(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20220926BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20220926BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220926BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/90
H02J7/00 301D
A62B18/02 Z
(21)【出願番号】P 2019035659
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷井 恵一
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-199829(JP,A)
【文献】特開2014-131426(JP,A)
【文献】特表2015-536791(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064199(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0082839(US,A1)
【文献】特開2015-111996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
H02J 50/90
H02J 7/00
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の口を覆うマスク部材と、前記マスク部材に取り付けられる送電コイルと、前記着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対してワイヤレス給電するための磁束を生じさせるように前記送電コイルに高周波電流を供給するドライバ回路とを備える、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記送電コイルは、着用者の口の周囲を周回するよう前記マスク部材に取り付けられた線状導体からなり、前記送電コイルの外周縁が前記マスク部材の外周縁の内側に収められている、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記マスク部材は、着用者の口に対向する位置に設けられた通気開口を有するマスク本体と、該マスク本体の着用者側の側面に前記通気開口を塞ぐように着脱自在に取り付けられる交換用通気性シートとを備え、前記線状導体は前記通気開口の周囲を周回するように前記マスク本体に取り付けられる、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記送電コイルは、線状導体をスパイラル状に巻回してなるフラットコイルであり、該フラットコイルの外周縁が前記マスク部材の外周縁の内側に収められており、前記フラットコイルの中心空洞部の左右方向幅及び上下方向幅がいずれも3cm以上である、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項5】
着用者の口を覆うマスク部材と、該マスク部材に互いに位置をずらして取り付けられる複数の送電コイルと、前記着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対してワイヤレス給電するための磁束を生じさせるように前記複数の送電コイルのうち一の送電コイルに高周波電流を供給するドライバ回路とを備える、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項6】
請求項5に記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記ドライバ回路は、前記着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対する給電効率が最も高い一の送電コイルを自動選択して、該一の送電コイルに前記高周波電流を供給するよう構成されている、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記複数の送電コイルは左右方向に並設されているとともに、隣り合う送電コイル同士が左右方向にオーバーラップしている、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記マスク部材は口腔内と外気との間の通気性を有するシート状部材であり、前記送電コイルは前記マスク部材の通気性を確保するように前記マスク部材に取り付けられる、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記マスク部材の左右両側部に耳掛け部が設けられている、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記ドライバ回路は前記マスク部材に取り付けられる、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記ドライバ回路は前記マスク部材とは別体の筐体内に設けられ、前記送電コイルは配線ケーブルを介して前記ドライバ回路に電気的に接続されている、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置において、前記マスク部材は着用時に着用者の口周辺の顔面形状に沿って変形する柔軟なシート状部材であり、前記送電コイルは、前記マスク部材の変形に伴って塑性変形して前記マスク部材の変形後の形状を保持する形状保持部材として