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特許7145686ロボット設置位置の解析装置、ロボット設置位置の解析方法、およびロボット設置位置の解析プログラム
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  • 特許-ロボット設置位置の解析装置、ロボット設置位置の解析方法、およびロボット設置位置の解析プログラム 図1
  • 特許-ロボット設置位置の解析装置、ロボット設置位置の解析方法、およびロボット設置位置の解析プログラム 図2
  • 特許-ロボット設置位置の解析装置、ロボット設置位置の解析方法、およびロボット設置位置の解析プログラム 図3
  • 特許-ロボット設置位置の解析装置、ロボット設置位置の解析方法、およびロボット設置位置の解析プログラム 図4
  • 特許-ロボット設置位置の解析装置、ロボット設置位置の解析方法、およびロボット設置位置の解析プログラム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ロボット設置位置の解析装置、ロボット設置位置の解析方法、およびロボット設置位置の解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018147645
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020023004
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】藤城 淳
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-267189(JP,A)
【文献】特開2013-132707(JP,A)
【文献】特開平02-024090(JP,A)
【文献】特開昭60-022212(JP,A)
【文献】特開平02-071987(JP,A)
【文献】特開平04-002481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節部を備えたアーム部を用いてワークに対し作業を行うロボットの設置位置を解析するロボット設置位置の解析装置であって、
前記ロボットの設置位置として、前記アーム部の作業部が前記ワークに対して到達可能な範囲のうち、前記作業部と前記ワークとの間に許容される距離を指定すること、および、前記関節部における回動角度の範囲を指定することの条件に適合する範囲を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記ロボットの設置位置および前記アーム部の前記作業部が到達可能な範囲を、格子状の面に互いに区別可能に両方を重畳的に表示装置に表示する表示出力部と、を備えるロボット設置位置の解析装置。
【請求項2】
前記関節部を複数備えた前記ロボットの設置位置を解析することを特徴とする前記請求項1に記載のロボット設置位置の解析装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記ロボットの設置位置として、該ロボットの台座部の中心位置を算出することを特徴とする請求項1または2に記載のロボット設置位置の解析装置。
【請求項4】
関節部を備えたアーム部を用いてワークに対し作業を行うロボットの設置位置を解析するロボット設置位置の解析方法であって、
コンピュータが、
前記ロボットの設置位置として、前記アーム部の作業部が前記ワークに対して到達可能な範囲のうち、前記作業部と前記ワークとの間に許容される距離を指定すること、および、前記関節部における回動角度の範囲を指定することの条件に適合する範囲を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した前記ロボットの設置位置および前記アーム部の前記作業部が到達可能な範囲を、格子状の面に互いに区別可能に両方を重畳的に表示装置に表示する表示ステップと、を実行するロボット設置位置の解析方法。
【請求項5】
関節部を備えたアーム部を用いてワークに対し作業を行うロボットの設置位置を解析するロボット設置位置の解析プログラムであって、
コンピュータに、
前記ロボットの設置位置として、前記アーム部の作業部が前記ワークに対して到達可能な範囲のうち、前記作業部と前記ワークとの間に許容される距離を指定すること、および、前記関節部における回動角度の範囲を指定することの条件に適合する範囲を算出する算出機能と、
前記算出機能が算出した前記ロボットの設置位置および前記アーム部の前記作業部が到達可能な範囲を、格子状の面に互いに区別可能に両方を重畳的に表示装置に表示する表示機能と、を実現させるロボット設置位置の解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット設置位置の解析装置、ロボット設置位置の解析方法、およびロボット設置位置の解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等の生産ラインで使用されるロボットの設置位置として、最適な位置を解析する方法が知られている。
