(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】コポリマーバインダー
(51)【国際特許分類】
C08F 212/08 20060101AFI20220926BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20220926BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20220926BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220926BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220926BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220926BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220926BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220926BHJP
【FI】
C08F212/08
C08F220/12
C08F220/28
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/0566
(21)【出願番号】P 2018553389
(86)(22)【出願日】2017-04-24
(86)【国際出願番号】 CA2017050505
(87)【国際公開番号】W WO2017181294
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-03-25
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(32)【優先日】2016-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダイグル, ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-110108(JP,A)
【文献】特開2001-035496(JP,A)
【文献】特開2011-134618(JP,A)
【文献】国際公開第2010/114119(WO,A1)
【文献】特表2012-506772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 290/00-290/14
H01M 4/00-4/62
H01M 10/052
H01M 10/0566
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・0.01から0.20の間、好ましくは0.05から0.10の間で変動するモル比aを有するモノマーA、
・0.15から0.4の間、好ましくは0.15から0.30の間で変動するモル比bを有するモノマーB、
・0.50から0.70の間、好ましくは0.60から0.70の間で変動するモル比cを有するモノマーC、および
・0.01から0.10の間で変動するモル比dのモノマーD
を含むコポリマーであって、
前記モノマーAが、低モル質量のポリエチレンオキシド(PEO)のペンダント型鎖を含む親水性モノマーであり、
前記モノマーBが、-30℃またはそれ未満のガラス転移温度(Tg)を有する疎水性モノマーであり、
前記モノマーCが、前記モノマーBより疎水性であり、80℃またはそれよりも高いガラス転移温度(Tg)を有し、
前記モノマーDがアクリルアミドジケトンであり、
前記モノマーが、
・親水性セグメント、
・疎水性セグメント、および
・前記親水性セグメントと前記疎水性セグメントの間に位置する中間セグメント
に組織化され、
前記中間セグメントが、前記親水性セグメントの親水性と前記疎水性セグメントの親水性の中ほどの親水性を有し、
前記親水性セグメントが、前記モノマーAおよび前記モノマーBの一部分を含み、前記中間セグメントおよび前記疎水性セグメントが、前記モノマーBの残りおよび前記モノマーCを含み、前記中間セグメントが、前記疎水性セグメントに比べて前記モノマーBが富化されており、前記疎水性セグメントが、前記中間セグメントに比べて前記モノマーCが富化されている、コポリマー。
【請求項2】
前記コポリマーが、次式
【化11】
を有し、式中、
A、B、CおよびDはそれぞれ、前記モノマーA、B、CおよびDを表し、
a、b、cおよびdはそれぞれ、前記モル比a、b、cおよびdを表す、
請求項
1に記載のコポリマー。
【請求項3】
PEOの前記ペンダント型鎖の前記モル質量が、300から2000g/molの間、好ましくは300から1000g/molの間、より好ましくは300から500g/molの間で変動する、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記モノマーAが、ポリエチレングリコールメチルアクリレートまたはポリエチレングリコールメチルメタクリレートである、請求項1から3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記モノマーAが、式
【化12】
を有し、式中、
Rは、水素原子またはメチル基であり、xは、前記PEO鎖の前記モル質量が請求項3に定義した通りである数のPEO反復単位を表す、請求項4に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記モノマーBの前記ガラス転移温度(Tg)が、-30℃から-60℃の間で変動する、請求項1から5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
前記モノマーBが、
・n-ブチルアクリレート、
・-30℃またはそれ未満のTgを有する別のアクリレートまたはメタクリレート、特にアルキルアクリレートまたはメタクリレートであって、前記アルキルが、置換されていない、または好ましくは鎖末端部において、1個もしくは数個のヒドロキシおよび/もしくはアルコキシ基で置換されており、前記アルコキシが、置換されていない、または好ましくは前記末端部において、1個もしくは数個のヒドロキシおよび/もしくはアルコキシ基、好ましくはアルコキシ基で置換されているアクリレートまたはメタクリレート、
・ブチルビニルエーテル、あるいは
・それらの混合物
である、請求項1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記モノマーCが、スチレンまたはその誘導体、アクリロニトリル、vinazene(商標)(イミダゾールの誘導体、さらに詳細には2-ビニル-4,5-ジシアノイミダゾール)、メチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アクリロイルモルホリン、フェニルメタクリレート、ビニルフェロセン、フェロセンメチルメタクリレートまたはそれらの混合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
前記モノマーAが、ポリエチレングリコールメチルアクリレートまたはポリエチレングリコールメチルメタクリレートであり、前記モノマーBがn-ブチルアクリレートであり、前記モノマーCがスチレンである、請求項1から8のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項10】
前記コポリマーは、次式
【化14】
