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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】導体の検査装置及びその検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/11 20060101AFI20220926BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20220926BHJP
【FI】
G01R31/11
G01R31/58
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019048504
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020148724
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤牧 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】久米 直人
(72)【発明者】
【氏名】宮寺 晴夫
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031718(JP,A)
【文献】特開昭63-038173(JP,A)
【文献】特開2009-294101(JP,A)
【文献】特開平01-152376(JP,A)
【文献】特開平03-033665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08-31/11
G01R 31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス信号を発生させる発生器と、
導体の検査対象の一端に接続し前記パルス信号を伝搬させる接続部と、
前記発生器から前記パルス信号を入力するとともに前記検査対象に対する出力インピーダンスを調整する調整回路と、
前記接続部と前記調整回路との連結経路の途中から延びる分岐経路に接続し前記パルス信号を受信する受信器と、
前記パルス信号の受信強度及び検出時間を出力する波形処理部と、
前記受信強度に基づいて前記調整回路を第1設定から第2設定に操作し、前記出力インピーダンスを変更する設定操作部と、を備える導体の検査装置において、
前記調整回路から前記受信器に直接入射する前記パルス信号に着目し、
前記設定操作部は、前記第1設定で示す第1受信強度に対し、前記第2設定において第2受信強度の比率が予定値となるように前記調整回路を操作する導体の検査装置。
【請求項2】
パルス信号を発生させる発生器と、
導体の検査対象の一端に接続し前記パルス信号を伝搬させる接続部と、
前記発生器から前記パルス信号を入力するとともに前記検査対象に対する出力インピーダンスを調整する調整回路と、
前記接続部と前記調整回路との連結経路の途中から延びる分岐経路に接続し前記パルス信号を受信する受信器と、
前記パルス信号の受信強度及び検出時間を出力する波形処理部と、
前記受信強度に基づいて前記調整回路を第1設定から第2設定に操作し、前記出力インピーダンスを変更する設定操作部と、を備える導体の検査装置において、
前記設定操作部は、前記調整回路から直接入射する前記パルス信号の受信強度と前記検査対象の他端で反射する前記パルス信号の受信強度との比率が予定値をとるように前記調整回路を操作する導体の検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の導体の検査装置において、
前記調整回路から直接入射する前記パルス信号の前記検出時間と前記検査対象の他端で反射する前記パルス信号の前記検出時間との時間差を検出する検出部を備える導体の検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導体の検査装置において、
前記予定値をとるように操作した前記調整回路の設定状態を物理換算量にする換算部を備える導体の検査装置。
【請求項5】
請求項3に記載の導体の検査装置において、
前記時間差の時系列に基づいて、前記検査対象の健全性を評価する評価部を備える導体の検査装置。
【請求項6】
請求項4に記載の導体の検査装置において、
前記物理換算量の時系列に基づいて、前記検査対象の健全性を評価する評価部を備える導体の検査装置。
【請求項7】
パルス信号を発生させる発生器と、
導体の検査対象の一端に接続し前記パルス信号を伝搬させる接続部と、
前記発生器から前記パルス信号を入力するとともに前記検査対象に対する出力インピーダンスを調整する調整回路と、
前記接続部と前記調整回路との連結経路の途中から延びる分岐経路に接続し前記パルス信号を受信する受信器と、
前記パルス信号の受信強度及び検出時間を出力する波形処理部と、を備える導体の検査装置を用い、
