(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】アンテナおよび通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/10 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
H01Q13/10
(21)【出願番号】P 2018243063
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2018101615
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】奥道 武宏
(72)【発明者】
【氏名】喜井 浩紀
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-023224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0294065(US,A1)
【文献】特開2001-320225(JP,A)
【文献】特表2009-534942(JP,A)
【文献】特開平05-218728(JP,A)
【文献】特開2009-206816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の誘電体層を含んでいる基板と、
前記誘電体層に重なっている板状のアンテナ導体と、
前記アンテナ導体の複数の給電点に接続されている複数の接続導体と、
を有しており、
前記アンテナ導体が、平面視において、前記アンテナ導体の平面に沿う方向に延びる所定の基準直線の両側に、前記アンテナ導体をその厚さ方向に貫通する1対の切欠き部を有しており、
前記1対の切欠き部それぞれが、前記アンテナ導体の平面視において、
第1部位と、
前記第1部位から前記基準直線とは反対側へ延びて前記アンテナ導体の外縁に到達しており、前記基準直線に平行な方向における径が前記第1部位の前記基準直線に平行な方向における径よりも短い第2部位と、を有しており、
前記複数の給電点は、1対の前記第2部位の、前記基準直線に平行な方向の両側に位置している4つの給電点を含んでいる
アンテナ。
【請求項2】
前記基板に重なっている、または前記基板に埋設されている導体を含んで構成されており、前記4つの給電点のうち、前記1対の第2部位に対して前記基準直線に平行な方向の一方側に位置している2つの給電点に平衡側の一方のポートが電気的に接続されており、前記4つの給電点のうち、前記1対の第2部位に対して前記基準直線に平行な方向の他方側に位置している2つの給電点に平衡側の他方のポートが電気的に接続されている、平衡不平衡変換回路をさらに有している
請求項
1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記平衡不平衡変換回路は、
第1端子と、
第2端子と、
前記第1端子と前記一方側の2つの給電点との間に介在している第1インダクタと、
前記第1端子と前記他方側の2つの給電点との間に介在している第1キャパシタと、
前記第2端子と前記一方側の2つの給電点との間に介在しており、前記第1キャパシタと同一のキャパシタンスを有している第2キャパシタと、
前記第2端子と前記他方側の2つの給電点との間に介在しており、前記第1インダクタと同一のインダクタンスを有している第2インダクタと、を有している
請求項
2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記基板に実装されているとともに、前記平衡不平衡変換回路の不平衡側のポートに電気的に接続されている回路素子をさらに有している
請求項
2または
3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記平衡不平衡変換回路の不平衡側の基準電位用のポートに電気的に接続されている基準電位層をさらに有しており、
前記アンテナ導体の平面透視において、前記回路素子は、前記基準電位層に重なっている
請求項
4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナ導体の平面透視において、前記回路素子は、前記第1部位の、前記基準直線に平行な方向の長さ内に収まっている
請求項
4または
5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記アンテナ導体が、前記基準直線に重なっている導体部分
の長さを、前記基準直線に平行な方向における当該アンテナ導体の全長に亘って有している
請求項1~6のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記アンテナ導体が、平面視において、前記基準直線を対称軸として線対称かつ前記基準直線に直交する直線を対称軸として線対称の形状を有している
請求項
1~7のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記アンテナ導体が、平面視において、前記基準直線から離れるほど前記基準直線に平行な方向の長さが短くなる形状を有している
請求項
1~8のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記基板が、平面視において、前記基準直線から離れるほど前記基準直線に平行な方向の長さが短くなる形状を有している
請求項
9に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記基板は、平面視において、前記アンテナ導体から、前記基準直線に直交する方向の外側へ張り出す長さが、前記アンテナ導体のうちの前記基準直線に平行な方向の両側部分よりも、その間の部分において大きい
請求項
10に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記アンテナ導体の平面視において、1対の前記第1部位同士の距離が、前記第1部位の前記基準直線に直交する方向の長さよりも短い
請求項1~
11のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記アンテナ導体の平面視において、前記第2部位の前記基準直線に直交する方向の長さが、前記第1部位の前記基準直線に直交する方向の長さよりも短い
請求項1~
12のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記アンテナ導体の平面視において、前記第2部位の前記基準直線に平行な方向の長さが、前記第1部位の前記基準直線に直交する方向の長さの1/2よりも短い
請求項1~
13のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項15】
前記アンテナ導体と同一の形状および大きさを有しているとともに前記誘電体層を挟んで前記アンテナ導体と対向しており、前記アンテナ導体と電気的に接続されている他のアンテナ導体をさらに有している
請求項1~
14のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記アンテナ導体が、平面視において、前記1対の切欠き部を通り前記基準直線に直交する第2基準直線から離れるほど前記第2基準直線に平行な方向の長さが短くなる部分を有している
請求項1~15に記載のアンテナ。
【請求項17】
前記アンテナ導体の外縁が、平面視において、前記基準直線と平行な1対の辺を有する、請求項16に記載のアンテナ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載のアンテナと、
前記アンテナに接続されているRF-ICと、
を有している通信装置。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか1項に記載のアンテナと、
前記アンテナに接続されている伝送線路と、
を有しており、
前記アンテナ導体の平面視において、前記伝送線路が前記基準直線に交差する方向へ延びて前記1対の切欠き部の一方に重なっている
通信装置。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか1項に記載のアンテナと、
前記アンテナ導体よりも広い板状であり、前記基準直線に平行な前記アンテナ導体の中心線に沿っている外部導体と、
を有しており、
前記アンテナが対象としている周波数帯の電波の真空中における波長をλとしたときに、前記中心線から前記外部導体までの距離が波長λの5%以上70%以下である
通信装置。
【請求項21】
前記アンテナ導体が、平面視において、その内部に導体非形成領域を備える、請求項1~17のいずれかに記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナおよび通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を送受信するためのアンテナとして、板状のアンテナ導体を有するものが知られている(例えば特許文献1~3および非特許文献1)。
【0003】
特許文献1のアンテナは、誘電体基板と、誘電体基板の一方の主面に重なる放射導体板と、誘電体基板の他方の主面に重なる接地導体板とを有している。接地導体板には、ループ状のスロットが形成されている。このスロットは、指向性および円偏波の旋回方向を切り替えることなどに利用されている。
【0004】
特許文献2および3のアンテナは、誘電体基板と、誘電体基板の一方の主面に重なる導体板と、誘電体基板の他方の主面に重なる線路とを有している。導体板には、切欠き状のスロットが形成されている。特許文献3のアンテナのスロットは、導体板の縁部に平行な部分と、当該部分から導体板の縁部に延びる部分とを有している。
【0005】
非特許文献1のp91-92に開示されているアンテナは、長方形の導体板によって構成されている。この導体板には、1対の長辺に平行な1対のスリットと、1対のスリットから1対の長辺(導体板の外側)へ向かって延びるスリットとが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4027967号公報
【文献】特許第4050307号公報
【文献】特開2016-72960号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】マルコ・ソンキ(Marko Sonkki)著、「ワイドバンド・アンド・マルチエレメント・アンテナズ・フォー・モバイルアプリケーションズ(WIDEBAND AND MULTIELEMENT ANTENNAS FOR MOBILE APPLICATIONS)」(フィンランド)、オウル大学(UNIVERSITY OF OULU)、2013年5月17日、p91-92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
小型化および広帯域化が可能なアンテナおよび通信装置が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るアンテナは、1以上の誘電体層を含んでいる基板と、前記誘電体層に重なっている板状のアンテナ導体と、を有しており、前記アンテナ導体が、平面視において、前記アンテナ導体の平面に沿う方向に延びる所定の基準直線の両側に、前記アンテナ導体をその厚さ方向に貫通する1対の切欠き部を有しており、前記1対の切欠き部それぞれが、前記アンテナ導体の平面視において、第1部位と、前記第1部位から前記基準直線とは反対側へ延びて前記アンテナ導体の外縁に到達しており、前記基準直線に平行な方向における径が前記第1部位の前記基準直線に平行な方向における径よりも短い第2部位と、を有している。
【0010】
本開示の一態様に係る通信装置は、上記のアンテナと、前記アンテナに接続されているRF-ICと、を有している。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、小型化および広帯域化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)は第1実施形態に係るアンテナの全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)および
図3(b)は
図2の第1および第2誘電体層の平面図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は
図1(a)のアンテナの特性の概要を示す図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は第2実施形態に係るアンテナの第1および第2誘電体層の平面図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は第2実施形態に係るアンテナの第3および第4誘電体層の平面図である。
【
図9】第2実施形態に係るアンテナの第5誘電体層の平面図である。
【
図11】
図11(a)および
図11(b)は第3実施形態に係るアンテナの第1および第2誘電体層の平面図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は第4実施形態に係るアンテナの第1および第2誘電体層の平面図である。