を有し、式中、Rおよびxは、請求項5に定義した通りであり、a、b、cおよびdは、請求項1に定義した通りである、請求項1から9のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項11】
前記コポリマーのガラス転移温度(Tg)が、0℃から20℃の間、好ましくは5℃から10℃の間である、請求項1から10のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のコポリマーを含むリチウムイオン電池電極用のバインダー。
【請求項13】
水に懸濁している請求項1から11のいずれか一項に記載のコポリマーを含むバインダー懸濁液。
【請求項14】
前記懸濁液の全重量に対して重量百分率で10%および20%、好ましくは10%から13%の間の前記コポリマーを含む、請求項13に記載のバインダー懸濁液。
【請求項15】
界面活性剤をさらに含む、請求項13または14に記載のバインダー懸濁液。
【請求項16】
前記懸濁液の全重量に対して重量百分率で3%から7%の間の前記界面活性剤を含む、請求項15に記載のバインダー懸濁液。
【請求項17】
前記コポリマーが架橋されている、請求項13から16のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液。
【請求項18】
請求項13から16のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液を含み、リチウムイオン電池電極用の活物質をさらに含む、電極用の懸濁液。
【請求項19】
リチウムイオン電池用の電極であって、請求項1から11のいずれか一項に記載のコポリマーと少なくとも1種の活物質の混合物によって形成された膜を、その表面の少なくとも一部分、好ましくは全部にわたって有する電極集電体を含む電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、リチウムイオン電池電極用のバインダーとして有用なコポリマーバインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
二次リチウムイオン電池は、ラップトップコンピュータ、携帯電話、電動工具ならびに電子および通信装置においてエネルギー源として使用され、それらにより、サイズおよび重量を低減することが可能になる。近年、リチウムイオン二次電池は、電気自動車およびハイブリッド自動車にも使用されている。後者の用途向けの高性能、大容量、および長寿命の二次リチウムイオン電池が強く求められている。
【0003】
二次リチウムイオン電池は、典型的には、活物質としてリチウムおよびコバルト酸化物またはかんらん石型の材料(例えば、LiMPO4(ここで、M=Fe、Mn、Coおよび/またはNi)などのリチウム金属化合物を含む正極;活物質としてグラファイトなどの炭素質材料を含む負極;ならびに溶媒としてカーボネートを典型的には含む電解液(電解質)を含む。二次リチウムイオン電池は、リチウムイオンの正極と負極の間の動きによって充放電される。
【0004】
正極は、典型的には、活物質およびバインダーから構成されている一定の懸濁液をアルミニウム板などの正極集電体の表面上に塗布し、懸濁液を乾燥し、次いで集電体を適切なサイズに切断することによって得られる。
【0005】
同様に、負極は、活物質およびバインダーから構成されている一定の懸濁液を銅板などの負極集電体の表面上に塗布し、懸濁液を乾燥し、次いで集電体を適切なサイズに切断することによって得られる。
【0006】
二次リチウムイオン電池の電極に使用されるバインダーは、活物質を互いに結合し、活物質を集電体に結合して、活物質が集電体の表面から剥がれるのを防止する働きをする。
【0007】
高分子バインダーは、電池の活物質の集電体への凝集および接着を補助するために広く使用されている。これらのバインダーは、典型的には電気化学的に不活性で、安定で、化学的に不活性なポリマーである。これらは、電池の質量および安定性に大いに寄与する。
【0008】
現時点で、バインダーとして最もよく使用されているポリマーは、ポリ(ビニルジフルオリド)(PVDF)である。このポリマーは、非常に高い沸点(202℃)を有する毒性溶媒(N-メチルピロリドン(NMP))に典型的には溶解される。このポリマーはバインダーとして非常に有効であり、電気化学的に不活性であるが、高い生産コストや電極の製造時に溶媒を蒸発させるためのかなりのエネルギー需要など、その工業的使用に関して重大な問題を含む。さらに、電気化学的観点から、液体電解質を含む電池におけるその使用により、LiFが形成され、このことは、PVDFの化学的分解を加速する。電極の分解速度を加速する別の要因は、PVDFの柔軟性の欠如、すなわち電極におけるクラックの形成を生じるサイクリングによって起こる伸縮効果の欠如である。
【0009】
従来使用されている別の高分子コーティングは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)とメチルセルロース(CMC)の混合物からなる。SBRは、集電体への良好な接着を可能にする一方、CMCは、活物質の相互分散および接着を濃密にする助けとなる。しかし、SBRは、電極の伝導率に悪影響を与える。さらに、この混合物はLiFePO4およびLTO(Li4Ti5O12)の場合に非常に有効であるが、例えばLCO(LiCoO2)の場合にはあまり有効でない。
【0010】
ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(アクリル酸)(PAA)およびポリ(ビニル酸)(PVA)も、電極用の高分子バインダーとして使用されている。しかし、それらはガラス転移が周囲温度より高く、柔軟性の欠如を引き起こす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の簡単な説明
本発明は、下記に関する。
(項目1)
・約0.01から約0.20の間、好ましくは約0.05から約0.10の間で変動するモル比aを有するモノマーA、
・約0.15から約0.4の間、好ましくは約0.15から約0.30の間で変動するモル比bを有するモノマーB、および
・約0.50から約0.70の間、好ましくは約0.60から約0.70の間で変動するモル比cを有するモノマーC
を含むコポリマーであって、
前記モノマーAが、低モル質量のポリエチレンオキシド(POE)のペンダント型鎖を含む親水性モノマーであり、
前記モノマーBが、約-30℃またはそれ未満のガラス転移温度(Tg)を有する疎水性モノマーであり、
前記モノマーCが、前記モノマーBより疎水性であり、約80℃またはそれよりも高いガラス転移温度(Tg)を有し、
前記モノマーが、
・親水性セグメント、
・疎水性セグメント、および
・前記親水性セグメントと前記疎水性セグメントの間に位置する中間セグメント
に組織化され、
前記中間セグメントが、前記親水性セグメントの親水性と前記疎水性セグメントの親水性の中ほどの親水性を有し、
前記親水性セグメントが、前記モノマーAおよび前記モノマーBの一部分を含み、前記中間セグメントおよび前記疎水性セグメントが、前記モノマーBの残りおよび前記モノマーCを含み、前記中間セグメントが、前記疎水性セグメントに比べて前記モノマーBが富化されており、前記疎水性セグメントが、前記中間セグメントに比べて前記モノマーCが富化されている、コポリマー。
(項目2)
前記コポリマーが、約0から約0.10の間で変動するモル比dで、水中において化学的架橋可能なモノマーであるモノマーDをさらに含む、項目1に記載のコポリマー。
