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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】反応器及びこれを備えた反応システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B01J19/00 321
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019189620
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021062348
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】松岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】野一色 公二
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦彦
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-048261(JP,A)
【文献】特開2012-061452(JP,A)
【文献】特表2009-513327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165632(US,A1)
【文献】特開2018-096624(JP,A)
【文献】特開2005-046652(JP,A)
【文献】特表2012-515137(JP,A)
【文献】特開平09-117657(JP,A)
【文献】特開2016-019935(JP,A)
【文献】特開2013-099746(JP,A)
【文献】特表2019-513965(JP,A)
【文献】特開平11-144852(JP,A)
【文献】特開2012-088044(JP,A)
【文献】特開2001-235228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0171867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01F 21/00-25/90
H05B 6/10
B81C 1/00- 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延びる中心軸を囲むように配置された温度調節器の内側に配置され、化学反応する物質を含む反応流体を流すための複数の反応流路を形成する反応器であって、
前記反応流体の入口を形成する入口形成部と、
前記反応流体の出口を形成する出口形成部と、
前記温度調節器に対して前記中心軸と直交する径方向に対向することにより当該温度調節器により加熱又は冷却される外周面を有し、かつ、前記複数の反応流路が前記入口と前記出口とを結ぶように当該複数の反応流路を形成する流路形成部と、を備え、
前記流路形成部には、前記径方向と交差する流路配列方向に並ぶ複数の流路配設領域が設定され、前記複数の反応流路は前記複数の流路配設領域にそれぞれ分配されて当該流路配設領域内に形成され、前記複数の反応流路のそれぞれは、前記流路配列方向と交差する第1進行方向と当該流路配列方向と交差しかつ前記第1進行方向に対して交差する第2進行方向との双方に進行しながら前記入口から前記出口に向かって前記反応流体を導く形状を有し、
前記流路配列方向が前記中心軸回りの周方向であり、
前記第1進行方向及び前記第2進行方向は前記軸方向及び前記径方向のいずれか一方の方向であり、前記第2進行方向は他方の方向であり、
前記複数の反応流路のそれぞれが、前記第1進行方向に往復しながら少なくとも前記第2進行方向に進行するように蛇行する形状を有する、反応器。
【請求項2】
所定方向に延びる中心軸を囲むように配置された温度調節器の内側に配置され、化学反応する物質を含む反応流体を流すための複数の反応流路を形成する反応器であって、
前記反応流体の入口を形成する入口形成部と、
前記反応流体の出口を形成する出口形成部と、
前記温度調節器に対して前記中心軸と直交する径方向に対向することにより当該温度調節器により加熱又は冷却される外周面を有し、かつ、前記複数の反応流路が前記入口と前記出口とを結ぶように当該複数の反応流路を形成する流路形成部と、を備え、
前記流路形成部には、前記径方向と交差する流路配列方向に並ぶ複数の流路配設領域が設定され、前記複数の反応流路は前記複数の流路配設領域にそれぞれ分配されて当該流路配設領域内に形成され、前記複数の反応流路のそれぞれは、前記流路配列方向と交差する第1進行方向と当該流路配列方向と交差しかつ前記第1進行方向に対して交差する第2進行方向との双方に進行しながら前記入口から前記出口に向かって前記反応流体を導く形状を有し、
前記流路配列方向が前記中心軸回りの周方向であり、
前記複数の反応流路は、前記複数の流路配設領域内にそれぞれ設定された流路配設面に沿うように形成され、前記流路配設面は、互いに前記周方向に並び、かつ、前記中心軸を通る平面である、反応器。
【請求項3】
請求項1に記載の反応器であって、前記複数の反応流路のそれぞれが、前記第1進行方向に往復しながら前記第2進行方向及び第3進行方向の双方に進行するように3次元的に蛇行する形状を有し、前記第3進行方向は、前記第1進行方向と交差しかつ前記第2進行方向と交差する方向である、反応器。
【請求項4】
所定方向に延びる中心軸を囲むように配置された温度調節器の内側に配置され、化学反応する物質を含む反応流体を流すための複数の反応流路を形成する反応器であって、
前記反応流体の入口を形成する入口形成部と、
前記反応流体の出口を形成する出口形成部と、
前記温度調節器に対して前記中心軸と直交する径方向に対向することにより当該温度調節器により加熱又は冷却される外周面を有し、かつ、前記複数の反応流路が前記入口と前記出口とを結ぶように当該複数の反応流路を形成する流路形成部と、を備え、
前記流路形成部には、前記径方向と交差する流路配列方向に並ぶ複数の流路配設領域が設定され、前記複数の反応流路は前記複数の流路配設領域にそれぞれ分配されて当該流路配設領域内に形成され、前記複数の反応流路のそれぞれは、前記流路配列方向と交差する第1進行方向と当該流路配列方向と交差しかつ前記第1進行方向に対して交差する第2進行方向との双方に進行しながら前記入口から前記出口に向かって前記反応流体を導く形状を有し、
前記流路配列方向が前記中心軸回りの周方向であり、
