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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】易開封性袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20220926BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20220926BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20220926BHJP
   B65D 75/58 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D33/25 A
B65D30/16 A
B65D33/00 A
B65D75/58
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019173205
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2020142862
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2019-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2019037955
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南 一弥
(72)【発明者】
【氏名】宮本 憲一
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-289396(JP,A)
【文献】特開2012-012103(JP,A)
【文献】特開2018-070197(JP,A)
【文献】特開2017-043386(JP,A)
【文献】特開平02-219749(JP,A)
【文献】特表2001-507318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
B65D 33/25
B65D 30/16
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開封誘導線を備える二枚の積層フィルムが重なり合い、周縁においてシールされた袋であって、一方の積層フィルムの開封誘導線と他方の積層フィルムの開封誘導線とは、袋の平面視において一致しない易開封性袋において、
前記積層フィルムは、延伸フィルムからなる外層、アルミニウム箔からなるバリア層、延伸されていないフィルムからなる内層を順に備え、
前記開封誘導線は、前記袋の一方の側縁から他方の側縁に亘って繋がった直線状及び/又は曲線状であり、
JIS K 7128-1に準拠し、開封誘導線が形成されていない部分を開封方向に引裂くことにより測定される引裂力をT0(N)、前記開封誘導線に沿って引裂くことにより測定される引裂力をT1(N)とするとき、
T0-T1≧1.0
であり、且つ、
引裂力T1(N)が9.5≦T1≦12.4であることを特徴とする易開封性袋。
【請求項2】
前記積層フィルムは、前記バリア層よりも内層側に延伸フィルムからなる層を具備せず、
前記バリア層よりも外側の層にのみ開封誘導線が形成され、前記バリア層よりも内層側にある層には開封誘導線が形成されていないことを特徴とする請求項1記載の易開封性袋。
【請求項3】
前記積層フィルムが、延伸フィルムからなる外層、ドライラミネート用接着剤層、アルミニウム箔からなるバリア層、ドライラミネート用接着剤層、延伸されていないフィルムからなる内層を順に備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の易開封性袋。
【請求項4】
前記外層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、又は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと二軸延伸ナイロンフィルムが接着剤層を介して貼合された外層用フィルムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の易開封性袋。
【請求項5】
前記内層が、ポリオレフィンフィルムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の易開封性袋。
【請求項6】
前記内層が、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の易開封性袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封誘導線を備える二枚の積層フィルムが重なり合い、周縁においてシールされた易開封性袋に関する。本発明の易開封性袋は、一方の積層フィルムに形成された開封誘導線と、他方の積層フィルムに形成された開封誘導線とが、袋の平面視において一致しない。そのため開封誘導線に沿って開封した際に、一方の積層フィルムに形成される開封ラインと他方の積層フィルムに形成される開封ラインとが一致せず、少なくとも一部において段差(ズレ)が発生する。この段差部分は袋を開口する際に、摘まみ部として利用することができる。