【
図14】
図14(a)および
図14(b)は第4実施形態に係るアンテナの第3および第4誘電体層の平面図である。
【
図15】第4実施形態に係るアンテナの第5誘電体層の平面図である。
【
図16】アンテナの利用例としての通信装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図18】
図18(a)および
図18(b)はアンテナおよび伝送線路の要部の構成を示す平面図および側面図である。
【
図19】
図19(a)および
図19(b)は伝送線路がアンテナの第1の周波数帯における特性に及ぼす影響を示す図である。
【
図20】
図20(a)および
図20(b)は伝送線路がアンテナの第2の周波数帯における特性に及ぼす影響を示す図である。
【
図21】
図21(a)および
図21(b)は伝送線路がアンテナの第3の周波数帯における特性に及ぼす影響を示す図である。
【
図22】
図22(a)および
図22(b)は伝送線路がアンテナの第4の周波数帯における特性に及ぼす影響を示す図である。
【
図23】アンテナおよび外部導体の要部の構成を示す平面図および側面図である。
【
図24】
図24(a)および
図24(b)は外部導体がアンテナの第1および第2の周波数帯における特性に及ぼす影響を示す図である。
【
図25】
図25(a)および
図25(b)は外部導体がアンテナの第3および第4の周波数帯における特性に及ぼす影響を示す図である。
【
図26】
図26(a)~
図26(c)はいずれも、アンテナ導体の平面形状の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、細部については図示および/または説明を省略することがある。従って、例えば、部材の形状について矩形と表現しても、アンテナ特性等に大きな影響が生じない大きさで、角部が面取りされていたり、矩形の辺に凸部または凹部が形成されていたりしてもよい。
【0014】
また、便宜上、図面に直交座標系xyzを付し、これを参照することがある。アンテナは、いずれの方向が上方または下方とされてもよいが、便宜上、z方向の正側を上方として、上面または下面等の語を用いることがある。
【0015】
また、図面においては、導体層の平面パターンの視認性を良くするために、便宜上、導体層の表面に(すなわち、部材の断面ではない面に)ハッチングを付すことがある。
【0016】
第2実施形態以降の説明においては、先に説明された実施形態の構成と同様または類似する構成について、先に説明された実施形態の構成に付した符号を付し、また、説明を省略することがある。なお、先に説明された実施形態の構成に対応(類似)する構成に対して、先に説明された実施形態の構成に付した符号と異なる符号を付した場合においても、特に言及しない事項については、先に説明された実施形態と同様である。すなわち、第2実施形態以降においては、基本的には、先に説明された実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0017】
互いに類似する構成については、「第1アンテナ導体7A」および「第2アンテナ導体7B」のように、同一名称に対して互いに異なる番号(「第1」、「第2」)、ならびに互いに異なる大文字のアルファベット等からなる付加符号(「A」、「B」)を付すことがある。また、この場合において、単に「アンテナ導体7」といい、両者を区別しないことがある。
【0018】
[第1実施形態]
(アンテナの全体構成)
図1(a)は、第1実施形態に係るアンテナ1を上面1a側から見た斜視図である。
図1(b)は、アンテナ1を下面1b側から見た斜視図である。
【0019】
アンテナ1は、例えば、y方向を電界の振動の方向とする直線偏波の電波の送信(放射)および/または受信に利用可能である。また、アンテナ1は、例えば、y軸に交差する軸回りに旋回する円偏波の電波の送信および/または受信にも利用可能である。なお、以下の説明では、便宜上、送信のみに着目した用語(例えば給電)を用いて説明することがある。アンテナ1が利用される周波数帯は任意である。
【0020】
アンテナ1は、例えば、全体として、概略、z軸に直交する平板状に形成されている。その平面形状は適宜に設定されてよい。本実施形態では、アンテナ1の平面形状は、x軸およびy軸に平行な辺を有する矩形である。当該矩形は、例えば、y軸に平行な方向を長手方向とする長方形である。
【0021】
アンテナ1の大きさは、アンテナ1が利用される周波数帯等に応じて適宜に設定されてよい。以下の説明では、アンテナ1が比較的高い周波数帯で利用される比較的小さいものである場合を例にとる。例えば、アンテナ1の平面視における1辺の長さは50mm以上100mm以下である。アンテナ1の厚さは、2mm以上8mm以下である。アンテナ1は、例えば、300MHz以上3000MHz以下の範囲で設定された周波数帯で利用される。
【0022】
アンテナ1は、下面1bに露出する端子部1cを有している。アンテナ1は、外部の機器から端子部1cを介して電気信号が入力され、その電気信号を電波に変換して送信する。および/またはアンテナ1は、受信した電波を電気信号に変換して、その電気信号を端子部1cを介して外部の機器へ出力する。
【0023】
なお、
図1(b)では、端子部1cを含む導体層の全体が図示されている。実際には、この導体層のうち、端子部1cを除く部分は、不図示の絶縁層(例えばソルダーレジスト)によって覆われていてよい。
【0024】
【0025】
アンテナ1は、複数の誘電体層3(第1誘電体層3A~第3誘電体層3C)と、複数の誘電体層3に重なる導体層(例えばアンテナ導体7(7Aおよび7B))と、複数の誘電体層3をその厚さ方向に貫通する貫通導体(例えば後に他の図で示す貫通導体17)とを有している。換言すれば、アンテナ1は、多層基板によって構成されている。また、別の観点では、アンテナ1は、1以上の誘電体層3を含む基板5(符号は
図1(a)および
図1(b))と、基板5に重なる、または埋設されている導体とを有している。
【0026】
(誘電体層)
複数の誘電体層3の平面形状は、例えば、互いに同一であり、また、上述したアンテナ1の平面形状の説明は、各誘電体層3の平面形状の説明とされてよい。複数の誘電体層3の厚さおよび/または材料は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0027】
各誘電体層3は、単一の材料から構成されていてもよいし、複数の材料から構成されていてもよい。複数の材料から構成される場合、例えば、誘電体層3は、異なる材料からなる誘電体層が厚み方向に積層された部分を含んでいてもよいし、および/またはガラス布等からなる基材に誘電体を含浸させた部分を含んでいてもよい。
【0028】
誘電体層3の材料は、基本的には(例えば8割以上は)、誘電体である。誘電体は、例えば、セラミックおよび/または樹脂である。誘電体層3は、例えば、各種の導体の保持に寄与しているとともに、電波の波長の短縮に寄与している。すなわち、アンテナ1の外形寸法は誘電体層3の材料の誘電率に関係する。
【0029】
(導体層および貫通導体)
誘電体層3に重なる導体層および誘電体層3をその厚さ方向に貫通する貫通導体の材料は、例えば、金属である。金属は、CuまたはAlなど、適宜なものとされてよい。後述する各種の導体層および貫通導体は、互いに同一の材料から構成されていてもよいし、互いに異なる材料から構成されていてもよい。また、各導体層または各貫通導体は、単一の材料から構成されていてもよいし、複数の材料から構成されていてもよい。一の導体層が複数の材料から構成される場合、例えば、互いに異なる金属からなる層がz方向に積層されて構成されていてもよい。
【0030】
導体層と貫通導体との接続部において、材料等の観点から見たときに、導体層の上面または下面と貫通導体の端面とが接合されていてもよいし、貫通導体が導体層の孔に挿通されて貫通導体の外周面と孔の内面とが接合されていてもよいし、そのような区別が不可能であってもよい。以下では、上記のような接合態様の相違を特に区別しないこととする。
【0031】
図3(a)は、第1誘電体層3Aを-z側から見た平面図である。
図3(b)は、第2誘電体層3Bを-z側から見た平面図である。
図4は、第3誘電体層3Cを-z側から見た平面図である。
【0032】
図2から理解されるように、第1誘電体層3A、第2誘電体層3Bおよび第3誘電体層3Cは、この列挙順で下面1b側から積層されている。第1誘電体層3Aの-z側の面(
図3(a)で図示している面)は、アンテナ1の下面1bを構成している。第3誘電体層3Cの+z側の面(
図4で図示されている面とは反対側の面)は、アンテナ1の上面1aを構成している。
【0033】
既述のように、第1誘電体層3Aの-z側の面(
図3(a))には端子部1cが構成されている。第2誘電体層3Bの-z側の面(
図3(b))には、端子部1cと電気的に接続されるアンテナ導体としての第1アンテナ導体7Aが重なっている。第3誘電体層3Cの-z側の面(
図4)には、端子部1cと電気的に接続される第2アンテナ導体7Bが重なっている。
【0034】
第1誘電体層3Aと第2誘電体層3Bとの間に位置している導体層(第1アンテナ導体7A)は、第1誘電体層3Aの+z側の面に重なっていると捉えられてもよいし、第2誘電体層3Bの-z側の面に重なっていると捉えられてもよい。ただし、本実施形態の説明では、便宜上、第2誘電体層3Bの-z側の面に重なっているものとして説明する。第2誘電体層3Bと第3誘電体層3Cとの間の導体層(第2アンテナ導体7B)、ならびに後述する他の実施形態において誘電体層間に位置する種々の導体層についても同様に、便宜上、誘電体層の-z側の面に重なっているものとして説明する。
【0035】
(アンテナ導体)
アンテナ導体7の平面形状は、2つの概略C字状の形状を、その途切れている側とは反対側同士で連結した形状である。従って、各C字は、その途切れている部分に電圧が印加されることにより、フォールデッドダイポールアンテナまたはループアンテナのように機能し得る。ただし、この説明は、理解を容易にするための便宜上のものである。本実施形態に関する下記の具体的な説明、および後述する他の実施形態からも理解されるように、本開示に係るアンテナ導体の形状および作用は、フォールデッドダイポールアンテナまたはループアンテナの概念には縛られない。本実施形態のアンテナ導体7の具体的な形状等は、例えば、以下のとおりである。
【0036】
第1アンテナ導体7Aおよび第2アンテナ導体7Bは、例えば、互いに略同一の形状および大きさを有しており、また、両者は、xy平面において互いに略同一の位置に設けられている。すなわち、両者は、平面透視において互いに過不足なく重なっている。
【0037】
アンテナ導体7の平面形状は、例えば、y軸に平行な第1対称軸CL1(基準直線の一例)に対して線対称、かつx軸に平行な第2対称軸CL2に対して線対称の形状とされている。なお、第1対称軸CL1および第2対称軸CL2は、別の観点では、アンテナ導体7の中心線である。中心線は、例えば、アンテナ導体7の互いに対向する1対の縁部からの距離が等しい点の集合からなる線である。
【0038】
また、アンテナ導体7の平面形状は、例えば、矩形に1対の切欠き部9が形成された形状とされている。
【0039】
アンテナ導体7の上記矩形は、より具体的には、例えば、x軸およびy軸に平行な辺を有する矩形であり、さらに詳しくはy方向を長手方向とする長方形である。また、この矩形は、例えば、誘電体層3の概ね全体に広がっている。別の観点では、アンテナ導体7の外縁(切欠き部9を除く)は、例えば、誘電体層3の外縁から概ね一定距離で内側へシフトした形状を有している。前記一定距離は、例えば、0.5mm以上2mm以下、または誘電体層3の最大長さの0.5%以上2%以下である。
【0040】
切欠き部9は、アンテナ導体7をその厚さ方向に貫通している。また、切欠き部9は、平面視においてアンテナ導体7の外縁に凹部を構成している。換言すれば、切欠き部9は、アンテナ導体7の外縁に到達している開口または貫通溝である。1対の切欠き部9は、第1対称軸CL1に対して両側に位置しており、第1対称軸CL1に対して互いに線対称の形状および位置とされている。また、各切欠き部9は、第2対称軸CL2上に位置しており、第2対称軸CL2に対して線対称の形状とされている。
【0041】
各切欠き部9は、第1部位11と、第1部位11からアンテナ導体7の外縁へ到達している第2部位13とを有している。
【0042】
第1部位11の形状、大きさおよび位置は、アンテナ1に要求される仕様(アンテナ1が利用される周波数帯)等に応じて適宜に設定されてよい。
【0043】
例えば、本実施形態では、第1部位11の形状は、x軸およびy軸に平行な辺を有する矩形とされている。当該矩形は、より具体的には、例えば、y方向を長手方向とする長方形とされている。長方形の縦横比は適宜に設定されてよい。図示の例では、第1部位11は、溝またはスリットという語から想起される一般的な寸法に比較して、幅(x方向、短辺の長さ)に対して長さ(y方向、長辺の長さ)がさほど長くない形状とされている。例えば、第1部位11の長さは、第1部位11の幅の3倍以下である。
【0044】
