(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】舗装用補修材およびこれを用いた補修工法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20220926BHJP
C04B 24/24 20060101ALI20220926BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20220926BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20220926BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20220926BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20220926BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20220926BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/24 A
C04B22/06 Z
C04B22/08 Z
C04B22/14 B
C04B16/06 Z
B28C7/04
E01C23/00 A
(21)【出願番号】P 2018243794
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】五伝木 一
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 潤一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 風香
(72)【発明者】
【氏名】笠原 美里
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 聖一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特許第6171060(JP,B1)
【文献】特開2013-136477(JP,A)
【文献】特公昭48-011622(JP,B1)
【文献】特開2017-057609(JP,A)
【文献】特開2016-102318(JP,A)
【文献】特開2018-100503(JP,A)
【文献】特開2005-008501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
E01C 7/00-7/36
E01C 23/00-23/24
B28C 7/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを100部と、
エマルジョンを50~300部と、
酸化鉄を5~100部と、
骨材を100~1000部と
を含有してなる転圧不要な舗装用補修材。
【請求項2】
さらに、ガラス化率が70%以上、CaO/Al
2O
3モル比が1.0~2.7、ブレーン比表面積が3000cm
2/g以上であるカルシウムアルミネートを含有する請求項1に記載の舗装用補修材。
【請求項3】
さらに、石膏を含有する請求項2に記載の舗装用補修材。
【請求項4】
さらに、繊維を4部未満含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の舗装用補修材。
【請求項5】
さらに、墨汁を100部未満含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の舗装用補修材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の舗装用補修材と、液体とを手混合する工程と、
手混合して得られた混合物を、補修対象箇所に流し込む工程と
を含む、転圧不要な補修工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト、セメントのモルタル又はコンクリート、若しくは各種ブロックなどによる舗装のための補修材および補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路などの舗装面の小規模補修には加熱アスファルトモルタルやセメント系材料が補修材として多用されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-105713号公報
【文献】特開2016-102318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されるような従来の加熱を必要とする瀝青系の表面補修工法は,熱いうちに或いは加熱しながら補修作業を行わなければならない。このため、現場における舗設作業に制約が課されてしまう問題があった。また、従来技術に係る瀝青(アスファルト)系の補修材料は、交通車両等によるわだち掘れなどの塑性変形を伴うため、繰り返しの補修を必要とすることがあるが、作業者や作業方法のばらつきにより補修後の状態が一定しない問題が発生していた。特に、補修に転圧作業を伴う場合には、従来技術に係るアスファルト系補修材料では、転圧が不十分な場合であると性能の低下を招いてしまっていた。
