IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クレイジュ・メディカル・カンパニー・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】細胞免疫療法の組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20220926BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220926BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220926BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220926BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220926BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220926BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220926BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220926BHJP
【FI】
A61K35/17 Z ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/675
A61K31/7076
A61K31/7048
A61K31/7068
A61K31/519
A61K31/475
A61K31/704
A61K38/20
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K9/08
A61P1/16
A61P11/00
A61P1/00
A61K45/00
A61P37/04
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N5/0783
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2018555209
(86)(22)【出願日】2017-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2017081446
(87)【国際公開番号】W WO2018018958
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2019-07-02
(31)【優先権主張番号】201610256568.9
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522082300
【氏名又は名称】クレイジュ・メディカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRAGE medical Co., Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】リィ・ゾンハイ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ・ホイピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ポン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン・ホア
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ホアマオ
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/180306(WO,A1)
【文献】特開2009-091348(JP,A)
【文献】国際公開第2015/188141(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/179759(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/201021(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/136001(WO,A1)
【文献】ClinicalTrials.gov Archive NCT02715362,2016年03月,Retrieved from the Internet: URL,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02715362?V_1=View#StudyPageTop
【文献】Nature Clinical Practice,2006年,3(12),p.668-681
【文献】Blood,126 (23),2015年,184,https://doi.org/10.1182/blood.V126.23.184.184
【文献】Blood,126 (23),2015年,4426,https://doi.org/10.1182/blood.V126.23.4426.4426
【文献】Blood,126 (23),2015年,LBA-1,https://doi.org/10.1182/blood.V126.23.LBA-1.LBA-1
【文献】ClinicalTrials.gov Archive NCT02876978,2016年08月,Retrieved from the Internet: URL,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT02876978?V_1=View#StudyPageTop
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるGPC3を発現する固形腫瘍の処置において使用するための、抗GPC3キメラ抗原受容体(抗GPC3-CAR)免疫応答細胞の治療有効量を含む医薬組成物であって、処置は、シクロホスファミドおよびフルダラビンを含む化学療法剤を対象に投与することを含むリンパ球低減処置に対象を供した後にまたはそれと同時に医薬組成物を対象に投与することを含み、抗GPC3-CARは、配列番号28、配列番号29および配列番号30のいずれか1つに少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、医薬組成物。
【請求項2】
免疫応答細胞がNK細胞(抗GPC3-CAR NK細胞)またはT細胞(抗GPC3-CAR T細胞)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
抗GPC3-CAR T細胞が、リンパ球低減処置に対象を供した後に対象に投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗GPC3-CAR T細胞少なくとも約5x10個/kgが対象に投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗GPC3-CAR T細胞約5x10個から約1x1012個/kgが対象に投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
処置が、コンピューター断層撮影(CT)スキャンによって測定して、少なくとも30%腫瘍サイズを低減することに有効である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
処置が、コンピューター断層撮影(CT)スキャンによって測定して、腫瘍病変の直径のベースライン測定値における10%未満の変化として測定される、腫瘍サイズの安定化において有効である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
抗GPC3-CAR T細胞の投与および対象をリンパ球低減処置に供することが、抗GPC3-CAR T細胞を単独で投与することと比較して対象の中央生存期間を少なくとも約6ヵ月相乗的に増加させる、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項9】
固形腫瘍が肝臓がん、胃がん、肺がん、乳がん、頭頸部がん、卵巣がん、甲状腺がん、腎臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、膵臓がん、脂肪肉腫、精巣非セミノーマ胚細胞がん、メラノーマ、副腎の腺腫、シュワン腫、悪性線維性組織球腫または食道がんである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗GPC3-CARが、GPC3のC末端への特異的結合を呈する抗原結合単位を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
抗原結合単位が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8に少なくとも90%配列相同性を呈する配列を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
抗GPC3-CAR T細胞が少なくとも2個の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗GPC3-CAR T細胞が少なくとも3個の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項14】
細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3、CD28、4-1BB、OX40、DAP10またはICOSに由来するシグナル伝達ドメインから選択される、請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
リンパ球低減処置が、対象における制御性T細胞の量を低減することを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
制御性T細胞の量を低減することが、対象における循環CD4およびCD25細胞のフローサイトメトリー分析によって測定して、制御性T細胞の少なくとも約30%の低減を含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
化学療法剤が、エトポシド、シタラビン、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシンまたはこれらの任意の組合せをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
化学療法剤が、抗GPC3-CAR T細胞の投与に先行して対象に少なくとも1回投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項19】
リンパ球低減処置が、全血球計算(CBC)分析によって測定して、リンパ球の量を少なくとも約20%低減する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
処置が抗GPC3-CAR T細胞の対象への2回目の投与をさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象が難治性、持続性または進行性疾患を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項22】
抗GPC3-CAR T細胞が対象に対して自己または同種異系である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項23】
処置が抗GPC3-CAR免疫応答細胞の投与と同時にまたはその後に少なくとも1つの免疫賦活剤を対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
免疫賦活剤が、アルデスロイキン(IL-2)、IL-3、IL-6、IL-11、GM-CSFおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
(a)抗GPC3-CAR免疫応答細胞の有効量、ここで、抗GPC3-CARは、配列番号28、配列番号29および配列番号30のいずれか1つに少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む;
(b)対象に存在するリンパ球を低減するために有効な化学療法剤、ここで、化学療法剤は、シクロホスファミドおよびフルダラビンを含む;および
(c)化学療法剤の後にまたはそれと同時に対象に抗GPC3-CAR免疫応答細胞を投与するための説明書
を含む、GPC3を発現する固形腫瘍を呈する対象に抗GPC3-CAR免疫応答細胞を投与するためのキット。
【請求項26】
抗GPC3-CAR免疫応答細胞がNK細胞またはT細胞(抗GPC3-CAR T細胞)である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
化学療法剤が、エトポシド、シタラビン、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシンまたはこれらの任意の組合せをさらに含む、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
それを必要とする対象への投与のために製剤化された約60mg/kgから約80mg/kgシクロホスファミドまたは約25mg/mから約35mg/mフルダラビンをさらに含む、請求項25に記載のキット。
【請求項29】
抗GPC3-CAR T細胞約1x10個から約1x1011個を含む、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
説明書が、化学療法剤を投与した後に抗GPC3-CAR T細胞を投与するための手順を提供する、請求項26に記載のキット。
【請求項31】
説明書が、化学療法剤を投与した少なくとも12時間後に抗GPC3-CAR T細胞を投与するための手順を提供する、請求項26に記載のキット。
【請求項32】
説明書が、化学療法剤を投与した少なくとも24時間後に抗GPC3-CAR T細胞を投与するための手順を提供する、請求項26に記載のキット。
【請求項33】
抗GPC3-CAR T細胞が静脈内注射のために製剤化されている、請求項26に記載のキット。
【請求項34】
抗GPC3-CAR T細胞が、固形腫瘍を含む対象の肝臓への動脈内注射のために製剤化されている、請求項26に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、CN特許出願第CN201610256568.9号、2016年4月22日出願の利益を主張し、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
がんは、世界中で社会に強い影響を与えている。2016年には合衆国だけで推定1,685,210例のがんの新規症例が診断されており、595,690名が疾患のために死亡している。Journal of Oncology Practice (Erikson 2007)によると、2005年における1170万名(26名に1名)から、2020年までに、アメリカ人1820万名、およそ19名に1名ががん患者または元がん患者となっているはずである。
【0003】
キメラ抗原受容体(CAR)は、単一分子として、T細胞および他の免疫細胞の特異性および機能を再指定する、抗原に対する組換え受容体である。がん免疫療法におけるそれらを使用すると、活性免疫化の障害を回避して、腫瘍標的化T細胞を迅速に生成できるようになる。細胞で発現されるとCAR改変細胞は、対象において直ちに長期間効果を発揮できる。
【0004】
がん患者のT細胞を彼らの腫瘍を認識するように編集するキメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療は、血液がんを処置するために有効であることが示されている。最近の臨床試験では、CAR T細胞治療は、進行した、他に処置不能な形態の白血病およびリンパ腫を有する血液がん患者の転帰を劇的に改善した。その反面、CAR T細胞は、固形腫瘍においては特有の一連の課題に直面している。特に課題として、その発現が正常組織から腫瘍を明確に区別し、腫瘍内の腫瘍細胞の有効な殺滅およびそれによる腫瘍サイズの低減を確立する抗原の同定が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多種多様な固形腫瘍に対する代替的および有効な処置に対する緊急の必要性がある。本発明は、この必要性に対処し、関連する優位性も提供する。したがって本発明は、グリピカン-3(GPC3)を発現する場合がある固形腫瘍を呈する対象を処置する方法を開示する。一部の場合では方法は、抗GPC3キメラ抗原受容体免疫応答細胞を対象に投与することを含む場合がある。一部の場合では投与は、対象をリンパ球低減処置に供した後またはそれと同時に行われてよい。一部の場合では免疫応答細胞は、NK細胞(抗GPC3-CAR NK細胞)またはT細胞(抗GPC3-CAR T細胞)であってよい。一部の場合では対象への抗GPC3-CAR T細胞の投与は、対象をリンパ球低減処置に供した後に行われてよい。一部の場合では抗GPC3-CAR T細胞少なくとも約5x10個/kgが対象に投与されてよい。一部の場合では抗GPC3-CAR T細胞約5x10個から約1x1012個/kgが対象に投与される。投与は、コンピューター断層撮影(CT)スキャンによって測定して、少なくとも30%の腫瘍サイズの低減に有効であり得る。一部の場合では投与は、コンピューター断層撮影(CT)スキャンによって測定して、腫瘍病変の直径のベースライン測定における10%未満の変化として測定される、腫瘍サイズの安定化に有効であり得る。一部の場合では抗GPC3-CAR T細胞の投与および対象をリンパ球低減処置に供することは、抗GPC3-CAR T細胞を単独で投与することと比較して対象の中央生存期間を少なくとも約6ヵ月相乗的に増加させことができる。一部の場合では固形腫瘍は、肝臓がん、胃がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺癌)、肺がん、乳がん、頭頸部がん、卵巣がん、腎臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、膵臓がん、脂肪肉腫、精巣非セミノーマ胚細胞がん、メラノーマ、副腎の腺腫、シュワン腫、悪性線維性組織球腫または食道がんである場合がある。一部の場合では抗GPC3キメラ抗原受容体は、GPC3のC末端への特異的結合を呈することができる抗原結合単位を含んでよい。一部の場合では抗原結合単位は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの配列相同性を呈する配列を含む場合がある。一部の場合では抗GPC3-CARは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29または配列番号30に少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの配列同一性を呈する配列を含む場合がある。抗GPC3-CARは、配列番号28から30のいずれか1つに少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの配列同一性を呈する配列を含む場合がある。一部の場合では抗GPC3-CAR T細胞は、少なくとも2つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む場合がある。一部の場合では抗GPC3-CAR T細胞は、少なくとも3つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む場合がある。細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3、CD28、4-1BB、OX40、DAP10またはICOSに由来するシグナル伝達ドメインから選択されてよい。一部の場合ではリンパ球低減処置は、対象における制御性T細胞の量を低減することを含む場合がある。制御性T細胞の量を低減することは、対象における循環CD4およびCD25細胞のフローサイトメトリー分析によって測定して、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高い制御性T細胞の低減を含む場合がある。一部の場合ではリンパ球低減処置は、対象に放射線または生物学的薬剤を投与することを含む場合がある。リンパ球低減処置は、対象に化学療法を投与することを含む場合もある。対象への化学療法の投与は、シクロホスファミド、フルダラビン、エトポシド、シタラビン、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される化学療法剤を投与することを含む場合がある。一部の場合では化学療法剤は、抗GPC3-CAR T細胞の投与に先行して対象に少なくとも1回投与されてよい。一部の場合ではリンパ球低減処置は、全血球計算(CBC)分析によって測定して、リンパ球の量を少なくとも約20%低減できる。
【0006】
本明細書では、対象への抗GPC3-CAR T細胞の2回目の投与をさらに含む方法も開示される。一部の場合では対象は、難治性、持続性または進行性疾患を有する場合がある。抗GPC3-CAR T細胞は、対象に対して自己または同種異系であってよい。
【0007】
本明細書では、抗GPC3キメラ抗原受容体免疫応答細胞の投与と同時またはその後に少なくとも1つの免疫賦活剤を対象に投与することをさらに含む方法も開示される。免疫賦活剤は、アルデスロイキン(IL-2)、IL-3、IL-6、IL-11、GM-CSFおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択されてよい。生物学的薬剤は、リンパ球上に発現される抗原に対する抗体であってよい。
【0008】
本明細書では、固形腫瘍を呈する対象に抗GPC3-CAR免疫応答細胞を投与するためのキットであって、抗GPC3-CAR免疫応答細胞の有効量;対象に存在するリンパ球を低減するために有効な化学療法剤;および、化学療法剤の後にまたはそれと同時に対象に抗GPC3-CAR免疫応答細胞を投与するための説明書を含むキットが開示される。一部の場合では、抗GPC3-CAR免疫応答細胞は、NK細胞またはT細胞(抗GPC3-CAR T細胞)であってよい。化学療法剤は、シクロホスファミド、フルダラビン、エトポシド、シタラビン、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシンおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択されてよい。キットは、それを必要とする対象への投与のための製剤化された約60mg/kgから約80mg/kgシクロホスファミドまたは約25mg/mから約35mg/mフルダラビンをさらに含んでよい。一部の場合ではキットは、抗GPC3-CAR T細胞約1x10個から約1x1012個を含んでよい。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与した後に抗GPC3-CAR T細胞を投与するための手順を提供できる。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与した少なくとも12時間後に抗GPC3-CAR T細胞を投与するための手順を提供できる。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与した少なくとも24時間後に抗GPC3-CAR T細胞を投与するための手順を提供できる。抗GPC3-CAR T細胞は、静脈内注射のために製剤化されてよい。抗GPC3-CAR T細胞は、固形腫瘍を含む可能性がある対象の肝臓への動脈内注射のために製剤化されてよい。
【0009】
参照による組込み
本明細書におけるすべての刊行物、特許および特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許および特許出願が具体的かつ個別に参照により組み込まれると示されるように同程度に参照により組み込まれる。本明細書における用語と組み込む参考文献における用語との間に矛盾がある場合、本明細書における用語が優先される。
【0010】
図面の簡単な説明
本開示の新規特性は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載される。本開示の特性および優位性のより良い理解は、本開示の原理が利用され得る例示的実施形態を記載する次の詳細な記載およびその添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、GPC3を標的化するキメラ抗原受容体をコードする第2世代CAR-Tベクターを示す。
図2図2は、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンを用いて処置された個体H01、H02またはH03のリンパ球の対ベースラインレベル比を示す。
図3図3は、肝臓切片の処置前および後の磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを示す。
図4図4Aは、3:1、1:1または1:3のエフェクター:標的比で、対照細胞、SK-HEP-1と共培養された33-28BBZ、92-28BBZおよび4-28BBZにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示し、図4Bは、第2の対照細胞株、CHO-K1と共培養された33-28Z、92-28Z、92-BBZおよび92-28BBZにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。
図5図5Aは、3:1、1:1または1:3のエフェクター:標的比で、GPC3陽性肝臓がん細胞、Huh-7または、図5Bに示すとおりGPC3、CHO-K1-GPC3+を発現するように形質導入した対照細胞と共培養された33-28BBZ、92-28BBZおよび4-28BBZにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。
図6図6Aは、HepG2(HCC)と共培養された抗GPC3 CAR-T細胞、92-28Z、92-BBZ、92-28BBZまたはモックにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。図6Bは、Hep3B(HCC)と共培養された抗GPC3 CAR-T細胞、92-28Z、92-BBZ、92-28BBZまたはモックにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。図6Cは、PLC/PRF/5(肝細胞種)と(with or)共培養された抗GPC3 CAR-T細胞、92-28Z、92-BBZ、92-28BBZまたはモックにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。
図7図7Aは、3:1、1:1または1:3のエフェクター:標的比で、Huh-7細胞と共培養された抗GPC3 CAR-T細胞、33-28Zまたは33-28BBZにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。図7Bは、3:1、1:1または1:3のエフェクター:標的比で、胃癌細胞株KATO-III細胞と共培養された抗GPC3 CAR-T細胞、92-28Zまたは92-28BBZにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。
