(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】回転可能なギヤ式駆動ロッドを備える駆動配列
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20220926BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61M5/315 550R
A61M5/24 500
(21)【出願番号】P 2019537781
(86)(22)【出願日】2018-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2018050715
(87)【国際公開番号】W WO2018130633
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-23
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クリトモース, ラース ピーター
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/135237(WO,A1)
【文献】特表2010-521275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤ式駆動配列を備え、薬剤充填型カートリッジ(20)を備えるか、又は受容するよう構成されている薬剤送達装置であって、前記ギヤ式駆動配列が、
- ハウジング(220、510)の形態の固定部と、
- ピストンロッド(410)の形態の駆動ロッドであって、前記ピストンロッドが、基準軸を画定し、作動中に、前記基準軸に応じて回転して軸方向に移動するよう配置されており、装着されているカートリッジ内のピストン(22)に係合して、前記ピストンを遠位方向に軸方向に変位させ、これにより前記カートリッジから薬剤の用量を吐出するよう構成されており、第2のねじ山(411)を備える駆動ロッドと、
- 前記ピストンロッドと係合し、前記基準軸に応じて回転するよう配置されている駆動部材(420、421)と、
- 推進ねじ山(431)を備え、作動中に、前記固定部に対して回転可能に軸方向にロックされるよう配置されており、前記ピストンロッドの第2のねじ山(411)と螺合するナット部(430)と、
を備え、
- 前記駆動部材(420、421)は、作動中に、前記基準軸に応じて回転するよう配置されており、前記駆動部材(420、421)は、薬剤の用量の吐出中に、前記ハウジングに対して軸方向に固定されており、
- 前記駆動部材と前記ピストンロッドとの間の前記係合(423、413)は、前記駆動部材が回転すると、前記ピストンロッドを回転させるよう構成されており、
- 前記ナット部と前記ピストンロッドとの間の前記螺合(431、411)は、前記ピストンロッドを軸方向に移動させるよう構成されており、
- 前記ピストンロッドは、第1のねじ山(413)を備え、
- 前記駆動部材(420、421)は、前記ピストンロッドの第1のねじ山(413)と螺合する駆動ねじ山(423)を備え、前記基準軸に応じて回転するように配置されており、
前記駆動部材と前記ピストンロッドとの間の前記係合(423、413)は、前記駆動部材の駆動ねじ山(423)と前記ピストンロッドの第1のねじ山(413)との間の前記螺合であり、
- 前記第1のねじ山及び前記第2のねじ山(413、411)が、互いに反対向きに傾斜している、
薬剤送達装置。
【請求項2】
- 前記基準軸に応じて回転するよう配置されている伝達部材(210、211)と、
- 前記伝達部材及び前記ハウジング(220)に接続されている駆動ばね(240)と、
- 吐出される用量を設定することと、前記伝達部材(210、211)の設定位置への回転に応じて前記駆動ばね(240)を引っ張ることと、をユーザーが同時にでき、用量設定モードと用量吐出モードとの間を作動可能である、用量設定及び解除手段(110)と、を更に備える薬剤送達装置であって、
前記吐出モードにおいて、
- 前記駆動部材(420、421)は、前記伝達部材(210、211)に対して回転可能にロックされて共に回転し、
- 前記伝達部材は、回転可能に解除され、これにより、引っ張られている前記駆動ばねが、前記伝達部材を回転させることができ、
これにより、前記ピストンロッド(410)が前記駆動部材(420、421)により回転し、前記ナット部(430)を通って遠位に移動する、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記用量設定及び解除手段が、
- 用量設定中に、前記伝達部材(210、211)に対して回転可能にロックされて、前記ハウジングに対して第1の方向に回転して、用量を設定するよう構成されている用量設定部材(110)と、
- 用量設定状態と吐出状態との間を作動可能であり、これにより、前記用量設定及び解除手段を、前記用量設定モードと前記用量吐出モードとの間で作動させる解除部材(110)と、
- 用量設定中に、前記用量設定部材を、設定した回転位置まで前記第1の方向に回転させることができる解除可能ラチェット機構(162、222、168、179)と、
- 作動すると、前記伝達部材及び前記駆動部材を回転可能にロックするよう構成されているクラッチ機構(254、444)と、を備え、
前記解除部材が、前記用量設定状態から前記吐出状態へ作動すると、前記ラチェット機構が解除されて、前記クラッチ機構が作動する、請求項2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
用量の吐出中に、前記用量設定部材(110)が、前記ハウジングに対して回転可能にロックされる、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記第1のねじ山(413)及び前記第2のねじ山(411)が、軸方向に少なくとも部分的に重なっている、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記薬剤送達装置は、前記ピストンロッド(410)が、遠位方向に移動して、装着されているカートリッジから薬剤の用量を吐出できる作動状態と、前記ピストンロッドが、前記ナット部を通って近位方向に移動できるリセット状態と、の間を作動可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
- 用量の吐出中に、互いに対して回転するよう構成されている第1の回転センサ部及び第2の回転センサ部(142、155)と、
- 薬剤の用量の吐出中に、前記第1の回転センサ部と前記第2の回転センサ部との間の相対的回転に基づいて、吐出する用量を判定するよう構成されている電子回路(140)と、を備える回転センサアセンブリを更に備える薬剤送達装置であって、
- 前記第1の回転センサ部(142)は、用量の吐出中に、前記ハウジングに対して回転可能にロックされるよう配置されており、
- 前記第2の回転センサ部(155)は、用量の吐出中に、前記駆動部材(420、421)に対して回転可能にロックされるよう配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記第1の回転センサ部及び前記第2の回転センサ部(142、155)は、用量設定中に、互いに対して回転可能にロックされるよう配置されている、請求項7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
- 前記用量設定部材(110)に接続されて、回転可能にロックされる第1の回転センサ部(142)と、
- 前記伝達部材(210、211)に接続されて、回転可能にロックされる第2の回転センサ部(155)と、
- 前記第1の回転センサ部に接続されて、回転可能にロックされ、薬剤の用量の吐出中に、前記第1の回転センサ部と前記第2の回転センサ部との間の相対的回転に基づいて、吐出する用量を判定するよう構成されている電子回路(140)と、を更に備える薬剤送達装置であって、
- 前記第1の回転センサ部及び前記第2の回転センサ部(142、155)は、用量設定中に、互いに対して回転可能にロックされるよう配置されており、したがって、前記用量設定部材(110)及び前記伝達部材(210、211)と共に回転し、