【0005】
さらに、道路補修をするにあたっては、平面だけでなく傾斜面での補修も多く必要になる。このため特許文献2に記載されるような従来のセメント系材料では、チクソ性が小さいため、傾斜面で材料が流れてしまい、硬化後に凹凸が発生する課題が解決できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決できる舗装用補修材について鋭意研究を進めたところ、特定の材料を組み合わせることにより、チクソ性を示ししかも手作業での混合が可能な程に練り易い補修材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明の実施形態では下記を提供できる。
【0008】
セメントを100部と、
エマルジョンを50~300部と、
酸化鉄を5~100部と、
骨材を100~1000部と
を含有してなる転圧不要な舗装用補修材。
【0009】
或る実施形態では、上記の舗装用補修材がさらに、
ガラス化率が70%以上、CaO/Al2O3モル比が1.0~2.7、ブレーン比表面積が3000cm2/g以上であるカルシウムアルミネート、
石膏、
4部未満の繊維、
100部未満の墨汁
のうちのいずれか一種以上を含有してもよい。
【0010】
上記舗装用補修材と液体とを手混合する工程と、
手混合して得られた混合物を、補修対象箇所に流し込む工程と
を含む、転圧不要な舗装補修工法も提供できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る舗装用補修材は、補修規模に応じた量を施工現場で短時間に、常温で製造でき、かつ、チクソ性を持つため平面だけでなく傾斜面でも材料がダレず、硬化後も凹凸が発生しづらいという効果を奏することができる。さらには本舗装用補修材は、優れたチクソ性を有するため手混合による施工が可能であるという効果をも奏する。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書における「部」や「パーセント(%)」は、特に規定しない限り質量基準で示す。また本明細書における数値範囲は、別段の定めのないかぎりは上限値と下限値を含むものとする。
【0013】
以下、本発明に係る舗装用補修材の実施形態について説明する。本舗装用補修材は、セメント、エマルジョン、酸化鉄、骨材の四種の成分を特定の割合で含有することを特徴とする。
【0014】
使用できるセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカ等を混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント等が挙げられる。更には、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント、いわゆるエコセメントが挙げられる。本発明の実施形態では、上記のうちの一種又は二種以上を併用して使用することが可能である。
【0015】
使用できるエマルジョンとしては、付着強度や耐久性を付与するものであれば特に限定されず、通常、セメント混和用に用いられているエマルジョンであればよい。また、粉末状及び液体状何れも使用可能である。
【0016】
エマルジョンの種類としては、例えば、JIS A 6203:2015で規定されているセメント混和用のポリマー(ポリマーディスパージョン)が使用でき、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ノニオン系のクロロプレンゴム、及び天然ゴム等のゴムラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニルビニルバーサテート系共重合体、及びスチレン・アクリル酸エステル共重合体やアクリロニトリル・アクリル酸エステルに代表されるアクリル酸エステル系共重合体、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂に代表されるポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。これらのうちでは、チクソ性を得やすい観点からスチレン・ブタジエンゴムとエチレン・酢酸ビニル(EVA)系ゴムが特に好ましい。
【0017】
使用できる酸化鉄としては、Fe3O4、α-Fe2O3、β-Fe2O3、γ-Fe2O3、αFeOOH、βFeOOH、γFeOOHなどが挙げられるが、これらの中では、一般的な舗装の明度(L値)により少量で近づけられる点から、Fe3O4が好ましい。酸化鉄の粒度は、0.01~100μmが好ましい。
【0018】
