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特許7145744ソイルセメントの強度推定方法および強度推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ソイルセメントの強度推定方法および強度推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20220926BHJP
   E02D 5/30 20060101ALI20220926BHJP
   E02D 5/54 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G01N33/38
E02D5/30 Z
E02D5/54
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018231865
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020094872
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 侑也
(72)【発明者】
【氏名】浅香 美治
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-59325(JP,A)
【文献】特開2011-75456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0103119(US,A1)
【文献】特開2018-199935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
E02D 5/30
E02D 5/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土質材料と高炉セメントと水とからなるソイルセメントの強度を推定する方法であって、
ソイルセメントに用いる高炉セメントの試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量の高炉セメントを所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求めるステップと、
高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ求めておき、この関係と前記ステップで求めた酸の量から、試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求めるステップと、
高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントと水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ求めておき、この関係と、前記ステップで求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクにおける高炉セメントと水の質量比から、ソイルセメントの強度を求めるステップとを備えることを特徴とするソイルセメントの強度推定方法。
【請求項2】
土質材料と高炉セメントと水とからなるソイルセメントの強度を推定する装置であって、
ソイルセメントに用いる高炉セメントの試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量の高炉セメントを所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求める手段と、
高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ求めておき、この関係と前記手段で求めた酸の量から、試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求める手段と、
高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントと水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ求めておき、この関係と、前記手段で求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクにおける高炉セメントと水の質量比から、ソイルセメントの強度を求める手段とを備えることを特徴とするソイルセメントの強度推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の根固め部などを構成するソイルセメントの強度推定方法および強度推定装置に関し、特に、高炉セメントを使用したソイルセメントの強度推定方法および強度推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本出願人は、杭の根固め部のソイルセメントの強度を推定する方法として、いくつかの方法を既に提案している(例えば、特許文献1を参照)。このような強度推定方法の中で、次の(1)~(3)の工程を備えたものがある。
【0003】
(1)ボーリング調査の際に採取した支持層材料を用いて、あらかじめセメント水比と圧縮強度の関係を求める関係式を作成する。
【0004】
(2)実際に施工を行う根固め部から、セメントミルクを採取し、セメント水比を算出する。根固め液中の水分量の算出には、例えば赤外線水分計や電子レンジを用いて水分を逸散させる方法を使用する。また、セメント量の算出には、水分量を算出した後の試料を所定量の塩酸に溶解させて水酸化ナトリウムで滴定を行う方法や、酸に溶解させた際の溶解熱を算出する方法などにより求めることができる。
【0005】
(3)セメント水比を求めたのち、例えば図6に示すようなそれぞれの地盤材料の工学的分類によって分けられる回帰式によって、強度を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-119337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の従来の強度推定方法は、普通ポルトランドセメントを使用したソイルセメントに好適であるが、高炉セメントを使用したソイルセメントへの適用性については明らかにされていなかった。例えば、ソイルセメントとして多用される高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末は含有率30~60%の間の広い範囲で存在するため、高炉スラグ微粉末の含有量によってソイルセメントの強度が異なる可能性がある。