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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】投票用紙交付装置
(51)【国際特許分類】
   G07C 13/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G07C13/00 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018147052
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020021423
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390011981
【氏名又は名称】株式会社ムサシ
(73)【特許権者】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】萬 秀紀
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-215218(JP,A)
【文献】特開2012-043367(JP,A)
【文献】特開2003-006696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉蓋を有する装置本体内に、
複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、
前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、
を備えている、投票用紙交付装置において、
前記装置本体内に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、
前記カラーセンサーによって読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、
前記カラーセンサーによって読み取られた、前記収容部に収容された前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、
前記正規色情報設定部によって設定された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、
前記判定部による判定結果が「不一致」である場合に、前記交付作動を中止する、交付中止部と、
を備えており、
前記カラーセンサーは、前記収容部に収容されている前記投票用紙の色情報を、読み取るように、設置されており、
前記交付中止部は、前記用紙交付機構の作動を中止するようになっており、
前記収容部は、前記投票用紙を縦積み形式で収容するようになっており、
前記カラーセンサーは、収容されている前記投票用紙を前方又は後方から検知できるように、配置されている、
ことを特徴とする、投票用紙交付装置。
【請求項2】
開閉蓋を有する装置本体内に、
複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、
前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、
を備えている、投票用紙交付装置において、
前記装置本体内に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、
前記カラーセンサーによって読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、
前記カラーセンサーによって読み取られた、前記収容部に収容された前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、
前記正規色情報設定部によって設定された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、
前記判定部による判定結果が「不一致」である場合に、前記交付作動を中止する、交付中止部と、
を備えており、
前記カラーセンサーは、前記収容部に収容されている前記投票用紙の色情報を、読み取るように、設置されており、
前記交付中止部は、前記用紙交付機構の作動を中止するようになっており、
前記収容部は、前記投票用紙を平積み形式で収容するようになっており、
前記カラーセンサーは、収容されている前記投票用紙を上方又は下方から検知できるように、配置されている、
ことを特徴とする、投票用紙交付装置。
【請求項3】
開閉蓋を有する装置本体内に、
複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、
前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、
を備えている、投票用紙交付装置において、
前記装置本体内に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、
前記カラーセンサーによって読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、
前記カラーセンサーによって読み取られた、前記収容部に収容された前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、
前記正規色情報設定部によって設定された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、
前記判定部による判定結果が「不一致」である場合に、前記交付作動を中止する、交付中止部と、
を備えており、
前記判定部による判定結果が「一致」である場合に、次の判定において採用する前記正規色情報として、比較された当該読取色情報に基づいて更新された正規色情報を設定する、正規色情報更新部を、更に備えている、
ことを特徴とする、投票用紙交付装置。
【請求項4】
開閉蓋を有する装置本体内に、
複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、
前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、
を備えている、投票用紙交付装置において、
前記装置本体内に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、
前記カラーセンサーによって読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、
前記カラーセンサーによって読み取られた、前記収容部に収容された前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、
前記正規色情報設定部によって設定された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、