機能する、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の口腔内に装着される電子デバイス、例えばマウスピース型の電子デバイスに対してワイヤレス給電するためのワイヤレス給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マウスピースにセンサ、回路基板及びボタン電池を埋め込んで身体情報を取得するマウスピース型の電子デバイスが提案されており、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のマウスピース型の電子デバイスでは、口腔内に微弱電流が漏れると種々の身体的異常の発症の原因となるおそれがあるため、ボタン電池や回路基板は絶縁性の高い材料内に完全に封入されており、電池が消耗しても交換することはできない。さらに、充電用端子を設けるとそこから漏電するおそれもあることから、電池としては一次電池が用いられ、完全に密封されている。したがって、電池が完全に放電するとマウスピース型電子デバイスは使い捨てになる。
【0005】
したがって、電源として二次電池を用いることが求められるが、歯科矯正用のマウスピースなどは長期間にわたって口腔内に装着したまま外さないことが求められるし、その他身体情報を長時間にわたって継続的に取得することが求められる場合、マウスピース型電子デバイスを口腔内から一旦取り外して外部のワイヤレス給電装置を用いて充電することができない。
【0006】
そこで、本発明は、マウスピース型電子デバイスなどの口腔内電子デバイスを口腔内に装着したままの状態で、着用者の違和感を低減しつつ、口腔内電子デバイスに対して効率的にワイヤレス給電を行える口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置は、着用者の口を覆うマスク部材と、前記マスク部材に取り付けられる送電コイルと、前記着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対してワイヤレス給電するための磁束を生じさせるように前記送電コイルに高周波電流を供給するドライバ回路とを備えていてよい。
【0008】
また、本発明の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置は、着用者の口を覆うマスク部材と、該マスク部材に互いに位置をずらして取り付けられる複数の送電コイルと、前記着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対してワイヤレス給電するための磁束を生じさせるように前記複数の送電コイルのうち一の送電コイルに高周波電流を供給するドライバ回路とを備えていてよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、口腔内電子デバイスに対してワイヤレス給電を行う送電コイルを、着用者の口を覆うマスク部材に取り付けたので、送電コイルを口腔内電子デバイスに近い位置に容易に保持させておくことができ、効率的にワイヤレス給電を行えるとともに、装着者の違和感を低減できる。
【0010】
さらに、複数の送電コイルを設けておけば、口腔内電子デバイスの受電コイルの位置に対応する一の送電コイルを手動乃至自動で選択して、選択された一の送電コイルを用いて効率的にワイヤレス給電を行うことができる。
【0011】
なお、本発明のワイヤレス給電装置は、口腔内電子デバイスに内蔵された二次電池を充電するためにワイヤレス給電を行うものであってもよく、また、口腔内電子デバイスの動作電力を随時供給するためにワイヤレス給電を行うものであってもよい。後者の場合、口腔内電子デバイスは電池を内蔵していなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置の正面図である。
【
図2】本発明の第2実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置の正面図である。
【
図3】本発明の第3実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置の正面図である。
【
図4】本発明の第4実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置の正面図である。
【
図5】本発明の第5実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置を示し、(a)は交換用通気性シートをマスク部材に取り付ける前の状態の正面図、(b)は交換用通気性シートをマスク部材に取り付けた状態の正面図である。
【
図6】着用者の顔面を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図7】着用者が本発明の口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置を着用した状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のワイヤレス給電装置によりワイヤレス給電を行う口腔内電子デバイスは、例えば、
図8に仮想線で示すマウスピース型の電子デバイスであってよく、その他、特定の歯に装着するタイプの電子デバイスや、舌に埋め込む電子デバイスなど、適宜のものであってよい。
【0014】
マウスピース型の電子デバイスは、マウスピース本体10と、マウスピース本体10の所定の部位に埋め込まれる受電コイル11と、所定の電気的動作を行う回路基板(図示せず)とを備え、回路基板もマウスピース本体10に埋め込まれる。さらに、好ましくは二次電池(図示せず)もマウスピース本体10に埋め込むことができる。回路基板は、受電コイル11で受電した電力を用いて二次電池を充電する充電部を備えていても良いし、また、受電電力を用いて所定の測定動作を行う測定部を備えていてよい。