前記複数の反応流路のそれぞれが前記入口に接続される入口端と前記出口に接続される出口端とを有し、前記入口は前記複数の反応流路の前記入口端のいずれにも連通する形状を有し、前記出口は、前記複数の反応流路の前記出口端のいずれにも連通する形状を有する、反応器。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の反応器であって、前記複数の流路配設領域のうちの少なくとも一つの流路配設領域には前記複数の反応流路のうちの一部の複数の反応流路が互いに並行する状態で形成されている、反応器。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の反応器であって、前記流路形成部を構成する母体の体積が当該流路形成部全体の体積の50%以上である、反応器。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の反応器と、温度調節器と、を備え、前記温度調節器が所定方向に延びる中心軸を囲むように配置され、前記流路形成部の外周面が前記中心軸に対して直交する径方向に前記温度調節器と対向して当該温度調節器により加熱又は冷却されるように当該温度調節器の内側に前記反応器が配置される、反応システム。
【請求項8】
請求項7に記載の反応システムであって、前記温度調節器は前記流路形成部の前記外周面に渦電流を生じさせて誘導加熱を行う誘導加熱器である、反応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応流体に含まれる物質を化学反応させるための反応器及びこれを備えた反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学反応する物質を含む反応流体において当該物質に化学反応を起こさせるための反応器として、複数の反応流路を有し、当該反応流路を流れる反応流体の温度を調節しながら当該反応流路内で前記化学反応を生じさせるものが、知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、反応器を含む反応器であって、その周囲に高周波コイルが配置されるものを開示する。前記反応器ブロックには、互いに平行な状態でそれぞれが軸方向、すなわち前記高周波コイルの中心軸と平行な方向、に延びる複数の反応流路が設けられ、当該複数の反応流路のそれぞれに反応流体が流される。前記複数の反応流路のそれぞれは微細流路であり、例えばマイクロチャネルや細管により構成される。前記高周波コイルは、当該高周波コイルの通電により、前記反応器ブロックの外周部分に渦電流を生じさせるような高周波電界を形成し、これにより、前記複数の反応流路をそれぞれ流れる前記反応流体を誘導加熱して当該反応流体の温度を化学反応に適した温度にする。前記複数の反応流路は、互いに並列に配置されているため、当該反応流路の数が多いほど効率的な反応処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4913817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載される高周波コイルによる誘導加熱では,前記反応器ブロックの外周面から径方向の中心に向かうに従って電流密度が指数関数的に小さくなるような温度勾配が生じるため、当該反応器ブロックに設けられる前記複数の反応流路のうち前記外周面に近い反応流路を流れる反応流体の加熱温度と中心に近い反応流路を流れる反応流体の加熱温度との間に著しい差が生じる。このような加熱ムラは、製品品質の均一化の妨げとなる。
【0006】
このような課題は、誘電加熱のみならず、反応器の周囲に他の加熱手段(例えば電気抵抗によるヒータ)が配置されて当該ヒータにより当該反応器の外周面が加熱される場合、あるいは逆に当該反応器の外周面がクーラにより冷却される場合、にも同様に生じ得る。また、このような温度調節ムラは、反応処理量を増やすべく前記複数の反応流路の数を増やすほど、つまり前記反応器の径方向の寸法を大きくするほど、顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、化学反応を生じることが可能な反応物質を含む反応流体を流しながら前記反応物質を化学反応させるための複数の反応流路を形成する反応器であって、当該複数の反応流路における反応流体の温度調節ムラを抑えながら効率よく化学反応を生じさせることが可能な反応器、及びこれを備えた反応システムを提供することを目的とする。
【0008】
提供されるのは、所定方向に延びる中心軸を囲むように配置された温度調節器の内側に配置され、かつ、化学反応する物質を含む反応流体を流すための複数の反応流路を形成する反応器である。当該反応器は、前記反応流体の入口を形成する入口形成部と、前記反応流体の出口を形成する出口形成部と、前記温度調節器に対して前記中心軸と直交する径方向に対向することにより当該温度調節器により加熱又は冷却される外周面を有し、かつ、前記複数の反応流路が前記入口と前記出口とを結ぶように当該複数の反応流路を形成する流路形成部と、を備える。前記流路形成部には、前記径方向と交差する流路配列方向に並ぶ複数の流路配設領域が設定される。前記複数の反応流路は前記複数の流路配設領域にそれぞれ分配されて当該流路配設領域内に形成される。前記複数の反応流路のそれぞれは、前記流路配列方向と交差する第1進行方向と当該流路配列方向と交差しかつ前記第1進行方向に対して交差する第2進行方向との双方に進行しながら前記入口から前記出口に向かって前記反応流体を導く形状を有する。
【0009】
この反応器では、入口と出口とを結ぶ複数の反応流路が前記径方向と交差する(好ましくは直交する)流路配列方向に並ぶ複数の流路配設領域内に分配されて当該流路配設領域内に形成されているので、例えば複数の反応流路が互いに平行な状態で軸方向に延びる従来の反応器のように流路形成部の外周面とそれぞれの反応流路との径方向の距離の差が著しい反応器に比べ、それぞれの反応流路を流れる反応流体の温度調節ムラが有効に抑制される。そして、前記複数の反応流路は、前記流路配列方向と交差する(好ましくは直交する)第1進行方向及び第2進行方向の双方に進行するように形成されているので、コンパクトな構造で前記複数の反応流路のそれぞれの流路長を稼いで十分な反応処理を行うことが可能である。
【0010】
前記流路形成部を構成する母体の体積が当該流路形成部全体の体積の50%以上であること、つまり、当該流路形成部において前記複数の反応流路が占める割合よりも前記母体が占める割合が大きいこと、が好ましい。このようにして母体の熱容量を大きくすることにより、当該母体の温度ムラを極力小さくして反応流路を流れる流体の温度に与える影響を小さくすることができる。このことは、当該流体を適正な温度で反応させることを可能にし、これにより高い効率を維持したまま反応処理を行うことを可能にする。特に、前記母体が誘導加熱される場合、当該母体の体積占有率が大きいことは反応器全体のより容易かつ安定した加熱を可能にする。
