(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】血管内超音波撮像
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61B8/12
(21)【出願番号】P 2019536531
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018053373
(87)【国際公開番号】W WO2018158064
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】フローンラント アルフォンス ウーテル
(72)【発明者】
【氏名】ファッジ アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ペレーズ シーザー
(72)【発明者】
【氏名】コーエン アッシャー
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508557(JP,A)
【文献】特表2002-540881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内超音波システムでの使用に適した延長ケーブルであって、前記延長ケーブルが、
血管内超音波カテーテルに電気的及び機械的に接続するための第1のコネクタと、
血管内超音波患者インタフェースモジュールへの電気的及び機械的接続のための第2のコネクタと、
前記第1及び第2のコネクタ間の電力伝送及びデータ伝
送のためのケーブル装置
であって、重畳された電力及びデータ信号を運ぶ複合電気ケーブルを含む、前記ケーブル装置と、
前記重畳された電力及びデータ信号から前記データ信号を抽出するスプリッタと、
前記抽出されたデータ信号を処理する信号プロセッサであって、利得1の電気バッファ又は利得1より大きい電気増幅器を含
む、前記信号プロセッサと、
前記処理されたデータ信号を前記電力信号と再結合するコンバイナと、
を有する、延長ケーブル。
【請求項2】
前記信号プロセッサが、前記ケーブル装置の第1のコネクタ端部に配置される、請求項1に記載の延長ケーブル。
【請求項3】
前記信号プロセッサが、前記ケーブル装置の第1のコネクタ端部に配置された第1の電気増幅器と、前記ケーブル装置の第2のコネクタ端部に配置された第2の電気増幅器とを含む、請求項1に記載の延長ケーブル。
【請求項4】
インピーダンス整合回路を更に有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の延長ケーブル。
【請求項5】
前記第1及び/又は第2のコネクタから前記延長ケーブルに沿って延びる前記信号プロセッサに電力を供給する専用電力線を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の延長ケーブル。
【請求項6】
前記スプリッタから引き出された前記電力信号を前記信号プロセッサに供給するカップリングを有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の延長ケーブル。
【請求項7】
前記信号プロセッサに関する内蔵電源を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の延長ケーブル。
【請求項8】
長さが1mから5mである、請求項1乃至7のいずれかに記載の延長ケーブル。
【請求項9】
血管内超音波システムであって、
先端に超音波プローブを持つカテーテルと、
患者インタフェースモジュールと、
前記カテーテルと前記患者インタフェースモジュールとの間を結合するための、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の延長ケーブルとを有する、血管内超音波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば、生体内の血管内超音波(IVUS)撮像のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内超音波(IVUS)撮像は、治療の必要性を決定し、インターベンションを導き、及び/又はその有効性を評価するため、人体内の動脈といった罹患血管の診断ツールとしてインターベンショナル心臓病学において広く使用される。
