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特許7145727負極用樹脂集電体の製造方法、リチウムイオン電池用負極の製造方法、及び、リチウムイオン電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】負極用樹脂集電体の製造方法、リチウムイオン電池用負極の製造方法、及び、リチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/64 20060101AFI20220926BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220926BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220926BHJP
【FI】
H01M4/64 A
H01M4/66 A
H01M4/139
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018198530
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020068065
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】草野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】都藤 靖泰
(72)【発明者】
【氏名】丸山 恭資
(72)【発明者】
【氏名】大西 一彰
(72)【発明者】
【氏名】大澤 康彦
(72)【発明者】
【氏名】草地 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一
(72)【発明者】
【氏名】赤間 弘
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-137221(JP,A)
【文献】特開2013-54840(JP,A)
【文献】特開2002-124265(JP,A)
【文献】特開昭63-224103(JP,A)
【文献】特表2014-529858(JP,A)
【文献】特開2002-8665(JP,A)
【文献】特開平10-100346(JP,A)
【文献】米国特許第4521359(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物の溶融物を3層以上に積層して多層体を得る積層工程を備え、
前記多層体の各層を構成するそれぞれの導電性樹脂組成物に含まれる前記ポリオレフィンは、温度230℃、荷重2.16kgの条件下でJIS K7210-1:2014に記載の方法で測定されるメルトマスフローレートが15~70g/10minであることを特徴とするシート状の負極用樹脂集電体の製造方法。
【請求項2】
前記多層体が、ポリオレフィンとニッケル粒子とを含む導電性樹脂組成物の層を少なくとも2層含む請求項1に記載の負極用樹脂集電体の製造方法。
【請求項3】
前記多層体が、前記導電性フィラーがニッケル粒子である導電性樹脂組成物の層と前記導電性フィラーが導電性カーボンである導電性樹脂組成物の層とを含む請求項1に記載の負極用樹脂集電体の製造方法。
【請求項4】
前記多層体の各層を構成するそれぞれの導電性樹脂組成物に含まれる前記導電性フィラーの重量割合が、それぞれの導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンと導電性フィラーとの合計重量に基づいて15~75重量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の負極用樹脂集電体の製造方法。
【請求項5】
前記多層体が有する2つの主面のうち、少なくとも一方の主面に、金属層を形成する工程をさらに備える請求項1~4のいずれか1項に記載の負極用樹脂集電体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法により負極用樹脂集電体を作製する工程と、
前記負極用樹脂集電体のどちらか一方の表面に、負極活物質層を形成する工程とを備えることを特徴とするリチウムイオン電池用負極の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法によりリチウムイオン電池用負極を作製する工程を備えることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極用樹脂集電体の製造方法、リチウムイオン電池用負極の製造方法、及び、リチウムイオン電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池に注目が集まっている。
【0003】
リチウムイオン電池は、一般に、バインダを用いて正極または負極活物質等を正極用または負極用集電体にそれぞれ塗布して電極を構成している。また、双極型の電池の場合には、集電体の一方の面にバインダを用いて正極活物質等を塗布して正極層を、反対側の面にバインダを用いて負極活物質等を塗布して負極層を有する双極型電極を構成している。
【0004】
このようなリチウムイオン電池においては、従来、集電体として金属箔(金属集電箔)が用いられてきた。近年、金属箔に代わって導電性材料が添加された樹脂から構成される、いわゆる樹脂集電体が提案されている。このような樹脂集電体は、金属集電箔と比較して軽量であり、電池の単位重量あたりの出力向上が期待される。
【0005】