前記判定部による判定結果が「不一致」である場合に、前記交付作動を中止する、交付中止部と、
を備えており、
複数の選挙種別の名前と、各選挙種別に対応した正規色情報とを、記憶している、データテーブルを、備えており、
前記正規色情報設定部は、前記基準指標物の色情報を含んでいる前記正規色情報を、前記データテーブルから取得して、設定するようになっている、
ことを特徴とする、投票用紙交付装置。
【請求項5】
開閉蓋を有する装置本体内に、
複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、
前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、
を備えている、投票用紙交付装置において、
前記装置本体内に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、
前記カラーセンサーによって読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、
前記カラーセンサーによって読み取られた、前記収容部に収容された前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、
前記正規色情報設定部によって設定された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、
前記判定部による判定結果が「不一致」である場合に、前記交付作動を中止する、交付中止部と、
を備えており、
前記開閉蓋を開閉する度に、前記カラーセンサー、前記読取色情報設定部、前記判定部、及び前記交付中止部を、作動させる、開閉連動部を、更に備えている、
ことを特徴とする、投票用紙交付装置。
【請求項6】
開閉蓋を有する装置本体内に、
複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、
前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、
を備えている、投票用紙交付装置において、
前記装置本体内に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、
前記カラーセンサーによって読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、
前記カラーセンサーによって読み取られた、前記収容部に収容された前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、
前記正規色情報設定部によって設定された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、
前記判定部による判定結果が「不一致」である場合に、前記交付作動を中止する、交付中止部と、
を備えており、
前記読取色情報設定部を非作動状態に設定できる、読取非作動設定手段を、更に備えている、
ことを特徴とする、投票用紙交付装置。
【請求項7】
前記基準指標物の色情報及び前記投票用紙の色情報は、それぞれ、R値とG値とB値とによって規定されており、
前記正規色情報は、所定範囲のR値と、所定範囲のG値と、所定範囲のB値と、によって、規定されており、
前記判定部は、前記読取色情報のR値、G値、及びB値の各値が、前記正規色情報のR値、G値、及びB値の各範囲に、含まれない場合には「不一致」と判定し、含まれる場合には「一致」と判定するようになっている、
請求項1~6のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項8】
前記基準指標物は、交付予定の正規の投票用紙自体であり、又は、交付予定の正規の投票用紙と同じ色情報を有する物品である、
請求項1~6のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項9】
前記投票用紙の前記色情報は、選挙種別毎に特定されている、
請求項1~のいずれか一つに記載の投票用紙交付装置。
【請求項10】
前記収容部は、縦積みされている前記投票用紙を後方から前方へ向けて押し付ける押さえ部材を、更に備えており、
前記押さえ部材は、前記基準指標物を交換可能に保持する指標保持部を、有している、
請求項記載の投票用紙交付装置。
【請求項11】
前記基準指標物は、選挙種別の識別コードを、更に有しており、
前記装置本体内には、前記識別コードを読み取る識別コード読取センサーが、設けられている、
請求項10記載の投票用紙交付装置。
【請求項12】
前記識別コード読取センサーは、前記カラーセンサーに並設されており、
前記正規色情報設定部は、前記正規色情報と共に選挙種別の名前も設定するようになっている、
請求項11記載の投票用紙交付装置。
【請求項13】
前記基準指標物には、選挙種別の名前が記載されている、
請求項10記載の投票用紙交付装置。
【請求項14】
複数種類の前記基準指標物を有する指標部材を、備えており、
前記指標部材は、複数種類の前記基準指標物の内の任意の前記基準指標物を、前記カラーセンサーに読み取らせるように、設定できるようになっている、
請求項記載の投票用紙交付装置。
【請求項15】
前記データテーブルに記憶されている前記正規色情報を、任意の別の正規色情報に変更できる、正規色情報変更手段を、更に備えている、
請求項記載の投票用紙交付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投票用紙を投票者に交付するための投票用紙交付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、選挙においては、投票用紙交付装置が用いられている。投票用紙交付装置は、多数枚の投票用紙を収容しており、操作者がスイッチを押す度に、投票用紙を1枚ずつ送り出すようになっている。送り出された投票用紙は、操作者が抜き取って選挙人に手渡したり選挙人が自ら抜き取ったりすることによって、選挙人に交付される。それ故、投票用紙交付装置は、投票用紙を1枚ずつ確実に選挙人に交付でき、また、交付した投票用紙の枚数を正確に計数できるので、投票用紙の管理事務の効率化に役立っている。
【0003】
ところで、複数の選挙が同時に実施される場合には、投票用紙は、複数種別あり、種別毎に、対応する投票用紙交付装置にセットされる。その際、投票用紙交付装置に、誤った種別の投票用紙をセットしてしまうと、投票用紙の誤交付が生じる。
【0004】
このような投票用紙の誤交付を防止するために、本願出願人は、種々の投票用紙交付装置を提案している(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-215218号公報
【文献】特開2015-146114号公報
