(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ベント付きリニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/19 20060101AFI20220926BHJP
F15B 15/14 20060101ALI20220926BHJP
F15B 15/22 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F15B15/19
F15B15/14 380B
F15B15/22 C
(21)【出願番号】P 2019512273
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 US2017049916
(87)【国際公開番号】W WO2018045323
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-20
(32)【優先日】2016-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518287353
【氏名又は名称】ジョイソン セイフティ システムズ アクイジション エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィルモット ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ハムード ラシッド
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509813(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226239(US,A1)
【文献】特開2010-236637(JP,A)
【文献】米国特許第03180082(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02962004(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00-15/28
B60R 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン棒に結合され、遠位端面及び近位端面を含むピストンであって、前記ピストン棒は、遠位端面、及び前記ピストンの前記遠位端面に結合される近位端を含み、前記ピストン棒は、前記ピストン棒の前記遠位端面と、前記ピストン棒の前記近位端との間に延在する外周面をさらに含み、前記ピストンは、前記ピストンの、前記近位端面と前記遠位端面との間に延在する開口部を画定し、前記ピストン棒は内壁を有する空洞を画定し、前記空洞は、前記ピストン棒の前記近位端から前記ピストン棒の一部分を通して軸方向に延在し、かつ前記ピストンによって画定される前記開口部と流体連通している、前記ピストンと、
近位端、遠位端、及び前記近位端と前記遠位端との間に延在する流路を有するハウジングであって、前記流路は、前記ハウジングの内壁によって画定され、前記ハウジングの前記遠位端は前記流路に対する軸方向開口部を画定し、前記ピストン及び前記ピストン棒は、前記ハウジングの前記流路内に摺動可能に配設され、前記ピストン棒は、前記空洞の前記内壁と前記ピストン棒の前記外周面との間に径方向に延在する少なくとも1つの径方向流路をさらに画定し、前記径方向流路は、
前記ピストン棒の上方ストロークの初期部分の間、前記ピストン棒の前記空洞、前記ハウジングの前記流路、及び、前記ハウジングの前記流路に対する前記軸方向開口部と流体連通し
、前記径方向流路は、前記上方ストロークの後続部分の間、前記ピストン棒の前記空洞、及び前記ハウジングの外部の環境と直接流体連通している、前記ハウジングと、を備える、リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記ピストンは、前記ピストン
棒の前記外周面の周りに配設されるシールをさらに含み、前記シールは、前記ピストン
の前記近位端面と、前記径方向流路との間に軸方向に配設され、前記シールは、流体が前記ハウジングの前記流路から前記シールを通り過ぎて流れないようにする、前記ハウジングの前記内壁に当接する外周面を有する、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記シールは、前記ハウジングの前記内壁と前記ピストンの前記外周面との間で圧縮可能な弾性変形可能材料を含む、請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記ピストンの前記外周面は円周溝を画定し、前記シールは前記円周溝内に配設される、請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ピストンの前記外周面は、
第1部位と第2部位とを備え、前記第1部位は前記ピストン棒の前記近位端面に近接し、第1の外径を有し、前記第2部位は前記第1部位と、前記ピストン棒の前記遠位端面との間に軸方向にあり、第2の外径を有し、前記第1の外径は前記第2の外径より大きく、前記円周溝は前記第1部位によって画定される、請求項4に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
