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特許7145691エレベーター、情報機器、エレベーターシステム、エレベーターの復旧方法、及び画像表示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】エレベーター、情報機器、エレベーターシステム、エレベーターの復旧方法、及び画像表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20220926BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B66B5/02 P
B66B5/00 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018154615
(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公開番号】P2020029321
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 和雄
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-001494(JP,A)
【文献】特開2004-018181(JP,A)
【文献】実公平07-018698(JP,Y2)
【文献】特開昭59-039674(JP,A)
【文献】特開平10-059636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報機器と、
前記情報機器に登録されている複数のエレベーターと、を備え、
前記情報機器は、前記登録されている複数のエレベーターのうちで選択可能な複数のエレベーターのうちから1つのエレベーターを選択でき、
前記各エレベーターは、
昇降路内を昇降するカゴと、
前記カゴの上側に設置され、前記カゴよりも上側の領域を撮影可能である上側カメラと、
前記カゴの下側に設置され、前記カゴよりも下側の領域を撮影可能である下側カメラと、
前記上側カメラが撮影した上側画像に基づく上側画像情報を含む上側画像信号、及び前記下側カメラが撮影した下側画像に基づく下側画像情報を含む下側画像信号を外部に発信可能な発信部と、
前記上側カメラに撮影を実行させることを表す上側撮影実行信号、前記下側カメラに撮影を実行させることを表す下側撮影実行信号、前記上側カメラの撮影を終了させることを表す上側撮影終了信号、及び前記下側カメラの撮影を終了させることを表す下側撮影終了信号を受信可能な受信部と、
前記上側撮影実行信号に基づいて前記上側カメラに撮影を実行させ、前記下側撮影実行信号に基づいて前記下側カメラに撮影を実行させ、前記上側撮影終了信号に基づいて前記上側カメラの撮影を終了させ、前記下側撮影終了信号に基づいて前記下側カメラの撮影を終了させる制御部と、
有し、
前記登録されている複数のエレベーターのうちで通常運転している1以上のエレベーターと、前記登録されている複数のエレベーターのうちでもう既に他の別情報機器と通信している1以上のエレベーターは、前記情報機器で選択不可能になっており、
前記情報機器が、選択した前記1つのエレベーターに関し、前記上側カメラに撮影を実行させることを表す上側撮影実行信号を直接又は1以上の中継機器を介して前記受信部に発信させること、前記下側カメラに撮影を実行させることを表す下側撮影実行信号を直接又は前記1以上の中継機器を介して前記受信部に発信させること、前記上側カメラの撮影を中止する上側撮影中止信号を直接又は前記1以上の中継機器を介して前記受信部に発信させること、及び前記下側カメラの撮影を中止する下側撮影中止信号を直接又は前記1以上の中継機器を介して前記受信部に発信させることをできるようになっている、エレベーターシステム
【請求項2】
前記上側カメラ及び前記下側カメラの夫々が、上下左右全方位の360°動画の撮れる全天球カメラで構成され、
前記情報機器は、上側半球において極座標のθ1とφ1を指定することで、前記上側画像において表示したい方角の部分画像を指定でき、
前記θ1は、前記上側半球におけるXYZ座標において、Z軸と指定方向とのなす角度であって、0≦θ1≦(2/π)を満足し、
O1を前記上側半球におけるXYZ座標の原点とし、Q1を前記上側半球における指定方角からXY平面に下した垂線の足の位置としたとき、前記φ1は、X軸の正の向きと、O1Q1のなす角度であって、0≦φ1<2πを満足し、
前記情報機器は、下側半球において極座標のθ2とφ2を指定することで、前記下側画像において表示したい方角の部分画像を指定でき、
前記θ2は、前記下側半球におけるXYZ座標において、Z軸と指定方向とのなす角度であって、-(2/π)0≦θ≦0を満足し、
O2を前記下側半球におけるXYZ座標の原点とし、Q2を前記下側半球における指定方角からXY平面に下した垂線の足の位置としたとき、前記φ2は、X軸の正の向きと、O2Q2のなす角度であって、0≦φ2<2πを満足する、請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
首都圏に存在する複数の前記エレベーターと、近畿地方に存在する前記情報機器とを備え、
前記首都圏に存在する複数のエレベーターのうちで停止した前記エレベーターが生じたとき、その停止したエレベーターにおける前記上側カメラの撮影及びその撮影の停止と、前記停止したエレベーターにおける前記下側カメラの撮影及びその撮影の停止と、を、前記近畿地方に存在する情報機器からの信号で実行できる、請求項1又は2に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
第1地震計と、
前記第1地震計よりも高い地震レベルで動作する第2地震計と、
前記第1地震計よりも低い地震レベルで動作する第3地震計と、を備える1以上の前記エレベーターを含み、
前記第3地震計のみが、地震を検出した場合、その検出の後に、その検出を行った前記第3地震計を含む前記エレベーターが、自動で通常運転を行い、
前記第2地震計が、地震を検出した場合、起こった地震が保守作業員の現地への訪問が必要である規模の地震であることを表す信号を、その検出を行った第2地震計を含むエレベーターの前記発信部から外部に発信する、請求項1から3のいずれか1つに記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
前記情報機器が、前記エレベーターが発信した前記上側画像信号に基づく上画像を表示可能であると共に前記エレベーターが発信した前記下側画像信号に基づく下画像を表示可能である表示部を備え
前記情報機器が、スマートホン、又はタブレットである、請求項1から4のいずれか1つに記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
地震の発生を検知可能な地震検知部を備え、
前記制御部は、前記地震検知部からの信号に基づいて地震が発生したと認識すると、すぐに前記上側カメラと前記下側カメラに撮影を実行させるか、又は、前記カゴが最寄の階等に停止した後に、前記上側カメラと前記下側カメラに撮影を開始させる、請求項1から3のいずれか1つに記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
前記受信部が、外部から発信されると共に前記カゴを第1所定距離だけ上側に移動させることを表す上側移動信号、及び外部から発信されると共に前記カゴを第2所定距離だけ下側に移動させることを表す下側移動信号を受信可能であり、
前記情報機器が、前記第1所定距離だけ前記カゴを上側に移動させることを表す上側移動信号と、前記第2所定距離だけ前記カゴを下側に移動させることを表す下側移動信号とを、直接又は1以上の中継機器を介して前記エレベーターの前記受信部に発信可能である、請求項1から6のいずれか1つに記載のエレベーターシステム。
【請求項8】
前記受信部が、復旧してよいか否かの判定を行うための前記カゴの移動を実行することを表す復旧調査信号を受信可能であり、
前記制御部が、前記復旧調査信号に基づいて復旧してよいか否かの判定を行うための前記カゴの移動を実行し、