例えば、特許文献1には、ポリメチルペンテンと導電性材料とを含み、特定のメルトマスフローレートを有する二次電池の集電体用の導電性樹脂フィルムが開示されている。しかし、ポリメチルペンテンは表面張力が低く、活物質層との密着性が比較的悪いため、界面抵抗が高いと推定される。
【0006】
特許文献2には、樹脂集電体用分散剤、樹脂及び導電性フィラーを含有する樹脂集電体用材料、並びに、該樹脂集電体用材料を有する樹脂集電体が開示されている。特許文献2には、樹脂集電体用材料に用いられる樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-216296号公報
【文献】国際公開第2015/005116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
樹脂集電体には、抵抗値が低く、出来るだけ薄い性質が求められている。しかし、特許文献1等に記載の樹脂集電体は、薄膜化するとピンホール等の欠陥が生じやすい。そのため、ピンホールの無い薄い樹脂集電体を得るためには、未だ改善の余地があると言える。
【0009】
本発明は、ピンホールの無い薄い負極用樹脂集電体の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、上記負極用樹脂集電体を用いたリチウムイオン電池用負極の製造方法、及び、リチウムイオン電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリオレフィンと導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物の溶融物を3層以上に積層して多層体を得る積層工程を備え、上記多層体の各層を構成するそれぞれの導電性樹脂組成物に含まれる上記ポリオレフィンは、温度230℃、荷重2.16kgの条件下でJIS K7210-1:2014に記載の方法で測定されるメルトマスフローレートが15~70g/10minであることを特徴とするシート状の負極用樹脂集電体の製造方法;上記の方法により負極用樹脂集電体を作製する工程と、上記負極用樹脂集電体のどちらか一方の表面に、負極活物質層を形成する工程とを備えることを特徴とするリチウムイオン電池用負極の製造方法;上記の方法によりリチウムイオン電池用負極を作製する工程を備えることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定のメルトマスフローレートを有するポリオレフィンと導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物の溶融物を3層以上に積層して1枚の一体化したフィルムに成形することにより、樹脂集電体の内部構造を多層化することができる。樹脂集電体の内部構造を多層化することにより、薄膜化してもピンホールの発生を抑制することができる。その結果、低抵抗であり、かつ薄膜化してもピンホールの無い負極用樹脂集電体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[負極用樹脂集電体の製造方法]
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法は、ポリオレフィンと導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物の溶融物を3層以上に積層して多層体を得る積層工程を備える。
【0013】
まず、ポリオレフィンと導電性フィラー、及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、導電性樹脂組成物を得る。混合の方法としては、導電性フィラーのマスターバッチを得てからさらにポリオレフィンと混合する方法、ポリオレフィン、導電性フィラー、及び、必要に応じてその他の成分のマスターバッチを用いる方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロール等を用いることができる。
【0014】
混合時の各成分の添加順序には特に限定はない。得られた混合物は、さらにペレタイザー等を用いてペレット化又は粉末化してもよい。
【0015】
その後、導電性樹脂組成物の溶融物を3層以上に積層して1枚の一体化したフィルム状に成形することにより、多層体が得られる。フィルム状に成形する方法として、フィルムの製造に使用することのできる公知の方法を使用することができる。具体的には、多層体の各層を構成するそれぞれの導電性樹脂組成物をダイ内で積層する共押出法等が挙げられる。共押出法は、Tダイ法、インフレーション法等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0016】
例えば、Tダイ法による共押出法の場合、多層体の各層を構成する導電性樹脂組成物の溶融物をTダイから共押出して、圧延(熱プレスによる圧縮を含む)することにより、導電性樹脂組成物の溶融物同士を融着させて1枚の一体化したフィルムとすることができる。
【0017】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法では、導電性樹脂組成物の溶融物を3層以上に積層して1枚の一体化したフィルムに成形することにより、樹脂集電体の内部構造を多層化することができる。樹脂集電体の内部構造を多層化することにより、フィルムを成膜する際、ある1層でピンホールが発生しても、他の層と同じ位置で重ならない限りピンホールが成長しないため、薄膜化してもピンホールの発生を抑制することができる。
【0018】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法においては、3層以上の多層体を得るために、例えば、導電性樹脂組成物を3層に積層してもよいし、導電性樹脂組成物を4層に積層してもよいし、導電性樹脂組成物を5層に積層してもよいし、導電性樹脂組成物を6層以上に積層してもよい。