放出口を有するガス発生器をさらに含み、前記放出口は前記ハウジングの前記近位端に結合され、前記ガス発生器からの加圧ガスは、前記放出口を通って、前記ハウジングの前記近位端、前記ピストンの前記開口部、及び前記ピストン棒の前記空洞内に、前記ピストン棒の前記径方向流路を通って、前記ハウジングの前記流路内に、かつ前記シールと前記流路に対する前記軸方向開口部との間で軸方向に、及び前記軸方向開口部を通って周囲に流れる、請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記径方向流路は、前記ピストン棒の縦軸に平行な面であって、かつ前記径方向流路の縦軸に直交する平面を通して見られる円形断面を有する、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記径方向流路の直径は0.25mm~3mmである、請求項7に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項9】
少なくとも1つの前記径方向流路は第1の径方向流路及び第2の径方向流路を含む、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項10】
前記第1の径方向流路及び前記第2の径方向流路は相対している、請求項9に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項11】
前記ピストン棒の前記遠位端面に結合されるハンマーをさらに備える、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項12】
前記ハンマーは前記ピストン棒の前記遠位端面に螺合される、請求項11に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項13】
前記ピストン棒の前記空洞は前記ピストン棒の長さに沿って延在し、前記ハンマーは、前記ピストン棒の前記空洞の前記遠位端を封止して、前記空洞の前記遠位端及び前記ハンマーから流体が流れないようにする、請求項12に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項14】
前記ハンマーは前記ピストン棒の前記遠位端面と一体成形される、請求項11に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項15】
前記空洞は、前記ピストン棒の前記近位端から、前記ピストン棒の縦軸に対して横方向に延在する平面まで延在し、前記平面は、前記ピストン棒の前記遠位端面と前記ピストン棒の前記径方向流路との間で間隔が空けられている、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項16】
前記ピストンは、前記ピストン
棒の前記近位端
によって画定される前記開口部と、前記空洞の前記内壁との間に延在する斜角面
をさらに画定する、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項17】
前記斜角面、及び前記ピストンの前記近位端面は、互いに対して30度~60度の角度にある、請求項
16に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項18】
前記空洞の遠位端は円錐状である、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項19】
前記空洞の遠位端は平坦である、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2016年9月12日出願の「Vented Linear Actuator」という名称の米国特許仮出願第62/393,397号、及び2016年9月1日出願の「Vented Linear Actuator」という名称の米国特許仮出願第62/382,685号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
パイロ式リニアアクチュエータは、車両との衝突時に歩行者を保護するように車両上の表面または車両の一部分を移動させるために使用される場合がある。例えば、リニアアクチュエータは、歩行者衝突時にある特定の時間枠内で規定されたストローク(距離)まで車両のフードを押し上げるためにフードの一部分より下に配設されてもよい。車両製造業者は、規定のストローク及び時間枠のみならず、(例えば、2秒以内でまたは200ニュートン未満を使用して)リニアアクチュエータによって移動させた車両の一部を事前に配設された位置まで戻すための減圧の時間枠及び/または最大力目標値に関する仕様を設定してもよい。配設後のアクチュエータによるガス圧力の保持を実現するための減圧の時間枠及び/または力目標値は、困難であり、言い換えれば不可能である可能性がある。
【0003】
よって、当技術分野では、車両製造業者の仕様に調整できる改善されたアクチュエータが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
