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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/00 20060101AFI20220926BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20220926BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F24C15/00 M
F24C15/00 D
H05B6/12 313
H01H36/00 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019021358
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128842
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八幡 修平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴士
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-212101(JP,A)
【文献】特開2010-002126(JP,A)
【文献】特開2013-120656(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013330(WO,A1)
【文献】特開2006-318735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0023420(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0238444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/00
H05B 6/12
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が載置可能な天板と、該天板上の被加熱物を加熱する加熱部と、前記天板の一部の領域に設けられた電気絶縁体からなる操作パネル部と、該操作パネル部に設定された複数のタッチ操作部と、各タッチ操作部に対するタッチ操作を検出する静電容量式のタッチスイッチ装置と、各タッチ操作部に対するタッチ操作に応じた制御を行う制御基板とを備える加熱調理器において、
前記タッチスイッチ装置は、前記加熱部の加熱運転に関するタッチ操作を検出するための運転用タッチスイッチ部と、主電源をON/OFFするタッチ操作を検出するための主電源用タッチスイッチ部とを備え、
前記運転用タッチスイッチ部は、前記天板の裏面に当接又は近接して設けられたタッチ操作検出用の第1検出電極を備え、
前記主電源用タッチスイッチ部は、前記天板の裏面から前記第1検出電極よりも大きく離間して設けられたタッチ操作検出用の第2検出電極と、該第2検出電極と前記天板の裏面との間に設けられて該第2検出電極にタッチ操作を伝達させる金属製伝達部材とを備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記操作パネルは、少なくとも一部が光透過性を有し、
前記運転用タッチスイッチ部は、光透過性を有する基体に前記第1検出電極が形成されていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロやIHコンロ等の加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスコンロやIHコンロ等の加熱調理器では美観の高い強化ガラスが天板に用いられている。この種の加熱調理器においては、天板上の被加熱物を加熱する加熱部の手前側に位置する天板の一部の領域に操作パネル部を設けたものが知られている。
【0003】
操作パネル部には、静電容量式のタッチスイッチが設けられており、操作パネル部に設定されている複数のタッチ操作部の何れかに使用者が指で触れることにより当該タッチ操作部に割り当てられた内容の操作を行うことができるようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
タッチスイッチとしては、誘電体パネルの裏面に電極が形成された電極シートや電極基板を密着して取り付けたものが知られる(例えば、下記特許文献2参照)。
【0005】
電極シートや電極基板は、合成樹脂製フィルムや基板にタッチ操作を検出するための検出電極及び配線パターンを形成したものである。誘電体パネルとしては、光透過性を有するガラス板が適している。ガラス板の上面には、タッチ操作部が設定される。タッチ操作部には、電極シートの検出電極が対応して設けられる。