このため、高炉セメントを使用した場合に好適な強度推定方法が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高炉セメントを使用したソイルセメントの強度推定方法および強度推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るソイルセメントの強度推定方法は、土質材料と高炉セメントと水とからなるソイルセメントの強度を推定する方法であって、ソイルセメントに用いる高炉セメントの試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量の高炉セメントを所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求めるステップと、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ求めておき、この関係と前記ステップで求めた酸の量から、試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求めるステップと、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントと水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ求めておき、この関係と、前記ステップで求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクにおける高炉セメントと水の質量比から、ソイルセメントの強度を求めるステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るソイルセメントの強度推定装置は、土質材料と高炉セメントと水とからなるソイルセメントの強度を推定する装置であって、ソイルセメントに用いる高炉セメントの試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量の高炉セメントを所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求める手段と、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ求めておき、この関係と前記手段で求めた酸の量から、試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求める手段と、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントと水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ求めておき、この関係と、前記手段で求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクにおける高炉セメントと水の質量比から、ソイルセメントの強度を求める手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るソイルセメントの強度推定方法によれば、土質材料と高炉セメントと水とからなるソイルセメントの強度を推定する方法であって、ソイルセメントに用いる高炉セメントの試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量の高炉セメントを所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求めるステップと、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ求めておき、この関係と前記ステップで求めた酸の量から、試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求めるステップと、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントと水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ求めておき、この関係と、前記ステップで求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクにおける高炉セメントと水の質量比から、ソイルセメントの強度を求めるステップとを備えるので、高炉セメントを使用したソイルセメントの強度を精度よく推定することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係るソイルセメントの強度推定装置によれば、土質材料と高炉セメントと水とからなるソイルセメントの強度を推定する装置であって、ソイルセメントに用いる高炉セメントの試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量の高炉セメントを所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求める手段と、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ求めておき、この関係と前記手段で求めた酸の量から、試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求める手段と、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントと水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ求めておき、この関係と、前記手段で求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクにおける高炉セメントと水の質量比から、ソイルセメントの強度を求める手段とを備えるので、高炉セメントを使用したソイルセメントの強度を精度よく推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るソイルセメントの強度推定方法および強度推定装置の実施の形態を示す概略フローチャート図である。
図2図2は、pHによるフェノールフタレイン溶液の変色状況を示す写真図である。
図3図3は、見かけの中和点となるのに要する酸の量と、高炉スラグ微粉末の含有量の関係を示す図である。
図4図4は、高炉セメントを使用したソイルセメントのセメント水比と材齢28日の圧縮強度の関係を示す図である。
図5図5は、係数Aの値・係数Bの値と、高炉スラグ微粉末の含有量の関係を示す図である。
図6図6は、従来のソイルセメントの強度推定方法で用いられるSG(礫質砂)の場合のセメント水比と圧縮強度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係るソイルセメントの強度推定方法および強度推定装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
(ソイルセメントの強度推定方法)
まず、本実施の形態に係るソイルセメントの強度推定方法について説明する。
【0016】
本実施の形態に係るソイルセメントの強度推定方法は、杭の根固め部を構成するソイルセメントの強度を、早期に推定するためのものである。ソイルセメントは、土質材料とセメントミルク(高炉セメントと水)とを混合して作製される。高炉セメントとして、高炉セメントB種を用いるが、本発明の高炉セメントはこれに限るものではなく、高炉セメントA種や高炉セメントC種でもよいし、これらを混成したセメントでもよい。