【背景技術】
【0002】
開封誘導線を備える易開封性袋は、該開封誘導線に沿って引裂くことにより開封される。このような袋においてしばしば問題となるのが、開封後の開口性(口開き性)である。
易開封性袋は、その内面にチャック部材を具備するものが多い。該袋は、チャック部材が閉じられていると、二枚の積層フィルムが開封ライン付近において密着する為、各フィルムを一枚ずつ摘まむことが難しく、開口し難い。
【0003】
このような問題を解決する為に、一方の積層フィルムにおける開封誘導線と他方の積層フィルムにおける開封誘導線とが、袋の平面視において一致しない易開封性袋が提案されている。
特許文献1は、一方のフィルムにおける開封誘導線(第1引裂き誘導弱め線)と他方のフィルムにおける開封誘導線(第2引裂き誘導弱め線)とが、交互に配列された易開封性袋(易開封性包装袋)を提案する。該袋は、開封時に上方向、下方向、斜め方向のいずれの方向に袋が引裂かれたとしても、一方のフィルムの開封ライン(引裂きの縁部)と他方のフィルムの開封ラインとの間で段差(ズレ)が形成される。
【0004】
特許文献2も、開封ライン(開封切断縁)に段差を備える易開封性袋(包装袋)の提供を目的とした発明である。表面側積層フィルムの開封誘導線(易開封手段)は、中央部が上方に膨れる凸状切目線を含む連続する上部切目線と、中央部が下方に膨れる凹状切目線を含む連続する下部切目線により構成し、上下の切目線間に、内側に開口する横向きV字型の誘導用切目線を各々形成し、裏面側積層フィルムの開封誘導線は、上下2本の直線状の切目線により構成する。
しかしながら特許文献1、2に開示された易開封性袋は、いずれも、開封ラインが開封誘導線から外れてしまい、所望の段差が形成されないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-218278
【文献】特開2017-226465
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に開示された袋のような、一方の積層フィルムに形成された開封誘導線と、他方に形成された開封誘導線とが一致しない易開封性袋において、袋の開封ラインが開封誘導線から外れるのは、主に、重なった二枚の積層フィルムを、高い開封誘導線(底部から遠い開封誘導線)が形成されたフィルム側へ引裂くときである。
図5は従来の易開封性袋1’の一部分を拡大した正面図である。該易開封性袋1’の手前側の積層フィルム21に形成された開封誘導線31(実線)は、中央に進むにしたがって低くなる曲線状で、奥側の積層フィルムに形成された開封誘導線32(破線)は直線状である。該袋1’を開封開始手段6から開封する際に、手前側の積層フィルム21に形成される代表的な開封ライン71を、図5に一点破線で示す。袋上部を手前側(低い開封誘導線が形成されたフィルム側)に引いて開封した時の開封ライン71を図5(A)に、奥側(高い開封誘導線が形成されたフィルム側)に引いて開封した時の開封ライン71を図5(B)に示す。
図5(A)では、低い開封誘導線31が形成されているフィルム側に、袋上部を引裂いているため、開封ライン71は歪まず、開封誘導線31と一致する。一方、図5(B)では、袋が高い開封誘導線32が形成されているフィルム側に引裂かれているため、奥側の積層フィルムが邪魔になり、手前側の積層フィルム21に形成される開封ライン71は、開封誘導線31よりも上方へ歪んでしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような問題を解決すべく鋭意検討した結果、開封誘導線が形成されていない部分の引裂力が、開封誘導線に沿って測定される引裂力よりも十分に大きいと、開封ラインが開封誘導線から外れにくいことを見出した。併せて、開封誘導線に沿って測定される引裂力が小さいと、勢いよく開封されるため、開封ラインが開封誘導線から外れ易く、所望の段差が形成され難いことも見出した。
【0008】
すなわち本発明によると、上記課題を解決するための手段として、開封誘導線を備える二枚の積層フィルムが重なり合い、周縁においてシールされた袋であって、一方の積層フィルムの開封誘導線と他方の積層フィルムの開封誘導線とは、袋の平面視において一致しない易開封性袋において、 JIS K 7128-1に準拠し、開封誘導線が形成されていない部分を開封方向に引裂くことにより測定される引裂力をT0(N)、前記開封誘導線に沿って引裂くことにより測定される引裂力をT1(N)とするとき、T0-T1≧0.5、更にはT0-T1≧2.0であることを特徴とする易開封性袋が提供される。
また、前記引裂力T1(N)が3N以上、更には8以上13以下であることを特徴とする前記易開封性袋が提供される。
【0009】
また、前記一方の積層フィルムが、商品名が印刷された表側フィルムであって、前記他方の積層フィルムが、商品名が表側フィルムよりも小さく印刷された、もしくは商品名が印刷されていない裏側フィルムであって、 前記表側フィルムに形成された開封誘導線が、前記裏側フィルムに形成された開封誘導線よりも、袋の底部分から離れていることを特徴とする前記易開封性袋が提供される。