さまざまな実施態様は、ピストン棒に結合されるピストン、及びハウジングを含むリニアアクチュエータを含む。ピストンは、近位端面及び遠位端面を含み、ピストン棒は、遠位端面、近位端、及び、遠位端面と近位端との間に延在する外周面を含む。ピストン棒の近位端は、ピストンの遠位端面に結合される。ピストンの近位端面は開口部を画定し、ピストン棒は内壁を有する空洞を画定する。開口部及び空洞は、互いに流体連通している。空洞は、ピストン棒の近位端からピストン棒の少なくとも一部分を通して軸方向に延在する。ハウジングは、近位端、遠位端、及びハウジングの近位端と遠位端との間に延在する流路を有する。流路は、ハウジングの内壁によって画定され、ハウジングの遠位端は流路に対する軸方向開口部を画定する。ピストン及びピストン棒は、ハウジングの流路内に摺動可能に配設され、ピストン棒の外周面、及びハウジングの流路の内壁は、これらの間に空間を画定する。ピストン棒は、空洞の内壁とピストン棒の外周面との間に径方向に延在する少なくとも1つの径方向流路をさらに画定する。径方向流路は、流路を通してピストン棒の上方ストロークの少なくとも一部分の間、ピストン棒の空洞、ピストンの開口部、ハウジングの流路、及び、ハウジングの流路に対する軸方向開口部と流体連通している。
【0005】
いくつかの実施態様では、ピストンは、ピストンの外周面の周りに配設されるシールをさらに備える。このシールはピストンの近位端面と遠位端面との間に延在する。シールは、ピストンの近位端面と遠位端面との間に軸方向に配設される。シールは、流体がハウジングの流路からシールを通り過ぎて流れないようにする、ハウジングの内壁に当接する外周面を有する。いくつかの実施態様では、シールは、ハウジングの内壁とピストンの外周面との間で圧縮可能な弾性変形可能材料を含む。
【0006】
いくつかの実施態様では、ピストンの外周面は円周溝を画定し、シールは円周溝内に配設される。
【0007】
いくつかの実施態様では、ピストンの外周面は第1の外径を有し、ピストン棒の外周面は第2の外径を有する。第1の外径は第2の外径より大きい。
【0008】
いくつかの実施態様では、リニアアクチュエータは放出口を有するガス発生器をさらに含む。放出口はハウジングの近位端に結合され、ガス発生器からの加圧ガスは、放出口を通って、ハウジングの近位端、ピストンの開口部、及びピストン棒の空洞内に、ピストン棒の径方向流路を通って、ハウジングの流路内に、かつシールと流路に対する軸方向開口部との間で軸方向に、及び軸方向開口部を通って周囲に流れる。
【0009】
いくつかの実施態様では、径方向流路は、ピストン棒の縦軸に平行であり、かつ径方向流路の縦軸に直交する平面を通して見られる円形断面を有する。いくつかの実施態様では、径方向流路の直径は0.25mm~3mmである。
【0010】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの径方向流路は第1の径方向流路及び第2の径方向流路を含む。いくつかの実施態様では、第1の径方向流路及び第2の径方向流路は相対している。
【0011】
いくつかの実施態様では、ピストン棒の遠位端面にハンマーが結合される。
【0012】
いくつかの実施態様では、ハンマーは、ピストン棒の遠位端面に螺合される。他の実施態様では、ハンマーはピストン棒の遠位端面と一体成形される。
【0013】
いくつかの実施態様では、ピストン棒の空洞はピストン棒の長さに沿って延在し、ハンマーは、ピストン棒の空洞の遠位端を封止して、空洞の遠位端及びハンマーから流体が流れないようにする。
【0014】
いくつかの実施態様では、空洞は、ピストン棒の近位端から、ピストン棒の縦軸に対して横方向に延在する平面まで延在する。平面は、ピストン棒の遠位端面とピストン棒の径方向流路との間で間隔が空けられている。
【0015】
いくつかの実施態様では、径方向流路は、ピストン棒の上方ストロークの初期部分の間、ピストン棒の空洞、ハウジングの流路、及びハウジングの流路に対する軸方向開口部と流体連通している。径方向流路は、上方ストロークの後続部分の間、ピストン棒の空洞、及びハウジングの外部の環境と直接流体連通している。
【0016】
いくつかの実施態様では、ピストンはピストンの近位端面によって画定される開口部から延在する斜角面をさらに画定する。いくつかの実施態様では、斜角面、及びピストンの近位端面は、互いに対して30度~60度の角度にある。
【0017】
いくつかの実施態様では、空洞の遠位端は円錐状であり、他の実施態様では、空洞の遠位端は平坦である。
【0018】
デバイスについて、以下の例示の図面においてさらにより詳細に説明する。図面は、好ましいデバイスの構造、及び単独でまたは他の特徴と組み合わせて使用されてもよいある特定の特徴を示すための例示に過ぎない。本発明は示される実施態様に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】1つの実施態様によるリニアアクチュエータの断面図である。
【
図2】
図1に示されるリニアアクチュエータの一部分の詳細図である。
【
図3】別の実施態様によるピストン及びピストン棒の部分断面図である。
【