【0011】
前記流路配列方向は、例えば軸方向である。以下、これを第1の態様と称する。
【0012】
前記第1の態様では、前記複数の反応流路は、前記複数の流路配設領域内にそれぞれ設定された流路配設面に沿うように形成され、前記流路配設面は、前記軸方向に対して交差する(好ましくは直交する)平面であることが、好ましい。
【0013】
また、前記第1の態様では、前記複数の反応流路のそれぞれが入口端とその反対側の出口端とを有し、前記流路形成部は、前記複数の反応流路のそれぞれの入口端を前記入口に接続するように前記軸方向に延びる入口接続流路と、前記複数の反応流路のそれぞれの出口端を前記出口に接続するように前記軸方向に延びる出口接続流路と、をさらに形成することが、好ましい。この流路形成部は、前記入口に供給される反応流体が前記入口接続流路を通じて前記複数の反応流路の入口端に分配され、かつ、当該複数の反応流路の出口端からそれぞれ排出される反応流体が前記出口接続流路及び前記出口を通じて前記反応器から排出されることを可能にする。
【0014】
前記第1の態様において、前記第1進行方向は例えば前記径方向であり、前記第2進行方向は例えば前記中心軸回りの周方向である。この場合、前記複数の反応流路のそれぞれは、前記周方向に周回しながら前記径方向に進行する渦巻状のものが好適である。前記複数の反応流路のそれぞれは、あるいは、前記第1進行方向に往復しながら前記第2進行方向に進行するように蛇行するものであってもよい。
【0015】
前記流路配列方向は、あるいは、前記中心軸回りの周方向であってもよい。以下、これを第2の態様と称する。
【0016】
前記第2の態様において、例えば、前記第1進行方向及び前記第2進行方向は前記軸方向及び前記径方向のいずれか一方の方向であり、前記第2進行方向は他方の方向であることが、好ましい。
【0017】
より具体的には、前記複数の反応流路のそれぞれが、前記第1進行方向に往復しながら少なくとも前記第2進行方向に進行するように蛇行する形状を有するものが、好適である。
【0018】
前記第2の態様では、前記複数の反応流路は、前記複数の流路配設領域内にそれぞれ設定された流路配設面に沿うように形成され、前記流路配設面は、互いに前記周方向に並び、かつ、前記中心軸を通る平面であることが好ましい。
【0019】
あるいは、前記複数の反応流路のそれぞれが、前記第1進行方向に往復しながら前記第2進行方向及び第3進行方向の双方に進行するように3次元的に蛇行する形状を有してもよい。前記第3進行方向は、前記第1進行方向と交差し(好ましくは直交し)かつ前記第2進行方向と交差する方向である。このような反応流路の3次元的な蛇行は、当該反応流路に大きな流路長を与えて反応時間を稼ぐことを可能にする。
【0020】
前記第2の態様では、前記複数の反応流路のそれぞれが前記入口に接続される入口端と前記出口に接続される出口端とを有するのがよい。この場合、前記入口は前記複数の反応流路の前記入口端のいずれにも連通する形状を有し、前記出口は、前記複数の反応流路の前記出口端のいずれにも連通する形状を有することが、好ましい。このことは、前記複数の反応流路の入口端をそれぞれ入口に接続するための特別な入口接続流路や前記複数の反応流路の出口端をそれぞれ出口に接続するための特別な出口接続流路の形成を不要にする。
【0021】
前記複数の流路配設領域のうちの少なくとも一つの流路配設領域には前記複数の反応流路のうちの一部の複数の反応流路が互いに並行する状態で形成されていることが、好ましい。このことは、前記複数の反応流路の総数を増やして大きな処理量を確保することを可能にする。
【0022】
また本発明によれば、前記の反応器と、温度調節器と、を備えた反応システムが提供される。この反応システムでは、前記温度調節器が所定方向に延びる中心軸を囲むように配置され、前記流路形成部の外周面が前記中心軸に対して直交する径方向に前記温度調節器と対向して当該温度調節器により加熱又は冷却されるように当該温度調節器の内側に前記反応器が配置される。
【0023】
この反応システムにおいて、前記温度調節器は例えば前記流路形成部の前記外周面に渦電流を生じさせて誘導加熱を行う誘導加熱器である。前記誘導加熱は、前記流路形成部を構成する材料そのものに渦電流を生じさせて当該材料を直接昇温するものであるので、例えば燃料を燃焼させて生じる炎からの輻射熱を利用した加熱に比べ、加熱対象である反応器のサイズを著しく小さくすることを可能にする。そして、このような誘導加熱では、前記流路形成部における前記径方向の温度勾配が大きいため、前記のような複数の反応流路の配置は特に有効である。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、化学反応を生じることが可能な反応物質を含む反応流体を流しながら前記反応物質を化学反応させるための複数の反応流路を形成する反応器であって、当該複数の反応流路における反応流体の温度調節ムラを抑えながら効率よく化学反応を生じさせることが可能な反応器、及びこれを備えた反応システムが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る反応システムの断面正面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面を示す平面図である。
図3】反応器の流路形成部における径方向の温度勾配とこれに対応した従来型の反応器の反応流路の温度分布とを示すグラフである。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る反応システムの断面正面図である。
図5図4のV-V線に沿った断面を示す平面図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る反応システムの中間ブロックの横断面を示す断面平面図である。
図7】本発明の第4の実施の形態に係る反応システムの中間ブロックの横断面を示す断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、紙面の上側から下側に至る方向に対して「上下」を付す場合があり、また、紙面にて上側または下側に示される部材、部分を称する際に、「上」または「下」を付す場合がある。さらに、紙面における左側から右側に至る方向および面に対して「水平方向」及び「水平面」を付す場合があり、また、紙面における上下方向及び面に対して「鉛直」及び「鉛直面」を付す場合がある。
【0027】
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態に係る反応システムを示す。この反応システムは、反応器10と、誘導加熱器20と、を備える。