図8図8Aは、92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置されたマウスは、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたは生理食塩水を用いて処置されたマウスと比較して腫瘍サイズが顕著に低減していたことを示す。図8Bは、92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置されたHuh-7細胞を生着させたマウスは、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたは生理食塩水を用いて処置されたマウスと比較して腫瘍サイズが顕著に低減していたことを示す腫瘍の画像を示す。図8Cは、92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置されたマウスはまた、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたは生理食塩水を用いて処置されたマウスと比較して腫瘍重量が顕著に低減していたことを示す。図8Dは、92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置されたマウスはまた、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたは生理食塩水を用いて処置されたマウスと比較して阻害が顕著に低減していたことを示す。
図9図9は、3:1または1:1のエフェクター:標的比で、Huh7(HCC)細胞と共培養された種々の第2および第3世代抗GPC3 CARコンストラクト:4-28Z、4-28BBZ、4-4-28BBZ、4-14-28BBZ、4-20-28BBZ、4-35-28BBZ、4-42-28BBZのcytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayの特異的溶解結果を示す。
図10図10Aは、A431(GPC3neg)と共培養された抗GPC3 CAR-T細胞、33-28Z、92-28Z、92-BBZ、92-28BBZまたはモックにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。図10Bは、Huh-7(GPC3pos)と共培養された抗GPC3 CAR-T細胞、33-28Z、92-28Z、92-BBZ、92-28BBZまたはモックにおいて実施されたCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assayを示す。CytoToxアッセイは、すべて3:1、1:1または1:3のエフェクター:標的比で実施された。
図11図11Aは、異種移植マウスモデルの結果を示し、92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置されたマウスは、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたはモックを用いて処置されたマウスと比較して腫瘍容量(mm)が顕著に低減していた。図11Bは、92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置されたマウスは、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたは生理食塩水を用いて処置されたマウスと比較して腫瘍重量が顕著に低減していたことを示す。図11Cは、モック、92-28BBZまたは92-28Z CAR-Tを用いて処置されたマウス由来の腫瘍の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示の詳細な記載
次の記載および実施例は、本開示の実施形態を詳細に例示する。本開示が本明細書に記載される具体的な実施形態に限定されず、したがって変化し得ることは理解される。当業者は、本開示の範囲内に包含される本開示の多数の変形形態および改変形態があることを認識する。他に示す場合を除いて任意の実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わされてよい。
【0013】
他に示す場合を除いて、本明細書において使用される、本明細書の一部の発明的実施形態は、数値範囲を検討する。本発明の種々の態様は範囲の形式で提示され得る。範囲の形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためだけであり、本発明の範囲への確固たる限定として解釈されるべきでないことは理解されるべきである。したがって範囲の記載は、具体的に開示されるすべての可能な部分的な範囲および範囲内の個々の数値を、明確に記載されたように含むと見なされるべきである。例えば1から6などの範囲の記載は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの具体的に開示される部分的な範囲、ならびに範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5および6を含むと見なされるべきである。このことは範囲の幅に関わらず適用される。範囲が存在する場合、範囲は範囲の端点を含む。
【0014】
定義
他に示す場合を除いて、本明細書において使用される冠詞「a」は、明確に他に規定される場合を除いて、1つまたは複数を意味する。
【0015】
他に示す場合を除いて本明細書において使用される「含有する(contain)」、「含有している(containing)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」などの用語は「含んでいる(comprising)」を意味する。
【0016】
本明細書において使用される用語「活性化」およびその文法的同義語は、それにより細胞が静止状態から活性状態に移行するプロセスを指すことができる。このプロセスは、抗原への応答、遊走および/または、機能的に活性な状態への表現型的もしくは遺伝的変化を含む場合がある。例えば用語「活性化」は、T細胞活性化の段階的プロセスを指す場合がある。例えばT細胞は、完全に活性化するために少なくとも2つのシグナルを必要とし得る。第1のシグナルは抗原-MHC複合体によるTCRの会合後に生じる場合があり、第2のシグナルは共刺激分子の会合によって生じる場合がある(表3)。インビトロ(in vitro)で抗CD3は第1のシグナルを模倣でき、抗CD28は第2のシグナルを模倣できる。例えば操作されたT細胞は、発現されたCARによって活性化される場合がある。本明細書において使用されるT細胞活性化」またはT細胞トリガーリングは、検出可能な細胞増殖(proliferation)、サイトカイン産生および/または検出可能なエフェクター機能を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態を指す場合がある。
【0017】
本明細書において使用される用語「抗原結合単位」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に特異的に結合する(「免疫反応する」)抗原結合部位を含有する分子を指す。同様に用語「抗原結合単位」に包含されるのは、無脊椎動物および脊椎動物を含む種々の種由来の免疫グロブリン分子である。構造的に最も単純な天然に存在する抗体(例えば、IgG)は、ジスルフィド結合によって内部で繋がれている4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む。免疫グロブリンは、IgD、IgG、IgA、IgMおよびIgEなどの数種類の分子を含む分子の大きなファミリーを表す。用語「免疫グロブリン分子」として、例えばハイブリッド抗体または変更された抗体およびその断片が挙げられる。抗体の抗原結合機能が、天然に存在する抗体の断片によって実施され得ることは示されている。これらの断片は、集合的に「抗原結合単位」と称される。同様に用語「抗原結合単位」に包含されるのは、エピトープにフィットしそれを認識する特定の形状を有し、1つまたは複数の非共有結合相互作用が分子構造とエピトープとの間の複合体を安定化する、任意の、ポリペプチド鎖を含有する分子構造である。
【0018】
ポリペプチドまたは他の物質を含む他の参照抗原にそれが結合するよりも大きな親和性または結合活性で結合する場合、抗原結合単位は、抗原に「特異的に結合する」または「免疫反応性である」。
【0019】
本明細書において使用される「抗原」は、抗原結合単位が特異的に認識および結合する物質を意味する。抗原として、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖および脂質;これらの一部およびこれらの組合せが挙げられる。非限定的な例示的抗原として、ヒト、マウス由来のGPC3およびこれらの他のホモログが挙げられる。「抗原」は、免疫応答を誘発する分子も指す場合がある。この免疫応答は、抗体産生もしくは特定の免疫学的コンピテント細胞の活性化、または両方を含む場合がある。当業者は、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の巨大分子が抗原として作用できることを理解する。
【0020】
本明細書において使用される用語「免疫グロブリン」または「Ig」は、抗体として機能するタンパク質のクラスを指すことができる。B細胞によって発現される抗体は、キメラ抗原受容体または抗原受容体と称される場合がある。このクラスのタンパク質に含まれる5つのメンバーはIgA、IgG、IgM、IgDおよびIgEであり、その内IgGは最も一般的な循環抗体である。それは、凝集、補体の固定および他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスに対する防御において重要である。例えば腫瘍細胞抗原は、CARによって認識される場合がある。
【0021】
用語「抗GPC3抗体」は、細胞によって発現される他の抗原からGPC3を区別するために抗体が有用であるような十分な親和性でGPC3に結合できる抗体または抗体結合部位を指すことができる。一実施形態では無関係な、非GPC3タンパク質への抗GPC3抗体の結合の程度は、例えば放射免疫アッセイ(RIA)によって測定して、GPC3への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態ではGPC3に結合する抗体は、<1μΜ、<100nM、<10nM、<5nM、<4nM、<3nM、<2nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nMまたは<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8Mから10-13M、例えば10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する場合がある。ある特定の実施形態では抗GPC3抗体は、さまざまな種由来のGPC3内で保存されているGPC3のエピトープに結合する。
【0022】
本明細書において使用される用語「自己」およびその文法的同義語は、同じ存在から由来することを指すことができる。例えば試料(例えば細胞)は、除かれ、処理され、同じ対象(例えば患者)に後に戻されてよい。自己プロセスは、ドナーとレシピエントとが異なる対象である同種異系プロセスとは区別される。
【0023】
本明細書において使用される「異種移植」およびその文法的同義語は、レシピエントへの移植、インプラントまたは細胞、組織もしくは器官の注入を含み、レシピエントとドナーとが異なる種である任意の手順を包含できる。本明細書に記載される細胞、器官および/または組織の移植は、ヒトへの異種移植のために使用されてよい。異種移植として、これだけに限らないが血管柄付き(vascularized)異種移植、部分血管柄付き(partially vascularized)異種移植、血管柄付きでない(unvascularized)異種移植、異種ドレッシング(xenodressing)、異種バンテージ(xenobandages)および異種構造(xenostructures)が挙げられる。
【0024】
本明細書において使用される「同種移植」およびその文法的同義語(例えば同種異系移植)は、レシピエントへの移植、インプラントまたは細胞、組織もしくは器官の注入を含み、レシピエントとドナーとが同じ種だが異なる個体である任意の手順を包含できる。本明細書に記載される細胞、器官および/または組織の移植は、ヒトへの同種移植のために使用されてよい。同種移植として、これだけに限らないが血管柄付き同種移植、部分血管柄付き同種移植、血管柄付きでない同種移植、同種ドレッシング(allodressing)、同種バンテージ(allobandages)および同種構造(allostructures)が挙げられる。
【0025】
本明細書において使用される「自家移植」およびその文法的同義語(例えば、自己移植)は、レシピエントへの移植、インプラントまたは細胞、組織もしくは器官の注入を含み、レシピエントとドナーとが同じ個体である任意の手順を包含できる。本明細書に記載される細胞、器官および/または組織の移植は、ヒトへの自家移植のために使用されてよい。自家移植として、これだけに限らないが血管柄付き自家移植、部分血管柄付き自家移植、血管柄付きでない自家移植、自家ドレッシング(autodressing)、自家バンテージ(autobandages)および自家構造(autostructures)が挙げられる。
【0026】
本明細書において使用される用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、これだけに限らないがT細胞が挙げられる免疫細胞によって発現され得る操作された分子を指す。T細胞において発現される場合CARは、この人工受容体によって特異性が指定されるかたちで、標的細胞の殺滅を誘導するようにT細胞の対象を再指定することができる。CARの細胞外結合ドメインは、マウス、ヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体に由来してよい。「抗GPC3-CAR」は、GPC3に結合できるCARである。
【0027】
本明細書において使用される用語「エピトープ」およびその文法的同義語は、抗体、B細胞、T細胞または操作された細胞によって認識され得る抗原の一部を指すことができる。例えばエピトープはTCRによって認識されるがんエピトープであってよい。抗原内の複数のエピトープも認識され得る。エピトープは、突然変異される場合もある。
【0028】
本明細書において使用される用語「操作された」およびその文法的同義語は、核酸、例えば生物のゲノム内の核酸の1つまたは複数の変更を指すことができる。用語「操作された」は遺伝子の変更、付加および/または欠失を指すことができる。操作された細胞は、付加された、欠失されたおよび/または変更された遺伝子を有する細胞も指すことができる。
【0029】
本明細書において使用される用語「細胞」または「操作された細胞」およびそれらの文法的同義語は、ヒトまたは非ヒト動物由来の細胞を指すことができる。操作された細胞は、CAR発現細胞を指すこともできる。
【0030】
本明細書において使用される用語「医薬品及び医薬部外品の製造管理および品質管理の基準」(GMP)およびその文法的同義語は、FDAにより安全、有効または純粋である製品を指すことができる。GMPは、「cGMP」と称される場合もある。「c」は「現在(current)」を表している。製品の製造者は、GMP製品の規制に適合するために最新の技術およびシステムを使用する場合がある。GMP適合製品は、研究設定とは対照的な臨床設定において典型的には利用される。
【0031】
本明細書において使用される用語「トランスフェクション」は、真核細胞への外来核酸の導入を指す。トランスフェクションは、リン酸カルシウムDNA共沈殿、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、電気穿孔法、微量注入法、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染および微粒子銃が挙げられる当技術分野において周知の種々の手段によって達成されてよい。
【0032】
用語「安定トランスフェクション」または「安定にトランスフェクトされた」は、外来核酸、DNAまたはRNAの、トランスフェクトされる細胞のゲノムへの導入または組込みを指す。用語「安定トランスフェクタント」は、ゲノムDNAに安定に組み込まれた外来DNAを有する細胞を指す。
【0033】
本明細書において使用される用語「コードする核酸分子」「コードするDNA配列」および「コードするDNA」は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列を指す。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸の順序を決定する。それにより核酸配列は、アミノ酸配列をコードする。
【0034】
本明細書において使用される用語「対象」は、任意の動物、例えば哺乳動物または有袋類を指す。本発明の対象として、これだけに限らないがヒト、非ヒト霊長類(例えば、アカゲザルまたは他の種類のマカク)、マウス、ブタ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ラットおよび任意の種類の家禽が挙げられる。
【0035】
本明細書において使用される用語「レシピエント」およびそれらの文法的同義語は、治療または処置を受けるヒトまたは非ヒト動物を指すことができる。
【0036】
本明細書において使用される用語「末梢血リンパ球」(PBL)およびその文法的同義語は、血液(例えば、末梢血)中を循環しているリンパ球を指すことができる。末梢血リンパ球は器官に局在しないリンパ球を指す場合がある。末梢血リンパ球は、T細胞、NK細胞、B細胞またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0037】
用語「免疫応答細胞」は、これだけに限らないがT細胞、B細胞およびNKT細胞、これらそれぞれの前駆体細胞およびこれらの後代が挙げられる、免疫応答を誘発できる細胞を指すことができる。免疫応答細胞は、リンパ性または骨髄性細胞系譜の細胞も指す場合がある。
【0038】
本明細書において使用される用語「T細胞」およびその文法的同義語は、任意の由来のT細胞を指してよい。例えばT細胞は、初代T細胞、例えば自己T細胞、細胞株などであってよい。T細胞は、ヒトまたは非ヒトであってよい。
【0039】
本明細書において使用される用語「T細胞活性化」または「T細胞トリガーリング」およびその文法的同義語は、検出可能な細胞増殖、サイトカイン産生および/または検出可能なエフェクター機能を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態を指すことができる。一部の場合では「完全T細胞活性化」は、T細胞傷害性をトリガーすることに類似する場合がある。T細胞活性化は、当技術分野において周知の種々のアッセイを使用して測定することができる。前記アッセイは、サイトカイン分泌を測定するためのELISA、ELISPOT、細胞内サイトカイン(CD107)発現を測定するためのフローサイトメトリーアッセイ、増殖を測定するためのフローサイトメトリーアッセイおよび標的細胞排除を判定するための細胞傷害性アッセイ(51Cr放出アッセイ)であってよい。前記アッセイは、対照と比較した操作された細胞の相対的活性化を判定するために、操作された細胞(CAR T)を比較するための対照(非操作細胞)を典型的には使用する。追加的に前記アッセイは、標的抗原を発現しない標的細胞とインキュベートしたまたは接触させた操作された細胞を比較できる。例えば前記比較は、CD19を発現しない標的細胞と共にインキュベートしたCD19-CAR T細胞であってよい。
【0040】
用語「配列」およびその文法的同義語は、ヌクレオチド配列を指して使用される場合、DNAまたはRNAを包含でき;1本鎖または2本鎖のいずれであってもよい。核酸配列は突然変異される場合がある。核酸配列は、任意の長さ、例えば2から1,000,000以上の間のヌクレオチド長(またはこれらの間もしくはこれを超える任意の整数値)、例えば約100から約10,000ヌクレオチドの間または約200から約500ヌクレオチドの間であってよい。
【0041】
使用方法
一態様では本明細書では、グリピカン-3(GPC3)を発現する固形腫瘍を呈している対象を処置する方法が開示される。主題の方法は、抗GPC3キメラ抗原受容体免疫応答細胞を対象に投与するステップであって、投与が対象をリンパ球低減処置に供した後またはそれと同時に行われるステップを典型的には含む。
【0042】
本明細書において開示される方法によって処置される対象は、がんまたは固形腫瘍を呈する場合がある。しばしば、がん細胞または固形腫瘍細胞は、1つまたは複数の腫瘍抗原を発現する。典型的には腫瘍抗原は、グリピカン-3(GPC3)である。GPC-3を発現するがんまたは固形腫瘍を呈する対象は、GPC3陽性がんを呈していると称される場合がある。
【0043】
GPC3を発現するがんとして、これだけに限らないが肝臓がん、胃がん、食道がん、肺がん、乳がん、頭頸部がん、卵巣がん、腎臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、膵臓がん、脂肪肉腫、精巣非セミノーマ(noneminomatous)胚細胞がん、メラノーマ、腺腫、副腎がん、シュワン腫、悪性、線維性組織球腫(fibrous histiochytoma)またはこれらの任意の組合せが挙げられる。主題の方法は扁平細胞癌または腺癌、胃腸管の神経内分泌癌、または"Glypican-3 expression in gastrointestinal and pancreatic epithelial neoplasms. (2013) 44, 542-550 Human Pathology."において開示の任意の他のがんを処置するために適用できる。追加的に本明細書で開示される抗GPC3-CAR-Tなどの本明細書で開示される免疫応答細胞は、卵巣癌、胆管細胞癌、中皮腫、乳がん、ランチ(lunch)の扁平細胞癌、子宮頸部上皮内(intraethithelial)新生物、子宮頸部の扁平細胞癌、肝内および肝外がん、胆嚢癌、侵襲性腺管癌、明細胞癌、オンコサイトーマ、乳頭癌、腺癌、乳頭癌ならびに乳房の小葉および髄質癌を標的化するために利用することができる。抗GPC3治療のための追加的標的として、"Glypican 3 expression in human nonneoplastic, preneoplastic, and neoplastic tissues. (2008) 129:899-906 Am J ClinPathol."に見出されるものが挙げられる。
【0044】
一部の場合ではがんまたは腫瘍細胞は、フローサイトメトリーまたは免疫組織化学によってGPC3発現について評価される場合がある。がんまたは腫瘍細胞でのGPC3のレベルは、低、中または高に分類される。
【0045】
一部の場合ではがんまたは腫瘍細胞は、細胞表面上にGPC3を発現できる。細胞表面上でのGPC3の発現は、免疫組織化学またはフローサイトメトリー分析などの方法において、例えばGPC3に対する抗体を使用して判定できる。代替的にGPC3 mRNA発現は、細胞表面上でのGPC3発現に相関すると考えられ、インサイツハイブリダイゼーションおよびRT-PCRから選択される方法によって判定することができる。
【0046】
一部の場合ではGPC3は、表2中の参照遺伝子に少なくとも50%配列同一性を呈する核酸配列を含む遺伝子によってコードされる。GPC3は、表2中の参照遺伝子に少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの配列同一性を呈する核酸配列を含む遺伝子によってコードされてよい。
【0047】
一部の実施形態では抗GPC3キメラ抗原受容体免疫応答細胞は、GPC3を発現する固形腫瘍を呈する対象に、対象をリンパ球低減処置に供した後またはそれと同時に投与される。
【0048】
主題の抗GPC3キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外抗原結合領域、膜貫通ドメインおよび免疫応答細胞活性化を調節する細胞内シグナル伝達領域を典型的には含む。一部の場合では抗GPC3 CARは、ヒンジまたはスペーサーをさらに含む。一部の場合では抗GPC3 CARは、1つまたは複数の共刺激ドメインをさらに含む。
【0049】
キメラ抗原受容体は、細胞外抗原結合領域を典型的には含む。一実施形態では細胞外抗原結合領域は、完全にヒトであってよい。他の場合では細胞外抗原結合領域は、ヒト化されてよい。他の場合では細胞外抗原結合領域は、マウスまたは、細胞外抗原結合領域が少なくとも2種の異なる動物種に由来するアミノ酸配列からなるキメラであってよい。一部の場合では細胞外抗原結合領域は、非ヒトであってよい。種々の抗原結合領域は、GPC3を標的化するように設計されてよい。非限定的例として、抗体に由来する1本鎖可変断片(scFv’)、ライブラリーから選択される断片抗原結合領域(Fab)、単一ドメイン断片またはそれらの同族受容体に会合する天然リガンドが挙げられる。細胞外抗原結合領域は、scFv、Fabまたは天然リガンドおよびこれらの誘導体のいずれかを包含できる。細胞外抗原結合領域は、インタクト抗体の一部を含む場合があり、インタクト抗体が結合する抗原に結合できるインタクト抗体以外の分子を指す場合がある。抗体断片の例として、これだけに限らないがFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;二重特異性抗体;直鎖状抗体;1本鎖抗体分子(例えばscFv);および抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
【0050】
細胞外抗原結合領域、例えばscFv、Fabまたは天然リガンドは、抗原特異性を決定するCARの一部であってよい。細胞外抗原結合領域は、任意の相補性標的に結合できる。細胞外抗原結合領域は、可変領域の配列が周知である抗体に由来してよい。細胞外抗原結合領域は、入手可能なマウス融合細胞から得た抗体配列に由来してよい。代替的に細胞外抗原結合領域は、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)などの腫瘍細胞または初代細胞の全エクソーム配列決定から得ることができる。
【0051】
一部の場合では細胞外抗原結合領域の結合特異性は、相補性決定領域または、軽鎖CDRもしくは重鎖CDRなどのCDRによって決定され得る。多くの場合、結合特異性は、軽鎖CDRおよび重鎖CDRによって決定され得る。重鎖CDRと軽鎖CDRとの所与の組合せは、他の参照抗原と比較してGPC3などの抗原に対してより大きな親和性および/または特異性を付与できる所与の結合ポケットを提供できる。例えばグリピカン-3に特異的なCDRは、GPC3を標的化するCARがGPC3を発現する腫瘍細胞に免疫応答細胞を標的化できるように、CARの細胞外結合領域において発現されてよい。
【0052】
本明細書において開示される実施形態のいずれかの一部の態様では、scFvなどの細胞外抗原結合領域は、GPC3に特異的な軽鎖CDRを含んでよい。軽鎖CDRは、CARのscFvなどの抗原結合単位の軽鎖の相補性決定領域であってよい。軽鎖CDRは、アミノ酸残基の連続配列、またはフレームワーク領域などの非相補性決定領域によって分離され、かつ近接されてもよいアミノ酸残基の2つ以上の連続する配列を含んでよい。一部の場合では軽鎖CDRは、軽鎖CDR-1、CDR-2などと称され得る2つ以上の軽鎖CDRを含んでよい。一部の場合では軽鎖CDRは、それぞれ軽鎖CDR-1、軽鎖CDR-2および軽鎖CDR-3と称され得る3つの軽鎖CDRを含むことができる。一部の例では一般的軽鎖に存在するCDRの群は、集合的に軽鎖CDRと称される場合がある。
【0053】