- 前記第2の回転センサ部(155)は、用量の吐出中に、前記伝達部材と共に、したがって、前記第1の回転センサ部(142)に対して回転する、請求項3~6のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記解除部材(110)は、作動すると、前記用量設定状態と前記吐出状態との間を軸方向に移動する、請求項9に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記解除部材及び前記用量設定部材は、一体型の用量設定及び解除部材(110、120)として形成されている、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記第1の回転センサ部(142)及び前記電子回路(140)は、前記一体型の用量設定及び解除部材(110、120)に接続されて共に軸方向に移動する、請求項11に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、駆動部材の回転入力運動をロッド部材の軸方向への出力運動に変換するためのギヤ式駆動配列に関する。具体的な態様において、本発明は、薬剤充填型カートリッジを受容して、軸方向に移動可能なピストンロッドによってその薬剤充填型カートリッジから用量を吐出するよう構成されている薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示は主に、糖尿病の処置に関するが、これは本発明の単なる例示的用途であって、回転入力運動を軸方向への出力運動に変換するためのギヤ式トランスミッションに関連する場合に有益となり得る。
【0003】
薬剤投与デバイスは、薬剤及び生物学的作用物質を自己投与しなければならない患者の生存を大きく改善してきた。薬剤送達装置は、注入手段を備えるアンプルより小さい、シンプルで使い捨て可能なデバイスから、ばね駆動式であってもよい、相対的に複雑な、充填済みの使い捨てのデバイスといった多くの形態をとることができる。薬剤送達装置はまた、充填済みのカートリッジと共に使用するよう構成された耐久型デバイスであってよい。これらのデバイスは形態及び種類に関わらず、注射薬及び生物学的製剤を自己投与する患者の支援において大きな手助けとなることがわかっている。これらのデバイスはまた、自己投与を行うことができない患者への、注射剤の投与において、介護者を大きく支援する。
【0004】
必要なインスリン注入を適切な時に適切な分量にて行うことは、糖尿病の管理に必須である。すなわち、指定されたインスリン処方計画に従うことが重要である。処方された投薬パターンの有効性を医療関係者が判定できるようにするため、糖尿病患者は、各注入時の分量及び時間のログを記録し続けるよう奨励されている。しかし、そのようなログ記録は通常、手帳に手書きされる。そのためログ記録された情報は、データ処理のためにコンピュータにアップロードすることが容易でない場合がある。さらに、患者によって記入されたイベントのみがログ記録されていると、もしログ記録された情報に、患者の疾病の処置におけるいずれの数値が必要である場合に、手帳を用いたシステムでは、患者は各注入を思い出してログ記録しなければならない。ログ記録が紛失していたり、記録が間違っていたりすると、間違った注入履歴を導くこととなり、将来の投薬に関する医療関係者の意思決定に支障をきたす場合がある。したがって、投薬投与システムからの注入情報のログ記録を自動化することが望ましい。
【0005】
これに応じて、用量監視/取得機能を備える多くの薬剤送達装置が、例えば、US2009/0318865、WO2010/052275、及びUS7,008,399にて提供されている。しかし、今日のデバイスの多くは、そのような機能を備えていない。ロギングモジュールが近位に配置されている耐久型ばね駆動式薬剤送達装置が、WO2014/187814に開示されている。
【0006】
吐出された所定の用量を確実に検出するためには、薬剤送達装置自体が正確かつ確実に、所定の設定用量を吐出できることが重要である。現代の使い捨てのばね駆動式薬剤送達装置の一例が、WO2014/161952に開示されており、これ相当する耐久型ばね駆動式薬剤送達装置が、US2011/0054412に開示されている。
【0007】
いくつかの薬剤送達装置は、2重スレッド付きピストンロッドを備える。例えば、US8,911,411は、軸方向に互いに離れている2つのスレッドを有するピストンロッドを開示する。近位スレッドは、ドライバの軸方向の運動をピストンロッドの回転運動に変換する役割を果たす。遠位スレッドは、ハウジングとのスレッド接続を介して、ピストンの回転をその軸方向の運動に変換する役割を果たす。WO2014/139916は、2つの逆向きスレッドが互いに重なる、同様の駆動配列を開示する。US2016/0296710は、ピストンロッドを開示する。このピストンロッドは、その長さに沿って互いに重なる一対の逆向きスレッドを有する。1つのスレッドは、ドライバを近位に回転可能とし、用量設定中に、駆動ばねを引っ張る。ドライバはこれに続いて、ピストンを回転不可能に遠位方向に移動させる役割を果たす。もう1つのスレッドは、薬剤の吐出中に、スケールを回転して戻す役割を果たす。
【0008】
上記を考慮して、本発明の具体的な目的は、コスト効率よく確実に、薬剤の設定用量を吐出することができる薬剤送達装置を提供することである。本装置には、ばね駆動式吐出機構が提供されてよく、充填済みのカートリッジと共に使用するよう構成されている耐久型装置の形態であってよい。
【0009】
本発明の更なる目的は、薬剤送達装置及びシステム、並びに構成要素を提供し、これらにより、薬剤送達装置の使用に関する用量データの検出及び保存をコスト効率よく確実に可能とすることである。
【0010】
本発明の依然として更なる目的は、駆動部材の回転入力運動をロッド部材の軸方向への出力運動に変換するための汎用ギヤ式駆動配列を提供することである。この配列は、高い自由度での設計を可能とする。
【発明の概要】
【0011】
本発明の開示において、上記目的の1つ以上に対処する、又は、以下の開示から明白であり、同様に、各実施形態の説明から明白な目的に対処する各実施形態及び各態様を説明する。
【0012】
したがって、本発明の一般的な態様では、ハウジング、シャシ、又はプラットフォームなどの固定部と、駆動ロッドと、駆動部材と、ナット部と、を備えるギヤ式駆動配列が提供される。駆動ロッドは、基準軸を画定し、駆動配列の作動中に(すなわち、駆動部材が回転する際に)、軸方向に移動するよう配置されている。駆動ロッドは、第1のスレッドと、第2のスレッドと、を備える。駆動部材は、ピストンロッドの第1のスレッドと螺合する駆動スレッドを備える。ナット部は、推進スレッドを備える。ナット部は、作動中に、固定部に対して回転可能に軸方向にロックされるよう配置されており、駆動ロッドの第2のスレッドと螺合する。駆動部材は、基準軸に応じて回転するよう配置されている。駆動部材と駆動ロッドとの間の螺合は、駆動部材が回転する際に、駆動ロッドを回転させるよう構成されている。ナット部と駆動ロッドとの間の螺合は、駆動ロッドを軸方向に移動させるよう構成されている。
【0013】
ここに示すように、ギヤ式駆動配列が提供される。ここでは、駆動部材の回転駆動運動と駆動ロッドの軸方向の運動の残量との間の合計ギヤリングが、2つのギヤ式サブシステムの間に分割されている。駆動スレッドは、駆動部材の回転運動を駆動ロッドのギヤ式回転運動に変換する。推進スレッドは、それらの間のギヤ式関係に応じて、回転駆動ロッドを軸方向に移動させる。この配列により、各サブシステムが、例えば製造工程、材料、応力、摩擦、及びセルフロッキング機能の点において最適化され得るような、高い自由度にて設計された、所定の装置が提供される。一方で、回転入力に基づいてロッド部材を軸方向に移動させるための従来の配列においては、すなわち、スレッド付きロッドとナット部との間においては、単一のギヤリングスレッドのみが利用されている。
【0014】
駆動ロッドの第1のスレッド及び第2のスレッドは、同じ方向又は反対方向に刻まれてよい。これらは、駆動ロッドに全体的に、部分的に、又は重ならないように提供されてよい。スレッドが重なっている場合は、反対向きのスレッドは多くの場合に、より堅牢な設計を提供する。駆動部材は、実際の実施例に応じて、モーター、ばね、又は機械的配列などのいずれの好適な手段により回転駆動されてよく、作動中に、固定部に対して軸方向にロックされてよい。ナット部及び駆動部材は、互いに対して軸方向にロックされてよい。
【0015】
