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特許7145721合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/42 20060101AFI20220926BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20220926BHJP
   B65D 1/32 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20220926BHJP
   B29C 49/18 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B29C49/42
B65D1/02 111
B65D1/02 230
B65D1/32
B29C49/48
B29C49/22
B29C49/18
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018192428
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020059225
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃広
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030614(JP,A)
【文献】特開2004-262470(JP,A)
【文献】特開2018-040730(JP,A)
【文献】特開2017-196822(JP,A)
【文献】特開平06-039906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 - 49/80
B29C 33/00 - 33/76
B65D 1/00 - 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外口部と、該外口部に連接する肩部と、該肩部に連接する胴部と、該胴部に連接する底部と、該底部に連接する接地部と、該接地部の内周側に連接しボトルの内側に膨出する凹部とを備え、外圧に対して原形復帰可能な外郭ボトルと、
該外郭ボトルの該外口部の内周側に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連接し該外郭ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体とを備え、外圧により変形する内容器体と、
該外口部と該内口部との間に形成されて該外郭ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備える合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを金型内で該外郭ボトルと該内容器体とが密着した状態で形成した後、
金型から取り出した該合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの該通気路から加圧気体を導入することにより、該合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの胴部において該外郭ボトルと該内容器体とが剥離し、底部内周側において該外郭ボトルと該内容器体とが密着した合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法であって、
該外郭ボトルから該内容器体本体の胴部を剥離するに際し、該合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの該外口部と該内口部とにより形成されるボトル口部に装着される口部保持装置と、該接地部が載置される載置手段とにより、該ボトル口部の天面から接地部までの長さを所定の長さに保持した状態で、該外郭ボトルと該内容器体本体との間に該通気路から加圧気体を導入することを特徴とする合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外圧に対して原形復帰可能な外郭ボトルの内部に、外圧により変形されて減容する(以下、「減容変形」ということがある)内容器体を配置し、該外郭ボトルと該内容器体との間に外気が導入されるようにした合成樹脂製ブロー成形多重ボトルが知られている。前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、例えば、ポリエステル樹脂の射出成形により内プリフォーム及び外プリフォームを形成し、外プリフォームの内周側に内プリフォームを配置した状態でブロー成形することにより製造される。
【0003】
前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、外郭ボトルの胴部を押圧することにより、内容器体を減容変形させて内容器体に収容されている内容物を注出する一方、押圧が解除されると別途設けられた逆止弁等の作用により外郭ボトルと内容器体との間に外気が導入される。この結果、外気圧により外郭ボトルが原形復帰する一方、前記内容器体は減容変形された状態が維持される。このようにするときには、内容器体内部に外気が侵入することが無いので、内容器体内部に収容されている内容物が酸化等により変質することを防止することができる。
【0004】
ところで、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、前述のようにして内容器体を減容変形させる際に、底部の内周側で前記外郭ボトルから前記内容器体が剥離すると、所期の減容変形が困難になり、内容物を十分に注出することができなくなることがあるという問題がある。