本明細書において開示される実施形態のいずれかの一部の態様では、scFvなどの細胞外抗原結合領域は、GPC3に特異的な重鎖CDRを含む場合がある。重鎖CDRは、scFvなどの抗原結合単位の重鎖の相補性決定領域であってよい。重鎖CDRは、アミノ酸残基の連続配列、またはフレームワーク領域などの非相補性決定領域によって分離され、かつ近接されてもよいアミノ酸残基の2つ以上の連続する配列を含んでよい。一部の場合では重鎖CDRは、重鎖CDR-1、CDR-2などと称され得る2つ以上の重鎖CDRを含んでよい。一部の場合では重鎖CDRは、それぞれ重鎖CDR-1、重鎖CDR-2および重鎖CDR-3と称され得る3つの重鎖CDRを含んでよい。一部の例では一般的重鎖に存在するCDRの群は、集合的に重鎖CDRと称される場合がある。
【0054】
一部の場合では細胞外抗原結合領域標的化GPC3は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞によって発現され得る。一部の場合ではGPC3抗原に結合するCDR、軽鎖および/または重鎖は、CAR T細胞などのCAR免疫応答細胞の細胞外抗原結合領域内に含まれてよい。一部の場合では改変抗GPC3 CDRは、CAR免疫応答細胞の細胞外抗原結合領域上に発現されてよく、元の抗GPC3 CDRに約50%相同性から約100%相同性を有する。一部の場合では改変抗GPC3 CDRは、未改変抗GPC3 CDRに約50%から55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの相同性を有する場合がある。
【0055】
一部の場合ではscFv標的化GPC3は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞によって発現される場合がある。一部の場合ではGPC3抗原に結合するCDR、軽鎖および/または重鎖は、CAR T細胞などのCAR免疫応答細胞のscFv上に発現されてよい。一部の場合では改変抗GPC3 CDRは、CAR T細胞などのCAR免疫応答細胞のscFv上に発現されてよく、元の抗GPC3 CDRに約50%相同性から約100%相同性を有する。一部の場合では改変抗GPC3 CDRは、未改変抗GPC3 CDRに約50%から55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの相同性を有する場合がある。
【0056】
表1:例示的抗GPC3細胞外抗原結合領域:
【表1】
【0057】
好ましい場合では細胞外抗原結合領域は、GPC3を特異的に認識する。GPC3は、表2の参照GPC3遺伝子に少なくとも80%同一性を呈する配列を含み得る。一部の場合では細胞外抗原結合領域は、N末端、C末端またはGPC3のN末端からC末端の任意の部分を標的化できる。GPC3のC末端は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して共有結合で細胞膜に付加され得る。C末端は、一部の場合では約1から約800塩基を含んでよい。C末端は、C末端から約1、50、100、150、300、500、600から約800塩基までを含む場合がある。一部の場合では細胞外抗原結合領域は、GPC3のGPIアンカーを標的化する場合がある。
【0058】
表2: GPC3
【表2】
【0059】
遺伝子操作を使用することによって、細胞外抗原結合領域は種々の方法で改変できる。一部の場合では細胞外抗原結合領域は、その標的へのより高い親和性について選択され得るように突然変異されてよい。一部の場合では、その標的に対する細胞外抗原結合領域の親和性は、正常組織では低レベルで発現される場合がある標的に対して最適化されてよい。この最適化は、潜在的毒性を最小化するために実施されてよい。他の場合では、標的の膜結合形態に対してより高い親和性を有する細胞外抗原結合領域のクローニングは、その可溶型対応物より好ましい場合がある。この改変は、一部の標的がさまざまなレベルで可溶型中にも検出される場合があり、それらの標的化が意図しない毒性を生じる場合があることから実施されてよい。
【0060】
一部の場合では細胞外抗原結合領域は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8のいずれか1つに相同性で約50%から約100%類似であってよい。一部の場合では細胞外抗原結合領域は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7または配列番号8に、約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの相同性を有する場合がある。一部の場合では細胞外抗原結合領域は、マウス、ヒト化または完全ヒトであってよい。細胞外抗原結合領域は、約1%から約100%ヒトであってよい。一部の場合では細胞外抗原結合領域は、約10%から20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または約100%までヒトであってよい。
【0061】
一部の場合では細胞外抗原結合領域は、ヒンジまたはスペーサーを含む。用語ヒンジおよびスペーサーは、互換的に使用される場合がある。ヒンジは、細胞外抗原結合領域に可動性を提供するように使用されるCARの一部と見なすことができる。一部の場合ではヒンジは、特に細胞外抗原結合領域を検出するための抗体が機能性でないまたは入手できない場合に、細胞の細胞表面上のCARを検出するために使用できる。例えば免疫グロブリンに由来するヒンジの長さは、細胞外抗原結合領域が標的化する標的上のエピトープの位置に応じた最適化を必要とする場合がある。
【0062】
一部の場合ではヒンジは、免疫グロブリンに属さないが代わりにCD8アルファ分子の天然ヒンジなどの別の分子に属し得る。CD8アルファヒンジは、CD8共受容体とMHC分子との相互作用において役割を演じることが周知であるシステインおよびプロリン残基を含有できる。前記システインおよびプロリン残基は、前記CARの性能に影響を与える場合がある。
【0063】
CARヒンジは、サイズ調節可能であってよく、CAR免疫応答細胞と標的細胞との間の直行シナプス距離(orthogonal synapse distance)が正常化されるようにある程度補うことができる。免疫応答細胞と標的細胞との間の免疫学的シナプスのこのトポグラフィーは、短いヒンジのCARであってもシナプス距離をシグナル伝達のために接近させることができない、細胞表面標的分子上の膜から遠いエピトープのためにCARによって機能性に架橋されることができない距離も規定する。同様に、シグナル伝達出力が、長いヒンジのCARの場合だけ観察される、膜に近いCAR標的抗原エピトープが記載されている。ヒンジは、使用される細胞外抗原結合領域により調節されてよい。ヒンジは、任意の長さであってよい。
【0064】
膜貫通ドメインは、CARを細胞の原形質膜にアンカーできる。CD28の天然膜貫通部分は、CARにおいて使用されてよい。他の例ではCD8アルファの天然膜貫通部分は、CARにおいても使用されてよい。「CD8」によって、NCBI参照番号:NP_001759に少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%同一性を有するタンパク質または、刺激性活性を有するその断片を意味することができる。「CD8核酸分子」によって、CD8ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意味されてよい。一部の場合では膜貫通領域は、CD28の天然膜貫通部分であってよい。「CD28」によって、NCBI参照番号:NP_006130に少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%同一性を有するタンパク質または刺激性活性を有するその断片が意味されてよい。「CD28核酸分子」によって、CD28ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意味されてよい。一部の場合では膜貫通部分は、CD8α領域を含んでよい。
【0065】
CARの細胞内シグナル伝達領域は、CARが存在する免疫応答細胞のエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与できる。CARは、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であってよいT細胞のエフェクター機能を誘導できる。したがって用語細胞内シグナル伝達領域は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞を特定の機能を実施するように導くタンパク質の一部を指す。通常細胞内シグナル伝達領域全体が使用され得るが、多くの場合、シグナル伝達ドメインの鎖全体を使用する必要はない。一部の場合では、細胞内シグナル伝達領域のトランケートされた一部が使用される。一部の場合では、したがって用語細胞内シグナル伝達領域は、エフェクター機能シグナルを伝達するために十分な細胞内シグナル伝達領域の任意のトランケートされた部分を含意することが意図される。
【0066】
CARにおける使用のためのシグナル伝達ドメインの好ましい例として、標的受容体会合に続いてシグナル伝達を開始するように協調して作用するT細胞受容体(TCR)の細胞質性配列および共受容体、ならびにこれらの配列の任意の誘導体または変異体および、同じ機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
【0067】
一部の場合では前記細胞内シグナル伝達領域は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)としても周知であるシグナル伝達モチーフを含有する場合がある。細胞質性シグナル伝達配列を含有するITAMの例として、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66d由来のものが挙げられる。しかし好ましい実施形態では細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ鎖由来である。
【0068】
1つまたは複数のITAMモチーフを含有するT細胞シグナル伝達ドメインの例は、CD3ゼータドメインであり、T細胞受容体T3ゼータ鎖またはCD247としても周知である。このドメインは、T細胞受容体CD3複合体の一部であり、抗原認識を、T細胞の主要なエフェクター活性化を伴ういくつかの細胞内シグナル伝達経路にカップリングすることにおいて重要な役割を演じている。本明細書において使用される、CD3ゼータとは、主に、ヒトCD3ゼータ、および実質的に同一の配列を有するタンパク質を含め、Swissprot entry P20963由来として周知のそのアイソフォームを指す。キメラ抗原受容体の一部として、完全T細胞受容体T3ゼータ鎖全体はやはり必要とされず、T細胞受容体T3ゼータ鎖のシグナル伝達ドメインを含むその任意の誘導体は、その任意の機能性等価物を含めて、好適である。
【0069】
細胞内シグナル伝達ドメインは、表3のドメインのいずれか1つから選択されてよい。一部の場合ではドメインは、参照ドメインのいずれか1つへの相同性が約50%から約100%であり得るように改変されてよい。表3のドメインのいずれか1つは、改変バージョンが約50から60、70、80、90、95、96、97、98、99または約100%までの相同性を有することができるように改変されてよい。
【0070】
CARの細胞内シグナル伝達領域は、1つまたは複数の共刺激ドメインをさらに含む場合がある。細胞内シグナル伝達領域は、単一の共刺激ドメイン、例えばゼータ鎖(第1世代CAR)、またはCD28もしくは4-1BB(第2世代CAR)を含んでよい。他の例では細胞内シグナル伝達領域は、CD28/OX40またはCD28/4-1BB(第3世代)などの2つの共刺激ドメインを含んでよい。
【0071】
CD8などの細胞内シグナル伝達ドメインと共に、これらの共刺激ドメインは、遺伝子転写および機能性細胞応答を支持するキナーゼ経路の下流活性化をもたらすことができる。CARの共刺激ドメインは、CD28(ホスファチジルイノシトール-4、5-二リン酸3-キナーゼ)または4-1BB/OX40(TNF受容体関連因子アダプタータンパク質)経路のいずれかならびにMAPKおよびAkt活性化に関連する近傍のシグナル伝達タンパク質を活性化できる。
【0072】
一部の場合では、CARを通じて生成されたシグナルは、第2のまたは共刺激シグナルと組み合わされてよい。共刺激シグナル伝達ドメインに関しては、キメラ抗原受容体様複合体は、いくつかの潜在的な共刺激シグナル伝達ドメインを含むように設計されてよい。当技術分野において十分周知のとおり、ナイーブT細胞では、T細胞受容体の単なる会合はT細胞の細胞傷害性T細胞への完全な活性化を誘導するためには不十分である。完全で生産性のT細胞活性化は、第2の共刺激シグナルを必要とする。T細胞活性化のための共刺激を提供することが報告されているいくつかの受容体として、これだけに限らないがCD28、OX40、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、4-1BBL、MyD88および4-1BBが挙げられる。これらの共刺激分子によって利用されるシグナル伝達経路は、主要なT細胞受容体活性化シグナルと相乗的に作用する共通の特性を共有している。これらの共刺激シグナル伝達領域は、1つまたは複数のITAMモチーフ、例えばCD3ゼータシグナル伝達ドメインに由来する主要なエフェクター活性化シグナルと相乗的であることができ、T細胞の活性化のための要件を満たすことができるシグナルを提供する。
【0073】
一部の場合ではキメラ抗原受容体様複合体への共刺激ドメインの付加は、操作された細胞の有効性および持続性を増強できる。別の実施形態ではT細胞シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインは、互いに融合され、それによりシグナル伝達領域を構成する。
【0074】
表3.共刺激ドメイン
【表3】
【0075】
一部の場合では主題のCARは、配列番号9から配列番号13のいずれか1つに約50%から約100%配列同一性を呈する配列またはその一部を含むことができる、表4。一部の場合では主題のCARは、配列番号9から配列番号13のいずれか1つに約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの配列同一性を呈する配列を含むことができる。
【0076】
表4:例示的ヒンジ、膜貫通、細胞内ドメインを包含するCAR-Tドメイン:
【表4】
【0077】
一部の場合では主題のCARは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29または配列番号30のいずれか1つに約50%から約100%配列同一性を呈する配列を含んでよい(表5)。一部の場合では主題のCARは、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25または配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29または配列番号30のいずれか1つに約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または約100%までの配列同一性を呈する配列を含んでよい。
【0078】
表5:例示的抗GPC3 CAR
【表5】
【0079】
一部の場合では抗GPC3 CARは、次の特徴の少なくとも1つまたは複数を任意の組合せで有する場合がある:a)組換えヒトGPC3に結合する;b)組換えカニクイザルGPC3に結合する;c)HepG2細胞の表面上の内在性GPC3に結合する;d)293細胞の表面上に発現されるカニクイザルGPC3に結合する;e)がん細胞の表面上の内在性GPC3に結合する;f)肝細胞癌細胞の表面上の内在性GPC3に結合する;g)HepG2、Hep3B、Huh7およびJHH-7から選択される細胞株の細胞の表面上の内在性GPC3に結合する;h)ヒトGPC3のアミノ酸25から137内のエピトープに結合する;i)ヒトGPC3のアミノ酸R358/S359でのフューリン切断部位にわたるエピトープに結合する;j)全長成熟ヒトGPC3に結合するが、ヒトGPC3のN末端断片またはヒトGPC3のC末端断片に結合しない k)ヒトGPC3のアミノ酸420から470内のエピトープに結合する;l)ヒトGPC3のアミノ酸470から509内のエピトープに結合する;m)ヒトGPC3への結合について抗体7H1と競合する;n)ヒトGPC3への結合について抗体4G7と競合する;o)ヒトGPC3への結合について抗体15G1と競合する;ヒトGPC3のC末端断片に結合する;および/またはp)ヒトGPC3への結合について抗体4A11と競合する。
【0080】
主題の抗GPC3 CARをコードする導入遺伝子は、細胞に組み込まれてよい。例えば導入遺伝子は、T細胞などの免疫応答細胞に組み込まれてよい。細胞に挿入される場合、導入遺伝子はメッセンジャーRNA(mRNA)のコピーである相補的DNA(cDNA)セグメント、またはゲノムDNA(イントロンを含むまたは含まない)の元の領域に存在する遺伝子それ自体のいずれかであってよい。
【0081】
導入遺伝子配列をコードする核酸、例えばDNAは、細胞の染色体に無作為に挿入されてよい。無作為な組込みは、核酸、例えばDNAを細胞に導入する任意の方法によって生じてよい。例えば方法は、これだけに限らないが、電気穿孔法、ソノポレーション、遺伝子銃の使用、リポトランスフェクション、リン酸カルシウムトランスフェクション、デンドリマーの使用、微量注入法ならびにアデノウイルス、AAVおよびレトロウイルスベクターが挙げられるウイルスベクターの使用ならびに/またはグループIIリボザイムであってよい。
【0082】
導入遺伝子をコードするDNAは、電気穿孔法を介して細胞に導入されてよい。DNAは、リポフェクション、感染または形質転換を介して細胞に導入されてもよい。電気穿孔法および/またはリポフェクションは、初代細胞をトランスフェクトするために使用できる。電気穿孔法および/またはリポフェクションは、初代造血細胞をトランスフェクトするために使用できる。DNAは、相同組換えの使用を伴わずに細胞ゲノムに導入されてもよい。一部の場合ではDNAは、ゲノム中の標的化二重鎖切断領域に相補的である操作された部位によって近接されていてよい。一部の場合ではDNAは、ポリ核酸から切り出されてよく、それにより相同組換えを伴わずに二重鎖切断領域に挿入されてよい。
【0083】
挿入される導入遺伝子は、ポリ核酸から導入遺伝子を切り出すためにゲノム中の標的化二重鎖切断部位に類似する操作された部位に近接されていてよく、それにより二重鎖切断領域に挿入され得る。
【0084】
導入遺伝子をコードするDNAは、レポーター遺伝子を含むように設計されてもよく、それにより導入遺伝子またはその発現産物の存在はレポーター遺伝子の活性化を介して検出できる。上に開示されたものなどの任意のレポーター遺伝子を使用できる。レポーター遺伝子が活性化されたこれらの細胞を細胞培養中で選択することによって、導入遺伝子を含有する細胞を選択できる。
【0085】
CARの発現は、発現アッセイ、例えばqPCRまたはRNAのレベルを測定することによって確認され得る。発現レベルは、コピー数の指標でもあり得る。例えば発現レベルが極めて高い場合、これは、CARの1つより多いコピーがゲノムに組み込まれたことを示す可能性がある。代替的に高発現は、導入遺伝子が高度に転写される領域、例えば高発現プロモーター近くに組み込まれたことを示す可能性がある。発現は、ウエスタンブロッティングを通じてなど、タンパク質レベルを測定することによっても確認できる。
【0086】
主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、1つまたは複数の導入遺伝子を含み得る。1つまたは複数の導入遺伝子は、抗原上の少なくとも1つのエピトープ(例えば、GPC3)を認識し、結合する、または抗原上の突然変異エピトープに結合するCARタンパク質を発現できる。CARは、機能性CARであってよい。主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、1つまたは複数のCARも含んでよく、または単一のCARおよび第2の操作された受容体を含んでよい。
【0087】
導入遺伝子は、自殺遺伝子をコードできる。がん患者での多数の有効な処置において明らかなとおり、CAR免疫応答細胞への応答における目的の腫瘍退縮は、毒性に付随して生じる場合がある。一部の場合ではCAR免疫応答細胞は、腫瘍と正常組織との間を、標的化抗原がそれらの間で共有されている場合に区別できない場合がある(「オン標的/オフ腫瘍」毒性)。他の場合では、サイトカイン放出症候群(CRS)としても周知の全身性の免疫系の撹乱が生じる場合がある。前記CRSは、CAR免疫応答細胞の急速なインビボ(in vivo)増殖(expansion)の結果である可能性がある全身性の炎症性応答症候群またはサイトカインストームを含む場合がある。CRSは、発熱および、重度の場合多臓器不全をもたらす場合がある低血圧によって特徴付けられる状態である。多くの場合、前記毒性は、注入されたCAR免疫応答細胞のインビボ増殖と相関し、免疫系全体の撹乱を生じ、高レベルのTNFアルファおよびIL-6などのプロ炎症性サイトカインを放出し得る。
【0088】
一部の場合では、正常組織と共有する抗原を標的化するCAR免疫応答細胞は、それらが一過性に、例えば受容体をコードするmRNAの電気穿孔法後にCARを発現するように生成されてよい。付加的に、重度のオン標的毒性の場合にCAR免疫応答細胞の劇的な排除を可能にする安全スイッチを含むことによって、CAR免疫応答細胞をさらに操作するための相当な努力がなされている。CARをコードするベクターは、誘導性カスパーゼ-9遺伝子(二量体化の化学的誘導因子によって活性化される)またはEGF受容体Rのトランケート型(モノクローナル抗体セツキシマブによって活性化される)またはRQR8などの安全スイッチと組み合わされてよい。
【0089】
主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、自殺遺伝子導入遺伝子をコードしてよい。前記導入遺伝子は、CAR受容体または別の類似する受容体も含んでよい。自殺遺伝子は、CAR免疫応答細胞の排除を誘導できる。自殺遺伝子は、前記CAR免疫応答細胞においてアポトーシスを誘導する任意の遺伝子であってよい。自殺遺伝子は、抗GPC3 CARと共にウイルスベクター内にコードされていてよい。
【0090】
1つまたは複数の導入遺伝子は、さまざまな種由来であってよい。例えば1つまたは複数の導入遺伝子は、ヒト遺伝子、マウス遺伝子、ラット遺伝子、ブタ遺伝子、ウシ遺伝子、イヌ遺伝子、ネコ遺伝子、サル遺伝子、チンパンジー遺伝子またはこれらの任意の組合せを含んでよい。例えば導入遺伝子は、ヒト由来で、ヒト遺伝子配列を有していてもよい。1つまたは複数の導入遺伝子は、ヒト遺伝子を含んでよい。一部の場合では1つまたは複数の導入遺伝子は、アデノウイルス遺伝子ではない。
【0091】
導入遺伝子は、上に記載のとおり無作為または部位特異的なやり方で免疫応答細胞のゲノムに挿入されてよい。例えば導入遺伝子は、免疫応答細胞のゲノム中の無作為な遺伝子座に導入されてよい。これらの導入遺伝子は、機能性、例えばゲノム中のどこに挿入されても完全に機能性であり得る。例えば導入遺伝子は、それ自体のプロモーターをコードしていてよく、または内在性プロモーターの調節下にある位置に挿入されてよい。代替的に導入遺伝子は、遺伝子のイントロンもしくは遺伝子のエクソン、プロモーターまたは非コード領域などの遺伝子に挿入されてよい。導入遺伝子は、挿入が遺伝子、例えば内在性免疫チェックポイントを破壊するように挿入されてよい。
【0092】
時に、導入遺伝子の1つより多いコピーは、ゲノム中の1つより多い無作為の遺伝子座に挿入されてよい。例えば複数のコピーは、ゲノム中の無作為の遺伝子座に挿入されてよい。これは導入遺伝子が無作為に1回挿入されるよりも全体での発現の増加をもたらすことができる。代替的に導入遺伝子のコピーは遺伝子に挿入されてよく、導入遺伝子の別のコピーは異なる遺伝子に挿入されてよい。導入遺伝子は、標的化されてよく、それにより免疫応答細胞のゲノム中の特定の遺伝子座に挿入され得る。
【0093】
一部の場合では、主題の抗GPC3 CARをコードする配列を含むポリ核酸は、プラスミドベクターの形態を取ってよい。プラスミドベクターは、プロモーターを含んでよい。一部の場合ではプロモーターは、構成的であってよい。一部の場合ではプロモーターは誘導性であってよい。プロモーターは、CMV、U6、MNDまたはEF1aであってよい、または由来であってよい。一部の場合ではプロモーターは、CAR配列に隣接していてよい。一部の場合ではプラスミドベクターは、スプライシングアクセプターをさらに含む。一部の場合ではスプライシングアクセプターは、CAR配列に隣接していてよい。プロモーター配列は、PKGまたはMNDプロモーターであってよい。MNDプロモーターは、改変MoMuLV LTRのU3領域を骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーと共に含有する合成プロモーターであってよい。
【0094】
一部の場合では主題の抗GPC3 CARをコードするポリ核酸は、非ウイルス技術によって細胞にデリバリーされるように設計されてよい。一部の場合ではポリ核酸は、医薬品及び医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(GMP)適合試薬であってよい。
【0095】
主題の抗GPC3 CARをコードするポリ核酸の発現は、1つまたは複数のプロモーターによって調節されてよい。プロモーターは、偏在性、構成的(関連遺伝子の連続的な転写を可能にする未制御プロモーター)、組織特異的プロモーターまたは誘導性プロモーターであってよい。プロモーターに隣接してまたはその近くに挿入される導入遺伝子の発現は、制御され得る。例えば導入遺伝子は、偏在性プロモーター近くにまたはその隣に挿入されてよい。いくつかの偏在性プロモーターは、CAGGSプロモーター、hCMVプロモーター、PGKプロモーター、SV40プロモーターまたはROSA26プロモーターであってよい。
【0096】
プロモーターは、内在性または外来性であってよい。例えば1つまたは複数の導入遺伝子は、内在性または外来性ROSA26プロモーターに隣接してまたはその近くに挿入されてよい。さらにプロモーターは、免疫応答細胞に対して特異的であってよい。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子はブタROSA26プロモーターに隣接してまたはその近くに挿入されてよい。
【0097】
組織特異的プロモーターまたは細胞特異的プロモーターは、発現の位置を調節するために使用できる。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子は、組織特異的プロモーターに隣接してまたはその近くに挿入されてよい。組織特異的プロモーターは、FABPプロモーター、Lckプロモーター、CamKIIプロモーター、CD19プロモーター、ケラチンプロモーター、アルブミンプロモーター、aP2プロモーター、インスリンプロモーター、MCKプロモーター、MyHCプロモーター、WAPプロモーターまたはCol2Aプロモーターであってよい。
【0098】
組織特異的プロモーターまたは細胞特異的プロモーターは、発現の位置を調節するために使用できる。例えば、1つまたは複数の導入遺伝子は、組織特異的プロモーターに隣接してまたはその近くに挿入されてよい。組織特異的プロモーターは、FABPプロモーター、Lckプロモーター、CamKIIプロモーター、CD19プロモーター、ケラチンプロモーター、アルブミンプロモーター、aP2プロモーター、インスリンプロモーター、MCKプロモーター、MyHCプロモーター、WAPプロモーター、Col2Aプロモーターであってよい。
【0099】
誘導性プロモーターも使用することができる。これらの誘導性プロモーターは、適宜、誘導剤を添加または除くことによってオンオフすることができる。誘導性プロモーターが、これだけに限らないがLac、tac、trc、trp、araBAD、phoA、recA、proU、cst-1、tetA、cadA、nar、PL、cspA、T7、VHB、Mxおよび/またはTrexであってよいことは検討される。