前記受信強度に基づいて前記調整回路を第1設定から第2設定に操作し、前記出力インピーダンスを変更する導体の検査方法において、
前記調整回路から前記受信器に直接入射する前記パルス信号に着目し、
前記第1設定で示す第1受信強度に対し、前記第2設定において第2受信強度の比率が予定値となるように前記調整回路を操作する導体の検査方法。
【請求項8】
パルス信号を発生させる発生器と、
導体の検査対象の一端に接続し前記パルス信号を伝搬させる接続部と、
前記発生器から前記パルス信号を入力するとともに前記検査対象に対する出力インピーダンスを調整する調整回路と、
前記接続部と前記調整回路との連結経路の途中から延びる分岐経路に接続し前記パルス信号を受信する受信器と、
前記パルス信号の受信強度及び検出時間を出力する波形処理部と、を備える導体の検査装置を用い、
前記受信強度に基づいて前記調整回路を第1設定から第2設定に操作し、前記出力インピーダンスを変更する導体の検査方法において、
前記調整回路から直接入射する前記パルス信号の受信強度と前記検査対象の他端で反射する前記パルス信号の受信強度との比率が予定値をとるように前記調整回路を操作する導体の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、健全性評価に用いる導体の検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気ケーブル等の健全性を評価する技術として、抵抗値を測定する導通テスト、伝送線路の特性インピーダンスの乱れから故障位置・状態を測定するTDR法(Time Domain Reflectometry)、ケーブルをアンテナに見立ててその共鳴周波数からケーブルの状態を測定する手法等が一般に知られている。これらの技術は、例えば電話回線等の通信路の状態検査に利用されてきたものである。
【0003】
具体的に、矩形波パルスを入力して反射等の応答を調べる等して通信回線の特性インピーダンスや回線長等を測定する手法が開示されている。また、ステップ波形状の検査信号を用いて、避雷針からの雷電流を大地に還流するためのダウンコンダクタを検査する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-125044号公報
【文献】特開2013-29351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の先行技術は、検査対象である電線に対し、直流・交流的な閉ループを構成する対となる電線もしくは大地(アース)との静電結合が存在することを前提条件にしている。このためそのような閉ループを持たない「単線のケーブル」もしくは「一本の導体」に対し、上述の先行技術を適用することができなかった。
【0006】
また上述の先行技術は、矩形波パルスやステップ波に含まれる広帯域な周波数成分が、不要な反射を生じさせ、S/N比の悪化をもたらしていた。このため、測定そのものが成立しないか、何らかの高周波伝達経路を用いて測定を可能にしたとしても不要な反射成分が多くS/N比が実用レベルに到達しない課題があった。
【0007】
この不要な反射成分の発生は、測定装置と測定対象の接続部分におけるインピーダンス不整合が原因である。S/N比の悪化は、検査に寄与しない周波数成分と反射信号が混在してしまう事による。
【0008】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、健全性評価の信頼性を高めることができる導体の検査技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の導体の検査装置において、パルス信号を発生させる発生器と、導体の検査対象の一端に接続し前記パルス信号を伝搬させる接続部と、前記パルス信号を入力するとともに前記検査対象に対する出力インピーダンスを調整する調整回路と、前記接続部と前記調整回路との連結経路の途中から延びる分岐経路に接続し前記パルス信号を受信する受信器と、前記パルス信号の受信強度及び検出時間を出力する波形処理部と、前記受信強度に基づいて前記調整回路を第1設定から第2設定に操作し前記出力インピーダンスを変更する設定操作部と、を備え、前記調整回路から前記受信器に直接入射する前記パルス信号に着目し、前記設定操作部は、前記第1設定で示す第1受信強度に対し、前記第2設定において第2受信強度の比率が予定値となるように前記調整回路を操作する。もしくは、前記設定操作部において、前記調整回路から直接入射する前記パルス信号の受信強度と前記検査対象の他端で反射する前記パルス信号の受信強度との比率が予定値をとるように前記調整回路を操作する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態により、健全性評価の信頼性を高めることができる導体の検査技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る導体の検査装置の構成図。