【0003】
IVUS撮像検査を実施するため、1つ又は複数の超音波トランスデューサを組み込んだIVUSカテーテルが、血管内に通され、撮像されるべき領域へと案内される。トランスデューサは、関心血管の画像を作成するため超音波エネルギーを放射及び受信する。超音波は、組織構造(血管壁の様々な層など)、赤血球、及び他の関心特徴から生じる不連続性により部分的に反射される。反射波からのエコーは、トランスデューサにより受信され、患者インタフェースモジュール(PIM)を用いてIVUSカテーテルに接続されるIVUS撮像システムに送られる。撮像システムは、受信した超音波信号を処理し、デバイスが配置される血管の断面画像を生成する。
【0004】
今日一般的に使用される2つのタイプのIVUSカテーテルがある:回転式及び固体式である。典型的な回転IVUSカテーテルでは、単一の超音波トランスデューサ要素が、関心血管に挿入されたプラスチックシースの内側を回転する可撓性ドライブシャフトの先端に配置される。トランスデューサ要素は、超音波ビームが概してデバイスの軸に対して垂直に伝搬するよう配向される。流体で満たされたシースは、超音波信号がトランスデューサから組織へ、及びその逆に伝播することを可能にしつつ、回転するトランスデューサ及びドライブシャフトから血管組織を保護する。ドライブシャフトが回転するとき、トランスデューサは、高電圧パルスで周期的に励起されて短いバーストの超音波を放射する。同じトランスデューサは、さまざまな組織構造から反射される戻りエコーを待ち受ける。IVUS撮像システムは、トランスデューサの一回転の間に発生する一連のパルス/取得サイクルから血管断面の2次元表示を組み立てる。
【0005】
対照的に、固体IVUSカテーテルは、一組のトランスデューサ制御回路に接続されたデバイスの周囲に分散配置された超音波トランスデューサのアレイを含む超音波プローブアセンブリを担持する。トランスデューサ制御回路は、超音波パルスを送信し、及びエコー信号を受信するため、個々のトランスデューサを選択する。一連の送信機-受信機ペアをステップスルーすることにより、固体式IVUSシステムは、機械的に走査されたトランスデューサ要素の効果を、可動部品なしで合成することができる。回転する機械的要素がないので、このトランスデューサアレイは、血管の外傷の危険性を最小限に抑えて、血液及び血管組織と直接接触して配置されることができる。更に、回転要素がないので、インタフェースが単純化される。固体式プローブは、単純な電気ケーブル及び標準の取り外し可能な電気コネクタを用いて、撮像システムに直接配線されることができる。
【0006】
超音波トランスデューサとの間の信号のやり取りを容易にするため、複数の導電体又はワイヤがデバイスの長さに沿って延在する。例えば、いくつかの現在の市販製品では、7本のワイヤが、近位コネクタとカテーテルの遠位部分の超音波アセンブリとの間でカテーテルの長さに沿って延在する。
【0007】
血管内超音波処置は、特別な手術室(他のモダリティ(インターベンショナルX線、経皮超音波など)を含むいわゆる「カテラボ」)で行われる。IVUSシステムは、統合型又はカートベースとすることができる。どちらの場合も、カテーテルは、患者インターフェイスモジュール(PIM)に差し込まれる。PIMは通常、サイドベッドレールに取り付けられ、ケーブルでバックエンドシステムに接続される。乱雑を最小限に抑えるため、PIMの位置は、固定され、ケーブルはしばしば、テーブルの下又は中に隠される。電気的絶縁及び信号の電気的バッファリングとは別に、PIMは、PIMにおけるケーブルを誤って引っ張らないように患者を固定するための機械的アンカーである(ケーブルにつまずく人、又はカートの突然の動きなど)。
【0008】
様々な処置において、様々な血管からの血管アクセスが、身体にわたる異なるアクセス位置で必要とされる。しばしば、上肢(大腿骨アクセス)又は下腕(放射状アクセス)が使用される。PIMは、テーブル側に恒久的に取り付けられ、一般的に使用される血管アクセス位置にできるだけ近い非無菌ゾーンの境界に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
処置のため、滅菌IVUSカテーテルが、カテーテルアセンブリの一部である1.5mケーブルでPIMに差し込まれる。そうすることにより、カテーテルのコネクタは無菌にならない。なぜなら、PIMが、無菌領域の境界又はその外側にあるからである。これは、手術中に他の器具のための場所を空けるためにカテーテルを一時的に切断して滅菌領域に保管することを禁止し、これは医師にとって頻繁に必要とされることである。