【0005】
前記問題を解決するために、底部に多角錐台状の段部を複数備える凹部を形成し、該凹部により該底部の内周側における内容器体と外郭ボトルとの間の部分への空気の侵入を抑制し、該底部において外郭ボトルから内容器体が剥離しないように構成したものが本出願人により提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、前述のようにブロー成形により製造される際の熱と圧力とにより外郭ボトルに内容器体が密着し、外郭ボトルと内容器体とが剥離しにくくなることがあるという問題がある。前記問題は、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを形成する樹脂がポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート主体のポリエステル樹脂である場合に著しい。
【0007】
そこで、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルでは、外郭ボトルと内容器体とが剥離している一方、底部内周側においては該外郭ボトルと該内容器体とが密着していることが望まれる。前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルでは、外郭ボトルと内容器体とが剥離している一方、底部内周側においては該外郭ボトルと該内容器体とが密着していることにより、該内容器体を容易に減容変形させることができ、内容物を十分に注出することができる。
【0008】
前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法として、前記ブロー成形後、前記外郭ボトルと前記内容器体との間に加圧気体を導入することにより該内容器体を減容変形させた後、該内容器体内部に加圧気体を導入することにより該内容器体を原形復帰させ、該内容器体に該減容変形の痕跡としての変形案内部を形成することが本出願人により提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
また、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、前記ブロー成形において前記内容器体にピンホール等の欠陥が発生することがある。そこで、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルは、前記ブロー成形後、一般市場に流通させる前に、前記内容器体の欠陥の有無を検査する必要がある。
【0010】
前記内容器体のピンホール等の欠陥の有無の検査は、前記ブロー成形後、前記外郭ボトルと前記内容器体との間に加圧気体を導入して該内容器体を減容変形させた後、該内容器体内部に加圧気体を導入して該内容器体を原形復帰させるときに、該外郭ボトルと該内容器体との間の空間又は該内容器体内部の圧力の変化を検知することにより行うことが本出願人により提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2017-171317号公報
【文献】特開2018-030614号公報
【文献】特開2018-040730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2、3には、前記ブロー成形後、ブロー成形に用いる金型内で、前記外郭ボトルと前記内容器体との間に加圧気体を導入して該内容器体を剥離し減容変形させた後、該内容器体内部に加圧気体を導入して該内容器体を原形復帰させる操作を行うことが記載されている。
【0013】
しかし、前記操作を前記金型内で行うときには、ブロー成形のためにプリフォーム内部にストレッチロッドを伸張させると共に高圧気体を供給する装置を、前記外郭ボトルと前記内容器体との間及び該内容器体内部に加圧気体を供給又は排出する装置に交換する時間や、該内容器体を減容変形させた後に原形復帰させる時間が必要となり、ブロー成形のための時間が失われるため、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの生産性が低下するという問題がある。また、前記操作を前記金型内で行うときには、前記外郭ボトルと前記内容器体との状態を目視で確認できないという問題もある。そこで、ブロー成形により形成された合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを前記金型から取り出し、前記金型の外部で前記操作を行うことが望まれる。
【0014】
しかしながら、前記金型の外部で前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの外郭ボトルから前記内容器体を剥離し減容変形させた後、原形復帰させる操作を行うと、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの底部の内周側において、外郭ボトルから内容器体が剥離することがあるという不都合がある。
【0015】