図2】(A)調整回路が第1設定である場合、受信器で直接受信されたパルス信号と導体ケーブルの末端で反射してから受信されたパルス信号とを示すグラフ、(B)第1例として変換回路が第2設定である場合、受信器で直接受信されたパルス信号と導体ケーブルの末端で反射してから受信されたパルス信号とを示すグラフ、(C)第2例として変換回路が第2設定である場合、受信器で直接受信されたパルス信号と導体ケーブルの末端で反射してから受信されたパルス信号とを示すグラフ。
図3】(A)パルス信号を高分解能サンプリングタイムで波形処理したときの説明図、(B)パルス信号を低分解能サンプリングタイムで波形処理したときの説明図。
図4】(A)アナログ信号を直接処理する時間差検出部の回路図、(B)回路動作を説明するグラフ。
図5】パルス信号の検出時間の時間差と導体ケーブル長との関係を示すグラフ。
図6】各実施形態に適用されるインピーダンス調整回路の構成図。
図7】第2実施形態に係る導体の検査装置の構成図。
図8】(A)導体ケーブルが健全状態である場合に受信されたパルス信号を示すグラフ、(B)導体ケーブルが断線した場合に受信されたパルス信号を示すグラフ、(C)導体ケーブルが断線直前の健全性が低下した場合に受信されたパルス信号を示すグラフ。
図9】第2実施形態において導体ケーブルの経時劣化に伴う調整回路のインピーダンスの操作量の変化を示すテーブル。
図10】導体ケーブルの将来的な経時劣化のシミュレーション結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る導体の検査装置10A(以下、単に「検査装置10A」という)の構成図である。
【0013】
このように検査装置10Aは、パルス信号20を発生させる発生器11と、検査対象(導体ケーブル)12の一端に接続しパルス信号20bを伝搬させる接続部15と、発生器11からパルス信号20を入力するとともに導体の検査対象12に対する出力インピーダンスを調整する調整回路16と、接続部15と調整回路16との連結経路17の途中から延びる分岐経路18に接続しパルス信号20a,20bを受信する受信器21と、これらパルス信号20a,20bの受信強度30及び検出時間35を出力する波形処理部22と、受信強度30に基づいて調整回路16を第1設定31から第2設定32に操作し出力インピーダンスを変更する設定操作部23と、を備えている。
【0014】
図2(A)は調整回路16(図1)が第1設定31である場合、受信器21で直接受信されたパルス信号20aと導体ケーブル12の末端で反射してから受信されたパルス信号20bとを示すグラフである。図2(B)は第1例として調整回路16が第2設定32されている場合、受信器21で直接受信されたパルス信号20aと導体ケーブル12の末端で反射してから受信されたパルス信号20bとを示すグラフである。
【0015】
このように第1例では、調整回路16から受信器21に直接入射するパルス信号20aに着目する。図2(A)の第1設定31で示す第1受信強度301(H)に対し、図2(B)の第2設定32において第2受信強度302の比率Aが予定値(図示は1/2)となるように、設定操作部23は調整回路16を操作する。なお、この予定値は、0より大きく1より小さい値をとることができる。
【0016】
比率計算部25(図1)は、第1設定31にした時に直接受信されたパルス信号20aの第1受信強度301と、第2設定32にした時に直接受信されたパルス信号20aの第2受信強度302との比率Aを計算する。そして、設定操作部23は、この計算された比率Aが予定値に一致するように第2設定32を再調整することを繰り返す。これにより、導体ケーブル12を伝搬し末端で反射してから受信されるパルス信号20bの検出感度を高くすることができる。
【0017】
図2(C)は第2例として調整回路16が第2設定32されている場合、受信器21で直接受信されたパルス信号20aと導体ケーブル12の末端で反射してから受信されたパルス信号20bとを示すグラフである。
【0018】
このように第2例では、調整回路16から直接入射するパルス信号20aの受信強度30と導体ケーブル12の他端で反射するパルス信号20bの受信強度33との比率Aが予定値(図示は1)をとるように、設定操作部23は調整回路16を操作する。これにより、導体ケーブル12を伝搬し末端で反射してから受信されるパルス信号20bの検出感度を高くすることができる。なお、第2例における予定値は1に限定されず、任意の正数とすることができる。
【0019】
図1に戻って説明を続ける。発生器11は、正弦波や三角波等の任意の周波数の単発もしくは複数回のパルス信号20を出力可能とする。この発生器11は、図示を省略するが、外部からのトリガー入力もしくは周期的動作によりパルス信号20を生成することができる。具体的には、発生器11として、周波数、振幅、パルス形状を設定することで任意の周波数、振幅、パルス形状のパルス信号20を出力することができるファンクションジェネレータ等を適用することができる。