このようなロボット設置位置の解析方法として、下記特許文献1には、ワークに対して溶接作業を行うロボットのアームが、ワークに対して到達可能な範囲に基づいて、ロボットの設置位置を決定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-161917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のロボット設置位置の解析方法では、最適な設置位置を解析することについて改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、様々な使用態様に対して、最適な設置位置を解析することができるロボット設置位置の解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のロボット設置位置の解析装置は、関節部を備えたアーム部を用いてワークに対し作業を行うロボットの設置位置を解析するロボット設置位置の解析装置であって、ロボットの設置位置として、アーム部の作業部がワークに対して到達可能な範囲のうち、所定の条件に適合する範囲を算出する算出部と、算出部が算出した設置位置を、表示装置に表示する表示出力部と、を備える。
【0007】
また、本発明のロボット設置位置の解析装置は、関節部を複数備えたロボットの設置位置を解析してもよい。
【0008】
また、所定の条件として、作業部とワークとの間に許容される距離を指定してもよい。
【0009】
また、所定の条件として、関節部における回動角度の範囲を指定してもよい。
【0010】
また、表示出力部は、ロボットの設置位置を重畳的に表示してもよい。
【0011】
算出部は、ロボットの設置位置として、ロボットの台座部の中心位置を算出してもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のロボット設置位置の解析方法は、関節部を備えたアーム部を用いてワークに対し作業を行うロボットの設置位置を解析するロボット設置位置の解析方法であって、コンピュータが、前記ロボットの設置位置として、前記アーム部の作業部が前記ワークに対して到達可能な範囲のうち、所定の条件に適合する範囲を算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出した設置位置を、表示装置に表示する表示ステップと、を実行する。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のロボット設置位置の解析プログラムは、関節部を備えたアーム部を用いてワークに対し作業を行うロボットの設置位置を解析するロボット設置位置の解析プログラムであって、コンピュータに、前記ロボットの設置位置として、前記アーム部の作業部が前記ワークに対して到達可能な範囲のうち、所定の条件に適合する範囲を算出する算出機能と、前記算出機能が算出した設置位置を、表示装置に表示する表示機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロボット設置位置の解析装置が算出部を備えている。このため、ロボットの設置位置として、アーム部の作業部がワークに対して到達可能な範囲のうち、所定の条件に適合する範囲を算出することができる。これにより、ロボットの設置位置を、アーム部の作業部がワークに対して到達可能かどうかだけではなく、その他の条件に適合する範囲とすることで、様々な使用態様に対して、最適な設置位置を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ロボット、およびロボット設置位置の解析装置の概略図である。
図2図1に示す解析装置のブロック図である。
図3図1に示す解析装置を使用する際のフロー図である。
図4】本発明に係る解析方法による解析結果の一部を表示した状態を示す図である。
図5】本発明に係る解析方法による解析結果の全てを表示した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施態様に係るロボット設置位置の解析装置100(以下、単に解析装置100という)について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、図1および図2を用いて、解析装置100の構成について説明する。
【0017】
図1における本実施形態に係る解析装置100は、ロボット200の設置位置を解析する装置である。ロボット200は、関節部215を備えたアーム部210を用いて、ワークWに対し各種の作業を行う作業用ロボットである。ここでいう各種の作業とは、例えばワークWの搬送作業や、ワークWへの溶接作業等が挙げられる。
【0018】
ロボット200は、複数のアーム部210と、これらを支持する台座部220と、を備えている。
複数のアーム部210は、関節部215を介して、台座部220から互いに連なるように連結されている。
【0019】
複数のアーム部210同士が関節部215を介して連結されているので、複数のアーム部210同士は、関節部215回りに互いに交差する方向に回動することができるとともに、互いの中心軸線回りに回転することができる。
また、関節部215には図示しない駆動装置(モータ)が配置されている。この駆動装置を駆動させることで、複数のアーム部210は、その位置および姿勢を変化させることができる。
【0020】
複数のアーム部210のうち、台座部220と連結された部分は、台座部220に対してアーム部210の中心軸線回りに回転可能に連結されている。