【0028】
前記反応器10は、所定方向(図1では上下方向)に延びる中心軸Xを有し、化学反応する物質を含む反応流体を流すための複数の反応流路31を形成する。前記誘導加熱器20は、前記反応器10を誘導加熱することにより前記反応流体の温度を化学反応に適した温度に調節する。
【0029】
この実施の形態に係る反応器10は、入口端板12と、出口端板14と、中間ブロック16と、を備える。
【0030】
前記入口端板12は、前記反応器10の入口形成部を構成する。当該入口形成部は、この実施の形態では前記中心軸Xと平行な軸方向の一方の端部を構成しかつ前記反応流体の入口13を形成する部分であり、図1に示される姿勢では下側端部である。前記入口端板12は前記軸方向から見て円形である円板状をなす。前記入口13は、前記入口端板12をその厚み方向すなわち前記軸方向に貫通する貫通孔であり、前記中心軸Xからこれと直交する径方向に大きく外れた位置、すなわち外周寄りの位置(図1では右寄りの位置)に形成されている。
【0031】
前記出口端板14は、前記反応器10の出口形成部を構成する。当該出口形成部は、この実施の形態では前記軸方向の他方の端部を構成しかつ前記反応流体の出口15を形成する部分であり、図1に示される姿勢では上側端部である。前記出口端板14は前記軸方向から見て円形である円板状をなし、この実施の形態では前記入口端板12の外径と等しい外径を有する。前記出口15は、前記出口端板14をその厚み方向すなわち前記軸方向に貫通する貫通孔であり、前記中心軸Xと合致する位置、すなわち前記出口端板14の中央位置に形成されている。
【0032】
前記中間ブロック16は、前記入口端板12と前記出口端板14との間に配置され、前記反応器10の流路形成部の母体を構成する。当該流路形成部は、前記入口13と前記出口15との間に前記複数の反応流路31を形成する部分である。当該中間ブロック16は、前記中心軸Xを中心とする円筒状の外周面18を有する。この実施の形態において当該外周面18の径すなわち当該中間ブロック16の外径は前記入口及び出口端板12,14のそれと同等である。
【0033】
前記外周面18は、前記誘導加熱器20に対して前記径方向に隙間24をおいて対向することにより当該誘導加熱器20による誘導加熱を受ける。つまり、前記反応器10は前記誘導加熱器20により加熱されることが可能となるように当該誘導加熱器20の内側に配置される。従って、前記反応器10のうちの少なくとも流路形成部である前記中間ブロック16は誘導加熱されることが可能な材料により構成されている。前記誘導加熱器20は、誘導コイル22を有し、当該誘導コイル22の通電によって前記外周面18に渦電流を生じさせることによりその誘導加熱を行うように、つまり前記誘導コイル22が前記中心軸Xを囲むように、配置されている。当該誘導コイル22は、その中心軸と前記反応器10の中心軸Xとが合致するように配置されることが、好ましい。このことは、前記複数の反応流路31を流れる反応流体のより均等な加熱を可能にする。
【0034】
なお、「前記外周面18は、前記誘導加熱器20に対して前記径方向に隙間24をおいて対向する」とは、必ずしも当該外周面18と当該誘導加熱器20の内周面(この実施の形態では誘導コイル22の内接面)とが互いに平行、つまり前記軸方向に対して平行、である態様に特定する趣旨ではない。例えば、前記外周面18が軸方向に進むにつれて外径が変化するテーパー状をなす場合でも、当該外周面18と誘導加熱器20とが前記径方向に対向していれば、本発明に係る効果を奏することが可能である。
【0035】
前記中間ブロック16によって形成される前記複数の反応流路31は、当該反応流路31に反応流体を流しながら当該反応流体に含まれる物質の化学反応を進行させるための微細流路である。当該複数の反応流路31は、前記入口13と前記出口15との間で互いに並列に並びながら当該入口13と当該出口15とを結ぶように形成されている。
【0036】
この反応器10の特徴として、前記中間ブロック16には前記軸方向に並ぶ複数の(この実施の形態ではn個の)流路配設領域A11,A12,…,A1nが設定され、前記複数の反応流路31は当該流路配設領域A11,A12,…,A1nのそれぞれに一つずつ分配され、かつ、その流路配設領域内において形成されている。
【0037】
より詳しくは、前記複数の流路配設領域A11,A12,…,A1nのそれぞれに対応する複数の流路配設面が設定され、当該流路配設面にそれぞれ沿うように前記複数の反応流路31のそれぞれが形成されている。つまり、前記複数の流路配設面は、前記複数の流路配設領域A11,A12,…,A1nのそれぞれにおいて設定されている。具体的に、図1に示される姿勢において、前記複数の流路配設面は前記中心軸Xと互いに異なる位置で直交する複数の平面、すなわち互いに異なる高さ位置にある複数の水平面、であり、前記複数の反応流路31は上下方向の複数段にわたって互いに間隔をおいて配列され、前記複数の水平面のそれぞれに沿うように形成されている。換言すれば、前記複数の反応流路31のそれぞれは互いに異なる高さ位置において水平面上で展開している。
【0038】
前記複数の流路配設面は、前記中心軸Xに対して交差していればよく、必ずしも直交していなくてもよい。また、この明細書において「直交する」とは、交差角度が正確に90°に合致する態様に限定する趣旨ではなく、実質的に直交しているとみなすことが可能な程度まで前記交差角度が90°に近いものを広く含む趣旨である。
【0039】
前記複数の反応流路31のそれぞれは、前記流路配設面(図1では水平面)に平行な第1進行方向と当該流路配設面に平行でかつ前記第1進行方向に対して交差する第2進行方向との双方に進行しながら前記入口から前記出口に向かって前記反応流体を導く形状を有する。つまり、前記第1及び第2進行方向はいずれも前記流路配列方向(図1では上下方向)に直交する方向(図1では水平方向)であり、かつ、当該第1及び第2進行方向は互いに交差している。この第1の実施の形態において、前記第1進行方向は前記中心軸X回りの周方向、すなわち当該中心軸Xを中心とする回転方向、であり、前記第2進行方向は当該第1進行方向と直交する方向すなわち前記径方向である。
【0040】
より具体的に、この第1の実施の形態に係るそれぞれの反応流路31は、図2に示されるように、前記周方向に周回しながら前記径方向の内向きに進行する渦巻状をなしている。当該反応流路31は、入口端31aとその反対側の出口端31bとを有する。前記入口端31aは、この第1の実施の形態では径方向外側に位置する端、つまり前記外周面18に近い端、であり、前記出口端31bは、この第1の実施の形態では径方向内側に位置する端、つまり前記中心軸X上に位置する端、である。
【0041】
