包装袋を製造する方法であって、
前記非吸着性層に前記チャックテープの前記雄部材及び前記雌部材をそれぞれ融着させること、並びに
前記チャックテープの前記雄部材及び前記雌部材が互いに対向し、かつ前記第一雄鈎部が開口部側に位置するようにして、前記非吸着性層の端部を互いに対向させて融着させて袋状にすること
を含み、
前記非吸着性層の端部を互いに対向させて融着させて袋状にする際に、前記チャックテープの少なくとも一部を、互いに対向している前記非吸着性層の前記端部の間で前記非吸着性層の前記端部と一体として融着及び圧潰させる、
チャックテープ付き包装袋の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、剛性の高い樹脂で構成されており、かつ良好な開封強度を有する、チャックテープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のチャックテープの一態様を示す図である。
【
図2】
図2は、従来のチャックテープを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明のチャックテープ付き包装袋の一態様を示す図である。
【
図4】
図4は、チャックテープ付き包装袋を製造する本発明の方法の一態様の各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《チャックテープ》
図1に示されるように、本発明のチャックテープは、互いに嵌合可能である帯状の雄部材10及び雌部材20からなるチャックテープであって、
雄部材10及び雌部材20が樹脂組成物で構成されており、樹脂組成物を100μmのフィルムに成形したときの引張弾性率が、400MPa以上であり、かつ
雄部材10が、根部12、並びに根部12の先端に配置されている第一雄鈎部14a及び第二雄鈎部14bを具備しており、
雄部材10の長手方向に垂直な断面において、根部12と第一雄鈎部14aとの間の角及び根部12と第二雄鈎部14bとの間の角が、いずれも鈍角である。
【0012】
従来のチャックテープは、ポリエチレン等の剛性が低い樹脂を用いて、
図2に示すように、根部12’と第二雄鈎部14b’との間の角が鋭角となるように設計されていた。かかる構造においては、この樹脂による弾性及び第二雄鈎部14b’による嵌合性の相互作用により、良好な密閉性を維持しつつ、良好な開封強度がもたらされていた。
【0013】
しかしながら、上記の引張弾性率が400MPa以上である樹脂組成物を用いて、
図2に示す形状のチャックテープを作製した場合には、密閉性は維持されるものの、開封強度が良好ではなかった。
【0014】
これに対し、
図1に示す雄部材の形状、すなわち根部12と第一雄鈎部14aとの間の角及び根部12と第二雄鈎部14bとの間の角が、いずれも鈍角である形状においては、従来、雄部材と雌部材とが十分に嵌合できず、その結果、開封強度が非常に弱いと考えられていた。しかしながら、本発明者らは、予想外にも、上記の引張弾性率が400MPa以上である樹脂組成物を用いた場合には、
図1に示す雄部材を用いると良好な開封強度が得られることを見出した。
【0015】
以下では、本発明のチャックテープの雄部材及び雌部材の形状について説明する。
【0016】
〈雄部材〉
雄部材は、雌部材と嵌合可能な帯状の部材である。雄部材は、根部、並びに根部の先端に配置されている第一雄鈎部及び第二雄鈎部を具備している。以下では、雄部材の具体的な形状について、
図1(c)を参照しながら説明する。
【0017】
雄部材10の長手方向に垂直な断面において、根部12と第一雄鈎部14aとの間の角α及び根部12と第二雄鈎部14bとの間の角βが、いずれも鈍角である。これにより、上記の引張弾性率が400MPa以上である樹脂組成物を用いた場合に、良好な開封強度を有するチャックテープを得ることができる。なお、本発明において、「鈍角」とは、90°超180°以下の角度を意味するものである。
【0018】
上記の断面において、上記の角αは、上記の角βよりも大きい場合には、第一雄鈎部14a側からは開封しやすくなる一方で、第二雄鈎部14b側からは開封しにくくなる。チャックテープを用いて包装袋とした場合には、開口部側からの開封強度が適切であることは、開封強度が良好であることを意味する。また、非開口側(内容物側)からの開封強度が大きいことは、密閉性が良好であることを意味する。したがって、包装袋において、第一雄鈎部14aを開口部側に配置し、第二雄鈎部14bを非開口部側に配置した場合には、良好な開封強度及び密閉性が両立できることとなる。
【0019】
上記の角αは、155°以上、160°以上、又は165°以上であり、かつ180°以下、175°以下、又は170°以下であることが、良好な開封強度を得る観点から好ましい。
【0020】
上記の角βは、90°超、95°以上、100°以上、105°以上、110°以上、115°以上、120°以上、125°以上、130°以上、135°以上、140°以上、又は145°以上であり、かつ160°以下、又は155°以下であることが、良好な密閉性を得る観点から好ましい。
【0021】
また、上記の角αは、上記の角βよりも、10°以上、15°以上、20°以上、25°以上、30°以上、40°以上、50°以上、又は60°以上大きくてよい。
【0022】