駆動部材と駆動ロッドとの間のスレッド接続はまた、駆動ロッドを軸方向にシフトさせるためにも使用されてよい。第1のスレッドは、駆動部材を軸方向に移動させる際に、回転可能ロックを提供する。例えば、ナット部と駆動ロッドとの間のスレッド接続は、ロックされなくともよい。ナット部は、固定部に対して回転可能な作動状態を有してよい。これにより、駆動ロッドを、回転させることなく軸方向に移動させることができる。これはまた、ナット部を固定部に対して回転させる。
【0016】
上記のギヤ式駆動配列は、薬剤充填型カートリッジを備えるか、又は受容するよう構成されている薬剤送達装置に組み込まれてよい。ここで、固定部はハウジングの形態であり、駆動ロッドは、装着されているカートリッジ内のピストンに係合して、このピストンを遠位方向に軸方向に変位させ、これにより、カートリッジから薬剤の用量を吐出するよう構成されているピストンロッドの形態である。ここで、駆動部材は、薬剤の用量の吐出中に回転するよう配置されている。駆動部材とピストンロッドとの間の螺合は、ピストンロッドを回転させる。ナット部とピストンロッドとの間の螺合は、ピストンロッドを遠位方向に移動させる。
【0017】
これに応じて、本発明の具体的な態様において、薬剤充填型カートリッジを備える、又はこれを受容するよう構成されている薬剤送達装置が提供される。薬剤送達装置は、ハウジングと、軸を画定し、装着されているカートリッジ内のピストンに係合して、このピストンを遠位方向に、軸方向に変位させ、これにより、カートリッジから薬剤の用量を吐出するよう構成されているピストンロッドであり、第1のスレッドと、第2のスレッドと、を備えるピストンロッドと、ピストンロッドの第1のスレッドに係合する駆動スレッドを備える駆動部材と、ハウジングに対して回転可能にロックされるよう配置されており、ピストンロッドの第2のスレッドに係合する推進スレッドを備えるナット部と、を備える。駆動部材は、薬剤の用量の吐出中に回転するよう配置されている。駆動部材とピストンロッドとの間の螺合は、ピストンロッドを回転させる。ナット部とピストンロッドとの間の螺合は、ピストンロッドを遠位方向に移動させる。第1のスレッド及び第2のスレッドは、軸方向に、少なくとも部分的に重なってよい。これらの2つのスレッドは、互いに反対向きに傾斜してよい。
【0018】
この配列により、各サブシステムが、例えば製造工程、材料、応力、摩擦、及びセルフロッキング機能の点において最適化され得るような、高い自由度にて設計された、薬剤送達装置が提供される。
【0019】
ある実施形態では、ナット部及び駆動部材は、薬剤の用量の吐出中に、ハウジングに対して両方とも軸方向に固定されている。ナット部及び駆動部材は、互いに対して軸方向にロックされるものの、互いに対して依然として回転可能であってよい。この配列により、ナット部の軸方向の運動は、例えばカートリッジの交換に関連して、駆動部材に伝達され得、したがって、リセット手順中に、駆動部材を回転させることができるカップリングの作動に使用され得る。
【0020】
これに応じて、薬剤送達装置は、ピストンロッドが、遠位方向に移動して、装着されているカートリッジから薬剤の用量を吐出できる作動状態と、ピストンロッドが、ナット部を通って近位方向に移動できるリセット状態と、の間を作動可能であってよい。本装置は、前部に装着されるカートリッジホルダー又は従来の後部に装着されるカートリッジホルダーなどのカートリッジホルダーによって、2つの状態の間を作動してよい。
【0021】
ある実施形態では、薬剤送達装置は、基準軸に応じて回転するよう配置されている伝達部材と、伝達部材及びハウジングに接続されたコイルばね又は時計型ばねなどの駆動ばねと、吐出される用量を設定することと、設定位置への伝達部材の回転に応じて駆動ばねを引っ張ることと、をユーザーが同時にでき、用量設定モードと用量吐出モードとの間を作動可能である用量設定及び解除手段と、を備える。吐出モードにおいて、駆動部材は、伝達部材に対して回転可能にロックされて共に回転し、伝達部材は、回転可能に解除される。これにより、引っ張られた駆動ばねは、伝達部材をハウジングに対して回転させることができる。これにより、ピストンロッドは、駆動部材により回転して、ナット部を通って遠位に移動する。
【0022】
上記の種類の駆動配列は従来技術にて既知であり、例えばUS9,125,991、WO2014/161952、及びWO2015/055640に開示されるように、所望する機能を実現するために、多くの方法にて設計されてよい。
【0023】
例えば、ある具体的な実施形態では、用量設定及び解除手段は、用量設定中に、伝達部材に対して回転可能にロックされて、ハウジングに対して第1の方向に回転して、用量を設定するよう構成されている用量設定部材と、用量設定状態と吐出状態との間を作動可能であり、これにより、用量設定及び解除手段を用量設定モードと用量吐出モードとの間で作動させる解除部材と、用量設定部材を、用量設定中に、第1の方向に、設定した回転位置に回転させることができる解除可能ラチェット機構と、作動すると、伝達部材及び駆動部材を回転可能にロックするよう構成されているクラッチ機構と、を備える。解除部材が用量設定状態から吐出状態に作動すると、ラチェット機構が解除されて、クラッチ機構が作動する。ラチェット機構は、用量設定部材が、反対の第2の方向に回転した際に、設定用量を減少させることができ、ユーザーが設定用量を調整できるダイヤルアップ/ダイヤルダウン機能を提供する2方向機構であってよい。用量設定部材は、用量の吐出中に、例えばスプライン又は歯付きカップリングによって、ハウジングに対して回転可能にロックされてよい。
【0024】
更なる実施形態では、上述するような薬剤送達装置が提供される。本装置は、回転センサアセンブリを更に備える。本アセンブリは、用量の吐出中に、互いに対して回転するよう構成されている第1の回転センサ部及び第2の回転センサ部と、薬剤の用量の吐出中に、第1の回転センサ部と第2の回転センサ部との間の相対的回転に基づいて、吐出する用量を判定するよう構成されている電子回路と、を備える。第1の回転センサ部は、用量の吐出中に、ハウジングに対して回転可能にロックされるよう配置されている。第2の回転センサ部は、用量の吐出中に、駆動部材に対して回転可能にロックされるよう配置されている。第1の回転センサ部及び第2の回転センサ部は、用量設定中に、互いに対して回転可能にロックされるよう配置されてよい。
【0025】
上記の配列では、2つのギヤ式サブシステムを利用して、所定の回転センサアセンブリに対する回転入力を最適化できる。例えば、1IUではなく、小児用の0.5IUなどの、全インクリメントではなく、半インクリメントを利用する装置を提供することが望ましい場合、駆動部材の所定の回転に対して、ピストンロッドが、全インクリメント装置についての半分の量にてのみ回転するように、駆動スレッドのギヤリングを変更することができる。これにより、単にソフトウェアを更新するだけで、すなわち、0.5IUに相当する各回転インクリメントに更新するだけで、同じ回転センサアセンブリを使用することができる。更に、これに応じて用量インジケータ(スケールドラム)が変更されてよい。
【0026】
ある具体的な実施形態では、上述するような薬剤送達装置が提供される。本装置は、用量設定部材に接続されて、回転可能にロックされる第1の回転センサ部と、伝達部材に接続されて、回転可能にロックされる第2の回転センサ部と、第1の回転センサ部に接続されて、回転可能にロックされ、薬剤の用量の吐出中に、第1の回転センサ部と第2の回転センサ部との間の相対的回転に基づいて、吐出する用量を判定するよう構成されている電子回路と、を更に備える。第1の回転センサ部及び第2の回転センサ部は、用量設定中に、互いに対して回転可能にロックされ、したがって、用量設定部材及び伝達部材と共に回転するよう配置されている。第2の回転センサ部は、用量の吐出中に、伝達部材と共に、したがって、第1の回転センサ部に対して回転する。解除部材は、作動すると、用量設定状態と吐出状態との間を軸方向に移動してよい。
【0027】
ある実施形態では、解除部材及び用量設定部材は、一体型の用量設定及び解除部材として形成されている。これにより、一体型部材の軸方向の運動は、用量の吐出中に、ハウジングに対して、例えばスプライン又は歯付きカップリングによって、この一体型部材を回転可能にロックするために使用され得る。第1の回転センサ部及び電子回路は、一体型の用量設定及び解除部材に接続されて共に軸方向に移動してよい。
【0028】
上記の場合において、2つの構造又は部材が、互いに対して回転可能にロックされる又は軸方向にロックされるよう配置されていることが画定されている場合は、これらの構造又は部材が直接的に、及び、1つ又はそれ以上の更なる部材を介して間接的に接続されている実施形態をも網羅する。