また、例えば、第1部位11のy軸に平行な不図示の中心線は、第1対称軸CL1と、アンテナ導体7のy軸に平行な辺(長辺)との中間位置よりも内側(第1対称軸CL1側)に位置していてもよいし(図示の例)、前記中間位置上に位置していてもよいし、前記中間位置よりも外側(第1対称軸CL1とは反対側)に位置していてもよい。
【0045】
また、例えば、1対の第1部位11同士の距離(別の観点ではアンテナ導体7のうちの1対の第1部位11間を通過する部分の幅)は、第1部位11のx方向の長さに対して、長くてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、短くてもよい。
【0046】
第2部位13の形状、大きさおよび位置も、第1部位11と同様に、アンテナ1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。
【0047】
例えば、本実施形態では、第2部位13の形状は、x軸およびy軸に平行な辺を有する矩形とされている。当該矩形は、より具体的には、例えば、x方向を長手方向とする長方形とされている。長方形の縦横比は適宜に設定されてよい。
【0048】
第2部位13のy方向の長さ(径)は、第1部位11のy方向の長さ(径)よりも短くされている。その差の絶対値または割合は適宜に設定されてよい。本実施形態では、両者の差は比較的小さい。例えば、第2部位13のy方向の長さは、第1部位11のy方向の長さの1/2以上となっている。
【0049】
また、例えば、第2部位13のy方向の長さは、アンテナ導体7のうち、第2部位13のy方向両側(第2部位13のy方向の中心を通り第1対称軸CL1に直交する仮想線;第2対称軸CL2を挟んだ両側)に位置する部分同士(後述するように互いに異なる電位が付与される部分同士)が短絡しない限り、短くされて構わない。ただし、本実施形態では、第2部位13のy方向の長さは、比較的長くされている。例えば、当該長さは、5mm以上、アンテナ導体7のy方向の長さの1/10以上、またはアンテナ導体7と誘電体層3の外縁との距離の5倍以上とされている。
【0050】
また、例えば、第2部位13のx方向の長さは、第1部位11のx方向の長さよりも長くてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、短くてもよい。
【0051】
アンテナ導体7の大きさと切欠き部9の大きさとの相対関係も、アンテナ1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、切欠き部9が無いと仮定した場合のアンテナ導体7の面積をSa0とし、1対の切欠き部9の面積をScとする。なお、実際のアンテナ導体7の面積Sa0-Scは、Sa1とする。このとき、例えば、Sc/Sa0は、0より大きく、0.5以下である(Sc/Sa1は、0より大きく、1以下である。)。より具体的には、例えば、Sc/Sa0は、0.05以上0.3以下、またはSc/Sa1は、0.05以上0.5以下である。
【0052】
アンテナ導体7の概略寸法は、例えば、上記のようにアンテナ導体7の半分をフォールデッドダイポールアンテナまたはループアンテナと捉え、アンテナ1が利用される周波数帯の波長に基づいて見積もられてよい。例えば、
図3(b)に示すように、第2部位13のy方向両側の縁部の一方から他方への経路Rt1を考える。経路Rt1は、例えば、切欠き部9の縁部も含めたアンテナ導体7の縁部に関して、互いに対向する縁部の中央を通過するように設定する。この経路Rt1のうち第1対称軸CL1上の長さLt1が、アンテナ1が利用される周波数帯の実効波長の半分になるように、または経路Rt1の全体の長さが前記実効波長になるように、概略寸法が見積もられてよい。
【0053】
一例を挙げると、例えば、アンテナ1が利用される周波数帯の代表値fが1200MHzであり、誘電体層3の比誘電率εrが4.8であり、自由空間における光速cが3×108(m/s)であるものとする。この場合、実効波長λgは以下の値となる。
λg=c/(f×√εr)
=約0.114(m)
従って、長さLt1について、概略寸法を57mm(=0.114m/2)と見積もることができる。また、図示の例では、長さLt1は、例えば、アンテナ導体7の長辺の長さの6割~7割であるから、アンテナ導体7の長辺は、概略、81mm~95mmと見積もることができる。
【0054】
ただし、上記はあくまで概略寸法の求め方である。より詳細な寸法は、例えば、種々の寸法について、利得等を算出するシミュレーションを行い、設定されてよい。このときに、例えば、上記の概略寸法に基づいて、シミュレーションが行われる寸法の範囲が設定されてよい。シミュレーションの結果、上記のような考え方で見積もった概略寸法から実際の寸法が乖離しても(例えば、見積もった概略寸法の1割以上の差で離れても)構わない。
【0055】
(アンテナ導体への電気的経路)
図3(a)に示すように、端子部1cからアンテナ導体7への電気的経路は、例えば、第1誘電体層3Aの-z側の面に重なっている1対の線路15(第1線路15Aおよび第2線路15B)と、第1誘電体層3Aをその厚さ方向に貫通している貫通導体17(第1貫通導体17A~第8貫通導体17H)とを含んでいる。線路15は、端子部1cに電気的に接続されており、貫通導体17は線路15と第1アンテナ導体7Aとを接続している。これにより、端子部1cと第1アンテナ導体7Aとが電気的に接続されている。
【0056】
また、
図3(b)に示すように、上記電気的経路は、第2誘電体層3Bをその厚さ方向に貫通する貫通導体19(第1貫通導体19A~第8貫通導体19H)を有している。貫通導体19は、貫通導体17と第2アンテナ導体7Bとを接続している。これにより、端子部1cと第2アンテナ導体7Bとは、線路15、貫通導体17および貫通導体19を介して電気的に接続されている。
【0057】
なお、
図4に示すように、第3誘電体層3Cの厚みの全部または当該厚みの第2誘電体層3B側の一部を貫通する貫通導体21(第1貫通導体21A~第8貫通導体21H)が設けられていてもよい。この貫通導体21は、例えば、貫通導体19と第2アンテナ導体7Bとの電気的接続の信頼性を向上させることに寄与している。もちろん、当該貫通導体21は省略されてもよい。
【0058】
1対の線路15は、例えば、平面透視したときに、アンテナ導体7の形状の基準である第2対称軸CL2を対称軸として互いに線対称の形状および位置で設けられている。また、各線路15は、例えば、平面透視したときに、アンテナ導体7の形状の基準である第1対称軸CL1を対称軸として互いに線対称の形状および位置で設けられている。
【0059】
線路15は、例えば、概略、一定の幅でx方向に直線状に延びる長尺状に形成されている。ただし、線路15は、長さ方向の一部で幅が異なっていたり、一部または全部がx方向に対して傾斜していたり、一部または全部が曲線状となっていてもよい。線路15の幅等の寸法は、アンテナ1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。一例として、線路15の幅は、0.5mm以上2mm以下である。
【0060】
第1線路15Aは、第1貫通導体17A~第4貫通導体17Dを介して第1アンテナ導体7Aに接続されている。第1貫通導体17A~第4貫通導体17Dは、
図3(b)において第1貫通導体19A~第4貫通導体19Dが示されている位置にて、第1アンテナ導体7Aに接続されている。すなわち、第1貫通導体19A~第4貫通導体19Dまたはこれらによって示されている位置は、第1アンテナ導体7Aの給電点と捉えられてよい。
【0061】
同様に、第2線路15Bは、第5貫通導体17E~第8貫通導体17Hを介して第1アンテナ導体7Aに接続されている。第5貫通導体17E~第8貫通導体17Hは、
図3(b)において第5貫通導体19E~第8貫通導体19Hが示されている位置にて、第1アンテナ導体7Aに接続されている。すなわち、第5貫通導体19E~第8貫通導体19Hまたはこれらによって示されている位置は、第1アンテナ導体7Aの給電点と捉えられてよい。
【0062】
なお、以下では、給電点の語に19(19A~19H)の符号を付すことがある。
【0063】
第1線路15Aに接続されている第1貫通導体17A~第4貫通導体17Dは、第2部位13の+y側に配置されている。第2線路15Bに接続されている第5貫通導体17E~第8貫通導体17Hは、第2部位13の-y側に配置されている。すなわち、互いに電位が異なる給電点は、1対の第2部位13に対してy方向の両側に配置されている。言い換えると、第2対称軸CL2をまたいだ両側に配置されている。これにより、各第2部位13のy方向の両側に(第2対称軸CL2をまたいだ両側に)互いに異なる電位を付与することが可能になっている。
【0064】
より具体的には、例えば、複数の貫通導体17は、第2部位13の縁部に隣接した位置に配置されている。縁部に隣接した位置は、例えば、縁部からの距離が貫通導体17の直径または最大径以下の位置である。なお、以下において、他の貫通導体およびアンテナ導体について、隣接する位置という場合の例も、上記と同様とされてよい。
【0065】
また、1対の第2部位13のy方向両側(第1対称軸CL1をまたぐ両側)の合計で4つの縁部それぞれに対しては、同一の電位が付与される2つの貫通導体17が設けられている。第2部位13の各縁部において、2つの貫通導体17は、例えば、当該縁部の両端(当該縁部に交差する縁部に隣接する位置)に配置されている。これにより、縁部全体に均等に電位を付与しやすくなっている。ただし、各縁部に1つのみ給電点19が設けられても構わないし、3つ以上でも構わない。
【0066】
複数の貫通導体17(給電点19)は、例えば、第1対称軸CL1に対して線対称に、かつ第2対称軸CL2に対して線対称に配置されている。
【0067】
上述のように、平面透視において、複数の貫通導体17の位置と、複数の貫通導体21の位置とは一致する。また、既述のように、平面透視において、第1アンテナ導体7Aの外縁と第2アンテナ導体7Bの外縁とは略一致する。従って、第2アンテナ導体7Bの給電点の位置(別の観点では第2アンテナ導体7Bに対する貫通導体19または21の位置)は、第1アンテナ導体7Aの給電点の位置と略同様である。
【0068】
貫通導体17、19および21の寸法(例えば直径または最大径)は、アンテナ1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、これらの貫通導体の直径または最大径は、線路15の幅よりも小さい。また、寸法の一例を挙げると、直径または最大径は、0.5mm以上2mm以下である。
【0069】
(平衡不平衡変換回路)
図5は、
図3(a)の領域Vの拡大図である。
【0070】
アンテナ1を外部の機器と接続するための端子部1cは、例えば、1対の端子23(第1端子23Aおよび第2端子23B)を有している。1対の端子23は、例えば、交流電源31によって模式的に示されているように、一方(図示の例では第1端子23A)が基準電位用とされ、他方が不平衡信号の入力および/または出力用とされている。不平衡信号は、情報の内容に応じて基準電位に対する電位が変化する信号である。
【0071】
この1対の端子23は、平衡不平衡変換回路25(以下、単に「変換回路25」ということがある。)を介して1対の線路15と電気的に接続されている。1対の端子23は、変換回路25の不平衡側のポート27(第1ポート27Aおよび第2ポート27B)に接続されている。1対の線路15は、変換回路25の平衡側のポート29(第1ポート29Aおよび第2ポート29B)に接続されている。
【0072】
これにより、例えば、1対の線路15には互いに逆相で電位の絶対値が互いに等しい信号(すなわち平衡信号)が入力され、アンテナ導体7は、ダイポールアンテナのように機能し得る。なお、ポート27および29は、点線でその範囲が示されていることから理解されるように、明瞭にポートとして区別できる部位が存在しなくてもよく、端子23および/または線路15の一部がポートの一部または全部として兼用されていてもよい。また、上記では、変換回路25が平衡側のポートを2つ有しているものとして概念したが、変換回路25が平衡側に4つのポート29a、29b、29cおよび29dを有していると概念されてもよい。
【0073】
変換回路25の構成は、適宜なものとされてよい。図示の例の構成は、以下のとおりである。
【0074】
変換回路25は、点線で示すように、インダクタ35(第1インダクタ35Aおよび第2インダクタ35B)およびキャパシタ37(第1キャパシタ37Aおよび第2キャパシタ37B)を有している。第1インダクタ35Aおよび第2インダクタ35Bは、基本的に、互いに同一の構成(例えばインダクタンスが同一)である。同様に、第1キャパシタ37Aおよび第2キャパシタ37Bは、基本的に、互いに同一の構成(例えばキャパシタンスが同一)である。
【0075】
第1端子23Aは、第1インダクタ35Aを介して第1線路15Aと電気的に接続されているとともに、第1キャパシタ37Aを介して第2線路15Bと電気的に接続されている。一方、第2端子23Bは、第2インダクタ35Bを介して第2線路15Bと電気的に接続されているとともに、第2キャパシタ37Bを介して第1線路15Aと電気的に接続されている。すなわち、第1端子23Aと第2端子23Bとでは、第1線路15Aとの間に介在する素子および第2線路15Bとの間に介在する素子が互いに逆の素子になっている。
