(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】計測治具
(51)【国際特許分類】
G01C 5/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G01C5/00 Z
(21)【出願番号】P 2018212914
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】村松 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】門脇 均
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 勇太郎
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-111714(JP,A)
【文献】特開昭62-274210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0221067(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0226257(US,A1)
【文献】特開2014-062432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの頂部の位置を計測するための計測治具であって、
上面側に計測対象となる平面部が形成された頂板を少なくとも一つ備えた筐体と、
前記頂板の下面側において、前記平面部と平行な底部を備え、前記底部が前記レールの頂部に接する支持部と、
前記下面側において、前記レールの両側面を押圧して把持する押圧部と、を備え、
前記押圧部は、前記レールの一側面側において、長さが調整されて前記筐体の前記レールの短手方向から見た傾きを調整するように構成されている、
計測治具。
【請求項2】
前記支持部は、前記下面側において前記平面部から下方に所定距離離間して、軸線が前記平面部と平行に軸支されると共に、底部が前記レールの頂部に接触する少なくとも2個の車輪を備える、
請求項1に記載の計測治具。
【請求項3】
前記押圧部は、
前記下面側において、前記レールの一側面に向かって突出してして設けられ、前記レールの一側面を先端部で押圧し、長さが伸縮自在である第1押圧部と、
前記下面側において、前記第1押圧部に対して鉛直方向に沿った位置に前記レールの一側面に向かって突出してして設けられ、前記一側面を先端部で押圧し、長さが調整自在である第2押圧部と、
前記下面側において、前記レールの他側面に向かって突出してして設けられ、前記他側面を先端部で押圧する第3押圧部と、を備える、
請求項1または2に記載の計測治具。
【請求項4】
前記第1押圧部、前記第2押圧部、および前記第3押圧部のそれぞれの前記先端部には、押圧対象面を移動自在に押圧するボールローラが設けられている、
請求項3に記載の計測治具。
【請求項5】
前記第2押圧部は、前記平面部が前記レールの短手方向から見て水平にするために長さが調整されるように構成されている、
請求項3または4に記載の計測治具。
【請求項6】
前記第1押圧部は、前記レールの一側面を押圧する方向に付勢されている、
請求項3から5のうちいずれか1項に記載の計測治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定対象に固定されたレール状の部材の上端の位置を計測するための計測治具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートが打設された後、コンクリートの表面を平滑に仕上げる工程がある。これに関連して特許文献1には、コンクリートの表面を均すための幅広のスクリード機を用いたコンクリート床の構築工法が開示されている。この工法によれば、スクリード機が所定の高さを維持しつつ、コンクリートの表面を移動しながらコンクリートの表面を均している。このスクリード機は、レーザ発信器から照射されたレーザ光を受光してスクリード機の高さを自動調整している。この工法を用いる場合、レーザ受信器を用いてスクリード機の高さを維持する機構が必要となり、装置構成が複雑化する。これに関して、所定の高さに設置されたレールの上をスクリード機で移動させる工法がある。この工法によれば、スクリード機の装置構成を簡略化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリード機を用いた工法にレールを用いると、コンクリートの表面のレベルはレールの設置誤差の精度に依存する。