【0019】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法においては、成分組成及び含有比率が同じ導電性樹脂組成物を積層してもよいし、成分組成及び含有比率が異なる導電性樹脂組成物を積層してもよい。成分組成及び含有比率が異なる導電性樹脂組成物を積層する場合、導電性樹脂組成物の成分組成及び含有比率がすべて異なっている必要はなく、成分組成及び含有比率が同じ導電性樹脂組成物が含まれていてもよい。
【0020】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法において、多層体の各層を構成するそれぞれの導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンは、温度230℃、荷重2.16kgの条件下でJIS K7210-1:2014に記載の方法で測定されるメルトマスフローレートが15~70g/10minであることを特徴としている。それぞれの導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンの上記メルトマスフローレートは、20~40g/10minであることが好ましい。
なお、導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンは2種以上のポリプロピレン等を含む混合物であってもよい。この場合、ポリオレフィンのメルトマスフローレートは、それぞれのメルトマスフローレートの加重平均値として計算して得ることができる。
【0021】
メルトマスフローレート(MFR)は、溶融状態にある樹脂の流動性を示す指標であり、MFRの値が大きいほど流動性が高い。
【0022】
上述のように、本発明の負極用樹脂集電体の製造方法においては、導電性樹脂組成物の溶融物を3層以上に積層して1枚の一体化したフィルムに成形することにより、多層体を得ることができる。メルトマスフローレートが15~50g/10minであるポリオレフィンを用いることにより、例えば、全体の厚さが90μm以下であるフィルムを良好に成膜することができる。
【0023】
導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。その他、炭素数4~30のα-オレフィン(1-ブテン、イソブテン、1-ヘキセン、1-デセン及び1-ドデセン等)を必須構成単量体とする重合体等でもよい。これらのポリオレフィンは、1種単独でもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0024】
ポリオレフィンの中でも、防湿特性や機械的強度の点で、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。ホモポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体である。ランダムポリプロピレンは、不規則に導入された少量(好ましくは4.5重量%以下)のエチレン単位を含有する共重合体である。ブロックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンの中にエチレンプロピレンゴム(EPR)が分散している組成物であり、ホモポリプロピレンの「海」の中にEPRを含む「島」が浮かぶ「海島構造」を有している。長鎖分岐構造を有するポリプロピレンとしては、特開2001-253910号公報等に記載されたポリプロピレン等が挙げられる。酸変性ポリプロピレンは、カルボキシル基を導入したポリプロピレンであり、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸とポリプロピレンとを有機過酸化物の存在下で反応する等の公知の方法で反応して得ることができる。
【0025】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法において、多層体の各層を構成するそれぞれの導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンの重量割合は、集電体の強度の観点から、それぞれの導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンと導電性フィラーとの合計重量に基づいて10~95重量%であることが好ましく、25~85重量%であることがより好ましい。
【0026】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法において、多層体の各層を構成するそれぞれの導電性樹脂組成物に含まれる導電性フィラーとしては、導電性を有する材料から選択されるが、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。ここで、電荷移動媒体として用いられるイオンとは、例えばリチウムイオン電池であればリチウムイオンである。
【0027】
導電性フィラーの材質としては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、導電性カーボン[黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)及びカーボンナノチューブ等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電材料(上記した導電性フィラーのうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。