【0100】
さらに、発現のためには要求されないが、導入遺伝子配列は、転写または翻訳制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列を含んでもよい。
【0101】
いくつかの場合では導入遺伝子は、主題の抗GPC3 CARをコードし、導入遺伝子は、抗GPC3 CARが発現されるようにセーフハーバーに挿入される。いくつかの場合では導入遺伝子は、PD1および/またはCTLA-4遺伝子座に挿入される。他の場合では導入遺伝子は、無作為挿入のためのレンチウイルス中で細胞にデリバリーされる一方で、PD1-またはCTLA-4特異的ヌクレアーゼはmRNAとして供給されてよい。いくつかの場合では導入遺伝子は、セーフハーバー(例えばAAVS1、CCR5、アルブミンまたはHPRT)に特異的なヌクレアーゼをコードするmRNAと共にレトロウイルス、AAVまたはアデノウイルスなどのウイルスベクター系を介してデリバリーされる。細胞は、PD1および/またはCTLA-4特異的ヌクレアーゼをコードするmRNAを用いて処置されてもよい。一部の場合ではCARをコードするポリヌクレオチドは、HPRT特異的ヌクレアーゼおよびPD1-またはCTLA-4特異的ヌクレアーゼをコードするmRNAと共にウイルスデリバリー系を介して供給される。本明細書で開示される方法および組成物と共に使用され得るCARは、第1、第2および第3世代設計を含む、これらのすべての種類のキメラタンパク質を含むことができる。CCR2またはsiRNAなどの他の薬剤は、PD-1発現を低減するために適用することができる。
【0102】
一部の場合ではレトロウイルスベクター(ガンマ-レトロウイルスまたはレンチウイルスのいずれか)は、免疫応答細胞への導入遺伝子の導入のために使用することができる。例えばCAR(例えば抗GPC3 CAR)もしくはGPC3抗原に結合する任意の受容体またはこれらの変異体もしくはその断片をコードする導入遺伝子は、レトロウイルスベクターにクローニングすることができ、発現は、その内在性プロモーターから、レトロウイルス末端反復配列から、または目的の標的細胞型に特異的なプロモーターから駆動され得る。非ウイルスベクターも使用され得る。非ウイルスベクターデリバリー系は、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびリポソームまたはポロクサマーなどのデリバリー媒体と複合体化した核酸を含み得る。
【0103】
多数のウイルスベース系は、哺乳動物細胞への遺伝子移入のために開発された。例えばレトロウイルスは、遺伝子デリバリー系のための好都合なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当技術分野において周知の技術を使用してベクターに挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージングされてよい。レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、それらが導入遺伝子の長期の安定した組込みおよび娘細胞へのその伝播を可能にすることから、長期の遺伝子移入を達成するために好適なツールである。レンチウイルスベクターは、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルスに由来するベクターを超える追加の優位性を有し、それらは非増殖性細胞を形質導入できる。それらは、低免疫原性の追加の優位性も有する。アデノウイルスベクターは、それらが標的細胞のゲノムに組み込まれず、それにより負の組込み関連事象を回避する優位性を有する。
【0104】
細胞は、CARをコードする導入遺伝子をトランスフェクトされてよい。導入遺伝子濃度は、約100ピコグラムから約50マイクログラムであってよい。一部の場合では、細胞に導入され得る核酸(例えばssDNA、dsDNA、RNA)の量は、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化するために変化してよい。例えば1マイクログラムのdsDNAは、電気穿孔法のために各細胞試料に加えられてよい。一部の場合では最適なトランスフェクション効率および/または細胞生存率のために必要な核酸(例えば、dsDNA)の量は、細胞型に特異的である。一部の場合では各試料に使用される核酸(例えば、dsDNA)の量は、トランスフェクション効率および/または細胞生存率に直接対応する場合がある。例えばトランスフェクションの濃度範囲。ベクターによってコードされる導入遺伝子は、細胞ゲノムに組み込まれてよい。一部の場合ではベクターによってコードされる導入遺伝子の組込みはフォワード方向になされる。他の場合ではベクターによってコードされる導入遺伝子の組込みはリバース方向になされる。
【0105】
一部の場合では、CARのウイルスデリバリーなどの細胞改変のための開始細胞密度は、トランスフェクション効率および/または細胞生存率を最適化するために変化してよい。一部の場合では、ウイルスベクターを用いる細胞のトランスフェクションまたは形質導入のための開始細胞密度は、細胞約1x10個未満であってよい。一部の場合では、ウイルスベクターを用いる細胞改変のための開始細胞密度は、細胞少なくとも約1x10個から細胞少なくとも約5x10個であってよい。一部の場合では最適なトランスフェクション効率および/または細胞生存率のための開始細胞密度は、細胞型に特異的であり得る。例えば細胞1.5x10個の開始細胞密度は、マクロファージ細胞のために最適であり得る(例えば、最も高い生存率および/またはトランスフェクション効率を提供する)。別の例では細胞5x10個の開始細胞密度は、ヒト細胞のために最適であり得る(例えば、最も高い生存率および/またはトランスフェクション効率を提供する)。一部の場合では開始細胞密度の範囲は、所与の細胞型のために最適である場合がある。例えば細胞5.6x10個から5x10個の間の開始細胞密度は、T細胞などのヒト細胞のために最適であり得る(例えば、最も高い生存率および/またはトランスフェクション効率を提供する)。
【0106】
例えばウイルス系を用いた、CARをコードする核酸配列の細胞のゲノムへの組込み効率は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%もしくは99.9%超である場合があるまたはおよそこれだけである場合がある。一部の場合では、フローサイトメトリーによって測定して、操作された細胞の細胞膜上でのCARの検出は、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%もしくは99.9%超である場合があるまたはおよそこれだけである場合がある。
【0107】
一部の場合では免疫応答細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+および/またはIL-7Rα+からなる幹細胞様メモリー(stem memory)TSCM細胞であってよく、前記幹細胞様メモリー細胞はCD95、IL-2Rβ、CXCR3および/またはLFA-1も発現でき、前記幹細胞様メモリー細胞に特徴的な多数の機能的特質を示す。代替的に免疫応答細胞は、L-セレクチンおよびCCR7を含むセントラルメモリーTCM細胞であってもよく、セントラルメモリー細胞は、例えばIL-2を分泌できるがIFNγおよびIL-4はできない。免疫応答細胞は、L-セレクチンまたはCCR7を含むエフェクターメモリーTEM細胞であってもよく、例えばIFNγおよびIL-4などのエフェクターサイトカインを産生する。
【0108】
ベクターは、下に記載されるとおり個々の患者への投与によって、典型的には全身性投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、真皮下または頭蓋内注入)または局所適用によってインビボでデリバリーされてよい。代替的にベクターは、個々の患者から外植された細胞(例えばリンパ球、T細胞、骨髄吸引液、組織生検)などの細胞に生体外で(ex vivo)デリバリーされてよく、通常ベクターを組み込まれた細胞の選択後の患者への細胞の再インプラントが続く。選択に先行して、または後に、細胞は増殖されてよい。
【0109】
抗GPC3-CARを発現するための好適な免疫応答細胞は、それを必要とする対象に対して自己または非自己である場合がある細胞であってよい。
【0110】
好適な免疫応答細胞の供給源は、対象から得られてよい。一部の場合ではT細胞は得ることができる。前記T細胞は、PBMC、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織および感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織ならびに腫瘍が挙げられる多数の供給源から得ることができる。ある特定の場合ではT細胞は、Ficoll(商標)分離などの当業者に周知の任意の数の技術を使用して対象から回収された血液の単位から得ることができる。一実施形態では個体の循環血由来の細胞は、アフェーレシスによって得られる。アフェーレシス産生物は、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球および血小板を含むリンパ球を典型的には含有する。一実施形態ではアフェーレシスによって回収された細胞は、血漿画分を除き、続く処理ステップのために細胞を適切な緩衝液または培地中に置くために洗浄されてよい。
【0111】
代替的に細胞は、健常ドナー由来、がんを有すると診断された患者由来、または感染を有すると診断された患者由来であってよい。別の実施形態では細胞は、さまざまな表現型特徴を提示する細胞の混合集団の一部であってよい。細胞株は、既に記載の方法により形質転換したT細胞からも得ることができる。細胞は、細胞治療バンクから得ることもできる。免疫抑制処置に抵抗性の改変細胞は、本明細書に記載される方法のいずれかによって得ることができる。望ましい細胞集団は、改変に先行して選択されてもよい。操作された細胞集団は、改変後に選択されてもよい。操作された細胞は、自己移植に使用することができる。代替的に細胞は、同種移植に使用することができる。一部の場合では細胞は、がん関連標的配列を同定するために試料が使用された同じ患者に投与される。他の場合では細胞は、がん関連標的配列を同定するために試料が使用された患者とは異なる患者に投与される。
【0112】
一部の場合では免疫応答細胞は、初代T細胞、幹細胞または前駆細胞を含む初代細胞であってよい。前駆細胞は、造血性前駆細胞であってよい。本発明の細胞は、ヒト細胞であってよい。好適な細胞は、生体外で増殖され得る。好適な細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)、IL-7Rα(+)またはこれらの組合せであってもよい。
【0113】
一部の場合では好適な初代細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血リンパ球(PBL)および、これだけに限らないがT細胞、ナチュラルキラー細胞、単球、ナチュラルキラーT細胞、単球前駆体細胞、造血幹細胞または非多能性幹細胞などの他の血液細胞サブセットが挙げられる。一部の場合では細胞は、CD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞または任意の他の種類のT細胞などの腫瘍浸潤性細胞(TIL)などの任意のT細胞を含む任意の免疫細胞であってよい。T細胞として、メモリーT細胞、メモリー幹T細胞またはエフェクターT細胞も挙げられる。T細胞は、バルク集団から選択されてもよく、例えば全血からT細胞を選択する。T細胞は、バルク集団から増殖されてもよい。T細胞は、特定の集団および表現型へと偏らせてもよい。例えばT細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)および/またはIL-7Rα(+)を表現型で含むように偏らせてよい。CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)および/またはIL-7Rα(+)を含むリストから選択される1つまたは複数の(one of more)マーカーを含む好適な細胞が選択されてよい。好適な細胞として、例として胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、ニューロン幹細胞および間葉系幹細胞などの幹細胞も挙げられる。好適な細胞は、ヒト細胞、非ヒト細胞および/またはマウス細胞などの任意の数の初代細胞を含んでよい。好適な細胞は、前駆細胞であってよい。好適な細胞は、処置される対象(例えば、患者)由来であってよい。好適な細胞は、ヒトドナー由来であってよい。好適な細胞は、CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+およびIL-7Rα+からなる幹細胞様メモリーTSCM細胞であってよく、前記幹細胞様メモリー細胞は、CD95、IL-2Rβ、CXCR3およびLFA-1も発現でき、前記幹細胞様メモリー細胞に特徴的な多数の機能的特質を示す。好適な細胞は、L-セレクチンおよびCCR7を含むセントラルメモリーTCM細胞であってよく、前記セントラルメモリー細胞は、例えばIL-2を分泌できるが、IFNγまたはIL-4はできない。好適な細胞は、L-セレクチンまたはCCR7を含むエフェクターメモリーTEM細胞であってもよく、IFNγおよびIL-4などの例えばエフェクターサイトカインを産生する。
【0114】
一部の場合では方法は、細胞の急速増殖に先行して、培養したT細胞をCD8T細胞について濃縮すること含む場合がある。IL-2中でのT細胞の培養に続いてT細胞は、例えばCD8マイクロビーズ分離(例えばCliniMACSplusCD8 microbead system(Miltenyi Biotec)を使用する)を使用してCD4細胞を枯渇させ、CD8細胞について濃縮されてよい。具体的な理論に束縛されることなく、CD4、CD25制御性T細胞は、抗腫瘍応答を妨害できると考えられ得る。したがって、T細胞をCD8T細胞について濃縮培養し、CD4細胞を低減または排除することは、養子移入された抗腫瘍CD8細胞の影響を改善でき、患者における応答率を改善でき、かつ/またはCD4細胞によるサイトカインの産生によって観察される毒性を低減できると考えられ得る。追加的に濃縮されたCD8「若い」T細胞は、臨床スケールの急速増殖においてバルクT細胞よりさらに確実および予測どおりに挙動すると考えられ得る。
【0115】
細胞は、医薬品及び医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(GMP)適合試薬であり得る。細胞は、それを必要とする対象においてがん、感染、自己免疫性障害または移植片対宿主病(GVHD)を処置する併用療法の一部であり得る。一部の場合では本発明の細胞は、それを必要とする対象に、単剤療法として投与されてよい。
【0116】
一部の場合では主題のCARを発現する細胞は、不均一なT細胞集団を含む。一部の場合では使用される細胞は、CD4およびCD8 T細胞の不均一な集団から大部分がなってよい。前記CD4およびCD8細胞は、循環エフェクターT細胞の表現型の特徴を有してよい。前記CD4およびCD8細胞は、エフェクターメモリー細胞の表現型の特徴も有する。別の実施形態では細胞はセントラルメモリー細胞であってよい。
【0117】
ドナーから単離できる好適な細胞は、これだけに限らないが、胎性、新生児、若年および成体が挙げられる発達の任意の段階にあってよい。例えばドナー免疫応答細胞は、ヒト成体から単離されてよい。ドナーヒト免疫応答細胞は、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1歳未満であってよい。例えば免疫応答細胞は、6歳未満のヒトから単離されてよい。免疫応答細胞は、3歳未満のヒトから単離されてもよい。ドナーは、10歳を超えていてもよい。
【0118】
好適な細胞を獲得する方法は、所与のマーカーに基づいて選択することを含んでよい。例えばそのようなマーカーは、GFP、抵抗性遺伝子、細胞表面マーカーまたは内在性タグを含んでよい。細胞は、任意の内在性マーカーを使用して選択され得る。適用可能な細胞選択技術として、フローサイトメトリーおよび/または磁気カラムが挙げられる。選択された細胞は、次に対象に注入されてよい。選択された細胞は、多量に増殖されてもよい。選択された細胞は、注入に先立って増殖されてよい。
【0119】
患者において治療有効であるために必要である細胞の量は、細胞の生存率および、遺伝的に改変された細胞を用いる効率(例えば、導入遺伝子が1つまたは複数の細胞に組み込まれる効率、または導入遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベル)に応じて変化する場合がある。一部の場合では、遺伝子改変後の細胞の生存率と、導入遺伝子の組込みの効率との積(例えば掛け算)は、対象への投与のために利用可能である細胞の治療アリコートに対応する場合がある。一部の場合では遺伝子改変後の細胞の生存率の増加は、患者において治療有効である投与のために必要である細胞の量における減少に対応する可能性がある。一部の場合では、導入遺伝子が1つまたは複数の細胞に組み込まれる効率の増加は、患者において治療有効である投与のために必要である細胞の量における減少に対応する可能性がある。一部の場合では、治療有効であるために必要である細胞の量を決定することは、経時的な細胞の生存率における変化に対応する関数を決定することを含み得る。一部の場合では、治療有効であるために必要である細胞の量を決定することは、時間依存性の変数に対する、導入遺伝子が1つまたは複数の細胞に組み込まれ得る効率における変化に対応する関数を決定することを含み得る(例えば、細胞培養時間、電気穿孔法時間、細胞刺激時間)。一部の場合では治療有効な細胞は、細胞表面上に約30%から約100%の抗GPC3 CARの発現を有する細胞の集団であり得る。一部の場合では治療有効な細胞は、フローサイトメトリーによって測定して、細胞表面上に約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%から約99.9%を超える抗GPC3 CARを発現できる。
【0120】
種々の細胞を上に記載のとおり主題のCARを発現するために使用できる。抗GPC3 CARは、真核細胞、例えば哺乳動物細胞の原形質膜に存在してよく、好適な哺乳動物細胞として、これだけに限らないが細胞傷害性細胞、Tリンパ球、幹細胞、幹細胞の後代、前駆細胞、前駆細胞の後代およびNK細胞が挙げられる。
【0121】
真核細胞の原形質膜に存在する場合、CARはその結合標的の存在下で活性であり得る。例えば抗GPC3 CARは、GPC3の存在下で活性であり得る。GPC3などの標的は、膜上に発現されてよい。標的は、可溶性であってもよい(例えば細胞に結合しない)。標的は、標的細胞などの細胞の表面に存在してよい。標的は、脂質二重層などの固体表面に存在してよい。標的は、可溶性抗原など可溶性であってよい。標的は、抗原であってよい。抗原は、標的細胞などの細胞の表面に存在してよい。抗原は、脂質二重層などの固体表面に存在してよい。一部の場合では標的は、抗原のエピトープであってよい。本明細書に開示される方法では抗原は、典型的にはGPC3であり、GPC3発現標的細胞は、がんまたは腫瘍細胞である。
【0122】
いくつかの場合ではCARは、細胞の原形質膜上に存在する場合、およびその標的への結合によって活性化される場合、CARの結合ドメインが結合する抗原をその細胞表面に発現する標的に対する、細胞による細胞傷害活性を生じる場合がある。例えば、一部の場合では細胞は、細胞傷害性細胞(例えばNK細胞または細胞傷害性Tリンパ球)であってよく、本開示のCARは、細胞の原形質膜に存在する場合、およびその標的に結合することによって活性化される場合、CARの結合ドメインが結合する抗原をその細胞表面上に発現する標的細胞に対する、細胞傷害性細胞の細胞傷害活性を増大させる場合がある。例えば、一部の場合では細胞は、NK細胞またはTリンパ球であってよく、本開示のCARは、細胞の原形質膜に存在する場合、およびその標的に結合することによって活性化される場合、細胞の細胞傷害活性を、結合標的の非存在下での細胞の細胞傷害活性と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍または10倍を超えて増大させることができる。
【0123】
一部の場合ではその標的に結合することによって活性化される場合CARは、増殖および増殖(細胞分裂の増大または抗アポトーシス応答のいずれかによる)などの他のCAR活性化関連事象を生じる場合がある。細胞の増殖は、顕微鏡下で見られる細胞凝集塊の観察によって視覚的に測定され得る。細胞増殖は、血球計数器測定によって測定され得る。一部の場合ではCAR-T細胞は、同等のT細胞、非CAR T細胞と比較した場合細胞増殖および増殖が増大している。細胞増殖の増大は、同等の細胞のものの約1倍から約20倍(hold)超であってよい。細胞増殖の増大は、同等の細胞のものと比べて約1倍から2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍または20倍まででよい。細胞増殖は、経時的に測定されてよい。例えば細胞増殖は、細胞取得(acquision)から対象への注入時まで生じてよい。他の場合では細胞増殖は、取得後約1日間から約30日間まで生じてよい。細胞増殖は、取得後約1日から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30日間まで生じてよい。一部の場合では、急速増殖プロトコール(rapid expansion protocol)(REP)は、対象への注入に先立って細胞を増殖させるために利用されてよい。一部の場合ではREPは、約14日間にわたって行われてよい。
【0124】
一部の場合では、その標的に結合することによって活性化される場合CARは、細胞内シグナル伝達モジュレーション、細胞分化または細胞死などの他のCAR活性化関連事象を生じる場合がある。一部の場合では細胞上でのCARの発現は、細胞の細胞内シグナル伝達を変更する場合がある。他の場合では、CARの発現は細胞分化を変更する場合がある。
【0125】
主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、リンパ球低減処置と同時にまたはその後のいずれかで、GPC3発現がんまたは腫瘍を呈する対象に投与されてよい。
【0126】
一部の態様では抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、リンパ球低減処置後に投与される。処置は、処置された対象において循環リンパ球を低減できる、または循環リンパ球を実質的に枯渇させることができる(すなわち、リンパ球低減)。例えば抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、リンパ球低減処置の少なくとも1時間から少なくとも1週間後に投与されてよい。例えば抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、リンパ球低減処置の少なくとも1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、24時間、36時間、48時間、3日間、4日間、5日間、6日間または7日間後またはさらに後に投与されてよい。一部の場合ではCAR-Tは、リンパ球低減処置約1、2、3、4、5、6週間後またはさらに後に投与されてよい。
【0127】
一部の場合では宿主リンパ球減少症は、CAR T細胞などの抗GPC3 CAR免疫応答細胞の増殖を促進する場合がある。一方でリンパ球減少症は、入ってくる養子移入された細胞のための「空間」を作ることができ、他方でそれは恒常的増殖を誘導できる。後者の効果は、CAR T細胞などのエフェクター細胞増殖を制限できる阻害性サイトカイン(例えばTGF-βおよびIL-10)を通常分泌できる内在性制御性T細胞の化学療法的除去を通じて媒介されると考えられ得る。一部の場合ではリンパ球低減処置は、リンパ球低減処置を伴わない抗GPC3 CAR免疫応答細胞を用いた処置と比べてインビボでの抗GPC3 CAR免疫応答細胞の増殖を約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍または20倍まで改善できる。
【0128】
追加的に、通常限定的な量で存在する場合があるIL-7およびIL-15などのT細胞増殖恒常性サイトカインは、競合の低下およびリンパ球新生間質性細胞による産生の増大によって容易に利用可能になる可能性がある。したがって、抗GPC3 CAR免疫応答細胞の注入に先立つリンパ球低減の誘導は、対象の処置における抗GPC3 CAR免疫応答細胞の有効性を増大させるために実施されてよい。一部の場合ではリンパ球低減処置は、リンパ球低減処置を伴わない処置と比べて、腫瘍低減として測定されるように、抗腫瘍有効性を約10%から約100%改善できる、または調節できる。例えばリンパ球低減処置は、リンパ球低減処置を伴わない処置と比べて、抗腫瘍有効性を約10%から15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%まで改善できる。
【0129】
リンパ球低減は、種々の手段を使用して実施できる。抗GPC3 CAR免疫応答細胞投与前のリンパ球低減は、全身照射(TBI)または細胞傷害性薬を使用して実施することができる。これらの手法は、レシピエントのリンパ系コンパートメントを枯渇させることを意図できるが、これらは、腫瘍細胞死および抗原放出をトリガーすることによって腫瘍抗原の提示も促進できる。次にこれらの抗原は、取り込まれ、抗GPC3 CAR免疫応答細胞の活性化を増強するように抗原提示細胞(APC)によって提示される場合がある。
【0130】
照射および/または化学療法は、宿主細胞の活性化を導くことができ、TNF-α、IL-1およびIL-4などの炎症誘発性サイトカインの放出およびCD80などの共刺激分子の上方制御をもたらす。一部の場合ではリンパ球低減処置は、宿主細胞の活性化によって抗GPC3 CAR免疫応答細胞治療を改善できる。一部の場合ではリンパ球低減処置は、共刺激分子の上方制御によって抗GPC3 CAR免疫応答細胞治療を改善できる。APC機能および利用能の増強に加えてプレコンディショニングレジメンは、これらの器官を覆う細胞の放射線誘導アポトーシスを通じて粘膜バリアの完全性を損傷する場合がある。腸管に与えられた損傷は、LPSなどの細菌性産物の全身循環への移行を可能にする場合がある。LPSは、次にインビボで抗GPC3 CAR免疫応答細胞を活性化し、抗腫瘍性応答を増強する場合がある。したがって炎症誘発性サイトカインおよび微生物産生物は、DCの活性化および成熟のための重大な「危険シグナル」を提供し、それにより抗GPC3 CAR免疫応答細胞性腫瘍処置を増強する。
【0131】
一部の場合ではリンパ球低減処置は、ヒト化抗Tac(抗CD25)およびONTAK(商標)(ジフテリア毒素にコンジュゲートされたIL-2)を含むCD25-発現細胞をヒトにおいて選択的に枯渇させることができる。
【0132】
一部の場合では化学療法剤は、対象においてリンパ球低減をもたらすように投与されてよい。一部の場合では対象は、骨髄非破壊的リンパ球低減化学療法を受けてよい。骨髄非破壊的リンパ球低減化学療法は、任意の好適な治療であってよく任意の好適な経路によって投与されてよい。化学療法レジメンは、シクロホスファミドもしくはクロラムブシルなどの単一のアルキル化剤、またはCVP(シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)、CHOP(CVPおよびドキソルビシン)、C-MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン)、CAP-BOP(CHOPに加えてプロカルバジンおよびブレオマイシン)、m-BACOD(CHOPに加えてメトトレキサート、ブレオマイシンおよびロイコボリン)、ProMACE-MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシドおよびロイコボリンに加えて標準MOPP)、ProMACE-CytaBOM(プレドニゾン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、シタラビン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、メトトレキサートおよびロイコボリン)ならびにMACOP-B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、一定用量のプレドニゾン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)などの組合せ、の使用を含んでよい。