更に本発明によると、前記積層フィルムは、少なくとも外層、バリア層、内層を順に備えており、 前記バリア層よりも内層側に延伸フィルムからなる層を具備せず、 前記バリア層よりも内層側にある層には開封誘導線が形成されていないこと特徴とする前記易開封性袋が提供される。
【0010】
また、前記易開封性袋が、一方の積層フィルムと他方の積層フィルムとの間に、半折された底用フィルムを備える自立袋であることを特徴とする前記易開封性袋が提供される。
また、前記二枚の積層フィルムは、その内面にチャック部材を具備することを特徴とする前記易開封性袋が提供される。
【0011】
加えて、外層用フィルムとバリア層用フィルムと内層用フィルムとを貼り合わせて積層フィルムを得る積層フィルム製造工程と、 前記積層フィルムを用いて袋を製造する製袋工程と、 前記積層フィルムに外層側からレーザー光を照射して開封誘導線を形成する開封誘導線形成工程と、を備える前記易開封性袋の製造方法であって、 前記積層フィルム製造工程において、前記外層用フィルムと前記バリア層用フィルム、および、前記バリア層用フィルムと前記内層用フィルムは、それぞれ接着剤を介してドライラミネート法により積層されていることを特徴とする易開封性袋の製造方法が提供される。
また、外層用フィルムとバリア層用フィルムと内層用フィルムとを貼り合わせて積層フィルムを得る積層フィルム製造工程と、 前記積層フィルムを用いて袋を製造する製袋工程と、 前記積層フィルムに外層側からレーザー光を照射して開封誘導線を形成する開封誘導線形成工程と、を備える前記易開封性袋の製造方法であって、 前記積層フィルム製造工程において、前記外層用フィルムと前記バリア層用フィルムとは接着剤を介してドライラミネート法により積層されており、前記バリア層用フィルムと前記内層用フィルムとは、フィルム間に溶融状態の溶融接着用樹脂を押し出すサンドイッチラミネート法により積層されていることを特徴とする易開封性袋の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の易開封性袋は、一方の積層フィルムに形成された開封誘導線と他方の積層フィルムに形成された開封誘導線とが、袋の平面視において一致しない。また開封誘導線のない部分(以下、必要に応じ「非開封誘導線部分」と略称する)の引裂力T0が、開封誘導線部分の引裂力T1よりも十分に大きい為、開封時に開封ラインが開封誘導線から外れにくい。そのため、一方の積層フィルムの開封ラインと他方の積層フィルムの開封ラインとの間に、設計通りの段差を形成することができる。開封後、袋を開口する際には、該段差を摘まみ部として利用することができる為、本発明による易開封性袋は開封性だけでなく、開封後の開口性にも優れる。
特に、開封誘導線部分の引裂力T1が3Nを超える場合、勢いよく開封されることが抑制され、特に、引裂力T1が8N~13Nの場合、適度なスピードで、尚且つ、スムーズに開封することができるため、上記効果はより確実なものとなる。
【0013】
また一方の積層フィルムが、商品名が印刷された表側フィルムで、他方の積層フィルムが、商品名が表側フィルムよりも小さく印刷された、もしくは商品名が印刷されていない裏側フィルムである場合、表側フィルムの開封誘導線が裏側フィルムの開封誘導線よりも高い(袋の底部分から離れている)と、開封後、袋を正面から見たときに、裏側フィルムの内面側が見えないため、袋正面の意匠性が担保される。
【0014】
本発明の易開封性袋が、少なくとも外層、バリア層、内層を順に備えており、バリア層よりも内層側に延伸フィルムからなる層を具備しないと、非開封誘導線部分の引裂力T0を、開封誘導線部分の引裂力T1よりも大きくすることができる。
【0015】
更に本発明の易開封性袋が、二枚の積層フィルムのほかに、半折された底用フィルムを備える自立袋であると、内容積を大きくすることができ、また立てて保管することも可能となる。
更に本発明の易開封性袋が、その内面にチャック部材を具備すると、袋を開封後、再封することができる。本発明の易開封性袋は、開封ラインに段差が形成されるため、チャック部材により袋の開封ライン付近において二枚の積層フィルムが密着していても、当該段差を用いて容易に開口することができる。通常チャック部材を備える袋は、一度に使い切る物品ではなく、少しずつ長期にわたって使用する物品を収納することが多いが、本発明の易開封性袋は開封ラインが開封誘導線に沿い、美麗であるため、開封後の袋が長期に渡って存在しても、雑な印象を与え難い。
【0016】
本発明において提案される易開封性袋の製造方法を用いると、極めて簡単に、引裂力T0が引裂力T1よりも十分に大きく、前述した効果を奏する易開封性袋を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における模式的正面図(A)および模式的背面図(B)である。
図2図1の積層フィルムの開封誘導線部分の模式的断面図(A)と、開封誘導線のない部分の模式的断面図(B)である。
図3】本発明の積層フィルム製造工程を説明するための説明図である。
図4】手切れ性評価に用いた易開封袋の模式的正面図(A)および模式的背面図(B)である。