【0010】
ほとんどの手順で、PIMの位置は理想的ではない。それは、無菌領域の最端部に配置される。これは、好ましい血管アクセス位置と制限されたカテーテルケーブル長との組み合わせから生じる。PIMを無菌状態に保つため、それは無菌ドレープで覆われる必要がある。このドレープは、容易に動くか又はインターベンション中に動かされなければならない。テーブルのこの領域(通常は患者の体の半分上)には、手術中に多くの器具が密集している。PIMの理想的な位置はベッドの踏み板になる。ここでは、利用可能なスペースがかなり多く、無菌ゾーンの端がはるかに離れている(例えば、少なくとも50cm)。これは、ドレープを位置の動きに対してはるかに堅牢にする。この領域には他の器具が存在しないので、偶然のドレープ移動のみが起こり得る。
【0011】
いくつかの場合では、様々な処置、及び特に肥満患者に関する患者の寸法のため、1.5mのカテーテルケーブル長は、ベッドの半分上の位置からでさえも、好ましい血管アクセス位置に到達するには不十分である。実際には、医師はその後、PIMをサイドベッドレールから切り離し、患者の上に置く。それは現在は無菌地帯にあるので、彼らはそれを滅菌シールドに詰め込む。これは、PIMとバックエンドとの間のケーブルにも必要である。このケーブルを梱包するのはぎこちない仕事で、滅菌性を損なうことなく5mのケーブルをケーブル形状の滅菌ポーチにはめ込むのに、滅菌済み及び滅菌済みでない看護師を必要とする。これは、ワークフローに深刻な影響を与え、可能であれば回避する必要がある仕事である。
【0012】
更に、PIMをベッドレールから取り外すことにより、機械的固定機能がなくなり、これにより患者の安全性が危険にさらされる。
【0013】
これらの問題に対処するIVUSシステムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特許請求の範囲により規定される。
【0015】
本発明の一態様による実施例によれば、血管内超音波システムでの使用に適した延長ケーブルが提供される。これは、
血管内超音波カテーテルに電気的及び機械的に接続するための第1のコネクタと、
血管内超音波患者インタフェースモジュールへの電気的及び機械的接続のための第2のコネクタと、
上記第1及び第2のコネクタ間の電力伝送及びデータ伝送並びに信号プロセッサのためのケーブル装置とを有する。
【0016】
この延長ケーブルは、超音波カテーテルと患者インタフェースモジュールとの間で使用するのに適している。それは、機械的固定を提供しながら、無菌性がワークフローにおいて時間効率的かつ容易な方法で維持されることを可能にする。特に、カテーテルは無菌領域内に留まることができ、延長ケーブルは代わりに無菌境界を横切る。従って、カテーテルは、無菌性を損なうことなく延長ケーブルから切り離され、及び再接続されることができる。カテーテルは例えば、無菌領域内で切り離されてもよく、これは、カテーテルを異なる場所に一時的に保管することを可能にする。
【0017】
延長ケーブルはまた、PIMとバックエンドとの間のケーブルのより自由な設計を可能にする。特に、延長ケーブルは、患者とPIMとの間の最大長が増加されることを可能にする。例えば、デジタル出力、高速デジタル接続、及び1つの電気ケーブルでの電源機能を備えたPIMは、実際には3mに制限されることがあるが、モバイルIVUSシステムでは最大5mのケーブル長が好ましい場合がある。カテーテルとPIMとの間のより長いケーブル長を可能にすることにより、PIMはモバイルIVUSバックエンドシステム(信号処理が行われる場所)のより近くに配置されることができる。これは、特にPIMバックエンド(バックエンド側)ケーブルではなく患者-PIM(カテーテル側)ケーブルを長くすることにより、より短いPIMバックエンド相互接続ケーブルの使用を可能にする。
【0018】
上記信号プロセッサが、利得1の電気バッファ又は利得1より大きい電気増幅器を含むことができ、上記ケーブル装置は、電力伝送及びデータ伝送の両方のための電気ケーブルを含む。これは全電気的解決策を提供し、ケーブル装置は、カテーテルと患者インタフェースモジュールとの間で電気信号を中継する。
【0019】