複数のアーム部210のうち、台座部220から最も離れた部分の先端部には、ワークWに対して作業を行う作業部211が設けられている。図示の例では、作業部211はワークWを搬送するために把持するロボットハンドである。
【0021】
図2に示すように、解析装置100はコンピュータであり、算出部111、制御部112、および表示出力部113を備えている。
算出部111は、ロボット200の設置位置として、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能な範囲のうち、所定の条件に適合する範囲を算出する算出機能を有する。以下にこの点について詳述する。
【0022】
アーム部210の作業部211は、関節部215に配置された駆動装置を駆動させることで、所定の三次元空間内である移動可能領域内を移動可能となっている。移動可能領域は、例えば三次元空間として特定することもできるし、上面視における台座部220の中心位置を原点として、二次元空間として特定することもできる。
【0023】
そして、ワークWの位置と、作業部211の移動可能領域と、に基づいて、ロボット200の設置位置として許容される範囲が決定される。この許容される範囲が、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能な範囲となる。
また、算出部111は、ロボット200の設置位置として、ロボット200の台座部220の上面視における中心位置を算出することができる。
【0024】
また、所定の条件としては、例えば、駆動装置が駆動前の状態である初期位置における作業部211とワークWとの間に許容される距離を指定することができる。
また、所定の条件として、関節部215における回動角度の範囲を指定してもよい。ここで、関節部215における回動角度とは、各アーム部210同士がなす角度の範囲のことを指す。
【0025】
表示出力部113は、算出部111が算出した設置位置を、表示装置102(図1参照)に表示する表示機能を有する。表示装置102は、例えばディスプレイ等である。
表示出力部113は、ロボット200の設置位置を重畳的に表示することができる。すなわち、表示出力部113は、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能な範囲と、所定の条件に適合する範囲と、が重なるように表示することができる。
【0026】
制御部112は、解析装置100の各部を制御するものであり、例えば、中央処理装置(CPU)やマイクロプロセッサ、ASIC、FPGAなどであってもよい。なお、制御部112は、これらの例に限られず、解析装置100の各部を制御するものであれば、どのようなものであってもよい。
【0027】
解析装置100はまた、受付部114と記憶部115とを備えている。
受付部114は、算出部111がロボット200の設置位置を算出するために用いられるか各種の情報を受付ける。各種の情報としては、ワークWの位置、作業部211の移動可能領域、および所定の条件等が挙げられる。これらの各種の情報は、入力部101から受付部114に入力される。
【0028】
入力部101は、例えばキーボード等である。なお、入力部101は、例えばUSB端末が接続されるUSBポートや、優先通信又は無線通信により、外部から情報を取得する通信機器等であってもよい。
【0029】
記憶部115は、解析装置100が動作する上で必要とする各種のプログラムやデータを記憶する。
記憶部115は、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリなど各種の記憶媒体により実現される。本実施形態では、解析装置100は、解析プログラムを記憶部115に記憶し、当該プログラムを実行することで、後述する算出機能や表示機能といった各機能を実現する。
【0030】
次に、図3を用いて、この解析装置100を用いたロボット設置位置の解析方法について説明する。
まず、入力部101にワークWの位置、および作業部211の移動可能領域を入力する(S501)。なお、これらの情報は、記憶部115に予め記憶させてもよい。
【0031】
次に、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能な範囲を、算出部111が算出する(S502)。算出部111は、受付部114が受付けたワークWの位置、および作業部211の移動可能領域の情報を用いて、当該到達可能な範囲を算出する。
【0032】
次に、入力部101に所定の条件を入力する(S503)。そして、算出部111がロボット200の設置位置として、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能な範囲のうち、所定の条件に適合する範囲を算出する(S504:算出ステップ)。
そして、表示出力部113が、設置位置を表示装置102に表示する(S505:表示ステップ)。
【0033】
次に、図4および図5を用いて、ロボット設置位置の解析結果について説明する。
この図では、ロボット200の台座部220の中心位置として想定される範囲が、上面視において格子状に表現されており、その中で、ワークWに対して、アーム部210の作業部211が到達可能な範囲が白丸で表現されている。なお、二重丸の部分が、想定される範囲の中央部分となっている。
【0034】