図5】従来の易開封性袋を手前に引裂いた時の開封開始ラインを説明するための模式的部分拡大正面図(A)と、向こう側に引裂いた時の開封開始ラインを説明するための模式的部分拡大正面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の易開封性袋の実施の形態について説明する。尚、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、同様の効果を奏する範囲において種々の形態をとることができる。
【0019】
[易開封性袋]
図1は本発明の一実施形態である易開封性袋1の正面図(A)と背面図(B)である。
図1に示す易開封性袋1は、一方の積層フィルム21と他方の積層フィルム22と底用フィルム23とからなる。一方の積層フィルム21と他方の積層フィルム22とは重なり合い、対向する一対の側縁4a、4bにおいてヒートシールされている。また袋の底部分において、一方の積層フィルム21と他方の積層フィルム22との間に半折された底用フィルム23が挟み込まれ、船底状にシールされており、自立袋となっている。
本発明の易開封袋は、図1に示す形状に限定されるものではなく、一方の積層フィルム21と他方の積層フィルム22とが重なり合い、周縁においてシールされた袋であればよく、例えば一方の積層フィルム21と他方の積層フィルム22とが四辺すべてにおいてシールされた四方シール袋であってもよい。また一方の積層フィルムと他方の積層フィルムとが、少なくとも一辺において連続した三方シール袋、一方の積層フィルムと他方の積層フィルムとの間に半折された側面用フィルムを備えるガセット袋等であってもよい。また、一枚のフィルムを折りたたみ、適宜シールして自立袋を製造することもできる。
【0020】
図1の易開封性袋1は、一方の積層フィルム21に、2本の直線状の開封誘導線31a、31bが形成されている。また他方の積層フィルム22に、両サイドが高く、両サイドに対して中央部が凹んだ形状の開封誘導線32が形成されている。開封誘導線の形状はこれに限定されるものではなく、一方の積層フィルムの開封誘導線と他方の積層フィルムの開封誘導線とが、袋の平面視において完全に一致するものでなければよい。一致していない部分は、袋を開口する際の作業性を考慮すると、最もずれているところαが1~30mmの段差を形成することが望ましく、特にαが2~15mm、さらには3~6mmであることが望ましい。
【0021】
本発明の易開封性袋は、引裂力が非開封誘導線部分と開封誘導線部分とにおいて、大きく異なることを特徴とする。引裂力の測定は、JIS K 7128-1に準拠して行う。
測定に用いる試験片は、易開封性袋の開封方向と垂直な方向の側辺のシール部分を含むように、袋を切り出して作成する。この時、側辺のシール部分が試験片の一方の短辺となるようにする。シール部分である短辺にスリットを入れ、引裂力を測定する。
尚、開封誘導線部分の引裂力T1は、一方の積層フィルムに形成された開封誘導線と、他方の積層フィルムに形成された開封誘導線とが、試験片の短辺(シール部分)において一致している場合は、該開封誘導線上にスリットを入れて測定する。二枚の積層フィルムの開封誘導線が試験片の短辺(シール部分)においてずれている場合は、一方の積層フィルムの開封誘導線と他方のフィルムの開封誘導線のほぼ中央にスリットを入れて測定する。試験片を200mm/minで引裂くと、引裂ラインが両方の積層フィルムの開封誘導線上に乗り、測定される荷重が安定するようになる。この安定した値の平均値を引裂力T1とする。尚、開封誘導線が、図1(B)のような、角のある形状であると、該角の部分(β、γ)で引裂力T1が極端に大きくなることがある。このような極端に大きな値が観測された場合は、当該値を除いて、引裂力T1を算出することとする。
【0022】
本発明の易開封性袋は、開封誘導線が形成されていない部分を開封方向に引裂くことにより測定される引裂力T0(N)が、前記開封誘導線に沿って引裂くことにより測定される引裂力T1(N)よりも0.5N以上大きい。T0とT1の差は、1N以上であることが特に好ましい。T0とT1の差が小さいと、開封ラインが開封誘導線から外れやすくなる。尚、T0とT1の差は大きいほうが望ましいが、T0の値を大きくするために内層を厚くすると、該内層が伸びて手切れ性が低下する恐れがある。よってT0とT1の差は40N以下、特に30N以下、更には10N以下であることが望ましい。
【0023】
また開封誘導線部分の引裂力T1は、3N以上であることが望ましい。引裂力T1が3N未満であると、小さな力で開封が進むため、勢いよく開封され易い。勢いよく開封されると、開封ラインは開封誘導線から外れ易い。尚、引裂力T1は5N以上であることが好ましく、特に8N以上であることが好ましい。また開封性を考慮すると15N以下であることが好ましく、特に13N以下であることが好ましい。引裂力T1が15Nを超えると、開封開始時に力が入りすぎて開封ラインが歪み、開封誘導線から外れることがある。また力の弱い人が開封しにくくなる。
【0024】
ところで消費者の多くは袋を開封する際に、袋の表側(商品名が大きく印刷された側)を手前にして持ち、袋上部を手前側に引いて開封する。よって、従来の易開封性袋は、袋の表側フィルムに形成される開封誘導線を低く、袋の裏側フィルムに形成される開封誘導線を高くしたものが多い。換言すれば、表側フィルムに形成される開封誘導線が、裏側フィルム形成される開封誘導線よりも底部側に位置するものが多い。表側フィルムに形成される開封誘導線が高いと、袋上部を手前に引いて開封した際に、裏側フィルムに形成される開封ラインが歪みやすいのである。