信号プロセッサは例えば、電気ケーブルの第1のコネクタ端部に配置される。従って、それは、カテーテル信号が受信されるとすぐにカテーテル信号の信号増幅又はバッファリングを提供する。
【0020】
上記信号プロセッサが、上記電気ケーブルの第1のコネクタ端部に配置された第1の電気増幅器と、上記電気ケーブルの第2のコネクタ端部に配置された第2の電気増幅器とを含むことができる。これは、信号増幅を更に改善し、インピーダンス整合を提供するためにも使用され得る。インピーダンス整合回路が提供されることもできる。
【0021】
ケーブル装置は一般に、少なくとも電力信号及びデータ信号を搬送することができ、信号プロセッサは、データ信号を処理するよう構成される。
【0022】
一般に、データ信号だけが増幅(又はバッファリング)を必要とし、電源信号は必要としない。従って、この実施形態は、信号処理(即ち、バッファリング又は増幅)リソースが増幅を必要とする信号のみに効率的に向けられ、そうでないものには向けられないという利点を提供する。これは、ケーブルにおける信号処理の効率を改善する。
【0023】
1つの電気的構成では、上記ケーブル装置が、電力伝送ケーブルと電気データ伝送ケーブルとを並列に形成する1組の平行電線を含み、上記信号プロセッサは、上記データ伝送ケーブルの電線に沿って提供される、電力伝送ケーブルは、電力信号を搬送することができ、電気データ伝送ケーブルは、データ信号を搬送することができる。
【0024】
従って、データ、電力、制御、及び接地などの複数の電線があり得、信号処理(バッファリング又は増幅)がデータ線に関して提供される。これは、とりわけ、上述のように、信号処理の効率を向上させる。
【0025】
別の電気的構成では、上記ケーブル装置が、重畳された電力及びデータ信号を運ぶ複合電気ケーブルを含み、上記延長ケーブルは、上記データ信号を抽出するスプリッタと、上記データ信号を上記電力信号と再結合するコンバイナとを更に有し、上記信号プロセッサが、上記抽出されたデータ信号に対して設けられる。
【0026】
これは、ケーブル装置に必要な電線の数を減らす。信号処理(即ち、バッファリング又は増幅)がデータ信号に適用される。従って、この構成は有利なことに、ケーブル装置に必要なライン数を減らし、コスト及び嵩を減らすと同時に、信号処理リソース(即ち増幅又はバッファリング)が本当に増幅を必要とする信号の処理(即ちデータ信号)にのみ向けられることを確実にする。
【0027】
ケーブル装置は、ハイブリッド電気配置及び光学配置であり得る。例えば、上記ケーブル装置が、上記データ伝送のための光ファイバと上記電力伝送のための電気ケーブルとを含み、上記信号プロセッサは、電気-光変換器を含む。信号プロセッサは、電気増幅によるよりもむしろ電気-光変換の一部として信号整形及び品質改善を提供する。
【0028】
ファイバの出力における光信号は、それが必要な光-電気変換を含む場合、PIMに直接提供されてもよい。代替的に、上記信号プロセッサが、光-電気変換器を更に有し、上記電気-光変換器及び上記光-電気変換器は、光ファイバの両端にある。延長ケーブルは、カテーテルから受信される電気入力と同等の電気出力を提供する。
【0029】
ケーブル装置は、代わりに本質的に光学的配列であり得る。ケーブル装置は例えば、光ファイバを含み得、上記信号プロセッサは、データ信号を電力信号と組み合わせるコンバイナと、上記電力伝送及び上記データ伝送のため、上記結合された信号を上記光ファイバに提供する電気-光変換器と、光-電気変換器と、上記データ信号及び上記電力信号を抽出するスプリッタとを含む。こうして、延長ケーブルは更に光電力伝達を提供する。
【0030】
この延長ケーブルは、上記第1及び/又は第2のコネクタから延長ケーブルに沿って延びる上記信号プロセッサに電力を供給する専用電力線を含むことができる。カテーテルとPIMとの間の電力供給は中断されず、延長ケーブルは単に電力線コネクタとして機能することができる。
【0031】
代替的に、ケーブル装置の電力伝送線に結合部が提供されることができる。こうして、信号プロセッサに電力を供給するため、既存の電力線から電力が取り出される。
【0032】
他の構成では、埋込み電源が信号プロセッサに提供される。
【0033】
延長ケーブルの長さは1mから5mとすることができる。これは、無菌領域内で延長ケーブルとカテーテルとの間の接続を維持しながら、PIMの位置決めに柔軟性を提供するのに十分である。