【0076】
このような構成により、例えば、変換回路25に入力された不平衡信号は、平衡信号に変換されて1対の線路15に入力される。
【0077】
インダクタ35およびキャパシタ37等の構成は適宜なものとされてよい。
図5では、チップ型のインダクタ35およびキャパシタ37が第1誘電体層3Aの-z側の面に重なる導体層(例えば第1配線部33A~第4配線部33D)に表面実装されている場合を例示している。具体的には、端子23から線路15へは、4本の配線部33が延びている。そして、インダクタ35およびキャパシタ37は、配線部33の先端のパッド(符号省略)と線路15から突出しているパッド(符号省略)とに不図示の半田等を介して実装されている。なお、配線部33およびパッドは、変換回路25の一部と捉えられてよい。また、図示の例とは異なり、インダクタ35および/またはキャパシタ37は、その一部または全部が基板5の表面または内部の導体によって構成されていてもよい。
【0078】
2つのインダクタ35および2つのキャパシタ37の1対の線路15に対する合計4つの接続位置は、例えば、第1対称軸CL1に対して線対称、かつ第2対称軸CL2(ここでは不図示)に対して線対称とされる。別の観点では、これらの接続位置は、180°回転対称とされる。これにより、例えば、1対の線路15同士で電気信号を高精度に逆相かつ同等の大きさとすることができ、また、各線路15において、第1対称軸CL1の両側同士で電気信号の位相および大きさを高精度に合わせることができる。
【0079】
(アンテナの特性)
図6(a)および
図6(b)は、アンテナ1の特性の概要を示す図である。
図6(a)は、アンテナ1をy方向に見たときの右旋円偏波の利得の概要を示している。
図6(b)は、アンテナ1をx方向に見たときの右旋円偏波の利得の概要を示している。これらの図のx軸、y軸およびz軸は、
図1等に付したx軸、y軸およびz軸に対応している。また、これらの図においては、中心から離れるほど利得(例えばdBi)が高いことが示されている。線Lg1およびLg2は、アンテナ1の利得と、x方向、y方向およびz方向の位置との関係を示している。
【0080】
図6(a)に示されているように、アンテナ1は、y方向に見て、概略、全方向へ同等の利得を有している。また、
図6(b)に示されているように、アンテナ1は、x方向に見て、y方向の利得が低くなっており、概略、8の字の指向性を有している。特に図示しないが、z方向に見た場合も、
図6(b)と同様に、y方向の利得が相対的に低くなっており、概略、8の字の指向性が示される。このように、アンテナ1は、半波長ダイポールアンテナに類似した指向性を有している。
【0081】
(アンテナ1の製造方法)
アンテナ1の製造方法は、例えば、具体的な形状等を除いては、多層基板の製造方法と同様とされてよい。また、多層基板の製造方法も種々存在するが、そのいずれが利用されてもよい。
【0082】
例えば、アンテナ1は、いわゆるビルドアップ法によって作製されてよい。ビルドアップ法では、一の誘電体層3を形成するとともに当該一の誘電体層3に対して必要に応じて導体層(例えばアンテナ導体7)および/または貫通導体(例えば貫通導体17)を形成する工程を繰り返すことによって、複数の誘電体層3が順に積層されて固定される。
【0083】
また、例えば、アンテナ1は、誘電体層3となるセラミックグリーンシートに貫通導体および導体層となる導電ペーストを配置したものを積層して焼成する一括積層法によって作製されてよい。
【0084】
上記の各種の方法において、誘電体層3の形成、貫通導体が配置される孔の形成、貫通導体および導体層の形成方法も、公知の種々の方法とされてよい。
【0085】
例えば、誘電体層3は、未硬化(液状またはフィルム状)の熱硬化性樹脂を基材または先に形成されている誘電体層3上に配置し、これを硬化させて形成したり、セラミックグリーンシートを焼成して形成したりしてよい。
【0086】
また、例えば、貫通導体が配置される孔は、フォトリソグラフィー等によって形成したマスクを介してウェットエッチングおよび/またはドライエッチングを行って形成したり、径を絞ったレーザ光によって形成したり、打ち抜き加工によって形成したり、ドリルによって形成したりしてよい。誘電体層3が感光性樹脂の場合はフォトリソグラフィーによって形成してもよい。
【0087】
また、例えば、導体層は、無電解めっき法および/または電解めっき法によって形成したり、導電ペーストの印刷によって形成したりしてよい。また、導体層は、誘電体層3の全面に形成されてからマスクを介してエッチングされてパターニングされてもよいし、マスクを介して誘電体層3上に形成され、マスクとともにマスク上の部分が除去されてパターニングされてもよい。
【0088】
また、例えば、貫通導体は、無電解めっき法および/または電解めっき法によって形成したり、導電ペーストの印刷によって形成したりしてよい。なお、めっきを孔内で十分に成長させたり、導電ペーストを孔に充填することによって中実の貫通導体が形成されてもよいし、めっきの成長を適宜に停止したり、導電ペーストを孔の内面のみに印刷することによって中空状の貫通導体が形成されてもよい。
【0089】
以上のとおり、本実施形態に係るアンテナ1は、1以上の誘電体層3を含んでいる基板5と、誘電体層3に重なっている板状のアンテナ導体7と、を有している。アンテナ導体7は、平面視において、アンテナ導体7の平面に沿う所定の基準直線(第1対称軸CL1)の両側に、アンテナ導体7をその厚さ方向に貫通する1対の切欠き部9を有している。1対の切欠き部9それぞれは、アンテナ導体7の平面視において、第1部位11と、第2部位13とを有している。第2部位13は、第1部位11から第1対称軸CL1とは反対側へ延びてアンテナ導体7の外縁に到達しており、第1対称軸CL1に平行な方向(y方向)における径が第1部位11のy方向における径よりも短い。
【0090】
従って、例えば、電波の送信および/または受信に関して、平板状のアンテナ導体7内をy方向へ流れる電流を利用することができる。この電流は、広帯域化に適している。そして、第2部位13よりもy方向の径が大きい第1部位11が設けられていることにより、例えば、アンテナ導体7をx方向に流れる電流を低減することができる。このx方向の電流は、上記の広帯域化に適したy方向の電流を阻害するから、x方向の電流を低減することによって、広帯域化がさらに容易化される。第1対称軸CL1の両側に位置するアンテナ導体を2つ結合させて一つのアンテナ導体7としていることから、例えば、2つのアンテナ導体をそれぞれ作製して並列配置する場合に比較して小型化することができる。また、アンテナ導体7が誘電体層3に重なっていることから、実効波長を短くすることができ、ひいては、アンテナ1を小型化することができる。
【0091】
また、本実施形態では、アンテナ導体7は、平面視において、第1対称軸CL1に対して線対称かつ第1対称軸CL1に直交する直線(第2対称軸CL2)に対して線対称の形状を有している。
【0092】
この場合、例えば、第1対称軸CL1の両側の電流の位相および大きさを高精度に合わせたり、第2対称軸CL2の両側の電流の位相を高精度に逆相にしたりすることが容易化される。ひいては、安定して種々の方位に均等な利得を得ることができる。
【0093】
また、本実施形態では、アンテナ導体7(例えば第1アンテナ導体7A)と略同一の形状および大きさを有しているとともに誘電体層3を挟んで前記のアンテナ導体7と対向しており、前記のアンテナ導体7と電気的に接続されている他のアンテナ導体7(例えば第2アンテナ導体7B)をさらに有している。
【0094】
従って、例えば、2つのアンテナ導体7全体は、立体的な1つのアンテナ導体として機能する。その結果、例えば、種々の方向に対する導体の投影面積が増加し、円偏波の利得が向上する。また、誘電体層3を挟んでアンテナ導体7が対向していることから、いずれのアンテナ導体7においても実効波長を短くする効果が得られ、アンテナ1の小型化が容易である。
【0095】
また、本実施形態では、アンテナ1は、アンテナ導体7(例えば第1アンテナ導体7A)の複数の給電点19に接続されている複数の接続導体(例えば貫通導体17)をさらに有している。複数の給電点19は、少なくとも4つの給電点(例えば、19A、19D、19Eおよび19H)を含む。当該4つの給電点19は、1対の第2部位13のy方向の両側に位置している。
【0096】
従って、例えば、アンテナ導体7のうち、1対の第1部位11に挟まれた領域(アンテナ導体7のうちのx方向中央側の領域)だけでなく、1対の第1部位11の外側の領域も積極的に利用することができる。その結果、広帯域化、小型化および/または利得向上に有利である。
【0097】
また、本実施形態では、アンテナ1は、平衡不平衡変換回路25を有している。変換回路25は、基板5に重なっている、または基板5に埋設されている導体(例えば配線部33)を含んで構成されている。上記の4つの給電点のうち、1対の第2部位13に対して+y側に位置している2つの給電点(例えば19Aおよび19D)に平衡側の一方のポート(第1ポート29A)が電気的に接続されている。前記4つの給電点のうち、1対の第2部位13に対して-y側に位置している2つの給電点(例えば19Eおよび19H)に平衡側の他方のポート(第2ポート29B)が電気的に接続されている。
【0098】
従って、第1対称軸CL1の両側それぞれにおいて、切欠き部9を回り込む経路Rt1に逆位相の電圧を印加してダイポールアンテナのようにアンテナ1を機能させることができる。変換回路25が基板5に設けられている導体を含んで構成されていることから、例えば、小型化が図られる。また、変換回路25とアンテナ導体7との距離が短くなるから、例えば、ノイズが混入するおそれが低減される。
【0099】
また、本実施形態では、変換回路25は、2つの端子23、2つのインダクタ35および2つのキャパシタ37を有している。第1インダクタ35Aは、第1端子23Aと+y側の2つの給電点(例えば19Aおよび19D)との間に介在している。第1キャパシタ37Aは、第1端子23Aと-y側の2つの給電点(例えば19Eおよび19H)との間に介在している。第2キャパシタ37Bは、第2端子23Bと+y側の2つの給電点(例えば19Aおよび19D)との間に介在しており、第1キャパシタ37Aと同一のキャパシタンスを有している。第2インダクタ35Bは、第2端子23Bと-y側の2つの給電点(例えば19Eおよび19H)との間に介在しており、第1インダクタ35Aと同一のインダクタンスを有している。
【0100】
従って、例えば、簡素な構成の変換回路25によって、平衡信号および不平衡信号の変換を行うことができる。その結果、例えば、アンテナ1を小型化することが容易である。
【0101】
[第2実施形態]
図7(a)~
図9は、第2実施形態に係るアンテナ201の構成を示す平面図であり、これらの図は、第1実施形態の
図3(a)~
図4と同様のものである。
【0102】
アンテナ201は、第1実施形態のアンテナ1と同様に、互いに積層される複数の誘電体層203(第1誘電体層203A~第5誘電体層203E)を含む多層基板(基板205)によって構成されている。第1誘電体層203A、第2誘電体層203B、第3誘電体層203C、第4誘電体層203Dおよび第5誘電体層203Eは、この列挙順で、-z側から積層されている。従って、第1誘電体層203Aの-z側の面(
図7(a)に示している面)は、アンテナ201の下面201bを構成しており、第5誘電体層203Eの+z側の面(不図示)は、アンテナ201の上面を構成している。
【0103】
また、アンテナ201は、第1実施形態のアンテナ1と同様に、誘電体層203に設けられた導体層および/または貫通導体によって、アンテナ導体207(第1アンテナ導体207Aおよび第2アンテナ導体207B)、端子部201c、平衡不平衡変換回路225等が構成されている。
【0104】
アンテナ201の第1実施形態のアンテナ1との相違点としては、まず、誘電体層203およびアンテナ導体207の平面形状が挙げられる。また、端子部201cから変換回路225を経由してアンテナ導体207へ至る導体の具体的な構成も第1実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0105】
(誘電体層およびアンテナ導体の平面形状)
本実施形態の誘電体層203およびアンテナ導体207の平面形状は、概して言えば、第1実施形態における概略矩形状の誘電体層3およびアンテナ導体7において、4隅を切り落とした形状である。より具体的には、例えば、誘電体層203およびアンテナ導体207は、全体として六角形とされており、y方向の両側に、y方向の中央側を底辺側とする2等辺三角形を有している。別の観点では、誘電体層203およびアンテナ導体207は、第1対称軸CL1から離れるほどy方向の長さが短くなる形状である。そして、誘電体層203およびアンテナ導体207は、例えば、第1対称軸CL1上の長さが他のいずれの方向および位置における長さよりも長い。
【0106】