【0028】
導電性フィラーの中では、電気的安定性の観点から、金属及び導電性カーボンが好ましい。金属の中では、ニッケル粒子が好ましい。導電性カーボンの中では、カーボンブラック、又は、カーボンブラックとカーボンナノチューブとの混合物が好ましく、アセチレンブラック、又は、アセチレンブラックとカーボンナノチューブとの混合物がより好ましい。
【0029】
導電性フィラーがニッケル粒子である場合、ニッケル粒子のメジアン径は特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、1~20μmであることが好ましい。
なお、メジアン径とは、体積分布に基づくメジアン径であり、レーザー式粒度分布測定装置(LA-920:堀場製作所製)によって測定される。
【0030】
また、導電性フィラーがカーボンブラックである場合、カーボンブラックの体積平均粒子径は特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、3~500nmであることが好ましい。
本明細書において、カーボンブラック等の導電性カーボンの体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0031】
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性材料として実用化されている形態であってもよい。
【0032】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法においては、多層体が、ポリオレフィンとニッケル粒子とを含む導電性樹脂組成物の層を少なくとも2層含むことが好ましい。多層体の少なくとも2層を構成する導電性樹脂組成物が導電性フィラーとしてニッケル粒子を含有する場合、樹脂集電体の電気的安定性を向上させることができる。
多層体の少なくとも2層を構成する導電性樹脂組成物が導電性フィラーとしてニッケル粒子を含有する場合、多層体の残りの層を構成する導電性樹脂組成物は導電性フィラーとしてニッケル粒子を含有していなくてもよいし、多層体のすべての層を構成する導電性樹脂組成物が導電性フィラーとしてニッケル粒子を含有していてもよい。
【0033】
導電性樹脂組成物が導電性フィラーとしてニッケル粒子を含有する場合、第1の導電性樹脂組成物と、上記第1の導電性樹脂組成物よりもニッケル粒子の重量割合の低い第2の導電性樹脂組成物とを、第1の導電性樹脂組成物、第2の導電性樹脂組成物、第1の導電性樹脂組成物の順に積層された構造を含むように積層することが好ましい。この場合、樹脂集電体と活物質層との接触抵抗を低くすることができる。
例えば、導電性樹脂組成物を3層に積層する場合には、第1の導電性樹脂組成物、第2の導電性樹脂組成物、第1の導電性樹脂組成物の順に、導電性樹脂組成物を4層に積層する場合には、第1の導電性樹脂組成物、第2の導電性樹脂組成物、第2の導電性樹脂組成物、第1の導電性樹脂組成物の順に、導電性樹脂組成物を5層に積層する場合には、第1の導電性樹脂組成物、第2の導電性樹脂組成物、第1の導電性樹脂組成物、第2の導電性樹脂組成物、第1の導電性樹脂組成物の順に積層することが好ましい。第1の導電性樹脂組成物が2つ以上である場合、それぞれの導電性樹脂組成物の成分組成及び含有比率は同じであってもよいし、異なるものが含まれていてもよい。同様に、第2の導電性樹脂組成物が2つ以上である場合、それぞれの導電性樹脂組成物の成分組成及び含有比率は同じであってもよいし、異なるものが含まれていてもよい。
【0034】
また、本発明の負極用樹脂集電体の製造方法においては、多層体が、導電性フィラーがニッケル粒子である導電性樹脂組成物の層と導電性フィラーが導電性カーボンである導電性樹脂組成物の層とを含むことが好ましい。この場合、多層体は、導電性フィラーがニッケル粒子である導電性樹脂組成物の層を少なくとも2層含むことが好ましい。導電性フィラーがニッケル粒子である導電性樹脂組成物と導電性フィラーが導電性カーボンである導電性樹脂組成物とを用いることにより、樹脂集電体全体の導電性フィラー密度を下げることができる。
例えば、導電性樹脂組成物を3層に積層する場合、導電性フィラーがニッケル粒子である導電性樹脂組成物、導電性フィラーがニッケル粒子である導電性樹脂組成物、導電性フィラーが導電性カーボンである導電性樹脂組成物の順に積層することが好ましい。このように、導電性フィラーが導電性カーボンである導電性樹脂組成物は、多層体の少なくとも一方の主面を構成するように、最表層に積層することが好ましい。
【0035】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法において、多層体の各層を構成するそれぞれの導電性樹脂組成物に含まれる導電性フィラーの重量割合は、導電性の観点から、それぞれの導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンと導電性フィラーとの合計重量に基づいて5~90重量%であることが好ましく、15~75重量%であることがより好ましい。
【0036】
導電性樹脂組成物に含まれる導電性フィラーがニッケル粒子である場合、該導電性樹脂組成物に含まれるニッケル粒子の重量割合は、該導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンとニッケル粒子との合計重量に基づいて55~90重量%であることが好ましく、60~75重量%であることがより好ましい。
【0037】
