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特許7145792見落し検知装置、見落し検知方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】見落し検知装置、見落し検知方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019042153
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020144731
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】502324066
【氏名又は名称】株式会社デンソーアイティーラボラトリ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】水野 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 顕
(72)【発明者】
【氏名】林 哲洋
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-357498(JP,A)
【文献】特開2005-135037(JP,A)
【文献】特開2015-170249(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者を撮影するカメラと、
前記カメラにて撮影した映像に基づいて運転者の視線を検知する視線検知部と、
車両周辺を撮影する可視光カメラにて撮影された映像からそれぞれの物体を認識したときの確信度に基づいて、それぞれの物体の認知に関する有効領域の大きさを設定する有効領域サイズ設定部と、
前記視線と前記有効領域サイズ設定部にて設定された大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に前記物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定する判定部と、
を備える見落し検知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記物体が前記有効領域に入っている時間が所定の閾値以上である場合に運転者が前記物体を認知していると判定し、前記所定の閾値未満の場合に前記物体を見落としていると判定する請求項1に記載の見落し検知装置。
【請求項3】
前記有効領域サイズ設定部は、運転者の年齢に基づいて前記有効領域の大きさを設定する請求項1または2に記載の見落し検知装置。
【請求項4】
前記有効領域サイズ設定部は、前記物体が止まっているときの方が前記物体が移動しているときよりも有効領域を小さく設定する請求項1乃至のいずれかに記載の見落し検知装置。
【請求項5】
前記有効領域サイズ設定部は、車両周辺に物体が多いほど前記有効領域を小さく設定する請求項1乃至のいずれかに記載の見落し検知装置。
【請求項6】
車両周辺の物体の運転者による見落しを検知する方法であって、
運転者を撮影するカメラにて撮影した映像を取得するステップと、
前記映像に基づいて運転者の視線を検知するステップと、
車両周辺を撮影する可視光カメラにて撮影された映像からそれぞれの物体を認識したときの確信度に基づいて、それぞれの物体の認知に関する有効領域の大きさを設定するステップと、
前記視線と設定された有効領域の大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に前記物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定するステップと、
を備える見落し検知方法。
【請求項7】
車両周辺の物体の運転者による見落しを検知するためのプログラムであって、コンピュータに、
運転者を撮影するカメラにて撮影した映像を取得するステップと、
前記映像に基づいて運転者の視線を検知するステップと、
車両周辺を撮影する可視光カメラにて撮影された映像からそれぞれの物体を認識したときの確信度に基づいて、それぞれの物体の認知に関する有効領域の大きさを設定するステップと、
前記視線と設定された有効領域の大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に前記物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見落し検知装置、見落し検知方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転者を支援する様々な運転支援システムが研究・開発されている。特許文献1は、運転者が視認すべき視認対象物を確実に検出する視覚認知支援に関する発明を開示している。この文献に記載された発明では、カメラによって取得された周囲状況を示す画像に基づいて、運転者が見るべき視認対象物が決定される。