前記流路形成部の母体を構成する前記中間ブロック16は、前記複数の反応流路31に加えて入口接続流路33及び出口接続流路35を画定する。
【0042】
前記入口接続流路33は、前記複数の反応流路31のそれぞれの入口端31aを前記入口13に接続するように前記軸方向に延びる。具体的に、この実施の形態に係る前記入口接続流路33は、前記入口13を始端として、前記複数の反応流路31のそれぞれの入口端31aを通りながら上向きに延び、前記入口13から最も遠い(図1では最上位の)入口端31aを終端とする。
【0043】
前記出口接続流路35は、前記複数の反応流路31のそれぞれの出口端31bを前記出口15に接続するように前記軸方向に延びる。具体的に、この実施の形態に係る前記出口接続流路35は、前記複数の反応流路31のうち前記出口15から最も遠い(図1では最下位の)出口端31bを始端として、前記複数の反応流路31のそれぞれの出口端31bを通りながら上向きに延び、前記出口15に至る。
【0044】
前記中間ブロック16は、例えば、前記軸方向に積層される複数の積層板により構成されることが可能である。この場合、当該複数の積層板のそれぞれに、前記複数の反応流路31を構成する溝と、前記入口接続流路33及び前記出口接続流路35をそれぞれ構成する貫通孔と、が形成されているのがよい。このことは、当該複数の積層板の積層によって前記流路31,33,35を容易に形成することを可能にする。
【0045】
この反応システムにおいて、前記誘導コイル22が通電されると、前記中間ブロック16の外周面18に渦電流が形成されて当該中間ブロック16が誘導加熱される。この誘導加熱に伴い、前記中間ブロック16には、例えば図3の左側グラフに示されるように、前記外周面18から径方向内側に向かうに従って温度が降下するような温度勾配が生じる。
【0046】
一方、前記反応器10の前記入口13に、化学反応することが可能な物質を含む反応流体が供給されると、図1に矢印で示されるように、前記反応流体は前記入口接続流路33を通じて前記複数の反応流路31の入口端31aに分配される。当該複数の反応流路31のそれぞれにおいて、当該反応流路31を流れる反応流体は前記のように誘導加熱されている中間ブロック16との熱交換により昇温し、当該反応流体に含まれる物質の化学反応が進行する。このようにして前記複数の反応流路31のそれぞれにおいて反応処理された
流体は当該反応流路31の出口端31bから前記出口接続流路35及び前記出口15を通じて前記反応器10の外部に排出されることが可能である。
【0047】
この反応器10における前記複数の反応流路31は、従来の反応器における複数の反応流路、すなわち互いに平行な状態でそれぞれが軸方向に延びる反応流路、と異なり、径方向に対して交差する流路配列方向、この実施の形態では当該径方向と直交する軸方向、に並ぶ複数の流路配列領域A11,A12,…,A1nに分配されている、詳しくは当該軸方向に並ぶ複数の流路配設面(図1では互いに高さの異なる水平面)に沿うように形成されている。従って、前記従来の反応器のように流路形成部の外周面とそれぞれの反応流路との径方向の距離の差が著しい反応器に比べ、それぞれの反応流路31を流れる反応流体の加熱ムラが有効に抑制される。しかも、それぞれの反応流路31は、前記複数の流路配設面にそれぞれ沿いながら互いに交差する第1及び第2進行方向(この実施の形態では周方向及び径方向)の双方に進行する渦巻状に形成されているので、コンパクトな構造で前記複数の反応流路のそれぞれの流路長を稼いで十分な反応処理を行うことが可能である。
【0048】
前記複数の反応流路31の流路配列方向が径方向と交差する方向(第1の実施の形態では径方向に対して直交する軸方向)であることの利点を説明するために、図3の左側グラフに曲線Lrで示されるような温度勾配を想定する。この温度勾配は、上述のように流路形成部の外周面に対して誘導加熱が行われることにより当該外周面上での温度(最高温度)Toから中心部での温度(最低温度)Tiに至るまで径方向内側に向かって指数関数的に温度が減少することにより生ずるものである。
【0049】
前記のような温度勾配が従来の反応器、すなわち複数の反応流路が互いに平行な状態で軸方向に延びるように形成されている反応器、に生じている場合、当該複数の反応流路のうち外周面に最も近い反応流路を流れる反応流体の温度は図3の右側グラフの直線Loに示されるように入口端から出口端に至るまでほぼ前記最高温度Toに等しく、逆に外周面から最も遠い中心部の反応流路を流れる反応流体温度は直線Liに示されるように入口端から出口端に至るまでほぼ最低温度Tiに等しくなる。従って、それぞれの反応流路を流れる反応流体に対して著しい加熱ムラが生じる。
【0050】
これに対し、図1に示されるような反応器10において前記のような温度勾配が生じたとしても、前記複数の反応流路31は軸方向に並んでいるために当該反応流路31同士の間で温度差はほとんどなく、よって当該複数の反応流路31のそれぞれを流れる反応流体は互いに均等に加熱されることが可能である。より具体的に、前記複数の反応流路31のそれぞれは渦巻状、すなわち前記周方向に周回を繰り返しながら径方向に進行する形状、を有するので、それぞれの反応流路31における入口端31aから出口端31bに至るまでの温度勾配は図3に曲線Lrで示される温度勾配に対応したものとなる。
【0051】
図1に示される反応器10において、入口13から入口接続流路33の終端に向かって当該入口接続流路33を流れる反応流体は僅かに昇温するため、前記複数の反応流路31のそれぞれを流れる反応流体の温度は厳密には互いに相違する可能性がある。しかし、当該入口接続流路33及び出口接続流路35における反応流体の滞留時間に比べてそれぞれの反応流路31における反応流体の滞留時間が十分長くなるように、つまり、前記反応流体が入口13から出口15に辿り着くまでの時間のうち当該反応流体が反応流路31を流れるのに要する時間が支配的となるように、それぞれの流路31,33,35の形状が設定されることにより、前記複数の反応流路31同士の間での温度差を実質上無くすことが可能である。具体的には、前記のような滞留時間が実現されるように、前記入口及び出口接続流路33,35の断面積よりも前記複数の反応流路31の断面積が十分小さく設定され、また、前記入口及び出口接続流路33,35の流路長よりも前記複数の反応流路31のそれぞれの流路長が十分長く設定されるのが、よい。ただし、本発明は、前記複数の反応流路31だけでなく前記入口接続流路33や前記出口接続流路35においても僅かながらも反応流体中の化学反応が進行する態様を除外するものではない。
【0052】