(項目3)
前記コポリマーが、次式
【化1】
を有し、式中、
A、B、CおよびDはそれぞれ、前記モノマーA、B、CおよびDを表し、
a、b、cおよびdはそれぞれ、前記モル比a、b、cおよびdを表す、
項目1または2に記載のコポリマー。
(項目4)
POEの前記ペンダント型鎖の前記モル質量が、約300から約2000g/molの間、好ましくは約300から約1000g/molの間、より好ましくは約300から約500g/molの間で変動する、項目1から3のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目5)
前記モノマーAが、ポリエチレングリコールメチルアクリレートまたはポリエチレングリコールメチルメタクリレートである、項目1から4のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目6)
前記モノマーAが、式
【化2】
を有し、式中、
Rは、水素原子またはメチル基であり、xは、前記POE鎖の前記モル質量が項目4に定義した通りである数のPOE反復単位を表す、項目5に記載のコポリマー。
(項目7)
前記モノマーBの前記ガラス転移温度(Tg)が、約-30℃から約-60℃の間で変動する、項目1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目8)
前記モノマーBの前記ガラス転移温度(Tg)が、約-40℃またはそれ未満である、項目1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目9)
前記モノマーBの前記ガラス転移温度(Tg)が、約-40℃から約-60℃の間で変動する、項目1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目10)
前記モノマーBが、
・n-ブチルアクリレート、
・約-30℃またはそれ未満のTgを有する別のアクリレートまたはメタクリレート、特にアルキルアクリレートまたはメタクリレートであって、前記アルキルが、置換されていない、または好ましくは鎖末端部において、1個もしくは数個のヒドロキシおよび/もしくはアルコキシ基で置換されており、前記アルコキシが、置換されていない、または好ましくは前記末端部において、1個もしくは数個のヒドロキシおよび/もしくはアルコキシ基、好ましくはアルコキシ基で置換されているアクリレートまたはメタクリレート、
・ブチルビニルエーテル、あるいは
・それらの混合物
である、項目1から9のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目11)
前記モノマーBが、n-ブチルアクリレート、iso-デシルアクリレート、n-デシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、グリコールメチルエーテルアクリレートエチレン、ブチルビニルエーテル、またはそれらの混合物である、項目10に記載のコポリマー。
(項目12)
前記モノマーBが、n-ブチルアクリレートまたはブチルビニルエーテルである、項目11に記載のコポリマー。
(項目13)
前記モノマーBが、n-ブチルアクリレートである、項目12に記載のコポリマー。
(項目14)
前記モノマーCが、スチレンまたはその誘導体、アクリロニトリル、vinazene(商標)(イミダゾールの誘導体、さらに詳細には2-ビニル-4,5-ジシアノイミダゾール)、メチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アクリロイルモルホリン、フェニルメタクリレート、ビニルフェロセン、フェロセンメチルメタクリレートまたはそれらの混合物である、項目1から13のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目15)
前記モノマーCが、スチレンまたはアクリロニトリルである、項目14に記載のコポリマー。
(項目16)
前記モノマーCがスチレンである、項目15に記載のコポリマー。
(項目17)
モノマーDとしてアクリルアミドジケトンを含む、項目1から16のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目18)
前記モノマーAが、ポリエチレングリコールメチルアクリレートまたはポリエチレングリコールメチルメタクリレートであり、前記モノマーBがn-ブチルアクリレートであり、前記モノマーCがスチレンであり、好ましくは前記コポリマーが、次式
【化3】
を有し、式中、Rおよびxは、項目6に定義した通りであり、a、bおよびcは、項目1に定義した通りである、項目1から17のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目19)
前記コポリマーが、モノマーDとしてアクリルアミドジケトンをさらに含み、好ましくは、前記コポリマーは、次式
【化4】
を有し、式中、Rおよびxは、項目6に定義した通りであり、a、bおよびcは、項目1に定義した通りであり、dは、項目2に定義した通りである、項目1から18のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目20)
前記コポリマーのガラス転移温度(Tg)が、約0℃から約20℃の間、好ましくは約5℃から約10℃の間である、項目1から19のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目21)
前記コポリマーのモル質量(M
n)が、約100,000g/molから約300,000g/molの間、好ましくは150,000g/molから約200,000g/molの間である、項目1から20のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目22)
項目1から21のいずれか一項に記載のコポリマーの、リチウムイオン電池電極用のバインダーとしての使用。
(項目23)
項目1から21のいずれか一項に記載のコポリマーを含むリチウムイオン電池電極用のバインダー。
(項目24)
水に懸濁している項目1から21のいずれか一項に記載のコポリマーを含むバインダー懸濁液。
(項目25)
前記懸濁液の全重量に対して重量百分率で約10%および約20%、好ましくは約10%から約13%の間の前記コポリマーを含む、項目24に記載のバインダー懸濁液。
(項目26)
界面活性剤をさらに含む、項目24または25に記載のバインダー懸濁液。
(項目27)
前記懸濁液の全重量に対して重量百分率で約3%から約7%の間の前記界面活性剤を含む、項目26に記載のバインダー懸濁液。
(項目28)
前記コポリマーが架橋されている、項目24から27のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液。
(項目29)
項目24から28のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液を含むリチウムイオン電池電極用のバインダー。
(項目30)
項目24から28のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液の、前記リチウムイオン電池電極用のバインダーとしての使用。
(項目31)
リチウムイオン電池用の電極を製造する方法であって、
a)項目24から28のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液を形成するステップ、