本発明に使用する骨材は、通常使われている川砂、海砂、砕砂、珪砂、軽量骨材などが挙げられ、それらのうち1種又は2種以上を混合して使用することが可能であり、プレミックス製品として使用する際にはこれらを乾燥させたものを使用することが好ましい。
【0019】
前記骨材の寸法は、最大粒径5.0mm以下とすることが好ましく,最大粒径2.5mm以下とすることがより好ましい。その理由は、5.0mmを超える骨材が混入すると舗装面を滑らかに仕上げることが困難となり、凹凸が生じやすくなるためである。また、補修面とその周囲の舗装面との間に段差が生じ、補修箇所を車両が通過する際に補修材が段差の境界から剥離してしまう原因となり兼ねない。
【0020】
上記各原材料からなる本発明の舗装用補修材の配合割合は、セメント100部に対して、エマルジョンは50部~300部、酸化鉄は5部~100部、骨材は100部~1000部である。好ましい実施形態においては、さらに優れたチクソ性を得られる観点から、セメント100部に対して、エマルジョンは100部~250部、酸化鉄は5部~100部、骨材は200部~900部としてもよい。
【0021】
セメント100部に対するエマルジョン量が50部未満であると、傾斜面を施工するのに十分なチクソ性を得られなかったり、弾性(たわみ)が小さくなることによりひび割れ抵抗性が下がり、車両等の荷重が掛かった際にひび割れを起こしたりする問題が発生し、一方エマルジョン量が300部を超えると、粘性が上がり作業性が悪くなったり、車両等が通過した際にエマルジョンが周囲に染み出たりする問題が発生する。
【0022】
セメント100部に対する酸化鉄量が5部未満であると、傾斜面を施工するのに十分なチクソ性を得られない問題が発生し、一方酸化鉄量が100部を超えると粘性が上がり作業性が悪くなる問題がある。酸化鉄の粒度は数百μm以下と非常に細く、添加量が増加するにつれて材料の粘度も大きくなるため、酸化鉄量が5~100部の範囲であると適切なチクソ性が得られることを本発明者は見出した。
【0023】
セメント100部に対する骨材量が100部未満であると凍結融解抵抗性が急激に落ちる問題が発生し、一方骨材量が1000部を超えると強度が下がり併用時に破損する問題がある。
【0024】
好ましい実施形態においては、舗装用補修材がさらに、硬化速度を高める目的または初期強度を高める目的を以ってカルシウムアルミネート(以下「CA」とも略記する)をさらに含んでもよい。そうしたカルシウムアルミネートとしては、一般に市販されているアルミナセメントを使用できる。また、アルミナセメントよりも短時間で硬化し、その後の初期強度発現性が高いカルシウムアルミネートとして、電気炉で溶融後、急冷した非晶質のカルシウムアルミネートを好ましく使用してもよい。カルシウムアルミネート中のCaO/Al2O3モル比は、1.0~2.7が好ましく、1.5~2.5がより好ましい。カルシウムアルミネート中に含まれるCaOやAl2O3以外の他の成分は、15%以下であることが初期強度発現性の点から好ましく、10%以下であることが、より好ましい。15%を超えると、硬化に時間を要し、更に低温環境下では固まらない場合がある。CaOやAl2O3以外の他の成分の代表例として二酸化ケイ素があり、その他に、例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等があり、特に限定されるものでない。
【0025】
非晶質カルシウムアルミネートのガラス化率は、70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。70%未満であると、初期強度発現性が低下する場合がある。ガラス化率は加熱前のサンプルについて、粉末X線回折法により、結晶鉱物のメインピーク面積Sを予め測定し、その後1000℃で2時間加熱後、1~10℃/分の冷却速度で徐冷し、粉末X線回折法による加熱後の結晶鉱物のメインピーク面積S0を求め、更に、これらのS0及びSの値を用い、次の式を用いてガラス化率χを算出できる。
ガラス化率χ(%)=100×(1-S/S0)
【0026】
カルシウムアルミネートの粒度は、初期強度発現性の面で、ブレーン比表面積値で、3000cm2/g以上が好ましく、4000cm2/g以上がより好ましい。ブレーン比表面積値が3000cm2/g未満であると、初期強度発現性が低下する場合がある。
【0027】
カルシウムアルミネートの使用量は、セメント100部に対して、60部以下が好ましく、5部以上60部以下がより好ましく、10部以上50部以下がさらに好ましい。カルシウムアルミネートの使用量が60部を超えると硬化までの時間が短すぎて作業時間が確保しづらい場合がある。
【0028】