【0034】
本発明はまた、血管内超音波システムを提供し、これは、
先端に超音波プローブを持つカテーテルと、
患者インタフェースモジュールと、
カテーテルと患者インタフェースモジュールとの間を結合する上記延長ケーブルとを有する。
【0035】
その後、患者インタフェースモジュールは、別のケーブルを介してバックエンドシステム(コンソール)に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】患者の上肢に入る超音波カテーテルの典型的な構成を示す図である。
【
図1B】カテーテル長が短いということが、医師が患者にPIMを配置することがあることを意味していることを示す図である。
【
図1C】本発明の延長ケーブルにより可能にされる構成を示す図である。
【
図2】超音波カテーテルとPIMとの間のアクティブ延長ケーブルの一般的なアーキテクチャを示す図である。
【
図3】2つの増幅器を備えたシステムを示す図である。
【
図4A】PIMからの専用電力線により電力が供給される増幅器を示す図である。
【
図4B】既存の電力線を使用して後方互換性がある第1の代替案を示す図である。
【
図4C】内蔵電源を使用して後方互換性がある第2の代替案を示す図である。
【
図5】カテーテルにより出力され、従って延長ケーブルにより延長される必要がある電気信号の例を示す図である。
【
図6】データと電力伝送とが重畳され、カテーテルにより出力される電気信号の一例を示す図である。
【
図7】電力線がデータを搬送するための光ファイバと共に提供されるハイブリッド設計を示す図である。
【
図8】光ファイバ信号がPIMに直接提供される他の変形例を示す図である。
【
図9】本質的に全光学的である他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の例が、添付の図面を参照して以下詳述される。
【0038】
本発明は、血管内超音波システムでの使用に適した延長ケーブルを提供する。それは、カテーテルに接続するための第1のコネクタと、患者インタフェースモジュールに接続するための第2のコネクタとを有する。ケーブル装置は、第1のコネクタと第2のコネクタとの間の電力伝送、データ伝送、及びデータ信号処理(増幅又は再生)を提供する。延長ケーブルは、無菌性がワークフローにおいて時間効率的かつ容易な方法で維持されることを可能にする。なぜなら、カテーテルと延長ケーブルとの接続が、無菌環境に留まることができるからである。
【0039】
図1Aは、患者12の上肢に入る超音波カテーテル10の典型的な構成を示す。カテーテルはその先端に超音波プローブ11を有する。カテーテル10は、患者ベッド16のサイドレールに取り付けられた患者インタフェースモジュール(PIM)14に接続される。PIMは、電気ケーブル20によりバックエンドプロセッサ18に接続される。線22は、無菌環境と非無菌環境との間の境界を表す。
【0040】
図1Bは、短いカテーテル長(典型的には1.5m)が、医師が患者の上にPIM14を配置してそれをカテーテル進入点に近づけることができることを意味することを示す。PIMが非無菌環境から移動されるとき、それは無菌ポーチ24に入れられなければならない。
【0041】
図1Cは、本発明の延長ケーブルにより可能にされる構成を示す。延長ケーブル30は、信号処理を含むという点でアクティブである。それは、カテーテル10とPIM14との間に配置される。そうすることにより、PIMは、ベッドのフットボードにおいて、すべての処置について同じ位置に配置され、及び滅菌野の縁22からより実質的に離れたところに配置されることができる。
【0042】
延長ケーブル30内の能動的信号処理は、IVUSカテーテルが信号の完全性を維持することを可能にする。延長ケーブル30は、カテーテルと同様にそれ自体滅菌されるので、その周囲に滅菌パウチを置く必要はない。それは、(カテーテルのように)使い捨てであり得るか、又は滅菌され得るケーブルであり得る。
【0043】
更に、カテーテル10と延長ケーブル30との間の接続は、無菌領域内に位置しているので、無菌性を損なうことなく一時的にカテーテルを抜いてそれを他の場所に保管することが可能である。
【0044】
延長ケーブルの典型的な長さは3mであるが、それはもっと長くても短くてもよく、例えば1mから5mの範囲である。
【0045】
図2は、超音波カテーテル10とPIM14との間の能動延長ケーブル30の一般的なアーキテクチャを示す。
