(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】器具インターフェース
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20220926BHJP
【FI】
A61B34/30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019032482
(22)【出願日】2019-02-26
(62)【分割の表示】P 2017055021の分割
【原出願日】2012-05-10
【審査請求日】2019-03-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-23
(32)【優先日】2011-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2012-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ,セオドア ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】スティーガー,ジョン ライアン
(72)【発明者】
【氏名】プリスコ,ジュゼッペ,マリア
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】井上 哲男
【審判官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0082041(US,A1)
【文献】特表2014-521375(JP,A)
【文献】特開2010-220955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具のための駆動システムであって、
モータと
、
駆動要素
とを含み、
該駆動要素は、第1の係合構成
と係合し、
前記駆動要素は、前記第1の係合構成が前記医療器具の相補的な第2の係合構成と係合させられるときに、前記モータの回転が前記医療器具のコンポーネントを作動させるよう、前記モータに連結され、前記相補的な第2の係合構成は、前記コンポーネントに連結され、
前記第1の係合構成は、突起であり、前記第2の係合構成は、前記突起に対して相補的な穴であり、或いは、前記第2の係合構成は、突起であり、前記第1の係合構成は、前記突起に対して相補的な穴であり、
前記コンポーネントのあらゆる姿勢について、前記第1の係合構成及び前記第2の係合構成の全ての回転位置で、前記第1の係合構成が、前記コンポーネントを作動させる前記第2の係合構成の回転を誘発せずに、前記第2の係合構成と係合するよう、前記第1の係合構成は、円形の断面を有し、
前記第2の係合構成内の前記第1の係合構成の圧縮嵌め又は前記第1の係合構成内の前記第2の係合構成の圧縮嵌めが、前記モータの前記回転が前記コンポーネントを作動させるのを可能にする、前記第1の係合構成と前記第2の係合構成との間の摩擦係合を生み出し、
前記第1の係合構成は、前記モータと前記医療器具との間の殺菌障壁の表面に形成される、
駆動システム。
【請求項2】
少なくとも前記第1の係合構成又は前記第2の係合構成は、前記係合中に自動的に整列させられる、請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
前記第1の係合構成は、テーパ状の円錐突起を含み、前記第2の係合構成は、相補的なテーパ状の円錐穴を含む、請求項1に記載の駆動システム。
【請求項4】
前記第1の係合構成は、テーパ状の円錐穴を含み、前記第2の係合構成は、相補的なテーパ状の円錐突起を含む、請求項1に記載の駆動システム。
【請求項5】
前記第1の係合構成が取り付けられる可撓な取付けを更に含み、
該可撓な取付けは、当該駆動システム上の前記医療器具の係合中の当該駆動システムの不整列に対する
順応性をもたらす、
請求項1に記載の駆動システム。
【請求項6】
医療器具のための駆動システムであって、
モータと
、
駆動要素
とを含み、
該駆動要素は、第1の係合構成
であり、
前記駆動要素は、前記第1の係合構成が前記医療器具の相補的な第2の係合構成と係合させられるときに、前記モータの回転が前記医療器具のコンポーネントを作動させるよう、前記モータに連結され、前記相補的な第2の係合構成は、前記コンポーネントに連結され、
前記第1の係合構成は、突起であり、前記第2の係合構成は、前記突起に対して相補的な穴であり、或いは、前記第2の係合構成は、突起であり、前記第1の係合構成は、前記突起に対して相補的な穴であり、