b)活物質を前記バインダー懸濁液に添加し、それによって前記電極用の懸濁液を形成するステップ、
c)前記電極用の前記懸濁液を電極集電体の表面に塗布するステップ、および
d)乾燥し、それによって前記電極集電体上に膜を形成するステップ
を含む方法。
(項目32)
ステップa)が、前記モノマーDを介した前記コポリマーの架橋を含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
ステップa)が、前記モノマーDの架橋用の架橋剤としてジヒドラジンまたはジヒドラジド化合物を使用する、項目31に記載の方法。
(項目34)
ステップa)が、架橋剤としてジヒドラジドアジピン酸を使用する、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記方法が、ステップd)後に、前記電極集電体を適切なサイズに切断するステップをさらに含む、項目30から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
項目24から28のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液を含み、リチウムイオン電池電極用の活物質をさらに含む、電極用の懸濁液。
(項目37)
電極用の前記懸濁液の全乾燥重量に対して重量百分率で約80%から約95%の間、好ましくは約90%から約95%の間または約80%から約90%の間の前記活物質を含む、項目36に記載の電極用の懸濁液。
(項目38)
カーボンブラックをさらに含む、項目36または37に記載の電極用の懸濁液。
(項目39)
電極用の前記懸濁液の前記全乾燥重量に対して重量百分率で約1%から約5%の間、好ましくは約3%のカーボンブラックを含む、項目38に記載の電極用の懸濁液。
(項目40)
炭素繊維をさらに含む、項目36から38のいずれか一項に記載の電極用の懸濁液。
(項目41)
電極用の前記懸濁液の前記全乾燥重量に対して重量百分率で約1%から約5%の間、好ましくは約3%の炭素繊維を含む、項目40に記載の電極用の懸濁液。
(項目42)
電極用の前記懸濁液の前記全乾燥重量に対して重量百分率で約2%から約15%の間、好ましくは約3%から約10%の間、およびより好ましくは約5%から約10%の間の前記コポリマーを含む、項目36から41のいずれか一項に記載の電極用の懸濁液。
(項目43)
リチウムイオン電池用の電極であって、項目1から21のいずれか一項に記載のコポリマーと少なくとも1種の活物質の混合物によって形成された膜を、その表面の少なくとも一部分、好ましくは全部にわたって有する電極集電体を含む電極。
(項目44)
正極、負極、ならびに前記正極および前記負極と接触している電解液を含むリチウムイオン電池であって、前記正極および/または前記負極が、項目38に定義した通りの本発明による電極であるリチウムイオン電池。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、プロトンのNMRによってモニタリングして、ハーフセル3のポリマーの重合反応速度を示す図である。
【0013】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による電極の表面の異なる倍率のSEM像を示す図である。
【
図3】
図3A)およびB)は、本発明の一実施形態による電極の表面の異なる倍率のSEM像を示す図である。
【0014】
【
図4】
図4A)およびB)は、本発明の一実施形態による電極の横断面の異なる倍率のSEM像を示す図である。
【0015】
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による電極の横断面のEDX像を示す図である。
【0016】
【
図6】
図6は、充放電200サイクル中におけるハーフセルA)1a、1b、2aおよび2bならびにB)3、4および5の容量を示す図である。
【0017】
【
図7】
図7は、ハーフセルA)1bおよび2bならびにB)3、4および5の容量を充電速度の関数として示す図である。
【0018】
【
図8】
図8は、異なる放電速度(+C/4-1C;+C/4-3C;+C/4-4Cおよび+C/4-1C)での充放電100サイクル中におけるハーフセル1b、2b、および参照(PVDF)の容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
・約0.01から約0.20の間、好ましくは約0.05から約0.10の間で変動するモル比aを有するモノマーA、
・約0.15から約0.4の間、好ましくは約0.15から約0.30の間で変動するモル比bを有するモノマーB、および
・約0.50から約0.70の間、好ましくは約0.60から約0.70の間で変動するモル比cを有するモノマーC
を含むコポリマーであって、
前記モノマーAが、低モル質量のポリエチレンオキシド(POE)のペンダント型鎖を含む親水性モノマーであり、
前記モノマーBが、約-30℃またはそれ未満のガラス転移温度(Tg)を有する疎水性モノマーであり、
前記モノマーCが、前記モノマーBより疎水性であり、約80℃またはそれよりも高いガラス転移温度(Tg)を有し、
前記モノマーが、
・親水性セグメント、
・疎水性セグメント、および
・前記親水性セグメントと前記疎水性セグメントの間に位置する中間セグメント
に組織化され、
前記中間セグメントが、前記親水性セグメントの親水性と前記疎水性セグメントの親水性の中ほどの親水性を有し、
前記親水性セグメントが、前記モノマーAおよび前記モノマーBの一部分を含み、前記中間セグメントおよび前記疎水性セグメントが、前記モノマーBの残りおよび前記モノマーCを含み、前記中間セグメントが、前記疎水性セグメントに比べて前記モノマーBが富化されており、前記疎水性セグメントが、前記中間セグメントに比べて前記モノマーCが富化されている、コポリマー。
(項目2)
前記コポリマーが、約0から約0.10の間で変動するモル比dで、水中において化学的架橋可能なモノマーであるモノマーDをさらに含む、項目1に記載のコポリマー。
(項目3)
前記コポリマーが、次式
【化11】
を有し、式中、
A、B、CおよびDはそれぞれ、前記モノマーA、B、CおよびDを表し、
a、b、cおよびdはそれぞれ、前記モル比a、b、cおよびdを表す、
項目1または2に記載のコポリマー。
(項目4)
POEの前記ペンダント型鎖の前記モル質量が、約300から約2000g/molの間、好ましくは約300から約1000g/molの間、より好ましくは約300から約500g/molの間で変動する、項目1から3のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目5)
前記モノマーAが、ポリエチレングリコールメチルアクリレートまたはポリエチレングリコールメチルメタクリレートである、項目1から4のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目6)
前記モノマーAが、式
【化12】
を有し、式中、
Rは、水素原子またはメチル基であり、xは、前記POE鎖の前記モル質量が項目4に定義した通りである数のPOE反復単位を表す、項目5に記載のコポリマー。
(項目7)
前記モノマーBの前記ガラス転移温度(Tg)が、約-30℃から約-60℃の間で変動する、項目1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目8)