【0015】
図8に示すように、受電コイル11は、下顎の左右いずれかの2つの小臼歯の外側部に設けることができる。一般的な人の歯列において、小臼歯の外側部は他の部位に比して平坦であるため、2つの小臼歯に亘る大きさの受電コイル11を比較的違和感なくコンパクトにマウスピース本体11に埋め込むことができる。
【0016】
また、下顎の2つの小臼歯の外側の頬肉部位A(
図6参照)は、他の顔面の部位に比して肉厚が薄いため、2つの小臼花の外側部に受電コイル11を配置することで、顔面の外側の送電コイルとの間の電磁結合が強くなり、ワイヤレス給電効率を向上できる。
【0017】
本発明の一実施形態において、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置は、着用者の口を覆うマスク部材と、マスク部材に取り付けられる送電コイルと、着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対してワイヤレス給電するための磁束を生じさせるように送電コイルに高周波電流を供給するドライバ回路とを備える。好ましくは、マスク部材は、着用者の顔面形状に沿って柔軟に変形するシート状の部材であってよい。なお、本願明細書において、「シート状」とは、0.1mm~10数mm程度の薄板状を意味し、表地、裏地及び一又は複数の中間層を有する積層シートの形態や、シート状のマスク本体に別体のシート状部材を着脱自在に貼り付けてなる積層シートの形態をも含むものとする。
【0018】
送電コイルは、着用者の口の周囲を周回するようにマスク部材に取り付けられた線状導体からなるものであってよい。これによれば、一の送電コイルによって、口腔内の広い範囲に磁束を生じさせることができ、口腔内電子デバイスの受電部、典型的には受電コイルの口腔内における位置が不定であっても、口腔内電子デバイスに対してワイヤレス給電を行うことができる。
【0019】
送電コイルの外周縁は、前記マスク部材の外周縁の内側に収められていることが好ましい。これにより、マスク部材の外周縁から外方に送電コイルが露出せず、着用状態の美感を向上できる。
【0020】
マスク部材は、着用者の口に対向する位置に設けられた通気開口を有するマスク本体と、マスク本体の着用者側の側面に通気開口を覆うように着脱自在に取り付けられる交換用通気性シートとを備えることができる。この場合、上記線状導体は通気開口の周囲を周回するようにマスク本体に取り付けることが好ましい。かかる構成によれば、交換用通気性シートを交換することによって衛生的に着用できるとともに、マスク本体の劣化を防止することができ、送電コイルを内蔵するマスク部材を繰り返し利用できる。
【0021】
また、送電コイルは、線状導体をスパイラル状に巻回してなるフラットコイルであってよい。これによれば、シート状乃至マット状のマスク部材の厚みを小さく抑えつつ、送電コイルをマスク部材に取り付けることができる。フラットコイルの外周縁はマスク部材の外周縁の内側に収められていることが好ましい。
【0022】
また、成人の口の横幅(口裂幅)は4~5cm程度であり、マスク着用時の口唇部における呼気の気道の横幅は2~3cmとなるため、フラットコイルの中心空洞部の左右方向幅は3cm以上であることが好ましい。また、フラットコイルの中心空洞部の上下方向幅については、受電コイルの直径や配置等に応じて適宜設計できる。例えば、受電コイルの直径が1cm程度であれば、フラットコイルの扁平率が多少大きくなっても受電コイルの直径よりも若干大きい程度、例えば3cm程度とする方が送電効率が良くなる。
【0023】
本発明の別の実施形態において、口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置は、着用者の口を覆うマスク部材と、該マスク部材に互いに位置をずらして取り付けられる複数の送電コイルと、前記着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対してワイヤレス給電するための磁束を生じさせるように前記複数の送電コイルのうち一の送電コイルに高周波電流を供給するドライバ回路とを備えることができる。
【0024】
好ましくは、ドライバ回路は、着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対する給電効率が最も高い一の送電コイルを自動選択して、該一の送電コイルに高周波電流を供給するよう構成することができる。
【0025】
複数の送電コイルは左右方向に並設されていてよい。好ましくは、隣り合う送電コイル同士が左右方向にオーバーラップしている。これによれば、口腔内電子デバイスの受電部、典型的には受電コイルの口腔内での左右方向及び前後方向位置が不定であっても、受電コイルの位置に対応する送電コイルを用いて効率的にワイヤレス給電を行うことができる。
【0026】
上述したいずれの態様においても、マスク部材は口腔内と外気との間の通気性を有するシート状部材であることが好ましく、また、送電コイルはマスク部材の通気性を確保するようにマスク部材に取り付けることが好ましい。なお、「通気性を確保する」とは、送電コイルの取り付けによってマスク部材自体が有する通気性をある程度阻害するが、マスク部材及び送電コイル全体として通気性を有する場合も含む。
【0027】
マスク部材の左右両側部には耳掛け部を設けておくことが好ましい。これにより、着用時に、マスク部材が着用者の口周辺を覆うように位置付けられるとともに、マスク部材が着用者の顔面形状に沿って変形して、マスク部材に取り付けた送電コイルを着用者の顔面に近づけることができる。