そして、アイカメラによって検出される運転者の視線方向にはない視認対象物を、運転者が見落としている視認対象物と判定し、この見落としている視認対象物の方向へ運転者の視線を誘導する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-111649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術では、運転者が視認すべき視認対象物のほうを見ていないときに見落としと判定しているが、運転者の視線方向が視認対象物の方向を向いている場合にも見落としていることはある。本発明者らは、このような見落しの一つの要因として、視認対象物を認知しづらい状況があると考え、本発明をするに至った。本発明は、運転者の見落としを適切に検知する見落とし検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の見落し検知装置は、運転者を撮影するカメラと、前記カメラにて撮影した映像に基づいて運転者の視線を検知する視線検知部と、車両周辺を撮影する可視光カメラにて撮影された映像から物体を認識したときの確信度に基づいて、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定する有効領域サイズ設定部と、前記視線と前記有効領域サイズ設定部にて設定された有効領域の大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に前記物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定する判定部とを備える。
【0006】
本発明では、可視光カメラの映像に基づく物体認識の確信度に基づいて、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定する。可視光カメラにて撮影した映像に基づく物体認識の精度は、人間が物体を認知できる精度に近いので、物体認識の確信度に基づいて設定された大きさの有効領域に物体が入っているか否かを判定することで、運転者が物体を認知しているか見落としているかを適切に検知できる。
【0007】
本発明の見落し検知装置は、運転者を撮影するカメラと、前記カメラにて撮影した映像に基づいて運転者の視線を検知する視線検知部と、車両の外部環境に基づいて、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定する有効領域サイズ設定部と、前記視線と前記有効領域サイズ設定部にて設定された有効領域の大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に、周辺監視センサにて検知された物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定する判定部とを備える。
【0008】
このように車両の外部環境に基づいて物体の認知に関する有効領域の大きさを設定することにより、外部環境に起因して変わる物体の認知のしやすさを反映した有効領域を設定し、見落しの検知を適切に行うことができる。
【0009】
本発明の見落し検知装置において、前記有効領域サイズ設定部は、現在時刻、照度センサにより検知した照度、車両の速度、ヘッドライトの点灯状態、フォグランプの点灯状態、ワイパーの動作状態、走行位置情報の少なくとも1つに基づいて外部環境を推定し、推定した外部環境に基づいて前記有効領域の大きさを設定してもよい。
【0010】
この構成により、現在時刻によって日中か夜間かを判定し、例えば、日中は物体を認知しやすいので有効領域を大きく、夜間は物体を認知しにくいので有効領域を小さく設定することができる。また、照度センサによって検知した照度を用いることで、外部の明るさの状況を有効領域の大きさに反映できる。さらに、ヘッドライトやフォグランプの点灯状態、ワイパーなどの動作状態や車両の速度は、外部環境に反応して行われた運転者の操作であると考えられるので、これらの状態から外部環境を推定できる。さらに、走行位置情報に基づいて地図から外部環境を推定することも可能である。
【0011】
本発明の見落し検知装置において、前記判定部は、前記物体が前記有効領域に入っている時間が所定の閾値以上である場合に運転者が前記物体を認知していると判定し、前記所定の閾値未満の場合に前記物体を見落していると判定してもよい。
【0012】
運転者の視線の有効領域の中に物体が入っている場合であってもその時間があまりに短いと、物体を認知することができない。本発明によれば、物体が有効領域に入っている時間が所定の閾値以上である場合に物体を認知していると判定するので、有効領域内にある物体の見落しをも検知することができる。
【0013】
本発明の見落し検知装置において、前記有効領域サイズ設定部は、運転者の年齢に基づいて前記有効領域の大きさを設定してもよい。
【0014】
物体を認知することができる有効領域は年齢によって狭くなるので、有効領域の大きさを運転者の年齢に基づいて設定することにより、年齢に応じた適切な見落し検知を行える。
