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特許7145771ハードディスクドライブサスペンション用多層マイクロアクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ハードディスクドライブサスペンション用多層マイクロアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/09 20060101AFI20220926BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20220926BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20220926BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L41/09
G11B21/21 C
G11B5/60 P
H01L41/187
【請求項の数】 34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019011420
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2019129324
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】62/621,990
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/254,240
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517151084
【氏名又は名称】マグネコンプ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MAGNECOMPCORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】クエン チー イー
(72)【発明者】
【氏名】ロン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ダビッド グライス
(72)【発明者】
【氏名】アモンラット ジャトゥラウィット
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-329376(JP,A)
【文献】特開2002-133803(JP,A)
【文献】特開2004-064877(JP,A)
【文献】特開2017-017241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/09
G11B 21/21
G11B 5/60
H01L 41/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電(「PZT」)層と、
拘束層と、
前記PZT層の底面に配置されて、第1下部電極アイランド部、第1主要部と前記第1主要部から前記PZT層の第1端部に向かって延出する第1フィンガー部とを含む第2下部電極アイランド部、及び第3下部電極アイランド部を含む、下部電極層と、
前記PZT層の上面と前記拘束層の底面との間に配置されて、第1中間電極アイランド部、及び第2主要部と前記第2主要部から前記PZT層の前記第1端部に向かって延出する第2フィンガー部とを含む第2中間電極アイランド部を含む、中間電極層と、
前記拘束層の上面に配置された上部電極層と、を備えた多層マイクロアクチュエータ。
【請求項2】
第1フィンガー部と前第2フィンガー部とは、記PZT層、前記拘束層、又はその両方の不感帯領域を減少させるのに利用される、請求項1に記載の多層マイクロアクチュエータ。
【請求項3】
前記拘束層は能動拘束層構造(active constraining layer construction)である、請求項1に記載の多層マイクロアクチュエータ。
【請求項4】
前記多層マイクロアクチュエータに印加されるアクチュエーション電圧を受けて、前記PZT層が膨張するように構成され、前記拘束層が収縮するように構成される、請求項3に記載の多層マイクロアクチュエータ。
【請求項5】
前記多層マイクロアクチュエータに印加されるアクチュエーション電圧を受けて、前記PZT層が収縮するように構成され、前記拘束層が膨張するように構成される、請求項3に記載の多層マイクロアクチュエータ。
【請求項6】
前記PZT層は、前記第1下部電極アイランド部と前記第1中間電極アイランド部とを電気的に接続するように構成された第1電気ビアと、前記第3下部電極アイランド部と前記第2中間電極アイランド部とを電気的に接続するように構成された第2電気ビアとを含む、請求項1に記載の多層マイクロアクチュエータ。
【請求項7】
前記拘束層は、前記第1中間電極アイランド部と前記上部電極とを電気的に接続するように構成された第3電気ビアを含む、請求項6に記載の多層マイクロアクチュエータ。
【請求項8】
ディンプルを含むロードビームと、
前記ロードビームに連結されたフレクシャと、
第1マイクロアクチュエータとを備え、
前記フレクシャは、スライダ取付領域と第1取付領域と第2取付領域とを含むばね金属層、絶縁層、及びモータ電源トレースとグランドパッドとを含む導電層を備え、前記スライダ取付領域は前記ロードビームの前記ディンプルを係合するための荷重点位置を有し、前記モータ電源トレースは端子パッドを含み、
前記第1マイクロアクチュエータは、
圧電(「PZT」)層と、
拘束層と、
前記PZT層の底面に配置されるとともに、前記端子パッドに電気的に接続された第1下部電極アイランド部、主要部と前記主要部から前記PZT層の第1端部に向かって延出するフィンガー部とを含む第2下部電極アイランド部、及び前記グランドパッドに電気的に接続された第3下部電極アイランド部を含む、下部電極層と、
前記PZT層の上面と前記拘束層の底面との間に配置されるとともに、第1中間電極アイランド部、及び主要部と前記主要部から前記PZT層の前記第1端部に向かって延出するフィンガー部とを含む第2中間電極アイランド部を含む、中間電極層と、
前記拘束層の上面に配置された上部電極層とを備えた、ハードディスクドライブ用のサスペンション。
【請求項9】
前記第2下部電極アイランド部の前記フィンガー部、前記第2中間電極アイランド部の前記フィンガー部、又はその両方は、前記PZT層、前記拘束層、又はその両方の不感帯領域を減少させるのに利用される、請求項8に記載のサスペンション。
【請求項10】
第1下部電極アイランド部と前記端子パッドとの間に配置されて、(i)前記第1マイクロアクチュエータの第1端部を前記第1取付領域に機械的に連結すること、並びに(ii)前記第1下部電極アイランド部と前記端子パッド、及び前記第2下部電極アイランド部の前記フィンガー部と前記端子パッドを電気的に接続することに利用される、第1量の電気伝導性接着剤をさらに含む、請求項8に記載のサスペンション。
【請求項11】
前記第3下部電極アイランド部と前記グランドパッドとの間に配置されて、(i)前記第1マイクロアクチュエータの第2端部を前記第2取付領域に機械的に連結すること、並びに(ii)前記第3下部電極アイランド部と前記グランドパッドとを電気的に接続することに利用される、第2量の電気伝導性接着剤をさらに含む、請求項10に記載のサスペンション。
【請求項12】
前記PZT層は、アクチュエーション電圧を受けて膨張するように構成され、前記拘束層は、前記アクチュエーション電圧を受けて収縮するように構成される、請求項8に記載のサスペンション。
【請求項13】
圧電(「PZT」)層と、
拘束層と、
前記PZT層の底面に配置されるとともに、前記フレクシャの前記導電層の第2グランドパッドに電気的に接続された第1下部電極アイランド部、主要部と前記主要部から前記PZT層の第2端部に向かって延出するフィンガー部とを含む第2下部電極アイランド部、及び前記フレクシャの前記導電層の第2電源トレースの第2端子パッドに電気的に接続された第3下部電極アイランド部を含む、下部電極層と、
前記PZT層の上面と前記拘束層の底面との間に配置されるとともに、第1中間電極アイランド部、及び主要部と前記主要部から前記PZT層の前記第2端部に向かって延出するフィンガー部とを含む第2中間電極アイランド部を含む、中間電極層と、
前記拘束層の上面に配置された上部電極層とを備えた、第2マイクロアクチュエータをさらに含む、請求項8に記載のサスペンション。
【請求項14】
前記PZT層は、前記第1下部電極アイランド部と前記第1中間電極アイランド部とを電気的に接続するように構成された第1電気ビアと、前記第3下部電極アイランド部と前記第2中間電極アイランド部とを電気的に接続するように構成された第2電気ビアとを含む、請求項13に記載のサスペンション。
【請求項15】
前記拘束層は、前記第1中間電極アイランド部と前記上部電極とを電気的に接続するように構成された第3電気ビアを含む、請求項13に記載のサスペンション。
【請求項16】