【0020】
ただしステップ波や矩形波等の広帯域な周波数成分を含む信号を使用する場合は、すでに述べたようにS/N比が悪化するため、周波数帯域の制限されたパルス信号20を使用することが望ましい。例えば、正弦波などを適用することでその要件が満たされる。なお発生器11の信号発生原理は、特に限定されず、DDSやRC発振器とトライアックの組み合わせ、矩形もしくは三角波ジェネレータと低域通過フィルタの組み合わせ等を採用することもできる。
【0021】
導体の検査対象12は、直流もしくは交流的な閉ループを形成しない単線ケーブル等である。そして、接続部15は、インピーダンス調整回路16が出力したパルス信号20を導体の検査対象12に伝搬させるための電気的な接続手段である。具体的には、圧着、ボルト締め、クランプ等が挙げられ、安定的な電気的接触が提供されれば、接続は一時的か永続的であるかを問わず採用される。
【0022】
受信器21は、接続部15と調整回路16との連結経路17の途中から延びる分岐経路18に接続し、アナログ形式のパルス信号20a,20bを受信する。そして、A/Dコンバータ等で、所定のサンプリング間隔のデジタル信号に変換し、波形処理部22に出力する。
【0023】
波形処理部22は、これらパルス信号20a,20bの受信強度30及び検出時間35を出力する。なおパルス信号20a,20bの受信強度30は、サンプリングした信号のうち波高値で表すこともできるし、サンプリングした信号値の積分値で表すこともできる。またパルス信号20a,20bの検出時間35は、サンプリング間隔とデータの順番情報とに基づいて得ることができる。もしくは、関数をフィッティングして受信強度30及び検出時間35を求めることもできる。なお波形処理部22は、アナログ形式のパルス信号20a,20bに対して、ピークホールド回路、コンパレータ等で構成することもできる。
【0024】
図3(A)はパルス信号20a,20bを高分解能サンプリングで波形処理したときの説明図である。(B)パルス信号を低分解能サンプリングで波形処理したときの説明図である。このように低分解能サンプリングでは、パルス信号20a,20bの受信強度を波高値36で表すと、実際よりも低めに計測される場合があるが、サンプリング値と発生器11の出力波形情報から関数フィッティングを行い実際に近づけることができる。
【0025】
図6は各実施形態に適用されるインピーダンス調整回路16の構成図である。この調整回路16は、可変抵抗器14を調節することにより、自身のインピーダンスを変化させて検査装置10Aの出力インピーダンスを調整することができる。
【0026】
設定操作部23(図1)は、調整回路16それ自身のインピーダンスを設定するもので、図6に示す場合では、可変抵抗器14を操作するものである。具体的には、第1設定31ではこの可変抵抗器14をゼロ設定とし、第2設定32は比率計算部25で計算された比率Aが予定値に一致するように設定される。そのような操作が可能な可変抵抗器14としては、着脱可能な抵抗器、ポテンショメータ、電子的に制御可能な抵抗素子例えばデジタルポテンショメータ等が挙げられる。
【0027】
なお設定操作部23の構成に限定は無く、受信強度30に基づいて調整回路16を第1設定31から第2設定32に操作し、出力インピーダンスを変更することができるものであれば適宜採用される。設定操作部23の操作は、オペレータによる手動操作による場合の他に、FPGAもしくはCPUを用いた自動操作による場合もある。
【0028】
検出部26(図1)は、調整回路16から直接入射するパルス信号20aの検出時間t1と導体ケーブル12の他端で反射するパルス信号20bの検出時間t2との時間差ΔTを検出するものである。評価部27aは、検出された時間差ΔTに基づいて導体ケーブル12の断線位置を評価するものである。
【0029】
図4(A)はアナログ信号を直接処理する時間差検出部26の回路図である。図4(B)は回路動作を説明するグラフである。例示される時間差検出部26は時間電圧変換回路(Time to Amplitude Converter:TAC)の代表的な回路例である。図4に示す時間差検出部26では、アナログのパルス信号20aが入力すると、基底状態の電圧がランプ状に変化し、次のパルス信号20bが入力すると、電圧がホールドされる。このような電圧変化の開始の検出時間t1と終了の検出時間t2とから時間差ΔTを検出することもできる。
【0030】
図5はパルス信号の検出時間の時間差と導体ケーブル長との関係を示すグラフである。このようにパルス信号20a,20bの時間差ΔTと導体ケーブル長との間には、線形関係がある事が観測される。これにより、この時間差ΔTを検出することにより、導体ケーブル12においてパルス信号20bが反射する位置が判る。そして、この反射位置がケーブルの設計値や予め測定しておいたケーブル長さよりも短い位置にある場合は、この反射位置を断線箇所と推定することができる。