従って、この工法によれば、レールの設置精度によりコンクリートの表面のレベルが不均一になる虞がある。そのため、スクリード機にレールを用いる場合、コンクリートの表面を均一に施工するためにレールのレベルの測量を正確に行う必要がある。しかしながら、レールが傾いて設置されていたり、レールの頂面が曲面で形成されていたりした場合、レールのレベル測量が不正確になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、簡便な操作によりレールの測量精度を向上させることができるレール状部材の上端の位置を計測するための計測治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達するために、本発明は、レールの頂部の位置を計測するための計測治具であって、上面側に計測対象となる平面部が形成された頂板を少なくとも一つ備えた筐体と、前記頂板の下面側において、前記平面部と平行な底部を備え、前記底部が前記レールの頂部に接する支持部と、前記下面側において、前記レールの両側面を押圧して把持する押圧部と、を備え、前記押圧部は、前記レールの一側面側において、長さが調整されて前記筐体の前記レールの短手方向から見た傾きを調整するように構成されている計測治具である。
【0007】
本発明によれば、筐体をレールに載置した際に、収容空間内の筐体の底部がレールの頂面に接触し、押圧部により筐体の傾きが筐体上面側の平面部が水平になるように調整されると、底部がレールの頂面の最大のレベルとなる頂部に接触する。計測治具の収容空間内の底部は、平面部から下方に所定距離離間しているため、平面部のレベルを計測すると、レールのレベルを正確に算出することができる。
【0008】
また、本発明に係る計測治具は、前記支持部が前記下面側において前記平面部から下方に所定距離離間して、軸線が前記平面部と平行に軸支されると共に、底部が前記レールの頂部に接触する少なくとも2個の車輪を備えるよう構成されていてもよい。
【0009】
本発明によれば、2個の車輪によってレールの頂面に筐体が支持されるので、筐体の平面部をレールの軸線方向沿って平行に維持することができる。また、本発明によれば、車輪により筐体をレール上で走行させることで、測量における盛り替えを容易にすることができる。
【0010】
また、本発明に係る計測治具は、前記押圧部が前記下面側において、前記レールの一側面に向かって突出してして設けられ、前記レールの一側面を先端部で押圧し、長さが伸縮自在である第1押圧部と、前記下面側において、前記第1押圧部に対して鉛直方向に沿った位置に前記レールの一側面に向かって突出してして設けられ、前記一側面を先端部で押圧し、長さが調整自在である第2押圧部と、前記下面側において、前記レールの他側面に向かって突出してして設けられ、前記他側面を先端部で押圧する第3押圧部と、を備えるよう構成されていてもよい。
【0011】
本発明によれば、第1押圧部と第2押圧部とでレールの一側面を押圧すると共に、第3押圧部でレールの他側面を押圧することで、筐体をレールに確実に保持する共に、第2押圧部の長さを調整すると第3押圧部を支点として筐体のレールに対する傾きを調整することができる。
【0012】
また、本発明に係る計測治具は、前記第1押圧部、前記第2押圧部、および前記第3押圧部のそれぞれの前記先端部には、押圧対象面を移動自在に押圧するボールローラが設けられているよう構成されていてもよい。
【0013】
本発明によれば、ボールローラが回転してレールの側面を移動することにより筐体をレールに容易に設置させることを可能とすると共に、第1押圧部、第2押圧部、および第3押圧部がレールを両側面から把持しつつ、筐体をレールに沿って移動させることができる。
【0014】
また、本発明に係る計測治具は、前記第2押圧部は、前記平面部が前記レールの短手方向から見て水平にするために長さが調整されるよう構成されていてもよい。
【0015】
本発明によれば、前記第2押圧部の長さを伸縮させることで、押圧部がレールを把持する角度を変化させて筐体の傾きを調整し、レールの頂部のレベルを計測可能とするために平面部を水平にすることができる。
【0016】
また、本発明に係る計測治具は、前記第1押圧部が前記レールの一側面を押圧する方向に付勢されているよう構成されていてもよい。
【0017】