前記情報機器が、前記エレベーターを復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴの移動を前記エレベーターに実行させることを表す前記復旧調査信号を直接又は1以上の中継機器を介して前記エレベーターの前記受信部に発信可能である、請求項1から7のいずれか1つに記載のエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターに関し、更には、エレベーターを復旧させるのに用いる情報機器に関する。また、本発明は、複数のエレベーターと複数の情報機器を備えるエレベーターシステムに関し、エレベーターを復旧させるエレベーターの復旧方法に関する。また、本発明は、エレベーターを復旧させる際に情報機器で用いられる画像表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターを仮復旧させる方法としては、特許文献1に記載されているものがある。この方法では、中規模地震(震度4程度の地震)が発生した後に、制御盤が、カゴを自動的に微速異常検出運転させる。そして、カゴの走行中の異常音や制御ケーブルの引張力等を検出し、制御盤が、検出した音や物理量が正常な範囲内にあると判断すると、エレベーターを通常運転に自動的に仮復帰させる。例えば、首都圏や近畿圏等の大都会で、中規模地震が発生すると、数百から数千台ものエレベーターが、カゴを最寄り階等に停止させた状態で運行不可能になることがある。この方法は、そのような場合において、問題が生じていないエレベーターを自動的に仮復旧させることができ、そのようなエレベーターが長時間停止状態となる事態を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-84405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法は、中規模地震が発生した際に、問題が生じていないエレベーターを速やかに自動的に仮復旧させることができるので、ユーザの生活に混乱や支障を生じることを抑制できて非常に優れる。
【0005】
しかし、上記方法は、カゴや釣合錘のレールからの離脱、昇降路の歪み、及びワイヤーロープの絡まり等が、そのような中規模地震でエレベーターに生じないことを前提とし、それらの事象が生じることがない1998年に改訂された厳しい耐震基準(以下、98耐震基準という)を満たすエレベーターでの使用に限定される。
【0006】
しかしながら、現存するエレベーターの8割程度は、98耐震基準を満たさず、上記方法を適用できず、中規模地震が発生すると、速やかに復旧させることができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、98耐震基準を満たさなくても、中規模の地震が発生したときに速やかに復旧させることができるエレベーター、そのような復旧に用いることができる情報機器、そのようなエレベーターを含むエレベーターシステム、そのような復旧を実現できるエレベーターの復旧方法、及びそのような復旧に用いることができる画像表示プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示のエレベーターは、昇降路内を昇降するカゴと、前記カゴの上側に設置され、前記カゴよりも上側の領域を撮影可能である上側カメラと、前記カゴの下側に設置され、前記カゴよりも下側の領域を撮影可能である下側カメラと、前記上側カメラが撮影した上側画像に基づく上側画像情報を含む上側画像信号、及び前記下側カメラが撮影した下側画像に基づく下側画像情報を含む下側画像信号を外部に発信可能な発信部と、を備える。
【0009】
なお、上記上側カメラは、カゴよりも上側の領域の全てを撮影可能であってもよいが、カゴよりも上側の領域の全てを撮影可能でなくてもよく、カゴよりも上側の領域に含まれる所定の領域を撮影可能であればよい。また、上記上側カメラは、カゴの上端部よりも下側に位置する一部領域(当該上端部を含んでもよい)を撮影可能であってもよい。また、上記下側カメラは、カゴよりも下側の領域の全てを撮影可能であってもよいが、カゴよりも下側の領域の全てを撮影可能でなくてもよく、カゴよりも下側の領域に含まれる所定の領域を撮影可能であればよい。また、上記下側カメラは、カゴの下端部よりも上側に位置する一部領域(当該下端部を含んでもよい)を撮影可能であってもよい。
【0010】
本発明によれば、上側カメラが撮影した上側画像に基づく上側画像情報を含む上側画像信号、及び下側カメラが撮影した下側画像に基づく下側画像情報を含む下側画像信号を外部に発信できる。よって、それら上側及び下側画像信号を、情報機器(端末(ワークステーション、デスクトップ型パーソナルコンピュータ)、スマートホン、タブレット、ノートパソコン等)で受けた人(例えば、保守作業員等)が、情報機器の表示部で上側画像及び下側画像を確認でき、カゴや釣合錘のレールからの離脱、昇降路の歪み、及びワイヤーロープの絡まりが生じているか否かを現場に到達する前に判定でき、現場の状況を認識できる。したがって、現場に到達した保守作業員等が、速やかにエレベーターを復旧させることができ、そのエレベーターを使用する人の生活に支障がでることを抑制できる。
【0011】
また、本発明において、外部から発信されると共に前記カゴを所定距離だけ上側に移動させることを表す上側移動信号、及び外部から発信されると共に前記カゴを所定距離だけ下側に移動させることを表す下側移動信号を受信可能な受信部と、前記上側移動信号に基づいて前記カゴを前記所定距離だけ上側に移動させ、前記下側移動信号に基づいて前記カゴを前記所定距離だけ下側に移動させる制御部と、を備えてもよい。
【0012】
本構成によれば、エレベーターが、外部の情報機器から有線及び無線の少なくとも一方を介して上側移動信号と下側移動信号を受信でき、その信号に基づいてカゴを所定距離だけ上側又は下側に移動させることができる。したがって、保守作業員等が、昇降路内をより詳細に調査したい場合に、外部から上側又は下側移動信号を送信することで、カゴが昇降路内を自在に移動でき、各カゴ位置での上側画像及び下側画像を確認できる。よって、保守作業員等が現場に到達する前に現場の状況を詳細に把握することができる。
【0013】
また、本発明において、復旧してよいか否かの判定を行うための前記カゴの移動を実行することを表す復旧調査信号を受信可能な受信部と、前記復旧調査信号に基づいて復旧してよいか否かの判定を行うための前記カゴの移動を実行する制御部と、を備えてもよい。
【0014】
本構成によれば、保守作業員等が、情報機器の表示部を用いて昇降路内の状況を確認して、カゴや釣合錘のレールからの離脱、昇降路の歪み、及びワイヤーロープの絡まり等が生じていないと判断した場合に、エレベーターの受信部に復旧調査信号を送信できる。したがって、エレベーターを復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴの移動を自動的に実行でき、そのカゴの移動でエレベーターに問題が生じていないことが判定されると、従来技術の方法のようにエレベーターの復旧検査運転を実行でき、その復旧検査運転で問題がないと判定されると、エレベーターを自動的に復旧させることが可能になる。よって、98耐震基準を満たさないエレベーターでも、保守作業員が現場を訪問しなくてもエレベーターを暫定的に復旧できるので、数百から数千台ものエレベーターが休止するような地震が生じても、かなりの数のエレベーターを暫定的に自動復旧することが可能になる。その結果、人々の生活に混乱を生じること大きく抑制することが可能になり、保守作業員等の労力も格段に低減することが可能になる。
【0015】
また、本発明において、前記上側カメラに撮影を実行させることを表す上側撮影実行信号、前記下側カメラに撮影を実行させることを表す下側撮影実行信号、前記上側カメラの撮影を終了させることを表す上側撮影終了信号、及び前記下側カメラの撮影を終了させることを表す下側撮影終了信号を受信可能な受信部と、前記上側撮影実行信号に基づいて前記上側カメラに撮影を実行させ、前記下側撮影実行信号に基づいて前記下側カメラに撮影を実行させ、前記上側撮影終了信号に基づいて前記上側カメラの撮影を終了させ、前記下側撮影終了信号に基づいて前記下側カメラの撮影を終了させる制御部と、を備えてもよい。
【0016】
上記構成によれば、保守作業員等が必要なときに上側カメラと下側カメラでの撮影を開始させることができ、所望なときに上側カメラと下側カメラの撮影を終了させることができる。したがって、上側カメラと下側カメラの運転コストを小さくできる。