【0029】
ここで用いられるように、「薬剤」という語句は、カニューレ又は中空針などの送達手段を管理された様式にて通過可能な、液体、溶液、ジェル、又は微細懸濁液などの、及び、1つ又はそれ以上の薬剤エージェントを含むいずれの流動性医薬製剤を包含することを意味する。薬剤は、単一のリザーバからの、単一の薬剤化合物、又は、予め混合された若しくは共組成された複数種類の薬剤化合物の薬剤エージェントであってよい。代表的な薬剤としては、(調剤された)固体及び液体の両方の形態での、ペプチド(例えば、インスリン、インスリンを含む薬剤、GLP-1を含む薬剤、及びこれらの派生品)、タンパク質、及びホルモン剤などの医薬品、生体由来薬剤又は活性薬剤、ホルモン及び遺伝子に基づくエージェント、栄養製剤、及び他の物質が挙げられる。本実施形態の説明は、インスリン及びGLP-1を含む薬剤の使用に関する。このことは、その類似体、及び、1つ又はそれ以上の他の薬剤との組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の図面を参照して、本発明を以下に更に説明する。
【0031】
【
図1B】薬剤カートリッジが載置されている前面装填式の薬剤送達装置を示す。
【
図2】
図1Bの薬剤送達装置の構成要素を分解組立図に示す。
【
図3A】
図2の装置の構成要素の第1の群を前面等角図に示す。
【
図4A】
図2の装置の構成要素の第2の群を前面等角図に示す。
【
図5A】
図2の装置の構成要素の第3の群を前面等角図に示す。
【
図8A】用量設定モードにある吐出機構の一部位を第1の部分切り取り図に示す。
【
図9A】用量設定モードにある吐出機構の一部位を第2の部分切り取り図に示す。
【
図11A】矩形断面を有するワイヤから巻いたらせんコイルの、コンピュータによる有限要素解析に対するスクリーンショットを示す。
【
図11B】矩形断面を有するワイヤから巻いたらせんコイルの、コンピュータによる有限要素解析に対するスクリーンショットを示す。
【
図11C】矩形断面を有するワイヤから巻いたらせんコイルの、コンピュータによる有限要素解析に対するスクリーンショットを示す。
【
図12】モデルとなるばねのねじり数に応じて生成されたトルクの理想図を示す。
【
図13】ばねワイヤに対する第2の慣性モーメントの計算に用いるパラメータを示す。
【
図14】その初期状態から傾斜する、ばねワイヤに対する第2の慣性モーメントの変化を示す。
【0032】
図中において、類似する構造は、同様の参照符号にて主に識別される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に示す語句、「上」及び「下」、「右」及び「左」、「水平」及び「垂直」、又は同様の相対表現などが使用されている場合、これらは単に付属する図面を引用しているだけであり、実際の使用状況を必ずしも示しているわけではない。これらに示す図は概略的に代理をなすものであるため、様々な構造の構成及びそれらの相対寸法は例示の目的のみに供されることを意図している。与えられた構成要素に対して部材又は要素という語句が使われる場合、説明する実施形態において該構成要素は一般的に単一の構成要素を示す。しかし同部材又は要素は代替的に、2つ以上のその説明する構成要素が単一の構成要素として提供される場合と同じように、例えば、単一の射出成型された部品として製造される場合と同じように、多数のサブ構成要素を含む場合がある。部材が互いに軸方向に自由に載置されていることが画定されている場合、これは一般的に、それらは互いに対して、通常は画定された停止位置の間を移動できることを示す。一方で、部材が互いに自由に回転可能に載置されていることが画定されている場合、これは一般的に、それらは互いに対して、自由に、又は画定された停止位置の間のいずれかを回転できることを示す。「アセンブリ」及び「サブアセンブリ」という語句は、与えられた組み立て手順中にその説明する構成要素が必ずしも組み立てられ、単一のアセンブリ又はサブアセンブリ若しくは機能アセンブリ又は機能サブアセンブリを提供し得るという意味を含まず、機能的により密接に関連するものとして互いにまとめられた構成要素を説明するために単に使用される。
【0034】
本発明の具体的な実施例に進む前に、本発明の一般的な概念を、ギヤ式駆動配列の概図を示す
図1Aを参照して説明する。
【0035】
より具体的には、
図1Aは、シャシ(図示せず)などの固定部と、基準軸を画定し、作動中に、基準軸に応じて回転して軸方向に移動するよう配置されている駆動ロッド710と、ナット部720と、駆動部材730と、を備えるギヤ式駆動配列700を示す。駆動ロッド710は、第1のスレッド
(thread:ねじ山)711を有する遠位部と、第2のスレッド712を有する近位部と、を備える。両スレッドは一部のみを示す。2つのスレッドは同じ向きにあっても逆に向いていてもよく、同じピッチ又は異なるピッチを有してよく、そして、全体的に、部分的に、又は全く重なっていなくともよい。ここに示す実施形態において、2つのスレッドは、駆動ロッドのそれぞれの部位に、
逆の向きにあって重ならないように配置されている。
【0036】
ナット部720は、作動中に、固定部に対して回転可能に軸方向にロックされるよう配置されており、駆動ロッドの第2のスレッドに係合する内部推進スレッドを有する中央孔を備える。駆動部材730は、基準軸に応じて回転するよう配置されており、通常の作動時には、固定部に対して軸方向にロックされる。駆動部材は、駆動ロッドの第1のスレッドに係合する内部駆動スレッドを有する中央孔を備える。ここに示す実施形態において、駆動部材は、電動モーター741に載置されてこれにより回転される、対応する歯付き駆動ギヤホイール740と歯係合するギヤホイールの形態である。
【0037】
駆動部材730が回転すると、駆動部材と駆動ロッド710との間の螺合が、駆動ロッドを回転させ、ナット部720と駆動ロッドとの間の螺合が、駆動ロッドを、モーター、したがって、駆動部材の回転方向に対応する方向に、軸方向に移動させる。実際に、軸方向の移動範囲は、駆動ロッド上の2つのスレッドの長さにより限定されている。
【0038】
このようにして、ギヤ式駆動配列が提供される。ここでは、駆動部材の回転駆動運動と駆動ロッドの軸方向の運動の残量との間の合計ギヤリングが、2つのギヤ式サブシステムの間に分割されている。駆動スレッドは、駆動部材の回転運動を駆動ロッドのギヤ式回転運動に変換する。推進スレッドは、そのギヤ式関係に応じて、回転駆動ロッドを軸方向に移動させる。この配列により、各サブシステムが、例えば製造工程、材料、応力、摩擦、及びセルフロッキング機能の点において最適化され得るような、高い自由度にて設計された、所定の装置が提供される。
【0039】
ペン形状の薬剤送達装置1を、
図1Bを参照して説明する。本装置は、本発明の駆動配列の実施例を組み込んでいる。より具体的には、
図1Bのペン装置1は、キャップ部2(
図6Aを参照)と、単一のハウジング50を有する主部と、を備える。薬剤送達装置は、ハウジングの近位部に配置されている吐出アセンブリと、ハウジングの遠位部に配置されているカートリッジホルダーアセンブリと、を備える。最近位の、回転可能な一体型の用量設定及び解除部材(又は「ボタン」)10は、表示ウィンドウ52に示す、所望する薬剤の用量を手動で設定する役割を果たす。続いて、ユーザーが最近位のボタン面12上に力を加えて、一体型用量設定及び解除ボタンを遠位に移動して作動させると、この設定した用量にて薬剤が吐出される。ボタンは、吐出される薬剤の用量を設定すること及び/又はこれを判定することを可能にする電子回路を全体的に又は部分的に収容するよう構成されてもよい。判定された用量に関するデータは、外部受信機に送信されてよく、及び/又は、例えば、透明ボタンのエンドカバー12を通して視認可能なディスプレイ上に表示されてよい。カートリッジホルダーアセンブリは、遠位の、針が貫通可能な隔壁と、針アセンブリ用の接続手段21と、を備える薬剤充填型透明カートリッジ20を受容して保持するよう構成されている。ハウジングは、カートリッジの内容物を点検可能な開口51を備える。カートリッジは、インスリン、GLP-1、又は成長ホルモン製剤などを包含してよい。本装置は、カートリッジホルダーアセンブリ内の遠位受容開口を通して新品のカートリッジがユーザーにより装着されるよう設計されている。カートリッジは、吐出機構の一部を形成するピストンロッドにより駆動されるピストン22(