【0015】
本発明の見落し検知装置において、前記有効領域サイズ設定部は、前記物体が止まっているときの方が前記物体が移動しているときよりも有効領域を小さく設定してもよい。
【0016】
止まっている物体は移動している物体よりも認知しにくいが、本発明によれば、止まっている物体については有効領域を小さく設定することにより、見落しの検知精度を高く保持することができる。
【0017】
本発明の見落し検知装置において、前記有効領域サイズ設定部は、車両周辺に物体が多いほど前記有効領域を小さく設定してもよい。
【0018】
車両周辺に物体が多いと物体を認知しづらくなるが、本発明によれば、車両周辺の物体が多いほど有効領域を小さく設定することにより、見落しの検知精度を高く保持することができる。
【0019】
本発明の見落し検知方法は、車両周辺の物体の運転者による見落しを検知する方法であって、運転者を撮影するカメラにて撮影した映像を取得するステップと、前記映像に基づいて運転者の視線を検知するステップと、車両周辺を撮影する可視光カメラにて撮影された映像から物体を認識したときの確信度に基づいて、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定するステップと、前記視線と設定された有効領域の大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に前記物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定するステップとを備える。
【0020】
本発明の見落し検知方法は、車両周辺の物体の運転者による見落しを検知する方法であって、運転者を撮影するカメラにて撮影した映像を取得するステップと、前記映像に基づいて運転者の視線を検知するステップと、車両の外部環境に基づいて、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定するステップと、前記視線と設定された有効領域の大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に、周辺監視センサにて検知された物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定するステップとを備える。
【0021】
本発明のプログラムは、車両周辺の物体の運転者による見落しを検知するためのプログラムであって、コンピュータに、運転者を撮影するカメラにて撮影した映像を取得するステップと、前記映像に基づいて運転者の視線を検知するステップと、車両周辺を撮影する可視光カメラにて撮影された映像から物体を認識したときの確信度に基づいて、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定するステップと、前記視線と設定された有効領域の大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に前記物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定するステップとを実行させる。
【0022】
本発明のプログラムは、車両周辺の物体の運転者による見落しを検知するためのプログラムであって、コンピュータに、運転者を撮影するカメラにて撮影した映像を取得するステップと、前記映像に基づいて運転者の視線を検知するステップと、車両の外部環境に基づいて、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定するステップと、前記視線と設定された有効領域の大きさとに基づいて有効領域を設定し、前記有効領域の中に、周辺監視センサにて検知された物体が入っているか否かに基づいて、運転者が前記物体を認知しているか否かを判定するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、物体の認知のしやすさを考慮して、運転者の見落しを適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施の形態の見落し検知装置の構成を示す図である。
図2】第1の実施の形態の見落し検知装置の動作を示すフローチャートである。
図3】第2の実施の形態の見落し検知装置の構成を示す図である。
図4】外部環境を検知する機器と各機器で検知できる環境の情報を示す図である。
図5】第2の実施の形態の見落し検知装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態の見落し検知装置について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の見落し検知装置1の構成を示す図である。第1の実施の形態の見落し検知装置1は、通信部10を備えており、車両周辺にある物体を検知するミリ波レーダ20、および、車両周辺を撮影する可視光カメラ21と通信を行う。ミリ波レーダ20は、雨や霧などの影響を受けにくく、また、夜間でも物体を検知することができる。可視光カメラ21は、広い視野を有し、歩行者や先行者を認識することができる。ミリ波レーダ20および可視光カメラ21は、車両の周辺の状況をセンシングする周辺監視センサである。