【0017】
また、本発明において、地震の発生を検知可能な地震検知部と、前記地震検知部からの信号に基づいて地震が発生したと認識すると、前記上側カメラと前記下側カメラに撮影を実行させる制御部と、を備えてもよい。
【0018】
なお、本構成において、制御部は、地震検知部から信号を受けた後の如何なるタイミングで上側カメラと下側カメラに撮影を実行させてもよい。
【0019】
上記構成によれば、地震が発生すると、上側カメラと下側カメラに自動的に撮影を開始させることができる。よって、地震が検知されると、上記上側及び下側撮影実行信号を発信しなくても、上側カメラと下側カメラに撮影を実行させることができ、情報機器が上側及び下側画像情報を獲得できる。
【0020】
また、本発明の情報機器は、本発明のエレベーターが発信した前記上側画像信号に基づく上画像を表示可能であると共に、前記エレベーターが発信した前記下側画像信号に基づく下画像を表示可能である表示部を備える。
【0021】
本発明によれば、保守作業員等が、エレベーターの昇降路内の状況を現場に行くことなく上画像及び下画像で確認できる。よって、現場に到着した後、エレベーターを速やかに復旧させることができる。
【0022】
また、本発明において、所定距離だけカゴを上側に移動させることを表す上側移動信号と、所定距離だけ前記カゴを下側に移動させることを表す下側移動信号とを、直接又は1以上の中継機器を介して前記エレベーターの受信部に発信可能な操作部を備えてもよい。
【0023】
上記構成によれば、保守作業員等が、昇降路内をより詳細に調査したい場合に、外部から上側又は下側移動信号を送信することで、カゴが昇降路内を自在に移動でき、各カゴ位置での上側画像及び下側画像を確認できる。よって、保守作業員等が現場に到達する前に現場の状況を詳細に把握できる。
【0024】
また、本発明において、前記エレベーターを復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴの移動を前記エレベーターに実行させることを表す復旧調査信号を直接又は1以上の中継機器を介して前記エレベーターの受信部に発信可能な操作部を備えてもよい。
【0025】
上記構成によれば、保守作業員等が、情報機器の表示部を用いて昇降路内の状況を確認して、カゴや釣合錘のレールからの離脱、昇降路の歪み、及びワイヤーロープの絡まり等が生じていないと判断した場合に、エレベーターの受信部に復旧調査信号を送信できる。したがって、従来技術の方法のようにエレベーターを復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴの移動を自動的に実行でき、そのカゴの移動でエレベーターに問題が生じていないと判定できると、エレベーターを自動的に復旧できる。よって、98耐震基準を満たさないエレベーターでも、保守作業員が現場を訪問することなく暫定的に復旧できる。
【0026】
また、本発明において、前記エレベーターの前記上側カメラに撮影を実行させることを表す上側撮影実行信号、前記エレベーターの前記下側カメラに撮影を実行させることを表す下側撮影実行信号、前記上側カメラの撮影を終了させることを表す上側撮影終了信号、及び前記下側カメラの撮影を終了させることを表す下側撮影終了信号を、直接又は1以上の中継機器を介して前記エレベーターの受信部に発信可能な操作部を備えてもよい。
【0027】
上記構成によれば、保守作業員等が必要なときに上側カメラと下側カメラでの撮影を開始させることができ、所望なときに上側カメラと下側カメラの撮影を終了させることができる。したがって、上側カメラと下側カメラの運転コストを小さくできる。
【0028】
また、本発明のエレベーターシステムは、上記復旧調査信号を受信可能な受信部を備えるエレベーターを複数備えると共に、上記復旧調査信号を直接又は1以上の中継機器を介してエレベーターの受信部に発信可能な操作部を備える情報機器を複数備え、複数の情報機器には、50km以上離れて配置される2つの長距離離間情報機器が含まれてもよい。
【0029】
上述のように、中規模の地震が大都市圏で発生すると、数百から数千ものエレベーターが、休止状態になることがある。しかし、本構成によれば、複数の情報機器が、50km以上離れて配置される2つの長距離離間情報機器を含むので、そのような事態が生じても、エレベーターから50km以上離れた保守作業員が情報機器を用いてそのエレベーターを自動復旧させることができる。よって、例えば、東京で起こった地震に関して、東京のエレベーターを東京以外の作業員(例えば、大阪の保守作業員)が自動で復旧させることが可能になる。よって、地震で多数のエレベーターが休止状態になったとしても、それら多数のエレベーターをより迅速に復旧させることが可能になる。
【0030】
また、本発明のエレベーターの復旧方法は、カゴの上側に設置されて前記カゴよりも上側の領域を撮影する上側カメラと、前記カゴの下側に設置されて前記カゴよりも下側の領域を撮影する下側カメラと、外部に信号を発信する発信部と、地震の発生を検知可能な地震検知部を備えたエレベーターにおいて、前記地震検知部が地震の発生を検知した後、前記上側カメラが撮影した上側画像に基づく上側画像情報を含む上側画像信号、及び前記下側カメラが撮影した下側画像に基づく下側画像情報を含む下側画像信号を外部に発信する画像信号送信ステップと、前記画像信号送信ステップの後に、前記エレベーターを復旧させてよいか否かの判定を行うための前記カゴの移動を前記エレベーターの制御部に実行させる復旧調査ステップと、を含む。
【0031】
本発明によれば、98耐震基準を満たさないエレベーターでも、中規模の地震が発生した場合にエレベーターの復旧検査運転を実行できるか否かを判断できる。よって、従来技術の方法のようにエレベーターの復旧検査運転を実行でき、エレベーターを自動的に復旧させることが可能になる。
【0032】
また、本発明の画像表示プログラムは、受信部及び表示部を有する情報機器で用いられる画像表示プログラムであって、前記受信部が受信した本発明のエレベーターの前記上側画像信号に基づく上画像を前記表示部に表示させる処理と、前記情報機器の前記受信部が受信した前記エレベーターの前記下側画像信号に基づく下画像を前記表示部に表示させる処理とをコンピュータに実行させる。
【0033】
本発明によれば、保守作業員が情報機器で上画像及び下画像を確認することが可能になる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るエレベーターによれば、98耐震基準を満たさなくても、中規模の地震が発生したときに速やかに復旧させることができる。また、本発明に係る情報機器、エレベーターシステム、エレベーターの復旧方法、及び画像表示プログラムによれば、エレベーターが98耐震基準を満たさなくても、中規模の地震が発生したときにエレベーターを速やかに復旧させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーターシステムの概略構成図である。
図2】上記エレベーターシステムを用いたエレベーターの復旧の概要について説明するための模式図であり、中規模地震が首都圏で発生した場合におけるエレベーターの復旧の概要について説明するための模式図である。
図3】変形例のエレベーターシステムで実行可能なエレベーターの復旧手続の手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の実施形態および変形例で、制御盤は、制御部を構成する。また、以下で説明する上側カメラ60は、カゴ32よりも上側の領域の全てを撮影可能であってもよいが、カゴ32よりも上側の領域の全てを撮影可能でなくてもよく、カゴ32よりも上側の領域に含まれる所定の領域を撮影可能であればよい。また、上側カメラ60は、カゴ32の上端部よりも下側に位置する一部領域(当該上端部を含んでもよい)を撮影可能であってもよい。また、以下で説明する下側カメラ70は、カゴ32よりも下側の領域の全てを撮影可能であってもよいが、カゴ32よりも下側の領域の全てを撮影可能でなくてもよく、カゴ32よりも下側の領域に含まれる所定の領域を撮影可能であればよい。また、下側カメラ70は、カゴ32の下端部よりも上側に位置する一部領域(当該下端部を含んでもよい)を撮影可能であってもよい。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーターシステム1の概略構成図である。なお、図1では、センター10、事業所20、及びエレベーター30が、1つしか図示されていないが、センター10は、日本全国に複数存在し、複数の事業所20が各センター10から情報を取得し、複数のエレベーター30が各事業所20で管理される。