導電性樹脂組成物に含まれる導電性フィラーがカーボンブラックである場合、該導電性樹脂組成物に含まれるカーボンブラックの重量割合は、該導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンとカーボンブラックとの合計重量に基づいて15~45重量%であることが好ましく、20~30重量%であることがより好ましい。また、導電性樹脂組成物に含まれる導電性フィラーがカーボンブラックとカーボンナノチューブとの混合物である場合、該導電性樹脂組成物に含まれるカーボンブラックとカーボンナノチューブとの合計重量の割合は、該導電性樹脂組成物に含まれるポリオレフィンとカーボンブラックとカーボンナノチューブとの合計重量に基づいて10~40重量%であることが好ましく、15~30重量%であることがより好ましい。
【0038】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法において、導電性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリオレフィン及び導電性フィラーの他に、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤)等を適宜添加することができる。
【0039】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法において、多層体の厚さは特に限定されないが、90μm以下であることが好ましい。多層体の厚さを90μm以下とすることにより、樹脂集電体の抵抗値を低くすることができる。一方、多層体の厚さは、5μm以上であればよい。
なお、多層体の厚さは、後述する金属層の厚さを含まない厚さである。
【0040】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法は、多層体が有する2つの主面のうち、少なくとも一方の主面に、金属層を形成する工程をさらに備えることが好ましい。金属層は、抵抗低減層をして機能する層であり、例えば、スパッタリング法等の方法により形成することができる。
【0041】
金属層を構成する金属の種類としては、例えば、銅等が挙げられる。金属層の厚さは特に限定されないが、40~100nmであることが好ましい。
【0042】
[リチウムイオン電池用負極の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法は、上述した方法により負極用樹脂集電体を作製する工程と、上記負極用樹脂集電体の表面に負極活物質層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0043】
本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法において、負極活物質層は、負極活物質とともに、必要に応じてバインダ、導電助剤等の添加剤を用いて形成することができる。
【0044】
[リチウムイオン電池の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、上述した方法によりリチウムイオン電池用負極を作製する工程を備えることを特徴とする。
【0045】
本発明のリチウムイオン電池の製造方法は、さらに、正極用集電体の表面に正極活物質層を形成する工程を備える。正極活物質層は、正極活物質とともに、必要に応じてバインダ、導電助剤等の添加剤を用いて形成することができる。そして、セパレータを配置し、電解液を加えることによって、リチウムイオン電池が得られる。
【0046】
本発明のリチウムイオン電池用負極の製造方法、及び、本発明のリチウムイオン電池の製造方法において、負極活物質、正極活物質、電解液、セパレータ等の材料としては、公知の材料を使用することができる。正極活物質及び負極活物質は、アクリル系樹脂等の樹脂で被覆された被覆活物質であってもよい。正極用集電体は、金属集電箔であってもよいし、樹脂集電体であってもよい。
【0047】
例えば、電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらのうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPFである。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類が例示される。
【実施例
【0048】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
【0049】
<製造例1>
2軸押出機にて、高MFR成分のポリプロピレン(表1中、PP1で示す)[比重:0.9、MFR:60g/10min、融点:165℃]22.4部、低MFR成分のポリプロピレン(表1中、PP2で示す)[比重:0.9、MFR:8.2g/10min、融点:165℃]5.6部、分散剤[比重:0.95、MFR:230g/10min、酸価:26、融点:142℃]2.0部、及び、導電性フィラーのニッケル粒子[商品名「Type255」、Vale社製、メジアン径:20μm]70部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して導電性樹脂組成物(Z-1)を得た。
【0050】
表1の「ポリオレフィンMFR」には、PP1とPP2との混合物のMFRを記載している。
【0051】
<製造例2>
PP1を26.1部、PP2を6.5部、分散剤を2.4部、ニッケル粒子を65部に変更したことを除いて、製造例1と同様の方法により導電性樹脂組成物(Z-2)を得た。
【0052】
<製造例3>