【文献】特開2016-091373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の投票用紙交付装置では、特別な識別コードを投票用紙に予め印刷しておく必要がある。それ故、この装置は、準備作業が大掛かりとなり、実用化には至っていない。一方、特許文献2、3の投票用紙交付装置は、投票用紙の種別の目視確認を操作者に促すことができる。これらの装置によれば、投票用紙交付装置に誤った種別の投票用紙をセットしてしまうことを、有効に防止できる。
【0007】
ところで、近年、選挙種別毎に、異なる色の投票用紙が使用されることがある。例えば、「参議院比例代表選挙」は「白色」、「衆議院小選挙区選挙」は「ピンク色」、「衆議院比例代表選挙」は「あさぎ色」である。このように選挙種別と色とが対応付けられていれば、投票用紙の色を確認の対象要素とすることによって投票用紙の誤交付を容易且つ確実に防止できることが、期待される。
【0008】
本発明は、投票用紙の色を自動で確認することによって投票用紙の誤交付を効果的に防止できる、投票用紙交付装置を、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の投票用紙交付装置は、開閉蓋を有する装置本体内に、複数枚の投票用紙を収容できる収容部と、前記収容部に収容された前記投票用紙を、1枚ずつ、前記収容部から取り出して、搬送路を通して、用紙取出口から交付させる、用紙交付機構と、を備えている、投票用紙交付装置において、前記装置本体内に設置されており、対象物の色情報を読み取る、カラーセンサーと、前記カラーセンサーによって読み取られた、基準指標物の色情報に基づいて、正規色情報を設定する、正規色情報設定部と、前記カラーセンサーによって読み取られた、前記収容部に収容された前記投票用紙の色情報を、読取色情報として設定する、読取色情報設定部と、前記正規色情報設定部によって設定された前記正規色情報と、前記読取色情報設定部によって設定された前記読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する、判定部と、前記判定部による判定結果が「不一致」である場合に、前記交付作動を中止する、交付中止部と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収容部に収容された投票用紙の色情報を、交付予定の正規の投票用紙の正規色情報と比較し、両者が一致しない場合には、交付作動を中止するので、間違った投票用紙が交付されるのを自動で且つ確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の投票用紙交付装置の外観斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】上カバーが開いた状態の装置本体の外観斜視図である。
図4】制御部を含む交付装置のブロック図である。
図5】収容部の立壁を後方から見た図である。
図6】押さえ部材を前方から見た図である。
図7】基準指標物を示す図である。
図8】データテーブルに記憶させるデータを示す図である。
図9】本発明の変形構成の一例であって上カバーが閉じている時の作業検知センサーのオン状態を示す断面略図である。
図10図9の例であって上カバーが開いている時の作業検知センサーのオフ状態を示す断面略図である。
図11】本発明の変形構成の一例であって上カバーが閉じている時の別の例の作業検知センサーのオン状態を示す断面略図である。
図12図11の例であって上カバーが開いている時の作業検知センサーのオフ状態を示す断面略図である。
図13】本発明の変形構成の一例であって交付装置の前方斜視図である。
図14図13の例であって交付装置の後方斜視図である。
図15図13のXV-XV断面図である。
図16】本発明の変形構成の一例であって平積みされた投票用紙の上方にカラーセンサーが配置された場合を示す断面図である。
図17】本発明の変形構成の一例であって平積みされた投票用紙の下方にカラーセンサーが配置された場合を示す断面図である。
図18】本発明の変形構成の一例であってカラーセンサーが搬送路の上方に配置された場合を示す断面図である。
図19】本発明の変形構成の一例であってカラーセンサーが搬送路の下方に配置された場合を示す断面図である。
図20図19の要部斜視図である。
図21】本発明の変形構成の一例であって回転式の指標部材及びその駆動機構を示す平面断面略図である。
図22図21の指標部材のXXII矢視図である。
図23】本発明の変形構成の一例であってスライド式の指標部材の斜視図である。
図24図23のXXIV矢視図である。
図25】コントローラ部の背面のスイッチ群を示す図である。
図26】他の構成を有する投票用紙交付装置を示す断面図である。
図27図26の交付装置のブロック図である。
図28図26の交付装置で交付する投票用紙の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の投票用紙交付装置は、選挙種別毎に特定された色情報を有する投票用紙を交付する際に、有効に使用できる。よって、実施形態で用いる投票用紙は、選挙種別毎に特定された色情報を有している。なお、投票用紙の「色情報」は、RGBカラーモデルにおける、R値、G値、及びB値によって、規定されている。
【0013】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態の投票用紙交付装置の外観斜視図である。図2は、図1のII-II断面図である。この交付装置10は、装置本体1とコントローラ部9とからなっている。ここでは、装置本体1とコントローラ部9とは、別体に設けられている。
【0014】
(装置本体)
装置本体1は、略直方体形状の筐体であり、上カバー(開閉蓋)111を有している。図3は、上カバー111が開いた状態の装置本体1の外観斜視図である。上カバー111は、装置本体1の上壁11の略後半部と後壁15の上部とが一体となって構成されている。上カバー111は、前縁部112を支点として、上下に回動することにより、開閉するようになっている。
【0015】
装置本体1は、内部に、複数枚の投票用紙Pを収容する収容部2と、収容部2において最前端に位置する1枚の投票用紙Pを、収容部2から取り出して、搬送路31を通して搬送して、用紙取出口32から交付させる、用紙交付機構3と、用紙交付機構3の途中から、搬送中の投票用紙Pを回収する、回収機構4と、回収された投票用紙Pを収容する回収部5と、を有している。上カバー111は、回収部5の一部及び収容部2の全部を覆っている。上カバー111は、外部から収容部2を視認できるように構成されており、具体的には、透明に形成されている。
【0016】
装置本体1は、後壁15の片隅に、電源103(図4)からの通電をオン・オフする電源スイッチ101と、電源へのコネクタ102と、を有している。更に、装置本体1は、装置全体の作動を制御する制御部7(図4)を有している。図4は、制御部7を含む交付装置10のブロック図である。制御部7は、CPU、ROM、RAM等により、実現されている。