【0038】
図1に示すように、エレベーターシステム1は、各センター10に配置される1以上の処理系サーバ11及び1以上のデータベース(DB)系サーバ12と、事業所に配置される1以上の情報機器(ワークステーション、デスクトップ型パーソナルコンピュータ)21と、複数の携帯型の情報機器22と、複数のエレベーター30を備える。各センター10に配置される1以上の処理系サーバ11及び1以上のデータベース系サーバ12は、インターネット等を介して他のセンター10に配置される1以上の処理系サーバ11及び1以上のデータベース系サーバ12と情報のやり取りが可能になっている。
【0039】
各エレベーター30は、カゴ32、ワイヤーロープ33、釣合錘34、巻上機35、複数の返し車、及び制御部としての制御盤40を備え、複数の返し車は、例えば、第1返し車36、第2返し車37、第3返し車38、第4返し車39、第5返し車46を含む。カゴ32は、建物内を鉛直方向に延在する昇降路41内に配置され、巻上機35、及び制御盤40は、昇降路41の下部に位置するピット42に設けられる。また、第1及び第2返し車36,37は、カゴ32の底部にカゴ32の幅方向に間隔をおいて回動自在に設置され、第3及び第4返し車38,39は、昇降路41の天井に回動自在に吊り下げ固定される。また、第5返し車46は、釣合錘34の上部に回動自在に設置される。なお、図1に示す実施例では、巻上機35がピット42に設置された機械室レスエレベータになっているが、エレベーターは、昇降路の上部に機械室を有し、巻上機が機械室に設置される構成でもよい。
【0040】
ワイヤーロープ33の一端部は、昇降路41の天井に固定され、ワイヤーロープ33は、一端側から第1返し車36、第2返し車37、第3返し車38、巻上機35、第4返し車39、第5返し車46の順に巻回され、ワイヤーロープ33の他端部は、昇降路41の天井に固定される。釣合錘34の重さは、釣合錘34にワイヤーロープ33を介してつながるカゴ32との間でバランスを取るように設定される。制御盤40は、各階の乗場(不図示)に設けられてカゴ32を呼ぶカゴ呼釦(図示せず)やカゴ32内に設けられて行先階を指定する行先階釦(図示せず)から信号を受ける。制御盤40がそれらの信号に基づいて巻上機35のモータの回転方向及び速度を制御することでカゴ32が昇降する。カゴ32は、昇降路41に配置された一対のカゴレール(不図示)に沿って鉛直方向に昇降し、釣合錘34は、昇降路41に配置された一対の錘レール(不図示)に沿って鉛直方向に昇降する。
【0041】
各エレベーター30は、更に、地震検知部の一例としての地震検知装置55、カゴ位置検出部57、上側カメラ60、及び下側カメラ70を備える。地震検知装置55は、所定範囲の震度の中規模地震の発生の有無を検出し、例えば、所定の地震レベルで動作する第1地震計55aと、第1地震計55aよりも高い地震レベルで動作する第2地震計55bを含む。地震検知装置55は、第1地震計55aが動作する一方、第2地震計55bが動作しないことで、所定範囲の震度の中規模地震の発生の有無を検出する。なお、本実施例では、地震検知装置55を、第1及び第2地震計55a,55bで構成する場合について説明するが、地震検知部は、エレベーターに一時的な歪みが生じたことを検知できる装置で構成されればよく、歪みセンサや光学センサ等で構成されてもよい。
【0042】
上側カメラ60は、撮影部60aがカゴ32の上端から鉛直方向上方に突出するようにカゴ32の上部に設置される。上側カメラ60は、全天球カメラ(上下左右全方位の360°パノラマ写真、及び360°動画の撮れる撮影装置)で好適に構成できる。また、下側カメラ70は、撮影部70aがカゴ32の下端から鉛直方向下方に突出するようにカゴ32の下部に設置される。下側カメラ70も、全天球カメラ(上下左右全方位の360°パノラマ写真、及び360°動画の撮れる撮影装置)で好適に構成できる。
【0043】
カゴ位置検出部57は、カゴ32の存在位置を検出する。カゴ位置検出部57は、例えば、巻上機35のモータに設置されるエンコーダで好適に構成できるが、該モータに設置されるレゾルバ又は磁気センサで構成されてもよい。また、制御盤40は、外部の情報機器に信号を有線又は無線で送信するための発信部75と、外部の情報機器からの信号を有線又は無線で受信するための受信部80を備える。エレベーター30は、上側カメラ60が撮影した上側画像に基づく上側画像情報を含む上側画像信号、及び下側カメラ70が撮影した下側画像に基づく下側画像情報を含む下側画像信号を、発信部75を介して外部に発信できるようになっている。
【0044】
各エレベーター30は、例えば、対応するセンター10に配置された処理系サーバ11及びデータベース系サーバ12にLTE(Long Term Evolution)でインターネットを介して上側及び下側画像信号を送信する。LTEは、データ通信を高速化した規格である。処理系サーバ11は、例えばエレベーター30から送信された上側及び下側画像情報のデータ形式を、情報機器21で使用可能なデータ形式に変換する等の処理を行い、データベース系サーバ12は、例えばエレベーター30毎に必要な画像データ等を記憶する。なお、データベース系サーバ12には、必要に応じて、エレベーター30毎に地震が起こったときに行った対処の情報を記憶してもよく、その場合、過去と同様の地震が生じた場合、データベース系サーバ12に記憶された当該情報に基づく対処が可能になる。
【0045】
事業所に設置された1以上の情報機器21は、対応するセンター10の処理系サーバ11を介して上側及び下側画像信号に基づく上画像情報及び下画像情報を取得する。また、各事業所20に属する保守作業員の携帯型の情報機器(スマートホン、タブレット、ノートパソコン等)22は、いずれかの情報機器21と双方向の信号のやり取りが可能になっている。なお、本実施例は、各保守作業員の情報機器22が、いずれかの情報機器21と双方向の信号のやり取りが可能な場合について説明するが、各保守作業員の情報機器22は、処理系サーバ11と直に双方向の信号のやり取りを行ってもよい。
【0046】
情報機器22は、例えば、タッチパネル式の操作部を有し、情報機器22には、エレベーター30を地震の後に復旧するときに用いるアプリケーションがインストールされている。次にそのアプリケーションの機能について説明する。情報機器22の表示部88に表示されているアイコンを適切に操作して、当該アプリケーションを立ち上げると、表示部88が、登録されているエレベーター30のうちで選択可能な複数のエレベーター30のうちから1つのエレベーター30を選択する操作部(画像)を表示する。なお、選択不可能な1以上のエレベーター30には、復旧している1以上のエレベーター30と、もう既に他の情報機器21,22と双方向の信号のやり取りを行っている1以上のエレベーター30が含まれてもよい。ユーザが、選択可能な複数のエレベーター30のうちから1つのエレベーター30を選択すると、表示部88が、例えば次の4つの操作部(アイコン)を表示する。
【0047】
4つの操作部(アイコン)は、エレベーター30の上側カメラ60に撮影を実行させることを表す上側撮影実行信号を直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信させることを選択する第1アイコン、エレベーター30の下側カメラ70に撮影を実行させることを表す下側撮影実行信号を直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信させることを選択する第2アイコン、上側カメラ60の撮影を中止する上側撮影中止信号を直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信させることを選択する第3アイコン、及び下側カメラ70の撮影を中止する下側撮影中止信号を直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信させることを選択する第4アイコンで構成される。なお、本実施例では、情報機器22が、事業所20の情報機器21と処理系サーバ11を介してエレベーター30と通信するので、上記1以上の中継機器に、事業所の情報機器21と、処理系サーバ11が含まれる。