アクチュエーション電圧を受けて、(i)前記第1マイクロアクチュエータの前記PZT層と前記第2マイクロアクチュエータの前記拘束層とは膨張するように構成され、(ii)前記第2マイクロアクチュエータの前記PZT層と前記第1マイクロアクチュエータの前記拘束層とは収縮するように構成される、請求項13に記載のサスペンション。
【請求項17】
前記第1マイクロアクチュエータの前記PZT層と、前記第1マイクロアクチュエータの前記拘束層と、前記第2マイクロアクチュエータの前記PZT層と、前記第2マイクロアクチュエータの前記拘束層とは、実質的に同じ方向に分極される、請求項13に記載のサスペンション。
【請求項18】
前記PZT層は、アクチュエーション電圧を受けて収縮するように構成され、前記拘束層は、前記アクチュエーション電圧を受けて膨張するように構成される、請求項8に記載のサスペンション。
【請求項19】
アクチュエーション電圧を受けて、(i)前記第1マイクロアクチュエータの前記PZT層と前記第2マイクロアクチュエータの前記拘束層とは収縮するように構成され、(ii)前記第2マイクロアクチュエータの前記PZT層と前記第1マイクロアクチュエータの前記拘束層とは膨張するように構成される、請求項13に記載のサスペンション。
【請求項20】
層マイクロアクチュエー組立体であって、
圧電(「PZT」)層と、
拘束層と、
前記PZT層の底面に配置されて、第1下部電極アイランド部、及び第1主要部と前記第1主要部から前記多層マイクロアクチュエー組立体の第1端部に向かって延出する第1フィンガー部とを含む第2下部電極アイランド部を含む、下部電極層と、
前記PZT層の上面と前記拘束層の底面との間に配置された中間電極層と、
前記拘束層の上面に配置された上部電極層と、
前記上部電極に連結して、前記上部電極に対して実質的に直交する方向に前記下部電極層に向かって延出する第1側方端部電極と、
前記第1下部電極アイランド部に連結して、前記第1下部電極アイランド部に対して実質的に直交する方向に前記上部電極層に向かって延出するとともに、前記第1下部電極アイランド部と前記中間電極層とを電気的に接続するように構成された第2側方端部電極と、を備えた多層マイクロアクチュエー組立体。
【請求項21】
第1フィンガー部は、記PZT層、前記拘束層、又はその両方の不感帯領域を減少させるのに利用される、請求項20に記載の多層マイクロアクチュエータ組立体
【請求項22】
前記拘束層は能動拘束層構造である、請求項20に記載の多層マイクロアクチュエータ組立体
【請求項23】
前記多層マイクロアクチュエータ組立体に印加されるアクチュエーション電圧を受けて、前記PZT層が膨張するように構成され、前記拘束層が収縮するように構成される、請求項21に記載の多層マイクロアクチュエータ組立体
【請求項24】
前記多層マイクロアクチュエータ組立体に印加されるアクチュエーション電圧を受けて、前記PZT層が収縮するように構成され、前記拘束層が膨張するように構成される、請求項20に記載の多層マイクロアクチュエータ組立体
【請求項25】
前記PZT層は、前記第1側方端部電極と前記下部電極層の前記第2下部電極アイランド部との電気的分離の維持に利用されるベベルを含む、請求項20に記載の多層マイクロアクチュエータ組立体
【請求項26】
ディンプルを含むロードビームと、
前記ロードビームに連結されたフレクシャと、
第1マイクロアクチュエータとを備え、
前記フレクシャは、スライダ取付領域と第1取付領域と第2取付領域とを含むばね金属層、絶縁層、及びモータ電源トレースとグランドパッドとを含む導電層を備え、前記スライダ取付領域は前記ロードビームの前記ディンプルを係合するための荷重点位置を有し、前記モータ電源トレースは端子パッドを含み、
前記第1マイクロアクチュエータは、
圧電(「PZT」)層と、
拘束層と、
前記PZT層の底面に配置されるとともに、前記グランドパッドに電気的に接続された第1下部電極アイランド部、及び前記端子パッドに電気的に接続された第2下部電極アイランド部を含む、下部電極層と、
前記PZT層の上面と前記拘束層の底面との間に配置された中間電極層と、
前記拘束層の上面に配置された上部電極層と、
前記上部電極に連結して、前記上部電極に対して実質的に直交する方向に前記下部電極層に向かって延出するとともに、第1量の導電性接着剤を介して前記端子パッドに電気的に接続された第1側方端部電極と、
前記第1下部電極アイランド部に連結して、前記第1下部電極アイランド部に対して実質的に直交する方向に前記上部電極層に向かって延出する第2側方端部電極と、を備えたハードディスクドライブ用のサスペンション。
【請求項27】
前記第1マイクロアクチュエータの前記PZT層は、前記第1側方端部電極と前記下部電極層の前記第2下部電極アイランド部との電気的分離の維持に利用されるベベルを含む、請求項26に記載のサスペンション。
【請求項28】
前記第1量の導電性接着剤は、前記第1マイクロアクチュエータの第1端部を前記第1取付領域に機械的に連結するのに利用される、請求項26に記載のサスペンション。
【請求項29】
前記第1下部電極アイランド部と前記グランドパッドとの間に配置されて、(i)前記第1マイクロアクチュエータの第2端部を前記第2取付領域に機械的に連結すること、並びに(ii)前記第1下部電極アイランド部と前記グランドパッド、及び前記第2側方端部電極と前記グランドパッドを電気的に接続することに利用される、第2量の電気伝導性接着剤をさらに含む、請求項26に記載のサスペンション。
【請求項30】
前記PZT層は、アクチュエーション電圧を受けて膨張するように構成され、前記拘束層は、前記アクチュエーション電圧を受けて収縮するように構成される、請求項26に記載のサスペンション。
【請求項31】
圧電(「PZT」)層と、
拘束層と、
前記PZT層の底面に配置されるとともに、前記フレクシャの前記導電層の第2電源トレースの第2端子パッドに電気的に接続された第1下部電極アイランド部、及び前記フレクシャの前記導電層の第2グランドパッドに電気的に接続された第2下部電極アイランド部を含む、下部電極層と、
前記PZT層の上面と前記拘束層の底面との間に配置された中間電極層と、
前記拘束層の上面に配置された上部電極層と、
前記上部電極に連結して、前記上部電極に対して実質的に直交する方向に前記下部電極層に向かって延出する第1側方端部電極と、
前記第1下部電極アイランド部に連結して、前記第1下部電極アイランド部に対して実質的に直交する方向に前記上部電極層に向かって延出するとともに、前記第1下部電極アイランド部と前記中間電極層とを電気的に接続するように構成された第2側方端部電極と、を備えた第2マイクロアクチュエータをさらに含む、請求項26に記載のサスペンション。
【請求項32】
アクチュエーション電圧を受けて、(i)前記第1マイクロアクチュエータの前記PZT層と前記第2マイクロアクチュエータの前記拘束層とは膨張するように構成され、(ii)前記第2マイクロアクチュエータの前記PZT層と前記第1マイクロアクチュエータの前記拘束層とは収縮するように構成される、請求項31に記載のサスペンション。
【請求項33】
前記第1マイクロアクチュエータの前記PZT層と、前記第1マイクロアクチュエータの前記拘束層と、前記第2マイクロアクチュエータの前記PZT層と、前記第2マイクロアクチュエータの前記拘束層とは、実質的に同じ方向に分極される、請求項32に記載のサスペンション。
【請求項34】
前記PZT層は、アクチュエーション電圧を受けて収縮するように構成され、前記拘束層は、前記アクチュエーション電圧を受けて膨張するように構成される、請求項26に記載のサスペンション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2018年1月25日に出願した米国仮特許出願第62/621,990号の優先権を主張し、その全てが言及によって本明細書に援用される。
【0002】
[本開示の技術分野]
本開示は、一般にディスクドライブへッドサスペンション及びフレクシャに関し、より具体的にはサスペンション及びフレクシャのための多層マイクロアクチュエーション組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスクドライブヘッドサスペンションは、回転磁気ディスクとの間でメディアを読み書きするハードディスクドライブ(「HDD」)に使用されている。サスペンションは、複数のサスペンションと磁気読み取り/書き込みヘッド(「スライダ」として既知である)とを備えたヘッドジンバル組立体(「HGA」)の部品である。スライダには、回転磁気ディスクの1つに対してメディアを読み取って書き込むトランスデューサを含む。ディスクドライブヘッドサスペンションには、例えばフレクシャ、ロードビーム、ベース板、及び1つ以上のアクチュエーションモータを含む各種部品を備えることができる。一般に、アクチュエーションモータは、HDDの全体的な性能を向上させるため、回転磁気ディスク上方でスライダを精度よく位置決めするために使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HDD業界の要求に応えるため、改良されたディスクドライブヘッドサスペンションが引き続き必要とされている。効率的に製造可能でありながらも性能を高めたサスペンションが望まれている。本開示は、これらの課題及び他の課題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の実施形態において、ハードディスクドライブサスペンション用の多層マイクロアクチュエータには、圧電(「PZT」)層と、拘束層と、下部電極層と、中間電極層と、上部電極層とを含む。下部電極層は、PZT層の底面に配置され、第1下部電極アイランド部と第2下部電極アイランド部と第3下部電極アイランド部とを含む。第2下部電極アイランド部はフィンガー部と主要部とを含み、フィンガー部は主要部からPZT層の第1端部に向かって延出する。中間電極層は、PZT層の上面と拘束層の底面との間に配置され、第1中間電極アイランド部と第2中間電極アイランド部とを含む。第2中間電極アイランド部はフィンガー部と主要部とを含み、フィンガー部は主要部からPZT層の第1端部に向かって延出する。上部電極層は、拘束層の上面に配置されている。