【0017】
図1は、本実施の形態の概略手順を示したものである。この図に示すように、本実施の形態はステップS1~S3の手順で行われる。
【0018】
ステップS1は、ソイルセメントに用いる高炉セメントB種の試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量のセメント試料を所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求めるものである。
【0019】
次のステップS2は、高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ作成しておき、この関係に、上記のステップS1で求めた酸の量を当てはめることで、セメント試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求めるものである。
【0020】
次のステップS3は、高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントB種と水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ作成しておき、この関係に、上記のステップS2で求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクのセメント水比(高炉セメントB種と水の質量比)を当てはめることで、ソイルセメントの強度を求めるものである。
【0021】
このようにすれば、高炉セメントB種を使用したソイルセメントの強度を早期に精度よく推定することができる。
【0022】
次に、上記の各ステップS1~S3の具体的内容について説明する。
【0023】
<ステップS1>
このステップS1では、以下のステップS11~S16の要領で、見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求める。
【0024】
ステップS11では、指示薬として、例えば、変色域がpH=8.0~9.8のフェノールフタレイン溶液を準備する。また、あらかじめ調整した一定の濃度の酸を準備する。
【0025】
ステップS12では、試験当日に使用する高炉セメントB種と水の混合物(セメントミルク)を採取し、乾燥式水分計で乾燥させて乾燥試料を得る。なお、ここで得られる乾燥試料は、当然ながら高炉セメントB種のみからなるセメント試料である。別途、サイロなどからセメント(高炉セメントB種)のみを採取して、試料としてもよい。
【0026】
ステップS13では、ステップS12で得たセメント試料を、計量用スプーンなどで所定量(例えば1.00g)計量し、所定容積(例えば容量100ml程度)の半透明容器に入れる。
【0027】
ステップS14では、一定の濃度の酸をステップS13の半透明容器に入れ、容器中のセメント試料と中和反応させる。その後、水を所定量(例えば約100ml)となるように加えた後、上述した指示薬を所定量(例えば約0.5ml)スポイトにより滴下する。なお、セメントはpH=12程度のアルカリ性を示すため、この時点ではフェノールフタレイン溶液により、図2の右端の容器に示すような濃い赤色となっている。
【0028】
ステップS15では、一定の濃度の酸を入れてから所定時間経過時(例えば30分経過時)に、溶液の色が薄い赤色(図2の中央の容器)であるpH=8.0程度になった点を見かけの中和点とできる酸の量を、上記のステップS13、S14の操作を繰り返すことにより求める。
【0029】
ステップS16では、上記のステップS15で求めた酸の量を、「施工当日に使用するセメント1.00gを、30分で見かけの中和点(pH=8.0程度)とするのに必要な酸の量」と定義して記録する。なお、30分経過時の見かけの中和点を求めたのは、セメントと酸の中和反応速度が緩やかになり、薄い赤色が判定しやすくなるためであり、判定の時間が一定であれば、詳細な時間の規定はない。
【0030】
<ステップS2>
このステップS2では、あらかじめ求めておいた、高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係に、上記のステップS1で求めた酸の量を当てはめることで、セメント試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求める。
【0031】
図3は、上記の関係の一例を示したものである。この図では、高炉スラグ微粉末の含有量を35、45、55%として試製した高炉セメントB種を見かけの中和点とするのに必要な酸の量(y)を、高炉スラグ微粉末の含有量(x)とともにプロットしている。また、プロットの回帰式も併せて示している。この回帰式は検量線を表す式として用いることができる。この回帰式のyに、ステップS1で求めた酸の量を代入することで、セメント試料中の高炉スラグ微粉末の含有量(x)を求めることができる。
【0032】
なお、図3に示すような検量線は、使用する酸の濃度・種類、高炉セメントのベースとなるベースセメント、高炉スラグ微粉末は同じものを使用してあらかじめ求めておく。ベースセメントは普通ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末はブレーン値4000程度のもので代用してもよい。
【0033】
<ステップS3>
このステップS3では、あらかじめ求めておいた、高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントB種と水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係に、上記のステップS2で求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクのセメント水比(高炉セメントB種と水の質量比)を当てはめることで、ソイルセメントの強度を求める。
【0034】
図4は、上記の関係の一例を示したものである。この図では、高炉スラグ微粉末の含有量を35、45、55%とした高炉セメントB種相当品を試製して得られた、ソイルセメントのセメント水比(C/W:x)と材齢28日のソイルセメントの圧縮強度(y)の関係をプロットしている。
【0035】
図の凡例中の数字は、高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量(%)である。高炉スラグ微粉末の含有量が多いほど、強度は低下する傾向にあることがわかる。なお、凡例の右横には、高炉スラグ微粉末の含有量ごとに強度推定用の回帰式も示している。
【0036】
この実験値に使用しているソイルセメントの土質材料には砂質土を使用しており、砂質土の含有量はセメントミルクに対する質量比で25%である。この量は、根固め部のソイルセメントの過去の分析値から設定している。また、砂質土は礫質土、粘性土を使用した場合より安全側に強度推定できるため、砂質土で強度推定用の回帰式を求めておくことがよいことも確認されている。
【0037】