【0048】
第1アイコンを選択すると、表示部88の背景画像の全面に、上側カメラ60が撮影した上側画像が表示され、第2アイコンを選択すると、表示部88の背景画像の全面に、下側カメラ70が撮影した下側画像が表示される。また、第1アイコンと第2アイコンを共に選択すると、例えば、表示部88の背景画像の上半分に上側カメラ60が撮影した上側画像が表示され、表示部88の背景画像の下半分に下側カメラ70が撮影した下側画像が表示される。
【0049】
また、第1アイコンを選択した状態で第3アイコンを選択すると、上側カメラ60の撮影が終了し、表示部88の背景画像に上側カメラ60が撮影した上側画像が表示されなくなり、第2アイコンを選択した状態で第4アイコンを選択すると、下側カメラ70の撮影が終了し、表示部88の背景画像に下側カメラ70が撮影した下側画像が表示されなくなる。表示部88の背景画像の上半分に上側カメラ60が撮影した上側画像が表示され、表示部88の背景画像の下半分に下側カメラ70が撮影した下側画像が表示されている場合において、下側カメラ70の撮影を終了させると、選択が維持されている上側画像が表示部88の背景画像の全面に表示されるようにしてもよい。
【0050】
また、表示部88は、表示したい方向を選択する操作部を表示してもよい。そして、この場合、その操作部は、上側半球において極座標のθとφを指定することによって、上側画像において表示したい方角の部分画像を指定できてもよく、選択した部分画像が拡大表示されるようになっていてもよい。ここで、XYZ座標において、θは、Z軸と指定方向とのなす角度(緯度を決める角度)であり、0≦θ≦(2/π)を満足する。また、φは、X軸の正の向きと、OQのなす角度(Oは、座標の原点、Qは、指定方角からXY平面に下した垂線の足の位置;経度を決める角度)であり、0≦φ<2πを満足する。
【0051】
また、同様に、その操作部は、下側半球において極座標のθとφを指定することによって、下側画像において表示したい方角の部分画像を指定できてもよく、選択した部分画像が拡大表示されるようになっていてもよい。ここで、XYZ座標において、θは、Z軸と指定方向とのなす角度であり、-(2/π)0≦θ≦0を満足する。また、φは、X軸の正の向きと、OQのなす角度(Oは、座標の原点、Qは、指定方角からXY平面に下した垂線の足の位置)であり、0≦φ<2πを満足する。なお、上側画像において表示したい方角の部分画像を指定する信号は、エレベーター30の受信部80を経由してエレベーター30の制御盤40に送信されてもよく、エレベーター30の受信部80を経由した後、上側カメラ60に送信されてもよい。また、同様に、下側画像において表示したい方角の部分画像を指定する信号は、エレベーター30の受信部80を経由してエレベーター30の制御盤40に送信されてもよく、エレベーター30の受信部80を経由した後、下側カメラ70に送信されてもよい。
【0052】
又は、情報機器22は、上側又は下側カメラ60,70が撮影する方向を操作できなくてもよく、上側又は下側画像において、所定タイミング毎に方角を切り替えて各方角の部分画像を拡大表示してもよい。又は、情報機器22は、上側画像として上側半天球画像(全天球画像の上半分の画像)のみを表示してもよく、下側画像として下側半天球画像(全天球画像の下半分の画像のみを表示してもよい)のみを表示してもよい。
【0053】
また、表示部88は、所定距離だけカゴ32を上側に移動させることを表す上側移動信号と、所定距離だけカゴ32を下側に移動させることを表す下側移動信号とを、直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信可能な操作部を表示してもよい。保守作業員等が、昇降路41内をより詳細に調査したい場合がある。この変形例では、外部から上側又は下側移動信号を送信することで、カゴ32を、昇降路41内を自在に移動させることができ、各カゴ位置での上側画像及び下側画像を確認できる。上記所定距離としては、例えば、50cm、1m、2m、又は3m等を採用でき、より一般的には、10m以下の如何なる距離を採用してもよい。このようにして、上側カメラ60及び下側カメラ70の少なくとも一方が撮影した画像をリアルタイムで情報機器22の表示部88に表示させる。
【0054】
また、表示部88は、エレベーター30を復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動をエレベーター30の制御盤40に実行させることを表す復旧調査信号を直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信させるための操作部を表示してもよい。ここで、復旧調査信号の発信操作がされると、エレベーター30が、例えば上記特許文献1に記載されている地震診断運転を実施してもよく、その地震診断運転でエレベーター30の異常を検出できない場合には、エレベーター30を暫定的に自動復旧してもよい。この場合、地震診断運転は、エレベーター30を復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動を行う運転に対応する。
【0055】
なお、エレベーター30を復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動を行う復旧検査運転を行う場合、その運転中の検査項目に、走行中に異常オンが検出されたか否かの検査、制御ケーブルを引っ張る異常な引張力が検出されたか否かの検査、及び巻上機35のモータの負荷量が所定範囲内にあるか否かの検査のうちの1以上の検査が含まれてもよい。そして、検査項目を全てクリアすると、エレベーター30の自動復旧を実行してもよく、1つでもクリアできない項目があると、復旧検査運転を停止して、エレベーター30が自動復旧できないと判定してもよい。なお、復旧検査運転では、カゴ32を微速運転してもよく、微速運転は、例えば、分速60mのエレベーターでは、1/10程度の分速5m程度の速度での運転としてもよい。また、異常オンの検出検査は、例えば、エレベーター30のカゴ32内にあるカゴ内インターホンの音圧検出を有効にして、カゴ内インターホンで実行してもよい。
【0056】
なお、今まで説明した、情報機器22における処理、例えば、各種表示処理や信号送信処理を、ソフトウェア、すなわちコンピュータに実行させるアプリケーション(プログラム)を用いて行うことは言うまでもない。また、情報機器22において、エレベーター30の復旧動作に関連する操作部がタッチパネルで構成される場合について説明した。しかし、情報機器において、エレベーターの復旧動作に関連する操作部は、タッチパネルで構成されなくてもよく、例えば、釦、マウス、及びキーボードのうちの1以上で構成されてもよく、それ以外の操作部で構成されてもよい。また、携帯型の情報機器22で、エレベーター30の復旧動作を実行する場合について説明したが、事業所20に設置された情報機器21で、エレベーター30の復旧動作をできるのは、言うまでもない。なお、事業所20に設置された情報機器21では、表示部96が液晶モニタ等のモニタで構成されてもよく、操作部がキーボード97とマウス98で構成されてもよい。
【0057】
再度、エレベーター30の説明に戻って、エレベーター30は、制御盤40に内蔵された記憶部及び制御盤40の外部に設置された記憶部のうちの少なくとも一方を有する。この記憶部には、上側及び下側カメラ60,70の駆動及び停止を制御する撮影制御用ソフトウェアが記憶されている。
【0058】
制御盤40のCPU(Central Processing Unit)が、受信部80が受信した上側撮影実行信号、下側撮影実行信号、上側撮影中止信号、下側撮影中止信号、及び撮影制御用ソフトウェアに基づいて上側及び下側カメラ60,70に電力を供給する電力供給回路のスイッチング素子をオンオフ制御することで上側及び下側カメラ60,70の撮影が制御される。
【0059】
また、記憶部には、カゴ32を所定距離、上方又は下方に移動させるときに用いる移動制御用ソフトウェアも記憶されている。制御盤40のCPUが、受信部80が受信した上側移動信号、下側移動信号、カゴ位置検出部57からのカゴ32の位置を特定可能な信号、及び移動制御用ソフトウェアに基づいて巻上機35のモータの回転方向と回転数を制御することで、カゴ32を所定距離上側又は下側に移動させることができる。