そして、図5に示すように、所定の条件に適合する範囲が、黒丸として表現される。この説明では、所定の条件として、関節部215における回動角度の指標である余裕度が5度以内であることを指定している。
すなわち、黒丸で表現された部分に台座部220の中心が位置するようにロボット200を配置した場合には、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能になるとともに、所定の条件に適合することとなる。
また、ワークWに対して、アーム部210の作業部211が到達可能な範囲が白丸で表現され、所定の条件に適合する範囲が、黒丸として重畳的に表現されている。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る解析装置100によれば、ロボット設置位置の解析装置100が算出部111を備えている。このため、ロボット200の設置位置として、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能な範囲のうち、所定の条件に適合する範囲を算出することができる。
これにより、ロボット200の設置位置を、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能かどうかだけではなく、その他の条件に適合する範囲とすることで、様々な使用態様に対して、最適な設置位置を解析することができる。
【0036】
すなわち、従来の解析方法では、アーム部210の作業部211がワークWに対して到達可能かどうかを基にロボット200の設置位置を解析するのが一般的であった。
一方、本発明では、さらに他の条件となる所定の条件を追加する。このため、例えばロボット200を設置する空間が限られていることで、作業部211とワークWとの間に許容される距離に制約がある場合や、ワークWとロボット200との間に障害物があり、関節部215における回動角度に制約がある場合等であっても、最適なロボット200の設置位置を解析することができる。
【0037】
また、表示出力部113が解析結果を表示装置102に表示するので、解析結果を可視化することで、ユーザが解析結果を容易に把握することができる。これにより、解析装置100の利便性を向上することができる。
【0038】
また、所定の条件として、アーム部210の作業部211とワークWとの間に許容される距離を指定する場合には、ロボット200のアーム部210を、確実にワークWに届かせることができる。
また、所定の条件として、関節部215における回動角度の範囲を指定する場合には、アーム部210の可動域に基づいて、適切な設置位置を算出することができる。
【0039】
また、表示出力部113が、ロボット200の設置位置を重畳的に表示するので、各条件に適合する範囲を個別に確認することができる。
【0040】
本実施の形態に係る解析装置100を実現するための手法は、上記実施の形態に示した態様に限定されるものではない。以下、各種の変形例について説明する。
【0041】
上記実施形態においては、アーム部210が関節部215を複数備えている構成を示したが、このような態様に限られない。アーム部210は関節部215を単数備えてもよい。
また、上記実施形態においては、上面視を用いて二次元的にロボット200の設置位置を解析する構成を示したが、このような態様に限られない。ロボット200の設置位置は、3次元的又は一次元的に解析してもよいし、前述した上面視での解析結果に限られず、側面視で解析してもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、解析装置100が解析プログラムを実行することにより実現することとしているが、このような態様に限られない。
例えば、解析装置100は、集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現してもよい。
【0043】
また、これらの回路は、1または複数の集積回路により実現されてよく、上記実施の形態に示した複数の機能部の機能を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。LSIは、集積度の違いにより、VLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIなどと呼称されることもある。
【0044】
また、解析プログラムは、プロセッサが読み取り可能な記録媒体に記録されていてよく、記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。
また、上記解析プログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記プロセッサに供給されてもよい。本発明は、解析プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0045】
また、上記実施の形態及び各補足に示した構成は、適宜組み合わせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
100 ロボット設置位置の解析装置
101 入力部
102 表示装置
111 算出部
112 表示出力部
113 受付部
114 記憶部
200 ロボット
210 アーム部
211 作業部
215 関節部
220 台座部

図1
図2
図3
図4
図5