前記コンポーネントのあらゆる姿勢について、前記第1の係合構成及び前記第2の係合構成の全ての回転位置で、前記第1の係合構成が、前記コンポーネントを作動させる前記第2の係合構成の回転を誘発せずに、前記第2の係合構成と係合するよう、前記第1の係合構成は、円形の断面を有し、
前記第2の係合構成内の前記第1の係合構成の圧縮又は前記第1の係合構成内の前記第2の係合構成の圧縮嵌めが、前記モータの前記回転が前記コンポーネントを作動させるのを可能にする、前記第1の係合構成と前記第2の係合構成との間の摩擦係合を生み出し、
当該駆動システムは、前記
第2の係合構成が取り付けられる可撓な取付けを更に含み、
該可撓な取付けは、当該駆動システム上の前記医療器具の係合中の当該駆動システムの不整列に対する
順応性をもたらす、
駆動システム。
【請求項7】
前記可撓な取付けは、前記
第2の係合構成を緩く保持する軸受を含む、請求項5又は6に記載の駆動システム。
【請求項8】
前記可撓な取付けは、当該駆動システム上の前記医療器具の係合中の前記第1及び第2の係合構成の前記不整列に順応する前記
順応性を有するシャフトを含む、請求項5又は6に記載の駆動システム。
【請求項9】
前記第1の係合構成及び前記第2の係合構成の相補的な係合面が滑らかである、請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項10】
第2のモータと
、
第2の駆動要素
とを含み、
該第2の駆動要素は、第3の係合構成を含み、
前記第2の駆動要素は、前記第3の係合構成が前記医療器具の相補的な第4の係合構成と係合させられるときに、前記第2のモータの回転が前記医療器具の第2のコンポーネントを作動させるよう、前記第2のモータに連結され、前記相補的な第4の係合構成は、前記第2のコンポーネントに連結され、
前記第3の係合構成は、第2の突起を含み、前記第4の係合構成は、前記第2の突起に対して相補的な第2の穴を含み、或いは、前記第4の係合構成は、第2の突起を含み、前記第3の係合構成は、前記第2の突起に対して相補的な第2の穴を含み、
前記第2のコンポーネントのあらゆる姿勢について、前記第3の係合構成及び前記第4の係合構成の全ての回転位置で、前記第3の係合構成が、前記第2のコンポーネントを作動させる前記第4の係合構成の回転を誘発せずに、前記第4の係合構成と係合するよう、前記第3の係合構成は、円形の断面を有し、
前記第4の係合構成内の前記第3の係合構成の圧縮又は前記第3の係合構成内の前記第4の係合構成の圧縮嵌めが、前記第2のモータの前記回転が前記第2のコンポーネントを作動させるのを可能にする、前記第3の係合構成と前記第4の係合構成との間の摩擦係合を生み出す、
請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の駆動システム。
【請求項11】
少なくとも前記第3の係合構成又は前記第4の係合構成は、前記係合中に自動的に整列させられる、請求項10に記載の駆動システム。
【請求項12】
前記
第4の係合構成が取り付けられる第2の可撓な取付けを更に含み、
該第2の可撓な取付けは、当該駆動システム上の前記医療器具の係合中の当該駆動システムの不整列に対する
順応性をもたらす、
請求項10に記載の駆動システム。
【請求項13】
前記第3の係合構成は、円錐突起又は円錐穴のうちの一方を含む、請求項10に記載の駆動システム。
【請求項14】
前記第3の係合構成及び前記第4の係合構成の相補的な係合面が滑らかである、請求項11に記載の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
最少侵襲的な医療措置のために利用されるようなロボット制御システムは、比較的小さい工具又は器具を精密に制御し且つ駆動させる大きい複雑な機器を含み得る。(ここで使用されるとき、「ロボット」又は「ロボット式に」の用語及び類似表現は、遠隔操作又は遠隔操作型ロボットの特徴を含む。)
【背景技術】
【0002】
図1Aは、既知のロボット式に制御されるシステム100の実施例を例示している。(例えば、Intuitive Surgicalから入手可能なda Vinci(R) Surgical Systemの一部であり得る)システムは、多数のアーム130を有する患者側カート110を含む。各アーム130は、結合ポート140を有し、結合ポート140は、器具150を取り付けるための並びに器具150の操作用の機械的動力をもたらすための機械的インターフェースを備える駆動システムを概ね含む。医療措置のために夫々の医療器具150を移動し且つ位置付けるために、医療措置中にアーム130を使用し得る。
【0003】