アンテナ201が第1実施形態のアンテナ1と同一の周波数帯で用いられるものである場合において、誘電体層203およびアンテナ導体207の第1対称軸CL1上における長さは、例えば、アンテナ1の誘電体層3およびアンテナ導体7の第1対称軸CL1上における長さと、概略、同等である。従って、誘電体層203およびアンテナ導体207の面積は、誘電体層3およびアンテナ導体7の面積に比較して、概略、4隅が切り落とされた分だけ小さくなっている。
【0107】
誘電体層203およびアンテナ導体207において、y方向両側の三角形の辺の傾斜角等は適宜に設定されてよい。例えば、頂角(2等辺三角形の2つの等辺がなす角)は、直角であってもよいし(図示の例)、鋭角であってもよいし、鈍角であってもよく、例えば、45°以上135°以下、60°以上120°以下、または85°以上95°以下である。アンテナ導体207の1対の切欠き部9の構成は、第1実施形態の切欠き部9の構成と同様である。ただし、具体的な寸法については、アンテナ導体207の形状をアンテナ導体7の4隅を切り落とした形状としたことに伴い、アンテナ導体7とは異なる寸法が最適値として選択されてよい。
【0108】
(端子部からアンテナ導体までの導体)
第1実施形態では、第1アンテナ導体7Aの-z側には、第1誘電体層3Aのみが重ねられ、端子部1cから第1アンテナ導体7Aまでの経路も1層の誘電体層3に対応する導体層および貫通導体によって構成された。一方、第2実施形態では、第1アンテナ導体207Aの-z側には、3層の誘電体層203(第1誘電体層203A~第3誘電体層203C)が積層されている。そして、端子部201cから第1アンテナ導体207Aまでの経路は、3層の誘電体層203に対応する導体層および貫通導体によって構成されている。
【0109】
具体的には、第1誘電体層203Aの-z側の面に設けられている端子部201cは、変換回路225を介して、第2誘電体層203Bの-z側の面に設けられている1対の線路215(第1線路215Aおよび第2線路215B)に電気的に接続されている。また、1対の線路215は、複数の貫通導体217(第1貫通導体217A~第8貫通導体217H)を介して、第3誘電体層203Cの-z側の面に設けられている1対の線路15に接続されている。1対の線路15は、第1実施形態と同様に、複数の貫通導体17を介して第1アンテナ導体207Aに接続されており、さらに複数の貫通導体19を介して第2アンテナ導体207Bに接続されている。
【0110】
1対の線路215および複数の貫通導体217は、便宜上、1対の線路15および複数の貫通導体17と異なる符号を付しているが、1対の線路15および複数の貫通導体17と同様の構成を有するものとされてよい。例えば、1対の線路215は、平面透視において1対の線路15と概ね一致するように、その形状、大きさおよび位置が設定されている。また、複数の貫通導体217は、平面透視において概ね複数の貫通導体17と一致する位置に設けられている。なお、貫通導体217の高さ(第2誘電体層203Bの厚さ)と貫通導体17の高さ(第3誘電体層203Cの厚さ)とは異なっていてもよいし、より詳細な寸法は、線路215および貫通導体217と線路15および貫通導体17とで異なっていてもよい。
【0111】
【0112】
端子部201cは、1対の端子223(第1端子223Aおよび第2端子223B)を有している。図示の例では、交流電源31によって模式的に示すように、第1端子223Aは、基準電位に対して電位が変動する不平衡信号が入力される端子とされており、第2端子223Bは、基準電位が付与される端子とされている。
【0113】
端子223の形状、大きさおおび位置は適宜に設定されてよい。図示の例では、第1端子223Aは、その中心(図心)が、第1対称軸CL1と、第2対称軸CL2(
図8(b)参照)との交点に位置するように設けられている。また、第2端子223Bは、第1端子223A側に開口する概略C字状とされている。
【0114】
図10において点線で示すように、また、
図7(b)に示すように、第2誘電体層203Bの-z側の面には、平面透視において端子部201cと重なる基準電位層239が設けられている。基準電位層239は、第1誘電体層203Aをその厚さ方向に貫通する複数の貫通導体241によって第2端子223Bと接続されている。
【0115】
基準電位層239の形状、大きさおよび位置は適宜に設定されてよい。図示の例では、基準電位層239は、平面透視において1対の端子223の全体に重なり、かつ1対の線路215間に収まっている。1対の線路215は、平面透視において切欠き部9の縁部に隣接する複数の給電点19に重なるように設けられているから、別の観点では、基準電位層239は、y方向において切欠き部9の長さの範囲内に収まっている。なお、x方向においては、基準電位層239は、第1対称軸CL1側の一部がアンテナ導体207に重なっている。基準電位層239の形状は、例えば、概略、1対の線路215に平行な長辺を有する長方形とされている。
【0116】
1対の端子223は、第1実施形態と同様に、変換回路225を介して1対の線路215と電気的に接続されている。具体的には、第1端子223Aと第1線路215Aとの間には第1インダクタ35Aが介在している。第1端子223Aと第2線路215Bとの間には第1キャパシタ37Aが介在している。第2端子223Bと第1線路215Aとの間には第2キャパシタ37Bが介在している。第2端子223Bと第2線路215Bとの間には第2インダクタ35Bが介在している。
【0117】
端子223からインダクタ35またはキャパシタ37までの配線部の構成は、適宜なものとされてよい。
【0118】
図示の例では、第1端子223Aからは、第1端子223Aよりも幅(y方向)が小さい配線233aが一定の幅で直線状に第2対称軸CL2(
図8(b)参照)上を延びている。配線233aの先端には、信号層233bが接続されている。信号層233bは、配線233aよりもy方向両側に広がっている。より具体的には、例えば、信号層233bは、概略、基準電位層239と同等の幅(y方向)を有する矩形状とされている。そして、信号層233bの、1対の線路215側の辺から突出するパッド(符号省略)と、1対の線路215から突出するパッド(符号省略)とに第1インダクタ35Aおよび第1キャパシタ37Aが実装されている。なお、配線233aおよび信号層233bの幅および長さ等を適宜に調整することによって、アンテナ1の特性の微調整を行うことが可能である。
【0119】
また、図示の例では、第2端子223Bは、上記のように、基準電位層239と接続されている。基準電位層239は、
図10に示すように、第1誘電体層203Aを貫通する貫通導体243を介して第1誘電体層203Aの-z側の面に重なるパッド(符号省略)に接続されている。当該パッドと、1対の線路215から突出するパッド(符号省略)とに第2インダクタ35Bおよび第2キャパシタ37Bが実装されている。
【0120】
以上のとおり、本実施形態のアンテナ201は、1以上の誘電体層203を含んでいる基板205と、誘電体層203に重なっている板状のアンテナ導体207と、を有している。アンテナ導体207は、第1対称軸CL1の両側に、アンテナ導体207をその厚さ方向に貫通する1対の切欠き部9を有している。切欠き部9は、第1実施形態と同様に、第1部位11および第2部位13を有している。従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、アンテナ201は、広帯域化および小型化される。
【0121】
また、本実施形態では、アンテナ導体207は、平面視において、第1対称軸CL1から離れるほど第1対称軸CL1に平行な方向(y方向)の長さが短くなる形状を有している。
【0122】
ここで、本願発明者が行った実験およびシミュレーション計算によれば、第1対称軸CL1上の長さは、他の寸法に比較して、アンテナ201の特性(例えば共振周波数)に及ぼす影響が大きい。従って、上記のように第1対称軸CL1から離れるほどy方向の長さが短くなる形状にすると、例えば、アンテナ201の特性を維持したまま、アンテナ導体207の小型化を図ることができる。
【0123】
また、本実施形態では、アンテナ導体207だけでなく、基板5も、平面視において、第1対称軸CL1から離れるほど第1対称軸CL1に平行な方向(y方向)の長さが短くなる形状を有している。別の観点では、基板5は、上記のように第1対称軸CL1から離れるほど第1対称軸CL1に平行な方向(y方向)の長さが短くなる形状を有しているアンテナ導体207のy方向両側の縁部に沿って(例えば平行に)延びる縁部を有している。
【0124】
従って、例えば、アンテナ201を小型化することができる。また、例えば、基板5を母基板から多数個取りすることによってアンテナ201を作製する場合においては、一の母基板から切り出せるアンテナ201の数が増加する。すなわち、生産性が向上する。
【0125】
なお、図示の例とは異なり、比較的広い回路基板の一部の領域にアンテナ導体207が設けられて、当該回路基板の一部にアンテナ201が作り込まれてもよい。この場合においては、アンテナ導体207の小型化によって、アンテナ201が回路基板に占める面積が縮小される。
【0126】
[第3実施形態]
図11(a)および
図11(b)は、第3実施形態に係るアンテナ301を説明するための平面図であり、第2実施形態の
図7(a)および
図7(b)に対応している。
図12は、
図11(a)の領域XIIの拡大図である。
【0127】
アンテナ301は、第1誘電体層203Aの-z側の面(アンテナ301の下面301b)に1以上の回路素子345(
図12)が実装されている点が第2実施形態のアンテナ201と相違する。アンテナ301のその他の構成は、基本的に、アンテナ201と同様である。すなわち、アンテナ301は、アンテナ201と同様に、第1誘電体層203A~第5誘電体層203Eが積層されて構成されており、
図8(a)~
図9は、アンテナ301の第3誘電体層203C~第5誘電体層203Eを示す平面図と捉えられてよい。
【0128】
アンテナ301は、外部の機器と接続される端子部301cを有している。端子部301cは、例えば、1対の端子323(第1端子323Aおよび第2端子323B)を有している。回路素子345は、例えば、端子部301cと、変換回路225との間に介在している。
【0129】
各回路素子345または複数の回路素子345の組み合わせは、例えば、分波器、フィルタ、増幅器(例えばローノイズアンプ)、IC(Integrated Circuit)、抵抗体、キャパシタおよび/またはインダクタを構成している。分波器等が含まれてよいことから明らかなように、アンテナ301は、通常はアンテナの外部の要素として捉えられる要素を含んでモジュール化されていてよい。
【0130】
また、上記から理解されるように、端子部301cに入力される信号は、既述の実施形態と同様に、電波に変換される電気信号自体(電波と同一の周波数を有する高周波信号)であってもよいし、既述の実施形態とは異なり、電波に変換される電気信号の元となる信号(例えば低周波信号)であってもよい。また、端子部301cが含む端子の数も2つに限定されず、3つ以上であってもよい。ただし、本実施形態の説明では、不平衡信号が入力される第1端子323Aと、基準電位が付与される第2端子323Bとが設けられている態様を例にとる。
【0131】
第1誘電体層203A等に設けられる導体層および/または貫通導体の構成は、回路素子345の種類および数等に応じて適宜に設定されてよい。
【0132】
図示の例では、第1端子323Aは、第1対称軸CL1からx方向の一方側(-x側)に離れた位置に配置されている。変換回路225は、不平衡信号が入力される第2ポート227Bを第1対称軸CL1付近に有している。第1端子323Aから第2ポート227Bへは、複数の配線333が設けられている。複数の配線333間には配線333の端部(パッド)上に実装された回路素子345が介在している。第2ポート227Bから第1インダクタ35Aおよび第1キャパシタ37Aまでの導体層の構成は、第2実施形態と同様とされている。
【0133】
また、図示の例では、第2端子323Bは、第1対称軸CL1に対して第1端子323Aよりも外側に位置している。そして、第2端子323Bからは、基準電位層334が第1端子323A、複数の配線333および複数の回路素子345を囲むように第1対称軸CL1へ延びている。基準電位層334は、第2実施形態の第2端子223Bと同様に、第1誘電体層203Aをその厚さ方向に貫通する貫通導体241によって、第2誘電体層203Bの-z側の面に位置する基準電位層239に接続されている。基準電位層239から第2インダクタ35Bおよび第2キャパシタ37Bまでの経路は第2実施形態と同様である。このような構成により、変換回路225の不平衡側に基準電位が付与される。また、基準電位層334からは適宜に配線(符号省略)が延び出ており、当該配線の端部(パッド)上には、一部の回路素子345が実装されている。これにより、回路素子345に基準電位が付与されている。
【0134】
上述した、1対の端子323、複数の配線333、基準電位層334および回路素子345は、例えば、平面透視において、その全体が基準電位層334に重なっている。また、別の観点では、1対の端子323、複数の配線333、基準電位層334および回路素子345は、例えば、平面透視において、y方向において切欠き部9の長さの範囲内に収まっている。なお、x方向においては、これらの第1対称軸CL1側の一部は、アンテナ導体207に重なっている。