また、雄部材の長手方向に垂直な断面において、第一雄鈎部14aの根部12からの突出幅Aが、第二雄鈎部14bの根部12からの突出幅Bよりも小さい場合にも、第一雄鈎部14a側からは開封しやすくなる一方で、第二雄鈎部14b側からは開封しにくくなる。上記と同様に、チャックテープを用いて包装袋とした場合には、開口部側からの開封強度が適切であることは、開封強度が良好であることを意味する。また、非開口側(内容物側)からの開封強度が大きいことは、密閉性が良好であることを意味する。したがって、包装袋において、第一雄鈎部14aを開口部側に配置し、第二雄鈎部14bを非開口部側に配置した場合には、良好な開封強度及び密閉性が両立できることとなる。
【0023】
上記の突出幅Aは、例えば0mm以上、0.03mm以上、又は0.05mm以上であってよく、また0.12mm以下、0.10mm以下、又は0.08mm以下であってよい。
【0024】
上記の突出幅Bは、例えば0.05mm以上、0.08mm以上、又は0.10mm以上であってよく、また0.20mm以下、0.18mm以下、又は0.15mm以下であってよい。
【0025】
また、上記の突出幅Aは、上記の突出幅Bよりも、0.01mm以上、0.02mm以上、0.03mm以上、0.05mm以上、又は0.07mm以上小さくてよい。
【0026】
雄部材10は、根部12と連続している随意のフランジ部16を更に具備していてよい。フランジ部を介して、他の部材、例えば包装袋用フィルムと雄部材とを接合、特に融着させることができる。
【0027】
〈雌部材〉
雌部材は、雄部材と嵌合可能な帯状の部材である。雌部材は、第一雌鈎部及び第二雌鈎部を具備していてよい。
【0028】
第一雌鈎部及び第二雌鈎部は、第一雄鈎部及び第二雄鈎部とそれぞれ嵌合可能であってよい。
【0029】
雌部材は、第一雌鈎部及び第二雌鈎部と連続している随意のフランジ部を更に具備していてよい。フランジ部を介して、他の部材、例えば包装袋用フィルムと雌部材とを接合、特に融着させることができる。
【0030】
次に、本発明のチャックテープの雄部材及び雌部材を構成する樹脂組成物について説明する。
【0031】
〈樹脂組成物〉
雄部材及び雌部材を構成する樹脂組成物は、100μmのフィルムに成形したときの引張弾性率が、400MPa以上である樹脂組成物である。この引張弾性率は、400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、又は750MPa以上、あってよく、また1500MPa以下、1400MPa以下、1300MPa以下、1200MPa以下、1100MPa以下、1000MPa以下、又は900MPa以下であってよい。
【0032】
かかる樹脂組成物としては、特に限定されないが、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有していてよい。この樹脂組成物によれば、特にエチレン-ビニルアルコール共重合体を含有している層を最内層として具備している包装袋にチャックテープを十分な強度で融着させることができ、かつ香気成分等に対してチャックテープを非吸着性とすることができる。
【0033】
EVOHの含有量は、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、又は82質量%以上であることができ、また95質量%以下、93質量%以下、又は90質量%以下であることができる。この含有量は、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、又は82質量%以上であり、かつ90質量%以下であることが、非吸着性の包装袋との良好なヒートシール強度及び良好な非吸着性を両立させる観点から好ましい。
【0034】
酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有量は、5質量%以上、7質量%以上、又は10質量%以上であることができ、また40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、又は18質量%以下であることができる。この含有量は、10質量%以上であり、かつ35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、又は18質量%以下であることが、非吸着性の包装袋との良好なヒートシール強度及び良好な非吸着性を両立させる観点から好ましい。また、上記の含有量にすることにより樹脂組成物に適度な柔軟性を付与することができ、チャックテープに成形した際に良好な開封強度をもたらすことができるため好ましい。
【0035】
樹脂組成物のJIS K7210-1に準拠するメルトマスフローレートは、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、0.4g/10min以上であることが、チャックテープ付き包装袋を製造する際に、チャックテープの少なくとも一部を、互いに対向している包装袋の最内層、特に非吸着性の包装袋の非吸着性層の端部の間で包装袋の最内層の端部と一体として融着及び圧潰させることができ、その結果、包装袋の密封性を良好にする観点から好ましい。このメルトマスフローレートは、0.4g/10min以上、0.5g/10min以上、又は0.6g/10min以上であってよく、また4.5g/10min以下、4g/10min以下、3g/10min以下、2.5g/10min以下、2g/10min以下、1.5g/10min以下、又は1g/10min以下であることができる。