図6Aを参照)を備える。遠位開口は、カートリッジの最遠位部の内容物を点検可能な開口31を備える遠位リング部材30の回転により開閉される。
図1Bは前面装填式の薬剤送達装置を開示するが、本発明の態様はまた、従来の取り外し可能な、後部に装着されるカートリッジホルダーを備える薬剤送達装置にも組み込まれ得る。
【0040】
図2は、
図1Bに示すペン形状の薬剤送達装置1を、分解組立図にて示す。本発明の態様は、そのようなペンの作動原理に関するため、一揃いのペン機構の実施形態及びその機能を説明する。これらの大半は、本発明の態様と共に機能してこれらの態様を支持するよう構成されている機能及び設計の単なる例である。本ペンは、次の3つの主なアセンブリを備えるものとして説明する:用量設定及びロギングアセンブリ100(又は、単に用量設定アセンブリ)、エンジンアセンブリ200、及び、カートリッジホルダーサブアセンブリ及び駆動サブアセンブリ400を伴うカートリッジホルダー及び駆動アセンブリ300、同様に、外部ハウジングアセンブリ500及びキャップアセンブリ600。これらのアセンブリは機能ユニットとして説明されるが、これら機能の一部は、アセンブリが互いに載置されてペン形状の薬剤送達装置を形成する場合にのみ実現される。様々な構成要素及びそれらの構造及び機能関係を、
図3A、
図3B、
図4A、
図4B、
図5A、及び
図5Bを参照して更に詳細に説明する。
【0041】
より具体的には、そして
図3A及び
図3Bを参照すると、用量設定アセンブリ100は、ハウジング部と、電子ロギングモジュールアセンブリと、ラチェットサブアセンブリと、を備える。ハウジング部は、近位端部にて透明ウィンドウ112により閉鎖されている、近位管状用量設定及び解除ボタン部材110(又は、略して用量ボタン)と、近位端部付近に内周フランジ121を有する、遠位管状スカート部材120と、から形成されている。スカート部材は、軸方向に配向された、遠位に対向するスプライン128の内部アレイと、一対の対向する、軸方向に配向されたガイドスロット122と、を備える。遠位周縁上には、遠位に対向する歯125のアレイが配置されており、用量終了制御部材(以下を参照)に係合するよう構成されている。組み立てられると、これら2つのハウジング部材は、周フランジ121の近位のロギングコンパートメントと、周フランジの遠位のラチェットコンパートメントと、を形成する。
【0042】
ロギングモジュールアセンブリは、中央開口132を有する遠位載置面131を有するハウジング部材130と、複数層のスタック状に折り曲げられたフレキシブル印刷基板(printed circuit board又はPCB)140と、バッテリ145及びバッテリクリップ146と、ハウジング蓋138と、液晶ディスプレイ(liquid crystal display又はLCD)フレーム139と、を備える。PCB上には、マイクロコントローラ、LCD149、ディスプレイドライバ、メモリー、及び無線通信手段などの、電子回路の構成要素が取り付けられている。PCBは、例えば接着手段により、ハウジングの遠位載置面131上に載置されるよう構成されている、ディスク形状のセンサ部142を備える。センサ部は、投薬の終了時に、伝達部材の回転量を判定するよう構成されている回転センサの、固定された第1の部位を形成する複数の、円弧形状のディスクリート接触エリアを備える(以下を参照)。PCBは、EP16157986.7に更に詳細に記載されているような、用量設定モードと、中間モードと、吐出モードと、を有する、横方向に対向するモードスイッチアレイ143を更に備える。ここに示す実施形態において、ハウジング部材130、ハウジング蓋138、及びLCDフレーム139は、スナップ接続により組み立てられている。センサ部142とは別に、PCB140及びそこに載置されている電子構成要素は、ハウジングの内部に配置され、これによりロギングモジュールを形成する。
【0043】
回転センサの、可動の第2の部位は、センサの接触エリアと回転摺動係合するよう構成されている複数のフレキシブル接触アームを備えるフレキシブル接触ディスク155により形成されている。接触ディスク155は、ディスク形状のキャリア部材150の近位面に取り付けられるよう構成されている。キャリア部材は、スカート部材120の周フランジ121上に位置するよう構成されている、周方向に遠位に対向する縁部151と、ハウジングの中央開口132内に受容されるよう構成されている近位管状エクステンション152と、解除部材190(以下を参照)及び伝達チューブ210(以下を参照)の近位端部に係合して移動不可能にロックするよう構成されている遠位コネクタチューブ部153と、を備える。
【0044】
回転センサに加えて、フレキシブル接触ディスク155及びPCBセンサ部142はまた、用量終了トリガー部材270(以下を参照)により作動する用量終了スイッチを形成する。
【0045】
ラチェットサブアセンブリは、管状ラチェット部材160と、リング形状の駆動リフト制御部材170と、モードスイッチアーム180と、管状解除部材190と、らせんラチェットばね185と、を備える。
【0046】
ラチェット部材160は、駆動チューブ解除部材上の対応するスプラインに摺動可能に係合するよう構成されている、複数の長手方向に配置されたスプライン161を備える内面を有する管状本体部を有する。ラチェット部材は、ラチェット歯構造162(ここでは24)の内周アレイが、中央開口の周囲に配置されている、遠位対向面を備える。各歯は、傾斜したラチェット面と、ハウジング部材の断面に垂直に配向された停止面と、を有する三角構成を有する。ラチェット歯は、エンジンハウジング部材(以下を参照)上の対応するラチェット歯に適合するよう構成されている。これにより、ワンウェイラチェットが提供される。ラチェット部材160は、遠位に対向するラチェット歯構造168の第2のアレイ(ここでは24)を有する外周フランジ169を更に備える。各歯は、「より傾斜した」リフト面と、「あまり傾斜していない」駆動面と、を有する構成を有する。
【0047】
駆動リフト制御部材170は、用量設定部材のスプライン128と適合するよう構成されている、複数の長手方向に配置されたスプライン178と、近位の周縁上に配置されている複数の、近位に対向する駆動リフト歯179と、を有する外周面を有するリング形状の部材として構成されている。各歯は、ラチェット部材160上の対応する駆動リフト面に係合するよう構成されている、あまり傾斜していない駆動面と、より傾斜したリフト面と、を有する三角形状を有する。制御部材は、スカートのガイドスロット122内に受容されるよう構成されている一対の対向するガイディング突起172と、モードスイッチアーム180の遠位端部181に係合してこれを載置するよう構成されている周辺接続構造171と、を更に備える。
【0048】
管状解除部材190は、ラチェット部材160上の対応するスプライン161に摺動可能に係合するよう構成されている外部スプライン191の外部アレイを備える。解除部材は、キャリア部材150の遠位コネクタチューブ部153に固定的に載置される(すなわち、軸方向に回転可能にロックされる)ことを可能にする(スナップ)ロッキング手段を更に備える。モードスイッチアーム180は、制御部材に取り付けられるよう構成されている遠位端部181と、PCBのモードスイッチアレイ143に摺動可能に係合してスイッチを様々なモード間でシフトさせるよう構成されている一対の接触ポイントを有する近位端部183と、を備える。スカート部材内に載置されると、モードスイッチアームは、スカートのフランジ内の切り欠きにガイドされる。ラチェットばね185は、スカートのフランジ121とラチェット部材の外周フランジ169との間に配置されて、これらに係合するよう構成されている。これにより、軸方向に移動可能なラチェット部材が、制御部材との係合に付勢される。設定用量を解除するために用量ボタンが遠位に移動される際に、ラチェットばね185はまた、用量ボタンの戻りばねとしての役割も果たす。
【0049】
組み立てられると、エンジンハウジング部材(以下を参照)と組み合わせて、ラチェット配列は、解除可能なワンウェイラチェットとみなすことができるものを提供する。駆動配列は、用量ボタンの第1の方向への回転による、ラチェット歯に対応するインクリメントにて、用量が設定されることを可能にする。リフト配列は、用量ボタンが、反対の第2の方向に回転されると、設定用量を減らす(又は「ダイヤルダウン」する)ことができるようにする。そのようなラチェット配列が、EP2016/053965により詳細に記載されている。ラチェットの駆動面にわずかな傾斜を与えることにより、最大用量が設定された際にラチェットが持ち上がる。これは、欧州出願16186501.9に記載されるような過大トルク安全機構を提供する。