図1Bは、既知の器具150の底面図を示している。器具150は、伝動機構又は後部機構152(バックエンド機構)と、後部機構152から延びる主管154と、主管154の遠位端にある機能的先端部156とを概ね含む。先端部156は、医療措置中に使用し得るメス、ハサミ、ピンセット、又は焼灼器具のような医療工具を概ね含む。駆動ケーブル又は腱155(テンドン)は先端156に繋がり、主管154を通じて後部機構152まで延びる。後部機構152は、典型的には、器具150の駆動腱と駆動システム140の機械的インターフェースの電動軸との間の機械的継手をもたらす。具体的には、駆動システム140の機械的インターフェース上の相補的な機能と係合するような位置、大きさ、及び形状にさせられる突起又は穴のような機能を有するギア又はディスク153。典型的な器具においては、ディスク153の回転がそれぞれの腱155を引っ張り、先端部156内の対応する機械的リンクを作動させる。よって、システム100は、先端部156を位置付け、方向付け、且つ操作するために、駆動腱155における動作及び張力を適宜制御し得る。既知の手術器具の更なる詳細は、例えば、Tierney et al.に発効した「Surgical Robotic Tools, Data Architecture, and Use」という名称の米国特許第7,048,745号中に記載されており、参照としてその全文をここに援用する。
【0004】
駆動システム140から1つの器具150を取り外し、次に、その取り外した器具の代わりに他の器具を装着することによって、システム100の器具150を交換し得る。装着プロセスは、ディスク153上の機能が駆動システム140の相補的な機能と適切に係合することを必要とするのが一般的である。しかしながら、装着前、器具150上のディスク153の向きは、患者側カート110に知られていないのが一般的である。更に、医療措置と医療措置との間に複雑な機器を洗浄し且つ殺菌することの困難性の故に、患者側カート110のような機器は、医療措置のために殺菌障壁(バリア)によって覆われることが多い。これらの殺菌障壁は、結合ポート140と器具後部152との間に介装される殺菌アダプタ(図示せず)を含み得る。例えば、上記参照した米国特許第7,048,745号及び参照としてその全文をここに援用するAnderson et al.に発効した「Sterile Surgical Adaptor」という名称の米国特許第7,699,855号は、幾つかの例示的な殺菌障壁及びアダプタシステムを記載している。
【0005】
器具150のための典型的な装着プロセスは、可能であれば殺菌障壁が介在した状態で、ディスク153の向きを考慮せずに駆動システム140上に後部機構152を取り付けることを含む。次に、新たに装着される器具150の操作のために、相補的な機能が互いに噛合し合って確実に係合し合うのを保証するよう、装着手続中に駆動システム140内の駆動モータを多数回往復的に回転させ得る。装着プロセスのある時点で、駆動モータは確実に係合されるようになり、それぞれのディスク153を回転させる。しかしながら、駆動モータは異なる予測不能なときに器具150のそれぞれのディスク153と積極的に係合するので、装着される器具150は、装着手続中に時折予測不能な方法において移動し得る。器具が患者内に挿入されるとき、そのような予測不能な動作は受け入れられない。一般的に、装着手続中の器具先端部の無作為な動作に適合するために、明らかな空間が器具150の周りに必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術の上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある特徴によれば、ロボット式の医療器具用の機械的インターフェースは、器具の先端部の移動を引き起こさない器具及び駆動システムの係合を許容する。従って、器具が所望の構成において手動で適当な位置に配された後に或いは器具が医療措置のために挿入された後でさえも、器具を患者側カート内の駆動システムと係合させ得る。これは器具の手動の挿入を許容し、その後、器具のロボット制御が続く。
【0008】
1つの実施態様において、器具インターフェースは、医療器具及び(潜在的に殺菌障壁を含む)駆動システムのうちの一方の上に対称的なテーパ付きの又は円筒形の突起と、駆動システム又は医療器具の他方にある相補的なボアとを含む。円筒形の突起及びボアを用いるならば、ボアの直径を減少させ且つ医療器具に駆動トルクを移転するのに十分な摩擦力を備える器具を提供するために、例えば、ボアを含む機械的素子の周りに巻き付けられる腱内の張力を使用して、ボアの直径は収縮し得る。いずれにしても、突起及びボアの対称性は、医療器具に対する駆動システムの回転角度に拘わらず、突起がゴア内に圧縮嵌めされることを可能にする。