また好ましい実施形態では、舗装用補修材がさらに、初期強度を高める目的を以って石膏を含んでいてもよい。そうした石膏としては、二水石膏、半水石膏と無水石膏が使用でき、強度発現性の面では無水石膏が好ましく、弗酸副生無水石膏や天然無水石膏が使用できる。石膏を水に浸漬させたときのpHは、pH8以下の弱アルカリから酸性のものが好ましい。pHが高い場合、石膏成分の溶解度が高くなり、初期の強度発現性を阻害する場合がある。ここでいうpHとは、石膏/イオン交換水=1g/100gの20℃における希釈スラリーのpHを、イオン交換電極等を用いて測定するものである。これらの石膏のうち、強度発現性の点から、弗酸副生無水石膏が好ましい。石膏の粒度は、初期強度発現性及び適正な作業時間が得られるという観点から、ブレーン比表面積値で3000cm2/g以上が好ましく、4000cm2/g以上がより好ましい。
【0029】
石膏は、上記のカルシウムアルミネートと併用するのが硬化時間を適切に調節する上で好ましい。石膏の使用量は、セメント100部に対して、5部以上60部以下が好ましく、10部以上50部以下がより好ましい。石膏の使用量が60部を超えると初期強度発現性が低下する場合がある。
【0030】
好ましい実施形態においては、舗装用補修材がさらに、ひび割れ抵抗性を向上させる目的を以って繊維を含んでいてもよい。そうした繊維としては、ひび割れ抵抗性を向上させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ビニロン繊維やプロピレン繊維、ナイロン繊維等の高分子繊維、鋼繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維に代表される無機繊維が挙げられる。これらのうち、軽量で機械的性能や耐久性に優れている点から、高分子繊維を用いるのが好ましい。
【0031】
繊維の長さとしては、1~20mmが好ましく、3~10mmがさらに好ましい。繊維の長さが1mm未満ではひび割れ抑制効果が小さくなるおそれがあり、20mmを超えると粘性が上がり作業性が悪くなるおそれがある。
【0032】
繊維の太さとしては、0.004~0.15mmが好ましく、0.01~0.10mmがより好ましい。繊維の太さが0.004~0.15mmの範囲外であると、ひび割れ抑制効果が小さくなるおそれがある。
【0033】
繊維を使用する場合にはその量は、セメント100質量部に対して4質量部未満が好ましく、0.3質量部以上4質量部未満がより好ましく、0.6~3質量部がさらに好ましい。繊維の量が4質量部以上であると、粘性が上がり過ぎて手作業による混合がしづらくなる場合がある。
【0034】
好ましい実施形態では、舗装用補修材がさらに、チクソ性をさらに向上させる目的を以って墨汁を含んでいてもよい。そうした墨汁としては、一般に液体状で市販されている書道用の液体墨(以下、墨汁と称する)が使用できる。具体的には、カーボンブラックで代表される黒色顔料を、膠またはその他の水溶性樹脂の水溶液と混練し、必要に応じて、界面活性剤、防腐剤、その他の添加剤を加え、ローラー等の分散機器を用いて、カーボンブラックを分散させて成るものである。
【0035】
墨汁を使用する場合その量は、セメント100質量部に対して100質量部未満が好ましく、3質量部以上100質量部未満がより好ましく、6~90質量部がさらに好ましい。墨汁の量が100質量部以上であると、粘性が上がり過ぎて手作業による混合が難しくなる場合がある。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、適切な量の墨汁が舗装用補修材中に存在すると、その墨汁が有する炭化物がエマルジョン中のポリマー相を架橋させることで粘性が付与され、舗装用補修材のチクソ性に好ましい影響を与えると考えられる。
【0036】
以上説明してきたように、本発明の実施形態に係る舗装用補修材は、セメント、エマルジョン、酸化鉄、骨材という四種の材料と、さらに必要に応じて、カルシウムアルミネート、石膏、繊維、墨汁のいずれか一種以上の材料とを混合することにより製造できる。それら各材料の混合方法は、特に限定されない。例えば或る実施形態では舗装用補修材の施工時に、それぞれの材料を混合してもよい。また別の好ましい実施形態では、舗装用補修材を構成する材料の全部を、施工の前に予め混合しておいてもよい(すなわち、舗装用補修材がプレミックスモルタルであることが好ましい)。
【0037】
舗装用補修材を構成する材料を混合するときに用いる混合装置としては、既存のいかなる混合装置も使用可能である。例えば、混合装置として、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ及びナウタミキサ等が使用可能である。本実施形態に係る舗装用補修材は、適切なチクソ性を有するため、その施工にあたって特別な機材は必要なく、粉体と液体をビニール袋等の容器の中で手混合して材料の混練を行うことも可能である。このような特徴は、チクソ性に劣る従来技術に係る補修材では得られない。
【0038】
本発明の実施形態に係る舗装用補修材の使用にあたっては、道路の補修箇所(ポットホール)に対し、水と混練した舗装用補修材を直ちに充填し、充填後直ちにコテで仕上げることで平滑性が確保される。
【0039】