【0028】
一態様において、上記ドライバ回路はマスク部材に取り付けられていてよい。さらに、ドライバ回路は、電源となる電池を含んでいてよい。好ましくは、電池として、フィルム型電池やボタン電池を用いることができる。また、電池は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。
【0029】
一態様において、上記ドライバ回路は、マスク部材とは別体の筐体内に設けられていてよい。この場合、送電コイルは配線ケーブルを介してドライバ回路に電気的に接続される。かかる構成によれば、ドライバ回路の電源電池として大容量のものを用いることができる。
【0030】
一態様において、マスク部材は着用時に着用者の口周辺の顔面形状に沿って変形する柔軟なシート状部材であり、送電コイルは、マスク部材の変形に伴って塑性変形して前記マスク部材の変形後の形状を保持する形状保持部材として機能する。なお、形状保持部材として機能する送電コイルは、マスク部材の変形後の形状を厳密に保持するようなものではなく、送電コイルが取り付けられていない状態のマスク部材と比較して、顔面形状に沿って変形した後の形状保持性が高まるようなものであってよい。例えば、フレキシブル基板により構成された送電コイルは形状保持部材としては機能しないが、単線により構成された送電コイルは形状保持部材として機能し得る。リッツ線により構成された送電コイルは、通常、形状保持部材として機能しないと考えられるが、リッツ線の構造によっては形状保持部材として機能する場合もあり得ると考えられる。
【0031】
一態様において、送電コイルの中心空洞部が着用者の口に対向するように送電コイルをマスク部材に取り付けることができ、例えば、マスク部材の中央部に送電コイルを配置できる。
【0032】
なお、ドライバ回路は適宜の回路構成であってよく、市販のドライバICを用いて実現することも可能であり、典型的には、ハーフブリッジ又はフルブリッジ構成のインバータにより構成できる。高周波電流の周波数は、口腔内電子デバイス側の受電コイルを含む共振回路の共振周波数に合わせることが好ましい。共振回路の特性として、インピーダンスが極大となる並列共振周波数と、インピーダンスが極小となる直列共振周波数が存在することが判明しているが、好ましくは直列共振周波数に高周波電流の周波数を合わせることができる。さらに、送電コイルと受電コイルとの間の距離や角度の変化等によって共振周波数が変化する場合には、この口腔内電子デバイス側の共振周波数の変化に追従して高周波電流の周波数も自動的に変動するよう構成することもできる。
【実施例】
【0033】
以下、主に送電コイルの配置や取り付け方についての実施例を図面に基づいて説明する。
【0034】
〔第1実施例〕
図1は、本発明の第1実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置1を示している。該装置1は、シート状のマスク部材2と、マスク部材2に取り付けられた送電コイル3と、送電コイル3に高周波電流を供給するドライバ回路4とを備えている。
【0035】
マスク部材2は、正面視において着用者の口周辺を覆う程度の大きさの長方形状を呈している。マスク部材2は、図示していないが、不織布等の布製の表地と裏地との間にフィルターを挟み込んでなる従来周知の構造であってよい。送電コイル3は、表地とフィルターとの間、若しくは、裏地とフィルターとの間に内蔵することができる。
【0036】
マスク部材2の左右両側部にはそれぞれ柔軟な素材からなる耳掛け部2L,2Rが設けられている。耳掛け部2L,2Rはマスク部材2と一体成形されるものであってもよいし、マスク部材2に接着乃至縫製等によって取り付けられるものであってもよい。
【0037】
送電コイル3は、線状導体をスパイラル状に巻回してなるフラットコイルからなる。線状導体としては単線を用いてもよいし、リッツ線を用いてもよいし、フレキシブル基板上に形成したプリント配線の形態であってもよい。単線は安価という利点がある。リッツ線は柔軟で給電効率が良いという利点がある。フレキシブル基板は最も柔軟でマスクに適合するが、高価である。
【0038】
ドライバ回路4は、図示実施例ではマスク部材2の上側縁に沿うようにマスク部材2に内蔵され、送電コイル3はマスク部材2内に埋め込まれた配線ケーブル5を介してドライバ回路4に電気的に接続されているが、ドライバ回路4はマスク部材2の適宜の位置に配置することができる。さらに、ドライバ回路を、マスク部材2とは別体の筐体(図示せず)内に設けて、マスク部材2から外部に引き出された配線ケーブルを介して送電コイル3をドライバ回路に電気的に接続することもできる。この場合、ドライバ回路を内蔵する筐体は、着用者の胸ポケットなどに収容できる。
【0039】
なお、ドライバ回路4は、電源となる電池41を含んでいる。電池41としては一次電池を用いることもできるし、二次電池を用いることもできる。また、電池41を交換可能なようにマスク部材2に取り付けることもできる。また、電池41としては、ボタン電池やフィルム型電池など、マスク部材2に内蔵可能な種々の電池を用いることができる。
【0040】
第1実施例においては、比較的大きな径の送電コイル3をマスク部材2の正面視略中央に取り付けている。この送電コイル3の外周縁の左右方向幅はマスク部材2の左右方向幅の60%以上であり、送電コイル3の外周縁の上下方向幅はマスク部材2の上下方向幅の60%以上である。また、送電コイル3の中心空洞部の左右方向幅Wは、例えば5cm以上であり、送電コイル3の中心空洞部の上下方向幅Hは、例えば4cm以上である。