【0009】
本発明の1つの特別な実施態様において、システムは、医療器具と、駆動システムとを含む。医療器具は、回転可能な素子を含み、回転可能な素子は、回転させられるときに医療器具を作動させる。駆動システムは、医療器具と解放可能に係合するよう構成されるインターフェースを有し、回転可能な素子の第1の機能及びインターフェースの第2の機能は、医療器具を作動させる回転を誘発させないで互いに係合し合うよう成形される。
【0010】
本発明の他の実施態様は、医療器具である。医療器具は、作動させられる構造と、機械的素子とを含み、機械的素子は、機械的素子の回転が作動させられる構造を作動させるように接続される。機械的素子は、係合機能を有し、係合機能は、作動させられる構造の任意の姿勢のために、係合機能が、作動させられる構造を作動させる回転を誘発させないで、駆動システム上の相補的な係合機能と係合し得るように成形される。
【0011】
本発明の更に他の実施態様は、医療器具のための駆動システムである。駆動システムは、モータと、モータに結合されるインターフェースとを含み、インターフェースは、モータの回転が医療器具を作動させるように医療器具と解放可能に係合するよう構成される。インターフェースは、係合機能を含み、係合機能は、医療器具の任意の姿勢のために、係合機能が、医療器具を作動させる回転を引き起こさないで、医療器具の相補的な係合機能と係合し得るように成形される。
【0012】
本発明の更に他の実施態様は、医療器具及び駆動システムを係合させる方法である。方法は、医療器具の回転可能な素子及び駆動システムの駆動素子のいずれかを回転させないで医療器具の回転可能な素子上の第1の機能を駆動システムの駆動素子上の第2の機能と接触させることを含む。次に、それらの素子のいずれかを回転させないで回転可能な素子と駆動素子との間の摩擦を創成するために、係合力が適用される。そのように係合させられるとき、医療器具を作動させるために駆動システムを操作し得る。摩擦は駆動システムが第1の回転可能な素子に適用するトルクを第2の回転可能な素子に移転させ、それによって、医療器具を作動させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の実施態様に従った医療器具を利用し得るロボット制御システムの患者側カートを示す概略図である。
【
図1B】駆動モータとの整列のために回転を必要とする駆動ギア又はディスクを利用する既知の医療器具を示す底面図である。
【
図2】器具が器具の動作先端部の移動又は活性化を伴わずに一組の駆動モータと係合し得る本発明の実施態様を示す概略図である。
【
図3】駆動モータが機械的素子の回転を伴わずに後部機構と係合し得る本発明の実施態様に従った後部機構の機械的素子及び駆動モータを示す概略図である。
【
図4】殺菌アダプタの一部が医療器具の後部機構の機械的素子と駆動モータとの間に介装された本発明の実施態様を示す概略図である。
【
図5】医療器具が医療器具の先端部の移動又は作動を伴わずに駆動モータと係合し得るテーパ付き突起を有する本発明の実施態様を示す概略図である。
【
図6】キャプスタン内のボアを収縮させて駆動モータと係合するようキャプスタンの周りに巻き付けられる腱によって引き起こされる圧縮を使用する本発明の実施態様を示す概略図である。
【
図7】駆動機構と医療器具との間の不整列に適合させるよう浮動シャフト又は緩みシャフトを利用する本発明の実施態様を示す概略図である。
【
図8】駆動機構と器量器具との間の不整列に適合させるよう可撓シャフトを利用する本発明の実施態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
異なる図面における同じ参照記号の使用は、類似の又は同一の品目であることを示す。
【0015】
本発明のある特徴によれば、器具の継手又は先端部を作動させ或いはその他の方法で移動させることなく医療器具を駆動システム上に装着し且つ駆動システムと係合させ得る。器具の駆動機構及び機械的インターフェースの相対的な向きを維持するよう圧縮又は摩擦を通じて確実に係合する対称的な機械的素子を使用して、作動を伴わない係合を実施し得る。1つの実施態様において、駆動システム又は後部機構の対称的なテーパ付きシャフトは、後部機構又は駆動システムの機械的素子の対称的なテーパ付きボア又はスロット内に適合し、摩擦がシャフト及びスロット付き機械的素子の向きを維持する。他の特別な実施態様では、シャフト及び機械的素子の相対的な向きを確実に保持するよう直径が収縮するボアを含む機械的素子内に対称的なシャフトを挿入し得る。例えば、駆動モータのシャフトは、キャプスタンのボア内に適合し得、キャプスタンは、キャプスタンの周りに巻き付けられる腱の張力がボアをシャフト上に崩壊させるよう十分に可撓である。器具を作動させないで器具を装着する能力は、器具が駆動システム上に装着される前に所望の構造において器具を適当な位置に配置することを可能にし、且つ、器具がカニューレ内に挿入された後に或いは患者内に挿入された後にさえも器具の装着を可能にする。