【0135】
以上のとおり、本実施形態に係るアンテナ301は、基板205に実装されているとともに、変換回路225の不平衡側の第2ポート227Bに電気的に接続されている回路素子345をさらに有している。
【0136】
従って、例えば、アンテナ導体207と、アンテナ導体207に接続される種々の要素(例えば、分波器および/または増幅器)との間の経路を短くすることができる。その結果、例えば、当該経路に混入するノイズを低減して、アンテナ301の特性を向上させることができる。また、通常は、アンテナの外部の要素として捉えられる分波器等をアンテナ301に含ませてモジュール化することが可能である。その結果、例えば、モジュールとしても小型化が可能である。
【0137】
また、本実施形態では、変換回路225の不平衡側の基準電位用のポート(例えば2つの貫通導体243)に電気的に接続されている基準電位層239をさらに有している。アンテナ導体207の平面透視において、回路素子345は、基準電位層239に重なっている。および/または、アンテナ導体207の平面透視において、一部の回路素子345は、切欠き部9内に収まっており、全ての回路素子345は、切欠き部9(第1部位11および/または第2部位13)のy方向の長さ内に収まっている。
【0138】
従って、回路素子345とアンテナ導体207との相互干渉を低減することができる。その結果、モジュール化されたアンテナ301の特性が向上する。
【0139】
[第4実施形態]
図13(a)~
図15は、第4実施形態に係るアンテナ401の構成を示す平面図であり、これらの図は、第2実施形態の
図7(a)~
図9に対応している。
【0140】
アンテナ401は、他の実施形態のアンテナと同様に、互いに積層される複数の誘電体層403(第1誘電体層403A~第5誘電体層403E)を含む多層基板(基板405)によって構成されている。第1誘電体層403A、第2誘電体層403B、第3誘電体層403C、第4誘電体層403Dおよび第5誘電体層403Eは、この列挙順で、-z側から積層されている。従って、第1誘電体層403Aの-z側の面(
図13(a)に示している面)は、アンテナ401の下面401bを構成しており、第5誘電体層403Eの+z側の面(不図示)は、アンテナ401の上面を構成している。
【0141】
また、アンテナ401は、他の実施形態のアンテナと同様に、誘電体層403に設けられた導体層および/または貫通導体によって、アンテナ導体407(第1アンテナ導体407Aおよび第2アンテナ導体407B)、端子部401c、平衡不平衡変換回路225等が構成されている。また、アンテナ導体407は、他の実施形態のアンテナ導体と同様に、1対の切欠き部409を有している。切欠き部409は、他の実施形態の切欠き部9と同様に、第1部位11と、第1部位11から第1対称軸CL1とは反対側に延び、第1部位11よりもy方向の径が小さい第2部位413とを有している。
【0142】
アンテナ401の、第2実施形態のアンテナ201との相違点としては、まず、誘電体層403およびアンテナ導体407の平面形状が挙げられる。また、この平面形状の相違に伴って、変換回路225からアンテナ導体407へ至る導体の具体的な構成も第2実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0143】
(アンテナ導体の平面形状)
本実施形態のアンテナ導体407の平面形状は、概して言えば、第2実施形態におけるアンテナ導体207をx方向において短くした形状である。具体的には、例えば、1対の第1部位11同士の距離が他の実施形態に比較して短くされており、かつアンテナ導体407のx方向の両側部分が切り落とされている。別の観点では、第2部位413のx方向の長さが短くされている。さらに別の観点では、アンテナ導体407の外形(切欠き部を除く)は、第1対称軸CL1と平行な一対の辺を備え、その辺の長さは、その辺が対向する間隔、すなわち第1対称軸CL1と直交する方向における間隔に比べ長くなっている。具体的には2倍以上としてもよい。また、アンテナ導体407においては、第2部位413のy方向の長さ(径)も他の実施形態に比較して短くされている。より詳細には、本実施形態は、例えば、以下のように第2実施形態と区別できる。
【0144】
第2実施形態では、例えば、1対の第1部位11同士の距離は、第1部位11のx方向の長さよりも長い。これに対して、本実施形態では、1対の第1部位11同士の距離は、第1部位11のx方向の長さよりも短い。なお、第1部位11のx方向の長さは、別の観点では、第1部位11のy方向の両側に確保されているアンテナ導体407(207)の広さ(x方向)である。また、例えば、第2実施形態では、1対の第1部位11同士の距離は、アンテナ導体207の最大幅(x方向)の1/5以上1/3以下である。これに対して、本実施形態では、1対の第1部位11同士の距離は、アンテナ導体407の最大幅(x方向)の1/10以下または1/20以下である。
【0145】
また、第2実施形態では、例えば、第2部位13のx方向の長さは、第1部位11のx方向の長さと同等以上(1倍以上)である。一方、本実施形態では、第2部位413のx方向の長さは、第1部位11のx方向の長さよりも短い。より具体的には、例えば、第2部位413のx方向の長さは、第1部位11のx方向の長さの1/2以下または1/5以下である。
【0146】
また、第2実施形態では、例えば、第2部位13のy方向の径は、第1部位11のx方向の長さの1/2以上である。なお、
図8(b)に示した例では、前者は後者の約1倍となっており、前者が後者よりも若干長い。一方、本実施形態では、第2部位13のy方向の径は、第1部位11のx方向の径の1/2よりも短い。より具体的には、例えば、第2部位413のy方向の径は、第1部位11のx方向の長さの1/3以下または1/5以下である。
【0147】
アンテナ401が利用される周波数帯に対するアンテナ導体407のy方向の最大長さ(第1対称軸CL1上における長さ)は、概略、他の実施形態と同様とされてよい。ただし、上記の形状および寸法の相違に応じて、適宜に微調整がなされてよい。本願発明者の実験およびシミュレーション計算では、微調整の結果、第1対称軸CL1上の長さは、第4実施形態の方が第2実施形態よりも約1割短くなった。すなわち、上記の形状および寸法の相違は、x方向だけでなく、y方向の小型化に寄与している。
【0148】
なお、第1部位11の形状および大きさならびにアンテナ導体407のy方向両側の頂角等も、概略、第2実施形態と同様とされてよく、また、上記の形状および寸法の相違に応じて適宜に微調整がなされてもよい。
【0149】
(誘電体層の平面形状)
誘電体層403の平面形状は、他の実施形態と同様に、アンテナ導体407の平面形状(切欠き部は除く)と同様の形状であってもよいし、図示の例のように、アンテナ導体407の平面形状とは異なる形状であってもよい。
【0150】
図示の例では、誘電体層403の平面形状は、概略、アンテナ導体407のy方向の両側の2等辺三角形の等辺を延長して形成される矩形状(菱形)とされている。より具体的には、図示の例では、アンテナ導体407の頂角(等辺がなす角)は、90°とされており、誘電体層403の平面形状は正方形である。そして、誘電体層403は、アンテナ導体407に対してx方向の外側へ三角形状に広がっている。別の観点では、基板405は、平面視において、アンテナ導体407から、x方向の外側へ張り出す長さが、アンテナ導体407のうちのy方向における両側部分よりも、その間の部分において大きくなっている。
【0151】
(変換回路からアンテナ導体までの導体)
図13(a)に示すように、端子部401cおよび変換回路225の構成は、第2実施形態と同様とされている。端子部401cおよび変換回路225の拡大図は、第2実施形態に係る
図10と基本的に同様である。ただし、
図13(a)では、配線233aおよび信号層233bのx方向の長さの比が、
図10とは異なっている。なお、これは、アンテナ401の特性の微調整の結果であり、必ずしも本実施形態の配線233aの長さが第2実施形態の配線233aの長さよりも短くなる必要は無い。
【0152】
第2実施形態では、1つの第2部位13のy方向の一方側には2つの給電点19(または21)が設けられた。一方、本実施形態では、
図14(b)(または
図15)に示すように、第2部位413のx方向の長さが短くされたことに伴い、1つの第2部位13のy方向の一方側に設けられる給電点19(または21)は1つとされている。すなわち、1つのアンテナ導体407に対する給電点19は合計で4つとされている。
【0153】
また、第2実施形態では、給電点19(または21)は、アンテナ導体207のうち第2部位13の縁部に隣接して設けられた。本実施形態では、給電点19(または21)は、アンテナ導体207のうち第2部位413の縁部から比較的離れている。具体的には、第1部位11よりも比較的短い距離(例えば給電点に接続される貫通導体の直径以下)でy方向の外側に位置している。ただし、給電点19(または21)は、第2実施形態と同様に、第2部位413の縁部に隣接して設けられても構わない。
【0154】
給電点が4つとされていることに伴い、第2誘電体層403Bを貫通する貫通導体217(
図13(b))および第3誘電体層403Cを貫通する貫通導体17(
図14(a))もそれぞれ合計で4つとされている。また、第2誘電体層403Bの-z側の面に重なる1対の線路415(第1線路415Aおよび第2線路415B)ならびに第3誘電体層403Cの-z側の面に重なる1対の線路416(第1線路416Aおよび第2線路416B)は、第2実施形態の線路215および15に比較して短くされている。
【0155】
以上のとおり、本実施形態のアンテナ401は、1以上の誘電体層403を含んでいる基板405と、誘電体層403に重なっている板状のアンテナ導体407と、を有している。アンテナ導体407は、第1対称軸CL1の両側に、アンテナ導体407をその厚さ方向に貫通する1対の切欠き部409を有している。切欠き部409は、第1実施形態と同様に、第1部位11および第2部位413を有している。従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、アンテナ401は、広帯域化および小型化される。
【0156】
また、本実施形態では、基板405は、平面視において、アンテナ導体407から、x方向の外側へ張り出す長さが、アンテナ導体407のうちのy方向の両側部分よりも、その間の部分において大きい。すなわち、基板405の、アンテナ導体407からx方向の外側へ張り出している三角形状の部分は切り落とされていない。
【0157】
この場合、例えば、本願発明者の実験およびシミュレーション計算によれば、三角形状部分を切り落とした場合に比較して、共振周波数が低くなる。その結果、アンテナ401に要求されている周波数帯に共振周波数を合わせるように設計した場合、第1対称軸CL1上の長さは短くなる。ひいては、アンテナ401をy方向において小型化することができる。なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、x方向の外側に張り出している三角形状の部分を切り落としてもよい。すなわち、三角形状部分を切り落とす量と、第1対称軸CL1上の長さを調節して、基板面積が最も小さくなるように形状を決定することも何ら差し支えない。この場合には、さらに小型なアンテナ401を提供することができる。
【0158】
また、本実施形態では、アンテナ導体407の平面視において、1対の第1部位11同士の距離(x方向)は、第1部位11のx方向の長さよりも短い。および/またはアンテナ導体407の平面視において、第2部位413のx方向の長さは、第1部位11のx方向の長さよりも短い。
【0159】
本願発明者の実験およびシミュレーション計算によれば、このように第1部位11同士の距離および/または第2部位413のx方向の長さを比較的短くしても、アンテナ401の特性を維持することができ、ひいては、x方向においてアンテナ導体407の小型化を図ることができる。さらに、本願発明者の実験およびシミュレーション計算によれば、第1部位11同士の距離および/または第2部位413のx方向の長さを比較的短くすると、アンテナ導体407の共振周波数を下げることができる。その結果、アンテナ401に要求されている周波数帯に共振周波数を合わせるように設計した場合、第1対称軸CL1上の長さを短くすることができる。ひいては、x方向だけでなく、y方向においてもアンテナ導体407の小型化を図ることができる。
【0160】
また、本実施形態では、アンテナ導体407の平面視において、第2部位413のy方向の径が、第1部位11のy方向の長さの1/2よりも短い。
【0161】
本願発明者の実験およびシミュレーション計算によれば、このように第2部位413のy方向の長さを比較的短くしても、アンテナ401の特性を維持することができ、かつアンテナ導体407の共振周波数を下げることができる。その結果、アンテナ401に要求されている周波数帯に共振周波数を合わせるように設計した場合、第1対称軸CL1上の長さを短くすることができる。ひいては、y方向においてアンテナ導体407の小型化を図ることができる。