混練時の水量は、セメント100部に対して、10~70部が好ましい。水量が10部未満だと、作業時間が確保しづらい場合があり、また水量が70部を超えると初期強度発現性が低下する場合がある。
【0040】
本実施形態に係る舗装用補修材は、車道や歩道の舗装路面の補修に使用できるだけでなく、地下埋設物の人孔鉄蓋周辺部分、橋梁ジョイント部等の破損部や段差部分などを補修するためにも使用可能である。
【0041】
本実施形態に係る舗装用補修材を、液体と手混合して、補修対象箇所(舗装上のポットホールやひび割れなど)へと流し込むことで、混合や施工のために特別な機材を用いることなく、補修を行うことが可能である。手混合は、30秒前後の短時間で行うことができる。また当該液体は通常の舗装補修に用いられるものであれば特に限定されず、例えば水(水道水など)を使用できる。またこの本実施形態に係る補修工法では、従来技術とは異なり、転圧を必要としないという効果も奏する
【実施例】
【0042】
以下、実施例、比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
[実験例1]
表1に示す配合で、ヘンシェルミキサで混合し、舗装用補修材を作製した。また得られた舗装用補修材を水と手混合にて混練し、チクソ性を評価した。配合と評価を表1に示す。
使用材料および試験方法は、以下の通りである。
【0044】
使用材料:
セメント:普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積3350cm2/g
骨材:石灰石砕砂、最大粒径1.2mm
エマルジョン(ポリマーラテックス):スチレン・ブタジエン(SBR)系ゴム、またはエチレン・酢酸ビニル(EVA)系ゴム
酸化鉄:市販品(主成分:Fe3O4)、粒度0.2μm
【0045】
試験方法:
チクソ性について、以下の(1)(2)の2項目を評価した。
(1)静置フロー(JIS R 5201:2015)
200mm以下の場合、傾斜面での施工時にダレることなく施工できると判断した。
○:静置フロー値が180mm以下。
△:静置フロー値が180mm超200mm以下。
×:静置フロー値が200mm超。
(2)手混合の可否
ビニール袋の中に材料を投入して30秒間手混合した際、手混合時の練り易さ(袋に材料がべとつかないか)を評価した。
○:軽く袋を動かして混合できる。
△:大きく・激しく袋を動かせば混合できる。
×:手で袋の中の材料を揉み込まないと混合できない。
チクソ性の総合評価として、上記(1)(2)の悪い方の評価を用いた。すなわち総合評価が「○」であるのは、上記(1)(2)ともに「○」の場合である。なお記号「○」は優れていること(excellent)、「△」は良くないこと(not good)、「×」は劣ること(poor)を意味する。
【0046】
【表1】
※実験番号20:材齢30分時点で、圧縮強度が0.74N/mm
2と低くなった。
【0047】
[実験例2]
エマルジョン(ポリマーラテックス)としてスチレン・ブタジエン(SBR)系ゴムのみ用い、さらにカルシウムアルミネート及び石膏を用いて、表2に示す配合で舗装用補修材を調製した。得られた舗装用補修材に対して可使時間と圧縮強度の評価を行った。使用材料と、可使時間と圧縮強度の評価方法は以下の通りである。
【0048】
使用材料:
カルシウムアルミネート:試薬CaOと試薬Al2O3を表2に示すモル比で溶融、急冷して得たもの。ガラス化率とブレーン比表面積は表2参照。
石膏:市販の無水石膏、ブレーン比表面積4500cm2/g
(上記以外は実験例1に同じ)
【0049】
試験方法:
可使時間
指触にて、材料が強張り始めた時間(分)を判断した。
圧縮強度(JIS R 5201:2015)
材齢30分の圧縮強度(N/mm2)を測定した。
【0050】
【表2】
※1 混合直後に硬化した。
※2 1時間以上硬化せず。
※3 供試体が脱型できないほど柔らかいため、測定できず。
【0051】
[実験例3]
上記実験例2と同様の製造条件に加えてさらに繊維を添加して舗装用補修材を得た。得られた舗装用補修材に対してチクソ性とひび割れ抵抗性の評価を行った。使用材料と、ひび割れ抵抗性の評価方法は以下の通りである。チクソ性の評価方法は上記実験例1と同様にした。
【0052】
使用材料:
繊維:ナイロン系収束繊維(繊維長3mm、繊維太さ0.05mm)
(上記以外は実験例2に同じ)
【0053】
試験方法:
アスファルト平板の中心部に、φ10cm、t=2cmの擬似ポットホールを作成し、そこに手混合した材料を流し込んで充填した。転圧は行わなかった。施工から30分後に、載荷荷重を686Nに調整した小型ゴム車輪を5時間(42回/分)走行させ、施工面のひび割れの有無を確認した。
○:目視によりひび割れの確認ができなかったもの。
×:目視によりひび割れが確認されたもの。
【0054】
【0055】
[実験例4]
上記実験例2と同様の製造条件に加えてさらに、墨汁(市販品)を添加して舗装用補修材を調製した。上記実験例3と同様にしてチクソ性とひび割れ抵抗性の評価を行った。
【0056】