【0133】
骨髄非破壊的リンパ球低減化学療法は、例えば、シクロホスファミドおよびフルダラビンの投与を、特にがんが転移性である可能性があるGPC3陽性である場合に含んでよい。シクロホスファミドおよびフルダラビンを投与する好ましい経路は、静脈内であってよい。同様に、シクロホスファミドおよびフルダラビンの任意の好適な用量が投与されてよい。好ましくは、60mg/kg付近のシクロホスファミドが2日間投与されてよく、その後25mg/m付近のフルダラビンは約5日間投与されてよい。
【0134】
一部の場合ではリンパ球低減は、免疫媒介抗GPC3 CAR免疫応答細胞拒絶を最小化するために実施されてよい。例えば対象は、シクロホスファミド(Cy)に続いてフルダラビン(Flu)リンパ球低減処置によって処置されてよい。Cyなどの化学療法剤の用量は、約1mg/kgから約200mg/kgであってよい。Cyの用量は、対象の1kgあたり約1から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または約200mgまでであってよい。
【0135】
代替的にCy処置のための例示的用量およびレジメンは、約0.5~5g/m/日、好ましくは0.6~3g/m/日、より好ましくは1~2g/m/日を1~3日間、好ましくは1~2日間であってよい。
【0136】
Fluの用量は、対象の1mあたり約1から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または約200mgまでであってよい。
【0137】
代替的にフルダラビン処置のための例示的用量およびレジメンは、約20~80mg/m/日、好ましくは25~70mg/m/日または25~30mg/m/日を2~10、3~8または4、5、6または7日間であってよい。
【0138】
一部の場合では、CyとFluとの併用は適用されてよい。例えば約10~60mg/m/日または15~50mg/m/日または20~30mg/m/日を2~8日間または3~6日間の範囲のFluの開始用量に、約0.2~1mg/m/日または0.3~0.8mg/m/日または0.4~0.6g/m/日を1~5または2~3日間の量のCyが続く。
【0139】
一部の場合では対象は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞注入前にCy 60mg/kgx1回投与およびFlu 25mg/mx3から5回投与でCyおよびFluを用いて処置され得る。対象は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞注入前にリンパ球枯渇剤(lymphodepletant)の約0から約20回投与を受けてよい。対象は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞注入に先立って約0から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、約20回までのCyまたはFluなどのリンパ球枯渇剤の投与を受けてよい。他の場合では対象は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞注入と同時にCyおよび/またはFluなどのリンパ球枯渇剤を同時投与されてよい。他の場合では対象は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞投与後にCyおよび/またはFluなどのリンパ球枯渇剤を投与されてよい。他の場合では対象は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞投与に先立って、同時におよび/または後にリンパ球枯渇剤を投与されてよい。対象は、一部の場合では(is some cases)リンパ球低減処置を受けない場合がある。一部の場合ではさまざまな用量のリンパ球枯渇剤がレジメンの経過の際に使用されてよい。例えば対象は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞に先立って60mg/kgのCyを受け、抗GPC3 CAR免疫応答細胞と同時の40mg/kgのCyの投薬が続いてよい。全血球計算(CBC)は、リンパ球低減の程度および追加的な投与が必要であるかどうかを判定するために実施されてよい。一部の場合ではCyは単独で投与されてよい。他の場合ではFluは単独で投与されてよい。一部の場合ではCyおよびFluは、レジメンの際に交互であってよい。
【0140】
リンパ球低減は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞増殖を改善できる。リンパ球低減は、血液中の抗GPC3 CAR免疫応答細胞持続性を改善できる。抗GPC3 CAR免疫応答細胞増殖および持続性は、抗CAR抗体を利用するフローサイトメトリー分析によって検出できる。抗GPC3 CAR免疫応答細胞持続性は、qPCRによって抗GPC3 CAR免疫応答細胞のコピー数を評価することによっても測定できる。
【0141】
一部の場合では対象は、リンパ球低減処置に供される場合、リンパ球低減処置を受けていない場合がある対象と比較して抗GPC3 CAR免疫応答細胞用量が低減される場合がある。
【0142】
一部の場合ではリンパ球低減処置は、一定期間にわたって投与されてよい。例えばリンパ球低減処置は、1分間から約24時間までの経過にわたって投与される場合がある。リンパ球低減処置は、1分間から15分間、45分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間または約24時間まで実施される場合がある。リンパ球低減剤は、希釈剤、神経保護剤(uroprotectant)、賦形剤またはこれらの組合せなどの追加的薬剤と共に投与されてよい。例えば、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(メスナ)は、リンパ球低減処置に含まれてよい。一部の場合では対象は、シクロホスファミド60mg/kg/日を約2日間、IV、250ml D5W中、と共にメスナ15mg/kg/日を2日間、1時間かけて投与されてよい。メスナは、種々の用量のリンパ球枯渇剤と同時投与されてよい。例えばメスナは、約1mg/kg/日から約50mg/kg/日までで投与されてよい。メスナは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または約50mg/kg/日までで投与されてよい。一部の場合では肥満または小児の対象のために、薬物投与量は、実質体重を使用して算出されてよい。実質体重は、実際の体重と標準体重との平均であり得る。例えば標準体重は、男性=50kg+2.3(60インチで割ったインチ数)で算出できる。標準体重は、女性=45.5kg+2.3(60インチで割ったインチ数)で算出できる。一部の場合ではFlu投与は、25mg/m/日、IVPB、毎日、30分間かけて5日間であってよい。一部の場合ではFlu投与は、Cy投与の前に行われてよい。一部の場合ではFlu投与は、Cyと同時に実施されてよい。一部の場合ではFlu投与は、Cy投与の後で実施されてよい。一部の場合では、フルダラビンは、Cyおよびメスナのおよそ1から2時間後に開始されてよい。
【0143】
全身照射は、放射線療法の形態であってよい。名称が意味するとおりTBIは、全身の照射を含み得るが、現在の実施では肺は、放射線誘発肺損傷の危険性を低下させるために部分的に遮蔽される場合がある。全身照射は、種々の線量で投与されてよい。例えば全身照射は、約10から約12Gyで投与されてよい。一部の場合では全身照射は、全線量を一度でデリバリーするよりも、より少量の線量を数回のセッションで用いて分割されてよい。一部の場合では1、2、3、4、5、6、7、8、9または10種までの異なる線量の照射が投与されてよい。
【0144】
造血幹細胞の報告されたD値、つまり、特定の細胞型を全滅させるために必要な電離放射線の量は、約0.5から約1.4Gyであり得、一方でヒト白血病細胞株のものは約0.8から約1.5Gyであり得、両細胞が放射線感受性であることを示している。理想的な投薬スケジュールは、患者の年齢、疾患および意図する処置の種類に応じる場合がある。骨髄破壊的TBIは、1日約2から約3回処置で約4日間にわたって約8から約12分割で与えられる約12から約15Gyであってよい。一部の場合では骨髄破壊的TBIは、約5から約20Gyであってよい。骨髄破壊的TBIは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19から。約20Gyであってよい。一部の場合では骨髄破壊的TBIは、約5から約20分割で与えられてよい。骨髄破壊的TBIは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19から約20分割で与えられてよい。骨髄破壊的治療は、約1から約10日間にわたって与えられてよい。骨髄破壊性(Myeloablatic)治療は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9または約10日間までにわたって投与されてよい。
【0145】
一部の場合では低線量TBIは、約1から約4分割で与えられる約2から約8Gyの線量を含み得る。一部の場合では低線量TBIは、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5または約8Gyまでの線量を含んでよい。低線量TBIは、年齢または併存疾患のために骨髄破壊を許容できない対象に投与できる。
【0146】
TBIは、TBIのための約4から約18MVの高エネルギー光子線の平行対向対(parallel opposed pair)を使用して投与されてよい。一部の場合では光子線は、TBIのために約1から約25MVであってよい。光子線は、約1から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または約25MVまでであってよい。TCIは、Varian Clinac iXまたはSiemens Artisteなどの装置を使用して実施されてよい。
【0147】
一部の場合では、投与の速度は、約5cGy/分から約100cGy/分であってよい。投与の速度は、約5から6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、95または100cGy/分までであってよい。
【0148】
一部の場合ではある特定の器官は、照射の際に遮蔽されてよい。例えば肝臓、肺、脳、心臓またはこれらの組合せは、全身照射の際に遮蔽されてよい。
【0149】
生物学的薬剤
一部の場合では抗体などの生物学的薬剤は、免疫細胞を枯渇させるために使用され得る。リンパ球について細胞溶解性であるモノクローナル抗体(mAb)は、リンパ球低減を得るための代替的手段であり得る。一部の場合では、抗GPC3 CAR免疫応答細胞注入の前に投与され得るT細胞リンパ球低減のための抗体は、急速な注入および注入された抗GPC3 CAR免疫応答細胞との再集団化を許容するために有効だがインビボで短命でなければならない。使用される抗体は、リンパ球などの細胞の表面に発現されるマーカーに対するものであってよい。一部の場合ではリンパ球低減抗体は、抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗CD45、抗CD25、抗CD52およびこれらの任意の組合せであってよい。
【0150】
アレムツズマブ(Campath-1H)、ブルテゾミブ、サイモグロブリン(ウサギATG、Genzyme)、ATGAM(ウマATG、Pfizer)およびアレムツズマブ(Campath-1H)などの抗体は使用されてよい。リツキシマブ(IDEC-C2B8)、GA101、CD20に対するヒト化IgG1、XmAb5574、CD19に対するFc操作された抗体、アレファセプト(LFA3-Ig)、フィンゴリモド(FTY720)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD4抗体、抗CD3抗体、抗CD8抗体もリンパ球低減剤として使用できる。一部の場合ではクラドリビン[2-CdA、Leustatin(登録商標)]、フルダラビンに類似するプリン類似体は使用できる。一部の場合では抗体リンパ球低減処置は、アレムツズマブ(抗CD52)などの単一の抗体を含むことができる。他の場合では抗体ベースリンパ球低減処置は、アレムツズマブおよび抗CD45などの少なくとも2つの抗体を含むことができる。一部の場合ではリンパ球低減処置は、抗体治療と組み合わせた放射線または放射線と組み合わせた化学療法などの複数のリンパ球低減手法を含んでよい。化学療法および抗体治療は、組合せで使用されてもよい。
【0151】
抗生物質、抗真菌剤および抗ウイルス剤は、リンパ球低減処置の際に対象に予防法として与えられてよい。例えば予防法は、アルトレックス(Altrex)500mg毎日、バクトリウム(Bactrium)DS 1錠剤をqMWFでおよびフルコナゾール200mgを毎日が挙げられる。薬物療法の持続期間は、リンパ球絶対数(ALC)および好中球絶対数(ANC)が薬物療法前ベースラインに戻り得るまでである。生物学的薬剤は、アドリアマイシンであってもよい。
【0152】
1つまたは複数のサイトカインは、細胞に導入されてよい。サイトカインは、移入された細胞(養子移入された腫瘍特異的細胞を含む)を腫瘍微小環境内で増殖するようにブーストするために利用され得る。一部の場合ではIL-2は、本明細書に記載される細胞の増殖を促進するために使用され得る。IL-15などのサイトカインも使用されてよい。IL-2、IL-7、IL-12およびL-21またはこれらの任意の組合せなどの免疫療法の分野における他の関連するサイトカインも利用されてよい。一部の場合では組換えサイトカインが使用される。
【0153】
一部の場合ではT細胞増殖因子は、投与されてよい。増殖因子は、任意の好適な経路によって投与されてよい。1つより多いT細胞増殖因子が投与される場合、それらは同時または逐次的に、任意の順で、同じ経路または異なる経路によって投与されてよい。アルデスロイキン(IL-2)などのT細胞増殖因子は、ボーラス注射として静脈内投与されてよい。IL-2などのT細胞増殖因子の投与量は、当業者によって高いと見なされるものである。好ましくは、IL-2の約720,000IU/kgの用量は、許容範囲まで1日3回投与されてよい。一部の場合(Is come cases)IL-2の約5から約15用量が平均9用量付近で投与される。T細胞増殖因子の投与量は、約0から約20であってよい。T細胞増殖因子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または約20回まで投与されてよい。
【0154】
IL-2は、静脈内ボーラスとして720,000IU/kgの用量(全体重に基づいて)で投与されてよい。一部の場合ではIL-2は、15分間にわたって投与されてよい。一部の場合ではIL-2は、20分間にわたって投与されてよい。IL-2は、即時注射によって投与されてよい。一部の場合ではIL-2は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間または6時間までにわたって投与されてよい。
【0155】
一部の場合ではIL-2は、細胞注入の24時間以内に始め、約4日間まで(最大12用量)継続して投与されてよい。一部の場合ではIL-2は、投与開始から約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40日間まで投与されてよい。
【0156】
IL-2の用量は、8時間ごとに投与されてよい。一部の場合ではIL-2は、投与開始から約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間ごとに投与されてよい。一部の場合ではIL-2投薬は、毒性が検出された場合に停止されてよい。一部の場合では投薬は、下痢、悪心、嘔吐、低血圧、皮膚の変化、食欲不振、粘膜炎、嚥下障害または全身症状および検査所見の変化などのアルデスロイキンに一般的な可逆性のグレード3毒性を除いて、患者がアルデスロイキンのためにグレード3または4毒性に達した場合に遅延または停止されてよい。一部の場合ではこれらの毒性が対症的手段によって24時間以内に容易に戻り得る場合は、次に追加的な用量が与えられてよい。付加的に投薬は、処置医師の裁量により保持または停止されてよい。
【0157】
一部の場合では、抗GPC3 CARを発現する免疫応答細胞は、抗GPC3 CARを発現しない同等の免疫応答細胞と比較して、抗腫瘍有効性が増大している。
【0158】
一部の場合では抗腫瘍有効性は、細胞傷害活性を指す場合がある。他の場合では、抗腫瘍有効性は持続性を指す場合がある。抗腫瘍有効性は、腫瘍を標的化する細胞の能力を指す場合もある。抗腫瘍有効性は、種々のインビトロアッセイを使用して測定することができる。例えば細胞傷害能力は、インターロイキン-2(IL-2)またはインターフェロン-γ(IFNγ)の放出を測定するELISAによって測定することができる。細胞傷害活性は、クロム-51放出アッセイなどの殺滅アッセイまたは共培養アッセイによって測定することができる。一部の場合では抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、同等の細胞と比較した場合に抗腫瘍有効性および能力が増大している場合がある。
【0159】
抗GPC3 CAR処置有効性は、複数の手法を使用して評価することができる。有効性は、GPC3陽性腫瘍などの腫瘍が、調節、低減または排除される程度である抗腫瘍有効性を指す場合がある。処置有効性は、CAR免疫応答細胞増殖、持続性、腫瘍標的化およびこれらの任意の組合せを指す場合もある。
【0160】
抗GPC3 CAR T細胞治療などの抗GPC3 CAR免疫応答細胞治療を投与され得る対象は、注入の際、注入の直後または注入の数年後まで評価されてよい。例えば処置された対象は、約1日から対象の生涯までの期間について評価のために診療所に再来してよい。処置された対象は、主題のCAR免疫応答細胞の初回投与後1から2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80または90年間まで評価されてよい。一部の場合では評価スケジュールは、毎日のモニタリング、毎週のモニタリング、毎月のモニタリングまたは毎年のモニタリングを含んでよい。一部の場合では対象は、臨床的に示されてさらに頻繁に診られてよい。評価として理学的検査、化学的評価、全血球計算、甲状腺パネル、毒性アセスメント、身体領域のコンピューター断層撮影(CT)スキャン、アフェーレシスおよびこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0161】
一部の場合ではアフェーレシスは、主題のCAR免疫応答細胞注入の投与に先行しておよび約1から約10週間後に実施されてよい。他の時点では対象の末梢血リンパ球(PBL)は、Ficoll勾配上での遠心分離を使用する精製によって全血から得られてよい。末梢血単核細胞(PBMC)のアリコートは、細胞機能の免疫学的モニタリングのために凍結保存されてよい。一部の場合では種々の検査として、特異的溶解およびサイトカイン放出の評価、代謝および生体エネルギー研究(Seahorseを使用)が挙げられ、サイトカイン産生の細胞内FACS、ELISA-スポットアッセイおよびリンパ球サブセット分析は、主題のCAR免疫応答細胞処置の免疫学的相関を評価するために使用できる。一般に、これらのアッセイにおける約2から約3倍の差異は、真の生物学的差異を示している可能性がある。一部の場合では、抗GPC3 CAR免疫応答細胞治療後のインビトロアッセイでの約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、約5倍までの差異は、処置有効性を示している可能性がある。
【0162】
一部の場合では主題のCAR免疫応答細胞処置は、コンピューター断層撮影(CT)スキャンまたはMRIによって測定して、腫瘍サイズを少なくとも30%低減できる。抗GPC3 CAR免疫応答細胞処置は、腫瘍サイズを少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または約100%まで低減できる。CAR-T処置は、CTスキャンによって測定して、腫瘍を排除できる。一部の場合では抗GPC3 CAR免疫応答細胞処置は、コンピューター断層撮影(CT)スキャンによって測定して、腫瘍病変の直径のベースライン測定値での10%未満の変化として測定されるように腫瘍サイズを安定化できる。例えば腫瘍は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞の投与後にサイズが拡張しない場合がある。一部の場合では安定化は、処置前測定と比較した腫瘍サイズにおける10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満の変化と見なされてよい。
【0163】
一部の場合では抗GPC3 CAR免疫応答細胞有効性は、対象生存期間に関すると見なされてよい。例えば抗GPC3 CAR T細胞などの抗GPC3 CAR免疫応答細胞を用いて処置される対象は、未処置対象または異なる治療を用いて処置された対象よりも長く生存できる。
【0164】
一部の場合では抗GPC3 CAR免疫応答細胞有効性は、リンパ球低減処置などの第2の処置の追加によって改善され得る。第2の処置は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞治療と協同できる。一部の場合では第2の処置は、抗GPC3 CAR免疫応答細胞治療の相加効果を生じることができる。第2の処置は、リンパ球低減および細胞治療、抗体治療、化学療法、放射線療法、手術、抗血管新生治療およびこれらの任意の組合せの追加的な形態であってよい。
【0165】
処置応答は、改訂された固形がんの治療効果判定のための(RECIST)ガイドライン(バージョン1.1)によって提案された国際基準を使用して評価されてよい。腫瘍病変の最長径(一次元測定)および悪性リンパ節の場合は最短径における変化をRECIST基準において使用できる。例えば測定可能な病変は、胸部X線による>20mm、CTスキャンを用いる>10mmまたは臨床検査によるキャリパーを用いて>10mmのように、少なくとも1つの次元において正確に測定できるもの(記録される最大径)として定義されるものであってよい。病理学的に肥大し、測定可能であると見なすために、CTスキャンによって評価する場合、リンパ節は短軸で>15mmであってよい。小さな病変(最長径<10mmまたは短軸≧10から<15mmを有する病理学的リンパ節)を含むすべての他の病変(または疾患部位)は、測定不能疾患と見なされる場合がある。骨病変、軟髄膜疾患、腹水、胸膜/心膜液貯留、皮膚/肺リンパ管炎(lymphangitis cutis/pulmonitis)、炎症性乳房疾患は、測定不能と見なされる場合がある。
【0166】
関連するすべての器官の代表の、器官あたり最大2つの病変および合計5つの病変までのすべての測定可能な病変が、標的病変として同定されてよく、ベースラインで記録および測定される。標的病変は、それらのサイズ(最長径を有する病変)に基づいて選択され、関連するすべての器官の代表とされてもよいが、加えてそれらは、再現性よく反復測定されるものでなければならない。時に、最大病変が再現性のよい測定にならない場合があり、そのような状況では、再現性よく測定され得る次に大きな病変が選択されるべきである。すべての標的病変についての直径(非結節病変について最長、結節病変について短軸)の合計は、算出され、ベースライン合計直径として報告されてよい。リンパ節が合計に含まれる場合には短軸だけが合計に加えられてよい。ベースライン合計直径は、疾患の測定可能な次元での任意の目的の腫瘍退縮をさらに特徴付けるための基準として使用される。
【0167】
一部の場合では臨床病変は表在性(例えば、皮膚結節および触知可能リンパ節)であり、カリパーを使用して直径約10mm(例えば、皮膚結節)として評価され得る場合に測定可能であると見なされてよい。カリパーが病変を測定するために使用できない場合、CTスキャンまたはMRIも使用されてよい。一部の場合ではCTスキャンは、約5mm以下からの組織のスライスを得ることができる。一部の場合ではCTスキャンは、5mm、4mm、3mm、2mm、1mmまたは0.5mmのスキャンの厚さを有する場合がある。CTスキャンが5mmより厚いスライス厚を有する場合、測定可能な病変の最小サイズは、スライス厚の2倍である場合がある。一部の場合ではMRIも、対象を評価するために実施されてよい。理想的には同じ種類のスキャナーが使用されるべきであり、処置有効性を判定する場合は、画像取得プロトコールは先行するスキャンに可能な限り厳密に従うべきである。身体スキャンは、可能であれば呼吸停止スキャン技術を用いて実施されるべきである。一部の場合では、フルオロデオキシグルコース(FDG)ポジトロン放出断層撮影(PET)は、処置効率を測定するために使用されてよい。
【0168】
対象が評価されると、標的病変は安定疾患(SD)、進行性疾患(PD)、部分応答(PR)および/または完全応答(CR)に分類することができる。SDは、直径の最小合計を基準として、PRと認定するためには不十分な縮小およびPDと認定するためには不十分な増大と見なされ得る。PDは、最小合計を基準として(これは、ベースライン合計をそれが最小であり得る場合は含んでよい)、標的病変の直径の合計における少なくとも20%増大と見なされ得る。一部の場合では約20%の相対的増大に加えて、合計は少なくとも約5mmの絶対的増大も実証しなければならない。PRは、直径のベースライン合計を基準として標的病変の直径の合計における、少なくとも約30%減少であってよい。CRは、標的病変の排除であってよい。
【0169】
一部の場合では、抗GPC3 CAR T細胞などの抗GPC3-CAR免疫応答細胞の投与とリンパ球低減処置とは、抗GPC3-CAR免疫応答細胞を単独で投与することと比較して少なくとも約6ヵ月間対象の生存期間中央値を相乗的に増加させることができる、表6。一部の場合では、抗GPC3-CAR免疫応答細胞治療とリンパ球低減処置との組合せは、抗GPC3-CAR免疫応答細胞を単独で投与することと比較して対象の生存期間を少なくとも約1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、4ヵ月間、5ヵ月間、6ヵ月間、7ヵ月間、8ヵ月間、9ヵ月間、10ヵ月間、11ヵ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間または約25年間まで相乗的に増加させることができる。
【0170】
表6:コンストラクト比較
【表6】
【0171】
主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、医薬品に製剤化され、それを必要とし、疾患、例えばがんを有すると診断されたヒトまたは哺乳動物を処置するために使用されてよい。これらの医薬品は、ヒトまたは哺乳動物に、1つまたは複数の化学療法剤または化学療法用化合物と併せて同時投与されてよい。
【0172】