【0006】
このように構成されたタッチスイッチは、誘電体パネルとして機能させることが可能なガラス製天板を備える加熱調理器において好適に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-2126号公報
【文献】特開2013-120656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記構成のタッチスイッチにおいて、採用される電極シートとしてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートといったポリエステル系の合成樹脂製フィルムが挙げられ、電極基板としては紙フェノール、ガラスコンポジット、またはガラスアポキシ等が挙げられるが、これらは120℃~150℃で変形や損傷が生じるため、比較的耐熱性が低く、高温環境に適さない。
このため、加熱調理器の加熱部で加熱された鍋やフライパン等の高温の被加熱物(例えば高温の天ぷら鍋)を、天板と同一平面の操作部上に載置した場合には、高温の被加熱物からの熱によって電極シート等の検出電極を形成した部材に変形や損傷が生じ、タッチ操作の検出不良や誤動作が生じるおそれがある。
【0009】
そして、検出電極を形成した部材の変形や損傷によってタッチ操作の検出不良や誤動作が生じても、加熱運転をタッチ操作によって停止させることができず、加熱運転が継続されてしまうおそれがある。
【0010】
上記の点に鑑み、本発明は、熱の影響によって検出電極を形成した部材に変形や損傷が生じた場合であっても、タッチ操作によって加熱運転を確実に停止させることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明は、被加熱物が載置可能な天板と、該天板上の被加熱物を加熱する加熱部と、前記天板の一部の領域に設けられた電気絶縁体からなる操作パネル部と、該操作パネル部に設定された複数のタッチ操作部と、各タッチ操作部に対するタッチ操作を検出する静電容量式のタッチスイッチ装置と、各タッチ操作部に対するタッチ操作に応じた制御を行う制御基板とを備える加熱調理器において、前記タッチスイッチ装置は、前記加熱部の加熱運転に関するタッチ操作を検出するための運転用タッチスイッチ部と、主電源をON/OFFするタッチ操作を検出するための主電源用タッチスイッチ部とを備え、前記運転用タッチスイッチ部は、前記天板の裏面に当接又は近接して設けられたタッチ操作検出用の第1検出電極を備え、前記主電源用タッチスイッチ部は、前記天板の裏面から前記第1検出電極よりも大きく離間して設けられたタッチ操作検出用の第2検出電極と、該第2検出電極と前記天板の裏面との間に設けられて該第2検出電極にタッチ操作を伝達させる金属電極とを備えることを特徴とする。
【0012】
運転用タッチスイッチ部におけるタッチ操作は、加熱部の加熱運転に関する操作であって、例えば、加熱部の加熱の開始と停止や火力調節等が挙げられる。
【0013】
一方、主電源用タッチスイッチ部の第2検出電極は、金属製伝達部材を介してタッチ操作を検出する。これにより、高温に加熱された鍋やフライパン等の被加熱物が誤って操作パネル部上に載置されても、主電源用タッチスイッチ部の金属製伝達部材には熱による変形や損傷が生じることがない。
【0014】
そして、万一、運転用タッチスイッチ部に熱による変形や損傷が生じて運転用タッチスイッチ部が備える第1検出電極によるタッチ操作の検出が正常に行えなくなった場合には、主電源用タッチスイッチ部をタッチ操作して主電源をOFFとすることができる。
【0015】
このように、運転用タッチスイッチ部に変形や損傷が生じても、主電源用タッチスイッチ部のタッチ操作によって加熱運転を停止させることができ、正常でない状態での加熱運転の継続を確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明において、前記操作パネルは、少なくとも一部が光透過性を有し、前記運転用タッチスイッチ部は、光透過性を有する基体に前記第1検出電極が形成されていることが好ましい。光透過性を有する基体を形成する材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系合成樹脂が挙げられる。
【0017】
これによれば、例えば、タッチ操作に伴って発光させたLED等の発光素子の光を運転用タッチスイッチ部で透過させ、操作パネル上で視認させることができる。よって、例えば、ガラス等の美観の高い天板の一部を操作パネルとして用いることで、タッチ操作に応じた発光素子の発光を運転用タッチスイッチ部を透過させて天板上から確認可能に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の加熱調理器を示す平面図。