【0050】
組み立てる際には、ラチェットサブアセンブリ部材を、最初にスカート部材内に載置する。これらの部材は、スカートのガイドスロット122に係合する制御部材170を介して保持される。モードスイッチアームは、スカートの外側に、近位に伸長する。次に、接触ディスク155が載置されているキャリア部材を、解除部材170とのスナッピング係合により載置する。これは両部材を、スカートのフランジ121の各側に固定する。次に、予め組み立てられたロギングモジュールを設置し、接触ディスクとモードスイッチアームのそれぞれに係合する。最後のステップとして、ボタン部材110を、溶接などにより、スカート部材120に載置して取り付ける。このようにして、電子ロギングモジュール及びラチェットサブアセンブリを備える、自己包含型の用量設定アセンブリ100が提供される。
【0051】
代替的な実施形態では、ロギングモジュールには、「ダミー」のモジュールを与えて、これを載置することができる。これにより、同じ機能を有するものの、ロギング機能を有しないペン装置が提供される。
【0052】
図4A及び
図4Bに示すようなエンジンアセンブリ200は、2分割の管状伝達部材210及び211と、管状のエンジンハウジング部材220と、伝達部材とエンジンハウジング部材との間に配置される管状のスケールドラム230と、駆動ばね240と、リング形状のクラッチロック部材250と、用量終了トリガーアセンブリと、を備える。
【0053】
伝達部材は、機能的には単一の部材である。しかし、ここに示す実施形態において、伝達部材は、より長い内部管状部材210と、より短い外部管状スカート部材211と、を備える。これらは、内部部材及び外部部材のそれぞれの接続手段212及び213を介して互いに接続される。これにより、回転可能に軸方向にロックされるものの、2つの部材が依然として「揺れる」ことができる接続が提供される。これにより、組み立てられたペン装置内の公差が良好に許容される。
【0054】
スカート部材211は、接続部材(以下を参照)上の対応するスプライン構造444に係合するよう構成されている、軸方向に配向された、遠位に対向するスプライン214の内部アレイと、外周フランジ215と、を遠位端部に備える。管状部材は、内容物終了部材(以下を参照)のための、一対の、長手方向に伸長する、対向する内部駆動スロット216Eと、スケールドラム230のための、多くの、長手方向に伸長する外部駆動フランジ216と、キャリア部材150に固定的に係合するよう構成されているスナップ接続手段217と、を備える。管状部材は、遠位部が広く、近位部が狭いステップ構成を有する。これにより、近位に対向する周停止面218が提供される。管状部材は、駆動ばねの遠位端部のためのアタッチメント構造と、用量終了トリガー部材(以下を参照)のための、一対の対向する、長手方向のガイド溝219と、を更に備える。
【0055】
エンジンハウジング部材220は、スケールドラムのスレッド構造232(以下を参照)に係合するよう構成されている内部らせんスレッド221と、スケールドラム上に印刷された数値をユーザーが観察することができる、横方向のウィンドウ開口229と、を備える。近位端部にて、エンジンハウジング部材は、ラチェット歯構造222(ここでは24)の周アレイが中央開口の周囲に配置される、近位対向面を有する縮径エクステンションを備える。各歯は、傾斜したラチェット面と、ハウジング部材の断面に垂直に配向された停止面と、を有する三角構成を有する。ラチェット歯は、ラチェット部材160(上記を参照)上の対応するラチェット歯に適合するよう構成されている。これにより、ワンウェイラチェットが提供される。縮径エクステンションは、用量設定部材のスプライン128に適合するよう構成されている、複数の長手方向に配置されたスプライン228を有する外周面を有する。縮径エクステンションは、用量終了制御部材(以下を参照)を受容するよう構成されている、一対の対向するガイドスロット構造225を更に備える。一般的に縮径エクステンションに対応して、管状の内部ハウジング部は、ハウジング内に遠位に伸長する。内部ハウジング部は、伝達部材の停止面218のための軸方向の停止面と、トリガーばね275(以下を参照)のためのサポートとしての両方の役割を果たす内周フランジを遠位端部に備える。
【0056】
スケールドラム230は、伝達部材210とエンジンハウジング部材220との間の周空間内に配置される。スケールドラムは、長手方向のスプライン231を介して伝達部材に回転可能にロックされ、共動するスレッド構造232を介して、エンジンハウジング部材の内部らせんスレッド221と回転可能に螺合する。これにより、ドラムが伝達部材210によりハウジングに対して回転すると、らせん状の数値の列が、エンジンハウジング部材220内のウィンドウ開口229を通過する。スケールドラムの近位端部は、エンジンハウジング部材220内の対応する停止面に係合するよう構成されている停止面234を備える。これにより、初期(又は終了)回転位置のための回転ストップが提供される。スケールドラムの遠位端部は、用量設定中に、100単位のインスリン(IU)などの最大用量に達すると、エンジンハウジング部材の内面上の対応する停止面に係合するよう構成されている、更なる停止面233を備える。停止面234はまた、用量終了トリガー制御部材260(以下を参照)を解除する役割も果たす。
【0057】
駆動ばね240は、伝達部材への取り付けのための遠位フック部(
図10Aを参照)と、エンジンハウジング部材への取り付けのための近位フック部と、を有するらせん形状の開放巻きねじりばねの形態である。組み立てられた状態において、駆動ばねは予め巻かれており、望ましい初期トルクを提供する。ここに示す実施形態において、このばねは、水平面に応じて配置された長い寸法を有する矩形ワイヤから形成されている。矩形ねじりばねのワイヤは、断面の(高さを厚さで除算した)縦横比が十分に大きい場合に、負荷のある状態にて傾く傾向がある。矩形ワイヤが傾くと、ジオメトリに、ばねの中心軸に対する角変位が生じ、したがって、第2の慣性モーメントが減少する。ばねに負荷が掛かっている状態では、ばねの剛性は、第2の慣性モーメントの減少と共に、徐々に低下する。これにより、減少する傾斜を示す非線形のばね特性がもたらされる。ある時点にて、減少する剛性と増加する負荷が同じ大きさになると、ばねのトルクは、ばねの角偏向に対してほぼ一定になる。
【0058】
この傾向を利用することにより、駆動ばねは、ほぼ一定の投薬を行う力を実現するために、ピストンロッドへほぼ一定のトルクを与えるよう設計することができる。これは、ばねの負荷が掛かった状態での力が、初期プレロード状態にある力よりも高くなるよう、トルクが、ばねの偏向に累進的に比例する、円断面を有するワイヤから巻かれた通常のねじりばねとは対照的である。ねじりばね240の代替的な構成を
図10A及び
図10Bに示し、以下に説明する。矩形ワイヤから巻かれたねじりばねの特性を、
図11~
図14を参照して以下により詳細に説明する。
【0059】
リング形状のクラッチロック部材250は、クラッチ部材440(以下を参照)上の対応する外部スプライン444に摺動可能に係合するよう構成されている、複数の、長手方向に配置されたスプライン254を備える内面と、駆動ハウジング(以下を参照)内の対応する溝475に、回転不可能であるものの、軸方向に自由に係合するよう構成されている、一対の対向するロッキング突起255と、を備える。各ロッキング突起255は、突起が、対応する溝475内に遊びなく受容され得るフレキシブルアームを備える。クラッチロック部材は、これを、伝達部材の外周フランジ215に軸方向にロックするものの、自由に回転可能に載置する(スナップ)接続手段を備える。
【0060】
用量終了トリガーアセンブリは、リング形状の制御部材260と、トリガー部材270と、トリガーばね275と、を備える。制御部材260は、エンジンハウジング部材のガイドスロット構造225に係合するよう構成されている、一対の対向する、横方向に突起する制御アーム261を備える。これらの制御アームはそれぞれ、スカート部材120上の、遠位に対向する歯のアレイ125に係合するよう構成されている、多くの近位に対向する歯265を備える。トリガー部材270は、遠位リング部271と、一対の対向する近位トリガーアーム272と、を備える。リング部は、トリガー部材に(スナップ)接続されるよう構成されている。この接続により、トリガー部材が回転可能となる。これら2つのトリガーアームは、伝達部材のガイディング溝219内にガイドされ、作動すると、キャリア部材150内の、一対の対応する開口を通して近位に移動するよう構成されている。トリガーばね275は、エンジンハウジング部材220の、管状の内部ハウジング部内に配置され、内周フランジに遠位に係合し、トリガー制御部材260に近位に係合する。