本発明によれば、押圧部がレールに押圧力を与えて筐体をレールに対して停止させることを可能とすると共に、第2押圧部の長さを調整してレールに対する筐体の傾きを変化させても第1押圧部が筐体の傾きに追従して伸縮してレールに押圧力を与え続けるため、レールを確実に把持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る計測治具によれば、簡便な操作によりレールの測量精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明が適用されるトラススクリードの構成を示す図である。
【
図2】トラススクリードが載置されるレールの構成を示す断面図である。
【
図3】レールの間にコンクリートが打設された状態を示す断面図である。
【
図4】レールの頂部のレベルの計測誤差の原因を示す図である。
【
図8】傾いたレールに載置された計測治具の状態を示す図である。
【
図9】傾いたレールにおいて筐体の傾きを調整した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明のコンクリート打設時のレベル出し方法の実施形態について説明する。
【0021】
図1に示されるように、打設後のコンクリートの表面を幅広く均すために、トラス構造を備えるトラススクリード1が用いられる。トラススクリード1は、例えば、長尺の角棒等で形成された定木でずり均しが行われた後のコンクリートの表面を移動しながら仕上げ均しを行うものである。
【0022】
トラススクリード1は、例えば、一対のレールR上を跨ぐように載置された後、レールRの軸線方向に沿って動力または人力によってウインチ(不図示)でワイヤーを巻き取ることにより移動する。レールRは、コンクリートの打設箇所に沿って所定の高さで延在するように形成されている。レールRは、打設するコンクリートの型枠となると共に、トラススクリード1がコンクリートの表面を天端とするように均しながら移動するためのガイドとなる。
【0023】
トラススクリード1は、例えば、一つのトラスの単位となるトラスユニット2が複数個連結された本体部10を備える。本体部10のスパンは、一対のレールR間の距離により決定される。本体部10の底部には、底面が帯状の板状体からなるブレード(鏝部15)が取り付けられている。鏝部15の上方には、例えば、長手方向に沿って複数の振動バイブレータ18が等間隔で配置されている。振動バイブレータ18は、トラスの部材を介して鏝部15に振動を与える。
【0024】
複数の振動バイブレータ18は、例えば、本体部10の底部に配置されたシャフト(不図示)の回転により振動を発生する。シャフトがエンジンや空気圧等の動力源(不図示)で駆動された際、シャフトが回転し、振動が鏝部15伝達される。これにより、荒均しが行われた後のコンクリートの表面に鏝部15が振動を与えることでコンクリートの表面が均される。
【0025】
本体部10の上部の複数の連結部には、本体部10の撓みを調整するための撓み調整部11が設けられている。撓み調整部11は、例えば、左ネジと右ネジを備えるターンバックルである。ターンバックルを締めると撓みが増え、緩めると撓みが減る。一対のレールR間の距離が長く、本体部10が下方に撓む場合、撓み調整部11が調整されて鏝部15の底面を直線状にしてコンクリートの天端を形成する。
【0026】
図2に示されるように、地面などにレベルコンクリートC1が打設され硬化した後、レベルコンクリートC1の上面に一対のレールR1,R2(以下、区別を要しない場合、適宜レールRともいう)が対向して平行に敷設される。一対のレールR1,R2は、例えば、L字断面の鋼材である。レールR1は、断面から見て水平方向のフランジR1Aと、鉛直方向のウェブR1Bとを備える。レールR2は、レールR1と同様に、断面から見て水平方向のフランジR2Aと、鉛直方向のウェブR2Bとを備える。
【0027】
一対のレールR1,R2は、それぞれのフランジR1A,R2Aが外側となるように配置される。レベルコンクリートC1には、一対のレールR1,R2を固定するための孔が穿孔される。穿孔された孔とフランジR1A,R2Aに形成された穴に挿入されたアンカーボルトMにナットNが締め込まれることで、一対のレールR1,R2は、レベルコンクリートC1に固定される。
【0028】
図3に示されるように、一対のレールR1,R2の間には、コンクリートC2が打設される。レールR1のウェブR1BおよびレールR2のウェブR2Bは、スラブ用のコンクリートC2の型枠となる。
【0029】