図2】操作パネル部を平面視した説明図。
図3】タッチスイッチの構成を模式的に示す分解斜視図。
図4】操作パネル部の一部を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の加熱調理器であるガスコンロ1を示している。図1に示すように、ガスコンロ1は、筐体(図示しない)の上面を覆う天板2と、天板2上に突出するガスバーナ3と、ガスバーナ3上に鍋やフライパン等の被加熱物(図示しない)を支持するための五徳4とを備えている。
【0020】
天板2は、耐熱強化ガラスであって光透過性を有し、且つ、筐体内部の構造物等の視認が困難となる程度の暗色とされている。なお、図1においては、天板2の色を無色で示しているが、本実施形態において採用した天板2は、図2に示すように、暗色である黒色とされている。
【0021】
そして、図1及び図2に示すように、天板2の手前側の一部には、操作パネル部5が設けられている。操作パネル部5は、天板2の五徳4が設けられている領域と区切りなく同一の平滑面で連続して設けられている。
【0022】
操作パネル部5には、表面に主電源マーク6が設けられている。主電源マーク6は塗料、刻印、又はアルミインレイ等によって形成されており、ガラス面から消失しないように設けられている。
【0023】
使用者が主電源マーク6又はその近傍を指で触れると(以下、タッチ操作という)、図2に示すように、光による各種マークが操作パネル部5に出現する。使用者は光による何れかのマークをタッチ操作することによりガスバーナ3に対する所望の操作を行うことができる。
【0024】
操作パネル部5には、図3に模式的に示すように、静電容量式のタッチスイッチ装置7が設けられており、これによって上記のようなタッチ操作が可能とされている。タッチスイッチ装置7は、運転用タッチスイッチ部8と、主電源用タッチスイッチ部9とを備えている。
【0025】
運転用タッチスイッチ部8は、光透過性を有する合成樹脂製フィルム(例えばPETフィルムやPENフィルム)を基体10として、タッチ操作を検出する複数のフィルム電極11a~11d(第1検出電極)と、接続部12とを備えている。そして、運転用タッチスイッチ部8は、、天板2と一体の操作パネル部5の下面に密着して取り付けられている。
なお、図3においては説明の便宜上、4つのフィルム電極11a~11dのみを示しているが、実際には、ガスコンロ1が有する機能に応じて更に多数のフィルム電極が設けられている。
【0026】
運転用タッチスイッチ部8の下面には、アッシーケース13を介して制御基板14が取り付けられる。制御基板14は、運転用タッチスイッチ部8の各フィルム電極11a~11dに対応するLED15a~15dと運転用タッチスイッチ部8の接続部が接続されるコネクタ16とを備えて、アッシーケース13に収容される。
【0027】
また、図3及び図4に示すように、主電源用タッチスイッチ部9は、制御基板14に設けられた固定電極17(第2検出電極)と、固定電極17上に設けられた金属製伝達部材18とで構成されている。
【0028】
金属製伝達部材18は、運転用タッチスイッチ部8の基体10より耐熱温度の高い金属製バネ板材により形成されており、一端(下端面)が固定電極17上に接続され、他端(上端面)が操作パネル部5の下面に接する。このとき、金属製伝達部材18が金属製バネ板材によって形成されていることにより、金属製伝達部材18の上端面が操作パネル部5の下面に圧接し、タッチ操作の検出精度が向上する。固定電極17は、金属製伝達部材18を介して天板2の裏面に対向することにより、天板2から離間して設けられている。
【0029】
主電源用タッチスイッチ部9の金属製伝達部材18を介して固定電極17がタッチ操作を検出すると、ガスコンロ1の主電源がON又はOFFされる。主電源がONになると制御基板14への給電が開始され、主電源がOFFになると制御基板14への給電が停止される。
【0030】
また、ガスバーナ3には、図示しない燃料ガスの供給路に設けられている元電磁弁を介して燃料ガスが供給されるが、元電磁弁の開閉は、制御基板14を介して通電されることにより行われる。即ち、主電源がONになると元電磁弁への給電が可能となって運転用タッチスイッチ部8の操作により元電磁弁が開弁し、主電源がOFFになると元電磁弁への給電が停止されて元電磁弁が閉弁する。元電磁弁が閉弁すると、ガスバーナ3の燃焼が停止する。
【0031】