【0036】
このMFRは、JIS K7210-1のA法に準拠して、10分間に押し出された押出物の質量を直接的に測定してもよく、又はB法に準拠して、10分間に押し出された押出物の体積を測定し、押出物の密度を用いて押出物の質量を算出してもよい。
【0037】
(エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH))
EVOHは、一般的に、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して得ることができる。EVOHにより、香気成分に対する非吸着性をチャックテープにもたらすことができる。
【0038】
EVOH中のエチレン単量体の含有率は、EVOH全体のエチレン単量体及びビニルアルコール単量体の合計モル数を基準として、10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上、25mol%以上、30mol%以上、又は35mol%以上であることができ、また70mol%以下、60mol%以下、又は55mol%以下、50mol%以下、又は45mol%以下であることができる。
【0039】
EVOHは、一般的に、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して得ることができる。この場合、EVOHのビニルエステル単位のケン化度としては、90mol%以上、95mol%以上、99mol%以上、又は100mol%であることができる。ケン化度が高いと、結晶化しやすく、ガスバリア性も高まり、溶融時の熱安定性も向上する。したがって、一般的に、ケン化度は高い方が好ましい。
【0040】
ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表例として挙げられ、その他にプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルも挙げられる。これらのビニルエステルは1種又は2種以上混合して使用してもよい。
【0041】
EVOHとしては、エチレン含有量、ケン化度、重合度の内の少なくとも一つが異なるEVOHを混合して用いてもよい。EVOHには、本発明の目的が阻害されない範囲で他の共重合成分を含有させてもよい。これらのEVOHを複数種組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(酸変性ポリオレフィン系樹脂)
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、酸を、ポリオレフィンにグラフト重合したものであることができる。酸変性ポリオレフィン系樹脂により、包装袋に対する接着性をチャックテープにもたらすことができる。酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば無水マレイン酸変性ポリオレフィン等が用いられる。
【0043】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン{低密度ポリエチレン(LDPE)、直線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)}、ポリプロピレン{ポリプロピレン(PP)ホモポリマー(ホモPP)、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)}が好適に用いられる。
【0044】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0045】
例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィン100質量部に対して、無水マレイン酸を0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、又は1.0質量部以上で、50質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、10質量部以下、又は5.0質量部以下でグラフト重合したものを用いることができる。このような無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、特開平9-278956号公報に記載のものを挙げることができる。
【0046】
《チャックテープ付き包装袋》
図3に示すように、チャックテープ付き包装袋300は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有している非吸着性層200を最内層として具備している、包装袋、並びに雄部材10及び雌部材20が互いに対向し、かつ第一雄鈎部14aが開口部側に位置するようにして非吸着性層200に融着されている、上記のチャックテープを具備している。
【0047】