【0046】
それは、(カテーテルからの、及びカテーテルに向かう)関心信号を転送することができるケーブル装置32、延長ケーブルから生じる信号品質損失を補償する信号プロセッサ34、及びコネクタからなる。第1のコネクタ36は、カテーテル10に接続するためのものであり、第2のコネクタ37は、PIM14に接続するためのものである。コネクタは、既存のPIM及びカテーテルコネクタに対応することができ、その結果、コネクタ36はPIMの接続ポートと同じであり、コネクタ37はカテーテルの接続ポートと同じである。従って、2つのコネクタは、性別が反対であるので、一方のコネクタはオス(コネクタと見なすことができる)であり、他方のコネクタはメス(レセプタと見なすことができる)である。更なる追加なしに延長ケーブルがカテーテルとPIMとの間に挿入されることができる限り、性別の任意の組み合わせが使用されることができる。
【0047】
以下に説明されるように、延長ケーブルは完全に電気的なものでもよく、又は光信号伝送媒体、即ち光ファイバを含んでもよい。最初に電気的実現が説明される。
【0048】
電気的実現のための信号プロセッサは増幅器を含む。増幅器は、信号再生バッファとしてのみ機能するよう、利得1を持つことができ、又はより高い増幅を持つことができる。「増幅器」という用語はそれに応じて理解されるべきである。利得を追加するか又は信号再生を提供することに加えて、信号プロセッサは、インピーダンスを所望のレベルに整合させるため、インピーダンス変換ユニットとしても使用され得る。一般に、無線周波数ベースのシステムにおけるケーブル配線は、最適な信号伝送のために特定のインピーダンス(通常50又は75オーム)を持つように設計される。
【0049】
増幅器又はバッファは、延長ケーブルにより導入される追加のケーブル長を考慮するためにこのインピーダンス整合を実現し、それはこの目的のためのインピーダンス整合回路を有する。増幅器は、追加のケーブル長にわたって信号の完全性を確保する。
【0050】
血管内超音波用途では、PIM側のコネクタ37は、安全な動作のために湿気に対してレベル4より大きい進入保護(IP)を有する必要がある。処置中に患者の上に位置するカテーテル側のコネクタ36については、より高いIP等級、例えば液中への浸漬を可能にするためにレベル7以上が必要とされるかもしれない。
【0051】
増幅器34は、ケーブルのどこにでも配置されることができる。しかしながら、例えばコネクタ36の一部としてそれをカテーテルの最も近くに配置することは、信号品質に対する延長ケーブルの影響を最小にすることを可能にするであろう。
【0052】
カテーテルのトランスデューサ要素により提供される電気信号は、典型的には10~30MHz(プラス高調波)の範囲の周波数成分を有する。既存のカテーテルに使用される微小同軸ケーブル及びコネクタの結果として、現在の1.5mカテーテルケーブルは、寄生電気要素の結果としてその長さ限界にある。パッシブ延長ケーブルは、帯域幅を許容限度以下に下げる。
【0053】
図3は、信号品質及びインピーダンス整合を更に改善するため、第2の増幅器34'が第2のコネクタ端部に設けられることができることを示す。第1のコネクタ端部における信号のバッファリング又は増幅を伴う以下に記載されるすべての例は、第2のコネクタ端部における更なる信号のバッファリング又は増幅を用いて拡張され得る。
【0054】
増幅器は、動作するために電力を必要とするアクティブブロックである。
【0055】
図4は、増幅器(及びその他の信号処理機能)に電力を供給するための可能な方法を示す。
【0056】
図4Aは、PIM14からの専用電力線38により電力供給される増幅器34を示す。この専用の追加電力線は、現在のPIMの機能ではないため、新しいPIMで実現される。追加の電力線38は、(元の電力供給がPIMにあるとしても)代わりにカテーテル側から提供されてもよい。しかしながら、延長ケーブルは、カテーテル又は既存のPIMに対する修正を必要としない。
【0057】
図4Bは、後方互換性のある第1の代替案を示す。カテーテルは、それ自体がPIMにより電力を供給される能動デバイスであり、従って延長ケーブルは既にPIMとカテーテルとの間に電力を提供している。例えば、延長ケーブルは電力線40を含み、延長ケーブルは電力線へのカップリング42を有することによりカテーテル電力線40から電力を引き出すことができる。これは、増幅器34の電力消費が小さいこと、及び電源がカテーテルの機能性を犠牲にすることなくこの余分な電力を収容するのに十分な余裕を持つことを確実にすることにより可能である。