【0016】
図2は、医療器具200が1つ又はそれよりも多くのテーパ付き駆動シャフト230を有する駆動システム220上に乗る後部機構210を有する、本発明の実施態様を例示している。駆動システム220は、器具200が医療措置中に或いは異なる医療措置のために装着され或いは取り外されることを可能にする、
図1の患者側カート110のような医療システムの結合ポート又は工具ホルダの一部であり得る。テーパ付きシャフト230は、駆動システム220の駆動モータ240のシャフトであってよく、器具200の継手区画、例えば、器具先端部156の動作のためにモータシャフトに付着し且つモータ回転を後部機構210に伝動する別個の素子であってもよい。一般的に、器具先端部156は任意の所望の種類であり得るが、器具先端部156は主シャフト154の遠位端にあり、腱155は主シャフト154を通じて延びて先端部156に繋がるように
図2に例示されている。後部機構210は、モータ240の回転を腱155の移動に変換する伝動機構(図示せず)を概ね含み、それは先端部156内の継手を含む器具200の継手を作動させる。
【0017】
テーパ付きシャフト230は、円形の断面を備えるテーパ状の形状を生成する従来的な技法を使用して精密に機械加工される、簡単で、低コストで、頑健な機械的素子であり得る。多くの種類のテーパをテーパ付きシャフト230上に利用し得る。例えば、端部タング(end tang)又はガイド(guide)を備える或いは備えないモールステーパを使用し得る。テーパ付きシャフト230はそれらの軸で回転自在であり、それらのそれぞれの回転軸について対称的である、即ち、円の形断面を有する。
【0018】
各テーパ付きシャフト220は、後部機構210の機械的素子260の相補的なテーパ付き穴又はスロット250内に適合するよう更に成形される。機械的素子260は、例えば、対応するテーパ付きシャフト230の形状と一致し且つ具体的にはテーパ付きシャフト230の円形の断面と一致する円形の断面を有する刳り抜いたスピンドルであり得る。より一般的には、それらの軸で回転自在である器具後部210の任意の機械的素子内にテーパ付き穴250を形成し得、後部機構210の伝動システムは、スロット付き機械的素子260の回転を腱155及び器具先端部156の移動に変換する。例えば、
図3は、モータ240のテーパ付きシャフト230がキャプスタン260のテーパ付き穴又はボア250内にどのように直接的に適合するかを示している。1つの具体的な実施態様において、テーパ付き穴250は、参照としてその全文をここに援用する「Passive Preload and Capstan Drive for Surgical Instruments」という名称の米国特許出願公開第2010/0082041号中に記載されているように、腱155に運動を伝動するキャプスタン内に形成される。より一般的には、キャプスタンは、モータ回転を腱移動及び器具作動に変換するよう後部機構210内で利用し得る機械的素子260の1つの実施例であるに過ぎない。
【0019】
図4は、殺菌障壁内の殺菌アダプタ400を駆動素子440と医療器具を作動するよう回転可能である機械的素子260との間にどのように介装し得るかを概略的に例示している。例示の構造において、殺菌アダプタ400は、円周軸受420内で回転自在な素子410を含み、円周軸受420は、所望の医療機能を遂行すると同時に素子410が回転可能な素子460及び駆動素子440の回転軸に対応する軸について回転するのを可能にする迷路シール(封止)を用いて殺菌障壁を維持する。素子410は、例えば、駆動素子440と回転可能な素子260内の穴250との間に介装されるよう成型される約0.5~2mmの厚さの機械的抵抗性のプラスチックの層であり得る。具体的には、
図4中の素子410は、マニピュレータ側で駆動素子を受け取り且つ医療器具の後部機構の一部である回転可能な素子260のテーパ付き穴250内に適合する突起を有するよう成形される。手術野の無菌性を維持するよう、殺菌障壁の殺菌シート430又は他の部分を軸受420に接続し得る。