【0017】
(コントローラ部)
コントローラ部9は、コード91を介して、装置本体1の制御部7に接続されており、制御部7に制御信号を送信するようになっている。コントローラ部9は、操作キー92、93、表示パネル94、確認スイッチ95、及び消音スイッチ96等を、有している。
【0018】
確認スイッチ95は、押されることによってオンするようになっている。また、確認スイッチ95は、表示ランプを構成するLEDと一体となっている。LEDとしては、白色LEDが好ましく用いられている。
【0019】
(収容部)
収容部2は、複数枚の投票用紙Pを収容する空間として構成されており、立壁21と底壁22と両側壁23とで囲まれている。立壁21は、上部が前になるように少し傾斜しており、収容部2と用紙交付機構3とを隔てている。底壁22は、用紙交付機構3に向けて少し低くなるように傾斜している。投票用紙Pは、図2に示されるように、立壁21に沿うように立てた状態で、且つ、立壁21側から重ねた状態で、すなわち、縦積み形式で積載された状態で、収容部2に収容される。底壁22には、収容された投票用紙Pを立壁21に向けて押し付ける押さえ部材25が設けられている。押さえ部材25は、板体であり、前後方向(矢印Y方向)に移動可能に設けられており、スプリング26によって立壁21側へ常時付勢されている。
【0020】
(用紙交付機構)
用紙交付機構3は、操作キー92又は93を1回オンすると、次のように1回作動するようになっている。すなわち、図2に示されるように、まず、取出ローラ331及び捌き部材332によって、収容部2において最前端に位置している投票用紙Pが、収容部2から取り出され、搬送路31へ送り出される。このとき、偏心ローラ333が、立壁21から収容部2内へ周期的に突出するように回転して、重なっている投票用紙Pを揺動させるので、投票用紙P同士の間に隙間が生じ、1枚の投票用紙Pが取り出しやすくなる。搬送路31に送り出された投票用紙Pは、搬送ローラ341、342、343によって、用紙取出口32まで搬送される。投票用紙Pは、抜き取り検出部材351を回動させながら搬送されて、用紙取出口32から突出し、回動から復帰した抜き取り検出部材351によって、下部が押さえられ、これによって、一部が用紙取出口32から突出した状態で止まる。なお、抜き取り検出部材351は、スプリング(図示せず)によって復帰方向に常時付勢されている。そして、次の投票用紙Pの先端が1対の用紙先端検出センサー361によって検知されると、全てのローラの作動が停止する。次いで、用紙取出口32から突出した投票用紙Pが、投票者によって抜き取られると、抜き取り検出部材351の回動がセンサー362によって検知され、装置本体1の前部に内蔵されたスピーカー62から選挙種別の名前等を告げる音声が流れる。
【0021】
(回収機構)
回収機構4は、搬送路31内に突出するように回動可能な排除ガイド部材41を、備えている。排除ガイド部材41は、搬送路31内に突出するように回動すると、搬送ローラ343との間に、搬送路31と回収部5とを連通させる通路40を構成し、それによって、搬送されて来る投票用紙Pを搬送路31から回収部5へ逃がすようになっている。なお、排除ガイド部材41は、例えば、投票用紙Pの重なりが用紙先端検出センサー361によって検知されると、回動して搬送路31内に突出するように、制御部7によって制御されている。それ故、回収機構4によれば、重なった投票用紙Pが用紙取出口32から突出するのを防止できる。
【0022】
(回収部)
回収部5は、通路40を搬送されて来た投票用紙Pが積載されていく空間として構成されており、底壁51と両側壁53とで囲まれている。底壁51は、後方向に高くなるように傾斜している。両側壁53は、例えば、収容部2を構成している両側壁23と同じ壁である。
【0023】
(照明具)
装置本体1は、内部に、照明具61を有している。照明具61は、上カバー111の前縁部112の内面に、設けられており、上カバー111が閉じた状態で、収容部2及び回収部5を照らすように、配置されている。照明具61としては、演色性が優れているという観点から、白色LED又は白色系電球が好ましく用いられている。
【0024】
(カラーセンサー)
装置本体1の内部には、カラーセンサー81が設置されている。カラーセンサー81は、対象物の色情報を読み取ることができる。カラーセンサー81は、図2に示されるように、立壁21の裏側(前側)に、設置されている。図5は、収容部2の立壁21を後方から見た図である。立壁21の、カラーセンサー81に対向した部分には、透明窓811が、形成されている。これにより、カラーセンサー81は、収容部2内の対象物の色情報を読み取ることができる。なお、カラーセンサー81は、専用のフォトICによっても構成でき、又は、複数色のLED及びフォトトランジスタによっても構成できる。
【0025】
(押さえ部材)
図6は、押さえ部材25を前方から見た図である。押さえ部材25は、透明である。押さえ部材25の、カラーセンサー81に対向した部分には、指標保持部251が形成されている。指標保持部251は、板状の基準指標物を上方から挿し込んで保持できるポケットを、有している。図7は、基準指標物30を示している。基準指標物30は、投票用紙と同じ素材の指標用紙301が薄板302に貼り付けられて構成されている。指標用紙301は、投票用紙と同じ素材であるから、同じ色情報を有している。また、指標用紙301には、選挙種別の名前303が印刷されている。更に、指標用紙301には、選挙種別の名前303の下方に、当該選挙種別を示す識別コード304が印刷されている。識別コード304は、3個の識別符号用印刷領域3041、3042、3043を有しており、任意の組み合わせの領域のみに識別符号が印刷されることによって、「選挙種別」を特定するようになっている。
【0026】
(識別コード読取センサー)
図2及び図5に示されるように、立壁21の裏側であってカラーセンサー81の下方には、指標用紙301の識別コード304を読み取るための識別コード読取センサー83が設置されている。識別コード読取センサー83は、3個の反射型センサーを有している。3個の反射型センサーは、立壁21に設けられた透明窓831、832、833を通して、指標保持部251に保持された基準指標物30の3個の識別符号用印刷領域3041、3042、3043に、それぞれ対向するように、配置されている。3個の識別符号用印刷領域3041、3042、3043は、例えば、白黒の3ビットの符号に色分けされる。これにより、識別コード読取センサー83は、基準指標物30が示す選挙種別の名前を読み取ることができる。なお、読み取られた選挙種別の名前は、コントローラ部9の表示パネル94に表示される。
【0027】
(制御部)
制御部7は、データ設定部71、正規色情報設定部72、読取色情報設定部73、判定部74、及び交付中止部75等を、有している。
【0028】
(記憶部)