【0006】
他の実施形態において、ハードディスクドライブ用のサスペンションは、ロードビームと、フレクシャと、マイクロアクチュエータとを含む。ロードビームはディンプルを含む。フレクシャはロードビームに連結され、ばね金属層と、絶縁層と、導電層とを含む。ばね金属層には、スライダ取付領域と、第1取付領域と、第2取付領域とを含む。スライダ取付領域には、ロードビームのディンプルを係合するための荷重点位置がある。導電層は電源トレースとグランドパッドとを含み、モータ電源トレースは端子パッドを含む。マイクロアクチュエータには、圧電(「PZT」)層と、拘束層と、下部電極層と、中間電極層と、上部電極層とを含む。下部電極層は、PZT層の底面に配置され、第1下部電極アイランド部と第2下部電極アイランド部と第3下部電極アイランド部とを含む。第1下部電極アイランド部は端子パッドに電気的に接続する。第2下部電極アイランド部はフィンガー部と主要部とを含み、フィンガー部は主要部からPZT層の第1端部に向かって延出する。第3下部電極アイランド部はグランドパッドに電気的に接続する。中間電極層は、PZT層の上面と拘束層の底面との間に配置されている。中間電極層は、第1中間電極アイランド部と第2中間電極アイランド部とを含む。第2中間電極アイランド部はフィンガー部と主要部とを含み、フィンガー部は主要部からPZT層の第1端部に向かって延出する。上部電極層は、拘束層の上面に配置されている。
【0007】
他の実施形態において、ハードディスクドライブサスペンション用の多層マイクロアクチュエーション組立体には、圧電(「PZT」)層と、拘束層と、下部電極層と、中間電極層と、上部電極層と、第1側方端部電極と、第2側方端部電極とを含む。下部電極層は、PZT層の底面に配置され、第1下部電極アイランド部と第2下部電極アイランド部とを含む。第2下部電極アイランド部は主要部とフィンガー部とを含み、フィンガー部は主要部から多層マイクロアクチュエーション組立体の第1端部に向かって延出する。中間電極層は、PZT層の上面と拘束層の底面との間に配置されている。上部電極層は、拘束層の上面に配置されている。第1側方端部電極は上部電極に連結し、上部電極に対して実質的に直交する方向に下部電極層に向かって延出する。第2側方端部電極は第1下部電極アイランド部に連結し、第1下部電極アイランド部に対して実質的に直交する方向に上部電極層に向かって延出する。第2側方端部電極は第1下部電極アイランド部と中間電極層とを電気的に接続するように構成される。
【0008】
他の実施形態において、ハードディスクドライブ用のサスペンションは、ロードビームと、フレクシャと、マイクロアクチュエータとを含む。ロードビームはディンプルを含む。フレクシャはロードビームに連結され、ばね金属層と、絶縁層と、導電層とを含む。ばね金属層には、スライダ取付領域と、第1取付領域と、第2取付領域とを含む。スライダ取付領域には、ロードビームのディンプルを係合するための荷重点位置がある。導電層は電源トレースとグランドパッドとを含み、モータ電源トレースは端子パッドを含む。マイクロアクチュエータには、圧電(「PZT」)層と、拘束層と、下部電極層と、中間電極層と、上部電極層と、第1側方端部電極と、第2側方端部電極とを含む。下部電極層はPZT層の底面に配置され、グランドパッドに電気的に接続された第1下部電極アイランド部と、端子パッドに電気的に接続された第2下部電極アイランド部とを含む。中間電極層は、PZT層の上面と拘束層の底面との間に配置されている。上部電極層は、拘束層の上面に配置されている。第1側方端部電極は上部電極に連結し、上部電極に対して実質的に直交する方向に下部電極層に向かって延出する。第1側方端部電極は、第1量の導電性接着剤を介して端子パッドに電気的に接続する。第2側方端部電極は第1下部電極アイランド部に連結し、第1下部電極アイランド部に対して実質的に直交する方向に上部電極層に向かって延出する。
【0009】
上述の本開示の概要は、本開示の各実施形態又はすべての態様を表すことを意図するものではない。本開示のさらなる特徴及び有利性は、以下に示す詳細な説明及び図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、サスペンションとスライダとを含むヘッドジンバル組立体の部分的平面図である。
図2A図2Aは、図1におけるサスペンションの第1マイクロアクチュエータの断面図である。
図2B図2Bは、図1におけるサスペンションの第2マイクロアクチュエータの断面図である。
図3図3は、実施形態における多層マイクロアクチュエータ組立体の部分的断面図である。
図4A図4Aは、図3に示す実施形態における多層マイクロアクチュエータ組立体の断面図である。
図4B図4Bは、サスペンションに連結された、実施形態における第2多層マイクロアクチュエータ組立体の断面図である。
図5図5は、図1のサスペンションに連結された、実施形態におけるマイクロアクチュエータの断面図である。
図6図6は、図1のサスペンションに連結された、実施形態における多層マイクロアクチュエータ組立体の断面図である。
【0011】
本開示は様々な変形及び代替形態を許容するが、特定の実施形態が一例として図面に示され、本明細書に詳細に記載されている。しかしながら、本開示は開示の特定の形態に限定されることを意図しないということが理解される必要がある。そうではなく、本開示は、本開示の趣旨及び範囲に該当するすべての変形、同等形、及び代替形を網羅するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、サスペンションとスライダとを備えたヘッドジンバル組立体の部分的平面図である。図1に示すように、ヘッドジンバル組立体(「HGA」)はスライダ2とサスペンション10とを備える。一般に、HGA1は、1と0の磁化パターンを含んだ1つ以上の回転磁気ディスクにデータを記録及び/又は再生する情報記憶デバイスであるハードディスクドライブ(「HDD」)の部品として使用される。一般に、サスペンション10は、HDDにおいて組み立てると、アクチュエータアームに連結され、そして該アクチュエータアームは、ヘッドスライダ2を回転磁気ディスク上方で正確に位置決めするためにサスペンション10を動かすボイスコイルモータに連結されている。
【0013】
図示するように、サスペンション10は、ロードビーム12と、フレクシャ20と、第1マイクロアクチュエータ100と、第2マイクロアクチュエータ200とを備える。ロードビーム12は、例えばステンレス鋼などの1つ以上の金属材料から作製される実質的に剛性のある構造である。ロードビーム12には、近位端部14と遠位端部16とがある。ロードビーム12は、本明細書に記載するように、スライダ2がサスペンション10に対して前後左右に揺れることを可能にするディンプルをさらに含む。このスライダ2の動きにより、スライダ2が回転磁気ディスク上のデータトラックに追従可能になり、回転磁気ディスク表面の振動又は不規則性に対応する。
【0014】
また、サスペンション10は、近位端部14に隣接してロードビーム12に連結されたベース板も備える。ベース板は、例えば溶接などの種々の手段を使用してロードビーム12に連結することができる。さらに、ベース板は、例えばステンレス鋼などの1つ以上の金属材料から作製される。組立HDD又はヘッドスタックアセンブリにおいて、ベース板はアクチュエータアームに連結又は「据え込み加工」される。
【0015】
図1及び図2A図2Bに示すように、フレクシャ20は、ばね金属層22と、絶縁層38と、導電層40とを含む。フレクシャ20は、一般に、プリアンプ回路などの他のハードディスクドライブ回路部品にスライダ2を電気的に接続するために使用される。フレクシャ20は、例えばフレクシャ20のばね金属層22をロードビーム12に溶接するなどの種々の手段を使用してロードビーム12に連結することができる。
【0016】
ばね金属層22は、主要部24と、第1支持アーム部26aと、第2支持アーム部26bと、第1リンケージ部材28aと、第2リンケージ部材28bと、スライダ取付領域34とを含む。ばね金属層22は、例えばステンレス鋼などの1つ以上の金属材料から作製される。
【0017】