CAR T細胞などの主題のCAR免疫応答細胞の集団は、当業者に周知の技術を使用して対象への投与のために製剤化されてよい。CAR免疫応答細胞の集団を含む製剤は、薬学的に許容される賦形剤(複数可)を含んでよい。製剤中に含まれる賦形剤は、例えば使用されるT細胞の亜集団および投与の様式に応じて異なる目的を有する。一般に使用される賦形剤の例として、非限定的に:生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、注射用水、グリセロール、エタノールおよびこれらの組合せ、安定化剤、可溶化剤および界面活性剤、緩衝液および保存剤、等張化剤、増量剤ならびに滑剤が挙げられる。CAR免疫応答細胞の集団を含む製剤は、典型的には動物血清などのいかなる非ヒト成分も含まずに調製および培養される。製剤は、1つのCAR免疫応答細胞の集団、または2つ、3つ、4つ、5つ、6つもしくはそれを超えるなどの1つより多いCAR免疫応答細胞の集団を含んでよい。例えば製剤は、1つのCAR T細胞の集団、または2つ、3つ、4つ、5つ、6つもしくはそれを超えるなどの1つより多いCAR T細胞の集団を含んでよい。
【0173】
抗GPC3 CAR免疫応答細胞の集団(複数可)を含む製剤は、当業者に周知の様式および技術を使用して対象に投与されてよい。例示的様式としてこれだけに限らないが、静脈内注射が挙げられる。他の様式として、非限定的に、腫瘍内、皮内、皮下(S.C.、s.q.、sub-Q、Hypo)、筋肉内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、動脈内、髄内、心臓内、関節内(接合部)、滑膜内(滑液領域)、頭蓋内、脊髄内およびくも膜下腔内(脊髄液)が挙げられる。製剤注入の非経口注射のために有用な任意の周知のデバイスは、そのような投与を行うために使用できる。
【0174】
対象に投与されるCAR免疫応答細胞の集団(複数可)を含む製剤は、特定の適応症または疾患の処置および/または予防のために有効である多数のCAR免疫応答細胞を含む。したがってCAR免疫応答細胞の治療有効な集団は、対象に投与されてよい。一般に約1x10個から約1x1010個の間のCAR免疫応答細胞を含む製剤が投与される。多くの場合では製剤は、約1x10個から約1x10個の間のCAR免疫応答細胞、約5x10個から約5x10個のCAR免疫応答細胞または約1x10個から約1x10個のCAR免疫応答細胞を含む。しかし対象に投与されるCAR免疫応答細胞の数は、がんの位置、原因、同一性、程度および重症度、処置される個体の年齢および状態などに応じて広い範囲で変化する。医師は、使用される適切な投与量を最終的に決定する。
【0175】
腫瘍標的化分子は、CAR免疫応答細胞の投与に先行してまたは同時にまたは後で対象に投与される。腫瘍標的化分子は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原への会合によって対象中の標的細胞に結合する。腫瘍標的化分子は、当業者に周知の技術を使用して対象への投与のために製剤化されてよい。腫瘍標的化分子の製剤は、薬学的に許容される賦形剤(複数可)を含んでよい。一般に使用される賦形剤の例として、非限定的に:生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、注射用水、グリセロール、エタノールおよびこれらの組合せ、安定化剤、可溶化剤および界面活性剤、緩衝液および保存剤、等張化剤、増量剤ならびに滑剤が挙げられる。
【0176】
腫瘍標的化分子は、当業者に周知の様式および技術を使用して対象に投与されてよい。例示的様式としてこれだけに限らないが、静脈内、腹腔内および腫瘍内注射が挙げられる。他の様式として、非限定的に、皮内、皮下(S.C.、s.q.、sub-Q、Hypo)、筋肉内(i.m.)、動脈内、髄内、心臓内、関節内(接合部)、滑膜内(滑液領域)、頭蓋内、脊髄内およびくも膜下腔内(脊髄液)が挙げられる。一部の場合ではCAR-Tは、肝臓病変などの腫瘍病変に局所的に投与されてよい。製剤の非経口注射または注入のために有用な任意の周知のデバイスは、そのような投与を行うために使用できる。
【0177】
腫瘍標的化分子を含む製剤は、特定の適応症または疾患を処置するおよび/または予防のために有効である量で対象に投与される。一般に、体重1kgあたり少なくとも約0.1mgから約100mgの腫瘍標的化分子を含む製剤は処置を必要とする対象に投与される。多くの場合では投与量は、投与の経路、症状などを考慮して1日に体重1kgあたり約1mgから約100mgのタグ化タンパク質である。医師は、使用される適切な投与量を決定する。
【0178】
一実施形態ではキメラ抗原受容体は、免疫応答細胞性免疫応答を刺激するために使用される。例えばT細胞性免疫応答は、T細胞の活性化を含む免疫応答である。活性化抗原特異的細胞傷害性T細胞は、例えば腫瘍抗原を示すがん細胞など、それらの表面上に外来抗原のエピトープを示す標的細胞においてアポトーシスを誘導できる。別の実施形態ではキメラ抗原受容体は、哺乳動物において抗腫瘍免疫を提供するために使用される。T細胞性免疫応答によって対象は、抗腫瘍免疫を発達させる。
【0179】
ある特定の場合では、がんを有する対象を処置する方法は、がん細胞に結合する腫瘍標的化分子の1つまたは複数の製剤を処置を必要とする対象に投与すること、および腫瘍標的化分子に結合でき、がん細胞死を誘導できる主題のCAR免疫応答細胞の治療有効な1つまたは複数の集団を投与することを含んでよい。別の実施形態は、がん細胞に結合し、それによりがん細胞死を誘導する主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞の治療有効な1つまたは複数の集団を処置を必要とする対象に投与することを含む、がんを有する対象を処置する方法に関する場合がある。
【0180】
抗GPC3 CAR免疫応答細胞および抗GPC3 CAR免疫応答細胞を腫瘍標的化分子との組合せで含む両製剤の投与頻度は、処置される疾患、CAR免疫応答細胞および腫瘍標的化分子を含む要素および投与の様式を含む要因に依存して変化する。各製剤は、1日4回、3回、2回または1回、1日おき、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、1週間に1回、8日ごと、9日ごと、10日ごと、2週間ごと、1ヵ月ごとおよび2ヵ月ごとに独立に投与されてよい。
【0181】
本明細書において使用される「化学療法剤」または「化学療法化合物」ならびにそれらの文法的同義語は、がんの処置において有用な化学的化合物であってよい。開示されるCAR免疫応答細胞との組合せで使用できるがん化学療法剤として、これだけに限らないが、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)が挙げられる。これらは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびNavelbine(商標)[ビノレルビン、5’-ノルアンヒドロブラスチン(noranhydroblastine)]を含む。さらに他の実施形態ではがん化学療法剤として、カンプトテシン化合物などのトポイソメラーゼI阻害剤が挙げられる。本明細書において使用される「カンプトテシン化合物」として、Camptosar(商標)(イリノテカンHCL)、Hycamtin(商標)(トポテカンHCL)およびカンプトテシンに由来する他の化合物ならびにその類似体が挙げられる。本明細書で開示される方法および組成物において使用され得るがん化学療法剤の別の分類は、エトポシド、テニポシドおよびミトポドジド(mitopodozide)などのポドフィロトキシン誘導体である。本開示は、腫瘍細胞中の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤として周知の他のがん化学療法剤をさらに包含する。これらとして、非限定的にシスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジン(chlomaphazin)およびダカルバジンが挙げられる。開示は、化学療法剤として代謝拮抗薬を包含する。この種類の薬剤の例として、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン(azathioprime)およびプロカルバジンが挙げられる。本明細書で開示される方法および組成物において使用され得るがん化学療法剤の追加的な分類として、抗生物質が挙げられる。例として、非限定的に、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミスラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシン(mytomycin)Cおよびダウノマイシンが挙げられる。これらの化合物について商業的に入手できる多数のリポソーム製剤がある。本開示は、非限定的に抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、イホスファミドおよびミトキサントロンが挙げられる他のがん化学療法剤をさらに包含する。
【0182】
主題の抗GPC CAR免疫応答細胞は、細胞傷害性/抗新生物剤および抗血管新生剤を含む他の抗腫瘍剤との組合せで投与されてよい。細胞傷害性/抗新生物剤は、がん細胞を攻撃し、殺滅させる薬剤として定義され得る。一部の細胞傷害性/抗新生物剤は、腫瘍細胞中の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤であってよい、例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロマファジンおよびダカルバジン。他の細胞傷害性/抗新生物剤は、腫瘍細胞に対する代謝拮抗薬であってよい、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン(mercaptopuirine)、アザチオプリンおよびプロカルバジン。他の細胞傷害性/抗新生物剤は、抗生物質であってよい、例えばドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミスラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシンCおよびダウノマイシン。これらの化合物について商業的に入手できる多数のリポソーム製剤がある。さらに他の細胞傷害性/抗新生物剤は、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)であってよい。これらとして、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびエトポシドが挙げられる。種々の細胞傷害性/抗新生物剤として、タキソールおよびその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロンおよびビンデシンが挙げられる。
【0183】
抗血管新生剤も使用されてよい。開示された方法および組成物での使用のための好適な抗血管新生剤として、ヒト化およびキメラ抗体を含む抗VEGF抗体、抗VEGFアプタマーおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。血管新生の他の阻害剤として、アンギオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(αおよびβを含む)インターロイキン12、レチノイン酸ならびにメタロプロテイナーゼ-1および-2の組織阻害剤(TIMP-1および-2)が挙げられる。ラゾキサンなどのトポイソメラーゼ、抗血管新生活性を有するトポイソメラーゼII阻害剤が挙げられる小分子も使用されてよい。
【0184】
主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞との組合せで使用できる他の抗がん剤として、これだけに限らないが:アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アデルスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アバスチン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;プロピオン酸ドロモスタノロン;ズアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸エステルナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸エステル;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモフォシン;インターロイキンII(組換えインターロイキンIIまたはrIL2を含む)、インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-I;インターフェロンガンマ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロール酢酸塩;メレンゲストロール酢酸エステル;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロシン;ビノレルビン酒石酸塩;硫酸ビンロシジン;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩を含むがこれらに限定されない。他の抗がん薬は、20-epi-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アデルスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生インヒビター;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アントラレリックス;ADMP(anti-dorsalizing morphogenetic protein)-1;前立腺癌用の抗アンドロゲン;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシス調節剤;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベータクラマイシンB;ベツリン酸;bFGFインヒビター;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキサミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来インヒビター;カルゼレシン;カゼインキナーゼインヒビター(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペントアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デキスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン:ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;9-ジヒドロタキソール;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルニシン塩酸塩;フォルフェニメックス;ホルメスタン;フォストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼインヒビター;ゲムシタビン;グルタチオンインヒビター;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモフォシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様成長因子1受容体インヒビター;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;4-イポメアノール;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリンNトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害性因子;白血球アルファインターフェロン;ロイポロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシンインヒビター;マトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIFインヒビター;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシンである線維芽細胞成長因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;ヒト絨毛性ゴナドトロピンに対するモノクローナル抗体;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子インヒビター;multiple tumor suppressor 1ベースの治療;マスタード系抗がん剤;ミカペロキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N置換ベンザミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン:ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;窒素酸化物による抗酸化剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼインヒビター;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター;白金複合体;白金化合物;白金-トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソームインヒビター;プロテインAベースの免疫モジュレーター;プロテインキナーゼCインヒビター;小型藻類のプロテインキナーゼCインヒビター;プロテインチロシンホスファターゼインヒビター;プリンヌクレオシドホスホリラーゼインヒビター;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;r
afアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルプロテイントランスフェラーゼインヒビター;rasインヒビター;ras-GAPインヒビター;脱メチル化レテリプチン;レニウム(Re186)エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビジノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老齢由来インヒビター1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達インヒビター;シグナル伝達モジュレーター;単鎖抗原結合性タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプテートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合性タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;幹細胞インヒビター;幹細胞分裂インヒビター;スチピアミド;ストロメリシンインヒビター;スルフィノシン;過活動血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼインヒビター;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チロコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激性ホルモン;エチルエチオプルプリンすず;チラパザミン;チタノセンジクロリド;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳インヒビター;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼインヒビター;チルホスチン;UBCインヒビター;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;赤血球遺伝子治療のためのベクター系;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマーが挙げられる。一実施形態では抗がん薬は、5-フルオロウラシル、タキソールまたはロイコボリンである。
【0185】
一部の場合では主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、注射、カテーテルなどによって導入されてよい。一部の場合では、これだけに限らないが、インターロイキン、例えばIL-2、IL-3、IL-6およびIL-11、ならびに他のインターロイキン、コロニー刺激因子、G-、M-およびGM-CSFなど、インターフェロン、例えばガンマインターフェロンならびにエリスロポエチンが挙げられる免疫賦活剤も含まれてよい。一部の場合では対象は、CAR-T、免疫枯渇剤(immunodepletant)および免疫賦活剤を用いて処置されてよい。対象は、CAR-T細胞産生物(cellular product)の性能をブーストするようにIL-2を用いて処置されてよい。一部の場合では免疫賦活剤は、組換えタンパク質であってよい。免疫賦活剤は、タンパク質の活性部分を含んでもよい。一部の場合では免疫賦活剤は、タンパク質の一部だけを含んでもよい。タンパク質の一部は、タンパク質の約50%から60%、70%、80%、90%または約100%までであってよい。
【0186】
CAR T細胞などの主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞を含む組成物は、選択されたpHに緩衝されてよい滅菌液体調製物、例えば等張水性溶液、懸濁物、乳剤、分散剤または粘稠組成物として好都合に提供されてよい。液体調製物は、ゲル、他の粘稠組成物および固形組成物より通常容易に調製される。追加的に液体組成物は、投与する、特に注射による、ためにある程度さらに好都合である。一方粘稠組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供するために適切な粘度範囲内になるように製剤化することができる。液体または粘稠組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であってよい担体を含んでよい。滅菌の注射可能溶液は、適切な溶媒の必要量中に本発明の実施において利用される遺伝的に改変されたCAR免疫応答細胞を、適宜、種々の量の他の成分と共に組み込むことによって調製され得る。そのような組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、ブドウ糖などの好適な担体、希釈剤または賦形剤との混合であってよい。組成物は、凍結乾燥されてもよい。組成物は、望ましい投与の経路および調製物に応じて湿潤、分散または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化または粘稠増強添加剤、保存剤、香味剤、着色料などの補助物質を含有する場合がある。参照により本明細書に組み込まれる"REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE", 17th edition, 1985、などの標準的テキストは、過度の実験を行わずに好適な調製物を調製するために参考にされてよい。抗菌性保存剤、抗酸化物質、キレート剤および緩衝液が挙げられる組成物の安定性および滅菌性を増強できる種々の添加剤は、加えられてよい。微生物作用の予防は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの種々の抗菌剤および抗真菌剤によって確実にされる。注射可能な医薬形態の吸収の延長は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。しかし本発明により、使用される任意の媒体、希釈剤または添加剤は、遺伝的に改変されたCAR免疫応答細胞またはそれらの前駆体と適合性でなければならない。
【0187】
一部の場合では組成物は、等張であってよい、すなわちそれらは、血液および涙液と同じ浸透圧を有してよい。本発明の組成物の望ましい等張性は、塩化ナトリウムまたは、ブドウ糖、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールまたは他の無機もしくは有機溶質などの他の薬学的に許容される薬剤を使用して達成することができる。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含有する緩衝液のために特に好ましい。組成物の粘度は、適宜、薬学的に許容される増粘剤を使用して選択されたレベルに維持されてよい。メチルセルロースは、容易におよび経済的に入手可能であり、扱いやすいことから好ましい。他の好適な増粘剤として、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒロドキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘物質の好ましい濃度は、選択された薬剤に依存する。重要なポイントは、選択された粘度を達成する量を使用することである。明らかに、好適な担体および他の添加剤の選択は、実際の投与経路および具体的な投与形態、例えば液体投与形態の性質(例えば、組成物が溶液、懸濁剤、ゲルまたは、徐放性形態もしくは液体充填形態などの別の液体形態に製剤化されるかどうか)に依存する。
【0188】
一部の場合では、例えばがんを処置する組成物、製剤および方法において投与される組成物または製剤の単位投与量は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100mgであってよい。一部の場合では投与される組成物または製剤の総量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90または100gであってよい。
【0189】
一部の場合ではCAR T細胞などの主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞を含む医薬組成物は、単独でまたは薬学的に許容される担体もしくは賦形剤と共に、任意の経路によって投与されてよく、そのような投与は単一および複数投与の両方で実行することができる。さらに具体的には医薬組成物は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、ハンドキャンディー(hand candies)、粉剤、スプレー、水性懸濁剤、注射可能溶液、エリキシル剤、シロップなどの形態の種々の薬学的に許容される不活担体と組み合わされてよい。そのような担体として、固形希釈剤または充填剤、滅菌水性媒体および種々の無毒性有機溶媒などが挙げられる。さらにそのような経口医薬製剤は、そのような目的のために一般に使用される種類の種々の薬剤の手段によって好適に加糖および/または香味付けされてよい。
【0190】