図4に示すように、C/W(x)と圧縮強度(y)の関係は、回帰式:y=Ax-Bの形で近似できる。この係数Aの値、係数Bの値と、高炉スラグ微粉末の含有量の関係を表したものが図5である。
【0038】
図5においては、係数Aの値、係数Bの値をそれぞれyとし、高炉スラグ微粉末の含有量をxとして求めた回帰式も併せて示している。それぞれの回帰式のxに、上記のステップS2で求めた高炉スラグ微粉末の含有量を代入することで、係数A、Bを求めることができる。求めた係数A、Bによって回帰式:y=Ax-Bの形が定められる。
【0039】
この回帰式のxに、ソイルセメントに用いるセメントミルクのセメント水比(C/W)を代入することで、材齢28日のソイルセメントの圧縮強度を求めることができる。
【0040】
このようにすることで、根固め部を構成するソイルセメントの強度を早期に推定することができる。特に、ソイルセメントに使用する高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量が不明な場合であっても、ソイルセメントの強度を精度よく推定できる。
【0041】
(ソイルセメントの強度推定装置)
次に、本実施の形態に係るソイルセメントの強度推定装置について説明する。
【0042】
本実施の形態に係るソイルセメントの強度推定装置は、上述したソイルセメントの強度推定方法を装置として具現化したものであり、例えば入力部、記憶部、演算部、出力部とからなる。この強度推定装置は、例えばCPUを有するコンピュータ、メモリ、ディスプレイ、キーボード等のハードウェア、これらハードウェアを用いて実行されるコンピュータプログラム等のソフトウェアにより構成することができる。
【0043】
入力部は、「所定量のセメント試料を所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量」を入力するためのものであり、例えばキーボードなどで構成することができる。「所定量のセメント試料を所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量」は、上述したソイルセメントの強度判定方法で説明した方法で求める。
【0044】
記憶部は、「高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係(例えば、図3の回帰式)」、「高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量と、セメント水比と、ソイルセメントの強度との関係(例えば、図4図5の回帰式)」を記憶するものである。記憶部は、例えばメモリなどの記憶媒体で構成することができる。
【0045】
演算部は、第1演算部と第2演算部とからなり、例えばコンピュータとソフトウェアなどで構成することができる。第1演算部は、記憶部に記憶された「高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係(例えば、図3の回帰式)」に、入力部により入力された「見かけの中和点とするのに必要な酸の量」を当てはめることで、セメント試料(高炉セメントB種)中の高炉スラグ微粉末の含有量を求めるものである。
【0046】
第2演算部は、記憶部に記憶された「高炉セメントB種中の高炉スラグ微粉末の含有量と、セメント水比と、ソイルセメントの強度との関係(例えば、図4図5の回帰式)」に、第1演算部で求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクのセメント水比を当てはめることで、ソイルセメントの強度を求めるものである。
【0047】
出力部は、上記の演算部による演算処理結果を出力するものである。出力部は、例えばディスプレイやプリンタなどで構成することができる。
【0048】
このように構成したソイルセメントの強度推定装置によれば、「所定量のセメント試料を所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量」と、図3図5の関係を用いることで、高炉セメントを使用したソイルセメントの強度を早期に精度よく推定することができる。
【0049】
以上説明したように、本発明に係るソイルセメントの強度推定方法によれば、土質材料と高炉セメントと水とからなるソイルセメントの強度を推定する方法であって、ソイルセメントに用いる高炉セメントの試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量の高炉セメントを所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求めるステップと、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ求めておき、この関係と前記ステップで求めた酸の量から、試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求めるステップと、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントと水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ求めておき、この関係と、前記ステップで求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクにおける高炉セメントと水の質量比から、ソイルセメントの強度を求めるステップとを備えるので、高炉セメントを使用したソイルセメントの強度を精度よく推定することができる。
【0050】
また、本発明に係るソイルセメントの強度推定装置によれば、土質材料と高炉セメントと水とからなるソイルセメントの強度を推定する装置であって、ソイルセメントに用いる高炉セメントの試料と所定濃度の酸とを中和反応させることにより、所定量の高炉セメントを所定時間で見かけの中和点とするのに必要な酸の量を求める手段と、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、見かけの中和点とするのに必要な酸の量との関係をあらかじめ求めておき、この関係と前記手段で求めた酸の量から、試料中の高炉スラグ微粉末の含有量を求める手段と、高炉セメント中の高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメント中の高炉セメントと水の質量比と、ソイルセメントの強度との関係をあらかじめ求めておき、この関係と、前記手段で求めた高炉スラグ微粉末の含有量と、ソイルセメントに用いるセメントミルクにおける高炉セメントと水の質量比から、ソイルセメントの強度を求める手段とを備えるので、高炉セメントを使用したソイルセメントの強度を精度よく推定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係るソイルセメントの強度推定方法および強度推定装置は、杭の根固め部のソイルセメントの強度を推定するのに有用であり、特に、高炉セメントを使用したソイルセメントの強度を早期に精度よく推定するのに適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6