【0060】
また、記憶部には、エレベーター30を復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動を行う運転を行う際に復旧の可否を判定するための復旧可否判定用ソフトウェアも記憶されている。特許文献1に関連技術が開示されているので詳述しないが、エレベーター30の受信部80が、復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴの移動を制御盤40に実行させることを表す復旧調査信号を受信すると、エレベーター30は、復旧可否判定用ソフトウェアに基づいて、カゴ32を予め決められたように移動させ、その移動の際に予め決められた検査を行う。この検査項目には、例えば、走行中に異常オンが検出されたか否かの検査、制御ケーブルを引っ張る異常な引張力が検出されたか否かの検査、及び巻上機35のモータの負荷量が所定範囲内にあるか否かの検査のうちの1以上の検査が含まれる。それらの検査は、対応する物理量等を検出するセンサ等を用いて実行される。
【0061】
図2は、エレベーターシステム1を用いたエレベーター30の復旧の概要について説明するための模式図であり、中規模地震が首都圏で発生した場合におけるエレベーター30の復旧の概要について説明するための模式図である。
【0062】
上述のように、本実施例では、各センター10に配置される1以上の処理系サーバ11及び1以上のデータベース系サーバ12は、他のセンター10に配置される1以上の処理系サーバ11及び1以上のデータベース系サーバ12と情報のやり取りが可能になっている。ここで、複数のセンター10は、日本全国に分散配置され、エレベーターシステム1は、50km以上離れて配置される2つの長距離離間情報機器77を含み、更には、500km以上離れて配置される2つの長距離離間情報機器77を含むと好ましい。また、本実施例では、上述のように、事業所20に設置された情報機器21で、エレベーター30の復旧動作をできる。
【0063】
したがって、図2に示すように、首都圏で中規模の地震が生じて、数百から数千のエレベーター30が停止した場合、例えば、北海道にある事業所20の情報機器21や、近畿地方にある事業所20の情報機器21や、九州地方にある事業所20の情報機器21を用いて、遠隔操作で首都圏のエレベーター30を復旧させることができるようになる。よって、そのような地震が発生しても全国の応援を得ることができ、全てのエレベーター30をより迅速に復旧させることができる。
【0064】
図3は、変形例のエレベーターシステムで実行可能なエレベーターの復旧手続の手順を表すフローチャートである。変形例のエレベーターシステムでは、エレベーターシステムに含まれるエレベーターが、第1地震計よりも低い地震レベルで動作する第3地震計を有する点のみが、エレベーターシステム1と異なる。
【0065】
図3を参照して、地震が発生すると、ステップS1で中規模地震か否かを判定する。第1及び第3地震計が地震を検出する一方、第2地震計が地震を検出しなかった場合、ステップS1で肯定判定され、第3地震計のみが地震を検出した場合と、第2地震計が地震を検出した場合、ステップS1で否定判定される。
【0066】
ステップS1で否定判定されると、ステップS2に移行して、第2地震計が地震を検出したか否かを判定する。ステップS2で否定判定されると、エレベーターの制御盤40が、地震を震度が小さい小規模地震であると判定して、ステップS3に移行して、一定時間後にエレベーターを自動復旧させる。他方、ステップS2で肯定判定されると、エレベーターの制御盤40が、地震を震度が大きい大規模地震であると判定して、ステップS4に移行して、発信部75から地震が大規模地震であることを表す信号を外部に発信する。そして、その後、その信号に基づいて、ステップS5の復旧作業が実行される。詳しくは、ステップS5では、保守作業員が、現地を訪問して被害状況と対応方法について確認し、その確認に基づく復旧を行い、復旧手続きが終了する。
【0067】
他方、ステップS1で肯定判定されると、ステップS6に移行して、エレベーターが98耐震基準を満たすか否かが判定される。エレベーターの制御盤40は、上側カメラから信号を受信できるか否かでステップS6の判定を容易に実行できる。ステップS6で肯定判定されると、ステップS7に移行して、エレベーターが、自動で復旧検査運転を行い、ステップS8に移行する。ステップS8では、制御盤40が、復旧検査運転でエレベーターを復旧させてよいか否かを判定する。
【0068】
ステップS8で否定判定されると、ステップS5が実行される。また、ステップS8で肯定判定されるとステップS9に移行して、制御部が、自動的かつ暫定的にエレベーターを仮復旧させ、エレベーターが通常運行する。ステップS9でのエレベーターの仮復旧後、ステップS10で、エレベーターの本復旧を実行する。本復旧では、保守作業員が、実際に現場に赴いてエレベーターの検査項目を再確認して、その後、エレベーターを通常運転させる。ステップS9の自動制御でエレベーターが仮復旧しているので、本復旧は、急を要することがなく、保守作業員の都合の良いタイミングで実行できる。ステップS10の本復旧が終了すると、復旧手続きが終了する。
【0069】
また、ステップS6で否定判定されると、ステップS11に移行する。ステップS11では、保守作業員が、上側及び下側カメラ60,70を用いて昇降路41内の機器の異常検査を実行し、その後、ステップS12に移行する。ステップS12では、保守作業員が、昇降路41内の機器等に異常があるか否かを判定する。ステップS12の異常判定の検査項目には、例えば、ワイヤーロープ33の上側及び下側カメラ60,70を通じた目視による絡まりの有無、ケーブルの上側及び下側カメラ60,70を通じた目視による絡まりの有無、上側及び下側カメラ60,70を通じた目視による昇降路41のゆがみの有無、及び上側及び下側カメラを通じた目視によるカゴ32及び釣合錘34の脱レールの有無が含まれてもよい。
【0070】
保守作業員がステップS12で否定判定すると、保守作業員が、情報機器21,22を用いて、エレベーターを復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動をエレベーターの制御盤40に実行させることを表す復旧調査信号をエレベーターの受信部80に送信し、その後、ステップS7が実行される。他方、保守作業員がステップS12で肯定判定すると、ステップS5が実行される。なお、第3地震計は、存在しなくてもよい。そして、中規模以上の震度の地震のみ検出するようにしてもよく、上記ステップS2及びステップS3を省略してもよい。
【0071】
以上、エレベーター30は、昇降路41内を昇降するカゴ32、カゴ32の上側に設置され、カゴ32よりも上側の領域(上側領域の少なくとも一部という意味)を撮影可能である上側カメラ60、及びカゴ32の下側に設置され、カゴ32よりも下側の領域(下側領域の少なくとも一部という意味)を撮影可能である下側カメラ70を備える。また、エレベーター30は、上側カメラ60が撮影した上側画像に基づく上側画像情報を含む上側画像信号、及び下側カメラ70が撮影した下側画像に基づく下側画像情報を含む下側画像信号を外部に発信可能な発信部75を備える。
【0072】
したがって、上側カメラ60が撮影した上側画像に基づく上側画像情報を含む上側画像信号、及び下側カメラ70が撮影した下側画像に基づく下側画像情報を含む下側画像信号を外部に発信できる。よって、それら上側及び下側画像信号を、情報機器(端末(ワークステーション、デスクトップ型パーソナルコンピュータ)、スマートホン、タブレット、ノートパソコン等)21,22で受けた人(例えば、保守作業員等)が、情報機器21,22の表示部88,96で上側画像及び下側画像を確認でき、カゴ32や釣合錘34のレールからの離脱、昇降路41の歪み、及びワイヤーロープ33の絡まりが生じているか否かを現場に到達する前に判定でき、現場の状況を認識できる。したがって、現場に到達した保守作業員等が、速やかにエレベーター30を復旧させることができ、そのエレベーター30を使用する人の生活に支障がでることを抑制できる。なお、上側カメラのみが存在して下側カメラが存在しない場合、カゴが、最上階に止まった時、昇降路の下側の確認ができなくなる。また、逆に、下側カメラのみが存在して上側カメラが存在しない場合、カゴが、最下階に止まった時、昇降路の上側の確認ができなくなる。よって、本開示のエレベーター30は、上側カメラ60と下側カメラ70の両方を必ず必要とする。