コンクリートC2が打設された後、締固め等の工程を経てコンクリートC2の表面の荒均しが行われる。コンクリートC2の表面の荒均しには、例えば、鏝や定木等が用いられる。作業者は、コンクリートC2の表面の荒均しが行われた後、トラススクリード1を操作してコンクリートC2の表面上をレールR1,R2の長手方向に移動させ、仕上げ用の均しを行う。
【0030】
作業者は、トラススクリード1を所定距離移動させた後、次の測量位置において測量を行い、コンクリートC2の表面の荒均しを行ってレベル出しをする。作業者は、上記工程を繰り返し、コンクリートC2の表面の仕上げ均しおよびトラススクリード1による仕上げ均しを行う。
【0031】
トラススクリード1を用いてコンクリートC2の表面を平面状にするためには、レールRのレベルが水平面に一致するようにレールRが正確に設置されていることに依存する。トラススクリード1の鏝部15は、レールRの頂面Raに沿って移動する。レールRが傾いていた場合、トラススクリード1の鏝部15は、レールRの頂面Raにおける最大レベルの位置(頂部)を通過する。従って、トラススクリード1を用いて平滑なコンクリートの表面を形成するためには、レールRの頂面Raにおける頂部の位置の正確な測量が求められる。
【0032】
図4に示されるように、レールRは傾いて設置されていたり、頂面Raが曲面となっていたりするため、レールRの頂面Raにおける最大レベルを正確に測量することが困難となる。
【0033】
図5から
図7に示されるように、計測治具20は、レールRに載置されて、レールRの頂部を正確に計測するための治具である。計測治具20は、例えば、レールRの頂面Raに載置される筐体21と、レールRの両側面を押圧して把持する押圧部40とを備える。
【0034】
筐体21は、上面側に計測対象の平面部Tを備える。筐体21は、レールRに載置された際に平面部TがレールRの頂面Raから上方に所定距離離間した位置に配置されるように構成されている。平面部T上に水準器L等の傾斜を検出する器具を載置して、後述のように押圧部40を調整して平面部Tが水平となるように筐体の傾きを調整する。
【0035】
筐体21は、例えば、矩形の板状体で形成された頂板22を備える。頂板22の上面は、計測対象となる平面部Tである。頂板22の一端22aには、鉛直方向に垂下した第1側板23が設けられている。第1側板23は、矩形の板状体で形成されている。また、頂板22の他端22bには、鉛直方向に垂下した第2側板24が設けられている。第2側板24は、第1側板23と同形の矩形の板状体で形成されている。第1側板23の一面23a側と第2側板24の一面24a側とは、対向して平行に配置されている。
【0036】
このような構成により、筐体21の下面側には、レールRを上方から覆うように収容する収容空間Sが形成されている。即ち、収容空間Sは、頂板22の下面22c、第1側板23の一面23a、および第2側板24の一面24aにより囲まれた空間である。
【0037】
収容空間S内において、頂板22の下方には、筐体21をレールRに対して支持するための支持部30が設けられている。支持部30は、例えば、2個の車輪31,32を備える。車輪31,32は、例えば、所定幅を有するボールベアリングである。車輪31,32は、収容空間S内において平面部Tから下方に所定距離離間して配置されている。車輪31,32は、軸線Pが平面部Tと平行になるように軸支されている。
【0038】
車輪31は、例えば、収容空間S内において、第1側板23と第2側板24とを貫通したシャフト33により回転自在に軸支されている。シャフト33は、例えば、先端部33aが第2側板24に形成された貫通孔に挿通され、後端部33bが第1側板23に設けられた貫通孔に挿通されている。シャフト33の後端部33bは、第1側板23の他面23b側から突出している。シャフト33の後端部33bは、シャフト33の径よりも大きい径となるように形成されている。シャフト33の先端部33aは、第2側板24の他面24b側から突出している。シャフト33の先端部33aの突出部分には、シャフト33の径よりも小さい径となるように溝33cがシャフト33の周方向に沿って形成されている。溝33cには、シャフト33の脱落を防止するためのストッパCが嵌め込まれている。ストッパCは、例えば、CリングやEリングである。
【0039】
シャフト33の第1側板23側には、段差33dが設けられている。段差33dは、シャフト33が挿通された車輪の位置が収容空間Sの中心となるように車輪31の一面31a側を保持する位置に形成されている。段差33dは、車輪31がシャフト33の軸線方向において第1側板23側へ移動することを規制する。段差33dをシャフト33に形成する代わりに筒状のカラーを用いてもよい。