本発明は、かかる不都合を解消して、前記金型の外部で前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの前記外郭ボトルから前記内容器体を剥離させる操作を行うときに、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの底部の内周側において、外郭ボトルから内容器体が剥離することを防止することができる合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる目的を達成するために、本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法は、円筒状の外口部と、該外口部に連接する肩部と、該肩部に連接する胴部と、該胴部に連接する底部と、該底部に連接する接地部と、該接地部の内周側に連接しボトルの内側に膨出する凹部とを備え、外圧に対して原形復帰可能な外郭ボトルと、該外郭ボトルの該外口部の内周側に配設される円筒状の内口部と、該内口部に連接し該外郭ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体とを備え、外圧により変形する内容器体と、該外口部と該内口部との間に形成されて該外郭ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備える合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを金型内で該外郭ボトルと該内容器体とが密着した状態で形成した後、金型から取り出した該合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの該通気路から加圧気体を導入することにより、該合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの胴部において該外郭ボトルと該内容器体とが剥離し、底部内周側において該外郭ボトルと該内容器体とが密着した合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法であって、該外郭ボトルから該内容器体本体の胴部を剥離するに際し、該合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの該外口部と該内口部とにより形成されるボトル口部に装着される口部保持装置と、該接地部が載置される載置手段とにより、該ボトル口部の天面から接地部までの長さを所定の長さに保持した状態で、該外郭ボトルと該内容器体本体との間に該通気路から加圧気体を導入することを特徴とする。
【0017】
本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法では、まず、金型内で合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを形成する。この結果、前記外郭ボトルと前記内容器体とが密着した状態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルが得られる。
【0018】
次に、形成された前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを金型から取り出し、該合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの胴部において前記外郭ボトルと前記内容器体とが剥離し、底部内周側において該外郭ボトルと該内容器体とが密着した合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを製造する。このとき、本発明の合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法では、前記合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの前記外口部と前記内口部とにより形成されるボトル口部に装着される口部保持装置と、該接地部が載置される載置手段とにより、該ボトル口部の天面から接地部までの長さを所定の長さに保持した状態で、前記外郭ボトルと前記内容器体本体との間に前記通気路から加圧気体を導入する。
【0019】
このようにすると、ボトル口部の天面から接地部までの長さが所定の長さに保持されているので、底部の内周側において、該外郭ボトルの軸方向下方への変形が規制される。この結果、外郭ボトルから内容器体が剥離することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の製造方法により得られる合成樹脂製ブロー成形多重ボトルの構成を示す斜視図。
図2図1のII-II線断面図。
図3図1に示す合成樹脂製ブロー成形多重ボトルを形成する工程を示す説明的断面図。
図4】Aは外郭ボトルと内容器体本体との間に加圧空気を導入したときの底部の内周側の状態を示す説明的断面図、Bは該底部の内周側において外郭ボトルから内容器体が剥離した状態を示す説明的断面図。
図5】本発明の製造方法において、外郭ボトルから内容器体本体を剥離する工程を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0022】
本実施形態の製造方法により得られる合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、例えば、図1及び図2に示す構成を備えている。合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、外郭ボトル2と、外郭ボトル2の内側に収容され外圧により変形する内容器体3とからなる。
【0023】
外郭ボトル2は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂製であり、円筒状の外口部4と、外口部4に連接する肩部5と、肩部5に連接する円筒状胴部6と、円筒状胴部6に連接する底部7と、底部7に連接する接地部8と、接地部8の内周側に連接しボトルの内側に膨出する凹部9とを備えている。
【0024】
外口部4は外周面に雄ねじ部10と、サポートリング11とを備え、肩部5は外口部4に接する部分が四角錐状部12となっており、四角錐状部12の下方に四角錐状部12から円筒状胴部6に向かって次第に拡径するとともに四角錐の角が滑らかになり円筒状胴部6に連なる胴部上部13を備えている。
【0025】