【0073】
また、エレベーター30は、外部から発信されると共にカゴ32を所定距離だけ上側に移動させることを表す上側移動信号、及び外部から発信されると共にカゴ32を所定距離だけ下側に移動させることを表す下側移動信号を受信可能な受信部80を備えてもよい。また、エレベーター30は、上側移動信号に基づいてカゴ32を所定距離だけ上側に移動させ、下側移動信号に基づいてカゴ32を所定距離だけ下側に移動させる制御盤40を備えてもよい。
【0074】
上記構成によれば、エレベーター30が、外部の情報機器21,22から有線及び無線の少なくとも一方を介して上側移動信号と下側移動信号を受信でき、その信号に基づいてカゴ32を所定距離だけ上側又は下側に移動させることができる。したがって、保守作業員等が、昇降路41内をより詳細に調査したい場合に、外部から上側又は下側移動信号を送信することで、カゴ32を、昇降路41内を自在に移動させることができ、各カゴ位置での上側画像及び下側画像を確認でき、例えば、カゴ32やケーブルを損傷させるおそれがある昇降路壁面からの異物の突出等を確認できる。よって、保守作業員等が現場に到達する前に現場の状況を詳細に把握することができる。
【0075】
また、エレベーター30は、復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動を実行することを表す復旧調査信号を受信可能な受信部80と、復旧調査信号に基づいて復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動を実行する制御盤40を備えてもよい。
【0076】
上記構成によれば、保守作業員等が、情報機器21,22の表示部88,96を用いて昇降路41内の状況を確認して、カゴ32や釣合錘34のレールからの離脱、昇降路41の歪み、及びワイヤーロープ33の絡まり等が生じていないと判断した場合に、エレベーター30の受信部80に復旧調査信号を送信できる。そして、従来技術の方法のようにエレベーター30を復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動を自動的に実行でき、そのカゴ32の移動でエレベーター30に問題が生じていないと判定されると、エレベーター30の地震診断運転(復旧検査運転)を実行でき、エレベーター30を自動的に復旧させることが可能になる。よって、現存のエレベーターのうちの8割程度(大多数)を占める98耐震基準を満たさないエレベーター30に自動復旧検査システムを導入できる。そして、98耐震基準を満たさないエレベーター30でも、保守作業員が現場を訪問しなくても暫定的に復旧できるので、数百から数千台ものエレベーター30が休止するような地震が生じても、かなりの数のエレベーター30を暫定的に自動復旧することが可能になり、人々の生活に混乱を生じること大きく抑制することが可能になり、保守作業員等の労力も格段に低減することが可能になる。
【0077】
また、エレベーター30が、上側カメラ60に撮影を実行させることを表す上側撮影実行信号、下側カメラ70に撮影を実行させることを表す下側撮影実行信号、上側カメラ60の撮影を終了させることを表す上側撮影終了信号、及び下側カメラ70の撮影を終了させることを表す下側撮影終了信号を受信可能な受信部80を備えてもよい。また、エレベーター30が、上側撮影実行信号に基づいて上側カメラ60に撮影を実行させ、下側撮影実行信号に基づいて下側カメラ70に撮影を実行させ、上側撮影終了信号に基づいて上側カメラ60の撮影を終了させ、下側撮影終了信号に基づいて下側カメラ70の撮影を終了させる制御盤40を備えてもよい。
【0078】
上記構成によれば、保守作業員等が必要なときに上側カメラ60と下側カメラ70での撮影を開始させることができ、所望なときに上側カメラ60と下側カメラ70の撮影を終了させることができる。したがって、上側カメラ60と下側カメラ70の運転コストを小さくできる。
【0079】
また、情報機器21,22は、本開示のエレベーター30が発信した上側画像信号に基づく上画像を表示可能であると共に、エレベーター30が発信した下側画像信号に基づく下画像を表示可能である表示部88,96を備える。
【0080】
したがって、保守作業員等が、エレベーター30の昇降路41内の状況を現場に行くことなく上画像及び下画像で確認できる。よって、現場に到着した後、エレベーター30を速やかに復旧させることができる。
【0081】
また、情報機器21,22は、所定距離だけカゴ32を上側に移動させることを表す上側移動信号と、所定距離だけカゴ32を下側に移動させることを表す下側移動信号とを、直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信可能な操作部を備えてもよい。
【0082】
上記構成によれば、保守作業員等が、昇降路41内をより詳細に調査したい場合に、外部から上側又は下側移動信号を送信することで、カゴ32を、昇降路41内を自在に移動させることができ、各カゴ位置での上側画像及び下側画像を確認できる。よって、保守作業員等が現場に到達する前に現場の状況を詳細に把握することができる。
【0083】
また、情報機器21,22は、エレベーター30を復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動を実行することを表す復旧調査信号を直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信可能な操作部を備えてもよい。
【0084】
上記構成によれば、保守作業員等が、情報機器21,22の表示部88,96で昇降路41内の状況を確認して、カゴ32や釣合錘34のレールからの離脱、昇降路41の歪み、及びワイヤーロープ33の絡まり等が生じていないと判断した場合に、エレベーター30の受信部80に復旧調査信号を送信できる。したがって、エレベーター30を復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動を自動的に実行でき、そのカゴ32の移動でエレベーター30に問題が生じていないことが判定できると、従来技術の方法のようにエレベーター30を自動的に復旧できる。よって、98耐震基準を満たさないエレベーター30でも、保守作業員が現場を訪問することなく暫定的に復旧できる。
【0085】
また、情報機器21,22は、上側カメラ60に撮影を実行させることを表す上側撮影実行信号、下側カメラ70に撮影を実行させることを表す下側撮影実行信号、上側カメラ60の撮影を終了させることを表す上側撮影終了信号、及び下側カメラ70の撮影を終了させることを表す下側撮影終了信号を、直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信可能な操作部を備えてもよい。
【0086】
上記構成によれば、保守作業員等が必要なときに上側カメラ60と下側カメラ70での撮影を開始させることができ、所望なときに上側カメラ60と下側カメラ70の撮影を終了させることができる。したがって、上側カメラ60と下側カメラ70の運転コストを小さくできる。
【0087】
また、エレベーターシステム1は、上記復旧調査信号を受信可能な受信部80を備えるエレベーター30を複数備えてもよい。また、エレベーターシステム1は、上記復旧調査信号を直接又は1以上の中継機器を介してエレベーター30の受信部80に発信可能な操作部を備える情報機器21,22を複数備えてもよい。そして、複数の情報機器21,22が、50km以上離れて配置される2つの長距離離間情報機器77を含んでもよい。
【0088】
中規模の地震が大都市圏で発生すると、数百から数千ものエレベーター30が、休止状態になることがある。しかし、本構成によれば、複数の情報機器21,22が、50km以上離れて配置される2つの長距離離間情報機器77を含むので、そのような事態が生じても、エレベーター30から50km以上離れた保守作業員が情報機器21,22を用いてそのエレベーター30を自動復旧させることができる。よって、例えば、東京で起こった地震に関して、東京のエレベーター30を東京以外の作業員(例えば、大阪の保守作業員)が自動で復旧させることが可能になる。よって、地震で多数のエレベーター30が休止状態になったとしても、それら多数のエレベーター30をより迅速に復旧させることが可能になる。