制御部7には、記憶部77が接続されている。記憶部77は、複数種類の選挙種別の名前と各選挙種別に対応した色情報すなわち正規色情報とを記憶するためのデータテーブル771を有している。
【0029】
[作動]
次に、上記構成の交付装置10の作動について、説明する。
【0030】
(1)データ設定作業
データ設定作業は、データテーブル771に、複数種類の選挙種別の名前と各選挙種別に対応した正規色情報とを記憶させる。例えば、図8に示されるようなデータを記憶させる。このデータは、第1~第5選挙種別の名前と、第1~第5選挙種別に対応した第1~第5正規色情報と、を含んでいる。正規色情報は、所定範囲のR値と、所定範囲のG値と、所定範囲のB値とによって、規定されている。すなわち、図8において、第1選挙種別に対応する第1正規色情報は、V1~V2のR値と、V3~V4のG値と、V5~V6のB値とによって、規定されており、第2~第5選挙種別に対応した第2~第5正規色情報も、それぞれ、同様である。データ設定作業は、具体的には、次の(a)又は(b)のように行う。なお、以下では、図8のデータを記憶させる場合について説明する。
【0031】
(a)まず、選挙種別に対応した色情報を有する基準紙を、選挙種別毎に用意する。すなわち、第1~第5選挙種別に対応した第1~第5基準紙を用意する。なお、色情報は、R値とG値とB値とによって規定されている。次に、電源スイッチ101をオンして、第1~第5基準紙の色情報を、それぞれ、カラーセンサー81に、読み取らせる。そうすると、データ設定部71が、読み取られた第1~第5基準紙の色情報に基づいて第1~第5正規色情報をそれぞれ算出し、算出した第1~第5正規色情報を対応する第1~第5選挙種別と紐付けてデータテーブル771に記憶させる。
【0032】
(b)まず、代表的な選挙種別に対応した色情報を有する基準紙1枚のみを、用意する。すなわち、例えば、第1選挙種別に対応した第1基準紙を用意する。なお、色情報は、R値とG値とB値とによって規定されている。次に、電源スイッチ101をオンして、第1基準紙の色情報を、カラーセンサー81に、読み取らせる。そうすると、データ設定部71が、読み取られた第1基準紙の色情報に基づいて第1正規色情報を算出し、算出した第1正規色情報を対応する第1選挙種別と紐付けてデータテーブル771に記憶させるとともに、読み取られた第1基準紙の色情報に基づいて第2~第5正規色情報をそれぞれ算出し、算出した第2~第5正規色情報を対応する第2~第5選挙種別と紐付けてデータテーブル771に記憶させる。
【0033】
なお、データ設定作業は、通常は、工場出荷時に行う。よって、上記作業が終了すると、操作者は、電源スイッチ101をオフして、交付装置10を梱包する。
【0034】
(2)初期設定作業
交付装置10を開梱した操作者は、まず、初期設定作業を行う。初期設定作業は、交付装置10によって交付する正規の投票用紙の「選挙種別」及び「正規色情報」を特定する。
【0035】
(2-1)操作者は、装置本体1の電源スイッチ101をオンする。そうすると、設定作業の案内音声がスピーカー62から流れ始める。
【0036】
(2-2)まず、「基準指標物を入れて、確認スイッチ(SW)を押して下さい」との案内音声が流れる。操作者は、案内音声に従って、上カバー111を開けて、基準指標物30を、押さえ部材25の指標保持部251に保持させ、その後、上カバー111を閉じて、確認スイッチ95を押す。なお、このとき、押さえ部材25は、収容部2に投票用紙が収容されていない状態で、立壁21に近接しているのが好ましい。
【0037】
なお、基準指標物30は、上述したように、交付予定すなわち正規の投票用紙と同じ色情報を有しており、また、基準指標物30には、投票用紙の選挙種別の名前303とその選挙種別を示す識別コード304が印刷されている。
【0038】
確認スイッチ95が押されると、カラーセンサー81、識別コード読取センサー83、及び正規色情報設定部72が、作動した後、次の案内音声がスピーカー62から流れる。カラーセンサー81は、基準指標物30の色情報を読み取る。識別コード読取センサー83は、基準指標物30の識別コード304から選挙種別の名前を読み取る。そして、正規色情報設定部72は、カラーセンサー81によって読み取られた、基準指標物30の色情報に基づいて、正規色情報を設定するとともに、識別コード読取センサー83によって読み取られた、基準指標物30の選挙種別の名前を、設定する。なお、正規色情報設定部72は、基準指標物30の色情報を含んでいる正規色情報を、データテーブル771から取得して、設定する。これにより、この交付装置10によって交付する投票用紙の「選挙種別」及び「正規色情報」が特定される。
【0039】
(2-3)そして、例えば選挙種別として「参議院比例代表」を選定している場合には、「参議院比例代表を選定」及び「正しければ確認スイッチを押して下さい」との案内音声が流れる。操作者が確認スイッチ95を押すと、初期設定作業が終了する。
【0040】
(3)交付作業
(3-1)確認スイッチ95が押されると、「上カバーを開けて下さい」との案内音声が流れる。更に、「白いレバーを突きあたりまで引いて下さい」及び「用紙をよくさばいてセットして下さい」の案内音声が、続けて流れる。なお、白いレバーは、押さえ部材25である。操作者は、案内音声に従って、上カバー111を開けて、投票用紙を収容部2に積載し、その後、上カバー111を閉じる。
【0041】
(3-2)そして、操作者は、交付作業を開始する。すなわち、操作者は、投票者が一人来ると、操作キー92又は93を1回オンする。このとき、投票者が男性の場合には男性用の操作キー92をオンし、投票者が女性の場合には女性用の操作キー93をオンする。
【0042】
操作キー92又は93が1回オンされると、カラーセンサー81、読取色情報設定部73、判定部74、及び交付中止部75が作動する。カラーセンサー81は、収容部2の投票用紙Pの色情報を読み取る。読取色情報設定部73は、カラーセンサー81によって読み取られた投票用紙Pの色情報を、読取色情報として設定する。判定部74は、正規色情報設定部72によって設定された正規色情報と、読取色情報設定部73によって設定された読取色情報と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する。なお、判定部74は、読取色情報のR値、G値、及びB値の各値が、正規色情報のR値、G値、及びB値の各範囲に、含まれない場合には「不一致」と判定し、含まれる場合には「一致」と判定する。交付中止部75は、判定部74による判定結果が「不一致」である場合に、例えば用紙交付機構3の作動を中止することによって、交付作動を中止するとともに、コントローラ部9の表示パネル94に「用紙が間違っています」と表示したりスピーカー62から「用紙が間違っています」と報知したりすることによって警告を発する。
【0043】