円筒状胴部6は、軸に直交する断面が円形状であり、段差部6aを介して肩部5に連接する一方、段差部6bを介して底部7に連接している。段差部6aは肩部5から円筒状胴部6に向かって次第に縮径しており、段差部6bは底部7から円筒状胴部6に向かって次第に縮径している。
【0026】
また、円筒状胴部6は、肩部5に連接する段差部6aの下端部から中央部6cに向かって次第に縮径し、中央部6cから底部7に連接する段差部6bの上端部に向かって次第に拡径する鼓状となっている。また、円筒状胴部6は軸方向に沿って複数のリブ14を備えており、リブ14は円筒状胴部6の全周に亘って形成されている。
【0027】
底部7は、接地部8に接する部分が四角錐状部15となっており、四角錐状部15の上方に四角錐状部15から円筒状胴部6に向かって次第に拡径するとともに四角錐の角が滑らかになり円筒状胴部6に連なる胴部下部16を備えている。また、凹部9は、3段に積層された四角錐台状凹部9a,9b,9cを備えている。
【0028】
また、四角錐状部12、15はそれぞれ軸に直交する断面が四角形状であってその頂点にはRが付されており、該頂点に稜線12a、15aを備えている。ここで、稜線15aは図1に一点鎖線で示すように稜線12aの延長上に連なっている。
【0029】
一方、内容器体3は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂製であり、外口部4の内周側に配設される円筒状の内口部17と、内口部17に連接し、外郭ボトル2の肩部5、円筒状胴部6、底部7、接地部8、凹部9の内面形状に沿う形状の内容器体本体18とを備えている。内口部17は、上部に外口部4の上端よりも上方に延出された延出部19と、延出部19から径方向外方に張り出す鍔部20とを備えており、鍔部20により外口部4の上端縁に係止されている。
【0030】
また、内口部17は、外周面に縦溝21を備えている。縦溝21は鍔部20の下面に形成された横溝22に連接されており、横溝22は鍔部20の外周縁で外部に開放されている。この結果、縦溝21及び横溝22により、外郭ボトル2と内容器体3との間に外気を導入する通気路23が形成されている。
【0031】
合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1では、外口部4と内口部17とからボトル口部24が形成されている。そして、外口部4の上端縁に係止されている鍔部20の上面がボトル口部24の天面となっている。合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1はまた、内容器体本体18に変形案内部25を備えており、円筒状胴部6では外郭ボトル2から内容器体本体18が剥離している一方、底部7内周側の凹部9では外郭ボトル2と内容器体3とが密着している。
【0032】
合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1において、凹部9は接地部8の内周側でボトルの内側に例えば半球状に膨出する形状であってもよいが、3段に積層された四角錐台状凹部9a,9b,9cを備えることにより、内容器体本体18の凹部9に対応する部分を凹部9に密着させることができ、内容器体本体18を減容変形させる際に、凹部9において外郭ボトル2から内容器体本体18が剥離することを防止することができる。
【0033】
また、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、外郭ボトル2と内容器体3とがいずれもポリエステル樹脂からなる場合には互いに密着しやすく、内容器体本体18を減容変形させる際に外郭ボトル2と内容器体3とが剥離しにくくなる。そこで、この場合、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、外郭ボトル2と内容器体3との間に離型剤を介在させることが好ましい。
【0034】
一方、外郭ボトル2と内容器体3との間に前記離型剤を介在させると、接地部8及びその内周側の凹部9に該離型剤が浸入し、凹部9において外郭ボトル2から内容器体本体18が剥離することが懸念されるが、接地部8は突出形状でありブロー成形時に外郭ボトルと内容器体が強固に圧接されて離型剤が浸入しにくく、また凹部9は3段に積層された四角錐台状凹部9a,9b,9cを備えるので該離型剤が侵入しにくく、接地部8及びその内周側の凹部9において、市場における通常の使用では、外郭ボトル2から内容器体本体18が剥離することを防止することができる。
【0035】
次に、図3乃至図5を参照して、本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の製造方法について説明する。
【0036】
本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、図3Aに示すように、外郭ボトル2を形成する外プリフォーム31の内側に、内容器体3を形成する内プリフォーム32を配置して、ブロー成形装置を用いてブロー成形を行うことにより製造する。
【0037】
外プリフォーム31は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂を材料として射出成形により形成され、外口部4と、外口部4の下方に連接された有底円筒状の外胴部31aとを備えている。外プリフォーム31の外口部4は、外郭ボトル2の外口部4と同一形状を備えており、同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