【0031】
第1実施形態の検査装置10Aによれば、導体ケーブル12の他端で反射するパルス信号20bの受信強度33のS/N比を向上させることができるので、この反射位置の計測精度や再現性を向上させることができ、導体ケーブル12の健全性評価の信頼性向上に貢献する。
【0032】
(第2実施形態)
次に図7から図10を参照して本発明における第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態に係る導体の検査装置10B(以下、単に「検査装置10B」という)の構成図である。なお、図7において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0033】
このように検査装置10Bは、パルス信号20を発生させる発生器11と、検査対象(導体ケーブル)12の一端に接続しパルス信号20bを伝搬させる接続部15と、発生器11からパルス信号20を入力するとともに導体の検査対象12に対する出力インピーダンスを調整する調整回路16と、接続部15と調整回路16との連結経路17の途中から延びる分岐経路18に接続し少なくともパルス信号20aを受信する受信器21と、このパルス信号20aの受信強度30を出力する波形処理部22と、この受信強度30に基づいて調整回路16を第1設定31から第2設定32に操作し出力インピーダンスを変更する設定操作部23と、を備えている。
【0034】
そして、この設定操作部23は、第1実施形態で図2を参照して説明したように、パルス信号20a及び/又はパルス信号20bの受信強度の比率Aが予定値となるように、第2設定32を操作して、調整回路16のインピーダンスを変更する。このような予定値をとるように操作された調整回路16の設定状態(第2設定32)は、導体ケーブル12の特性インピーダンスを反映している。
【0035】
図8(A)は導体ケーブルが健全状態である場合に受信されたパルス信号を示すグラフである。図8(B)は導体ケーブルが断線した場合に受信されたパルス信号を示すグラフである。図8(C)は導体ケーブルが断線直前の健全性が低下した場合に受信されたパルス信号を示すグラフである。
【0036】
図8(B)に示すように、導体ケーブル12の断線は、直接入射パルスの検出時間t1と反射パルスの検出時間t2との時間差ΔTbが、健全状態の時間差ΔTaと異なることから認識することができる。一方において図8(C)に示すように、導体ケーブル12の断線前の健全性が低下している状態の時間差ΔTaは、健全状態と変わらない。しかし、導体ケーブル12の健全性の劣化が進行するのに従って、第1受信強度301(H,H´)の相違は拡大し、これに伴い、第2受信強度302の比率Aを予定値にするための第2設定32(図7)の相違も拡大する。
【0037】
換算部28(図7)は、このような予定値をとるように操作した調整回路16の設定状態B(第2設定32)を物理換算量にするものである。この物理換算量として、調整回路16のインピーダンスZout、導体ケーブル12の仮想的な線径減少量等が挙げられる。
【0038】
図9は、導体ケーブル12の経時劣化に伴う調整回路16のインピーダンスZoutの操作量の変化を示すテーブルである。図10は導体ケーブル12の将来的な経時劣化のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0039】
評価部27b(図1)は、このような物理換算量(調整回路16のインピーダンスZout)の限界値Yを設定し、時系列変化を外挿することにより、導体ケーブル12の健全性を評価(寿命Xを推定)することができる。
【0040】
第2実施形態の検査装置10Bによれば、断線に至らないまでも劣化の進行状態を見極めることができ、導体ケーブル12の健全性評価の信頼性向上に貢献する。
【0041】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の導体の検査装置によれば、設定操作することができる出力インピーダンスの調整回路を介してパルス信号の発生器と導体の検査対象とを接続することで、健全性評価の信頼性を高めることが可能となる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
10(10A,10B)…導体の検査装置、11…発生器、12…検査対象(導体ケーブル)、14…可変抵抗器、15…接続部、16…調整回路、17…連結経路、18…分岐経路、20(20a,20b)…パルス信号、21…受信器、22…波形処理部、23…設定操作部、25…比率計算部、26…検出部、27(27a,27b)…評価部、28…換算部、301(30)…第1受信強度、302(30)…第2受信強度、31…第1設定、32…第2設定、35…検出時間、36…波高値、37…積分値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10