しかしながら表側フィルムの開封誘導線が低いと、開封後に袋を正面から見たときに、裏側フィルムの内面側(裏面)が見え、袋正面の美観が損なわれる。袋の正面はいわば商品の「顔」であるが、裏側フィルムの内面側が見えると、該内面側は印刷や着色が施されていないため、美しさが低減する。
【0025】
本発明の易開封性袋は、袋上部を開封誘導線が高い側に引いて開封しても、開封ラインが歪みにくいことを特徴とする。よって本発明の易開封性袋においては、表側フィルムの開封誘導線を高くし、裏面フィルムの開封誘導線を低くすることが望ましい。裏面フィルムの開封誘導線を低くすることにより、開封後も袋正面からフィルムの内面側が見えることなく、袋正面の美観を維持することができる。
【0026】
図1の易開封性袋1には、一方の積層フィルム21と他方の積層フィルム22との間に、一方の側縁4aから他方の側縁4bに延びるチャック部材5が取り付けられている。内容物を一度に使い切らない場合は、袋がチャック部材を具備することが望ましい。該チャック部材は、公知のものを特に限定なく用いることができるが、平坦な支持部(テープ部)に雄爪を有する雄型のテープと、平坦な支持部に雌爪を有する雌型のテープから成るものが一般的である。
【0027】
本発明の易開封性袋は、図1に示すように、側縁4aおよび/または側縁4bに開封開始手段6が形成されていることが望ましい。開封開始手段6は対向する一対の側縁4a、4bの一方にのみ形成されていてもよいが、双方に形成されていることが望ましい。一方にのみ形成されていると、一旦持ち上げた易開封性袋1を開封に際して持ち直す必要が生じることがある。尚、開封開始手段6が、側縁4aと側縁4bの双方に設けられている場合、袋上端から各開封開始手段6までの距離は等しいことが望ましい。
開封開始手段6は、切込(I字状のノッチ)、V字状の切欠き、U字状の切欠き、亀甲状の切欠き、多数の傷痕等とすることができるが、フィルムを線状に切断しただけの切込であることが望ましい。V字状の切欠き、U字状の切欠き、亀甲状の切欠き等は、フィルムの切欠かれた部分を取り除く必要があり、当該作業が煩雑である。また切欠かれた部分が袋内に紛れ込む恐れもある。多数の傷痕を設けることも、易開封性袋の製造工程を煩雑にする。
【0028】
[積層フィルム]
本発明に用いられる積層フィルムは、上述した引裂特性を示すものであれば特に限定なく用いることができる。該積層フィルムは、例えば使用する接着剤として柔らかいものを採用すれば得られるが、接着剤の硬さは硬化時の雰囲条件に影響されやすく、変動しやすい。
そこで本発明では、少なくとも外層、バリア層、内層を順に備えた積層フィルムであって、バリア層よりも内層側にある層は、いずれも延伸フィルムからなる層に相当せず、バリア層よりも内層側にある層には開封誘導線が形成されていない積層フィルムを、本発明の易開封性袋をなす積層フィルムとして提案する。
【0029】
バリア層の内側に延伸フィルムからなる層があると、開封誘導線が形成されていない部分はフィルムの延伸方向に沿って裂ける為、非開封誘導線部分の引裂力T0は小さくなりやすい。一方、開封誘導線が形成された部分は、延伸方向ではなく、開封誘導線の方向に引裂かれるため、開封誘導線部分の引裂力T1は延伸フィルムを採用しない場合から大きく変化せず、その結果、T0-T1は小さくなる傾向にある。
また、理由は定かではないが、バリア層よりも内側に延伸フィルムを採用すると、開封誘導線部分の引裂力T1も小さくなる傾向にある。引裂力T1が小さいと、前述した通り開封ラインは開封誘導線から外れ易くなる。
【0030】
外層には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン-6、ナイロン-6,6等のポリアミド、ポリプロピロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド等からなる無延伸フィルムあるいは延伸フィルムを用いることができる。またこれらのフィルムを積層したものを外層とすることもできる。尚、フィルム強度を考慮すると、延伸フィルム、特にポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリアミドの延伸フィルムが外層として適する。
【0031】
バリア層は、酸素や水蒸気等を遮断する性能に優れた層であれば特に限定されない。例えば、アルミニウムなどの金属箔や、アルミニウムなどの金属膜を有するフィルム、酸化珪素などの酸化金属膜を有するフィルム等を、バリア層として使用することが出来る。尚、バリア層が5μmを超える金属箔からなる層であると、レーザー光が貫通しにくいため、積層フィルムに外層側からレーザー光を照射することにより、バリア層よりも内側に開封誘導線が形成されることを抑制できる。尚、バリア層は5~20μm、特に7~15μmであることが望ましい。
【0032】