【0089】
また、本開示のエレベーター30の復旧方法は、カゴ32の上側に設置されてカゴ32よりも上側の領域を撮影する上側カメラ60と、カゴ32の下側に設置されてカゴ32よりも下側の領域を撮影する下側カメラ70と、外部に信号を発信する発信部75と、地震の発生を検知可能な地震検知装置55を備えたエレベーター30において、地震検知装置55が地震の発生を検知した後、上側カメラ60が撮影した上側画像に基づく上側画像情報を含む上側画像信号、及び下側カメラ70が撮影した下側画像に基づく下側画像情報を含む下側画像信号を外部に発信する画像信号送信ステップと、画像信号送信ステップの後に、エレベーター30を復旧させてよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動をエレベーター30の制御盤40に実行させる復旧調査ステップを備える。
【0090】
したがって、98耐震基準を満たさないエレベーター30でも、上側及び下側カメラ60,70を通じた目視検査で、中規模の地震が発生した場合にエレベーター30の復旧検査運転を実行できるか否かを判断できる。よって、従来技術の方法のようにエレベーター30の復旧検査運転を実行でき、エレベーター30を自動的に復旧させることが可能になる。
【0091】
また、本開示の情報機器21,22には、次の有益な画像表示プログラムがインストールされている。詳しくは、その画像表示プログラムは、受信部及び表示部を有する情報機器で用いられる。また、その画像表示プログラムは、受信部が受信した本開示のエレベーター30の上側画像信号に基づく上画像を表示部88,96に表示させる処理と、情報機器21,22の受信部が受信したエレベーターの下側画像信号に基づく下画像を表示部88,96に表示させる処理とをコンピュータに実行させる。本画像表示プログラムを用いれば、保守作業員が情報機器21,22で上画像及び下画像を確認できる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0093】
例えば、上記実施形態では、情報機器21,22を操作して、上側カメラ60と下側カメラ70の撮影を開始したり、上側カメラ60と下側カメラ70の撮影を停止したりする場合について説明した。しかし、情報機器は、上側カメラと下側カメラの撮影の開始や停止を実行する操作部を有さなくてもよい。
【0094】
また、この場合、エレベーターは、地震の発生を検知可能な地震検知部と、その地震検知部からの信号に基づいて地震が発生したと認識すると、上側カメラ60と下側カメラ70に撮影を実行させる制御盤を備えてもよい。ここで、地震検知部は、外力がエレベーターに付与されて、エレベーターに一時的な歪みが生じたことを検知できるセンサで構成されればよく、地震計の他、歪みセンサや光学センサ等で構成されてもよい。また、この場合において、制御盤は、地震検知部から信号を受けた後の如何なるタイミングで上側カメラと下側カメラに撮影を実行させてもよく、例えば、制御盤は、地震検知部が地震を検知したことを判断すると直ぐに上側カメラと下側カメラに撮影を開始させてもよく、又はカゴが最寄の階等に停止してカゴ扉及び乗場扉が開いたタイミングで上側カメラと下側カメラに撮影を開始させてもよい。
【0095】
本変形例によれば、地震が発生すると、上側カメラ60と下側カメラ70に自動的に撮影を開始させることができる。よって、地震が検知されると、上記上側及び下側撮影実行信号を発信しなくても、上側カメラと下側カメラに撮影を実行させることができ、情報機器が上側及び下側画像情報を獲得できる。
【0096】
また、エレベーター30が、外部からの信号を受信する受信部80を有する場合について説明したが、エレベーターは、そのような受信部を有さなくてもよい。そのような場合であっても、保守作業員は、エレベーターが外部に送信した画像に基づいて現場に到着する前に現場における昇降路内の状況を知ることができる。よって、エレベーターの復旧を迅速に実行できるからである。
【0097】
また、エレベーター30が、外部から受信した上側移動信号に基づいてカゴ32を所定距離だけ上側に移動させることができ、外部から受信した下側移動信号に基づいてカゴ32を所定距離だけ下側に移動させることができる場合について説明した。しかし、エレベーターは、そのような信号を受けることができなくてもよい。そしてエレベーターは、カゴを所定距離だけ上側に移動させることができなくてもよく、カゴを所定距離だけ下側に移動させることができなくてもよい。
【0098】
また、エレベーター30が、それを復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴの移動をその制御盤に実行させることを表す復旧調査信号を受信可能である場合について説明した。しかし、エレベーターは、そのような復旧調査信号を受信不可能でもよく、復旧検査運転を実行できなくてもよい。
【0099】
また、情報機器21,22が、所定距離だけカゴ32を上側に移動させることを表す上側移動信号と、所定距離だけカゴ32を下側に移動させることを表す下側移動信号を送信可能な操作部を有する場合について説明した。しかし、情報機器は、そのような上側移動信号と下側移動信号を送信可能な操作部を有さなくてもよい。
【0100】
また、情報機器21,22が、エレベーター30を復旧してよいか否かの判定を行うためのカゴ32の移動をエレベーター30の制御盤40に実行させることを表す復旧調査信号を送信可能な操作部を有する場合について説明した。しかし、情報機器は、そのような復旧調査信号を送信可能な操作部を有さなくてもよい。
【0101】
また、情報機器21,22が、上側カメラ60と下側カメラ70に撮影を実行させることを表す撮影実行信号と、上側カメラ60と下側カメラ70の撮影を終了させることを表す撮影終了信号を送信可能な操作部を有する場合について説明した。しかし、情報機器は、そのような撮影実行信号や撮影終了信号を送信可能な操作部を有さなくてもよい。
【0102】
また、エレベーターシステム1が、50km以上離れて配置される2つの長距離離間情報機器77を含む場合について説明した。しかし、エレベーターシステムは、50km以上離れて配置される情報機器を含まなくてもよい。
【0103】
また、エレベーター30の発信部75が制御盤40に存在する場合について説明した。しかし、エレベーターの発信部は、カメラに存在してもよく、該発信部が、上側カメラの発信部である上側発信部、及び下側カメラの発信部である下側発信部を含んでもよい。また、カメラの駆動又は停止を表す信号を受信する受信部は、カメラに存在してもよく、より詳しくは、上側カメラの駆動又は停止を表す信号を受信する受信部が、上側カメラに存在してもよく、下側カメラの駆動又は停止を表す信号を受信する受信部が、下側カメラに存在してもよい。
【0104】
なお、発信部は、無線信号を発信するときには、送信アンテナや発信ポートで構成されてもよく、有線で信号を発信するときには、信号発信用のケーブルを接続する端子で構成されてもよい。また、受信部は、無線信号を受信するときには、受信アンテナや受信ポートで構成されてもよく、有線で信号を受信するときには、信号受信用のケーブルを接続する端子で構成されてもよい。また、図1に示す例では、発信部75が、受信部80と異なるが、発信部は、受信部を兼用してもよい。
【0105】
また、上側カメラ60と下側カメラ70を中規模地震が発生したときのエレベーター30の復旧に用いる場合について説明した。しかし、上側カメラを地震に無関係に上側画像を確認するのに用いてもよく、下側カメラを地震に無関係に下側画像を確認するのに用いてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 エレベーターシステム、 21,22 情報機器、 30 エレベーター、 32 カゴ、 40 制御盤、 41 昇降路、 55 地震検知装置、 60 上側カメラ、 70 下側カメラ、 75 発信部、 77 長距離離間情報機器、 80 受信部、 88,96 表示部、 97 キーボード、 98 マウス。
図1
図2
図3