内プリフォーム32は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂を材料として射出成形により形成され、内口部17と、内口部17の下方に連接された有底円筒状の内胴部32aとを備えている。内プリフォーム32の内口部17は、内容器体3の内口部17と同一形状を備えており、同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0039】
前記ブロー成形装置は周知のものを用いることができ、図3Aに要部を示すように、金型33と、ブローノズル34と、ストレッチロッド35とを備えている。
【0040】
金型33は、外郭ボトル2の肩部5、円筒状胴部6、底部7、接地部8、凹部9に沿う形状の成形部36と、外プリフォーム31の外口部4のサポートリング11から上方を露出させて支持する支持開口部37とを備えている。金型33は図示しない割型構造とされており、左右側と底部側とで分割することによって成形後の合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1が脱型できるようになっている。
【0041】
ブローノズル34は、図示しない昇降手段により昇降され、Oリング38を介して内プリフォーム32の鍔部20の上端面に気密に当接する。ブローノズル34にはストレッチロッド35が挿通され、ストレッチロッド35の外周面とブローノズル34の内周面との間には、図示しない高圧気体供給手段に接続された気体通路39が形成されている。
【0042】
ストレッチロッド35は、図示しない進退駆動手段によってブロー成形時に前進される。尚、図3Aにおいては、ストレッチロッド35がブローノズル34の先端から突出しているが、ストレッチロッド35は未使用時には後退されてブローノズル34の内方(図中上方)に収納されている。
【0043】
上述の構成のブロー成形装置によって、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1を製造するときには、図3Aに示すように、内側に内プリフォーム32が配置された外プリフォーム31を金型33にセットした後、内プリフォーム32の内口部17にブローノズル34を接続する。外プリフォーム31及び内プリフォーム32は、金型33にセットされるに先立ってブロー成形可能な温度に加熱される。尚、外プリフォーム31と内プリフォーム32とがいずれもポリエステル樹脂からなる場合には、外プリフォーム31の胴部内周面又は内プリフォーム32の胴部外周面に前記離型剤が塗布されていることが好ましい。
【0044】
次いで、図3Bに示すようにブローノズル34の気体通路39から内プリフォーム32内に太い矢印で示すように高圧気体を導入し(以下、図3B,Cでは気体の流れを太い矢印で示す)、同時にストレッチロッド35を下方に伸長させる。これにより、内プリフォーム32が膨張して未膨張状態の外プリフォーム31の内面に密着する。
【0045】
続いて、図3Bに示す状態から、更に内プリフォーム32内に高圧気体を導入しつつ、ストレッチロッド35を下方に伸長させると、膨張した内プリフォーム32の内胴部32aにより外プリフォーム31の外胴部31aがさらに広げられる。
【0046】
そして、図3Cに示すように、外プリフォーム31は、外胴部31aが金型33の成形部36により成形され、外郭ボトル2が形成される。また、内プリフォーム32は、内胴部32aが外郭ボトル2の内面形状に沿う形状に成形され、内容器体3が形成される。
【0047】
このとき、外郭ボトル2の凹部9は金型33の成形部36により、3段に積層された四角錐台状凹部9a,9b,9cを備える形状に形成され、内容器体本体18の凹部9に対応する部分が熱圧着される。凹部9は四角錐台状凹部9a,9b,9cを備えることにより、外プリフォーム31の内周面又は内プリフォーム32の外周面に前記離型剤が塗布されている場合にも、内容器体本体18の凹部9に対応する部分との間に該離型剤が侵入することを阻止することができ、外郭ボトル2の凹部9と内容器体本体18の凹部9に対応する部分とが確実に熱圧着される。
【0048】
この結果、外郭ボトル2と、その内側に収容された内容器体3とが密着した状態となっている合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1が得られる。
【0049】
ところで、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、外郭ボトル2に内容器体本体18が密着していると、外郭ボトル2と内容器体本体18とが剥離しにくくなることがあるという問題がある。前記問題は、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1を形成する樹脂がポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート主体のポリエステル樹脂である場合に著しい。
【0050】
そこで、本実施形態の製造方法では、次に、金型33から取り出した合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1を、40~65℃の範囲の温度に加熱した状態で、外郭ボトル2と内容器体本体18との間に通気路23から25~50kPaの範囲の圧力に加圧された加圧気体を導入することにより、外郭ボトル2の円筒状胴部6と、円筒状胴部6に対応する部分の内容器体本体18とを剥離する。
【0051】
ここで、外郭ボトル2と内容器体本体18との間に通気路23から前記加圧気体を導入すると、図4Aに示すように、外郭ボトル2では、底部7の接地部8近傍に矢印aで示すような加圧力が作用する。前記加圧力により、500mlサイズの合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1では、底部7の接地部8近傍が図4Aに仮想線示するように合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の軸方向下方に1~4mm膨出する。