(3-3)交付作動が中止した場合、操作者は、上カバー111を開け、収容部2内の間違っている投票用紙Pを除去する。そして、上カバー111を閉じて、改めて、交付作業を開始する。なお、判定部74の判定結果が「一致」である場合には、収容部2の最前端の投票用紙Pが、収容部2から取り出され、搬送路31を通して搬送されて、用紙取出口32から突出する。用紙取出口32から突出した投票用紙Pは、投票者によって抜き出され、すなわち、交付される。
【0044】
[効果]
上記構成の交付装置10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0045】
(a)収容部2に収容された投票用紙Pの色情報を、交付装置10によって交付する正規の投票用紙の正規色情報と比較し、両者が一致しない場合には、交付作動を中止するので、間違った投票用紙Pが交付されるのを自動で且つ確実に防止できる。
【0046】
(b)正規色情報及び読取色情報を、同じカラーセンサー81を用いて取得しているので、同じ条件で取得でき、よって、判定部74による判定を高い信頼性の下に行うことができる。
【0047】
(c)基準指標物30の色情報をカラーセンサー81に読み取らせることによって正規色情報を設定するので、正規色情報を容易に設定できる。
【0048】
(d)判定部74は、読取色情報のR値、G値、及びB値の各値が、正規色情報のR値、G値、及びB値の各範囲に、含まれるか否かによって、判定するので、融通のある判定を実行できる。例えば、時間の経過に起因して、投票用紙が僅かに色褪せたりカラーセンサー81の感度が僅かに変動したりした場合でも、判定部74は、そのような僅かな差異に捕らわれることなく、正当な判定結果を得ることができる。
【0049】
(e)正規色情報設定部72は、正規色情報を、データテーブル771から取得して設定するので、作業性良く設定できる。
【0050】
(f)交付中止部75は、判定部74による判定結果が「不一致」である場合に、用紙交付機構3の作動を中止するので、確実に交付作動を中止できる。
【0051】
(g)カラーセンサー81が収容部2の縦積みされた投票用紙Pを前方から検知できるので、判定部74は、これから交付しようとしている最前端の投票用紙Pが間違いか否かを判定できる。
【0052】
(h)押さえ部材25が基準指標物30を指標保持部251に保持できるので、カラーセンサー81は、投票用紙Pと同じ条件で基準指標物30を検知できる。
【0053】
(i)識別コード読取センサー83が基準指標物30の選挙種別の名前を読み取って設定するので、操作者は、交付装置10が使用される選挙種別を確実に認識できる。
【0054】
[変形構成]
上記構成の交付装置10は、次のような変形構成を採用してもよい。
【0055】
(i)正規色情報設定部72が、データテーブル771から正規色情報を取得するのではなく、自ら、基準指標物の色情報に基づいて正規色情報を算出して、設定する。これによれば、データテーブルを不要にできる。
【0056】
(ii)基準指標物30として、交付予定の正規の投票用紙自体を用いる。これによれば、基準指標物30を改めて製作する手間を省くことができる。
【0057】
(iii)制御部7が、正規色情報更新部を更に備えている。正規色情報更新部は、判定部74による判定結果が「一致」である場合に、次の判定において採用する正規色情報を、比較された読取色情報に基づいて更新する。すなわち、正規色情報更新部は、例えば、判定部74が正規色情報(A)と読取色情報(a)とを比較して、判定結果が「一致」である場合において、次の判定で採用する正規色情報として、読取色情報(a)に基づいて更新された正規色情報(B)を設定する。具体的には、正規色情報(B)のR値、G値、及びB値の各範囲を、読取色情報(a)のR値、G値、及びB値を中央に有する範囲に、設定する。これによれば、カラーセンサー81の感度が経時的に変動した場合でも、正当な判定結果を得ることができる。
【0058】
(iv)制御部7が、開閉連動部を更に備えている。開閉連動部は、上カバー111を開閉する度に、投票用紙が補充されたものと判断して、カラーセンサー81、読取色情報設定部73、判定部74、及び交付中止部75を作動させる。具体的には、例えば、交付作動が中止して、操作者が、上カバー111を開け、収容部2から間違っている投票用紙を除去し、上カバー111を閉じると、操作キー92又は93がオンされなくても、カラーセンサー81、読取色情報設定部73、判定部74、及び交付中止部75が作動する。そして、判定部74の判定結果が「不一致」である場合には、例えば用紙交付機構3の作動を中止することによって、交付作動を中止するとともに、コントローラ部9の表示パネル94に「用紙が間違っています」と表示したりスピーカー62から「用紙が間違っています」と報知したりすることによって警告を発する。これによれば、交付作動が中止した後の作業性を向上できる。
【0059】
なお、上カバー111の開閉は、例えば、次のような作業検知センサー65又は67によって検知される。
【0060】
作業検知センサー65は、図9及び図10に示されるように、上カバー111の前縁部112付近に設けられている。作業検知センサー65は、スイッチ本体651とアクチュエータ652と操作体653とからなるマイクロスイッチで構成されている。操作体653は、上カバー111の前縁部112の回動軸と共に回動するように、前縁部112に固定されている。作業検知センサー65は、上カバー111が閉じている時は、図9に示されるように、操作体653がアクチュエータ652を押した状態、すなわち、オン状態であり、上カバー111が開いている時は、図10に示されるように、操作体653がアクチュエータ652から離れた状態、すなわち、オフ状態である。これにより、作業検知センサー65は、上カバー111の開閉をオン・オフで検知するようになっている。
【0061】
作業検知センサー67は、図11及び図12に示されるように、上カバー111の前縁部112付近に設けられている。作業検知センサー67は、遮光部671とフォトインタラプタ672とで構成されている。遮光部671は、上カバー111の前縁部112の回動軸と共に回動するように、前縁部112に固定されている。作業検知センサー67は、上カバー111が閉じている時は、図11に示されるように、遮光部671がフォトインタラプタ672を遮光した状態、すなわち、オン状態であり、上カバー111が開いている時は、図12に示されるように、遮光部671がフォトインタラプタ672を遮光していない状態、すなわち、オフ状態である。これにより、作業検知センサー67は、上カバー111の開閉をオン・オフで検知するようになっている。
【0062】