【0061】
スケールドラムが、そのゼロ初期位置から離れるように回転した際に、トリガー制御部材が、通電のある遠位位置に「停止」できるように、組み立てられた状態において、トリガー制御部材260、エンジンハウジング部材のガイドスロット225、及びスカート部材の歯のアレイ125が相互作用する場合は、用量ボタン110が、トリガーばね275の付勢力に抗して遠位に移動すると、これは続いて、トリガー制御部材260を介して、用量ボタンの第2の戻りばねとしての役割も果たす。これは、スケールドラムがその初期ゼロ位置に戻る際に、停止した制御部材が解除されて、近位に移動する。これにより、トリガー部材が近位に移動する。また、これにより、用量終了スイッチが作動する。同時に、トリガーアーム272の近位端部が、(スイッチを挟んで)ハウジング部材に強制的に係合すると、用量終了を知らせる「クリック」が発生する。このトリガー配列は、EP2016/065807により詳細に記載されている。
【0062】
図5A及び
図5Bに示すようなカートリッジホルダー及び駆動アセンブリ300は、カートリッジホルダーサブアセンブリ及び駆動サブアセンブリ400を備える。これらは、遠位ハウジング部材470を介して構造的に統合されており、両アセンブリのための「プラットフォーム」としての役割を果たす。カートリッジホルダーは、カートリッジを受容して保持するよう構成されている。カートリッジホルダーは、カートリッジが、遠位開口を通して近位方向に挿入されて受容され得る受容状態と、挿入されたカートリッジが作動位置に保持される保持状態と、の間を作動可能である。これにより、前部に装着されるカートリッジホルダーアセンブリが提供される。カートリッジが挿入されて、カートリッジホルダーが閉鎖されると、ドライバサブアセンブリの構成要素は、解除された伝達部材の回転運動を、ピストンロッドの、遠位方向への軸方向の運動に変換する役割を果たす。カートリッジホルダーが開放されると、(組み立てられたペン内にて)駆動サブアセンブリもまた解除され、ピストンロッドは、近位位置に戻ることができる。
【0063】
駆動サブアセンブリは、2分割の管状駆動部材420との第1の螺合及び管状ナット部材430との第2の螺合における、2重スレッド付きピストンロッド410を備える。ドライバサブアセンブリは、管状クラッチ部材440と、駆動部材上に螺合して配置された内容物終了部材450と、リング形状のブレーキ部材460と、上記の遠位ハウジング部材470と、を更に備える。
【0064】
駆動部材420は機能的に単一の部材である。しかし、ここに示す実施形態において、成形及び載置の目的のために、スナップ接続手段などを介して互いに固定的に接続された主管状部材420と、遠位の、より短い外部管状部材421と、を備える。(組み合わされた)駆動部材は、内容物終了部材450上の対応する内部スレッド452に係合するよう構成されている外部スレッド部422と、ピストンロッド上の対応する「駆動スレッド」に係合するよう構成されている内部スレッド423と、を備え、更に遠位部上に、クラッチ部材440上の対応する内部スプライン445に摺動可能に係合するよう構成されている、外部スプライン425のアレイを備える。遠位端部は、駆動部材を、ナット部材430(以下を参照)の近位フランジ436に接続可能にする周(スナップ)接続手段426を更に備える。
【0065】
管状クラッチ部材440は、駆動部材420及び421上の対応する外部スプライン425に摺動可能に係合するよう構成されている近位内部スプラインアレイ445と、伝達部材210及び211上の対応する内部スプライン214及びクラッチロック部材250上の内部スプライン254に摺動可能に係合するよう構成されている近位外部スプラインアレイ444と、を有する管状部を備える。クラッチ部材440は、ブレーキ要素460上のガイド突起461のための、一対の対向するガイド溝441を有する遠位面を有する遠位周フランジを更に備える。フランジの周囲には、遠位ハウジング部材470上のラチェット歯の対応する周アレイに係合するよう構成されている自由端にラチェット歯443をそれぞれが有する、一対の、対向して周囲に伸長するフレキシブルラチェットアーム442が提供されている。これにより、投薬の終了時にクリック音を発生させるワンウェイラチェット機構が提供される。
【0066】
管状の内容物終了部材450は、駆動部材410上の外部スレッド部422に係合するよう構成されている内部スレッド452と、伝達部材210上の内部駆動スロット216Eに係合するよう構成されている、一対の対向する、長手方向の駆動フランジ456と、を備える。
【0067】
リング形状のブレーキ要素460は、クラッチ部材440内のガイド溝441に摺動可能に係合するよう構成されている、近位に対向する面をそれぞれが有する、一対の、対向して横方向に伸長するガイド突起461と、遠位ハウジング部材470の内面上に配置されている、周方向にギザギザのブレーキ面に係合するよう構成されている、横方向に対向する尖った歯構造442と、を有する。これにより、クラッチ部材が遠位ハウジング部材に対して回転した際に、ブレーキ要素がガイド溝内を往復移動する。これにより、制動効果が提供される。そのようなブレーキ配列が、WO2015/055642により詳細に記載されている。
【0068】
遠位ハウジング部材470は、ナット部材430を受容してこれを軸方向にガイドするための中央開口471を有する内部遠位フランジ部を有する管状部を備える。内部管状面は、クラッチ部材上のラチェット歯443に係合するよう構成されているラチェット歯473の周アレイと、ブレーキ部材上の歯構造462に係合するよう構成されている、周方向にギザギザのブレーキ面472と、を備える。以下により詳細に説明するように、遠位ハウジング部材は、カートリッジホルダーアセンブリの対応する構造と共動するよう構成されている、外部管状面上の多くの制御構造を更に備える。
【0069】
管状ナット部材430は、遠位カップ形状部と、縮径近位管状部435と、を備える。管状部は、ピストンロッド410上の対応する推進スレッド411に係合するよう構成されている内部「推進スレッド」431を備える。管状部435はその外面上に、遠位ハウジング部材の中央開口471内に軸方向に受容されてガイドされるよう構成されている、一対の対向する長手方向のフランジ432と、ナット部材が、遠位ハウジング部材470との係合から外れて遠位に移動できることを防ぐ、多くの停止突起433と、これらの2つの部材を互いに対して回転可能にする、駆動部材上の周(スナップ)接続手段426に係合するよう構成されている周近位(スナップ)フランジ436と、を備える。カップ形状部の近位面は、カートリッジホルダーアセンブリ(以下を参照)のばね(又は、ばねアセンブリ)に係合するよう構成されている。カップ部の遠位周縁439は、装着されているカートリッジの後周縁に係合するよう構成されている。
【0070】
2重スレッド付きピストンロッド410は、駆動部材420上の駆動スレッド423に係合するよう構成されている第1の「駆動スレッド」413と、ナット部材430内の推進スレッド431に係合するよう構成されている第2の「推進スレッド」411と、を備える。これらの2つのスレッドは、ピストンロッドの長さに沿って互いに組み付けられている。駆動スレッドの目的は、駆動部材420の回転に従って、ピストンロッドを回転させることである。一方で、推進スレッドの目的は、(投薬の終了時に)固定されているナット部材430を通してピストンロッドを軸方向に移動させることである。投薬の終了時に、ドライバにより回転されるピストンロッドを有する多くの従来の薬剤送達装置において、「駆動スレッド」は、1つ又はそれ以上の、軸方向に配向された溝の形態である。これは、ドライバとピストンロッドが1:1の割合で共に回転することを提供する。駆動スレッドに傾斜を与えることにより、2:1などのギヤリングが提供される。これは、ドライバが2回転する間に、ピストンロッドが1回転することを意味する。遠位端部にて、ピストンロッドは、例えばボールソケットスナップカップリングを提供するような、ピストンワッシャ419のための接続構造415を備える。