図4は、本発明に関連する一般的な動作原理を例示するよう概略的な方法において殺菌アダプタの機能を例示している。上記参照によって組み込んだ米国特許第7,048,745号及び7,699,855号は、医療器具用の幾つかの殺菌アダプタの機能の追加的な記載を提供している。
【0020】
図4は、駆動素子40が回転を伴わずに障壁素子410と係合し得るテーパ付き形状を有する本発明の実施態様も示している。代替的に、駆動素子440は、キー溝付き又は粗い表面を有し得、障壁素子410は滑らかであり得るが、駆動素子440上に押されるよう十分にコンプライアントである(適合する)。更に他の代替的な実施態様では、駆動素子440は、障壁素子440の相補的機能と係合する突起又は圧痕を備えるキー溝付き係合機能を有する。駆動素子440上の及び障壁素子410のマニピュレータ側のキー溝付き機能を用いるならば、殺菌障壁がマニピュレータに適合されるときにキー溝付き機能を割り当てるために、駆動素子440又は障壁素子410の回転が必要であり得る。しかしながら、殺菌障壁は、一度医療措置のためにマニピュレータに適合され得、あらゆる医療器具がマニピュレータに係合される前に適合される。障壁素子410の器具側は如何なる回転も伴わずにボア250に適合するよう成形される表面を有するので、駆動システム上の器具と係合するときに、駆動素子440、障壁素子410、又は回転可能な素子260の回転は必要とされない。
【0021】
介装される殺菌アダプタを伴って或いは伴わないで、器具後部210の穴240を結合ポート220のテーパ付きシャフト230上に滑り込ませることによって、
図2のシステムを使用する器具係合を行い得る。後部機構210を結合ポート220上に押し且つテーパ付きシャフト230をテーパ付き穴250内に駆動する係合力をもたらすために、ラッチ又は他の機構270を使用し得る。テーパはシャフト230及び穴250を所望の相対的な位置まで案内するので、シャフト230及び穴250の形状は、器具200と駆動システム220との間の何らかの初期的な不整列に自動的に適合する。以下に更に記載するように、テーパ付きシャフト230又はスロット付き素子260のための可撓な取付けを用いて、後部機構210と結合ポート220との間の追加的な不整列或いは後部機構210又は結合ポート220の駆動軸の相対的な不整列又は間隔変動を適合させ得る。係合され且つ所定の場所に保持されるとき、対応する穴240の一致する内表面と接触する各テーパ付きシャフト230の全表面に亘る圧縮及び摩擦は、大量のトルク伝達をもたらし得るので、キー又はギア歯が駆動システム220から後部機構210にトルク又は回転運動を移転することは必要とされない。更に、係合手続中、後部機構210のスロット付き機械的素子260又はモータ240の回転は必要とされない。また、スロット付き素子260の任意の所望の構造又は先端部156の任意の姿勢を有しながら器具は係合され得、器具先端部156は係合中に移動しない。先端部156がカニューレ内に挿入される間に或いは手術現場で患者内でさえも、先端部移動の欠如は、係合プロセスを行うことを可能にする。
【0022】
後部機構210及び駆動システム220の係合後の医療器具200の制御は、医療器具210の姿勢(例えば、継手の位置)の測定及び各々のモータ240の回転角度の測定に基づき得る。代替的に、測定される所望の器具姿勢又は構造の間の相違を使用する制御プロセスを利用し得る。「Tension Control in Actuation of Multi-Joint Medical Instruments」という名称の米国特許出願番号第12/945,734号は、医療器具の制御のための例示的なシステムを記載し、参照としてその全文をここに援用する。
【0023】
図2は、駆動システム220が1つ又はそれよりも多くのテーパ付きシャフト230を含み且つ器具後部210が相補的なテーパ付き穴230を含むシステムを例示している。
図5は、代替的な実施態様に従ったシステムを例示しており、そこでは、テーパ付きシャフト230は、医療器具500の後部機構510から延び、後部機構510内の伝動機構を作動するよう回転させられ、且つ器具500の継手を作動させ或いは移動させる。この構造において、駆動システム520内のモータ240は、殺菌アダプタの介装部分又はテーパ付きシャフト530の形状と相補的なテーパ付き穴550をもたらすよう成形される。テーパ付きシャフト及びテーパ付き穴の位置の逆転以外に、システム500の器具ホルダ520及び後部機構510を係合させ得、
図2を参照して上述したシステム200の器具ホルダ220及び後部機構210と同様に操作し得る。上述のように、機能530及び540の間の摩擦が医療器具500の操作のために必要とされるトルクを伝達するのに十分であるよう、結合システムは医療器具500を駆動システム520に付着させて係合力を適用し得る。結合システムは、例えば、ラッチ270と、バネ予荷重570とを含み得る。