内層は、ヒートシール層として機能する層であり、延伸されていないフィルムからなる。該層は、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メチルアクリレートなどのオレフィン系樹脂を使用できる。内層の厚さはヒートシール性を考慮すると30~100μm、特に40~70μm程度が好ましい。
【0033】
また、本発明では少なくとも外層、バリア層、内層を順に備えた積層フィルムであって、バリア層と内層とが、溶融接着用樹脂層を介して積層されている積層フィルムを好適に用いることができる。
図1に示す積層フィルム2(21、22)の模式的断面を図2に示す。図2(A)は開封誘導線部分3の模式的断面図で、図2(B)は非開封誘導線部分の模式的断面図である。該積層フィルム2は、袋の外側から順に、外層2A、ドライラミネート用接着剤からなる層2E、バリア層2B、溶融接着用樹脂層2C、内層2Dである。
【0034】
溶融接着用樹脂層2Cは溶融状態でバリア層2Bと内層2Dとの間に押出され、これらを接着するために設計された樹脂で、JIS K 7210によって測定されるMFRの値が6~30g/10min、好ましくは10~20g/10minの樹脂である。高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂を好適に用いることができる。該樹脂は、Tダイより押出され、バリア層や内層と貼合されるまでの間(エアギャップ)で空気中に曝されることで酸化し、接着性が発揮される。尚、バリア層や内層は、必要に応じ溶融接着用樹脂層との接着強度を高めるためのアンカーコート剤が塗布されていてもよい。
【0035】
溶融接着用樹脂層は、耐引裂性に優れる。本発明の易開封性袋の開封誘導線部分の引裂力T1を3N以上、特に8N以上にするためには、溶融接着用樹脂層は5μm以上であることが望ましく、特に10μm以上であることが好ましい。また溶融接着用樹脂層が厚くなりすぎると、T1が13Nを超え、力の弱い人が開封しにくくなるため、該層は40μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましく、更には20μm以下、更には15μm以下であることが好ましい。
尚、積層フィルム2の外層2A、バリア層2B、内層2Dには、上述した外層、バリア層、内層と同様の樹脂を適宜採用することができる。
【0036】
[易開封性袋の製造方法]
次に本発明の易開封性袋の製造方法を実施形態に基づいて説明するが、本発明の製造方法は以下に限定されるものではない。
本発明の製造方法は、外層用フィルムとバリア層用フィルムと内層用フィルムとを貼り合わせて積層フィルムを得る(1)積層フィルム製造工程と、該積層フィルムを用いて袋を製造する(2)製袋工程と、積層フィルムに外層側からレーザー光を照射して開封誘導線を形成する(3)開封誘導線形成工程と、を備える。
【0037】
(1)積層フィルム製造工程
本発明の易開封性袋の製造方法は、積層フィルム製造工程において、(i)外層用フィルムとバリア層用フィルムとが、接着剤を介してドライラミネート法により積層されており、更にバリア層用フィルムと内層用フィルムも、接着剤を介してドライラミネート法により積層されている、もしくは(ii)外層用フィルムとバリア層用フィルムとが、接着剤を介してドライラミネート法により積層されており、バリア層用フィルムと内層用フィルムとは、フィルム間に溶融状態の溶融接着用樹脂を押し出すサンドイッチラミネート法により積層されていることを特徴とする。
【0038】
製造方法(i)
図3(A)は、ドライラミネート法を説明する為の図である。図3(A)に示す製造方法では、外層用フィルム2A’とバリア層用フィルム2B’がドライラミネート法により積層される。詳しくは、図3(A)に示すように、外層用フィルム2A’の片面に接着剤2E’が塗布された後、該フィルム2A’は乾燥装置DRに搬送され、接着剤2E’の溶剤が蒸発させられる。次いで、接着剤2E’面にバリア層用フィルム2B’が積層され、加圧ロールRにて熱圧着されて、外層/バリア層の二層フィルム2’が製造される。ドライラミネート法の採用によりバリア層よりも外側の層の厚さを薄く抑えることができ、レーザー光により、確実にバリア層よりも外側の層を切断することができる。尚、ドライラミネート用接着剤層の厚さは、2~7μm程度、特に3~5μm程度であることが望ましい。
次いで、外層/バリア層の二層フィルム2’のバリア層に、内層用フィルムをドライラミネート法により積層する。当該積層も、図3(A)に示す製造装置を用いて行うことができる。例えば、図3(A)に示す外層用フィルム2A’に変えて、外層/バリア層の二層フィルム2’を、バリア層用フィルム2B’に変えて内層用フィルムを繰り出せばよい。二層フィルム2’のバリア層にドライラミネート用接着剤を塗布し、乾燥装置DRにて接着剤の溶剤を蒸発させたのち、内層用フィルムと積層することにより、本発明の積層フィルムを得ることができる。
【0039】
製造方法(ii)
次いで(ii)外層用フィルムとバリア層用フィルムとが、接着剤を介してドライラミネート法により積層されており、バリア層用フィルムと内層用フィルムとは、フィルム間に溶融状態の溶融接着用樹脂を押し出すサンドイッチラミネート法により積層されていることを特徴とする積層フィルムの製造方法(ii)について説明する。