図4】別の実施態様によるピストン及びピストン棒の断面図である。
【
図5】1つの実施態様に従って、0.5mmの直径の径方向流路を有するベント付きアクチュエータ、1mmの直径の径方向流路を有するベント付きアクチュエータ、及びベントなしアクチュエータについての、リニアアクチュエータにおける経時的な圧力を示すグラフである。
【
図6】1つの実施態様に従って、0.5mmの直径の径方向流路を有するベント付きアクチュエータ、1mmの直径の径方向流路を有するベント付きアクチュエータ、及びベントなしアクチュエータについての、リニアアクチュエータにおける経時的な圧力を示すグラフである。
【
図7】1つの実施態様に従って、ベント付きアクチュエータ及びベントなしアクチュエータについての、ピストンの圧縮荷重対変位を示すグラフである。
【
図8】1つの実施態様に従って、ベント付きアクチュエータ及びベントなしアクチュエータについての、ピストンの圧縮荷重対変位を示すグラフである。
【
図9】1つの実施態様による、延在位置におけるピストン及びピストン棒を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
さまざまな実施態様は、アクチュエータの制御可能な減圧をもたらし、かつ車両製造業者によって設定される仕様に調整可能であるリニアアクチュエータを含む。例えば、アクチュエータは、いくつかの実施態様に従って、製造業者によって設定される、指定された時間枠内でかつ最大力で、この初期位置または格納位置に戻すことができる。(上方ストロークの最上部における)配設後のアクチュエータの剛性は、いくつかの実施態様に従って、アクチュエータによって移動させた車両の一部分(例えば、フード)との衝突時の歩行者に対する傷害を回避するために減少させることができる。そして、さまざまな実施態様では、減圧の割合は調整可能である。
【0021】
図1及び
図2は、1つの実施態様による例示のリニアアクチュエータを示す。
図1に示されるように、リニアアクチュエータ100は、ピストン棒101に結合されるピストン118、及びハウジング102を含む。ピストン118は、遠位端面119、近位端面104、及び遠位端面119と近位端面104との間に延在する外周面105aを含む。ピストン棒101は、遠位端面103、近位端150、及び遠位端面103と近位端150との間に延在する外周面105bを含む。ピストン118は、ピストン118の近位端面104と遠位端面119との間に延在する開口部106を画定し、ピストン棒101の内壁108は空洞107を画定する。空洞107は、ピストン棒101の近位端150から軸方向に延在し、かつピストン118によって画定される開口部106と流体連通している。
【0022】
ハウジング102は、近位端109、遠位端110、及び内壁111を有する。ハウジング102の内壁111は、近位端109と遠位端110との間に延在する流路112を画定する。ハウジング102の遠位端110は、流路112の軸方向開口部113を画定する。ピストン118及びピストン棒101は、ハウジング102の流路112内に摺動可能に配設され、ピストン棒101の外周面105b及びハウジング102の流路の内壁111は、これらの間に空間を画定する。
【0023】
ピストン棒101は、ピストン棒101の空洞107の内壁108とピストン棒101の外周面105bとの間に径方向に延在する少なくとも1つの径方向流路114も画定する。径方向流路114は、ピストン棒101の空洞107、ピストン118によって画定される開口部106、ハウジング102の流路112、及び、ハウジング102の流路112に対する軸方向開口部113と流体連通している。
【0024】
図1及び
図2に示される実施態様では、径方向流路114は、ピストン棒101の縦軸A-Aに平行であり、かつ径方向流路114の縦軸B-Bに直交する平面を通して見られる円形断面を有する。さらに、径方向流路114の直径D5は0.25mm~3mmである。しかしながら、他の実施態様では、径方向流路は非円形断面を有する場合がある。
【0025】
さらに、ピストン棒101の空洞107は、ピストン棒101の近位端150から、ピストン棒101の縦軸A-Aに対して横方向に(例えば、直交して)延在する平面まで延在し、かつ、ピストン棒101の遠位端面103とピストン棒101の径方向流路114との間で間隔が空けられている。
【0026】
ピストン118は、ピストン118の外周面105aの周りに配設されるシール115を含む。シール115は、ピストン118の近位端面104と、遠位端面119との間に軸方向に配設される。シール115は、流体が、ハウジング102の流路112からシール115を通り過ぎて流れないようにする、ハウジング102の内壁111に当接する外周面116を有する。いくつかの実施態様では、シール115は、ピストン118と、ハウジング102の内壁111との間で圧縮可能な、ゴムまたはポリマー材料などの弾性変形可能材料である。例えば、シール115は圧縮可能なOリングまたは角リングであってもよい。
【0027】
図1~