【0052】
一方、内容器体本体18は、前記加圧気体の加圧力により減容変形して合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の内方に凹入するので、外郭ボトル2の底部7に対応する部分に矢印bで示すような合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の軸方向上方に引っ張るような引張力が作用する。
【0053】
この結果、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1では、図4Bに示すように、外郭ボトル2の接地部8及び凹部9と、内容器体本体18の接地部8及び凹部9に対応する部分とが剥離することがある。
【0054】
そこで、本実施形態の合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の製造方法では、図5に示す内容器体剥離復元装置41を用いて、図3に示すブロー成形により得られた合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1における外郭ボトル2の円筒状胴部6と、円筒状胴部6に対応する部分の内容器体本体18とを剥離する。
【0055】
内容器体剥離復元装置41は、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1のサポートリング11を保持するボトルホルダー42と、ボトルホルダー42に保持された合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の外口部4と内口部17とからなるボトル口部24に装着される口部保持装置43と、ボトルホルダー42に保持された合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の接地部8が載置される載置手段44とを備える。
【0056】
口部保持装置43は、中央に形成されてボトル口部24を収容する円筒状穴部45と、円筒状穴部45の天部に設けられてボトル口部24に当接される当接部材46と、円筒状穴部45の内周壁に備えられ外口部4に圧着することにより円筒状穴部45の内部を外気から遮断するOリング47とを備えている。また、口部保持装置43は、ボトル口部24に装着されたときに、当接部材46中央の貫通孔部46aを介して内容器体3の内部に連通する内容器体気体出入り口48と、通気路23に連通する通気路気体出入り口49とを備え、内容器体気体出入り口48と通気路気体出入り口49とはそれぞれ図示しない加圧気体導入排気手段に接続されている。
【0057】
また、載置手段44は、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の接地部8が載置される載置板50と、載置板50を所定の位置に保持して固定する保持部材51とを備えている。
【0058】
次に、内容器体剥離復元装置41の作動について説明する。
【0059】
まず、変形案内部25を形成するときには、ブロー成形により得られた合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、金型33から脱型された後、コンベアで所定の位置に搬送され、サポートリング11がボトルホルダー42で保持された状態で、接地部8が載置板50上に載置され、ボトル口部24に口部保持装置43が装着される。このとき、ボトル口部24の天面には当接部材46が当接されており、ボトル口部24の天面から接地部8までの長さが、当接部材46と載置板50とにより所定の長さ、例えば、ブロー成形直後のボトル口部24の天面から接地部8までの長さに保持される。
【0060】
次に、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1が例えば40~65℃の範囲の温度に加熱された状態で、通気路気体出入り口49から通気路23を介して外郭ボトル2と内容器体本体18との間に例えば25~50kPaの範囲の圧力に加圧された加圧気体を導入する一方、内容器体気体出入り口48から内容器体本体18の内部を排気することにより、図5に示すように、外郭ボトル2の円筒状胴部6と、円筒状胴部6に対応する部分の内容器体本体18が剥離し、内容器体本体18が減容変形される。尚、内容器体本体18が前述のように減容変形されるとき、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は加熱されていなくてもよい。
【0061】
前述のように、内容器体本体18が外郭ボトル2から剥離し、減容変形されたときに、外郭ボトル2では底部7の接地部8近傍に矢印aで示すような加圧力が作用する。また、内容器体本体18では外郭ボトル2の接地部8近傍に対応する部分に矢印bで示すような合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の軸方向上方に引っ張るような引張力が作用する。
【0062】
この結果、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の接地部8近傍に図4Aに仮想線示するように合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の軸方向下方に膨出しようとする力が作用するが、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1ではボトル口部24の天面から接地部8までの長さが、当接部材46と載置板50とにより所定の長さに保持されている。この結果、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1では、接地部8近傍が合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の軸方向下方に膨出することを防止することができ、これにより外郭ボトル2の接地部8及びその内周側の凹部9と内容器体本体18の接地部8及び凹部9に対応する部分との剥離を防止することができる。