【0040】
シャフト33の第2側板24側は、シャフト33の径よりも大きい外径を有する筒状のカラーFに挿通されている。カラーFは、車輪31の他面31b側を保持し、車輪31がシャフト33の軸線方向において第2側板24側へ移動することを規制する。車輪32も車輪31と同様な構成によりシャフト34に軸支されている。
【0041】
このような構成により、車輪31,32は、底部が平面部Tと平行で、且つ、底部が平面部Tから下方に所定距離離間するように配置される。そうすると、筐体21をレールRに載置した際に、車輪31,32の底部がレールRの頂面Raに接触し、平面部Tがレールの頂面Raから上方に所定距離離間した位置に固定される。
【0042】
上述したように、レールRは、傾いて設置されていたり、頂面Raが水平でなかったりするので、筐体21には、筐体21を水平に保ちつつ、レールRに対して固定するための押圧部40が設けられている。
【0043】
押圧部40は、例えば、レールRの両側面を押圧して把持し、筐体21をレールRに対して停止させるように構成されている。また、押圧部40は、筐体21にレールRの軸線方向の力が加えられた場合に筐体21をレールRに対して移動させるように構成されている。更に、押圧部40は、レールRの断面方向から見て平面部Tが水平となるように筐体21の傾きを調整するように構成されている。
【0044】
押圧部40は、例えば、収容空間S内において、レールRの一側面Rbを押圧する第1押圧部41及び第2押圧部42と、レールRの他側面Rcを押圧する第3押圧部43とを備える。
【0045】
第1押圧部41は、基端が第1側板23に支持され、先端がレールRの一側面Rbに向かって突出してして設けられた棒状の部材である。第1押圧部41の先端には、押圧対象面であるレールRの一側面Rbを移動自在に押圧するボールローラBが設けられている。第1押圧部41は、収容空間S内において、軸線方向に沿った長さが伸縮自在に形成されている。
【0046】
第1押圧部41は、弾性体であるバネK1を備える。バネK1は、第1押圧部41を軸線方向に沿った長さが伸長する方向に付勢している。即ち、第1押圧部は、バネK1によりレールRの一側面Rbを押圧する方向に付勢されている。バネK1は、例えば、コイルばねであり、第1押圧部41に摺動自在に挿通されている。
【0047】
第1押圧部41は、レールRが無い状態では、バネK1の付勢力が解放され、全長が伸長して先端の位置がレールRの一側面Rbの位置よりも第2側板24側になるように伸長する。これにより、第1押圧部41は、後述する第2押圧部42の調整範囲内でレールRが筐体21に対して傾いた場合でもレールRの一側面Rbを常に押圧することができる。
【0048】
第2押圧部42は、基端が第1側板23に支持され、先端がレールRの一側面Rbに向かって突出してして設けられた棒状の部材である。第2押圧部42は、収容空間S内において、第1押圧部41に対して鉛直方向下方向に沿った位置に取り付けられている。第2押圧部42の先端には、押圧対象面であるレールRの一側面Rbを移動自在に押圧するボールローラBが設けられている。
【0049】
第2押圧部42の基端には、ネジ溝が形成されており、第1側板23に設けられたネジ穴に螺入されている。第2押圧部42の後端部は、第1側板23の他面23bから突出している。第2押圧部42の後端には、ダイヤルDが取り付けられている。ダイヤルDを回す回転方向を変えることにより、収容空間S内における第2押圧部42の軸線方向に沿った長さが伸縮自在に調整される。
【0050】
ダイヤルDと第1側板23の他面23bとの間には、弾性体であるバネK2が取り付けられている。バネK2には、第2押圧部42が挿通されている。バネK2は、ダイヤルDを第1側板23から離間する方向に付勢力を与え、第1側板23に対する第2押圧部42のがたつきや緩みが防止される。
【0051】
第3押圧部43は、基端が第2側板24に支持され、先端がレールRの他側面Rcに向かって突出してして設けられた長さが一定の棒状の部材である。第3押圧部43は、レールRの短手の断面方向(x軸方向)から見て軸線が第1押圧部41と第2押圧部42の間になるように配置されている。第3押圧部43は、少なくとも水平方向に2個設けられている。
【0052】