図2に示される実施態様では、ピストン118の外周面105aは第1の外径D1を有し、ピストン棒101の外周面105bは第2の外径D2を有する。第1の外径D1は第2の外径D2より大きい。そして、ハウジング102における軸方向開口部113は、第2の外径D2より大きいが第1の外径D1より小さい内径D3を有する(すなわち、D1>D3>D2)。軸方向開口部113の内径D3より小さい第2の直径D2を有することによって、ピストン棒101は、ピストン118及びピストン棒101の上方ストローク中に軸方向開口部113を通過することが可能とされる。しかしながら、軸方向開口部113の内径D3より大きいピストン118の第1の直径D1を有することによって、ピストン118は上方ストロークの終わりにハウジング102から出ないようにされる。
【0028】
ピストン118の外周面105aは外周面105aから径方向内方に延在する円周溝117を画定し、シール115は円周溝117内に配設される。溝117は、ハウジング102を通してピストン118の軸方向移動中にシール115がピストン118に沿って軸方向に移動しないようにする。
【0029】
さらに、
図1~
図4に示される実施態様では、ピストン118及びピストン棒101は一体成形される。しかしながら、他の実施態様では、ピストン118及びピストン棒101は別個に形成されかつ相互に結合されてもよい。
【0030】
ピストン棒101のハンマー面は、
図1に示される遠位端面103と一体成形されかつ同一の広がりを持つ。しかしながら、他の実施態様では、ハンマー面は、遠位端面103に隣接する外周面105bに対して径方向外方に延在してもよい。
図4に関して後述される実施態様といった他の実施態様では、ハンマー面は、ピストン棒と別個に形成されかつこのピストン棒に結合されてもよい。
【0031】
ガス発生器120(例えば、イニシエータまたは超小型ガス発生器(MGG))は、ハウジング102の近位端109に結合される放出口121を有する。ガス発生器が始動される時、加圧ガスは、ガス発生器120の放出口121から、ハウジング102の遠位端109、ピストン118の開口部106、及びピストン棒101の空洞107内に流れる。加圧ガスによって、ピストン118及びピストン棒101は、初期位置または格納位置から配設位置まで移動する。
図1は、ピストン118の近位端面104がハウジング102の近位端109に隣接する、格納位置または初期位置における、ピストン118及びピストン棒101を示す。ガス発生器の始動後、ピストン118の近位端面104は、ハウジング102の近位端109から離れてハウジング102の遠位端110の方へ軸方向に移動する。加圧ガスは、空洞107、及びシール115と、ピストン118の近位端面104との間の流路112の一部分においてより高い圧容量を生じさせ、シール115と、ハウジング102の軸方向開口部113との間の流路112の一部分にはより低い圧容量が存在する。
【0032】
ピストン118及びピストン棒101の上方ストロークの初期部の間、ガス発生器120からの加圧ガスの一部分は、ピストン棒101の空洞107から、ピストン棒101の径方向流路114を通ってハウジング102の流路112内に、シール115と流路112に対する軸方向開口部113との間で軸方向に、及び、軸方向開口部113を通って周囲に流れる。そして、
図9に示されるように、径方向流路114が開口部113を通り過ぎて軸方向に移動後、加圧ガスは、空洞107から径方向流路114を通って周囲に直接流れる。空洞107及び径方向流路114を通って周囲への加圧ガスの通気によって、十分な量のガスを、ガス発生器の始動後にピストン棒のより高い圧力側に逃がすことが可能になることで、ピストン118及びピストン棒101は、例えば、200ニュートン未満の力を使用して配設後にこの初期位置に戻すことができる。しかしながら、逃がすことが可能とされるガスの量は、径方向流路114の容量、空洞107の容量、及び/またはピストン118の近位端面104からの径方向流路114の中心までの距離を調節することによって調整可能である。よって、これらの寸法は、ピストン118及びピストン棒101を、製造業者によって設定される、ある特定の時間枠内で及び/または最大量を下回る力で配設後の初期位置に戻るように移動させることを可能にするために十分なガスを逃がすことを可能にしながらも、ピストン棒101が配設位置に達することが可能になるように上方ストローク中に十分な圧力を維持するように選択されてもよい。
【0033】
ハウジング102の流路112の内径D4と、ピストン棒101の外径D2との間の差異は、ピストン棒101とハウジング102の内壁111との間の容量をそれぞれ、拡大または低減するように増大または減少する場合がある。さらに、近位端面104から空洞107の遠位端135まで測定される、開口部106及び空洞107の内径D6及び/または長さは、空洞107及び開口部106内の容量を変化させるように変動させてもよい。
【0034】
図3に示されるピストン218の実施態様は、
図1及び
図2に示されるピストン118と同様であるが、開口部206は、ピストン218の近位端面204から延在する斜角面235によって部分的に画定され、空洞207の遠位端236に隣接する空洞207の遠位端部230は円錐状である。近位端面204に対する斜角面235の角度θは30度~60度(例えば、45度)である。そして、示される実施態様では、近位端面204と、開口部206の斜角面235が終端するところとの間の距離L2は0.25mmである。空洞207の直径D6は5mmであり、近位端面204と空洞207の遠位端236との間の距離L1は22mmである。