PP1を29.9部、PP2を7.5部、分散剤を2.6部、ニッケル粒子を60部に変更したことを除いて、製造例1と同様の方法により導電性樹脂組成物(Z-3)を得た。
【0053】
<製造例4>
PP1を33.6部、PP2を8.4部、分散剤を3.0部、ニッケル粒子を55部に変更したことを除いて、製造例1と同様の方法により導電性樹脂組成物(Z-4)を得た。
【0054】
<製造例5>
PP1を用いず、PP2を32.7部、分散剤を2.3部、ニッケル粒子を65部に変更したことを除いて、製造例1と同様の方法により導電性樹脂組成物(Z-5)を得た。
【0055】
<製造例6>
PP2を21.5部、分散剤を1.5部、ニッケル粒子を77部に変更したことを除いて、製造例5と同様の方法により導電性樹脂組成物(Z-6)を得た。
【0056】
<製造例7>
PP2を用いず、PP1を74.7部、分散剤を5.3部、及び、導電性フィラーをアセチレンブラック[商品名「デンカブラックLi-400」、デンカ(株)製、体積平均粒子径:48nm、比表面積:39m/g]20部に変更したことを除いて、製造例1と同様の方法により導電性樹脂組成物(Z-7)を得た。
【0057】
<製造例8>
PP1を70.0部、分散剤を5.0部、アセチレンブラックを25部に変更したことを除いて、製造例7と同様の方法により導電性樹脂組成物(Z-8)を得た。
【0058】
<製造例9>
PP2を用いず、PP1を76.5部、分散剤を5.5部、導電性フィラーをアセチレンブラック[商品名「デンカブラックLi-400」、デンカ(株)製、比表面積:39m/g、平均一次粒子径:48nm]10部、及び、カーボンナノチューブ[商品名「1201YJE」、NANOSTRUCTURED & AMORPHOUS MATERIALS社製](表1中、CNTと表記)8部に変更したことを除いて、製造例1と同様の方法により導電性樹脂組成物(Z-9)を得た。
【0059】
<貫通抵抗値の測定>
表1には、以下の方法により測定した導電性樹脂組成物(Z-1)~(Z-9)の貫通抵抗値を示している。
【0060】
各導電性樹脂組成物をTダイから押し出し、熱プレス機により圧延することで、膜厚120μmの測定用フィルムをそれぞれ得た。
測定用フィルムを短冊φ15mmの試験片に裁断し、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各測定用フィルムの抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での測定用フィルムの抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその測定用フィルムの抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(1.77cm)をかけた値を貫通抵抗値とした。
貫通抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×1.77(cm
【0061】
【表1】
【0062】
<実施例1>
導電性樹脂組成物(Z-1)/導電性樹脂組成物(Z-2)/導電性樹脂組成物(Z-2)をTダイから3層共押出して導電性フィルムを製造し、導電性フィルムの膜厚測定とピンホール試験を下記の方法で行った。押出条件を変えることによって導電性フィルムの膜厚を変更して導電性フィルムの製造とピンホール試験とを繰り返し、ピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚85μm)を樹脂集電体(X-1)とした。
【0063】
<実施例2>
導電性樹脂組成物(Z-1)/導電性樹脂組成物(Z-2)/導電性樹脂組成物(Z-3)をTダイから3層共押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚70μm)を樹脂集電体(X-2)とした。
【0064】
<実施例3>
導電性樹脂組成物(Z-3)/導電性樹脂組成物(Z-3)/導電性樹脂組成物(Z-3)をTダイから3層共押出して導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚50μm)を樹脂集電体(X-3)とした。
【0065】
<実施例4>
導電性樹脂組成物(Z-1)/導電性樹脂組成物(Z-2)/導電性樹脂組成物(Z-2)/導電性樹脂組成物(Z-1)をTダイから4層共押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚90μm)を樹脂集電体(X-4)とした。
【0066】
<実施例5>
導電性樹脂組成物(Z-3)/導電性樹脂組成物(Z-3)/導電性樹脂組成物(Z-7)をTダイから3層共押出して導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚45μm)を樹脂集電体(X-5)とした。
【0067】
<実施例6>
導電性樹脂組成物(Z-2)/導電性樹脂組成物(Z-3)/導電性樹脂組成物(Z-8)をTダイから3層共押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚65μm)を樹脂集電体(X-6)とした。
【0068】
<実施例7>
導電性樹脂組成物(Z-2)/導電性樹脂組成物(Z-3)/導電性樹脂組成物(Z-9)をTダイから3層共押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚60μm)を樹脂集電体(X-7)とした。
【0069】
<実施例8>