第3押圧部43は、第1押圧部41および第2押圧部42がレールRの一側面Rbを押圧することによりレールRの他側面Rcを押圧してレールRに反力を与える。上記の構成により。押圧部40は、レールRの両側面を十字の方向に把持する。押圧部40は、棒状だけでなく、板状で構成されていてもよい。また、押圧部40は、ボールローラBでレールRの両側面を押圧するだけでなく、板状のもので押圧するように構成されていてもよい。
【0053】
図8に示されるように、レールRが短手の断面方向から見て鉛直方向に対して傾いていた場合、筐体21は、水平面に対して傾いてレールR上に載置される。この時、作業者は、水準器Lを見ながらダイヤルDを回して第2押圧部42の長さを調節し平面部Tが水平となるように筐体21の傾きを調整する。
図8の例では、収容空間S内において、第2押圧部42を伸長する方向にダイヤルDを調整する。
【0054】
この時、筐体21は、第3押圧部43を支点として回転する。第1押圧部41は、レールRの上方に押圧されて長さが短縮され、レールRの一側面Rbを押圧する。レールRの傾きが反対方向である場合は、収容空間S内において、第2押圧部42を短縮する方向にダイヤルDを調整すればよい。この場合、第1押圧部41は、レールの傾きに応じて長さが伸長し、レールRの一側面Rbを押圧する。
【0055】
図9に示されるように、作業者は、水準器Lが水平を示す位置でダイヤルDの回転を止め、頂板22を上部から押さえて車輪31,32の底部をレールRの頂面Raに確実に接触させる。そうすると、筐体21は、レールRの頂面Raの最大レベルの位置(頂部)に載置される。
【0056】
作業者は、平面部Tの測量における基準面からの高さを計測する。車輪31,32の底部は、平面部Tから所定距離離間しているので、計測結果から所定距離の値を差し引けばレールRの頂面Raの頂部の位置が算出される。
【0057】
作業者は、レールRの次の計測地点を計測する際、計測治具20をレールR上で走行させる。この時、車輪31,32がレールRの頂面Ra上を走行すると共に、押圧部40においては各ボールローラBがレールRの押圧対象面を転がりながら移動するので、作業者は、軽い力を与えるだけで計測治具20をレールR上で移動させることができる。
【0058】
作業者は、計測治具20をレールRから外して、次の計測地点に移しかえてもよい。この時、押圧部40の各ボールローラBがレールRの押圧対象面を転がりながら移動するので、作業者は、計測治具20を容易に移しかえることができる。
【0059】
上述したように、計測治具20によれば、レールRの頂面Raが水平でなくても、レールRの頂面Raの頂部に接する仮想的な水平面を算出するための測量を行うことができ、測量の誤差を大幅に低減することができる。また、計測治具20によれば、トラススクリード1がレールRに設置されるレベルを水平面に変換することができる。更に、計測治具20によれば、測量時の取り付けや盛り替え、調整作業を簡略化することができ、従来の測量方法に比して作業時間を大幅に削減することができる。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、筐体において車輪は無くてもよく、頂板だけを用いてもよい。その場合、車輪の代わりに下方に突出して形成された突起や、シャフトだけを用いてもよい。また、また、筐体は、上部に平面領域が形成されており、且つ、レールの収容空間が形成されていればどのようなものを用いてもよい。また、計測治具は、レールの計測だけでなく、鉛直方向に起立したあらゆる部材の計測に適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…トラススクリード、2…トラスユニット、10…本体部、11…調整部、15…鏝部、18…振動バイブレータ、20…計測治具、21…筐体、22…頂板、22a…一端、22b…他端、22c…下面、23…第1側板、23a…一面、23b…他面、24…第2側板、24a…一面、30…支持部、31…車輪、31a…一面、31b…他面、32…車輪、33…シャフト、33a…先端部、33b…後端部、33c…溝、33d…段差、34…シャフト、40…押圧部、41…第1押圧部、42…第2押圧部、43…第3押圧部、B…ボールローラ、C…ストッパ、C1…レベルコンクリート、C2…コンクリート、D…ダイヤル、F…カラー、K1、K2…バネ、L…水準器、M…アンカーボルト、N…ナット、P…軸線、R、R1、R2…レール、R1A…フランジ、R1B…ウェブ、R2A…フランジ、R2B…ウェブ、Ra…頂面、Rb…一側面、Rc…他側面、S…収容空間、T…平面部