前記モノマーBの前記ガラス転移温度(Tg)が、約-40℃またはそれ未満である、項目1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目9)
前記モノマーBの前記ガラス転移温度(Tg)が、約-40℃から約-60℃の間で変動する、項目1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目10)
前記モノマーBが、
・n-ブチルアクリレート、
・約-30℃またはそれ未満のTgを有する別のアクリレートまたはメタクリレート、特にアルキルアクリレートまたはメタクリレートであって、前記アルキルが、置換されてい
ない、または好ましくは鎖末端部において、1個もしくは数個のヒドロキシおよび/もしくはアルコキシ基で置換されており、前記アルコキシが、置換されていない、または好ましくは前記末端部において、1個もしくは数個のヒドロキシおよび/もしくはアルコキシ基、好ましくはアルコキシ基で置換されているアクリレートまたはメタクリレート、
・ブチルビニルエーテル、あるいは
・それらの混合物
である、項目1から9のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目11)
前記モノマーBが、n-ブチルアクリレート、iso-デシルアクリレート、n-デシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、グリコールメチルエーテルアクリレートエチレン、ブチルビニルエーテル、またはそれらの混合物である、項目10に記載のコポリマー。
(項目12)
前記モノマーBが、n-ブチルアクリレートまたはブチルビニルエーテルである、項目11に記載のコポリマー。
(項目13)
前記モノマーBが、n-ブチルアクリレートである、項目12に記載のコポリマー。
(項目14)
前記モノマーCが、スチレンまたはその誘導体、アクリロニトリル、vinazene(商標)(イミダゾールの誘導体、さらに詳細には2-ビニル-4,5-ジシアノイミダゾール)、メチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アクリロイルモルホリン、フェニルメタクリレート、ビニルフェロセン、フェロセンメチルメタクリレートまたはそれらの混合物である、項目1から13のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目15)
前記モノマーCが、スチレンまたはアクリロニトリルである、項目14に記載のコポリマー。
(項目16)
前記モノマーCがスチレンである、項目15に記載のコポリマー。
(項目17)
モノマーDとしてアクリルアミドジケトンを含む、項目1から16のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目18)
前記モノマーAが、ポリエチレングリコールメチルアクリレートまたはポリエチレングリコールメチルメタクリレートであり、前記モノマーBがn-ブチルアクリレートであり、前記モノマーCがスチレンであり、好ましくは前記コポリマーが、次式
【化13】
を有し、式中、Rおよびxは、項目6に定義した通りであり、a、bおよびcは、項目1に定義した通りである、項目1から17のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目19)
前記コポリマーが、モノマーDとしてアクリルアミドジケトンをさらに含み、好ましくは、前記コポリマーは、次式
【化14】
を有し、式中、Rおよびxは、項目6に定義した通りであり、a、bおよびcは、項目1に定義した通りであり、dは、項目2に定義した通りである、項目1から18のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目20)
前記コポリマーのガラス転移温度(Tg)が、約0℃から約20℃の間、好ましくは約5℃から約10℃の間である、項目1から19のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目21)
前記コポリマーのモル質量(M
n)が、約100,000g/molから約300,000g/molの間、好ましくは150,000g/molから約200,000g/molの間である、項目1から20のいずれか一項に記載のコポリマー。
(項目22)
項目1から21のいずれか一項に記載のコポリマーの、リチウムイオン電池電極用のバインダーとしての使用。
(項目23)
項目1から21のいずれか一項に記載のコポリマーを含むリチウムイオン電池電極用のバインダー。
(項目24)
水に懸濁している項目1から21のいずれか一項に記載のコポリマーを含むバインダー懸濁液。
(項目25)
前記懸濁液の全重量に対して重量百分率で約10%および約20%、好ましくは約10%から約13%の間の前記コポリマーを含む、項目24に記載のバインダー懸濁液。
(項目26)
界面活性剤をさらに含む、項目24または25に記載のバインダー懸濁液。
(項目27)
前記懸濁液の全重量に対して重量百分率で約3%から約7%の間の前記界面活性剤を含む、項目26に記載のバインダー懸濁液。
(項目28)
前記コポリマーが架橋されている、項目24から27のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液。
(項目29)
項目24から28のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液を含むリチウムイオン電池電極用のバインダー。
(項目30)
項目24から28のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液の、前記リチウムイオン電池電極用のバインダーとしての使用。
(項目31)
リチウムイオン電池用の電極を製造する方法であって、
a)項目24から28のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液を形成するステップ、
b)活物質を前記バインダー懸濁液に添加し、それによって前記電極用の懸濁液を形成するステップ、
c)前記電極用の前記懸濁液を電極集電体の表面に塗布するステップ、および
d)乾燥し、それによって前記電極集電体上に膜を形成するステップ
を含む方法。
(項目32)
ステップa)が、前記モノマーDを介した前記コポリマーの架橋を含む、項目30に記載の方法。
(項目33)
ステップa)が、前記モノマーDの架橋用の架橋剤としてジヒドラジンまたはジヒドラジド化合物を使用する、項目31に記載の方法。
(項目34)
ステップa)が、架橋剤としてジヒドラジドアジピン酸を使用する、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記方法が、ステップd)後に、前記電極集電体を適切なサイズに切断するステップをさらに含む、項目30から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
項目24から28のいずれか一項に記載のバインダー懸濁液を含み、リチウムイオン電池電極用の活物質をさらに含む、電極用の懸濁液。
(項目37)
電極用の前記懸濁液の全乾燥重量に対して重量百分率で約80%から約95%の間、好ましくは約90%から約95%の間または約80%から約90%の間の前記活物質を含む、項目36に記載の電極用の懸濁液。
(項目38)
カーボンブラックをさらに含む、項目36または37に記載の電極用の懸濁液。
(項目39)