初めに、製造方法(i)と同様に、外層用フィルムとバリア層用フィルムとをドライラミネート法により積層し、外層/バリア層の二層フィルム2’を製造する。次いで、図3(B)に示すように、一方の巻出し機より二層フィルム2’を繰り出し、他方の巻出し機より内層用フィルム2D’を繰り出し、必要に応じてアンカーコート剤ACを塗布した後、二つのフィルム間に溶融状態の溶融接着用樹脂2C’を押出し、冷却ロールCRにて溶融接着用樹脂2C’を冷却して積層フィルム2を得る。
該積層フィルムは、バリア層の内側にせん断に強い溶融接着用樹脂層を備えるため、開封誘導線部分と非開封誘導線部分の引裂力の差が大きくなる。
【0040】
(2)製袋工程
次いで、得られた積層フィルムを製袋する。積層フィルムを用いて袋を製袋する方法は、従来公知の方法を採用することができる。例えば、図1に示すような、自立袋タイプの易開封性袋1は、一方の積層フィルム21の内面と、他方の積層フィルム22の内面にチャック部材を取り付けた後、これらのフィルムを重ね合わせ、袋の底部分に底用フィルム23を挟み、対向する一対の側縁4a、4bをヒートシールするとともに、底部分を船底状にシールすることにより製造することができる。尚、図1に示す易開封性袋は、上部がヒートシールされていない。上部より内容物を充てんした後、該上部をヒートシールするとよい。
【0041】
(3)開封誘導線形成工程
該工程は、易開封性袋の積層フィルムに、外層側からレーザー光を照射して開封誘導線を形成する工程である。当該工程において用いられるレーザーはCOレーザーが一般的であるが、これに限定されるものではない。バリア層よりも外側の層にのみ、開封誘導線が形成されるよう、レーザー光の出力、照射速度を調整すると良い。また本発明は、開封誘導線に沿って引裂くことにより測定される引裂力T1が、3N以上、特に8~13Nであることが望まれるが、該値もレーザー光線の出力や照射速度により調整することができる。
尚、(3)開封誘導線形成工程は、(2)製袋工程の後に行われることが一般的であるが、(1)積層フィルム製造工程の後、先に(3)開封誘導線形成工程を行い、その(2)製袋工程を行ってもよい。
【実施例
【0042】
次に、本発明の効果を実施例に基づき説明する。
参考例1]
外層用フィルムとして厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PET(12)と略称する)を、バリア層用フィルムとして厚さ9μmのアルミニウム箔(以下、AL(9)と略称する)を、内層用フィルムとして厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(以下、LL(60)と略称する)を用い、溶融接着用樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(密度920kg/m、MFR7g/10min(190℃、2.16kg))(以下、SL(20)と略称する)を用いた。
初めに、AL(9)にPET(12)をドライラミネート法にて貼合し、PET(12)/AL(9)の二層フィルムを製造する。尚、接着剤層の厚さは3μmとした。次いで、該二層フィルムのAL(9)面にアンカーコート剤を塗布し、該二層フィルムのアンカーコート剤の面と、LL(60)とを対向させ、その間に溶融状態のSL(20)を押出し、サンドイッチラミネート法にて20μmの溶融接着用樹脂層を形成し、PET(12)/AL(9)/SL(20)/LL(60)の積層フィルムAを得た。
【0043】
次いで、該積層フィルムAを用いて四方シールされた袋を製造する。積層フィルムから、長さ50mm、幅150mmの矩形のフィルム片を二枚製造し、LLを内側にして重ね合わせ、四方をヒートシールする。
更に、四方シールされた袋に開封誘導線を形成し、易開封性袋を製造する。開封誘導線は(株)キーエンス製のレーザマーカML-Z9620を用いて、レーザー出力70%、照射速度1600mm/sにて、一方の積層フィルムと他方の積層フィルムのそれぞれに、二本ずつ長辺に平行な直線状とした。二本の開封誘導線の間隔は1.5mmとし、一方の積層フィルムの開封誘導線と、他方の積層フィルムの開封誘導線は、袋の平面視において重ならず、交互に出現するようにした。
【0044】
[実施例2]
外層フィルムとして厚さ16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PET(16)と略称する)を、バリア層用フィルムとして厚さ7μmのアルミニウム箔(以下、AL(7)と略称する)を、内層用フィルムとしてLL(60)を採用した。初めに参考例1と同様にして、PET(16)/AL(7)の二層フィルムを製造し、次いで、ドライラミネート法にてLL(60)を積層し、PET(16)/AL(7)/LL(60)の積層フィルムBを得た。尚、接着剤層の厚さは3μmとした。
得られた積層フィルムBを用いて、参考例1と同様にして四方シールされた易開封性袋を得た。
【0045】
[実施例3]
初めに、PET(12)と厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(以下、ON1(15)と略称する)を、ドライラミネート法にて貼合し、これを外層用フィルムとする。