【0024】
本発明の他の特徴によれば、駆動システム内のモータは、機械的素子の穴又はボアの径方向圧縮によって創成される摩擦係合を通じて後部機構の機械的素子を作動させ得る。例えば、
図6は、
図2の後部機構210のような後部機構の機械的素子660の円筒形ボア内に適合する円筒形シャフト630を有するモータ240を含むシステム600を例示している。機械的素子660はキャプスタンであり、器具の関節継手に付着し得る駆動腱655がキャプスタン660の周りに巻回される。腱655は、キャプスタン660の周りに巻付き得且つ金属又は合成材料で作製され得るケーブル、ワイヤ、フィラメント、又は類似の構造であり得る。腱655内の張力の適用がキャプスタン660のボアの直径を減少させ、それによって、殺菌障壁の実質的に円筒形のプラスチック構成部品(図示せず)を伴って或いは伴わないで、キャプスタン660をシャフト630上に締め付けるよう、キャプスタン660は径方向に可撓である。殺菌アダプタの他の表面が回転を伴わずに輪郭付き表面と係合し得るならば、殺菌障壁素子、キャプスタン660、又はシャフト630のもう1つの表面は、係合の牽引及びトルク伝達能力を向上させるスプライン、歯、又は他の機能を含み得る。しかしながら、2つの表面の歯又はスプラインの噛合は、シャフト630及びキャプスタン660の回転を概ね必要とし、それは望ましくない場合がある。
【0025】
モータ240を含む駆動システム上に器具を係合させるプロセスは、機械的素子660の如何なる回転をも伴わずに、シャフト630が(殺菌障壁の介装部分を伴って或いは伴わないで)機械的素子660のボア内に滑動し得るよう十分に緩められた腱655で更に開始し得る。シャフト630及び機械的素子660の相対的な向きに拘わらずシャフト630を機械的素子660内に挿入し得るよう、機械的素子660のボア及びシャフト630は対称的であり得る(円形の断面を有し得る)。その場合、後部機構内の機構は、可撓な機械的素子660をシャフト630上に締め付ける腱655の巻付きを引き起こすよう、腱655に対する予張力を増大させ或いは腱655に対して予張力を適用し得る。例えば、器具の本体に対して近位方向にキャプスタンを移動させることは、キャプスタンから延びる腱の両端の張力を増大させ、腱655の両端に結合される継手に対する対向するトルクを引き起こす。その結果、張力が増大させられるとき、継手移動は起こらない。代替的に、腱655内の張力を増大させる方向に駆動されるときにキャプスタン660がシャフト630により強力に結合するように、腱655の一端部のみが関節継手に付着するときには、キャプスタン660内への(キャプスタン、殺菌障壁、及び入力シャフトの間に少なくとも1つの滑らかな円筒形インターフェースを備える)シャフト630の挿入を許容するよう腱655内の予張力を事前設定し得る。その場合、キャプスタン660は、逆方向に駆動されるときにシャフト630に対して滑ることが許容され得る。
【0026】
機械的素子660のボア及びモータシャフト630は、テーパ付きシャフト及び穴を使用する本発明の実施態様と同様に不整列に適合するテーパを有さない。しかしながら、係合プロセス中のモータ240及びキャプスタン660の初期的な不整列に適合するよう、シャフト630又はキャプスタン660内にコンプライアンスをもたらし得る。例えば、
図7は、キャプスタン760が移動してシャフト530と整列し、次に、キャプスタン760がモータ630と係合されるときに、シャフト630及びモータ240の軸受によって主として支持されるような方法において、キャプスタン760が後部機構の構造770内に緩く保持される、本発明の実施態様を示している。代替的に、
図8に示すように、器具の後部機構内の軸受870によってキャプスタン860を支持し得るが、キャプスタン860は、シャフト630及びキャプスタン860の整列のための移動を可能にするよう、撓み、例えば、バネ又は螺旋構造を含む。
図7及び8に示す取付けのコンプライアンスは、駆動システム内の駆動素子及び医療器具内の対応する回転可能な素子の不整列に適合し、且つ医療器具内の対応する回転可能な素子に対する駆動システム内の多数の駆動素子の間隔又は向きにおける相違に適合し得る。
【0027】
特定の実施態様を参照して本発明を記載したが、その記載は本発明の適用の一例に過ぎず、限定として解釈されてはならない。開示の実施態様の機能の様々の適合及び未来合わせは、以下の請求項によって定められるような本発明の範囲内にある。