例えば細胞は、これだけに限らないが抗ウイルス治療、シドホビルおよびインターロイキン-2またはシタラビン(ARA-Cとしても周知)などの薬剤を用いる処置が挙げられる任意の数の関連処置手法と併用して(例えば、前に、同時にもしくは続いて)患者に投与されてよい。一部の場合では操作された細胞は、化学療法、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレートおよびFK506などの免疫抑制剤、抗体または、CAMPATH、抗CD3抗体もしくは他の抗体治療などの他の免疫除去(immunoablative)剤、サイトキシン、フルダリビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカインおよび照射との組合せで使用されてよい。操作された細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどのいずれかの化学療法剤を使用するT細胞除去治療、外照射療法(XRT)、シクロホスファミドまたはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体と併用して(例えば前、同時または続いて)患者に投与されてもよい。一部の場合では操作された細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどのB細胞除去治療に続いて投与されてよい。例えば対象は、高用量化学療法に続いて末梢血幹細胞移植を用いる標準的処置を受けてよい。ある特定の実施形態では移植に続いて対象は、操作された細胞、例えば増殖された操作された細胞の注入を受けてよい。追加的に、増殖された操作された細胞は、手術の前にまたは続いて投与されてよい。本明細書に記載される方法のいずれか1つによって得られた操作された細胞は、宿主対移植片(HvG)拒絶および移植片対宿主病(GvHD)に対してそれを必要とする患者を処置するために使用されてよい。したがって、不活性化TCRアルファおよび/またはTCRベータ遺伝子を含む操作された細胞の有効量を前記患者に投与することによって前記患者を処置することを含む、宿主対移植片(HvG)拒絶および移植片対宿主病(GvHD)に対してそれを必要とする患者を処置する方法は、検討されてよい。
【0191】
キット
本明細書では、組成物を含むキットが開示され得る。本明細書では、がん、病原体感染、免疫障害または同種移植の処置または予防のためのキットも開示され得る。一実施形態ではキットは、1つまたは複数の抗GPC3 CARを含む細胞の有効量を含有する治療用または予防用組成物を単位投与形態で含んでよい。一部の実施形態ではキットは、治療用または予防用ワクチンを含有できる滅菌容器を含み;そのような容器は、箱、アンプル、ビン、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスター包装または当技術分野において周知の他の好適な容器形態であってよい。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔または、医薬を保持するために好適な他の材料から作製されてよい。一部の場合ではCAR T細胞などの主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、がん、病原体感染、免疫障害または同種移植を有するまたは発症する危険がある対象にCAR免疫応答細胞を投与するための説明書と共に提供されてよい。説明書は、がん、病原体感染、免疫障害または同種移植の処置または予防のための組成物の使用に関する情報を全般に含む。一部の場合ではキットは、細胞約1x10個から細胞約1x1012個を含んでよい。一部の場合ではキットは、細胞少なくとも約1x10個、細胞少なくとも約1x10個、細胞少なくとも約1x10個、細胞少なくとも約4x10個、細胞少なくとも約5x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約8x10個、細胞少なくとも約9x10個、細胞少なくとも約1x10個、細胞少なくとも約2x10個、細胞少なくとも約3x10個、細胞少なくとも約4x10個、細胞少なくとも約5x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約8x10個、細胞少なくとも約9x10個、細胞少なくとも約1x10個、細胞少なくとも約2x10個、細胞少なくとも約3x10個、細胞少なくとも約4x10個、細胞少なくとも約5x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約8x10個、細胞少なくとも約9x10個、細胞少なくとも約1x1010個、細胞少なくとも約2x1010個、細胞少なくとも約3x1010個、細胞少なくとも約4x1010個、細胞少なくとも約5x1010個、細胞少なくとも約6x1010個、細胞少なくとも約6x1010個、細胞少なくとも約8x1010個、細胞少なくとも約9x1010個、細胞少なくとも約1x1011個、細胞少なくとも約2x1011個、細胞少なくとも約3x1011個、細胞少なくとも約4x1011個、細胞少なくとも約5x1011個、細胞少なくとも約6x1011個、細胞少なくとも約6x1011個、細胞少なくとも約8x1011個、細胞少なくとも約9x1011個または細胞少なくとも約1x1012個を含んでよい。例えば細胞約5x1010個は、キットに含まれてよい。別の例ではキットは、細胞3x10個を含んでよい;細胞は細胞約5x1010個に増殖させて、対象に投与されてよい。
【0192】
一部の場合ではキットは、同種異系細胞を含んでよい。一部の場合ではキットは、ゲノム改変を含む可能性がある細胞を含んでよい。一部の場合ではキットは、「オフザシェルフ」細胞を含んでよい。一部の場合ではキットは、臨床使用のために増殖され得る細胞を含んでよい。一部の場合ではキットは、研究目的のための内容物を含有してよい。
【0193】
一部の場合では説明書は、次の少なくとも1つを含む:治療剤;新生物、病原菌感染、免疫障害または同種移植またはその症状の処置または予防のための投与スケジュールおよび投与;注意事項;警告;効能;禁忌(counter-indications);過量投与情報;有害反応;動物薬理;臨床研究;の説明および/または参考文献。説明書は、容器(ある場合)に直接印刷されてよい、または容器に添付されるラベルとして、または別の印刷物、小冊子、カードまたは容器内にもしくはそれと共に供給される折りたたみ印刷物としてであってよい。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与した後に抗GPC3 CAR T細胞などの抗GPC3 CAR免疫応答細胞を投与するための手順を提供する。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与する前に抗GPC3 CAR免疫応答細胞を投与するための手順を提供する。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与することと同時に抗GPC3 CAR免疫応答細胞を投与するための手順を提供する。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与した少なくとも12時間後に抗GPC3 CAR免疫応答細胞を投与するための手順を提供する。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与した少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または2日間まで、3日間、4日間、5日間、6日間もしくは7日間までの後に抗GPC3 CAR免疫応答細胞を投与するための手順を提供する。一部の場合では説明書は、化学療法剤を投与した少なくとも24時間後に抗GPC3 CAR免疫応答細胞を投与するための手順を提供する。抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、静脈内注射のために製剤化され得る。抗GPC3 CAR免疫応答細胞は、固形腫瘍を含む可能性がある対象の肝臓への動脈内注射のために製剤化されてよい。
【0194】
一部の場合ではキットは、それを必要とする対象への投与のためにそれぞれ約60mg/kgから約80mg/kgおよび約25mg/mから約35mg/mに製剤化されたシクロホスファミドおよび/またはフルダラビンを含有してよい。一部の場合ではキットは、産生物を小児投与量で含有してよい。
【0195】
組換え方法は、当技術分野において十分周知である。本発明の実施は、他に示す場合を除いて、当該分野の技術の範囲内である、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を使用する。そのような技術は、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual", second edition (Sambrook et al., 1989); "Oligonucleotide Synthesis" (Gait、ed., 1984); "Animal Cell Culture" (Freshney, ed., 1987); "Methods in Enzymology" (Academic Press, Inc.); "Handbook of Experimental Immunology" (Wei & Blackwell, eds.); "Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells" (Miller & Calos, eds., 1987); "Current Protocols in Molecular Biology" (Ausubel et al., eds., 1987); "PCR: The Polymerase Chain Reaction", (Mullis et al., eds., 1994);および"Current Protocols in Immunology" (Coligan et al., eds., 1991)などの文献に十分説明されている。これらの技術は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生に適用可能であり、したがって、本発明を作製するおよび実施することにおいて考慮され得る。特に有用な技術は、続くセクションにおいて考察される。
【0196】
追加的な適用
有効な養子細胞移入ベース免疫療法(ACT)は、がん(例えば、転移性がん)患者を処置するために有用である場合がある。例えば自己末梢血リンパ球(PBL)は、がんまたは腫瘍細胞上でGPC3を認識する抗GPC3キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように本明細書において開示される非ウイルス性またはウイルス性の方法を使用して改変されてよく、開示される方法およびキットにおいて使用することができる。本発明は、対象へのリンパ球低減処置に続いてまたはそれと同時にヒトまたはヒト化キメラ抗原受容体を使用する、これだけに限らないががんが挙げられる、免疫療法のための組成物および方法を対象とし得る。このキメラ抗原受容体は、対象へのリンパ球低減処置に続いてまたはそれと同時にヒトまたはヒト化キメラ抗原受容体コンストラクトを利用する。
【0197】
これらの組成物および方法は、多数の優位性を有するがん治療を提供できる。一部の場合では方法は、免疫応答細胞が主要組織適合性複合体(MHC)の存在または活性に実質的に非依存性になるように免疫応答細胞を改変することを含んでよい。一部の場合では本明細書に記載されるポリ核酸は、キメラ抗原受容体をコードできる。同様に、抗GPC3 CARなどのキメラ抗原受容体を発現する免疫応答細胞の作製方法が開示される。がんまたは疾患を有する患者が抗GPC3 CAR免疫応答細胞を投与される場合がある処置方法も開示される。
【0198】
本明細書には、リンパ球低減処置に続いてまたはそれと同時にレシピエントに1つまたは複数の主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞を移植することを含む、レシピエントにおいて疾患(例えば、がん)を処置する方法が記載される。
【0199】
自己リンパ球注入は、処置において使用されてよい。自己末梢血単球(PBMC)は処置を必要とする患者から回収されてよく、T細胞は本明細書に記載され、当技術分野において周知の方法を使用して活性化および増殖されてよく、次いで患者に注入で戻されてよい。他の場合では同種異系細胞は、患者を処置するために使用されてよい。主題のCAR免疫応答細胞の集団は、当業者に周知の技術を使用する対象への投与のために製剤化されてよい。次いで増殖された細胞は、未改変細胞のためのものと同様の条件下で増殖されてよく、それにより改変細胞(ceil)は増殖され、種々の目的のために使用されてよい。
【0200】
本明細書で開示される方法は、移植することを含んでよい。移植は、細胞産生物の養子移植を指してよい。移植は、自家移植、同種移植、異種移植または任意の他の移植であってよい。例えば移植は、異種移植であってよい。移植は、同種移植であってもよい。
【0201】
一部の場合では、約5x1010個の主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞が対象に投与される。一部の実施形態では細胞約5x1010個は、対象に投与される細胞の量の中央値を表す。一部の実施形態では細胞約5x1010個は、対象において治療応答を与えるために必要である。一部の実施形態では、細胞少なくとも約1x10個、細胞少なくとも約2x10個、細胞少なくとも約3x10個、細胞少なくとも約4x10個、細胞少なくとも約5x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約8x10個、細胞少なくとも約9x10個、細胞少なくとも約1x10個、細胞少なくとも約2x10個、細胞少なくとも約3x10個、細胞少なくとも約4x10個、細胞少なくとも約5x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約8x10個、細胞少なくとも約9x10個、細胞少なくとも約1x10個、細胞少なくとも約2x10個、細胞少なくとも約3x10個、細胞少なくとも約4x10個、細胞少なくとも約5x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約6x10個、細胞少なくとも約8x10個、細胞少なくとも約9x10個、細胞少なくとも約1x1010個、細胞少なくとも約2x1010個、細胞少なくとも約3x1010個、細胞少なくとも約4x1010個、細胞少なくとも約5x1010個、細胞少なくとも約6x1010個、細胞少なくとも約6x1010個、細胞少なくとも約8x1010個、細胞少なくとも約9x1010個、細胞少なくとも約1x1011個、細胞少なくとも約2x1011個、細胞少なくとも約3x1011個、細胞少なくとも約4x1011個、細胞少なくとも約5x1011個、細胞少なくとも約6x1011個、細胞少なくとも約6x1011個、細胞少なくとも約8x1011個、細胞少なくとも約9x1011個または細胞少なくとも約1x1012個。例えば細胞約5x1010個は、対象に投与される場合がある。別の例では、細胞3x10個を用いて開始して、細胞は細胞約5x1010個に増殖され、対象に投与されてよい。一部の場合では細胞は、治療のために十分な数に増殖される。例えば細胞5x10個は治療用使用のための十分な数を生成するために急速増殖を経る場合がある。一部の場合では治療用使用のための十分な数は、5x1010個であってよい。任意の数の細胞が治療用使用のために注入されてよい。例えば対象は、1x10から5x1012個の間の数(これらの数を含む)の細胞を注入されてよい。患者は、彼らのために生成され得る、可能な限り多数の細胞を用いて注入されてよい。一部の場合では患者に注入される細胞は、すべて操作されているとは限らない。例えば患者に注入される細胞の少なくとも90%は、操作されていてよい。他の場合では、患者に注入される細胞の少なくとも40%は操作されていてよい。一部の実施形態では方法は、対象において治療応答を与えるために必要な、操作された細胞の量を算出することおよび/または対象に投与することを含み得る。一部の実施形態では、治療応答を与えるために必要な、操作された細胞の量を算出することは、細胞の生存率および/または抗GPC3 CAR導入遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれる効率を含む。一部の実施形態では、対象に治療応答を与えるために、対象に投与される細胞は生細胞であってよい。いくつかの実施形態では、対象に治療応答を及ぼすために、細胞の少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%は生細胞である。一部の実施形態では、対象に治療応答を与えるために、対象に投与される細胞は、細胞のゲノムに1つまたは複数の導入遺伝子が良好に組み込まれた細胞であってよい。一部の実施形態では、対象に治療応答を及ぼすために、細胞の少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%、少なくとも約15%、少なくとも約10%で、1つまたは複数のCAR導入遺伝子が細胞のゲノムに良好に組み込まれている。
【0202】
一部の場合では対象は、主題の抗GPC3 CAR免疫応答細胞を投与されてよく、投与され得るCAR免疫応答細胞は約1から約35日齢であってよい。例えば投与される細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または約40日齢までであってよい。CAR免疫応答細胞の日齢は、刺激時からの日齢と考えてよい。CAR免疫応答細胞の日齢は、アフェーレシス時からの日齢と考えてよい。CAR免疫応答細胞の日齢は、形質導入時からの日齢と考えてよい。一部の実施形態では、対象に投与され得るCAR免疫応答細胞は、約10から約14または約20日齢である。一部の場合ではCAR免疫応答細胞の「日齢」は、テロメアの長さによって決定してよい。例えば「若い」CAR免疫応答細胞は、「疲弊した」または「古い」CAR免疫応答細胞よりも長いテロメア長を有する場合がある。特定の理論に束縛されることなく、免疫応答細胞は1週間培養あたり約0.8kbの推定テロメア長を失い、若いCAR免疫応答性細胞培養物は、約44日齢である免疫応答細胞よりも約1.4kb長いテロメアを有し得ると考えられる。特定の理論に束縛されることなく、より長いテロメア長は、患者での陽性の客観的な臨床応答およびインビボでの細胞の持続性に関連する場合があると考えられる。
【0203】
一部の場合では細胞は、核酸(例えば遺伝子またはcDNA)をトランスフェクトされた対象生物から単離され、対象生物(例えば患者)に再注入して戻される。
【0204】
移植前、後および/またはその際の細胞(例えば、操作された細胞または操作された初代T細胞)は、機能性であってよい。例えば移植される細胞は、移植後少なくともまたは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、6、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90または100日間機能性であり得る。移植される細胞は、移植後少なくともまたは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヵ月機能性であり得る。移植された細胞は、移植後少なくともまたは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30年間機能性であり得る。一部の場合では移植された細胞は、レシピエントの寿命まで機能性であり得る。
【0205】
さらに、移植された細胞は、それらの通常意図される機能の100%で機能できる。移植された細胞は、それらの通常意図される機能の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または約100%まででも機能できる。
【0206】
移植される細胞は、それらの通常意図される機能の100%を超えても機能できる。例えば移植される細胞は、それらの通常意図される機能の110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000または約5000%まで機能できる。
【0207】
移植することは、任意の種類の移植によってでよい。部位として、これだけに限らないが、肝被膜下腔(subcapsular space)、脾臓被膜下腔、腎被膜下腔、網、胃もしくは腸の粘膜下、小腸の血管セグメント、静脈嚢(venous sac)、精巣、脳、脾臓または角膜が挙げられる。例えば移植は、被膜下移植であってよい。移植は、筋肉内移植であってもよい。移植は、門脈内移植であってよい。
【0208】
処置(例えば本明細書に開示される処置のいずれか)後、移植拒絶は、1つまたは複数の野生型細胞がレシピエントに移植される場合と比較して改善され得る。例えば移植拒絶は、超急性拒絶である場合がある。移植拒絶は、急性拒絶である場合がある。他の種類の拒絶として、慢性拒絶が挙げられる。移植拒絶は、細胞性拒絶またはT細胞性拒絶である場合もある。移植拒絶は、ナチュラルキラー細胞性拒絶である場合もある。
【0209】
移植を改善することは、超急性拒絶を減らすことを意味し、望ましくない影響または症状を減少させる、減らすまたは消失させることを包含できる。移植は、細胞産生物の養子移植を指す場合がある。
【0210】
良好な移植の別の指標は、レシピエントが免疫抑制療法を必要としない日数であってよい。例えば、本明細書で提供する処置(例えば移植)後、レシピエントは、少なくともまたは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間またはこれを超えて免疫抑制療法を必要としない場合がある。これは、移植が良好であったことを示すことができる。これは、移植された細胞、組織および/または器官の拒絶がないことも示すことができる。
【0211】
一部の場合ではレシピエントは、少なくとも1日間免疫抑制療法を必要としない場合がある。レシピエントは、少なくとも7日間免疫抑制療法を必要としない場合もある。レシピエントは、少なくとも14日間免疫抑制療法を必要としない場合がある。レシピエントは、少なくとも21日間免疫抑制療法を必要としない場合がある。レシピエントは、少なくとも28日間免疫抑制療法を必要としない場合がある。レシピエントは、少なくとも60日間免疫抑制療法を必要としない場合がある。さらにレシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年間またはそれを超えて免疫抑制療法を必要としない場合がある。
【0212】
良好な移植の別の指標は、低減された免疫抑制療法をレシピエントが必要とする日数であってよい。例えば、本明細書で提供する前記処置後、レシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日間またはそれを超えて低減された免疫抑制療法を必要とする場合がある。これは、移植が良好であったことを示すことができる。これは、移植された細胞、組織および/または器官に拒絶がないまたは最小であることも示すことができる。
【0213】
例えば、レシピエントは、少なくとも1日間低減された免疫抑制療法を必要とする場合がある。レシピエントは、少なくとも7日間低減された免疫抑制療法を必要とする場合もある。レシピエントは、少なくとも14日間低減された免疫抑制療法を必要とする場合がある。レシピエントは、少なくとも21日間低減された免疫抑制療法を必要とする場合がある。レシピエントは、少なくとも28日間低減された免疫抑制療法を必要とする場合がある。レシピエントは、少なくとも60日間低減された免疫抑制療法を必要とする場合がある。さらにレシピエントは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年間またはそれを超えて低減された免疫抑制療法を必要とする場合がある。
【0214】
低減された免疫抑制療法は、1つまたは複数の野生型細胞がレシピエントに移植された場合に必要な免疫抑制療法と比較した低免疫抑制療法を指すことができる。
【0215】
免疫抑制療法は、免疫系を抑制する任意の処置を含むことができる。免疫抑制療法は、レシピエントにおいて移植拒絶を緩和、最小化または排除する助けとなり得る。例えば免疫抑制療法は、免疫抑制薬を含んでよい。移植前、その際および/またはその後に使用できる免疫抑制薬は、これだけに限らないがMMF[ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)]、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、抗CD154(CD4OL)、抗CD40(2C10、ASKP1240、CCFZ533X2201)、アレムツズマブ(Campath)、抗CD20(リツキシマブ)、抗IL-6R抗体(トシリズマブ、アクテムラ)、抗IL-6抗体[サリルマブ、オロキズマブ(olokizumab)]、CTLA4-Ig(アバタセプト/オレンシア)、ベラタセプト(LEA29Y)、シロリムス[ラピミューン(Rapimune)]、エベロリムス、タクロリムス(プログラフ)、ダクリズマブ(ゼナパックス)、バシリキシマブ(シムレクト)、インフリキシマブ(レミケード)、シクロスポリン、デオキシスパガリン、可溶性補体受容体1、コブラ毒因子、コンプスタチン、抗C5抗体(エクリズマブ/ソリリス)、メチルプレドニゾロン、FTY720、エベロリムス、レフルノミド、抗IL-2R-Ab、ラパマイシン、抗CXCR3抗体、抗ICOS抗体、抗OX40抗体および抗CD122抗体。さらに、1つまたは1つより多い免疫抑制剤/薬は、共にまたは逐次的に使用されてよい。1つまたは1つより多い免疫抑制剤/薬は、導入療法または維持療法のために使用されてよい。同じまたは異なる薬物が誘導および維持段階の際に使用されてよい。一部の場合ではダクリズマブ(ゼナパックス)は、導入療法のために使用されてよく、タクロリムス(プログラフ)およびシロリムス(ラピミューン)は、維持療法のために使用されてよい。ダクリズマブ(ゼナパックス)は、導入療法のためにも使用されてもよく、低用量タクロリムス(プログラフ)および低用量シロリムス(ラピミューン)は、維持療法のために使用されてよい。免疫抑制は、これだけに限らないが、全身照射、胸腺照射ならびに全および/または部分的脾臓摘出が挙げられる非薬物レジメンを使用して達成することもできる。これらの技術は、1つまたは複数の免疫抑制薬との組合せで使用されてもよい。
【実施例
【0216】
本発明は、次の実験的実施例を参照することによって詳細にさらに記載される。これらの実施例は、例示の目的のためにのみ提供され、他に規定のない限り限定を意図しない。したがって本発明は、次の実施例に限定されると全く見なされるべきでなく、むしろ本明細書で提供する教示の結果として明らかになる任意のおよびすべての変形形態を包含すると見なされるべきである。
【実施例1】
【0217】
抗GPC3-CARベクターの構築
例示的レンチウイルスプラスミドベクターを第3世代の自己不活性化レンチウイルスベクター系を使用して構築した。系は、Gag/PolをコードするパッキングプラスミドpMDLg RRE(Addgene)、RevをコードするパッキングプラスミドpRSV-REV(Addgene)、VSV-GをコードするエンベローププラスミドpCMV-VSV-G(Addgene)および空ベクターpRRLSIN-cPPT.PGK-GFP.WPRE(Addgene)ベースの、CAR遺伝子をコードする組換え発現ベクターを含有する。系は、複製可能レンチウイルス(RCL)粒子を形成する危険を有効に低下させることができる。
【0218】
空ベクターpRRLSIN-cPPT.PGK-GFP.WPREは、伸長因子-1α(EF-1α)のプロモーターおよび、プロモーターとCD8αspシグナルペプチドとの間に挿入MluI切断部位を含有する。詳細にはpWPT-EGFPベクター(Addgene)をClaI/SalI(NEB)を用いて二重消化して1.1KbのDNA断片を回収し、次に、ClaI/SalIを用いて二重消化したpRRLSIN-cPPT.PGK-GFP.WPREにT4 DNAリガーゼを用いてライゲーションした。次にライゲーション混合物を宿主細胞TOP10に形質転換した。陽性クローンをコロニーPCRによって同定し、配列決定によって確認し、組換えプラスミドpRRLSIN-cPPT.EF-1α-EGFP.WPREを生成した。CD8αシグナルドメイン(別名断片1、442bp)のEF-1αプロモーター(配列番号33、Mlu I切断部位を含む)を上流プライマー5’-gcaggggaaagaatagtagaca-3’(配列番号31)、下流プライマー5’-CGGCCTGGCGGCGTGGAG-3’(配列番号32)および鋳型としてpRRLSIN-cPPT.EF-1α-EGFP.WPREを用いて増幅させた、増幅は次の条件下で実行した:初期変性94℃、4分間;変性、94℃、30秒間、アニーリング、53℃、30秒間、および伸長68℃、30秒間;ならびに25サイクル後、伸長68℃、10分間。増幅されたバンドが予測される断片サイズを有することをアガロースゲル電気泳動によって確認した。