【0162】
[アンテナの利用例]
図16は、アンテナの利用例としての通信装置151の要部の構成を示すブロック図である。
【0163】
通信装置151は、電波を利用した無線通信を行うものであり、アンテナ159を含んでいる。アンテナ159は、例えば、上述したアンテナ1、201、301または401のいずれかによって構成されてよい。
【0164】
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF-IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調および周波数の引き上げ(搬送波周波数を有する高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器101の送信フィルタ109に入力される。そして、送信フィルタ109は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
【0165】
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器101に入力される。分波器101の受信フィルタ111は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して増幅器161へ出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF-IC153によって周波数の引き下げおよび復調がなされて受信情報信号RISとされる。
【0166】
なお、送信情報信号TISおよび受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された音声信号である。無線信号の通過帯は、適宜に設定されてよく、公知の各種の規格に従ってよい。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、
図16は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
【0167】
第3実施形態では、アンテナ301は、分波器等を含んで構成されたモジュールであってもよいことを述べた。従って、例えば、アンテナ301は、アンテナ159を構成するだけでなく、分波器101を含んでいてもよいし、アンテナ159から増幅器157および161までを含んでいてもよいし、アンテナ159からバンドパスフィルタ155および163までを含んでいてもよいし、アンテナ159からRF-IC153までを含んでいてもよい。
【0168】
[実施例]
実験および/またはシミュレーション計算によって求められた実施形態に係るアンテナの特性を以下に例示する。
【0169】
以下に述べる実施例は、周波数帯L1、L2、L5およびL6の4つの周波数帯においてアンテナが利用されることを想定して設計された。各周波数帯の中心周波数は、以下のとおりである。
L1:1575.42MHz
L2:1227.60MHz
L5:1176.45MHz
L6:1278.75MHz
【0170】
(実施例1)
実施例1は、第2実施形態に係るアンテナ201について具体的な寸法等を設定したものである。代表的な寸法等を以下に示す。なお、基板205およびアンテナ導体207の各部の寸法の比率は、概略、
図7(a)~
図9に図示したとおりである。
基板205:
y方向の最大長さ:88mm
厚さ(導体層も含めた合計厚):約4mm
比誘電率:4.8
アンテナ導体207:
基板205の外縁からアンテナ導体207の外縁までの距離:1mm
厚さ:18μm
【0171】
実施例1に係るアンテナに関して、シミュレーション計算によって得られた周波数帯毎の最大利得を以下に示す。なお、単位はdBiである(以下、同様。)。また、下記の「総合」は、垂直偏波、水平偏波、左円偏波および右円偏波の利得を含む総合利得を指す。
周波数帯 右円偏波 総合
L1 -0.65 2.20
L2 -1.28 1.70
L5 -1.42 1.65
L6 -1.16 1.75
【0172】
図17(a)は、実施例1に関してシミュレーション計算によって得られたS11(反射係数)の値を示す図である。この図において、横軸は周波数を示し、縦軸はS11を示し、図中の線は実施例1に係るアンテナにおける周波数とS11との関係を示している。この図に示されているように、実施例1では、アンテナの利用が想定されている周波数帯において、S11の値は-10dBよりも小さくなっており、良好な特性が示されている。
【0173】
(実施例2)
実施例2は、第3実施形態に係るアンテナ301について具体的な寸法等を設定したものである。その寸法等は実施例1と同様である。アンテナ301に搭載される回路素子345としては、分波器およびローノイズアンプを設け、また、整合回路を構成する素子(抵抗体、キャパシタおよびインダクタ)を設けた。
【0174】
実施例2に係るアンテナに関して、周波数帯毎の総合利得の最大値を以下に示す。ここでは、試作に基づく実測値およびシミュレーションによる計算値を示す。
周波数帯 実測値 計算値
L1 2.3 2.50
L2 2.2 2.07
L5 2.0 2.15
L6 1.6 2.06
上記の値と、実施例1の総合利得の最大値とを比較すると、実施例2の方が実施例1よりも特性が向上していることが伺える。
【0175】
図17(b)は、実施例2に関してS11の値を示す、
図17(a)と同様の図である。この図において、線Lg11は実測値を示し、線Lg12は計算値を示している。この図に示されているように、実施例2では、アンテナの利用が想定されている周波数帯において、S11の値は-10dBよりも小さくなっており、良好な特性が示されている。
【0176】
(実施例3)
実施例3は、第4実施形態に係るアンテナ401について具体的な寸法等を設定したものである。代表的な寸法等を以下に示す。なお、基板405およびアンテナ導体407の各部の寸法の比率は、概略、
図13(a)~
図15に図示したとおりである。
基板のy方向の最大長さ:80mm
基板の厚さ(導体層も含めた合計厚)、基板の比誘電率、基板の外縁からアンテナ導体207の外縁までの距離(y方向両側)およびアンテナ導体の厚さ:第1実施例と同様。
【0177】
実施例3に係るアンテナに関して、シミュレーション計算によって得られた周波数帯毎の最大利得を以下に示す。
周波数帯 右円偏波 総合
L1 -0.92 1.96
L2 -1.35 1.72
L5 -1.42 1.67
L6 -1.32 1.74
上記の値と、実施例1の総合利得の最大値とを比較すると、アンテナ導体の面積を大幅に縮小しているにも関わらず、概ね同等の特性が得られていることが伺える。
【0178】
図17(c)は、実施例3に関してシミュレーション計算によって得られたS11の値を示す、
図17(a)と同様の図である。この図に示されているように、実施例3では、アンテナの利用が想定されている周波数帯において、S11の値は-7dBよりも小さくなっており、十分に実用的であることが示されている。
【0179】
[伝送線路]
実施形態のアンテナ(1、201、301または401)は、既述のように、端子部(1c、201c、301cまたは401)を介して外部の機器(部品)に接続される。外部の機器は、
図16に示した通信装置を例に取ると、分波器101からRF-IC153までの構成を含む。モジュール化されているアンテナ301については、外部の機器は、上記構成のうちのRF-IC153側の一部のみを含んでもよい。アンテナと、外部の機器との接続に関しては、例えば、端子部から延びる伝送線路が用いられてよい。
【0180】
図18(a)は、伝送線路の一例(伝送線路51)を示す平面図である。
図18(b)は、伝送線路51を示す側面図である。
【0181】
これらの図では、アンテナとして、第2実施形態のアンテナ201を例示している。伝送線路51と接続されるアンテナは、他の実施形態のアンテナであってもよい。また、
図18(a)では、アンテナ201の表面の細部の図示が省略されている一方で、アンテナ導体207を点線で示している。
図18(b)では、アンテナ201の中央側部分のみが示されている。
【0182】
伝送線路51は、例えば、同軸ケーブルによって構成されている。同軸ケーブルは、確認的に記載すると、内部導体(例えば銅線)と、内部導体を被覆している絶縁体と、絶縁体を覆っている外部導体(例えば網組み銅線)と、外部導体を被覆している絶縁性の保護被膜とを有している。伝送線路51は、例えば、可撓性を有している。ただし、伝送線路51は、可撓性を有さない構成とされてもよい。
【0183】
伝送線路51は、アンテナ201に対して適宜な方向へ延びていてよい。
【0184】
例えば、伝送線路51は、アンテナ201の下面201bに概ね平行に延びていてもよいし(図示の例)、下面201bに対して傾斜または直交する方向へ延びていてもよい。伝送線路51の外面の保護被膜は、下面201bから全部が離れていてもよいし(図示の例)、下面201bに対して少なくとも一部が当接していてもよい。
【0185】
また、例えば、平面視において、伝送線路51は、第1対称軸CL1(基準直線の一例)に交差(例えば直交)する方向へ延びていてもよいし(図示の例)、第1対称軸CL1に平行な方向に延びていてもよい。例えば、平面視において、伝送線路51は、第1対称軸CL1に対して45°以上または80°以上の角度で交差していてよい。
【0186】
別の観点では、平面視において、伝送線路51は、切欠き部9に重なっていてもよいし(図示の例)、切欠き部9に重なっていてなくてもよい。切欠き部9に重なる場合において、伝送線路51は、例えば、第1部位11および第2部位13の双方に重なっていてもよいし(図示の例)、第1部位11のみに重なっていてもよい。
【0187】
また、例えば、伝送線路51は、側面視および/または平面視において、直線状に延びていてもよいし(図示の例)、一部または全部が曲線状に延びていてもよい。また、伝送線路51は、側面視および/または平面視において、端子部から単に離れるように延びていてもよいし(図示の例)、折り返す部分を有していてもよい。アンテナ201と、伝送線路51によってアンテナ201に接続される部品との相対位置等によっては、伝送線路51が折り返すように配置されることがある。
【0188】
アンテナ201と伝送線路51との接続方法は適宜なものとされてよい。図示の例では、コネクタ53によって両者は接続されている。コネクタ53は、例えば、特に図示しないが、伝送線路51の一端に固定されているプラグと、アンテナ201に実装されて端子部201c(
図10)と接続されているレセプタクルとを有している。そして、プラグとレセプタクルとが嵌合されることによって、両者は固定されるとともに電気的に接続される。
【0189】
(伝送線路に関する実施例)
実施例に係るアンテナを作製し、このアンテナに伝送線路51を接続してアンテナ特性を測定した。その結果、伝送線路51がアンテナ特性に影響を及ぼすことが分かった。また、平面視において、伝送線路51が第1対称軸CL1に交差する方向へ延びて1対の切欠き部9の一方に重なっている態様においては、他の態様に比較して、アンテナ特性が向上することが分かった。具体的には、以下のとおりである。
【0190】
実施例に係るアンテナは、上述した実施例1(第2実施形態に係るアンテナ201に対して具体的な寸法等を設定したもの)とした。その諸元は既に述べたとおりである。この実施例1に係るアンテナ201の端子部201cに同軸ケーブルからなる伝送線路51を接続した。伝送線路51は、アンテナ201の下面201bに対して概ね平行に、端子部201cからアンテナ201の外部へ略直線状に延び出るように配置された。伝送線路51が延びる方向は、x軸に概ね平行に延びる方向と、y軸に概ね平行に延びる方向との2種とした。このような構成に関して、既述の周波数帯L1、L2、L5およびL6におけるアンテナ特性を測定した。
【0191】
図19(a)~
図22(b)は、実施例のアンテナ特性を示す図である。
図19(a)および
図19(b)は、周波数帯L1におけるアンテナ特性を示している。
図20(a)および
図20(b)は、周波数帯L2におけるアンテナ特性を示している。
図21(a)および
図21(b)は、周波数帯L5におけるアンテナ特性を示している。
図22(a)および
図22(b)は、周波数帯L6におけるアンテナ特性を示している。これらの図の(a)は、
図6(a)に相当する。これらの図の(b)は、
図6(b)に相当する。
【0192】
図中、「simulation」は、シミュレーション計算によって得られた利得を示している。シミュレーション計算では、伝送線路51の影響はないものと扱われている。「x方向」は、伝送線路51がx方向に延びている場合の利得を示している。「y方向」は、伝送線路51がy方向に延びている場合の利得を示している。
【0193】
これらの図に示されているように、「x方向」に係る実施例の方が「y方向」に係る実施例よりも全体的に利得が高くなっている。また、
図20(a)および
図22(a)におけるx方向の利得に特に表れているように、「x方向」に係る実施例の方が「y方向」に係る実施例に比較して、伝送線路51に起因する「simulation」からの利得の低下が少ない。なお、上記とは逆に、