【0063】
内容器体本体18が外郭ボトル2から剥離し、引き続き減容変形されたならば、次に、内容器体気体出入り口48から内容器体本体18の内部に前記加圧気体を導入する一方、通気路気体出入り口49から通気路23を介して外郭ボトル2と内容器体本体18との間の空間を排気することにより、図5に仮想線示するように、内容器体本体18が原形復帰される。その際、内容器体本体18には減容変形の痕跡として変形案内部25が形成される。尚、内容器体本体18が前述のように原形復帰されるとき、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は加熱されていなくてもよくい。
【0064】
内容器体18が原形復帰された後、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、ボトル口部24から口部保持装置43が外され、接地部8に対する載置板50の当接が解除されたのち、コンベアに載置されて移動される。
【0065】
本実施形態の内容器体剥離復元装置41において、載置板50は保持部材51により所定の位置に保持されて固定されているが、保持部材51を昇降自在として、保持部材51により合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の接地部8に圧接されるようにされていてもよい。
【0066】
また、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は前記ブロー成形により内容器体本体18にピンホール等の欠陥が生じることがあり、一般市場に流通させる前に、内容器体本体18の欠陥の有無を検査することが好ましい。そこで、本実施形態の製造方法では、内容器体剥離復元装置41を用いて、内容器体本体18の欠陥の有無の検査を行うことができる。
【0067】
内容器体剥離復元装置41による内容器体本体18のピンホール等の欠陥の有無の検査では、変形案内部25を形成するときと全く同一にして、ブロー成形により得られた合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1は、金型33から脱型された後、コンベアで所定の位置に搬送され、サポートリング11がボトルホルダー42で保持された状態で、接地部8が載置板50上に載置され、ボトル口部24に口部保持装置43が装着される。このとき、ボトル口部24の天面には当接部材46が当接されており、ボトル口部24の天面から接地部8までの長さが、当接部材46と載置板50とにより所定の長さ、例えば、ブロー成形直後のボトル口部24の天面から接地部8までの長さに保持される。
【0068】
次に、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1が例えば40~65℃の範囲の温度に加熱された状態で、通気路気体出入り口49から通気路23を介して外郭ボトル2と内容器体本体18との間に例えば25~50kPaの範囲の圧力に加圧された加圧気体を導入する一方、内容器体気体出入り口48から内容器体本体18の内部を排気することにより、図5に示すように、外郭ボトル2の円筒状胴部6と、円筒状胴部6に対応する部分の内容器体本体18が剥離し、内容器体本体18が減容変形される。
【0069】
そこで、内容器体本体18が前述のように減容変形された後、内容器体気体出入り口48で内容器体本体3から排出される気流を検知するか、通気路気体出入り口49で外郭ボトル2と内容器体本体18との間に形成された空間内の圧力の減少を検知したときには、内容器体本体18にピンホール等の欠陥が存在するものと判定する。
【0070】
このとき、合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1ではボトル口部24の天面から接地部8までの長さが、当接部材46と載置板50とにより所定の長さに保持されているので、接地部8近傍が合成樹脂製ブロー成形多重ボトル1の軸方向下方に膨出することを防止することができ、これにより外郭ボトル2の接地部8及びその内周側の凹部9と内容器体本体18の接地部8及び凹部9に対応する部分との剥離を防止することができる。
【0071】
次に、変形案内部25を形成するときと全く同一にして、内容器体気体出入り口48から内容器体本体18の内部に前記加圧気体を導入する一方、通気路気体出入り口49から通気路23を介して外郭ボトル2と内容器体本体18との間の空間を排気することにより、図5に仮想線示するように、内容器体本体18が原形復帰される。
【0072】
そこで、内容器体本体18が前述のように原形復帰された後、内容器体気体出入り口48で内容器体本体3内の圧力の減少を検知するか、通気路気体出入り口49で通気路23から排出される気流を検知したときには、内容器体本体18にピンホール等の欠陥が存在するものと判定する。
【0073】
そして、内容器体本体18にピンホール等の欠陥が存在すると判定されたものは不良品として除去され、該欠陥が存在しないと判定されたものは良品として一般市場に流通される。
【符号の説明】
【0074】
1…合成樹脂製ブロー成形多重ボトル、 2…外郭ボトル、 3…内容器体、 4…外口部、 5…肩部、 6…胴部、 7…底部、 8…接地部、 9…凹部、 17…内口部、 18…内容器体本体、 23…通気路、 24…ボトル口部、 25…変形案内部、 31…外プリフォーム、 32…内プリフォーム。
図1
図2
図3
図4
図5