また、前記のように複数の反応流路31が軸方向に並ぶ態様において、それぞれの反応流路31は第1進行方向及びこれと交差する第2進行方向の双方に進行する形状を有しておればよく、その具体的な形状は図2に示されるような渦巻状に限定されない。当該形状は、例えば、前記流路配設面(図1では水平面)上で第1進行方向に往復しながら当該第1進行方向と交差する(好ましくは直交する)第2進行方向に進行するように蛇行する形状であってもよい。あるいは、図1及び図2に示される複数の反応流路31のうち互いに軸方向に隣り合う2つの反応流路31の一方の出口端31bと他方の入口端31aとが軸方向に短絡されて当該2つの反応流路31が直列に接続されることにより一つの反応流路に合体されてもよい。つまり、本発明に係る複数の反応流路のそれぞれは複数層にわたって形成されるものでもよい。
【0053】
図4及び図5は、本発明の第2の実施の形態に係る反応システムを示す。この反応システムは、図1及び図2に示される前記反応器10に代えて反応器40が誘導加熱器20の内側に配置されたものである。
【0054】
前記反応器40は、前記反応器10と同じく中心軸Xを有し、前記入口端板12及び前記出口端板14にそれぞれ対応する入口端板42及び出口端板44を備える。前記入口端板42は、前記入口端板12と同じく入口43を形成する入口形成部に相当するが、前記入口43の形状は、後に詳述するように図1に示される入口13と相違する。一方、前記出口端板44は前記出口端板14と同等の形状を有する。すなわち、当該出口端板44は軸方向から見て円形である円板状をなし、その中央位置に出口45が形成されている。
【0055】
前記反応器40は、前記反応器10の前記中間ブロック16に代えて中間ブロック46、入口側閉塞板47A及び出口側閉塞板47Bを備え、これらが当該反応器40の流路形成部、すなわち前記複数の反応流路34を形成する部分、を構成する。前記中間ブロック46は、前記入口端板42と前記出口端板44との間に配置される。前記入口側閉塞板47Aは薄肉の円板状をなし、前記入口端板42と前記中間ブロック46の入口側端面(図4では下端面)との間に挟み込まれている。前記出口側閉塞板47Bは薄肉の円板状をなし、前記出口端板44と前記中間ブロック46の出口側端面(図4では上端面)との間に挟み込まれている。前記中間ブロック46及び前記両閉塞板47A,47Bは前記中心軸Xを中心とする円筒状の外周面48を有し、当該外周面48の径は前記入口及び出口端板42,44のそれと同等である。前記外周面48も、図1に示される前記外周面18と同様、前記誘導加熱器20に対して前記径方向に隙間24をおいて対向することにより当該誘導加熱器20による誘導加熱を受ける。
【0056】
前記複数の反応流路34も、前記入口43と前記出口45との間で互いに並列に並びながら当該入口43と当該出口45とを結び、かつ、径方向に交差する(この実施の形態では直交する)流路配列方向に並ぶ複数の(n個の)流路配設領域A21,A22,…,A2nに分配されて当該流路配設領域内において形成されている。しかし、この第2の実施の形態に係る流路配列方向は軸方向ではなく前記中心軸X回りの周方向である点で第1の実施の形態と相違する。すなわち、前記複数の流路配設領域A21,A22,…,A2nは互いに前記周方向に並ぶように設定されている。また、この第2の実施の形態においても前記複数の流路配設領域A21,A22,…,A2n内においてそれぞれ設定された複数の流路配設面が存在するが、当該複数の流路配設面は、互いに周方向に並ぶ平面であって前記中心軸Xを通る平面(図4に示される姿勢では鉛直方向すなわち上下方向に延びる面;図5では紙面に対して直交する面)である。つまり、前記複数の反応流路34は互いに周方向に異なる位置で前記流路配設面(この実施の形態では鉛直面)に沿うように形成されている。換言すれば、前記複数の反応流路34は、前記複数の流路配設領域A21,A22,…,A2nのそれぞれにおいて、つまり、互いに周方向に異なる位置において、鉛直面上で展開している。
【0057】
前記複数の反応流路34のそれぞれは、前記流路配設面(図4では鉛直面すなわち上下方向に延びる面)に平行な第1進行方向と当該流路配設面に平行でかつ前記第1進行方向に対して交差する第2進行方向との双方に進行しながら前記入口43から前記出口45に向かって前記反応流体を導く形状を有する。この第2の実施の形態において、前記第1進行方向は前記中心軸Xと平行な軸方向であり、前記第2進行方向は前記流路配設面上で前記中心軸Xと直交する径方向である。
【0058】
より具体的に、この第2の実施の形態に係るそれぞれの反応流路34は、図4に示されるように、前記軸方向に往復しながら前記径方向の内向きに進行するように蛇行する形状を有する。当該反応流路34は、入口端34aとその反対側の出口端34bとを有する。前記入口端34aは、この第2の実施の形態では径方向外側の位置で前記入口43につながる端、つまり、図4においては、前記外周面48に近い下端、であり、前記出口端34bは、この第2の実施の形態では径方向内側の位置で前記出口45につながる端、つまり前記中心軸Xに近い上端、である。
【0059】
具体的に、前記中間ブロック46には、前記複数の反応流路34のそれぞれを構成する流路部分であって、複数の軸方向流路部分34xと複数の径方向流路部分34rとが形成されている。前記複数の軸方向流路部分34xは径方向に並ぶ複数の位置のそれぞれにおいて当該中間ブロック46を軸方向に貫通する。前記複数の径方向流路部分34rは、互いに隣り合う軸方向流路部分34xの上端同士及び下端同士を上下交互に径方向に接続することにより当該複数の軸方向流路部分34xを直列に接続する。
【0060】
前記入口側閉塞板47A及び前記出口側閉塞板47Bはそれぞれ図4に示されるように上下の径方向流路部分34rを軸方向外側から塞ぐことにより、それぞれが前記複数の軸方向流路部分34x及び前記複数の径方向流路部分34rにより構成された複数の蛇行流路を画定する。さらに、前記入口側閉塞板47Aには、前記複数の蛇行流路のそれぞれの上流端(図4では下端)を前記入口43に連通する複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔がそれぞれ前記複数の反応流路34の前記入口端34aを構成する。同様に、前記出口側閉塞板47Bには、前記複数の蛇行流路のそれぞれの下流端(図4では上端)を前記出口45に連通する複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔がそれぞれ前記複数の反応流路34の前記出口端34bを構成する。
【0061】