電極用の前記懸濁液の前記全乾燥重量に対して重量百分率で約1%から約5%の間、好ましくは約3%のカーボンブラックを含む、項目38に記載の電極用の懸濁液。
(項目40)
炭素繊維をさらに含む、項目36から38のいずれか一項に記載の電極用の懸濁液。
(項目41)
電極用の前記懸濁液の前記全乾燥重量に対して重量百分率で約1%から約5%の間、好ましくは約3%の炭素繊維を含む、項目40に記載の電極用の懸濁液。
(項目42)
電極用の前記懸濁液の前記全乾燥重量に対して重量百分率で約2%から約15%の間、好ましくは約3%から約10%の間、およびより好ましくは約5%から約10%の間の前記コポリマーを含む、項目36から41のいずれか一項に記載の電極用の懸濁液。
(項目43)
リチウムイオン電池用の電極であって、項目1から21のいずれか一項に記載のコポリマーと少なくとも1種の活物質の混合物によって形成された膜を、その表面の少なくとも一部分、好ましくは全部にわたって有する電極集電体を含む電極。
(項目44)
正極、負極、ならびに前記正極および前記負極と接触している電解液を含むリチウムイオン電池であって、前記正極および/または前記負極が、項目38に定義した通りの本発明による電極であるリチウムイオン電池。
したがって、本発明は、
・約0.01から約0.20の間、好ましくは約0.05から約0.10の間で変動するモル比aを有するモノマーA、
・約0.15から約0.4の間、好ましくは約0.15から約0.30の間で変動するモル比bを有するモノマーB、および
・約0.50から約0.70の間、好ましくは約0.60から約0.70の間で変動するモル比cを有するモノマーC
を含むコポリマーであって、
モノマーAが、低モル質量のポリ(エチレンオキシド)(POE)のペンダント型鎖を含む親水性モノマーであり、モノマーBが、約-30℃またはそれ未満のガラス転移温度(Tg)を有する疎水性モノマーであり、モノマーCが、モノマーBより疎水性であり、約80℃またはそれよりも高いガラス転移温度(Tg)を有し、
前記モノマーが、
・親水性セグメント、
・疎水性セグメント、および
・親水性セグメントと疎水性セグメントの間に位置する中間セグメント
に組織化され、
中間セグメントが、親水性セグメントの親水性と疎水性セグメントの親水性の中ほどの親水性を有し、
親水性セグメントが、モノマーAおよびモノマーBの一部分を含み、中間セグメントおよび疎水性セグメントが、モノマーBの残りおよびモノマーCを含み、中間セグメントが、疎水性セグメントに比べてモノマーBが富化されており、疎水性セグメントが、中間セグメントに比べてモノマーCが富化されている、
コポリマーに関する。
【0020】
したがって、コポリマーは、親水性セグメントから中間セグメントを経て疎水性セグメントに至る親水性勾配を有する。
【0021】
好ましい実施形態では、コポリマーは、約0から約0.10の間、好ましくは約0.01から約0.10の間で変動するモル比dで、水中において化学的架橋可能なモノマーであるモノマーDをさらに含む。モノマーDは親水性および水溶性であるので、それは、コポリマーの親水性セグメントにおいてみられる。
【0022】
好ましい実施形態では、コポリマーは、次式
【化5】
を有し、式中、
・A、B、CおよびDはそれぞれ、モノマーA、B、CおよびDを表し、
・a、b、cおよびdはそれぞれ、モル比a、b、cおよびdを表す。
【0023】
前述のように、本発明によるコポリマーは、異なる親水性を有するセグメントを含む。言い換えれば、コポリマーは両親媒性である。この特徴の利点を以下のセクションにおいて説明する。
【0024】
したがって、やはり前述のように、a、b、cおよびdはモル比である。言い換えれば、例えば、
【化6】
である。したがって、その結果、これらのモル比の合計(a+b+c)またはモノマーDが存在する場合(a+b+c+d)は、必ず1と等しい。dは、約0から約0.10の間で変動すると認められる。dが0であるとき、モノマーDは存在しない。
【0025】
前述のように、モノマーAは、低モル質量を有するPOE誘導体であり、この最後の特徴によって、POEペンダント型鎖の結晶化を回避することができるようになる。本発明のある特定の実施形態では、POEペンダント型鎖のモル質量は、約300から約2000g/molの間、好ましくは約300から約1000g/molの間、より好ましくは約300から約500g/molの間で変動する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、モノマーAは、例えばグリコールポリエチレンメチルアクリレートまたはグリコールポリエチレンメチルメタクリレートである。したがって、モノマーAは、式
【化7】
を有し、式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、xは、POE鎖のモル質量が上記に定義した通りであるような数のPOE反復単位を表す。
【0027】
本発明の実施形態では、モノマーBは、例えば約-30℃から約-60℃の間のTgを有する。実施形態では、モノマーBは、-40℃またはそれ未満のTg、例えば約-40℃から約-60℃の間のTgを有する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、モノマーBは、例えば
・n-ブチルアクリレート、
・適切なTgを有する他のいずれかのアクリレートまたはメタクリレート、特にアルキルアクリレートまたはメタクリレートであって、アルキルが、置換されていない、または好ましくは鎖末端部において、1個もしくは数個のヒドロキシおよび/もしくはアルコキシ基で置換されており、アルコキシが、置換されていない、または好ましくは鎖末端部において、1個もしくは数個のヒドロキシおよび/もしくはアルコキシ基、好ましくはアルコキシ基で置換されているアクリレートまたはメタクリレート、例えば、iso-デシルアクリレート、n-デシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、グリコールメチルエーテルアクリレートエチレンなど、
・ブチルビニルエーテル、あるいは
・それらの混合物
とすることができる。本発明の好ましい実施形態では、モノマーBは、n-ブチルアクリレートまたはブチルビニルエーテル、好ましくはn-ブチルアクリレートである。
【0029】
以降、用語「アルキル」および「アルコキシ」(すなわち、-O-アルキル)は、好ましい実施形態では、1~20個、好ましくは1~12個の炭素原子を含む基を指す。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、モノマーCは、例えばスチレンおよびその誘導体、アクリロニトリル、vinazene(商標)(イミダゾールの誘導体、さらに詳細には2-ビニル-4,5-ジシアノイミダゾール)、メチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アクリロイルモルホリン、フェニルメタクリレート、ビニルフェロセン、フェロセンメチルメタクリレートまたはそれらの混合物である。本発明の好ましい実施形態では、モノマーCは、スチレンまたはアクリロニトリル、好ましくはスチレンである。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、モノマーDが存在しない。
【0032】
しかし、本発明の他の一部の実施形態では、モノマーDが存在する。好ましい実施形態では、モノマーDは、例えばアクリルアミドジケトンである。
【0033】