導電性樹脂組成物(Z-1)/導電性樹脂組成物(Z-2)/導電性樹脂組成物(Z-1)/導電性樹脂組成物(Z-2)/導電性樹脂組成物(Z-1)をTダイから5層共押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚90μm)を樹脂集電体(X-8)とした。
【0070】
<実施例9>
導電性樹脂組成物(Z-3)/導電性樹脂組成物(Z-3)/導電性樹脂組成物(Z-7)をTダイから3層共押出して導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚45μm)の導電性樹脂組成物(Z-3)側に、厚さ40nmの銅膜をスパッタリング法により形成したものを樹脂集電体(X-9)とした。
【0071】
<比較例1>
導電性樹脂組成物(Z-5)/導電性樹脂組成物(Z-6)/導電性樹脂組成物(Z-5)をTダイから3層共押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚120μm)を樹脂集電体(X´-1)とした。
【0072】
<比較例2>
導電性樹脂組成物(Z-1)/導電性樹脂組成物(Z-4)をTダイから2層共押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚60μm)を樹脂集電体(X´-2)とした。
【0073】
<比較例3>
導電性樹脂組成物(Z-1)/導電性樹脂組成物(Z-2)をTダイから2層共押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚100μm)を樹脂集電体(X´-3)とした。
【0074】
<比較例4>
導電性樹脂組成物(Z-5)をTダイから1層押出して、熱プレス機により圧延することで導電性フィルムを製造した。実施例1と同様にしてピンホールがなく最も薄く出来た導電性フィルム(膜厚110μm)を樹脂集電体(X´-4)とした。
【0075】
[導電性フィルムの試験方法]
<膜厚測定>
導電性フィルムの膜厚は、マイクロメーター[ミツトヨ製]を用いて、各サンプル5か所測定し、その平均値をそのサンプルの膜厚とした。
【0076】
<ピンホール試験>
SUS製の容器にメタノールを厚さ1~2mm程度入れたものを準備し、そこに10cm×20cmに裁断した導電性フィルムを浮かせて、導電性フィルムが沈まないように注意しながら導電性フィルムの上面を軽くたたき、樹脂の表面にメタノールが染み出てこないかを目視で確認した。1か所でもメタノールが染み出てきたらピンホールがあるとみなす。
【0077】
[樹脂集電体の評価方法]
<薄膜化>
上記のピンホール試験においてピンホールがなく、最も薄く製造できた導電性フィルムの膜厚が90μm以下であった場合を○(良)、90μmを超えた場合を×(不良)とした。
【0078】
<貫通抵抗値の測定>
樹脂集電体(X-1)~(X-9)及び(X´-1)~(X´-4)を短冊φ15mmの試験片に裁断し、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各樹脂集電体の抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその樹脂集電体の抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(1.77cm)をかけた値を貫通抵抗値とした。
貫通抵抗値(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×1.77(cm
貫通抵抗値の基準は、抵抗値が200Ω・cm以下である場合を○(良)、200Ω・cmを超える場合を×(不良)とする。
【0079】
各評価結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2より、メルトマスフローレートが15~70g/10minであるポリオレフィンと導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物を3層以上に積層して樹脂集電体を作製した実施例1~9では、貫通抵抗値が低く、かつ、厚さが90μm以下でもピンホールが生じないことが確認された。
【0082】
一方、メルトマスフローレートが15g/10min未満であるポリオレフィンと導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物を3層に積層して樹脂集電体を作製した比較例1では、ピンホールが生じない厚さを90μm以下とすることができていない。
【0083】
メルトマスフローレートが15~70g/10minであるポリオレフィンと導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物を2層に積層して樹脂集電体を作製した場合、比較例2では、ピンホールが生じない厚さを90μm以下とすることができているが、比較例3では、ピンホールが生じない厚さを90μm以下とすることができていない。
【0084】
また、メルトマスフローレートが15~70g/10minであるポリオレフィンと導電性フィラーとを含む導電性樹脂組成物を1層に積層して樹脂集電体を作製した比較例4では、ピンホールが生じない厚さを90μm以下とすることができていない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の負極用樹脂集電体の製造方法は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター及びハイブリッド自動車、電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池用の負極用集電体を製造する方法として有用である。