上記の構成を有するチャックテープ付き包装袋は、特にチャックテープがEVOH及び酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有している場合には、チャックテープの非吸着性及び包装袋の非吸着性を両立させることができるので、包装袋全体として良好な非吸着性をもたらすことができる。
【0048】
〈包装袋〉
包装袋は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有している非吸着性層を最内層として具備していてよい。
【0049】
この包装袋は、非吸着性層を少なくとも具備している包装袋用フィルムで構成されていてよい。この包装袋用フィルムは、随意の基材層を更に具備していてもよい。
【0050】
(非吸着性層)
非吸着性層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有していてよい。エチレン-ビニルアルコール共重合体としては、チャックテープに関して挙げたものを用いることができる。
【0051】
また、非吸着性層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂を更に含有していることが、チャックテープとの接着性をより良好にする観点から好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、チャックテープに関して挙げたものを用いることができる。
【0052】
(基材層)
基材層は、包装袋用フィルムにおいて非吸着性層に積層されていてよい。この基材層は、非吸着性層に適度なコシ及び外部からの水分や酸素等の浸入を防止するバリア性を付与できることが好ましい。
【0053】
このような基材層としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、飽和又は不飽和ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等、及びこれらの組合せで作られた基材層を使用することができる。これらの材料で作られた基材層は単層で用いてもよく、また積層させて用いてもよい。さらにバリア性を高める目的で、純アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、又はアルミナ若しくはシリカ蒸着フィルム等のバリア層を積層させてもよい。
【0054】
(他の層)
包装袋用フィルムは、随意の他の層を有していてもよい。他の層としては、例えば各層の間に存在する接着層が挙げられる。
【0055】
《チャックテープ付き包装袋の製造方法》
チャックテープ付き包装袋を製造する本発明の方法は、上記の包装袋用フィルムの非吸着性層に上記のチャックテープの雄部材及び雌部材をそれぞれ融着させる融着工程、並びにチャックテープの雄部材及び雌部材が互いに対向し、かつ第一雄鈎部が開口部側に位置するようにして、非吸着性層の端部を互いに対向させて融着させて袋状にする製袋工程を含む。
【0056】
非吸着性層の端部を互いに対向させて融着させて袋状にする際に、チャックテープの少なくとも一部を、互いに対向している非吸着性層の端部の間で非吸着性層の端部と一体として融着及び圧潰させる。
【0057】
以下では、チャックテープ付き包装袋を製造する本発明の方法の各工程について、
図4を参照しながら説明する。なお、
図4においては、包装袋が三方シール袋である態様について言及しているが、包装袋は、四方シール袋であってもよい。
【0058】
(融着工程)
上記の包装袋用フィルムの非吸着性層に上記のチャックテープを融着させる工程である。
【0059】
この工程は、例えば、
図4(a)に示すように、非吸着性層200を具備している包装袋用フィルムを準備し、次いで
図4(b)に示すように包装袋用フィルムの非吸着性層200に雄部材10及び雌部材20を融着させることにより行うことができる。
【0060】
チャックテープの融着は、チャックテープの成形と別途に行ってもよく、又はチャックテープの成形と同時に行ってもよい。また、特に四方シール袋を作製しようとする場合、雄部材及び雌部材は、それぞれ別の包装袋用フィルムに融着させてもよい。
【0061】
(製袋工程)
製袋工程は、チャックテープの雄部材及び雌部材が互いに対向し、かつ第一雄鈎部が開口部側に位置するようにして、非吸着性層の端部を互いに対向させて融着させて袋状にする工程である。
【0062】
この工程は、例えば、
図4(c)に示すように、チャックテープ100の雄部材10及び雌部材20が互いに対向するように、特に雄部材10及び雌部材20を互いに嵌合させるようにし、かつ第一雄鈎部14aが開口部側に位置するようにして、非吸着性層200の端部を互いに対向させ、そして
図4(d)に示すように、シール部250において非吸着性層200の端部を融着させて袋状にすることにより行うことができる。非吸着性層200の端部を互いに対向させて融着させて袋状にする際には、例えば、チャックテープ100と端部とが重なっている領域150におけるチャックテープ100の一部を、互いに対向している非吸着性層200の端部の間で非吸着性層200の端部と一体として融着及び圧潰させることができる。
【実施例】
【0063】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0064】
《樹脂組成物の作製》
〈樹脂組成物A〉