次いで、バリア層用フィルムとしてAL(9)を、内層用フィルムとしてLL(60)を採用し、実施例2と同様にして、PET(12)/ON1(15)/AL(9)/LL(60)の積層フィルムCを得た。尚、各接着剤層の厚さは3μmとした。
得られた積層フィルムCを用いて、参考例1と同様にして四方シールされた易開封性袋を製造した。尚、ON1の延伸方向と開封方向はおおむね一致するように製袋した。
【0046】
[比較例1]
外層用フィルムとしてPET(12)を、バリア層用フィルムとしてAL(9)を、内層用フィルムとしてLL(60)を用い、バリア層と内層との間に積層するフィルムとして厚さ15μmの一軸延伸ナイロンフィルム(以下、ON2(15)と略称する)を用いた。
参考例1と同様にして、PET(12)/AL(9)の二層フィルムを製造する。次いで、該フィルムのAL(9)面に、ON2(15)をドライラミネート法にて貼合し、更に該ON2(15)面にLL(60)をドライラミネート法にて貼合し、PET(12)/AL(9)/ON2(15)/LL(60)の積層フィルムDを得た。
得られた積層フィルムDを用いて、参考例1と同様にして四方シールされた易開封性袋を製造した。尚、ON2の延伸方向と開封方向はおおむね一致するように製袋した。
【0047】
[比較例2]
外層用フィルムとしてPET(12)を、バリア層用フィルムとしてAL(9)を、内層用フィルムとして厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LL(50)と略称する)を用い、バリア層の内層側に貼り合わせるフィルムとしてPET(12)を用い、また溶融接着用樹脂として参考例1と同じ直鎖状低密度ポリエチレンを用いる。尚、比較例2では溶融接着用樹脂層を15μm(以下、SL(15)と略称する)とする。
参考例1と同様にして、PET(12)/AL(9)の二層フィルムを製造する。次いで、該フィルムのAL(9)面に、PET(12)をドライラミネート法にて貼合し、該PET(12)にアンカーコート剤を塗布し、該アンカーコート面とLL(50)とを対向させ、その間に溶融状態のSL(15)を押出し、サンドイッチラミネート法にてPET(12)/AL(9)/PET(12)の三層フィルムとLL(50)を貼合し、PET(12)/AL(9)/PET(12)/SL(15)/LL(50)の積層フィルムEを得た。
得られた積層フィルムEを用いて、参考例1と同様にして四方シールされた易開封性袋を得た。
【0048】
<引裂力>
参考例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2の易開封性袋について、以下の方法にて引裂力を測定する。
易開封性袋の開封方向に垂直な側辺のシール部分が短辺となるように試験片を作成し、シール部分側の短辺にスリットを設け、該スリット部分からJIS K 7128-1に準拠し、200mm/minにて易開封性袋を引裂く。引裂に要した力を引張試験機(オートグラフ 島津製作所製)にて測定する。
開封誘導線がない部分を開封方向(開封誘導線と略平行な方向)に引裂く際に測定される強度をT0、開封誘導線に沿って引裂く際に測定される強度をT1とする。結果を表1に記す。
【0049】
【表1】
【0050】
外層、バリア層、内層を順に備え、バリア層(AL)よりも内層側に延伸フィルムからなる層を具備しない参考例1、実施例2、実施例3の易開封性袋は、引裂力T0と引裂力T1の差が大きかった。また、引裂力T1の値も大きかった。
一方、比較例1、比較例2に用いられた積層フィルムは、バリア層の内層側の層が延伸フィルムであり、引裂力T0と引裂力T1の差はほとんど見られなかった。
【0051】
参考例4、実施例5、実施例6、比較例3、比較例4]
上述した積層フィルムA、積層フィルムB、積層フィルムC、積層フィルムD、積層フィルムEを用いて、図4に示す易開封性袋(一方の積層フィルム21に二本の直線状の引裂誘導線が形成され、他方の積層フィルム22に中央に行くに従い深く窪む二本の引裂誘導線が形成された袋)を作成し、それぞれ参考例4、実施例5、実施例6、比較例3、比較例4とする。
<手切れ性評価>
参考例4、実施例5、実施例6、比較例3、比較例4の易開封性袋、各10袋を、開封開始手段6から開封する。このとき袋の上部を、開封誘導線が高い位置に設けられた一方の積層フィルム21側に引っ張って、開封する。開封開始ラインが、開封誘導線と一致したものの数を表2に記す。
【0052】
【表2】
【0053】
引裂力T0と引裂力T1の差が大きく、また引裂力T1も大きい積層フィルムA、B、Cを用いた参考例4、実施例5、実施例6の易開封性袋は、手切れ性が良好であり、高い確率で開封ラインに設計通りの段差を形成することができた。
一方、引裂力の差の小さい積層フィルムD、積層フィルムEを用いた易開封性袋は、開封ラインが開封誘導線から外れることが多かった。
【符号の説明】
【0054】
1 易開封性袋
2 積層フィルム
21 一方の積層フィルム
22 他方の積層フィルム
23 底用フィルム
31 一方の積層フィルムに形成された開封誘導線
32 他方の積層フィルムに形成された開封誘導線
4a 側縁
4b 側縁
5 チャック部材
6 開封開始手段
71 手前側の積層フィルムに形成される開封ライン

図1
図2
図3
図4
図5