図示するように、第1支持アーム部26aと第2支持アーム部26bとは、主要部24から、ロードビーム12の遠位端部16に隣接するフレクシャの遠位端部に向かって延出する。第1リンケージ部材28aは、第1リンケージ部材28aが第1支持アーム部26aと第2支持アーム部26bとの間に配置されるように、第1支持アーム部26aから内方にフレクシャ20の長手方向軸に向かって延出する。同様に、第2リンケージ部材28bは、第2支持アーム部26bと第1支持アーム部26aとの間に配置されるように、第2支持アーム部26bから実質的にフレクシャ20の長手方向軸に向かって延出する。スライダ取付領域34は、第1リンケージ部材28aと第2リンケージ部材28bとに連結され、実質的にスライダ2を支持するように使用される。スライダ取付領域34には、ロードビーム12のディンプルを係合するようにサイズを有し且つ形状をなす荷重点位置を含む。荷重点位置とロードビーム12のディンプルとが係合することで、スライダ取付領域34が支持アーム部26a、26bに対して動くことが可能である。リンケージ部材28a、28bの対応する動きは、スライダ取付領域34の動き、つまりスライダ2の対応する動きを制御するように使用することができる。
【0018】
第1リンケージ部材28aは第1遠位取付領域30aを含み、主要部24は第1近位取付領域32aを含む。図1のサスペンションの第1マイクロアクチュエータの断面図を示す図2Aに良好に示すように、第1遠位取付領域30aが第1近位取付領域32aから離間することで、ばね金属層22の第1アクチュエータ開口部31aを画定する。本明細書に記載するように、第1遠位取付領域30aと第1近位取付領域32aとは、第1マイクロアクチュエータ100を支持するために使用される。同様に、第2リンケージ部材28bは第2遠位取付領域30bを含み、主要部24は第2近位取付領域32bを含む。図1のサスペンションの第2マイクロアクチュエータの断面図を示す図2Bに良好に示すように、第2遠位取付領域30bが第2近位取付領域32bから離間することで、ばね金属層22の第2アクチュエータ開口部31bを画定する。本明細書に記載するように、第2遠位取付領域30bと第2近位取付領域32bとは、第2マイクロアクチュエータ200を支持するために使用される。ばね金属層22は、第1マイクロアクチュエータ100、第2マイクロアクチュエータ200、又はその両方の支持に利用するため他の構造(例えばスライダ取付領域34又は主要部24)から延出する部分(例えばタブ)をさらに含むことができる。
【0019】
絶縁層38はばね金属層22の少なくとも一部上に形成されており、導電層40(図2A及び図2B)は絶縁層38の一部上に形成されて、第1群のトレース42a(図1)と第2群のトレース42b(図1)とを含む。一般に、第1群のトレース42a及び第2群のトレース42bの各トレースは、フレクシャ20の長さに沿って電流(例えば信号)を流すものである。第1群のトレース42a及び第2群のトレース42bの複数のトレースは、テール端子とスライダ接合端子とを含む。各トレースのテール端子は、フレクシャ20のテール領域に配置され、(例えば超音波接合によって)プリアンプ回路、又はHGA1がHDDに組み入れられるときは他のHDD回路部品に接合することができる。各トレースのスライダ接合端子は、ロードビーム12の遠位端部16に実質的に隣接するフレクシャ20のジンバル領域に配置され、スライダ2がスライダ取付領域34に連結されると(例えばはんだ付けによって)スライダ2の端子に接合することができる。
【0020】
第1群のトレース42aは、第1電源トレース44aを含む5つのトレースを含む。第1電源トレース44aは第1端子パッド46aで終端する。図2Aに良好に示すように、第1端子パッド46aは第1近位取付領域32aの上方の絶縁層38上に形成される。第1群のトレース42aにおける他の4つのトレースは、スライダ2からの読み取り信号若しくはスライダ2への書き込み信号を流すために使用することができるか、又はグランドトレースとして使用することができる。同様に、第2群のトレース42bは、第2電源トレース44bを含む5つのトレースを含む。第2電源トレース44bは第2端子パッド46bで終端する。図2Bに良好に示すように、第2端子パッド46bは第2近位取付領域32bの上方の絶縁層38上に形成される。第2群のトレース42bにおける他の4つのトレースは、スライダ2からの読み取り信号若しくはスライダ2への書き込み信号を流すために使用することができるか、又はグランドトレースとして使用することができる。本明細書に記載するように、第1電源トレース44aと第2電源トレース44bとはそれぞれ、実質的に、第1マイクロアクチュエータ100と第2マイクロアクチュエータ200とに電源を供給するために使用される。
【0021】
第1群のトレース42a及び第2群のトレース42bは、例えば銅又は銅合金などの1つ以上の導電性材料から作製することができる。第1群のトレース42a及び第2群のトレース42bはそれぞれ(電源トレースを含む)5つのトレースを含むものとして示されるが、各群のトレースは、任意の目的(例えば、スライダ2への及びスライダ2からの読み取り信号を流す、スライダ2への及びスライダ2からの書き込み信号を流す、1つ以上のグランドトレースなど)で使用され得る、任意の適切な数のトレース(例えば6つのトレース、8つのトレース、20個のトレースなど)を含むことができる。さらに、第1群のトレース42a及び第2群のトレース42bは、同じ又は異なる数のトレースを含むことができる。第1群のトレース42a及び第2群のトレース42bは、例えば、アディティブ法、セミアディティブ法、又はサブトラクティブ法などの種々の方法を使用して絶縁層38上に形成することができる。第1群のトレース42a及び/又は第2群のトレース42bの外面は、めっき層(例えば、ニッケル、金、又はそれらの任意の組合せ)を含むことができる。
【0022】
また、導電層は、第1グランドパッド48aと第2グランドパッド48bとも含む。図2Aに良好に示すように、第1グランドパッド48aはフレクシャ20のばね金属層22の第1遠位取付領域30a上に形成される。同様に、図2Bに良好に示すように、第2グランドパッド48bはフレクシャ20のばね金属層22の第2遠位取付領域30b上に形成される。第1グランドパッド48a及び第2グランドパッド48bは、ばね金属層22と直接的に接触しているものとして示されるが、グランドパッドとばね金属層22との間には、介在する導電層を配置することができる。介在する導電層は、例えば、導電性材料(例えば、金、ニッケル、クロム、銅など、又はそれらの任意の組合せ)による1つ以上の電着層であってもよい。
【0023】
絶縁層38は、ばね金属層22と導電層40との電気的導電を阻止する(例えばばね金属層22と第1群のトレース42a及び/又は第2群のトレース42bとの電気的短絡を阻止する)、誘電性材料(例えばポリイミド)である。一部の実施形態において、フレクシャ20は、第1群のトレース42a、第2群のトレース42b、又はその両方の少なくとも一部上に形成されたカバー層を含む。絶縁層38のように、カバー層は、(例えば、他の部品との偶発的な物理的接触による)第1群のトレース42a及び第2群のトレース42bの電気的短絡の阻止に利用されて、フレクシャ20の取り扱い時(例えば、サスペンション10又はHGA1の組み立て時)における損傷からトレースを保護する誘電性材料(例えばポリイミド)である。絶縁層38とカバー層とは、同じ又は異なる誘電性材料であってもよい。
【0024】
上述のように、サスペンション10は、HDDに組み入れられると、ボイスコイルモータによって動かされて回転磁気ディスク上方でスライダ2の動きを制御する。第1マイクロアクチュエータ100と第2マイクロアクチュエータ200とは、スライダ2をより精度良く動かして、実質的にボイスコイルモータ単独よりもスライダ2の位置決めを微細に制御するために使用される。ボイスコイルモータとマイクロアクチュエータ100、200とはともにサスペンション10に対してスライダ2を動かすために使用されるので、こうしたサスペンションは一般に2段作動式(「DSA」)サスペンションと呼ばれている。さらに、サスペンション10はベース板に取り付けた1つ以上のマイクロアクチュエータを含むことができ、そうしたサスペンションは一般に3段作動式サスペンションと呼ばれている。
【0025】
図2Aに良好に示すように、第1マイクロアクチュエータ100には、圧電(「PZT」)素子層110と、拘束層120と、下部電極層130と、中間電極層142と、上部電極層152とを含む。アクチュエーション電圧が第1マイクロアクチュエータ100に印加されると、PZT素子層110は膨張又は収縮し、第1アクチュエータ開口部31aの長さを変化させて第1リンケージ部材28a、スライダ取付領域34、及びスライダ2を対応して動かす。PZT素子層110は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛から作製することができる。「PZT」という用語は、一般に圧電デバイスを指す省略語として用いられることがある。この省略用語は本明細書において使用されるが、「PZT」デバイスが厳密にチタン酸ジルコン酸鉛から作製されなくともよいということを理解する必要がある。