図3に示すように、操作パネル部5には、フィルム電極11a~11d及び固定電極17に対応する位置にタッチ操作部19a~19d、20が設定されている。図1に示すように、主電源用タッチスイッチ部9に対応するタッチ操作部20は、主電源がOFFの状態であっても主電源マーク6により視認可能となっているが、運転用タッチスイッチ部8に対応するタッチ操作部19a~19dは、何れも、表示が視認されない。各タッチ操作部19a~19dにおける表示(図2参照)は、主電源がONとなったとき、図3に示す制御基板14のLED15a~15dにより行われる。
【0032】
図3に示すと共に、図4に一部を示すように、制御基板14のLED15a~15dは、運転用タッチスイッチ部8のフィルム電極11a~11dに対応する位置に設けられている。LED15a~15dの光は、アッシーケース13の小開口21a~21dを通過し、運転用タッチスイッチ部8を透過して操作パネル部5の各表面に至る。これにより、図2に示すように天板2(操作パネル部5)に光による表示が浮かび上がって視認可能となる。なお、図3におけるLED15a~15dの位置は説明的に示したもので、図2に示すタッチ操作部19a~19dにおける表示位置と異なるが、実際には、図2に示すタッチ操作部19a~19dにおける表示位置に対応するようにLED15a~15dが配置される。
【0033】
このように操作パネル部5は、運転用タッチスイッチ部8が光透過性を有することにより、制御基板14のLED15a~15dの光によってタッチ操作部19a~19dの各マークを表示させることができる。制御基板14のLED15a~15dが点灯していないときには図1に示すように操作パネル部5が天板2と一体的に同化して見え、極めて高い美観を得ることができる。
【0034】
ところで、図1に示すように、操作パネル部5は天板2に設けられてガスバーナ3の手前側に位置している。このため、例えば、天ぷら鍋やフライパン等の高温の被加熱物が操作パネル部5上に不用意に置かれてしまうが考えられる。
【0035】
図1図4を参照して、ガスバーナ3で加熱された被加熱物が操作パネル部5上に置かれた場合、操作パネル部5の下面に密着する運転用タッチスイッチ部8が被加熱物の熱による影響を受ける。このとき、高温の熱が運転用タッチスイッチ部8に伝達されて、運転用タッチスイッチ部8の合成樹脂製フィルムである基体10に変形や損傷が生じると、フィルム電極11a~11dによってタッチ操作を検出することが困難となり、正常な加熱運転が望めなくなるおそれがある。よって、このような場合には、加熱運転を即座に停止させることが好ましい。
【0036】
そこで、本実施形態においては、主電源マーク6の表示があるタッチ操作部20を操作することで、主電源用タッチスイッチ部9の金属製伝達部材18を介して固定電極17がタッチ操作を検出して主電源をOFFさせることができるようになっている。
【0037】
即ち、固定電極17は、天板2から離間して設けられていて、金属製伝達部材18を介してタッチ操作を検出する。金属製伝達部材18は、金属製であることにより耐熱性が高く、天板2からの熱によって熱による変形や損傷が発生しないから、タッチ操作に対して正確な検出を行うことができる。しかも、主電源マーク6が光によるものでないので、運転用タッチスイッチ部8のような光透過性は不要である。よって、主電源マーク6の表示を有するタッチ操作部20に金属製伝達部材18を介して固定電極17を設けて、正常でない加熱運転が継続されることを確実に防止することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、ガスコンロ1を挙げて説明したが、本発明は、ガラス製の天板が設けられている加熱調理器に好適に採用でき、IHコンロ等にも採用することができる。天板の材料となる板状のガラスとしては、例えば結晶化ガラスを採用することができる。
【0039】
また、本実施形態では、合成樹脂製フィルムにより形成した運転用タッチスイッチ部8を採用しているが、これに限らず、本発明の運転用タッチスイッチ部として、紙フェノールやガラスコンポジット、或いは、ガラスアポキシ等を用いた電極基板を採用してもよい。このとき、運転用タッチスイッチ部が光透過性を有さない場合は、主電源マーク6と同様にして形成されたガラス面から消失しないマークを、操作パネル部5の対応位置に設けておけばよい。
【符号の説明】
【0040】
1…ガスコンロ(加熱調理器)、2…天板、3…ガスバーナ(加熱部)、5…操作パネル部、7…タッチスイッチ装置、8…運転用タッチスイッチ部、9…主電源用タッチスイッチ部、10…基体、11a~11d…フィルム電極(第1検出電極)、14…制御基板、17…固定電極(第2検出電極)、18…金属製伝達部材、19a~19d、20…タッチ操作部。
図1
図2
図3
図4