本発明の一部の実施形態では、コポリマーが架橋されていない。他の実施形態では、コポリマーが、モノマーDを介して架橋されている。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、コポリマーは、モノマーAとしてポリエチレングリコールメチルアクリレートまたはポリエチレングリコールメチルメタクリレート、モノマーBとしてn-ブチルアクリレート(Tg、-49℃にほぼ等しい)、モノマーCとしてスチレン(Tg、90℃にほぼ等しい)を含む。その結果、コポリマーは、したがって次式
【化8】
を有し、式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、x、a、bおよびcは上記に定義した通りである。本発明のある特定の具体的な実施形態では、このコポリマーは、モノマーDとしてアクリルアミドジケトンをさらに含み、したがって次式
【化9】
を有し、式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、x、a、b、cおよびdは上記に定義した通りである。
【0035】
本発明の実施形態では、コポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約0℃から約20℃の間、好ましくは約5℃から約10℃の間である。
【0036】
本発明の実施形態では、コポリマーのモル質量(Mn)は、約100,000g/molから約300,000g/molの間、好ましくは150,000g/molから約200,000g/molの間である。
コポリマーを製造する方法
【0037】
上記のコポリマーは、水中で乳化重合することによって製造することができる。その目的を達するために、モノマーを水に添加する。モノマーの水に対する溶解性に応じて、モノマーは、水中で溶液(モノマーA、および場合によってはモノマーD)として、水に混和しない疎水性小滴(モノマーC)として、または反応媒体として使用されるエマルションを生成する両媒体(モノマーB)として存在する。水溶性ラジカル重合開始剤が使用される。開始剤は、例えば過硫酸カリウムまたは他のいずれかの水溶性開始剤とすることができる。エマルションを安定化するのに、Triton X-100などの非イオン界面活性剤が使用される。
【0038】
したがって、反応媒体において、異なるモノマーは水中におよび/または疎水性小滴として存在し、開始剤は水に可溶化される。その結果、重合は、水に可溶化されるモノマー(すなわち、モノマーA、ごく一部のモノマーB、および当てはまる場合にはモノマーD)で始まり、それによってコポリマーの親水性セグメントが作製される。反応では、小滴のモノマー(モノマーBの大部分およびモノマーC)の重合が続くが、主にモノマーBで始まり、それによって中間セグメントが作製され、主としてモノマーCで終わり、最後に疎水性セグメントが作製される。
【0039】
したがって、この反応により、上記のように親水性セグメント、中間セグメントおよび疎水性セグメントを有すると記述することができる親水性勾配を有する上記のコポリマーが生成される。
コポリマーの使用
【0040】
本発明はまた、リチウムイオン電池電極用のバインダーとしての上記のコポリマーの使用、したがって前記コポリマーを含むリチウムイオン電池電極用のバインダーにも関する。
【0041】
本発明はまた、バインダー懸濁液にも関する。
【0042】
本発明のある特定の実施形態では、バインダー懸濁液は、水に懸濁している上記のコポリマーを含む。本文献では、前記バインダー懸濁液は「ラテックス」と呼ぶこともある。この懸濁液は、リチウムイオン電池電極用のバインダーとして使用することができ、したがって、本発明は、前記バインダー懸濁液を含むリチウムイオン電池電極用のバインダーに関する。好ましい実施形態では、前記バインダー懸濁液は、懸濁液の全重量に対して重量百分率で約10%から約20%の間、好ましくは約10%から約13%の間のコポリマーを含む。
【0043】
好ましい実施形態では、前記バインダー懸濁液は、懸濁液を安定化するために界面活性剤をさらに含む。好ましい実施形態では、前記バインダー懸濁液は、懸濁液の全重量に対して重量百分率で約3%から約7%の間の界面活性剤を含む。
【0044】
本発明はまた、コポリマーが架橋されている上記のバインダー懸濁液にも関する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、バインダー懸濁液は、コポリマーが製造された反応混合物から構成されている。実際は、前記混合物を、必要に応じて水で希釈することによって直に再使用することができる。
【0046】
本発明はまた、リチウムイオン電池用の電極を製造する方法にも関する。本方法は、以下のステップを含む。
a)上記のバインダー懸濁液を用意するステップ、
b)活物質をバインダー懸濁液に添加し、それによって電極用の懸濁液を形成するステップ、
c)電極用の懸濁液を電極集電体の表面に塗布するステップ、および
d)乾燥し、それによって電極集電体上に膜を形成するステップ。
【0047】
本発明の一部の実施形態では、ステップa)は、モノマーDを介したコポリマーの架橋を含む。その目的を達するために、バインダー懸濁液に、架橋剤としてジヒドラジドアジピン酸などのジヒドラジンまたはジヒドラジド化合物を添加することが可能である。反応は、周囲温度において数分で生じる。
【0048】
本発明の一部の実施形態では、前記方法は、ステップd)後に、電極集電体を適切なサイズに切断するステップをさらに含む。
【0049】
本発明はまた、電極用の懸濁液であって、上記に定義したバインダー懸濁液を含み、リチウムイオン電池電極用の活物質をさらに含む懸濁液にも関する。好ましい実施形態では、電極用のこの懸濁液は、電極用の懸濁液の全乾燥重量に対して重量百分率で約80%から約95%の間、好ましくは約90%から約95%の間または約80%から約90%の間の活物質を含む。
【0050】
前記懸濁液は、リチウムイオン電池で使用される他の成分、例えばカーボンブラックおよび/または炭素繊維も典型的には含むことができる。カーボンブラックの一例は、Denka(商標)Black AB HS-100カーボンブラックである。炭素繊維の一例はVGCF(商標)-H炭素繊維である。好ましい実施形態では、電極用の懸濁液は、電極用の懸濁液の全乾燥重量に対して重量百分率で約1%から約5%の間、好ましくは約3%のカーボンブラックを含む。好ましい実施形態では、電極用の懸濁液は、電極用の懸濁液の全乾燥重量に対して重量百分率で約1%から約5%の間、好ましくは約3%の炭素繊維を含む。
【0051】
本発明のある特定の実施形態では、電極用の懸濁液(活物質、コポリマー、および当てはまる場合には他の成分を含む)は、電極用の懸濁液の全乾燥重量に対して重量百分率で約2%から約15%の間、好ましくは約3%から約10%の間、より好ましくは約5%から約10%の間のコポリマーを含む。
【0052】
本発明はまた、リチウムイオン電池用の電極であって、上記のコポリマーと少なくとも1種の活物質の混合物ならびに任意選択でカーボンブラックおよび炭素繊維などの前記他の成分によって形成された膜を、その表面の少なくとも一部分、好ましくは全部にわたって有する電極集電体を含む電極にも関する。
【0053】
上記の本発明の実施形態では、電極集電体、活物質ならびにカーボンブラックおよび炭素繊維などの他の成分は、リチウムイオン電池用の電極で従来使用される電極集電体、活物質および成分である。これらは、当業者によって周知である。
【0054】