【0026】
本明細書に記載するように、第1マイクロアクチュエータ100は、(例えば、導電性接着剤又は他の任意の適切な接着剤を使用して)サスペンション10に連結される。PZT素子層110が膨張するとき、サスペンション10に直接隣接するPZT素子層110の下部分は、サスペンション10からさらに離れているPZT素子層110の上部分ほど膨張しない。これは、PZT素子層110の下部分が、第1マイクロアクチュエータ100とサスペンション10との接合により部分的に拘束されているためである。このように、PZT素子層110の上部分は下部分よりも膨張し、PZT素子層110は膨張時に曲げを生じる。この曲げにより、PZT素子層110の全体的な膨張(「ストローク長」と呼ばれることがある)が減少することになる。同様に、PZT素子層110が収縮するときも、PZT素子層110は曲がる。
【0027】
拘束層120は、部分的に拘束されたPZT素子層110の下部分によって生じる第1マイクロアクチュエータ100の曲げを低減、阻止、及び/又は制御するために使用される。拘束層120は、PZT素子層110の膨張又は収縮を部分的に阻止するとともにマイクロアクチュエータのストローク長を増大させる実質的に剛性又は硬質な層である。より具体的には、拘束層120は、PZT素子層110の膨張又は収縮によって生じる曲げと反対方向にマイクロアクチュエータ100を曲げるために使用することができる。また、拘束層120は、膨張/収縮又は他の圧力によって生じるPZT素子層110の機械的不良の可能性を低めるために使用することもできる。
【0028】
一部の実施形態において、拘束層120は、PZT素子層110と同じ又は類似の材料から作製される。これは、能動拘束層構造(active constraining layer construction)(「CLC」)と呼ばれることがある。そうした実施形態において、本明細書に記載するように、第1マイクロアクチュエータ100にアクチュエーション電圧を印加することで、PZT素子層110と拘束層120との反対の動きが生じる。例えば、アクチュエーション電圧によりPZT素子層110を膨張させると、拘束層120は収縮する。同様に、アクチュエーション電圧によりPZT素子層110を収縮させると、拘束層120は膨張する。
【0029】
図示するように、下部電極層130はPZT素子層110の底面に形成され、第1下部電極アイランド部132と第2下部電極アイランド部134と第3下部電極アイランド部140とを含む。第1下部電極アイランド部132は、第1マイクロアクチュエータ100の近位端部112に直接隣接して配置され、第3下部電極アイランド部140は、第1マイクロアクチュエータ100の遠位端部114に直接隣接して配置されている。第1下部電極アイランド部132と第2下部電極アイランド部134と第3下部電極アイランド部140とのそれぞれは、PZT分極処理のため各電極アイランド部が他のものから電気的に分離するように互いに離間している。下部電極層130は、例えば、ニッケル、クロム、金、銅、又はそれらの任意の組合せなどの導電性金属材料から作製することができる。さらに、下部電極層130は、例えば、スパッタリング又は他の堆積処理などの種々の手段によってPZT素子層110の底面に形成することができる。
【0030】
中間電極層142は、PZT素子層110と拘束層120との間に配置され、第1中間電極アイランド部144と第2中間電極アイランド部146とを含む。第1中間電極アイランド部144は、第1マイクロアクチュエータ100の近位端部112に直接隣接して配置されているという点で、上述の第1下部電極アイランド部132と類似する。図示するように、第1中間電極アイランド部144は、第1下部電極アイランド部132と実質的に一致するが、第1下部電極アイランド部132からオフセットされるか又は離間することができる。第2中間電極アイランド部146は、第1中間電極アイランド部144と離間するという点で第2下部電極アイランド部134と類似するが、第2中間電極アイランド部146は第1マイクロアクチュエータ100の遠位端部114から近位端部112に向かって延出する。中間電極層142は、下部電極層130と同じ又は異なる材料から作製することができる。さらに、中間電極層142は、例えば、スパッタリング又は他の堆積処理などの種々の手段を使用してPZT素子層110の上面又は拘束層120の底面に形成することができる。
【0031】
図示するように、上部電極層152は、拘束層120の上面に配置されている。互いに離間した複数の電極アイランド部を含む下部電極層130や中間電極層142とは異なり、上部電極層152は、PZT素子層110の遠位端部114から近位端部112に延出する。上部電極層152は、中間電極層142及び/又は下部電極層130と同じ又は異なる材料から作製することができる。さらに、上部電極層152は、例えば、スパッタリング又は他の堆積処理などの種々の手段を使用して拘束層120の上面に形成することができる。
【0032】
図2Aに示すように、フレクシャ20は、第1マイクロアクチュエータ100をサスペンション10のフレクシャ20に連結するために使用される第1量の導電性接着剤170と第2量の導電性接着剤172とを含む。第1量の導電性接着剤170は、第1電源トレース44a(図1)の第1端子パッド46aの少なくとも一部を覆うように、絶縁層38上に配置されている。図示するように、下部電極層130の第1下部電極アイランド部132と第2下部電極アイランド部134とは、第1量の導電性接着剤170内に配置される、及び/又は第1量の導電性接着剤170に接触する。第1量の導電性接着剤170と第2量の導電性接着剤172とは、第1マイクロアクチュエータ100をフレクシャ20のばね金属層22の第1遠位取付領域30aと第1近位取付領域32aとに機械的に連結する。第1量の導電性接着剤170は、第1下部電極アイランド部132を第1端子パッド46aに電気的に接続し、また、第2下部電極アイランド部134を第1端子パッド46aに電気的に接続する。図示するように、第1量の導電性接着剤170は、第1下部電極アイランド部132と第2下部電極アイランド部134とがともに第1量の導電性接着剤170に接触しているように、十分に幅広いものである。第2量の導電性接着剤172は、第3下部電極アイランド部140を第1グランドパッド48aに電気的に接続する。
【0033】
第1量の導電性接着剤170と第2量の導電性接着剤172とは、例えば、電気伝導性エポキシであってもよい。電気伝導性エポキシは、エポキシ量において電気伝導性を可能にするのに利用される導電性フィラー粒子を含むことができる。導電性フィラー粒子は、例えば、銀粒子、金粒子、ニッケル粒子、若しくはクロム粒子など、又は任意のそれらの組合せであってもよい。
【0034】
PZT素子層110は、第1電気ビア160と第2電気ビア162とを含む。第1電気ビア160は、下部電極層130の第1下部電極アイランド部132と中間電極層142の第1中間電極アイランド部144とを電気的に接続する。第1電気ビア160は、PZT素子層110に形成された貫通孔と貫通孔に配された導電性材料のカラムとを含む。貫通孔はまた、貫通孔によって画定される壁部に形成されたスパッタリング金属層(例えば銅及び/又はクロム)を含むこともできる。スパッタリング金属層は、第1電気ビア160を形成するため、貫通孔に導電性材料のカラムを形成するのに利用するために使用することができる。導電性材料のカラムは、第1下部電極アイランド部132と第1中間電極アイランド部144とに連結する及び/又は接触して、下部電極層130と中間電極層142との間を電気的に接続する。上述のように、第1下部電極アイランド部132は第1端子パッド46aに電気的に接続されているので、第1電気ビア160は、第1中間電極アイランド部144と第1端子パッド46aとを電気的に接続する。図2Aの断面図は、第1下部電極アイランド部132と第1中間電極アイランド部144との間の第1電気ビア160のみを示すが、任意の適切な数の電気ビアを2つの電極アイランド部の間に配置してもよい(例えば、2つの電気ビア、3つの電気ビア、5つの電気ビアなど)。
【0035】
第2電気ビア162は、上述の第1電気ビア160と同じ又は類似するものであり、第3下部電極アイランド部140と第2中間電極アイランド部146とを電気的に接続する。上述のように、第3下部電極アイランド部140は、第2量の導電性接着剤172を介して第1グランドパッド48aに電気的に接続されているので、第2電気ビア162は、第2中間電極アイランド部146と第1端子パッド46aとを電気的に接続する。図2Aの断面図は、第3下部電極アイランド部140と第2中間電極アイランド部146との間の第2電気ビア162を示すが、2つの電極アイランド部の間に配置される任意の数の電気ビアも可能である(例えば、2つの電気ビア、3つの電気ビア、5つの電気ビアなど)。
【0036】