(v)収容部2が、投票用紙を縦積み形式で収容するようになっている場合において、カラーセンサー81が、収容されている投票用紙を後方から検知できるように、配置されている。具体的には、カラーセンサー81は、図13図15に示されるように、押さえ部材25の裏面側(後側)に設けられる。図13は、交付装置10の前方斜視図である。図14は、交付装置10の後方斜視図である。図15は、図13のXV-XV断面図である。押さえ部材25は、透明であるので、カラーセンサー81は、押さえ部材25の前側に配置した投票用紙の色情報を検知できる。これによっても、上記構成の交付装置10と同様の作動及び効果を奏する。なお、押さえ部材25にカラーセンサー81用の小窓を設け、押さえ部材25の前側の投票用紙の色情報をカラーセンサー81が小窓を通して検知できるようにしてもよい。
【0063】
(vi)収容部2が、投票用紙を平積み形式で収容するようになっている。この場合において、カラーセンサー81は、収容されている投票用紙を上方又は下方から検知できるように、配置されている。図16は、カラーセンサー81が上方に配置された場合を示しており、図17は、カラーセンサー81が下方に配置された場合を示している。図16では、平積みされた投票用紙Pを上方から押さえる上押さえ部材27が設けられており、上押さえ部材27の上面にカラーセンサー81が下向きに取り付けられている。上押さえ部材27は透明であるので、カラーセンサー81は、上押さえ部材27の下方の投票用紙Pの色情報を上方から検知できる。なお、上押さえ部材27にカラーセンサー81用の小窓を設け、上押さえ部材27の下方の投票用紙の色情報をカラーセンサー81が小窓を通して検知できるようにしてもよい。図17では、底壁22の裏面の前端部付近に、カラーセンサー81が上向きに設けられている。カラーセンサー81は、平積みされた投票用紙Pに下方から面する透明窓812を通して、上方の投票用紙Pの色情報を下方から検知できる。これらによっても、上記構成の交付装置10と同様の作動及び効果を奏する。
【0064】
(vii)カラーセンサー81が、収容部2内の投票用紙ではなく、搬送路31を通る投票用紙の色情報を、読み取るように、設置されている。この場合において、カラーセンサー81は、搬送路31を通る投票用紙を上方又は下方から検知できるように、配置されている。図18は、カラーセンサー81が搬送路31の上方に配置された場合を示しており、図19は、カラーセンサー81が搬送路31の下方に配置された場合を示している。図20は、図19の要部斜視図であり、搬送路31の一部である搬送部材310の下方に、カラーセンサー81が上向きに設けられた状態を示している。図20において、矢印は搬送方向を示している。なお、これらの場合において、データ設定作業は、基準紙を搬送することによって行い、初期設定作業は、正規の投票用紙を搬送することによって行う。また、これらの場合において、判定部74の判定結果が「不一致」である場合には、不一致とされた投票用紙は、用紙交付機構3によって回収部5へ回収されるようになっている。これらによっても、上記構成の交付装置10と同様の効果を奏する。また、これらの場合においては、投票用紙は、平積み形式に限らず、縦積み形式で収容されてもよい。
【0065】
なお、カラーセンサー81は、搬送路31に設置するよりは、図2図15図16、又は図17に示されるように、すなわち、収容部2の投票用紙を検知できるように、設置する方が、投票用紙の間違いを早期に判断できる点、及び、投票用紙を搬送する際のバタツキが無い点で、有利であるので、好ましい。
【0066】
(viii)装置本体1が、複数種類の基準指標物を有する指標部材を、備えており、指標部材は、複数種類の基準指標物の内の任意の基準指標物を、カラーセンサー81に読み取らせるように、設定できるようになっている。具体的には、例えば、平面断面略図である図19に示されるように、装置本体1の立壁21とカラーセンサー81との間に、回転式の指標部材37が設けられている。図22は、図21の指標部材37のXXII矢視図である。指標部材37は、円板の形態を有しており、円周方向に均等に6個の領域371~376に分割されている。領域371~375には、第1~第5基準指標物で採用されている第1~第5指標用紙がそれぞれ貼り付けられており、領域376には、貫通孔が形成されている。指標部材37は、モータ381で駆動されて中心軸382回りに回転するようになっている。中心軸382は、ギヤ383、384を介して、モータ381と連結している。初期設定作業においては、指標部材37を回転させて、交付予定の正規の投票用紙と同じ素材の指標用紙が貼り付けられている領域を、カラーセンサー81の後方に位置させる。これにより、カラーセンサー81は、当該領域の色情報を読み取ることができ、正規色情報設定部72は、当該色情報に基づいて、正規色情報を設定する。そして、交付作業においては、指標部材37を回転させて、貫通孔が形成されている領域376を、カラーセンサー81の後方に位置させる。これにより、カラーセンサー81は、領域376と透明窓811とを通して、収容部2内の投票用紙Pの色情報を読み取ることができる。
【0067】
或いは、回転式の指標部材37の代わりに、スライド式の指標部材を用いてもよい。図23はスライド式の指標部材39の斜視図である。図24は、図23のXXIV矢視図である。指標部材39は、長方形の板体であり、横方向(矢印Y)に均等に5個の領域391~395に分割されている。領域391~394には、第1~第4基準指標物で採用されている第1~第4指標用紙がそれぞれ貼り付けられており、領域395には、貫通孔が形成されている。指標部材39は、装置本体1の立壁21とカラーセンサー81との間に、手動で横方向にスライド可能に、設けられている。初期設定作業においては、指標部材39をスライドさせて、交付予定の正規の投票用紙と同じ素材の指標用紙が貼り付けられている領域を、カラーセンサー81の後方に位置させる。これにより、カラーセンサー81は、当該領域の色情報を読み取ることができ、正規色情報設定部72は、当該色情報に基づいて、正規色情報を設定する。そして、交付作業においては、指標部材39をスライドさせて、貫通孔が形成されている領域395を、カラーセンサー81の後方に位置させる。これにより、カラーセンサー81は、領域395と透明窓811とを通して、収容部2内の投票用紙の色情報を読み取ることができる。
【0068】
これらによれば、基準指標物の交換作業を不要にできるので、作業性を向上できる。
【0069】
(ix)読取色情報設定部を非作動状態に設定できる、読取非作動設定手段を、更に備えている。読取非作動設定手段は、具体的には、図25に示されるようなコントローラ部9の背面のスイッチ群によって構成されている。すなわち、読取非作動設定手段は、電源スイッチ101をオフからオンにした状態で、スイッチ905を長押してサービスマンモードに入り、更にスイッチ901、902を押すことによって、「読取の作動/非作動」モードに入って非作動を選択することによって、実行される。これによれば、投票用紙が色情報を有していない選挙にも、交付装置10を有効に使用できる。
【0070】