【0041】
第1実施例に係るワイヤレス給電装置1によれば、比較的大きな送電コイル3によって口腔内の広い領域に磁束を生じさせることができ、口腔内に装着された電子デバイスの受電コイルの位置が定まっていなくとも、汎用的に利用可能である。さらに、着用者の口周辺で最も肉厚である口唇を避けて、口唇の周囲を送電コイル3が周回するように配置されるため、送電コイル3と口腔内の受電コイルとの間の距離を小さくすることができ、ワイヤレス給電効率を向上することができる。
【0042】
〔第2実施例〕
図2は本発明の第2実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置1を示しており、上記第1実施例と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0043】
第2実施例では、比較的小さな径の送電コイル3をマスク部材2に取り付けている。コイル駆動電力が同じ場合、コイル径が小さいほど磁束密度は大きくなるため、口腔内電子デバイスの受電コイルの位置がある程度定まっている場合に有利である。すなわち、本実施例では、受電コイルに対応する位置となるよう比較的小さな径の送電コイル3をマスク部材2に取り付ける。
【0044】
第2実施例において、送電コイル3の中心空洞部の左右方向幅及び上下方向幅は、小さすぎるとマスク部材2の通気性を大きく阻害するおそれがあるため、3cm以上であることが好ましい。送電コイル3の外周縁の左右方向幅は、例えば4cm以下とすることができる。送電コイル3の外周縁の上下方向幅は、例えば4cm以下とすることができる。
【0045】
〔第3実施例〕
図3は本発明の第3実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置1を示しており、上記第2実施例と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0046】
第3実施例では、比較的小さな径の3つの送電コイル3L,3C,3Rを左右方向に並設してマスク部材2に取り付けている。さらに、中央の送電コイル3Cと左側の送電コイル3Lの左右側部同士、並びに、中央の送電コイル3Cと右側の送電コイル3Rの左右側部同士を、それぞれ左右方向にオーバーラップさせている。
【0047】
また、ドライバ回路4は、着用者の口腔内に装着される電子デバイスに対する給電効率が最も高い一の送電コイルを自動選択して、該一の送電コイルに前記高周波電流を供給するよう構成されている。送電コイルの自動選択は従来周知の適宜の方法によって行わせることができ、例えば、動作開始初期に3つの送電コイルを順次切り替えてワイヤレス給電動作を行わせた場合の負荷変動に基づいて、最も給電効率の良い一の送電コイルを自動選択するよう構成できる。
【0048】
第3実施例のワイヤレス給電装置1によれば、口腔内に装着される電子デバイスの受電コイルの位置が不定であっても、3つの送電コイルのうち最も給電効率の良い一の送電コイルを自動選択して、効率良くワイヤレス給電を行うことができる。
【0049】
なお、左右の送電コイル3L,3Rは、マスク部材2の着用時に、
図8に示すように小臼歯の外側部に配置された受電コイル11に対向する位置(
図6及び
図7参照)に取り付けておくことが好ましい。
【0050】
〔第4実施例〕
図4は本発明の第4実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置1を示しており、上記第2実施例と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0051】
第4実施例では、マスク部材2は、シート状のマスク本体2aと、マスク本体2aとは別体に構成されてマスク本体2aの表面側又は裏面側の適宜の位置に粘着シートや面ファスナー等の適宜の手段により取り付けられる装置実装シート2bとから構成されている。装置実装シート2bには、送電コイル3及びドライバ回路4(電池41を含む。)が取り付けられている。
【0052】
第4実施例によれば、マスク本体2aとして市販のマスクを用いることができる。また、口腔内の電子デバイスの受電コイルの位置に応じて装置実装シート2bの貼り付け位置を調整することが可能である。
【0053】
〔第5実施例〕
図5は本発明の第5実施例に係る口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置1を示しており、上記第1実施例と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0054】
第5実施例では、マスク部材2は、着用者の口に対向する位置(図示例ではマスク部材2の中央部)に設けられた正面視楕円形の通気開口6を有するマスク本体21と、マスク本体21の着用者側の側面に通気開口6を塞ぐように着脱自在に取り付けられる交換用通気性シート22とを備えている。
【0055】
送電コイル3を構成する線状導体は通気開口6の周囲を周回するようにマスク本体21に取り付けられている。
【0056】
通気開口6の大きさは、着用者の閉じた状態の口よりも大きいことが好ましく、例えば、通気開口6の左右方向幅は5cm以上であることが好ましく、また、通気開口6の上下方向幅は4cm以上であることが好ましい。
【0057】
第5実施例によれば、マスク本体21を繰り返し使用する場合でも、交換用通気性シート22を交換することによって衛生的に着用することができるとともに、マスク本体21の劣化を防止できる。
【符号の説明】
【0058】
1 口腔内電子デバイス用ワイヤレス給電装置
2 マスク部材
2L,2R 耳掛け部
3 送電コイル
4 ドライバ回路
6 通気開口