【0026】
なお、本実施の形態では、車両周辺の物体を検出するのにミリ波レーダを用いる例を挙げたが、車両周辺にある他の車両や歩行者を検出する方法として、V2Xによる通信により周辺にある物体の情報を取得する方法を採用してもよい。V2Xは、車両(Vehicle)とモノとの通信の総称であり、車両とネットワーク(V2N)、車両と車両(車車間通信:V2V)、車両とインフラ(路車間通信:V2I)、車両とスマートホンを持った歩行者(V2P)を含む。
【0027】
見落し検知装置1は、運転者を撮影する車内カメラ12と、車内カメラ12にて撮影した映像に基づいて運転者の視線を検知する視線検知部13とを備えている。車内カメラ12は、運転者の顔に近赤外線を照射し、撮影を行うカメラである。近赤外線を用いているので、夜間でも運転者を撮影することができる。視線検知部13は、運転者の顔の動きと眼球の動きに基づいて運転者の視線が向いている方向を検知する。
【0028】
また、見落し検知装置1は、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定する有効領域サイズ設定部11を備えている。ここで、「有効領域」について説明する。人間が物体を認知できるのは、人間の視線が認知対象の物体がある方向と一致する方向だけでなく、認知対象の物体が視線の方向に対して一定の幅を持った領域に入っていれば、その物体を認知することが可能である。本明細書では、このような物体の認知に関する領域を有効領域としている。
【0029】
有効領域の大きさは常に一定というわけではなく、例えば、物体の色や輝度等と、背景の色や輝度等との関係によって変化する。例えば、晴れた日の昼間のように周囲が明るい場合には、物体を認知しやすい。このような状況では、周辺視で物体を認知することが可能であり、有効領域は大きい。これに対し、周囲が薄暗くなる夕方や雨天だと物体を認知しにくく、物体を直視すれば認知することができるものの、周辺視で物体を認知することは困難なので、有効領域は小さい。
【0030】
有効領域サイズ設定部11は、可視光カメラ21にて撮影した映像に基づき物体認識をしたときの確信度に基づいて有効領域の大きさを設定する機能を有する。「確信度」とは、物体認識を行ったときに、その物体認識の結果の確からしさを示す度合いである。確信度は、例えば、歩行者などの物体とその背景との間のコントラスト比、明度差または色差を使って計算してもよい。有効領域は、例えば、視線方向を中心として周囲20度の範囲、周囲3度の範囲、0の3段階で設定することができる。20度は周辺視で物体を認知可能な状態、3度は直視すれば物体を認知可能な状態、0は見えていない状態である。
【0031】
有効領域サイズ設定部11は、可視光の映像に基づく物体認識の確信度が所定の閾値以上の場合には有効領域を20度とし、確信度が所定の閾値未満の場合には有効領域を3度とし、物体認識が行えなかった場合には、有効領域を0とする。なお、物体認識が行えなかったことがわかるのは、ミリ波レーダ20によって物体が存在していることがわかっているからである。つまり、ミリ波レーダ20により物体が検知されているにもかかわらず、可視光カメラ21の映像から物体を認識できない場合には、物体が存在しないのではなく、可視光の映像から物体が認識できなかったからと判定できる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、有効領域の大きさは、物体認識の確信度によって決まるので、それぞれの物体について有効領域の大きさが異なることがあり得る。例えば、夜間であっても、光っている物体については有効領域が大きく、黒い物体は有効領域が小さいか、または0となる。
【0033】
判定部14は、視線に基づいて有効領域を設定し、設定された有効領域の中に物体が入っているか否かに基づいて、運転者がその物体を認知しているか、見落としているかを判定する。有効領域は、運転者の視線を中心として、有効領域サイズ設定部11で設定された大きさの領域(例えば、20度の範囲や3度の範囲)である。
【0034】
判定部14は、物体が有効領域の中に所定時間以上入っているときに物体を認知したと判定し、所定時間に満たないときには物体を認知していない、つまり物体を見落としていると判定する。このように、物体が有効領域内に所定時間以上入っていることを条件としているのは、人間が物体を認知するのには一定の時間がかかるからである。
【0035】
出力部15は、判定部14による見落しの判定結果を、例えば、警報装置などの他の機器に対して出力する機能を有する。これにより、警報装置などの他の機器は、見落しに応じた制御を行うことができる。例えば、警報装置であれば、運転者に対して注意喚起を行うことができる。なお、出力部15は、見落しがあったと判定された場合のみ出力をし、見落しがなかった場合には出力しないこととしてもよい。