さらに、本発明はまた、正極、負極、ならびに正極および負極と接触している電解液を含むリチウムイオン電池であって、正極および/または負極が上記の本発明による電極であるリチウムイオン電池にも関する。
【0055】
上記の本発明の実施形態では、電解液は、リチウムイオン電池で従来使用される電解液である。そのような溶液は、当業者によって周知である。
本発明の利点
【0056】
本発明のある特定の実施形態では、以下の利点のうちの1つまたは別の利点を認めることができる。
【0057】
電極を製造するために、使用される重合と懸濁液用の溶媒は、環境に優しい安価な溶媒である水である。さらに、(NMPと比較して)水の沸点が低いことは、少なくともエネルギーコストを低減する観点から、電極を製造する方法において有益である。
【0058】
したがって、活物質に応じて、懸濁液は、増粘剤(CMC)を必要としない可能性がある。実に、コポリマーの両親媒性は、電極を製造するために、懸濁液中における無機物質(活物質)のより良好な分散を可能にすることができる。
【0059】
さらに、コポリマーは、電極のイオン伝導率に寄与することができる。したがって、バインダーは、もはやリチウムイオン電池において不活性な集団ではない。さらに詳細には、ポリ(エチレンオキシド)を含む親水性部分により、電極上の膜の柔軟性、接着およびイオン伝導率を高めることが可能になる。さらに、POEは、無機粒子を分散し、懸濁液を安定化するのに有用であり、ポリマー小滴を安定化することが可能になる。膜の柔軟性が高くなれば、電極の使用時に、電極におけるクラック形成が限定されるので電極の耐久性が向上する。
【0060】
疎水性部分は、とりわけ、高いガラス転移温度を有するモノマーから構成されており、これにより、コポリマーの全ガラス転移温度を、電極材料に特有の柔軟性および接着力の必要に基づいてモジュレートすることが可能になる。このモノマー、例えばスチレンが芳香族環を含む場合、このことは、πスタッキング効果によって炭素のより良好な分散を可能にすることができる。
【0061】
さらに、モノマーDを介したコポリマーの架橋により、サイクル間における電極の安定性および接着を改善することができる。
【0062】
最後に、コポリマーの調製には、1つの合成ステップのみを必要とする。
【0063】
本発明の他の目的、利点および機能は、以下の図面と共に、例として記載されているにすぎない考え得る実施形態の以下の説明において明らかになる。
本発明の実施形態の説明
【0064】
以下の成分を使用した。
【表1-1】
【表1-2】
【0065】
次式のポリマーを調製した。
【化10】
式中、どちらの場合も、R=メチルである。
【0066】
以下の量の以下のモノマーを使用して、これらのポリマーを生成し、これを、次に下記で特定されるハーフセルで使用した。
【表2】
【0067】
250mlのフラスコに、80mlの水をPEGMA 300または500および0.5gのトリトンX-100と共に加え、ポリマーを調製した。溶解するまで、反応混合物を撹拌した。スチレンおよびnBAをフラスコに添加し、次いでエマルションを作製するために、溶液を750rpmで30分間撹拌した。エマルションをN2下で30分間脱気し、次いで100mgのKPSを添加した。エマルションを、窒素中、撹拌下で80℃に8時間加熱した。
【0068】
この重合の反応速度をプロトンのNMRにより分析した。ハーフセル3のポリマーについて、結果を
図1に示す。この図は、重合の初めにおけるnBAの優先的挿入を示す。実に、ポリマーは、重合の初めに大量のnBAを含み、スチレンをほとんど含まず、その後重合の終わりには、その逆が真となる。PEGMAは
図1に示されていないが、最初の15分間において完全に重合されたことに留意されたい。
【0069】
次に、電極用の懸濁液(スラリー)を調製した。その目的を達するために、コポリマーの生成によって生ずる反応混合物を、最初にロールミル中で72時間均質化した。次に、Thinky(商標)自転公転式ミキサーを使用して、他の成分をその中に組み込んだ(5分間の混合を6回行った)。最後に、Thinky(商標)ミキサーで5分間撹拌しながら、必要に応じて水を混合物に添加することによって、懸濁液の粘度を調整した。
【0070】
異なるハーフセル用の懸濁液は以下の成分を含み、以下の粘度および架橋百分率を示した。
【表3】
【0071】
ドクターブレード技法を用いて、懸濁液をアルミニウム集電体上に置くことによって、正極を生成した。次に、電極を80℃で1時間、次に120℃で1時間乾燥した。
【0072】
比較のために、本発明のポリマーをポリ(ビニルジフルオリド)(PVDF)またはメチルセルロース(CMC)を含むスチレン-ブタジエンゴム(SBR)(SBR/CMC)と置き換えることによって電極を生成した。
【0073】
伝導率計によって、電極の伝導率をS/cm単位で測定した。さらに、Instron(商標)によるT型剥離によって、高分子コーティングの集電体への接着力をN/m単位で測定した。得られた結果を以下に示す。
【表4】
【0074】
本発明のポリマーを含む高分子コーティングは優れた接着力を有することが理解できる。比較として、PVDFおよびSBR/CMCは、本発明者らの施設において測定して、それぞれ13N/mおよび10N/mの接着力を有する。本発明では、5%で使用すると、架橋剤を使用せずに21N/mの接着力を有することが可能になる。さらに、この値は、架橋が使用されると増加することができる(入力3および4と比較)。
【0075】
電極を走査型電子顕微鏡(SEM、
図2~4)により試験した。
図2および3は電極の表面を示し、
図4は横断面を示す。これらの図面の像は、ポリマー(暗色)により、活物質の粒子(より明色)を均質に分散することが可能になること、および粒子のそれぞれが、ポリマーでコーティングされていることを示す。
【0076】
炭素のエネルギー分散分析(EDX)により、電極を検査した。
図5は、本発明の一実施形態による電極の横断面のEDX像を示す。再度、電極を構成する材料の分散性および均質性が良好であることが理解できる。
【0077】
さらに、電極は、以下の厚さ、密度および電荷を有するものであった。
【表5】
【0078】
ハーフセルを、上記の電極、200μmのリチウムアノードおよび電解質(2%のビニルカーボネート(VC)を含む、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート(EC-DEC)の混合物中のLiPF6)から製造した。
【0079】
ハーフセルを、2.0~4.0Vの電位および25℃の温度で検査した。
【0080】
最初に、充放電200サイクル(-C/4+1Cおよび-4/C+1C)を行って、使用時のハーフセルの容量の安定性を評価した。結果を
図6A)およびB)に示す。
【0081】
次に、ハーフセルの容量を充電速度の関数(ラゴン(Ragonne))として測定した。結果を
図7A)およびB)に示す。
【0082】
異なる速度で(+C/4-1C;+C/4-3C;+C/4-4Cおよび+C/4-1C)充放電100サイクルにおけるハーフセルの安定性を測定し、
図8に示す。
【0083】
【0084】
これらの電気化学的結果は、これらのポリマーがLFPカソードを備えた電気化学セルで使用される場合、良好な性能を実現できることを示す。
【0085】
特許請求の範囲は、例として示した好ましい実施形態によって限定されてはならず、むしろ明細書全体に従って考え得る最も広い解釈を受けなければならない。
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