【0219】
ヒト化GPC3タンパク質を特異的に認識できるヒト化抗体35は、中国特許出願第CN201510481235.1号に記載されている。35-CARレンチウイルスプラスミドを構築するために、次のものを重鎖可変ドメイン断片を提供する増幅において使用した:鋳型として重鎖可変ドメイン35(CN201510481235.1の配列番号80)含有する断片、上流プライマー5’-ctccacgccgccaggccggaggtgcagctggtgcag-3’(配列番号34)、および下流プライマー5’-GCGGTGTCCTCGCTCCGCAGGCTGCTCAGCTCCATGTAGGCGGTG-3’(配列番号35);次のものを軽鎖可変ドメイン断片を提供するために使用した:鋳型として35の軽鎖可変ドメイン(配列番号79 CN201510481235.1を含有する断片、上流プライマー5’-GCGGAGCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCCCGGTTCTACAGCTAC-3’(配列番号36)、および下流プライマー5’-CGGCGCTGGCGTCGTGGTACGTTTGATCTCCAGCTTGGTG-3’(配列番号37)。上流CD8αシグナルペプチドおよび下流ヒンジ領域に反復性である配列を含む35scFv断片(配列番号38、別名断片2、765bp)を提供するように重鎖および軽鎖可変ドメインプライマーを橋渡し(bridging)PCRを用いて増幅した。PCR増幅を次の条件下で実行した:初期変性94℃、4分間;変性、94℃、40秒間、アニーリング、58℃、40秒間;伸長68℃、40秒間;および25サイクル後、伸長68℃、10分間。増幅されたバンドが予測される断片サイズを有することをアガロースゲル電気泳動によって確認した。
【0220】
上流プライマー5’-accacgacgccagcgccg-3’(配列番号39)および下流プライマー5’-aatccagaggttgattgtcgacctagcgagggggcagggcctgc-3’(配列番号40)を、pWPT-eGFP-F2A-GPC3-28Zを鋳型として用いて(中国特許出願第CN104140974 A号を参照されたい)、ヒンジ-28Z(配列番号41、断片3、703bp)(内部Sal I切断部位を有する)を増幅するために使用した。PCR増幅を次の条件下で実行した:初期変性94℃、4分間;変性、94℃、30秒間、アニーリング、60℃、30秒間、伸長68℃、30秒間;および25サイクル後、最終伸長68℃、10分間。増幅されたバンドが予測される断片サイズを有することをアガロースゲル電気泳動によって確認した。等モル量(約50ng)の断片1、断片2および断片3をオーバーラップPCRによって次の条件下で増幅させた:初期変性94℃、4分間;変性、94℃、40秒間、アニーリング、60℃、40秒間、伸長68℃、140秒間;および5サイクル後、最終伸長68℃、10分間。次にDNAポリメラーゼ、上流プライマー5’-gcaggggaaagaatagtagaca-3’(配列番号31)および下流プライマー5’-aatccagaggttgattgtcgacctagcgagggggcagggcctgc-3’(配列番号40)を混合物に補充し、次の条件下で25サイクル増幅させた:初期変性94℃、4分間;変性、94℃、40秒間、アニーリング、60℃、40秒間、伸長68℃、140秒間;および最終伸長68℃、10分間。生じる35-28Z(配列番号41)の理論サイズは1874bpであった。増幅産物はアガロースゲル電気泳動によって確認され、配列番号23として示す予測断片サイズおよび配列を有した。
【0221】
ベクターpRRLSIN-cPPT.EF-1α-EGFP.WPREベクターおよび35-28ZをMluIおよびSalIを用いて消化し、次いでT4リガーゼを用いてライゲーションし、TOP10に形質転換した。pRRL-EF-1α-35-28Zが得られたことを確認するために陽性クローンは、InvitrogenによってコロニーPCRおよび配列決定を用いて同定された。
【実施例2】
【0222】
抗GPC3-CARレンチウイルスのパッケージング
抗GPC3-CARレンチウイルスストック溶液(0.75L)を胚性腎臓細胞293 T(ATCC:CRL-11268)を使用して調製した。詳細には293T細胞を1.17×10/cmで5層セルスタック(Corning)上に播種した。溶液Aを133.2μgのパッケージングプラスミドpRSV-Rev、133.2μgのpMDLg/pRRE、51.56μgのpCMV-VSV-Gおよび111.7μgのpRRL-EF-1α-35-28Zを含むように、966μgの全プラスミドを17ml DMEM基本培地に溶解し、穏やかに混合することによってトランスフェクションの当日に調製した。溶液Bを2.9mg PEI(Polysciences)を17ml DMEM基本培地に溶解することによって調製し、溶液を穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。次いで溶液Aを溶液Bに加え、均一に混合し、室温に20分間から25分間置いた。次いで293 T培養液をセルスタックから1Lフラスコに移した。次にプラスミドおよびPEIを含む合わせた溶液を培養液に加え、穏やかに混合した。次いで得られた溶液をセルスタックに移し、培地を10%FBS(Life Technology)を補充した新鮮増殖培地DMEMに変更する前に5時間、37℃、5%COでインキュベートした。次に培養物を37℃、5%COで、48時間インキュベートした。次にレンチウイルスストック溶液を回収し、0.45μm(Millipore)フィルターを用いてろ過し、KrosFlo(登録商標)IIi Tangential Flow Filtration System(Spectrum)を用いて濃縮および精製し、AIM-V(Life Technology)を用いて洗浄し、保存した。ウイルスのタイトレーションをCN104140974Aに記載の方法により実行した。ウイルスタイターを約1×10/mlと算出した。ウイルスを1×10/バイアルにパッケージングし、後の使用まで-80℃で保存した。
【実施例3】
【0223】
抗GPC3-CAR T細胞の調製および肝臓がん細胞に対するインビトロ抗腫瘍アッセイ
CAR T細胞をcGMP標準に従って免疫細胞調製ラボで調製した。詳細には、対象の末梢血またはCOBEスペクトル血液成分分離機を使用して得た白血球濃縮血液をヒト末梢血単核細胞(PBMC)を得るために密度勾配遠心分離によって分離した。PBMCを抗CD3および抗CD28抗体(Life technology)の両方でコートした磁気ビーズと、PMBC対磁気ビーズ1:3の比で混合し、組換えヒトIL-2を最終濃度300U/mL(Shanghai Hua Xin High Biotechnology Co.、Ltd.)で用いて刺激し、48時間培養した。次に前述のレンチウイルスを活性化T細胞をおよそ5のMOIで形質導入するためにRetroNectin(Takara)によって形質導入効率を増強して使用した。形質導入24時間および48時間後に、遊離ウイルスを低速遠心分離(100gx10分間)を通じた培地交換によって除いた。形質導入72時間後、磁気ビーズを除いた。前述の遠心分離を繰り返し、継代培養物を密度5x10/mLで得た。次に細胞を密度約3x10/mLで一日おきに継代培養した一方で、組換えヒトIL-2をリンパ球培養培地に最終濃度300U/mLで加えた。
【0224】
形質導入されたCAR T細胞を10から12日間のインビトロ培養に続いてそれらのCARの発現についてフローサイトメトリーによってアッセイした。すなわちCAR T細胞の陽性形質導入率をアッセイし、表7に示す。さらにインビトロ抗腫瘍アッセイを、高GPC3発現肝臓がん細胞Huh-7、低GPC3発現PLC/PRF/5およびGPC3陰性SK-HEP-1とのエフェクター対標的比3:1、1:1および1:3での18時間共インキュベーションによって実行した。詳細な手順についてCN104140974Aを参照されたい。エフェクター対標的比1:1でのインビトロ抗腫瘍活性結果を表8に提示する。
【0225】
結果は、抗GPC3-CAR T細胞がCARを約40%から約80%の範囲で発現したことを示している。さらに、抗GPC3-CAR T細胞は、GPC3陽性Huh-3およびPLC/PRF/5を特異的に殺滅させ、エフェクター対標的比に対する用量依存的効果を有していたが、一方、それらはGPC3陰性SK-HEP-1に殺滅効果を有さず(表8)、本開示において対象から調製された抗GPC3-CAR T細胞が優れた標的化殺滅効果を有することを示している。
【0226】
表7:対象由来抗GPC3-CAR T細胞の陽性形質導入率および投与レジメンの概要
【表7】
【0227】
表8:対象由来抗GPC3-CAR T細胞のインビトロ殺滅(エフェクター対標的比3:1、1:1および1:3、インビトロ、18時間)
【表8】
【実施例4】
【0228】
リンパ球低減後のリンパ球の変化
処置対象由来の抗GPC3-CAR T細胞調製の際に異常が生じなかったことを確認後、対象がインビボリンパ球低減に好適であるかどうかを判定するために対象を種々の健康状態の包括的評価に供した。主なリンパ球低減プロトコールは、好適な対象への投与のために設計された。
【0229】
次の2つのリンパ球低減プロトコールを設計した:プロトコール1:シクロホスファミド(CTX)単剤リンパ球低減プロトコール、用量1g/m/日x1日。プロトコール2:併用フルダラビン(FLU)+シクロホスファミドリンパ球低減プロトコール、用量20~30mgフルダラビン/m/日x4日間+500mgシクロホスファミド/m/日x2日間。
【0230】
プロトコールを次の条件を含むように調整して実施した:ヒト表面積の算出をスチーブンソンの式(Chinese Journal of Physiology, 12:327,1937)に従って実行した。すなわち表面積(m)=0.0061x身長(cm)+0.0128x体重(kg)-0.1529。例えば身長170cmおよび体重60kgの成人は、表面積1.6521mを有する。現在の健康状態または彼ら自身の意志によりリンパ球低減に好適でない対象は、第2列に割り当てた。異なるリンパ球低減処置を合計3名の対象(H01、H02およびH03)で実施した。1名の対象(H04)は健康状態およびその意志により除去に供されなかった。プロトコールを表9に提示する。
【0231】
表9:対象のためのリンパ球低減プロトコールの概要
【表9】
【0232】
H01は、対象H01への抗GPC3-CAR T細胞治療の初回投与を示している;H01は、対象H01への抗GPC3-CAR T細胞治療の2回目の投与を示している;およびD0は抗GPC3-CAR T細胞投与が実行された日と定義した。前述のリンパ球低減プロトコールの実施に続いて、対象においてリンパ球の絶対値に種々の変化が生じた。単剤としてのシクロホスファミドのリンパ球低減処置の結果として、リンパ球は約40%から約72%減少した。フルダラビンとシクロホスファミドとの併用リンパ球低減は、シクロホスファミド単剤投与と比較して約82%から約96.5%のリンパ球低減においてさらに顕著な差異をもたらした。詳細には図2は、リンパ球低減処置投与前および後の各モニタリング時点での、リンパ球の絶対数対ベースラインの比の変化を実証している。前述の結果は、フルダラビンとシクロホスファミドとの併用が、シクロホスファミド単剤低減プロトコールと比較して、より優れたリンパ球低減を生じることを実証している。
【実施例5】
【0233】
除去後の対象の臨床応答
リンパ球低減の実施の約2日後、対象に、静脈内投与によって抗GPC3-CAR T細胞処置を投与した。投与された抗GPC3-CAR T細胞の用量を表7に提示する。処置後の対象の臨床応答を表10に要約する。結果は、リンパ球低減を受けた3名の対象が抗GPC3-CAR T細胞処置後から現在まで安定疾患(SD)または部分疾患(PR)を有することを実証している。対照的に、リンパ球低減処置を受けなかった対象H04は、抗GPC3-CAR T細胞処置4週間後にMRIによる進行性疾患を示す。
【0234】
AFP結果に関して、対象H02はAFP非感受性のために腫瘍マーカーから予後について評価できなかった。他の2名の対象について、表10のとおり彼らのAFPレベルはある程度減少した。対象H03が、併用フルダラビンおよびシクロホスファミドを使用するリンパ球低減後に、処置前のベースラインと比較してAFPの87%低減を示したことは注目されるべきである。一方で画像法は、標的部位が部分的臨床応答を有することを示している。図3は、処置前対処置10週間後での対象H03由来MRI結果を示している。
【0235】
表10:抗GPC3-CAR T細胞処置後の対象の臨床応答の概要
【表10】
【0236】
注:↓はAFPレベルの減少を示す;↑はAFPレベルの増大を示す;PDは進行性疾患を示す;CRは完全応答を示す;およびPRは部分応答を示す。安全データおよび臨床所見は、抗GPC3-CAR T細胞を用いる処置後に、許容できない毒性または副作用を生じた対象がいなかったことを示した。すべての対象はある程度の発熱およびGRP増加があった。対象H01およびH04は、投与後に震えがあった。対象H03は発熱によるアルブミンの減少があった。外因性栄養剤およびアルブミンの摂取により、対象は解熱後に正常アルブミンとなった(表11)。
【0237】
表11:リンパ球低減療法に続く抗GPC3-CAR T細胞の投与後の対象での毒性または副作用の概要
【表11】
【0238】
さらに、CAR T細胞を使用する血液がんの処置の際にしばしば生じるサイトカイン放出症候群は、本臨床研究では観察されず、抗GPC3-CAR T細胞が安全であることを示している。
【0239】
総じて、GPC3陽性肝細胞がんを処置するためにCAR-GPC T細胞を使用する臨床研究の結果は、有効なリンパ球低減を受けた対象は抗GPC3-CAR T細胞処置によって確かな臨床的利益を与えられたが、一方でリンパ球低減治療を受けていない対象はいかなる臨床的利益も与えられなかったことを実証している。さらに、リンパ球低減を受けたまたは受けていない対象は両方とも、発熱およびCRPの増加などのある特定の有害応答をいずれも有する許容できない毒性または副作用を呈さず、リンパ球低減が対象の有害応答を悪化させなかった可能性があることを示している。さらに、リンパ球低減治療の効果および対象への利益に関して、併用フルダラビンおよびシクロホスファミドリンパ球低減プロトコールは、シクロホスファミド単剤リンパ球低減プロトコールより優れている可能性がある。総じて有効なリンパ球低減の実施に続く抗GPC3-CAR T細胞処置は、GPC3陽性肝細胞癌の臨床処置に有効な治療解決法を提供できる。
【実施例6】
【0240】
表現型分析
細胞表面分子の発現を標準的方法を使用してフローサイトメトリーによって判定する。フィコエリトリン、フルオレセインイソチオシアネートおよび/またはペリジニンクロロフィルタンパク質にコンジュゲートした次のモノクローナル抗体を使用する:CD3、CD4、CD8、CD30、CCR4、CD45RA、CD45RO、CCR7、CD62L、CD56、αβT細胞受容体(BD Biosciences PharMingen)。T細胞によるCARの発現を抗CAR抗体を使用して検出する。試料をFACSCalibur(BD Biosciences PharMingen)を使用して分析し、データをCellQuest Pro software(BD Biosciences、San Jose、CA)によって分析する。少なくとも10,000個の陽性事象を各試料について測定する。
【実施例7】
【0241】
細胞傷害性アッセイ:肝臓がん
第2世代および第3世代CAR-T形質導入T細胞の潜在的細胞傷害効果を評価するために、CytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を実施した。簡潔には、抗GPC3 CAR-T細胞、33-28BBZ、92-28BBZおよび4-28BBZを、対照細胞、SK-HEP-1(図4A)およびCHO-K1(図4B)と、エフェクター:標的比3:1、1:1または1:3で標的細胞10,000個/ウエルで共培養し、18時間、37℃でインキュベートした。インキュベーション後に標準的96ウエルプレートリーダーを使用して可視波長吸光度データを回収した。
【0242】
抗腫瘍細胞傷害性を評価するために、CAR-T細胞、33-28BBZ、92-28BBZおよび4-28BBZを、GPC3陽性肝臓がん細胞、Huh-7または、GPC3、CHO-K1-GPC3+を発現するように形質導入された対照細胞と、エフェクター:標的比3:1、1:1または1:3で標的細胞10,000個/ウエルで共培養し、18時間、37℃でインキュベートした、それぞれ図5Aおよび図5B。インキュベーション後に標準的96ウエルプレートリーダーを使用して可視波長吸光度データを回収した。
【0243】
すべてのエフェクター:標的比について、細胞傷害性を5回反復ウエルの平均値として得た。
【0244】
結果
細胞傷害性データは、3:1、1:1および1:3で33-28BBZ、92-28BBZおよび4-28BBZ CAR-TコンストラクトがGPC3を発現する腫瘍細胞株に対する細胞傷害性を有する一方で、非GPC3発現対照株には細胞傷害性を有さないことを示している。
【実施例8】
【0245】
細胞傷害性アッセイ:肝臓がんパネル
第2世代または第3世代CAR-T形質導入T細胞の潜在的細胞傷害効果を評価するために、CytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を実施した。簡潔には、抗GPC3 CAR-T細胞、92-28Z、92-BBZ、92-28BBZまたはモックをHepG2(HCC)(図6A)、Hep3B(HCC)(図6B)またはPLC/PRF/5(Hepatoma)(図6C)と、エフェクター:標的比3:1、1:1または1:3で標的細胞10,000個/ウエルで共培養し、18時間、37℃でインキュベートした。第2世代および第3世代CAR-Tの細胞傷害効果を評価するために、同様にCytoTox 96(登録商標)アッセイを高GPC3発現肝臓がん細胞、Huh-7と共培養した92-28Z、92-BBZ、92-28BBZまたはモックを使用して実施した、図7A。インキュベーション後に標準的96ウエルプレートリーダーを使用して可視波長吸光度データを回収した。
【0246】
結果
細胞傷害性データは、第2および第3世代コンストラクトの両方が、HCCおよび肝細胞種腫瘍細胞株を含むすべての肝臓がんパネルにわたって3:1、1:1および1:3で同等の細胞傷害性を有することを示している。第2および第3世代コンストラクト(contruts)は、種々のレベルでのGPC3発現で腫瘍細胞を標的化でき、幅広い腫瘍標的化能力があることが明らかになった。
【実施例9】
【0247】
細胞傷害性アッセイ:胃癌
胃癌腫瘍設定における第2世代または第3世代CAR-T形質導入T細胞の潜在的細胞傷害効果を評価するために、CytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を実施した。簡潔には、抗GPC3 CAR-T細胞、92-28Z、92-28BBZまたはモックをKATO-IIIと、エフェクター対標的比3:1、1:1および1:3で10,000個/ウエルで共培養し、18時間、37℃でインキュベートした。
【0248】
結果
細胞傷害性データは、第2および第3世代コンストラクトの両方が、モック形質導入細胞が活性を有さずに、胃癌腫瘍株、KATO-IIIに対して同等の細胞傷害性を有したことを示している、図7B。データは、CAR-T細胞はそれらの腫瘍標的に特異的であり、GPC3抗原を発現しない組織に反応性(reacticity)を示さないことを示唆している。
【実施例10】
【0249】
scFv33対scFv92の比較
さまざまなscFvを有するCAR-TをGPC3と比較するために、第2世代または第3世代CAR-T形質導入T細胞をCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)において使用した。簡潔には、抗GPC3 CAR-T細胞、33-28Z、92-28Z、92-BBZ、92-28BBZまたはモックをHuh-7細胞または対照細胞、A431(GPC3 neg)と、エフェクター:標的比3:1、1:1または1:3で標的細胞10,000個/ウエルで共培養し、18時間、37℃でインキュベートした。インキュベーション後に標準的96ウエルプレートリーダーを使用して可視波長吸光度データを回収した。
【0250】
結果
細胞傷害性データは、3:1、1:1および1:3のエフェクター対標的比でscFv33を含むコンストラクトと比較して、scFv92を含むコンストラクトは、細胞傷害性が増大していたことを示している、図10B。細胞傷害性は、GPC3neg腫瘍細胞株A431との共培養において細胞傷害性が検出されなかったことから抗原特異的であった、図10A
【実施例11】
【0251】
第2および第3世代CAR-Tの比較
第2および第3世代CAR-Tを比較するためにCAR-T形質導入T細胞をCytoTox 96(登録商標)Non-Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega)において使用した。簡潔には、抗GPC3 CAR-T細胞、4-28Z、4-28BBZ、4-4-28BBZ、4-14-28BBZ、4-20-28BBZ、4-35-28BBZ、4-42-28BBZまたは形質導入されたモックをHuh-7(HCC)細胞と、エフェクター:標的比3:1または1:1で標的細胞10,000個/ウエルで共培養し、18時間、37℃でインキュベートした。インキュベーション後に標準的96ウエルプレートリーダーを使用して可視波長吸光度データを回収した。
【0252】
結果
細胞傷害性データは、4-20-28BBZ、4-35-28BBZおよび4-42-28BBZに細胞傷害性を有し、第2および第3世代コンストラクトの両方が溶解の増加として測定される、より高い細胞傷害性(cycotoxicity)を有していたことを示している、図9
【実施例12】
【0253】
増殖アッセイ
標的細胞(Huh-7、GPC3+)または対照細胞(SK-HEP-1、GPC3-)への曝露後の抗GPC3 CAR-Tの増殖をカルボキシフルオレセインサクシニミジルエステル希釈アッセイによって判定した。
【0254】
形質導入1週間後、対照Tリンパ球および抗GPC3 CAR-T細胞を1.5μmol/Lカルボキシフルオレセインジアセテートサクシニミジルエステル(CFSE;Invitrogen)を用いて標識し、照射された腫瘍標的(GPC3陽性およびGPC3陰性株)と共に5:1のエフェクター対標的(E:T)比で蒔いた。CFSE希釈は、CD4およびCD8T細胞上でフローサイトメトリーによって共培養4日目に測定する。
【実施例13】
【0255】
患者由来腫瘍移植片マウスモデルおよびリンパ球低減
NOD/SCIDマウスに2x2x2mm肺がん腫瘍をそれぞれインプラントした。インプラントのおよそ27日後、または腫瘍サイズが220mmに達した時に、マウスにシクロホスファミドを静脈内に、および1x10モック、hu92-28Zまたはhu92-28BBZ CAR-T細胞のいずれかを腹腔内投与した。2回目の投与は34日目に続いた。腫瘍容量をカリパー測定を使用して、およそ3~7日ごとに腫瘍接種52日目まで測定した。
【0256】
結果
腫瘍接種51日後、92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置したマウスは、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたは生理食塩水を用いて処置したマウスと比較して腫瘍サイズが顕著に低減していた、図8Aおよび図8B。92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置したマウスは、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたは生理食塩水を用いて処置したマウスと比較して腫瘍重量も顕著に低減していた、図8C。92-28Z、第2世代CAR-Tを用いて処置したマウスはまた、92-28BBZ、第3世代CAR-Tまたは生理食塩水を用いて処置したマウスと比較して阻害が顕著に低減していた、図8D
【実施例14】
【0257】
異種移植HCCマウスモデル
8から12週齢NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(Bar Harbor、ME)に0.5x10Huh-7腫瘍細胞をそれらの左側腹部にインプラントした。腫瘍接種7日後、マウスを1x10モック形質導入T細胞、hu92-28Zまたはhu92-28BBZを用いて尾静脈注射によって処置した。処置に続いてマウスを腫瘍細胞接種後35日間少なくとも1週間に1回、カリパー測定によってモニタリングした。
【0258】
結果
hu92-28Zおよびhu92-28BBZを用いた処置は、モック形質導入T細胞を用いて処置したマウスと比較して顕著な抗腫瘍活性を有した。図11Aは、hu92-28Zまたはhu92-28BBZを用いて処置したマウスは、腫瘍細胞接種後35日目に腫瘍容量が顕著に低減していたことを示している。図11Bは、hu92-28Zまたはhu92-28BBZを用いて処置したマウスは、モック形質導入細胞を用いて処置したマウスと比較して、それらの重量測定値の低減によって証明されるとおり、腫瘍が顕著に小さくなっていたことを示している。図11Cは、異種移植腫瘍の画像を示している。
【実施例15】
【0259】
抗GPC3 CAR T細胞の臨床用増殖
多数の形質導入T細胞を生成するために、細胞を急速増殖プロトコール(REP)を使用して増殖するように誘導する。REPにおいて使用する前に、T細胞は、抗CD3、抗CD28およびIL-2を含む培養を開始し、上に詳述のとおり培養開始の2日後に形質導入した。細胞を75cmフラスコ中、37℃および5%COで培養する。細胞を、それらを培養物中に保持する残りの期間について計数し、300IU/mLのIL-2を含む新鮮T細胞培地に2日ごとに細胞0.5×10個/mLの濃度で懸濁する。
【実施例16】
【0260】
臨床試験
評価可能な肝臓がんを有する患者は、末梢血単核細胞を単離するためにアフェーレシスを受ける。リンパ球を単離し、抗GPC3 CARを用いてウイルスで形質導入し、増殖させ、および免疫学的検査のためにアリコートで採取した。CAR-T投与の7および6日前に、患者はシクロホスファミド、60mg/kg/日x2日間、1時間にわたるIVの準備レジメンを受ける。CAR-T投与の7から3日前に、患者はフルダラビン25mg/m/日、毎日30分間かけたIVPBの5日間の準備レジメンを受ける。準備レジメンの際に、患者は毎日全血球計算(CBC)検査を受ける。
【0261】
第I相研究の第1のパートにおいて、用量漸増を患者1名あたり10個の抗GPC3 CAR-Tで開始して、1群あたり1名の患者を利用して開始する。個々の患者をハーフログ増加で処置する。したがって次の用量を利用する:10、細胞3x10個、細胞1010個、細胞3x1010個および細胞1x1011個まで。自己抗GPC3 CAR-Tを20から30分間かけて非ろ過チューブを介して静脈内投与する。
【0262】
すべての患者は、CAR-T細胞産生物の投与6週間後に評価のために診療所に再来する。
【0263】
表12:配列
【表12-1】

【表12-2】

【表12-3】

【表12-4】

【表12-5】

【表12-6】

【表12-7】

【表12-8】

【表12-9】
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
【配列表】
0007145761000001.app