【0036】
以上、本実施の形態の見落し検知装置1の構成について説明したが、上記した見落し検知装置1のハードウェアの例は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、通信インターフェース等を備えたコンピュータである。上記した各機能を実現するモジュールを有するプログラムをRAMまたはROMに格納しておき、CPUによって当該プログラムを実行することによって、上記した見落し検知装置1が実現される。このようなプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0037】
図2は、第1の実施の形態の見落し検知装置1の動作を示すフローチャートである。見落し検知装置1は、ミリ波レーダ20により車両周辺にある物体を検知する(S10)。また、見落し検知装置1は、可視光カメラ21により車両周辺を撮影し(S11)、撮影で得られた映像を用いて物体認識を行う(S12)。このとき、見落し検知装置1は、物体認識の確信度を算出する(S12)。続いて、見落し検知装置1は、物体認識の確信度に基づいて有効領域の大きさを設定する(S13)。物体認識の確信度が所定の閾値以上の場合には有効領域の大きさを20度の範囲とし、物体認識の確信度が所定の閾値未満の場合には有効領域の大きさを3度の範囲とし、物体認識が行えなかった場合には有効領域を0とする。物体認識の確信度は、車両周辺にある物体毎に求まり、有効領域の大きさは物体毎に定まる。
【0038】
見落し検知装置1は、車内カメラ12にて運転者を撮影した映像から運転者の視線を検知する(S14)。続いて、見落し検知装置1は、ミリ波レーダ20にて検知された物体を運転者が見落としていないか否か、すなわち、物体を認知しているかどうかを判定する(S15)。具体的には、見落し検知装置1は、運転者の視線方向を中心とする有効領域の範囲内に、物体が所定時間にわたって入っているか否かを判定する。ここで用いられる有効領域の大きさは、判定の対象となる物体によって異なる。
【0039】
見落し検知装置1は、見落しがあると判定した場合には、例えば、警報装置にその旨の情報を出力し(S16)、運転者に対して警報を発して注意喚起を行う。
【0040】
以上、第1の実施の形態の見落し検知装置1の構成および動作について説明した。第1の実施の形態の見落し検知装置1は、視線が物体のある方向を直視しているかではなく、有効領域を用いて見落しを判定するので、運転者の見落しを適切に検知できる。また、有効領域は、可視光カメラ21の映像からの物体認識の確信度に基づいて物体毎に設定されるので、各物体の見つけやすさに応じた大きさとすることができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、ミリ波レーダ20からのデータを用いる例を挙げたが、ミリ波レーダ20からのデータを用いない構成とすることも可能である。この場合には、可視光カメラ21にて撮影した映像から認識される物体を運転者が認知しているか否かを判定することになる。
【0042】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の見落し検知装置2の構成を示す図である。第1の実施の形態の見落し検知装置1は、可視光カメラ21の映像による物体認識の確信度に基づいて有効領域を設定したが、第2の実施の形態の見落し検知装置2は、外部環境に基づいて有効領域の大きさを設定する。
【0043】
第2の実施の形態の見落し検知装置2では、通信部10は、外部環境に関する情報を取得する各種センサ22や車両機器23と通信を行う。有効領域サイズ設定部11は、各種センサ22や車両機器23からの情報に基づいて車両の外部環境を推定し、外部環境に基づいて、物体の認知に関する有効領域の大きさを設定する。ここで「外部環境」とは、見通しの良さや、交通状況、走行中の道路など、運転者による物体の認知に関係する環境である。
【0044】
図4は、外部環境を検知する機器と各機器で検知できる環境の情報を示す図である。見通しについての情報を取得するための機器としては、例えば、時計、照度センサ、ヘッドライト、フォグランプ、ワイパー、GPS及び地図データベースがある。時計からの情報に基づいて昼間、夕方、夜間の別を判定でき、周囲の明るさを推定できる。照度センサによるセンシング結果により、直接に明るさを測定できる。
【0045】
また、車両機器の動作状態に基づいて外部環境を推定することも可能である。例えば、ヘッドライトが点灯している場合には、周囲が暗いと推定することができる。フォグランプが点灯している場合には、霧が出ていて見通しが悪いと推定できる。ワイパーが動作している場合には、雨が降っていて見通しが悪いと推定できる。ワイパーが高速で動作している場合には、激しい雨でかなり見通しが悪いと推定できる。
【0046】