第3電気ビア164は、第1電気ビア160及び第2電気ビア162と同じ又は類似するものであり、第1中間電極アイランド部144と上部電極層152とを電気的に接続する。第1電気ビア160や第2電気ビア162のように、第3電気ビア164は拘束層120の貫通孔と導電性材料のカラムとを含む。上述のように、第1端子パッド46a、第1量の導電性接着剤170、第1下部電極アイランド部132、第1電気ビア160、及び第1中間電極アイランド部144は電気的に接続されているので、第3電気ビア164は、第1マイクロアクチュエータ100において上部電極層152を第1端子パッド46aへと電気的に接続する。
【0037】
PZT素子層110は矢印A1の方向に分極される。同様に、拘束層120は、矢印A1と実質的に同じ方向である矢印A2の方向に分極される。分極は、所定の時間、PZT素子層110及び/又は拘束層120にDC電圧を印加して、永久双極子構成を生じさせることを意味する。一般に、電位差が与えられたPZT素子層110と拘束層120との領域にのみ分極が起こる。分極されない他の領域は、不感帯領域と呼ばれることがある。通常、これらの不感帯領域は、マイクロアクチュエータ100の近位端部112と遠位端部114とに隣接してより頻繁に生じる。活性化電圧がマイクロアクチュエータに印加されると、分極された領域は所望の動きを生じる(例えば膨張又は収縮)一方で、不感帯領域には生じない。これらの不感帯領域は、マイクロアクチュエータの動きを阻止する(例えばストローク長の減少をもたらす)ので望ましくない。
【0038】
上述のように、第1電源トレース44aは第1端子パッド46aに電流を供給する。この電流は、種々の部品を介して上部電極層152に流れ、また第2下部電極アイランド部134にも流れる。図示するように、上部電極層152は電圧Vを有し、第2下部電極アイランド部134も電圧Vを有する。一方で、第2中間電極層146は電気的にグランド接続されている。第2中間電極層146とのこの電位差が、PZT素子層110及び/又は拘束層120の動きを生じさせるアクチュエーション電圧となる。アクチュエーション電圧は、矢印A1及び矢印A2で示す分極方向と実質的に平行に印加されるので、正常なひずみが起こる。より具体的には、図示する構成において、PZT素子層110は膨張して、拘束層120は収縮する。
【0039】
図2Bを参照すると、マイクロアクチュエータ200は、第1マイクロアクチュエータ100と同じ又は類似するものであり、圧電(「PZT」)素子層210と、拘束層220と、下部電極層230と、中間電極層242と、上部電極層252とを含む。アクチュエーション電圧が第2マイクロアクチュエータ200に印加されると、PZT素子層210は膨張又は収縮し、第2アクチュエータ開口部31bの長さを変化させて、第2リンケージ部材28b、スライダ取付領域34、及びスライダ2を対応して動かす。
【0040】
PZT素子層210及び拘束層220は、上述されたPZT素子層110及び拘束層120と同じ又は類似するものである。同様に、下部電極層230は、第1下部電極アイランド部232と第2下部電極アイランド部234と第3下部電極アイランド部240とを含むという点で下部電極層130と同じ又は類似するものである。中間電極層242は、第1中間電極アイランド部244と第2中間電極アイランド部246とを含むという点で中間電極層142と同じ又は類似するものである。
【0041】
図示するように、第2マイクロアクチュエータ200は、第1マイクロアクチュエータ100と同じ又は類似する方法でサスペンション10のフレクシャ20に連結される。より具体的には、第2マイクロアクチュエータ200をフレクシャ20に連結するために、第1量の導電性接着剤270と第2量の導電性接着剤272とを使用する。
【0042】
PZT素子層110のように、PZT素子層210は、第1電気ビア160及び第2電気ビア162と同じ又は類似するものである第1電気ビア260及び第2電気ビア262を含む。第1電気ビア260は、下部電極層230の第1下部電極アイランド部232と中間電極層242の第1中間電極アイランド部244とを電気的に接続する。第2電気ビア262は、第2中間電極アイランド部246を第3下部電極アイランド部240に電気的に接続する。拘束層220は、第3電気ビア164と同じ又は類似するとともに、第1中間電極アイランド部244と上部電極層252とを電気的に接続する第3電気ビア264を含む。
【0043】
PZT素子層210は、実質的に矢印A1の反対方向である矢印B1の方向に分極されるという点で、PZT素子層110とは異なる。同様に、拘束層220は、実質的に矢印B1と同じ方向である矢印B2の方向に分極されるという点で、拘束層120とは異なる。
【0044】
第2電源トレース44b(図1)は第2端子パッド46bに電流を供給する。この電流は、種々の部品を介して上部電極層252に流れ、また第2下部電極アイランド部234にも流れる。図示するように、上部電極層252は電圧Vを有し、第2下部電極アイランド部234も電圧Vを有する。一方で、第2中間電極層246は電気的にグランド接続される。この電位差が、PZT素子層210及び/又は拘束層220の動きを生じさせるアクチュエーション電圧となる。アクチュエーション電圧は、矢印B1及び矢印B2で示す分極方向と実質的に平行に印加されるので、正常なひずみが起こる。この構成において、PZT素子層210は収縮して、拘束層220は膨張する。
【0045】
上述するように、第1マイクロアクチュエータ100と第2マイクロアクチュエータ200との対応する動きは、第1リンケージ部材28aと第2リンケージ部材28bとの動きを生じさせ、これがスライダ取付領域34の動きを生じさせる。荷重点位置及びロードビーム12のディンプル周りでスライダ2を動かすために、第1マイクロアクチュエータ100と第2マイクロアクチュエータ200とは共に動作してスライダ2を押し引きする。第1マイクロアクチュエータ100のPZT素子層110と拘束層120とは、第2マイクロアクチュエータ200のPZT素子層210と拘束層220と実質的に反対方向に分極されるので、この実施例において、第1マイクロアクチュエータ100は実質的に膨張する一方、第2マイクロアクチュエータ200は実質的に収縮する。この反対の動きがサスペンション10に対するスライダ2の回転を生じさせて、回転磁気ディスク上でスライダ2の精度のよい位置決めを行う。第1マイクロアクチュエータ100と第2マイクロアクチュエータ200との層が同じ方向に分極された場合、第1マイクロアクチュエータ100と第2マイクロアクチュエータ200とは同じ方向に動いて(例えばともに実質的に膨張する)、スライダ2の所望の動きを得られないであろう。
【0046】
図3は、実施形態における多層マイクロアクチュエータ組立体の部分的断面図である。図3に示すように、第1マイクロアクチュエータ300には、圧電(「PZT」)素子層310と、拘束層320と、下部電極層330と、中間電極層342と、上部電極層352とを含む。PZT素子層310は、第1電気ビア360と第2電気ビア362とを含む。同様に、拘束層320は第3電気ビア364を含む。
【0047】
拘束層320とPZT素子層310とはほぼ同じ厚みであるように示されるが、拘束層320は、PZT素子層310よりも大きくともよく(例えばより厚みがある)、又はPZT素子層310よりも小さくともよい(例えばより薄い)。例えば、マイクロアクチュエータが段差形状を有するように、拘束層320の長さがPZT素子層310の長さよりも短くともよい。PZT素子層310と拘束層320とは、例えば、拘束層320をPZT素子層310に連結すること(例えば接着剤を使用して)、又はアディティブ法を用いて拘束層320をPZT素子層310上に形成することなどで、種々の方法を使用して作製することができる。一部の実施形態において、拘束層320は、例えばステンレス鋼、非分極(非活性化)圧電材料、ポリマー(例えばシリコン)、任意の他の適切な材料、又は任意のそれらの組合せから作製された受動拘束層構成であってもよい。
【0048】
下部電極層330は、第1下部電極アイランド部332と第2下部電極アイランド部334と第3下部電極アイランド部340とを含む。第2下部電極アイランド部334は、主要部336とフィンガー部338とを含む。フィンガー部338は、主要部336からPZT素子層310の近位端部312に向かって延出する。図示するように、主要部336とフィンガー部338とは実質的に長方形状であるが、他の形状も可能である。全体として、主要部336とフィンガー部338との形状及びサイズにより、第2下部電極アイランド部334が略「L字」状になる。
【0049】
第2下部電極アイランド部334のフィンガー部338と第1下部電極アイランド部332とは、第2下部電極アイランド部334と第1下部電極アイランド部332とが互いに電気的に分離するように互いに離間している。同様に、主要部336と第1下部電極アイランド部332とは互いに離間している。図示するように、フィンガー部338は、主要部336から完全にPZT素子層310の近位端部312まで延出する。あるいは、フィンガー部338は、フィンガー部338と第1下部電極アイランド部332とがいくらか重なり合う程度にPZT素子層310の近位端部312から離間するように、主要部336から延出することができる。