(x)データテーブル771に記憶されている正規色情報を、任意の別の正規色情報に変更できる、正規色情報変更手段を、更に備えている。正規色情報変更手段は、具体的には、図25に示されるようなコントローラ部9の背面のスイッチ群によって構成されている。すなわち、正規色情報変更手段は、電源スイッチ101をオフからオンにした状態で、スイッチ905を長押してサービスマンモードに入り、更にスイッチ901、902を押すことによって、「正規色情報再登録」モードに入って設定することによって、実行される。これによれば、データ設定作業が終了している交付装置10を、急遽、予定していない選挙に使用する場合に、容易に対応できる。
【0071】
[他の構成]
上記構成の交付装置10では、次のような場合に対応することができない恐れがある。
(1)投票用紙の色情報が選挙種別毎に特定されていない場合。
(2)投票用紙に記載されている文字の色だけが異なっている場合。
【0072】
このような場合には、上記構成の交付装置10において、カラーセンサー81に代えて、画像読取装置及び光学式文字認識部を使用すればよい。具体的には、例えば、図26に示されるように、搬送路31の下側に、画像読取装置としてのイメージセンサー84が設けられ、制御部7に光学式文字認識部としてのOCRが設けられる。図27は、本構成の交付装置10Aの制御部7のブロック図である。
【0073】
次に、本構成の交付装置10Aの構成を、上記構成の交付装置10に比して説明する。
【0074】
(全体構成)
上記構成の交付装置10と同じである。
【0075】
(装置本体)
上記構成の交付装置10と同じである。
【0076】
(コントローラ部)
上記構成の交付装置10と同じである。
【0077】
(収容部)
上記構成の交付装置10と同じである。なお、投票用紙Pは、平積み形式で収容されてているが、縦積み形式で収容されてもよい。
【0078】
(用紙交付機構)
上記構成の交付装置10と同じである。
【0079】
(回収機構)
上記構成の交付装置10と同じである。
【0080】
(回収部)
上記構成の交付装置10と同じである。
【0081】
(イメージセンサー)
搬送路31の下側に、画像読取装置としてのイメージセンサー84が、設置されている。イメージセンサー84は、搬送路31を通る投票用紙に印刷されている画像を読み取ることができる。
【0082】
(照明具)
上記構成の交付装置10と同じである。
【0083】
(押さえ部材)
上記構成の交付装置10と同じである。なお、指標保持部251を有してはいない。
【0084】
(制御部)
制御部7は、データ設定部71A、OCR76、判定部74A、及び交付中止部75等を、有している。OCR76は、イメージセンサー84によって読み取られた画像データから文字の種類及び/又は文字の色を認識できる。
【0085】
(記憶部)
制御部7には、記憶部77が接続されている。
【0086】
[作動]
次に、本構成の交付装置10Aの作動について、説明する。
【0087】
(1)データ設定作業
データ設定作業は、データ設定部71Aによって、記憶部77に、正規の投票用紙の選挙種別を記憶させる。例えば、図28に示される投票用紙P1の場合には、「衆議院議員小選挙区」を記憶させる。データ設定部71Aは、コントローラ部9の背面のスイッチ群を操作することによって選挙名モードから選択された選挙名を、記憶部77に記憶させる。
【0088】
(2)交付作業
(2-1)上記構成の交付装置10と同様である。但し、操作キー92又は93が1回オンされると、イメージセンサー84、OCR76、判定部74A、及び交付中止部75が作動する。イメージセンサー84は、搬送路31を通る投票用紙Pの画像を読み取る。OCR76は、イメージセンサー84によって読み取られた投票用紙Pの画像データから文字の種類及び/又は文字の色を認識して、選挙名を判別する。或いは、OCR76は、投票用紙に印刷されている選挙名の印影の画像データから、文字の種類及び/又は文字の色を認識して、選挙名を判別でき、又は、投票用紙に網点で印刷されている選挙名の印影の画像データから、文字のみを切り出して認識して、選挙名を判別できる。判定部74Aは、OCR76によって判別された選挙名と、記憶部77に記憶されている選挙名と、を比較して、両者が一致するか否かを判定する。交付中止部75は、判定部74による判定結果が「不一致」である場合に、例えば用紙交付機構3の作動を中止することによって、交付作動を中止するとともに、コントローラ部9の表示パネル94に「用紙が間違っています」と表示したりスピーカー62から「用紙が間違っています」と報知したりすることによって警告を発する。
【0089】
(2-2)交付作動が中止した場合、操作者は、上カバー111を開け、収容部2内の間違っている投票用紙Pを除去する。そして、上カバー111を閉じて、改めて、交付作業を開始する。なお、判定部74の判定結果が「一致」である場合には、収容部2の最前端の投票用紙Pが、収容部2から取り出され、搬送路31を通して搬送されて、用紙取出口32から突出する。用紙取出口32から突出した投票用紙Pは、投票者によって抜き出され、すなわち、交付される。
【0090】
なお、データ設定作業は、用紙交付機構3を作動させて、交付予定の正規の投票用紙を搬送し、その際に、イメージセンサー84によって投票用紙の画像を読み取り、OCR76によって選挙名を判別し、それを記憶部77に記憶させるようにしてもよい。
【0091】
[効果]
上記構成の交付装置10Aによれば、次のような効果を発揮できる。
【0092】
(a)収容部2に収容された投票用紙の文字情報から判別した選挙名を、交付予定の正規の投票用紙の選挙名と比較し、両者が一致しない場合には、交付作動を中止するので、間違った投票用紙が交付されるのを自動で防止できる。
【0093】
(b)収容部2に収容された投票用紙の文字情報すなわち文字の種類及び/又は文字の色から選挙名を判別するので、(1)投票用紙の色情報が選挙種別毎に特定されていない場合であっても、又は、(2)投票用紙に記載されている文字の色だけが異なっている場合であっても、判定部74が正当な判定を実行できる。
【0094】
(c)交付中止部75は、判定部74Aによる判定結果が「不一致」である場合に、用紙交付機構3の作動を中止するので、確実に交付作動を中止できる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の投票用紙交付装置は、間違った投票用紙が交付されるのを自動で且つ確実に防止できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0096】
1 装置本体
111 上カバー(開閉蓋)
2 収容部
25 押さえ部材
251 指標保持部
3 用紙交付機構
30 基準指標物
31 搬送路
37、38 指標部材
304 識別コード
72 正規色情報設定部
73 読取色情報設定部
74 判定部
75 交付中止部
771 データテーブル
10 投票用紙交付装置
81 カラーセンサー
83 識別コード読取センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28