また、外部環境は、走行位置情報からも推定できる。この例では、GPS及び地図データベースを用いることで、現在走行中の道路の道路種別を判定でき、例えば、高速道路か一般道か、一般道の場合には2車線か1車線か等の情報から、見通しの良し悪しを推定できる。
【0047】
交通状況についての情報を取得するための機器としては、例えば、車速センサがある。車速によって、道路が渋滞しているのか、混雑しているのか、あるいは閑散としているか推定できる。道路が渋滞または混雑している場合には、運転者が注意を払うべき対象となる物体が多く、各物体に対する認知量が小さくなるので、有効領域は狭くなる。
【0048】
その他の情報として、GPS及び地図データベースにより、トンネルあるいはトンネル付近を走行しているか否かの情報を取得できる。トンネルの中は暗いため見通しが悪く、また、トンネルの入口または出口を走行しているときには、眩しいところから急に暗いところに入る、あるいは、暗いところから急に眩しいところに出ることになり、急激に明るさが変わるため、目が慣れるまで有効領域は狭くなる。
【0049】
有効領域サイズ設定部11は、各種センサ22または車両機器23から取得した情報に基づいて、有効領域の大きさを設定する。なお、図4に示したのは一例であり、他のセンサや車両機器23からの情報を用いて有効領域の大きさを設定することも可能である。また、図4に示した情報を組み合わせたり、運転者の習慣を考慮して、外部環境を推定して有効領域の大きさを設定してもよい。例えば、時刻が夜間なのにヘッドライトが点灯していないときには、有効領域の大きさを0としてもよい。また、普段はワイパーを使わない運転者がワイパーを使用しているときには、激しい雨が降っていてかなり見通しが悪いと判定してもよい。日頃使っていないフォグランプを使っていて、かつ走行速度が遅い場合には、視野が不良であると判定してもよい。
【0050】
図5は、第2の実施の形態の見落し検知装置2の動作を示すフローチャートである。見落し検知装置2は、ミリ波レーダ20により車両周辺にある物体を検知する(S20)。また、見落し検知装置2は、各種センサ22および車両機器23から情報を取得し(S21)、取得した情報に基づいて有効領域の大きさを設定する(S22)。
【0051】
見落し検知装置2は、運転者を撮影した映像から運転者の視線を検知する(S23)。続いて、見落し検知装置2は、ミリ波レーダ20にて検知された物体を運転者が認知しているかどうか、すなわち、物体を見落としていないか否かを判定する(S24)。具体的には、見落し検知装置2は、運転者の視線方向を中心とする有効領域の範囲内に、物体が所定時間にわたって入っているか否かを判定する。ここで用いられる有効領域の大きさは、物体にかかわらず画一的に設定される。
【0052】
見落し検知装置2は、見落しがあると判定した場合には、例えば、警報装置にその旨の情報を出力し(S25)、運転者に対して警報を発して注意喚起を行う。
【0053】
以上、第2の実施の形態の見落し検知装置2の構成および動作について説明した。第2の実施の形態の見落し検知装置2は、第1の実施の形態の見落し検知装置1と同様に、有効領域を用いて見落しを判定するので、運転者の見落しを適切に検知できる。有効領域の大きさは、各種センサ22や車両機器23からの情報を用いて、外部環境に基づいて設定される。
【0054】
以上、本発明の見落し検知装置2について実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。上記した実施の形態の見落し検知装置2は、有効領域の大きさを運転者の年齢に基づいて、運転者の年齢が高い場合には有効領域を小さく設定してもよい。運転者の認知能力は、年齢とともに低下すると考えられるので、有効領域を年齢に応じた大きさとすることにより、より適切に見落し検知を行える。
【0055】
また、上記した実施の形態の見落し検知装置2において、有効領域サイズ設定部11は、物体が止まっているときのほうが移動しているときよりも有効領域を小さく設定してもよい。物体が移動しているときに比べ、止まっているときいは認知しづらいので、物体が止まっているときに有効領域を小さく設定することにより、見落しの検知精度を高く保持できる。
【0056】
また、上記した実施の形態の見落し検知装置2において、有効領域サイズ設定部11は、車両周辺に物体が多いほど有効領域を小さく設定してもよい。移動物体が多いときのほうが、運転者の認知量は低下するので、移動物体が多いときに有効領域を小さくすることにより、見落しの検知精度を高く保持できる。また、移動物体が多いときには、見落し検知装置2は、運転者が物体を認知していると判定するまでの時間を長く設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、運転者の見落しを検知し、運転を支援する装置等として有用である。
【符号の説明】
【0058】
1,2 見落し検知装置
10 通信部
11 有効領域サイズ設定部
12 車内カメラ
13 視線検知部
14 判定部
15 出力部
20 ミリ波レーダ
21 可視光カメラ
22 各種センサ
23 車両機器
図1
図2
図3
図4
図5