【0050】
中間電極層342は、第1中間電極アイランド部344と第2中間電極アイランド部346とを含むという点で中間電極層142と類似するものである。しかしながら、第2中間電極アイランド部146とは異なり、第2中間電極アイランド部346は主要部348とフィンガー部350とを含む。主要部348は、PZT素子層310の遠位端部314から近位端部312に向かって延出する。フィンガー部350は、主要部348から近位端部312に延出する。主要部348とフィンガー部350とは、第1中間電極アイランド部344から離間している。図示するように、主要部348とフィンガー部350とは実質的に長方形状であるが、他の形状も可能である。全体として、主要部348とフィンガー部350との形状及びサイズにより、第2中間電極アイランド部346が略「L字」状になる。
【0051】
図4Aは、図3に示す実施形態における多層マイクロアクチュエータ組立体の断面図である。図4Aに示すように、第1マイクロアクチュエータ300は、サスペンション10のフレクシャ20に連結される。第1量の導電性接着剤370は、第1マイクロアクチュエータ300をフレクシャ20のばね金属層22の第1近位取付領域32aに機械的に連結する。また、第1量の導電性接着剤370は、第1端子パッド46aを第1下部電極アイランド部332に電気的に接続する。さらに、第2下部電極アイランド部334のフィンガー部338はPZT素子層310の近位端部312に延出するので、第1量の導電性接着剤370はまた、フィンガー部338を介して第2下部電極アイランド部334を第1端子パッド46aに電気的に接続する。
【0052】
第1マイクロアクチュエータ300は、種々の方法を使用してサスペンション10のフレクシャ20に連結することができる。例えば、第1ステップにおいて、第1量の導電性接着剤370は、絶縁層38及び/又は第1端子パッド46aの少なくとも一部に配され、第2量の導電性接着剤372は、第1グランドパッド48aの少なくとも一部に配される。第2ステップにおいて、第1マイクロアクチュエータ300はその後、第1下部電極アイランド部332が第1量の導電性接着剤370に接触し、第3下部電極アイランド部340が第2量の導電性接着剤372に接触するように、フレクシャ20に向かって動かされる。第1マイクロアクチュエータ300がフレクシャ20に向かって動くと、第1量の導電性接着剤370と第2量の導電性接着剤372とは、電極アイランド部周りに「吸い上げられる」又は流れる。第3ステップにおいて、第1量の導電性接着剤370と第2量の導電性接着剤372とはその後、第1マイクロアクチュエータ300をフレクシャ20に連結するために、所定の時間硬化される(例えば、10秒、30秒、1分、5分、10分など)。
【0053】
有利には、この構成において、第1量の導電性接着剤370は、図2Aに示すようなサスペンションに取り付けられるマイクロアクチュエータの第1量の導電性接着剤170よりも長さ方向に実質的に小さいものであり得、これは、第1量の導電性接着剤370が、第1下部電極アイランド部332と第2下部電極アイランド部334とを第1端子パッド46aに電気的に接続するために第1下部電極アイランド部332と第2下部電極アイランド部334との間の空間に広がる必要がないためである。このように、この構成により、サスペンション10を製造するために必要とされる導電性接着剤材料が少なくなる。
【0054】
さらに、第2下部電極アイランド部334は、(第2下部電極アイランド部134とは反対に)完全にマイクロアクチュエータ300の近位端部312まで延出するので、フィンガー部338はPZT素子層310の不感帯を減少させる。フィンガー部338は、第2下部電極アイランド部334の有効長を増大させるので、電圧をPZT素子層310及び/又は拘束層320のより大きな部分に印加して、分極、その後アクチュエーション電圧で活性化できる領域を増大可能である。同様に、第2中間電極アイランド部346のフィンガー部350は、PZT素子層310及び/又は拘束層320における不感帯領域を減少させるのに利用される。これもまた、フィンガー部350が、電圧を印加することができる第2中間電極アイランド部346の有効長を延長させるので、PZT素子層310及び/又は拘束層320のさらなる領域が分極され、その後アクチュエーション電圧に対して活性化することができる。
【0055】
図4Bは、サスペンションに連結された、実施形態における第2多層マイクロアクチュエータ組立体の断面図である。図4Bに示すように、マイクロアクチュエータ300はまた、フレクシャ20のばね金属層22の第2近位取付領域32bと第2遠位取付領域30bとに連結することができる。図4Aに示す構成と比較すると、マイクロアクチュエータ300は、遠位端部314が第2近位取付領域32bに連結され、近位端部312が第2遠位取付領域30bに連結されるように、180度回転されている。
【0056】
図示するように、上述の第1量の導電性接着剤370と同じ又は類似する第1量の導電性接着剤470は、第3下部電極アイランド部340と第2端子パッド46bとの間に配置される。第1量の導電性接着剤470は、マイクロアクチュエータ300の遠位端部314を第2近位取付領域32bに機械的に連結し、第2端子パッド46bと第3下部電極アイランド部340とを電気的に接続する。同様に、第2量の導電性接着剤472は、第2グランドパッド48bと第1下部電極アイランド部332との間に配置される。第2量の導電性接着剤472は、マイクロアクチュエータ300の近位端部312を第2遠位取付領域30bに機械的に連結し、第2グランドパッド48bと第1下部電極アイランド部332とを電気的に接続する。
【0057】
上述及び図3に示すように、第2下部電極アイランド部334はフィンガー部338を含み、第2中間電極アイランド部346はフィンガー部350を含む。図4Aに示す構成とは異なり、フィンガー部338は、第2量の導電性接着剤472に接触するように、第2中間電極アイランド部346の主要部348から延出する。このように、第2中間電極アイランド部346は、第2グランドパッド48bに電気的に接続されている。
【0058】
図4A及び図4Bに示すように、PZT素子層310は矢印C1の方向に分極され、拘束層320は矢印C2の方向に分極される。言い換えると、PZT素子層310と拘束層320とは、マイクロアクチュエータ300が第1遠位取付領域30a及び第1近位取付領域32a(図4A)、又は第2遠位取付領域30b及び第2近位取付領域32b(図4B)に連結されるかに関わらず同じ方向に分極される。図4Aに示すように、アクチュエーション電圧がマイクロアクチュエータ300に印加されると、上部電極層352に電圧Vが存在し、下部電極層330の第2下部電極アイランド部334に電圧Vが存在する。一方で、第2中間電極346は電気的にグランド接続される。図4Aに示すこの電位差の結果、PZT素子層310は膨張して、拘束層320は収縮する。図4Bに示すマイクロアクチュエータ構成では、アクチュエーション電圧がマイクロアクチュエータ300に印加されると、中間電極層346に電圧Vが存在する一方、上部電極層352と第2下部電極334とは電気的にグランド接続されている。
【0059】
したがって、有利には、マイクロアクチュエータ300と同じである2つのマイクロアクチュエータがサスペンション10のフレクシャ20に連結されて、上述のようなスライダ2の反対又は押し引きの動きを生じさせることができる。押し引き又は反対の動きを得るためにマイクロアクチュエータを異なる方向に分極させるよりも、2つのマイクロアクチュエータをフレクシャ20上で互いに対して単に180度回転させて(図4A及び図4B)、製造プロセスを簡易化している。言い換えると、マイクロアクチュエータ300は、サスペンション10に逆に取り付け可能である。一方で、図2Aに示す第1マイクロアクチュエータ100と図2Bに示す第2マイクロアクチュエータ200とはフィンガー部を含まないので、第1マイクロアクチュエータ100は、180度回転させて第2遠位取付領域30b及び第2近位取付領域32bに取り付けることができない。同様に、第2マイクロアクチュエータ200は、180度回転させて第1遠位取付領域30a及び第1近位取付領域32aに取り付けることができない。
【0060】
図5は、図1のサスペンションに連結された、実施形態におけるマイクロアクチュエータの断面図である。図5に示すように、マイクロアクチュエータ500は、サスペンション10のフレクシャ20(図1)に連結されている。マイクロアクチュエータ500には、圧電(「PZT」)層510と、拘束層520と、下部電極層530と、中間電極層542と、上部電極層552とを含む。マイクロアクチュエータ500は、単一電極アイランド部として構成された中間電極層542を含む。
【0061】
さらに、マイクロアクチュエータ500は電気ビアを含まない。代わりに、マイクロアクチュエータ500には、第1側方端部電極554と、第2側方端部電極556とを含む。第1側方端部電極554はマイクロアクチュエータ500の近位端部512に連結されており、より具体的には、第1下部電極アイランド部532と上部電極層552とに連結されている。第1側方端部電極554は、第1下部電極アイランド部532と上部電極層552とを電気的に接続する。図示するように、中間電極層542は、中間電極層542が第1側方端部電極554から電気的に分離されるように、第1側方端部電極554から離間されている。