【0058】
図4Cは、後方互換性のある第2の代替案を示す。延長ケーブルは、信号増幅器34用の内蔵電源44を有する。内蔵電源44は、延長ケーブルに内蔵されたバッテリ又はスーパーキャパシタを含み得る。この構成は、増幅器により加えられるノイズ及び歪みを最小限に抑えるため、又はカテーテル電源が電力のタッピングを可能にしないときに使用され得る。
【0059】
図4では、単一の信号線が示される。もちろん、単一線又は複数線が存在することができる。
【0060】
以下に説明されるすべての例は、
図4Bに示されるように延長ケーブルの既存の電力線から電力が取り出されることに基づき示される。しかしながら、それらは専用の電力線又は内蔵電源を利用するよう構成されてもよい。
【0061】
延長ケーブルに沿って延びる信号、及びこれによりケーブル自体の中のワイヤは、様々な構成で配置されることができる。信号は、複数のワイヤ間で(並列に)分割されることも、又は単一のワイヤペア上で重ねて配置されることもできる。
【0062】
図5は、カテーテルにより出力され、及び従って平行信号線を用いた全電気実現のために延長ケーブル30により延長される必要がある電気信号の例を示す。
【0063】
信号は、制御線50上で運ばれる制御信号又は制御信号のセットを含む。制御信号は例えば、エラーメッセージ、警告、クロック信号、トリガ信号などを提供する。制御線50は、異なる種類の制御信号に関する単一の線でも複数の線でもよい。
【0064】
高電力レールが電力線52上で搬送され、接地信号が接地線54上で搬送され、一組の並列データ線56がデータ信号を供給する。従って、ケーブルは、制御、トリガ、クロック、電力、データ、及び接地(シールド用)の機能を提供するためのマルチコアケーブルである。信号は、高電力線と低電力線といった並列にある複数の線を通ることができ、データは、シングルエンド又は差動符号化として提供されることができる。データ信号は受信エコー信号である。
【0065】
一般に、データ信号は増幅を必要とするが、制御信号は、ノイズに対する感度がはるかに低いため、必要としない。しかしながら、信号プロセッサにより増幅されるか又は他の方法で処理されるよう、任意の信号が選択されてもよい。
図5では、データ線56のみが信号プロセッサに提供されるが、これは単なる例である。
【0066】
図6は、カテーテルにより出力され、及び従ってデータと電力伝送とが重畳された全電気的実現のために延長ケーブル30により延長される必要がある電気信号の例を示す。
【0067】
電力及びデータは単一のバス60上で組み合わされ、オプションで別々の制御線又は複数の線62を伴う。
図6は、データ信号66を抽出して電力信号67を転送するためのスプリッタ64と、増幅又はバッファリングした後のデータ信号66を電力信号67と再結合するためのコンバイナ68とを示す。
【0068】
こうして、電力信号及びデータ信号が分割される。これは例えば、AC/DC重畳の場合にクロスオーバーネットワークを利用することができる。電力は、信号プロセッサ34に電力を供給するため、電力信号67から引き出されるものとして示される。接地線もまた、符号54として示され、これはファイバに沿って走っている。
【0069】
図7は、電力線(電力レール52及び接地54)がデータを搬送するための光ファイバ70とともに設けられるハイブリッド設計を示す。
【0070】
データは電気的に増幅されないが、電気-光変換器72を使用して光学領域に変換される。必要に応じて、電気-光変換の前にユニット74内にオプションで電気信号処理が存在する。
【0071】
延長ケーブルに沿った伝送の後、光-電気変換器76及びオプションの電気信号処理ユニット78を使用して、電気領域への変換が行われる。信号処理は例えば、カテーテル端でのアナログ-デジタル変換、及びPIM端でのデジタル-アナログ変換を含む。信号処理はインピーダンス整合も含み得る。
【0072】
光データ伝送は非常に低い損失を有することが知られる。電気-光変換用の光学式エンコーダは、LED又は垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)などの任意の高速光源として実現されることができる。どちらも電力効率がよく、コネクタにフィットするように十分に小さくすることができる。この例における制御信号及び電力は、電気領域に留まり、光ファイバを用いてハイブリッドケーブル32に供給される。