前記複数の反応流路34の前記入口端34aは、従って、前記外周面48のすぐ内側の位置で周方向に並ぶように配列されている。これに対して前記入口43は、前記複数の反応流路34の前記入口端34aのいずれにも連通することが可能な形状を有する。具体的に、当該入口43は、前記中心軸X上に位置する比較的小径の導入部(図4に示す姿勢では下側部分)43aと、当該導入部43aよりも大径でかつ下流側(図4では上側)に位置する分配部43bと、を有する。前記分配部43bの外径は、前記複数の反応流路34の入口端34aを全て包絡するのに十分な大きさを有するように設定されている。同様に、前記出口45は、前記複数の反応流路34の出口端34bを全て包絡するように十分な大きさの径を有する。
【0062】
前記中間ブロック46も、前記中間ブロック16と同様、前記軸方向に積層される複数の積層板により構成されることが可能である。この場合、当該複数の積層板のそれぞれに前記複数の軸方向流路部分34xをそれぞれ構成する複数の貫通孔が形成され、当該複数の積層板のうち上下両端の積層板にはさらに前記径方向流路部分34rを構成する溝が形成されているのがよい。このことは、当該複数の積層板の積層によって前記複数の反応流路34を容易に形成することを可能にする。
【0063】
前記のように構成された反応器40において、その入口43に反応流体が供給されると、図4に矢印で示されるように、前記反応流体は当該入口43の分配部43bを通じて前記複数の反応流路34の入口端34aに分配される。当該複数の反応流路34のそれぞれにおいて、前記反応流体は軸方向(図4では上下方向)に往復しながら径方向内向きに進行するように蛇行し、その間に、誘導加熱された中間ブロック46との熱交換により昇温して当該反応流体内で化学反応が進行する。このようにして前記複数の反応流路34のそれぞれにおいて反応処理された流体は当該反応流路34の出口端34bから前記出口45を通じて前記反応器40の外部に排出されることが可能である。
【0064】
この第2の実施の形態に係る反応器40における前記複数の反応流路34も、図1に示される前記複数の反応流路31と同様、径方向と交差する(好ましくは直交する)流路配列方向(ただしこの第2の実施の形態では周方向)に並ぶ複数の流路配設領域A21,A22,…,A2nのそれぞれにおいて設定された流路配設面(図4では上下方向に延びる鉛直面)に沿うように形成されているので、中間ブロック46内での径方向の温度勾配にかかわらず、それぞれの反応流路34を流れる反応流体の加熱ムラが有効に抑制される。また、各反応流路34での温度勾配は例えば図3に前記曲線Lrで示されたものに対応したものとなる。さらに、前記複数の反応流路34は前記流路配設面にそれぞれ沿いながら第1及び第2進行方向(図4では軸方向及び径方向)の双方に進行するように蛇行しているので、コンパクトな構造でそれぞれの反応流路の流路長を稼いで十分な反応処理を行うことが可能である。
【0065】
このように複数の反応流路34が周方向に並ぶ態様において、それぞれの反応流路34は第1進行方向及びこれと交差する第2進行方向の双方に進行する形状を有しておればよく、その具体的な形状は図4に示される形状に限定されない。当該形状は、例えば、径方向に往復しながら軸方向に進行するように蛇行する形状であってもよい。
【0066】
また、本発明に係る反応流路は、前記反応流路31,34のように平面(流路配設面)に沿う2次元状のものに限定されず、3次元的に進行するものであってもよい。その例として、図6は第3の実施の形態に係る反応システムにおける中間ブロック56の横断面(図5に示される断面と同等の、中心軸Xに対して直交する断面)を示し、図7は第4の実施の形態に係る反応システムにおける中間ブロック66の横断面(図5に示される断面と同等の、中心軸Xに対して直交する断面)を示す。前記中間ブロック56,66はそれぞれ前記第2の実施の形態に係る中間ブロック46に相当するものであり、第3及び第4の実施の形態に係る反応システムの構成は、当該中間ブロック56,66に形成される反応流路の形状を除いて前記第2の実施の形態に係る反応システムの構成と同一である。
【0067】
前記第3の実施の形態に係る前記中間ブロック56では、図6に示されるように周方向に並ぶ複数の(図6では6個の)流路配設領域A31,A32,A33,A34,A35,A36が設定され、当該複数の流路配設領域A31~A36のそれぞれにおいて3次元的に蛇行する反応流路54が形成されている。図6の一点鎖線は、互いに隣り合う領域同士の境界を示している。前記反応流路54は、前記第2の実施の形態に係る反応流路34と同様、第1進行方向である軸方向(図6では紙面に対して直交する方向)に往復しながら当該第1進行方向と直交する方向(図6では紙面と平行な方向)にも進行する形状を有するが、その「第1進行方向と直交する方向」は、流路配列方向(この実施の形態では前記周方向)に対して直交する第2進行方向に加え、前記第1進行方向と直交しかつ前記当該第2進行方向に対して交差する第3進行方向を含んでいる。この実施の形態において、前記第2進行方向は径方向であり、前記第3進行方向は当該第2進行方向(径方向)に対して直交する方向である幅方向である。
【0068】
具体的に、前記反応流路54は、前記第2の実施の形態に係る反応流路34と同様、複数の軸方向流路部分54xと図略の複数の径方向流路部分とを含んでいる。前記複数の軸方向流路部分54xは、前記複数の軸方向流路部分34xと同様に前記中間ブロック56内において軸方向に延びる貫通するものであるが、当該複数の軸方向流路部分54xは、前記複数の流路配設領域A31~A36のそれぞれにおいて径方向内側に向かうほど当該径方向に直交する前記幅方向の寸法が狭くなる略正三角形状に配列されている。前記複数の径方向流路部分は、前記第2の実施の形態に係る前記複数の径方向流路部分34rと同様、互いに隣り合う軸方向流路部分54xの長手方向両端のうちの一方の端(この実施の形態では上端)同士及び他方の端(この実施の形態では下端同士)を上下交互に径方向に接続することにより当該複数の軸方向流路部分54xを直列に接続するものであるが、この第3の実施の形態に係る径方向流路部分は、図6に矢印で示されるように、横断面において反応流体が前記幅方向に往復しながら前記径方向内側へと徐々に移行するように(つまり横断面において蛇行しながら前記複数の軸方向流路部分54xを順次移行するように)、当該複数の軸方向流路部分54x同士を接続している。
【0069】
すなわち、第3の実施の形態では反応流体が前記第1進行方向である軸方向に往復しながら当該第1進行方向と交差しかつ互いに交差する第2及び第3進行方向(この実施の形態では前記第1進行方向と直交しかつ互いに直交する幅方向及び径方向)に移行するように反応流路54が蛇行する(つまり3次元的に蛇行する)ので、反応流体が同じく第1進行方向である軸方向に往復しながら当該第1進行方向と直交する単一の第2進行方向である径方向にのみ進行する(つまり2次元的に蛇行する)前記第2の実施の形態に比べ、それぞれの反応流路54により大きな流路長を与えることができる。つまり、当該反応流路54を流れる反応流体により長い反応時間を与えることができる。