【0062】
第2側方端部電極556はマイクロアクチュエータ500の遠位端部514に連結されており、より具体的には、第3下部電極アイランド部540と中間電極層542とに連結されている。第2側方端部電極556は、第3下部電極アイランド部540と中間電極層542とを電気的に接続する。図示するように、上部電極層552は、上部電極層552が第2側方端部電極556から電気的に分離されるように、第2側方端部電極556から離間されている。
【0063】
マイクロアクチュエータ500は、サスペンション10のフレクシャ20に連結される。第1量の電気伝導性接着剤570は、マイクロアクチュエータ500の近位端部512を第1近位取付領域32aに連結する。第1量の電気伝導性接着剤570は、第1端子パッド46aの少なくとも一部に配されている。図示するように、第1下部電極アイランド部532と第2下部電極アイランド部534とは、第1下部電極アイランド部532と第2下部電極アイランド部534の両方の少なくとも一部が第1量の電気伝導性接着剤570に接触しているように互いに離間する。このように、上部電極層552は、第1量の電気伝導性接着剤570と第1下部電極アイランド部532と第1側方端部電極554とを介して第1端子パッド46aに電気的に接続している。同様に、第2量の電気伝導性接着剤572は第1グランドパッド48aの少なくとも一部に配されて、マイクロアクチュエータ500の遠位端部514を第1遠位取付領域30aに連結する。第3下部電極アイランド部540の少なくとも一部は、中間電極層542が第2側方端部電極556を介して第1グランドパッド48aに電気的に接続するように、第2量の導電性接着剤572と接触している。
【0064】
図6は、図1のサスペンションに連結された、実施形態における多層マイクロアクチュエータ組立体の断面図である。図6に示すように、マイクロアクチュエータ600は、サスペンション10のフレクシャ20に連結されている。マイクロアクチュエータ600には、圧電(「PZT」)素子層610と、拘束層620と、下部電極層630と、中間電極層642と、上部電極層652と、第1側方端部電極654と、第2側方端部電極656とを含む。下部電極層630は、第2下部電極アイランド部634と第3下部電極アイランド部640とを含む。第2下部電極アイランド部634は、第1側方端部電極654と第3下部電極アイランド部640とから離間されている。第2下部電極アイランド部634は、マイクロアクチュエータ600の近位端部612及び第1側方端部電極654に向かって延出している。
【0065】
マイクロアクチュエータ600は、サスペンション10のフレクシャ20に連結される。第1量の導電性接着剤670は、マイクロアクチュエータ600の近位端部612を第1近位取付領域32aに機械的に連結する。有利には、図6に示すように第2下部電極アイランド部634を第1側方端部電極654に向かって延出させることで、第1量の導電性接着剤670が2つの別のアイランド部ではなく第2下部電極アイランド部634に接触することから第1量の導電性接着剤670を長さ方向に小さくすることができる。また、この構成により、第1端子パッド46aをより小さくして、導電性材料(例えば銅)を節約し、他の部品又は形体(例えばさらなる導電性トレース)のためのフレクシャ20上の空間をさらに作り出すことができる。
【0066】
さらに、第2下部電極アイランド部634を第1側方端部電極654に向かってさらに延出させることは、PZT素子層610、拘束層620、又はその両方の不感帯領域を減少させるのに利用される。図示するように、電圧(例えばV)を、(例えば、第2下部電極アイランド部534と比較して)PZT素子層610及び/又は拘束層620のより大きな部分に作用する第2下部電極アイランド部634に印加することができる。この構成により、さらなるPZT素子層610及び/又は拘束層620を分極することができ、このため、活性化電圧を印加したときに不感帯が減少して、マイクロアクチュエータ600の全体的な性能を向上する。
【0067】
第1量の導電性接着剤670は、第1側方端部電極654の高さに沿って上部電極層652に向かって延出する。したがって、第1量の導電性接着剤670は、下部電極層630における介在する電極アイランド部(例えば、第1下部電極アイランド部532)の必要なく、第1側方端部電極654を第1端子パッド46aに電気的に接続している。第1量の導電性接着剤670の一部は、第1量の導電性接着剤670が第1側方端部電極654の高さの約20%~約80%、第1側方端部電極654の高さの約40%~60%、又は第1側方端部電極654の高さの約50%に沿って延出するように、第1側方端部電極654の高さに沿って上部電極層652に向かって上方に延出することができる。
【0068】
一部の実施形態において、マイクロアクチュエータ600は、第2下部電極アイランド部634と第1側方端部電極654との電気的分離の維持に利用されるベベル切断680を含む。例えば、ベベル切断680が第1側方端部電極654の一部とPZT素子層610の一部とを通過するように、ベベル切断680を線682に沿って行うことができる。ベベル切断680では、第1側方端部電極654を第2下部電極アイランド部634からさらに離間させてこれら2つの間の電気的分離の維持に利用するように、第1側方端部電極654の下部分を取り除く。ベベル切断680は、例えば、約15度~約75度、約30度~約60度、及び約45度などの様々な角度で作製することができる。
【0069】
マイクロアクチュエータは、単一のPZT素子層と単一の拘束層とを含むものとして本明細書に示されて本明細書に記載されているが、各マイクロアクチュエータは、任意の数のPZT素子層及び/又は拘束層(例えば、2つのPZT素子層と2つの拘束層、2つのPZT素子層と1つの拘束層、3つのPZT素子層と3つの拘束層、4つのPZT素子層と3つの拘束層など)を含むことができる。
【0070】
さらに、図1に示すようなマイクロアクチュエータは、各マイクロアクチュエータの長手方向軸がフレクシャ20の長手方向軸に実質的に対応するようにサスペンション10に連結されるが、本明細書に記載するものなどのマイクロアクチュエータは、フレクシャ20の長手方向軸に対して角度をなすことができる。フレクシャ20の長手方向軸に対してマイクロアクチュエータの角度をなすことは、スライダ2の回転中心をディンプルに近接させるために行うことができる。例えば、本明細書に記載のマイクロアクチュエータの長手方向軸は、フレクシャ20の長手方向軸に対して約45の角度をなすことができるが、他の角度も可能である(例えば、約30度~約60度)。
【0071】
HGA1はサスペンション10を含むものとして図1に示されて本明細書に記載されるが、一部の実施形態において、HGA1は3段作動式サスペンションを含む。3段作動式サスペンションは、ロードビーム、ベース板、及びフレクシャを含むという点でサスペンション10と類似している。3段作動式サスペンションは、1つ以上のベース板モータを含むという点でサスペンション10と異なる。1つ以上のベース板モータは、本明細書に記載のマイクロアクチュエータと類似するものであり得るが、1つ以上のベース板モータがフレクシャではなくベース板に連結されるという点で異なる。例えば、そうした実施形態において、ベース板は、ベース板モータを受け入れるために上述の第1遠位取付領域30a及び第1近位取付領域32aに類似する取付領域を含むことができる。1つ以上のベース板モータはロードビームを動かすように構成することができる。1つ以上のベース板モータに電源を提供する及び/又は1つ以上のベース板モータを制御するために、ベース板は、端子パッド及びグランドパッドを含む1つ以上の群のトレースを含むことができる。1つ以上のベース板モータのそれぞれは、上述の同じ又は類似する手段及び方法を使用してベース板に連結することができる。そうした実施形態において、ベース板はまた、金属材料(例えばステンレス鋼)から形成された疑似形体を含むこともできる。疑似形体は、質量分布のバランスをとるとともに、ベース板を堅牢にするために構成される。疑似形態は、例えば溶接、接着剤など、又はそれらの任意の組合せなどの種々の手段を使用してベース板に連結することができる。あるいは、疑似形体及びベース板は、一体的及び/又はモノリシックであってもよい。
【0072】
本開示は様々な変形及び代替形態を許容するが、その特定の実施形態及び方法が一例として図面に示され、本明細書に詳細に記載されている。しかしながら、開示された特定の形態又は方法に本開示を限定することは意図せず、それとは反対に、本開示の趣旨及び範囲に該当するすべての変形、同等形、及び代替形を網羅することが意図される、ということを理解する必要がある。

図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6