【0035】
図4に示される実施態様では、ピストン棒301は、第1の径方向流路314a及び第2の径方向流路314bを含む。第1の径方向流路314a及び第2の径方向流路314bは互いに相対している。しかしながら、他の実施態様では、ピストン棒は1つまたは複数の径方向流路を含んでもよく、径方向流路は、同じまたは異なる断面形状、直径、ピストン棒の縦軸に対するそれぞれの径方向流路の縦軸の向き、及びピストン棒に沿った軸位置を有する場合がある。
【0036】
図4に示される実施態様はまた、ピストン棒301、及びピストン棒301とは別に形成されるハンマー330を含む。ハンマー330は、ピストン棒301の遠位端303に螺合される。また、この実施態様では、ピストン棒301の空洞307はピストン棒301及びピストン318の全長に沿って(すなわち、ピストン318の近位端304とピストン棒301の遠位端303との間に)延在し、ハンマー330は、ピストン棒301の空洞307の遠位端303を封止して、空洞307の遠位端303及びハンマー330から流体が流れないようにする。しかしながら、他の実施態様では、空洞は、
図1~
図3に示される実施態様に示されるように、ピストン棒のみを部分的に通って延在する場合がある。
【0037】
図5及び
図6は、1つの実施態様に従って、0.5mmの直径の径方向流路を有するピストン棒、1mmの直径の径方向流路を有するピストン棒、及びベントなしピストン棒を有するリニアアクチュエータに対する、リニアアクチュエータのハウジングにおける経時的な圧力の比較を示すグラフを示す。示されるように、1mmの直径の径方向流路を有するピストン棒を有するリニアアクチュエータは、他のピストン棒によって達した最大圧力よりわずかに少ない、配設状態での最大圧力に達し、減圧までの時間はおよそ300msであった。0.5mmの直径の径方向流路を有するピストン棒を有するリニアアクチュエータは、およそ1000ms減圧された。そして、径方向流路のないピストン棒を有するリニアアクチュエータは、ガスをハウジングに逃がすことができないまたは逃がすことができたのはわずかであったため、不定の時間でこの圧力を保つ。よって、径方向流路の直径(または容量)は、アクチュエータを再設定するための減圧時間及び/または最大力目標値を実現するために配設中及び配設後に周囲に通気される加圧ガス量を制御するように調節されてもよい。
【0038】
図7及び
図8は、1つの実施態様に従って、径方向流路を有するピストン棒及び径方向流路を有さないピストン棒についての、ピストンの圧縮荷重対変位を示すグラフを示す。上の線は径方向流路のないピストンの変位を表し、下の線は径方向流路を有するピストンの変位を表す。
図7に示されるように、(ピストン棒をこの元の位置に戻すことによって)フードを再設定するための初期力について、径方向流路のないピストン棒と比較して径方向流路を有するピストン棒は低くなる。そして、
図8に示されるように、径方向流路を有するピストン棒は、同じ荷重下で変位する距離が大きくなる可能性がある。しかしながら、径方向流路のないピストン棒を有するフードを再設定する力は、ガスを逃がす場所がないため、ピストン棒が残留ガスの圧縮により内方に押されるため、増大し続ける。
【0039】
本明細書では、専門用語は特定の実施態様を説明する目的で使用されているだけであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、別段文脈で明確に指示されない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、本明細書で「備える(comprises)」及び/または「備える(comprising)」という用語が使用される時、述べられる特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または部品の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、部品、及び/またはこのグループの存在または追加を除外するものではないことは、理解される。
【0040】
以下の特許請求の範囲におけるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの要素全ての、対応する構造、材料、作用、及び等価物は、具体的に請求された他の請求要素と組み合わせてその機能を遂行するための、全ての構造、材料または作用を含むことが意図されている。本発明の説明は、例証及び説明の目的で提示されたものであり、網羅的であることも、本発明を開示した形態に限定することも意図されていない。多くの修正及び変形は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなる。本発明の原理及び実際の応用を最も良く説明し、かつ企図される特定の使用に適するようにさまざまな修正を伴うさまざまな実施態様について本発明を他の当業者が理解できるようにするために、実施態様は選定されかつ説明された。