【0070】
前記第4の実施の形態に係る前記中間ブロック66においては、図7に示されるように周方向に並ぶ複数の(図7では4個の)流路配設領域A41,A42,A43,A44が設定され、当該複数の流路配設領域A41~A44のそれぞれにおいて、互いに並行する複数の(図7では4本の)反応流路61,62,63,64が形成されている。図7の一点鎖線は、互いに隣り合う流路配設領域同士の境界を示している。前記反応流路61は、前記第2及び第3の実施の形態に係る反応流路34,54と同様、複数の軸方向流路部分61xと図略の複数の径方向流路部分とを含んでいる。同様に、前記反応流路62は、複数の軸方向流路部分62xと図略の複数の径方向流路部分とを含み、前記反応流路63は、複数の軸方向流路部分63xと図略の複数の径方向流路部分とを含み、前記反応流路64は、複数の軸方向流路部分64xと図略の複数の径方向流路部分とを含んでいる。
【0071】
前記複数の軸方向流路部分61x,62x,63x,64xは、いずれも、前記複数の軸方向流路部分34xと同様に前記中間ブロック66内において軸方向に延びるものであるが、これらの軸方向流路部分61x~64xは互いに径方向及びこれと直交する幅方向に互いに隣接する位置(つまり図7に示される横断面では正方形の4つの頂点にそれぞれに対応する位置)に互いに平行な状態で配置されている。前記反応流路61における複数の径方向流路部分は、図7に矢印で示されるように、前記反応流路61において反応流体が横断面において幅方向に往復しながら径方向内側へと徐々に移行するように前記複数の軸方向流路部分61x同士を接続している。反応流路62~64のそれぞれにおける複数の径方向流路部分も、同様の態様で、前記複数の軸方向流路部分62x同士、前記複数の軸方向流路部分63x同士、及び前記複数の軸方向流路部分64x同士をそれぞれ接続している。
【0072】
この第4の実施の形態では、前記第3の実施の形態と同様、反応流体が第1進行方向である軸方向に往復しながら当該第1進行方向と交差しかつ互いに交差する第2及び第3進行方向(この実施の形態では前記第1進行方向に対して直交しかつ互いに直交する径方向及び幅方向)に移行するように反応流路61~64のそれぞれが蛇行しているので、それぞれの反応流路61~64に大きな流路長を与えることができる。しかも、複数の流路配設領域A41~A44のそれぞれに複数の(この実施の形態では4本)の反応流路61~64が互いに並行する状態で分配されているので、当該反応流路61~64の総数も増やすことができ(図7に示す例では4(流路数/領域)×4(領域数)=16本)、これにより単位時間当たりの処理量も稼ぐことが可能である。
【0073】
この効果は、複数の流路配設領域のうちの少なくとも一つの流路配設領域において複数の反応流路(反応器に含まれる全ての反応流路のうちの一部の複数の反応流路)が形成されている場合に得ることが可能である。換言すれば、全ての流路配設領域において複数の反応流路が形成されていなくても前記効果を得ることが可能である。
【0074】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態を包含する。
【0075】
(A)反応流路の入口端及び出口端の位置について
本発明に係る反応流路の入口端及び出口端の位置は限定されない。例えば、前記第1及び第2の実施の形態に係る反応流路31,34の入口端31a,34aはいずれも径方向外側の位置にあり、出口端31b,34bはいずれも径方向内側の位置にあるが、逆に複数の反応流路の入口端が全て径方向内側寄りの位置にあり、出口端が全て入口端よりも径方向外側の位置にあってもよい。あるいは、入口端及び出口端の双方が中心軸に近い位置にあってもよい。例えば、複数の反応流路のそれぞれが径方向に往復しながら軸方向に進行するように蛇行する形状を有する場合、当該反応流路の入口端及び出口端の双方が中心軸に近い位置にあっても、加熱ムラを抑え、かつ十分な反応流路長さを確保することが可能である。
【0076】
(B)流路形成部の構造について
本発明に係る流路形成部の具体的な構造は問わない。前記第1~第4の実施の形態では、流路形成部の母体である中間ブロック16,46,56,66がそれぞれ画定する空間(チャネル)によって複数の反応流路が構成されているが、本発明に係る複数の反応流路は、例えば、小径で大きな管長を有する微細管により構成されてもよい。
【0077】
前記母体の体積が流路形成部全体の体積において占める割合は適宜設定することが可能であるが、当該割合が50%以上であること、つまり、当該流路形成部において前記複数の反応流路が占める割合よりもが前記母体が占める割合が大きいこと、が好ましい。このようにして母体の熱容量を大きくすることにより、当該母体の温度ムラを極力小さくして反応流路を流れる流体の温度に与える影響を小さくすることができる。このことは、当該流体を適正な温度で反応させることを可能にし、これにより高い効率を維持したまま反応処理を行うことを可能にする。特に、前記母体が誘導加熱される場合、当該母体の体積占有率が大きいことは反応器全体のより容易かつ安定した加熱を可能にする。
【0078】
(C)温度調節器について
本発明に係る温度調節器は、前記誘導加熱器20のように流路形成部を誘導加熱するものに限定されない。例えば、当該温度調節器は、流路形成部の外周面を輻射または熱伝導によって加熱するヒータであってもよい。あるいは、当該温度調節器は、前記外周面を逆に冷却するクーラであってもよい。すなわち、本発明は、前記外周面の加熱又は冷却によって流路形成部の内部に径方向の温度勾配が発生する場合に有効に適用されることが可能である。ただし、前記のような誘導加熱は、前記流路形成部を構成する材料そのものに渦電流を生じさせて当該材料を直接昇温するものであるので、例えば燃料を燃焼させて生じる炎からの輻射熱を利用した加熱に比べ、加熱対象である反応器のサイズを著しく小さくすることを可能にする。そして、前記誘導加熱では、前記流路形成部における前記径方向の温度勾配が大きいため、本発明の適用により得られる効果は顕著である。
【符号の説明】
【0079】
10,40 反応器
12,42 入口端板(入口形成部)
13,43 入口
14,44 出口端板(出口形成部)
15,45 出口
16,46 中間ブロック(流路形成部の母体)
18,48 外周面
20 誘導加熱器
31,34 反応流路
31a,34a 入口端
31b,34b 出口端
33 入口接続流路
35 出口接続流路
X 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7