図22(b)におけるy方向の利得は、「y方向」に係る実施例の方が「x方向」に係る実施例よりも大きくなっている。ただし、本実施形態のアンテナは、主として、y方向に交差する方向における送受信を想定しているものであるから、「x方向」に係る実施例において大きな不利益が生じているわけではない。
【0194】
上記のような結果となった理由としては、例えば、平面視において伝送線路51が切欠き部9に重なることによって、伝送線路51とアンテナ導体207との相互影響が低減されたことが挙げられる。この観点からすれば、伝送線路51が切欠き部9に重なる態様であれば、伝送線路51が切欠き部9に重ならない態様に比較して、利得が高くなる。すなわち、「x方向」に係る実施例では、伝送線路51がアンテナ201の下面201bに略平行で、かつ第1対称軸CL1に略直交する方向に略直線状に延びたが、このような条件は必ずしも必要でない。
【0195】
[外部導体]
実施形態のアンテナ(1、201、301または401)の周囲には、意図的に、または不可避にアンテナに含まれる導体以外の導体(外部導体)が位置する。上述した伝送線路51もその一種であるが、ここでは、比較的広い面積を有する板状の導体を考える。比較的広い面積は、例えば、アンテナ導体(7、207または407)の面積よりも広い面積である。このような外部導体としては、例えば、アンテナの付近に配置されている回路基板のグランド層、およびアンテナを収容している金属製の筐体(アンテナを含む電子機器の筐体)、
【0196】
外部導体は、アンテナ特性の向上を狙って設けられたものであってもよい。また、外部導体は、アンテナの基体(5、205または405)に設けられていてもよい。これらの場合においては、実施形態に係るアンテナ(1、201、301または401)と、外部導体との組み合わせによってアンテナが構成されていると捉えることができる。ただし、本開示の説明では、便宜上、これらの場合であっても、外部導体はアンテナとは別の部材として表現する。
【0197】
本願発明者が行った実施例に係る実験の結果、アンテナと外部導体との距離を適宜な大きさにすると、アンテナ特性が向上することが分かった。具体的には、以下のとおりである。
【0198】
図23は、アンテナ401および外部導体61の構成の例を示す斜視図である。この図では、アンテナ401の基板405を点線で示し、2つのアンテナ導体407のうち外部導体61側のものを実線で示している。
【0199】
実施例に係るアンテナは、上述した実施例3(第4実施形態に係るアンテナ401に対して具体的な寸法等を設定したもの)とした。その諸元は既に述べたとおりである。この実施例3に係るアンテナ401のz方向の一方側にアンテナ401に対して略平行に板状かつ正方形の外部導体61を配置した。外部導体61の1辺の長さは160mmとした。既述のように、実施例3における基板405のy方向の最大長さは80mmであり、外部導体61は、アンテナ401の面積に対して十分に大きい面積を有し、平面視においてアンテナ401は外部導体61に収まる。外部導体61は電気的に浮遊状態とされた。
【0200】
そして、外部導体61を配置した場合と、外部導体61を配置しない場合とについて利得を測定した。外部導体61を配置した場合については、外部導体61側のアンテナ導体407の第1対称軸CL1(基準直線の一例)に平行な中心線CL3(これも基準直線の一例である)から外部導体61までの距離H(最短距離)として種々の値を設定して測定を行った。
【0201】
図24(a)、
図24(b)、
図25(a)および
図25(b)は、利得の測定結果を示す図である。
図24(a)は、周波数帯L1における利得を示している。
図24(b)は、周波数帯L2における利得を示している。
図25(a)は、周波数帯L5における利得を示している。
図25(b)は、周波数帯L6における利得を示している。既述のように、実施例3に係るアンテナは、これら4つの周波数帯において利用されることを想定していることから、各周波数帯について利得を調べている。
【0202】
また、これらの図において、横軸は、距離Hを示している。横軸の上段の数字は、距離H(mm)を示している。横軸の中段の数字は、利得が測定された周波数(周波数帯L1、L2、L5またはL6の中心周波数)を有する電波の真空中における波長(λ1、λ2、λ5またはλ6)で距離Hを割って正規化した値H/λ×100(%)を示している。横軸の下段の数字は、正規化のための波長として、上記4つの波長の平均λaを用いて距離Hを正規化した値H/λa×100(%)を示している。縦軸は、種々の方向からの直線偏波に関して得られた最大利得を示している。
【0203】
図中の線は、「E1」は、外部導体61が配置されている実施例を示し、「E0」は、外部導体61が配置されていない実施例を示している。
【0204】
これらの図に示されているように、距離Hが0(mm)に近い値においては、実施例E1は、実施例E0に比較して利得が低い。しかし、距離Hが大きくなっていくと、実施例E1の利得は高くなっていき、実施例E0の利得よりも高くなる。さらに距離Hが大きくなると、実施例E1の利得の上昇は頭打ちとなり、実施例E1の利得は低くなっていく。
【0205】
より詳細には、概ね、正規化された距離H/λ×100(%)が5%以上であると、実施例E1の利得は実施例E0の利得以上となる。今回の実験の範囲では、実施例E1の利得が実施例E0の利得以上を維持できる、距離Hの上限値は確認されなかった。ただし、実施例E1の利得において、上昇が頭打ちとなってから低下していく過程の値を外挿すると、概ね、距離H/λ×100(%)が70%以下であれば、実施例E1の利得が実施例E0の利得以上を維持できることが分かる。実施例E1において、より高い利得が得られる距離H/λ×100(%)の範囲は、例えば、10%以上30%以下の範囲である。各周波数帯の中心周波数の波長(λ1、λ2、λ5またはλ6)で正規化した場合と、平均の中心周波数の波長λaで正規化した場合とで、上記の範囲の例に大きな差異は生じない。
【0206】
このような結果が得られた理由としては、例えば、外部導体61が逆L型アンテナの地板のように機能したことが挙げられる。この観点から、外部導体61は、例えば、接地されてもよいし、電気的に浮遊状態とされてもよい。また、外部導体61は、中心線CL3回りのいずれの方向に位置していてもよい。外部導体61は、中心線CL3に対して概ね沿っていれば、平板状であってもよいし、曲面状であってもよい。外部導体61と中心線CL3とが成す角度は、例えば、10°未満(0°含む)とされてよい。
【0207】
[アンテナ導体の平面形状]
アンテナ導体7の平面形状は、アンテナ(1、201、301または401)で示された例に限定されない。例えば、誘電体層503上に設けるアンテナ導体507において、
図26に示すように切欠き部9以外の導体非形成領域9xを設けてもよい。
図26は、
図14(b),(c)に示す導体パターン407に導体非形成領域9xを設けた場合の平面図である。
図26(a)に示すように、アンテナ導体507中に閉空間を形成するような導体非形成領域9xを設けてもよいし、
図26(b)に示すように切り欠き状の導体非形成領域9xを設けてもよいし、
図26(c)に示すようにこれらを組み合わせてもよい。閉空間を形成するような導体非形成領域9xを複数設けてもよいし、切り欠き状の導体非形成領域9xを複数設けてもよい。
【0208】
このように導体非形成領域9xを設けることで、以下のメカニズムによりアンテナ導体507を小型化することができる。すなわち、アンテナ導体において切欠き部9を回り込む電流の経路を調査した結果、経路Rは両切欠き部9を挟んで第1対称軸CL1,第2対称軸CL2に対して、たすき掛けするように対角線上を通ることが推察された。より具体的には、切欠き部8をネック部として8の字状の経路をとることが分かった。従って、導体非形成領域9xが、経路Rをアンテナ導体507の外周部寄りに導くようなガイドの役割をなし、経路Rを長くとることができる。その結果、アンテナ導体507の外形を小型化することができる。なお、経路Rは
図26(a)に破線で示す。
【0209】
ただし、これらの導体非形成領域9xは、第1対称軸CL1,第2対称軸CL2の双方に対して対称形状、対称配置となるようにする。経路による位相を揃えるためである。
【0210】
ここで、
図26(a)に示すアンテナ導体507を用いたアンテナに関して、実施例1~3と同様にシミュレーション計算を行なった。シミュレーション計算により得られた周波数帯毎の最大利得を以下に示す。
周波数帯 右円偏波 総合
L1 -0.53 2.30
L2 -1.15 1.94
L5 -1.20 1.91
L6 -1.09 1.95
【0211】
上記の値と、実施例1~3の総合利得の最大値とを比較すると、アンテナ導体の面積を大幅に縮小しているにも関わらず、概ね同等の特性が得られていることが伺える。なお、実施例3におけるアンテナ導体407に比べて、y方向の寸法をおよそ8%縮小することができた。
【0212】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0213】
第1~第4実施形態は適宜に組み合わされてよい。例えば、第3実施形態の回路素子をアンテナに実装する構成は、第1、第2および第4実施形態のアンテナ導体と組み合わされてよい。
【0214】
基板は、誘電体層からなるものに限定されない。例えば、基板は、誘電体層以外の層(例えば半導体層)を含んでいてもよい。ただし、基板のうちの誘電体層からなる部分のみを本開示に係る基板と捉えてもよい。なお、誘電体層が誘電体以外の材料(例えば樹脂が含浸される基材)を含んでいてもよいことは実施形態でも述べたとおりである。
【0215】
アンテナ導体は、1層のみ設けられていてもよいし、3層以上設けられていてもよい。また、アンテナ導体は、基板(誘電体)に埋設されずに、基板の上面または下面に重なっていてもよい。別の観点では、誘電体層は1層のみでよく、アンテナ導体を挟んで多層で設けられていなくてもよい。
【0216】
アンテナ導体は、平面視において、対称性が崩されていてもよい。なお、微調整のために比較的小さい面積(例えば対称軸の一方側と他方側との面積差が両者のうちの小さい方の面積の5%以下)で対称性が崩されている場合は、線対称と表現する態様に含められてもよい。
【0217】
アンテナ導体の平面形状(切欠き部が無いとした場合の形状)は、多角形に限定されない。例えば、当該平面形状は、円形または楕円形のように曲線を含む形状であってもよいし、曲線と直線との組み合わせであってもよい。また、アンテナ導体の平面形状が多角形である場合において、多角形は、矩形および六角形に限定されない。例えば、y方向両側に第1対称軸CL1に直交する辺を有する八角形であってもよい。
【0218】
同様に、第1部位および/または第2部位の形状は、矩形に限定されない。例えば、これらの部位の形状は、円形または楕円形のように曲線を含む形状であってもよいし、曲線と直線との組み合わせであってもよいし、矩形以外の多角形であってもよい。また、第1部位11と第2部位13との間には段差が存在しなくてもよい。すなわち、両者の境界は一義的に特定可能でなくてもよい。切欠き部内に、基準直線(第1対称軸CL1)に対して相対的に離れた位置に、基準直線に相対的に近い位置よりも基準直線に平行な方向の径が短い部分が存在すれば、第1部位および第2部位が存在しているといえる。
【0219】
第2~第4実施形態では、アンテナ導体(および基板)が、平面視において、基準直線(第1対称軸CL1)から離れるほど基準直線に平行な方向(y方向)の長さが短くなる形状を示した。この形状は、実施形態で例示したy方向の両側に三角形が位置する形状に限定されない。例えば、y方向の両側部分は、y方向外側を上底とする台形状であってもよいし、y方向外側に膨らむ弧状であってもよいし、基準直線からx方向へ離れるほどy方向中央側に位置する階段状であってもよい。なお、階段状であってもよいことから明らかなように、基準直線から離れるほど基準直線に平行な方向の長さが短くなるという場合、基準直線からのx方向の距離に関わらずにy方向の長さが一定の部分がアンテナ導体の一部に含まれていても構わない。
【0220】
第4実施形態では、第2実施形態に比較して、1対の第1部位同士の距離、第2部位の基準直線(第1対称軸CL1)に直交する方向(x方向)の長さ、および第2部位の前記基準直線に平行な方向(y方向)の長さが短くされた形状を例示した。この3つの長さは、全てが短くされなくてもよく、いずれか1つ、または2つが短くされてもよい。
【0221】
第2実施形態の説明で触れたように、アンテナは、多層基板の平面視における一部であってもよいし、および/または多層基板の厚み方向における一部であってもよい。すなわち、多層基板の一部にアンテナが作り込まれていてもよい。その場合には、アンテナの平面形状はアンテナ導体の外形と略一致するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0222】
1…アンテナ、3A…第1誘電体層、3B…第2誘電体層、3C…第3誘電体層、5…基板、7A…第1アンテナ導体、7B…第2アンテナ導体、9…切欠き部、11…第1部位、13…第2部位、CL1…第1対称軸(基準直線)。