【0073】
図8は、光ファイバ信号がPIMに直接提供される他の変形例を示す。これは、デジタル光信号を直接受信することができるデジタルPIMに関して可能であり得る。
【0074】
ハイブリッド電気光学システムに加えて、
図9に示されるように、本質的に全光学的であるシステムも可能である。
【0075】
電力線52及びデータ線56は、コンバイナ90に供給される。結合された信号は次に処理ユニット92で処理され、電気-光変換器94により光信号に変換される。
【0076】
接地線54は電線のままである。
【0077】
光ファイバ70を介した伝送の後、光-電気変換器96における光-電気変換、ユニット98における信号処理、次にスプリッタ100における分割が行われ、PIMへの必要な一組の電気入力が生成される。
【0078】
この例における制御信号及び電力信号は、データ信号と同様に光学的であり、ハイブリッドケーブル32に光ファイバを用いて供給される(これは電気接地接続を含む)。
【0079】
光電力伝送は例えば、WO2014072891A1号に記載され、カテーテルにとって有望な技術である。
【0080】
カテーテルにより担持される超音波プローブは例えば、圧電ジルコン酸トランスデューサ(PZT)固体トランスデューサ、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)、及び/又は圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)を含み得る。超音波システムは回転式でも静的式でもよい。
【0081】
カテーテルの設計は、詳細には説明されていない。なぜなら、本発明を実現するためにその設計を変更する必要がないからである。カテーテルは、撮像コア及び外側カテーテル/シースアセンブリを含み得る。バックエンドシステム18は例えば、フェーズドアレイ超音波撮像システムであり得る撮像システムを含む。
【0082】
高レベルでは、カテーテルは、デバイスの先端にある超音波プローブから超音波エネルギーを放出する。超音波エネルギーは、プローブを囲む組織構造により反射され、組織からのエコー信号は、超音波プローブにより受信され増幅される。PIMは、受信信号を転送し、信号をバックエンドシステム(コンソール)に送信する前に予備信号処理を実行することができる。PIMは例えば、データの増幅、フィルタリング、及び/又は集約を実行する。超音波プローブ内の回路の動作をサポートするため、PIMは、高電圧及び低電圧のDC電力も供給してもよい。
【0083】
カテーテルは、迅速交換カテーテルを実現するためのガイドワイヤ出口ポートを含み得る。ガイドワイヤ出口ポートは、血管を通してデバイスを向けるため、ガイドワイヤが遠位端に向かって挿入されることを可能にする。
【0084】
このシステムは例えば、肝臓、心臓、腎臓、胆嚢、膵臓、肺;ダクト;腸;脳、硬膜嚢、脊髄及び末梢神経を含む神経系構造;尿路;血液系における弁又は体の他のシステムを撮像するために使用されてもよい。自然構造を撮像することに加えて、画像は、以下に限定されるものではないが、心臓弁、ステント、シャント、フィルタ、及び体内に配置される他のデバイスなどの人工構造を撮像することを含むこともできる。カテーテルはまた、遠位先端付近に膨張可能なバルーン部分を含み得る。
【0085】
延長ケーブルは、カテーテルとPIMとの間の任意の数のワイヤに使用されることができる。1つの既知の例は4線式システムである。ワイヤの本数が少ないと、IVUSカテーテルは、それが曲がりくねった経路を通るとき、より良い屈曲半径を持つことができ、更に重要なことに、ワイヤ又は溶接の破損の危険性を減らす。
【0086】
図面、開示及び添付された請求項の研究から、開示された実施形態に対する他の変形が、請求項に記載の本発明を実施する当業者により理解及び実行されることができる。請求項において、単語「有する」は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを意味するものではない。請求項における任意の参照符号は、発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。