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)(エバール、クラレ株式会社、エチレン単量体含有率44mol%)及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン(アドマー、三井化学株式会社)を、質量比88:12で高せん断の二軸押出機で溶融混練して、樹脂組成物Aを作製した。
【0065】
〈樹脂組成物B〉
上記の質量比を75:25に変更したことを除き、樹脂組成物Aと同様にして、樹脂組成物Bを作製した。
【0066】
《樹脂組成物の特性評価》
以下の評価を、樹脂組成物A及びB、並びに低密度ポリエチレンについて行った。
【0067】
〈引張弾性率〉
作製した各樹脂組成物を用い、単層製膜機で100μmの評価用フィルムを製膜した。
【0068】
製膜した評価用フィルムを15mm幅に切りだし、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minの条件で引張弾性率を測定した。
【0069】
〈メルトマスフローレート〉
作製した各樹脂組成物のJIS K7210-1のA法(質量測定法)に準拠するメルトマスフローレート(MFR)を、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で測定した。
【0070】
各樹脂組成物の構成及び評価結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
《チャックテープの作製》
作製した各樹脂組成物を用いて、異型溶融押出により、互いに嵌合可能な雌部材及び表2に示す形状を有する雄部材を有し、フランジ部の幅が7mmで厚みが約100μmのチャックテープを作製した。いずれのサンプルもチャックテープの成形は可能であった。なお、低密度ポリエチレンとしては、上記で特性評価を行った低密度ポリエチレンを用いた。なお、表2の「雄部材の形状」の符号α、β、A及びBは、
図1(c)における各符号に対応している。
【0073】
作製したチャックテープの寸法を、断面観察において測定して確認した。
【0074】
次いで、上記のチャックテープ及び上記の包装袋用フィルムを用いて、
図4に関して上記に言及した方法により9cm×17cmの包装袋を作製し、下記項目を評価した。
【0075】
《評価》
〈開封強度〉
5名による開閉試験をすることにより、開封強度の官能評価を行った。次いで、作製した包装袋の非開口側を切断し、非開口側からも同様に開閉試験を行った。
【0076】
〈非吸着性〉
非吸着性を有する樹脂であるEVOHの各樹脂組成物における含有率に基づき、チャックテープの非吸着性を相対的に評価した。評価基準は以下のとおりである。
〇:EVOHの含有率が多く、良好な非吸着性が得られる。
△:EVOHの含有率がやや多く、やや良好な非吸着性が得られる。
×:EVOHの含有率が少なく、非吸着性が良好ではない。
【0077】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表2に示す。
【0078】
【0079】
表1から、実施例1~5のチャックテープでは、開口側からの開封強度が概ね適度であったことが理解できよう。また、これらの実施例では、非開口側からの開封強度が強かったことから、良好な密封性が得られていることが理解できよう。かかる開口側からの適度な開封強度は、樹脂組成物の上記の引張弾性率が400MPa以上であり、かつ根部と開口側(第一)雄鈎部との間の角α及び根部と非開口側(第二)雄鈎部との間の角βが、いずれも鈍角であることによって得られていると考えられる。また、非開口側からの強い開封強度が、上記の角αが、上記の角βよりも大きいこと、及び開口側(第一)雄鈎部の根部からの突出幅Aが、非開口側(第二)雄鈎部の根部からの突出幅Bよりも小さいことによって得られていると考えられる。
【0080】
これに対し、上記の角βが鋭角である比較例1及び2のチャックテープは、開口側からの開封強度が強すぎたこと、並びに上記の角αが180°を超えている比較例3のチャックテープは、開封強度が弱すぎており、密封性が得られていないことが理解できよう。
【0081】
更に、低密度ポリエチレンを用いて、実施例1と同一の形状で作製した比較例4のチャックテープは、開封強度が弱すぎており、密封性が得られていない一方で、低密度ポリエチレンを用いて、上記の角βが鋭角である形状で作製した参考例のチャックテープは、開口側からの開封強度が概ね適度であり、かつ非開口側からの開封強度が強かった。このことから、上記の角α及び上記の角βがいずれも鈍角である実施例1~5の形状は、樹脂組成物A及びBには適している一方で低密度ポリエチレンには適していないこと、並びに上記の角βが鋭角である形状は、低密度ポリエチレンには適している一方で樹脂組成物A及びBには適していないことが理解できよう。
【符号の説明】
【0082】
10 雄部材
12 根部
14a 第一雄鈎部
14b 第二雄鈎部
16、26 フランジ部
20 雌部材
24a 第一雌鈎部
24b 第二雌鈎部
100 チャックテープ
200 包装袋用フィルムの非吸着性層
250 シール部
300 包装袋
α 根部と第一雄鈎部との間の角
β 根部と第二雄鈎部との間の角
A 第一雄鈎部の根部からの突出幅
B 第二雄鈎部の根部からの突出幅