【0071】
組み立てられて作動状態にあると、駆動サブアセンブリは、クラッチ部材440を介して駆動部材420を回転させる伝達部材210及び211に係合する。これにより、ピストンロッド410が続いて、ナット部材430を通って遠位方向に軸方向に移動する。
【0072】
カートリッジホルダーサブアセンブリ300は、一般的な管状カートリッジホルダー320を受容するよう構成されている、ユーザーが操作する一般的な管状作動スリーブ310と、管状ベース部材330と、ばねアセンブリ340と、上記の遠位ハウジング部材470と、を備える。カートリッジホルダーは、以下により詳細に説明するような、カートリッジホルダーアセンブリのための接続手段としての役割を果たす、多くの、遠位に対向する尖った突起を有する周フランジを有する針ハブマウントを備える、一般的に円筒形状の薬剤充填型カートリッジ20(
図6Aを参照)を、受容して保持するよう構成されている。ここに示す種類のハブマウントが、US5,693,027に記載されている。
【0073】
カートリッジホルダー320は、リング部323から遠位に伸長する、一対の対向するフレキシブルアーム321を備える。各アームは、周方向に間隔を空けて、カートリッジ上の上記の遠位に対向する尖った突起に係合する、複数の、近位に対向する把持歯324を有する遠位把持部又は「顎」325を備える。顎の間には、カートリッジホルダーアセンブリが受容状態にある際に、カートリッジを受容するよう構成されている遠位開口が形成されている。2つの対向する楕円形の開口(又はウィンドウ)322は、各アームに1つ、カートリッジホルダーに形成されている。各ウィンドウは、管状作動スリーブに形成された、対応する楕円形のウィンドウ312と整列している。これらの二組のウィンドウは、回転配列にて共に移動する。各把持部325は、スリーブ部材310の対応する、曲面状の遠位周縁317に係合するよう構成されている、外部の、近位に対向する傾斜曲面327と、作動スリーブ310の内面上に配置された、一対の、対応して傾斜する、近位に対向する作動面316に係合するよう構成されている、一対の傾斜した、遠位に対向する作動面326と、を備える。カートリッジホルダーは、リング部323から近位に伸長する、一対の対向する、周方向に曲がった駆動アーム328を更に備える。各アームは、遠位ハウジング部材470上の対応する制御トラック479に係合するよう構成されている内部把持フランジ329を有する、傾斜した近位縁を備える。カートリッジホルダーが作動スリーブ310に対して全体として90度のオフセットを有するように、駆動アーム328が、残りのカートリッジホルダーに対して90度のオフセットを有するという点において、
図5Aにおいて、カートリッジホルダー320は描画誤差を有することに留意されたい。
図5Bでは、カートリッジホルダー320は正しく描かれている。
【0074】
管状作動スリーブ310は、ユーザーが、作動スリーブを把持して回転させることができる、遠位周把持部311を備える。把持部は、上記の周縁317及び作動面316と、ユーザーが、載置されているカートリッジのくびれ部を観察することができる、一対の対向する開口と、を備える。2つの対向するウィンドウ322は、作動スリーブに形成されている。各ウィンドウは、カートリッジホルダー310に形成された、対応するウィンドウ312に整列する。作動スリーブの近位部は、ベース部材(以下を参照)のためのスナップ接続手段としての役割を果たす、一対の対向する開口317と、カートリッジホルダーの駆動アーム328を、摺動可能であるものの、回転不可能に受容するよう構成されている、一対の対向するガイドスロット318と、を備える。これにより、2つの部材が共に回転する。
【0075】
カップ状に形成されたベース部材330は、ナット部材430及びばねアセンブリ340を収容するよう構成されている管状遠位部を備える。管状部はその外面上に、作動スリーブ内の開口317に固定的にスナップ係合するよう構成されている、一対の対向する突起337を備える。ベース部材は、ナット部材430の近位管状部435を受容するよう構成されている中央開口335を有する近位周内部フランジを備える。ベース部材はその近位周辺部上に、遠位ハウジング部材470内の対応する切り欠き476に回転可能且つ摺動可能に係合するよう構成されている多くのロッキング突起336を更に備える。これにより、回転可能ロックが提供される。ここに示す実施形態において、4つの突起がそれぞれ、作動スリーブの完全回転動作に対応する90度のオフセットを有する。ベース部材330及び遠位ハウジング部材470が、ばねアセンブリ340によって係合するよう付勢されているため、これらの突起は回転中に、これらの突起が係合するように移動する際に、及び、係合から外れるように移動する際に、回転可能ロックとしての役割を果たす。
【0076】
ばねアセンブリ340は、多くの積み重ねられたディスクばねを備えるが、従来のらせんばね又は波型ばねの形態でもあり得る。ばねアセンブリは、ベース部材330のカップ部内に配置され、ナット部材430のカップ部上に、遠位に向けられた付勢力を与える。
【0077】
遠位ハウジング部材470は、カートリッジホルダーの駆動アーム328上の把持フランジ329に係合するよう構成されている、外装面上の、対向する一対の、部分的ならせん状のガイドトラック479を備える。これにより、作動スリーブ310が開状態と閉状態との間を往復回転する際に、カートリッジホルダーが軸方向に往復移動可能となる。遠位ハウジング部材は、カートリッジホルダーの駆動アーム328及び/又は作動スリーブ310上の、対応する停止面に係合するよう構成されている回転停止面478を更に備える。
【0078】
組み立てられた状態において、ユーザーが作動スリーブをその2つの回転ストップの間で回転させると、把持顎325は出たり入ったりする。軸方向の運動は、上述するようなガイドトラック479により制御される。より具体的には、作動面326が遠位に移動してスリーブ作動面316と摺動接触すると、傾斜した作動面316は、把持顎を、それらの開位置へ、強制的に外側へ移動させる。これに応じて、アームが近位に移動すると、外曲面327は、作動スリーブ上の作動縁317に係合し、これにより、それらの把持位置へ、強制的に内側へ移動する。しかし、新品のカートリッジが挿入されると、ピストンロッドを近位に移動させる必要がある。この目的のために、統合されたカートリッジホルダー及び駆動アセンブリは、駆動サブアセンブリが、ピストンロッドが近位に移動可能な装着状態と、ピストンロッドは近位に移動できないものの、遠位への回転のみができる投薬状態と、の間を作動できるようにする。
【0079】
より具体的には、カートリッジホルダーを開くと、カートリッジは、近位に向けられた力をナット部材の縁439上に与えない。ナット部材430と、したがって、これに取り付けられた駆動部材420及び421と、が、ばねアセンブリ340によって遠位に移動する。これにより、駆動部材の外部スプライン425の、クラッチ部材440上の内部スプライン445との係合が解除される。これにより、駆動部材410及び421と、したがって、ピストンロッド410と、が回転可能となる。これにより、ピストンロッドが近位に移動する。同時に、完全に充填されたカートリッジが装着されると、回転する駆動部材は、内容物終了部材450が、その初期最近位位置などに、近位に移動できるようにする。カートリッジの遠位縁がナット部材430に係合すると、ナット部材及びピストンロッドは共に近位に移動する。これは本質的に、ピストンロッドとカートリッジのピストンとの間の空隙を排除する。新品のカートリッジの挿入中に、ばねアセンブリ340からの抵抗をユーザーが感じ始めると、多くのユーザーは作動スリーブを回転してカートリッジホルダーを閉じる。これにより、把持アーム部325が作動して、カートリッジをその近位作動位置に移動させる。同時に、駆動部材の外部スプライン425は、クラッチ部材440上の内部スプライン445に再度係合する。これにより、駆動部材420及び421、そしてしたがって、ピストンロッドが回転可能にロックされる。この状態において、駆動部材の回転は、回転可能にロックされたクラッチロック部材250により、クラッチ部材440を介して防止される。
【0080】
液状の薬剤製剤が凍結して膨張し得るような低温にて、薬剤カートリッジが載置されている薬剤送達装置が保存されている場合、この膨張によって、ナット部材430及び把持アーム部325のそれぞれの上に、したがってカートリッジホルダー320全体に、反対に向けられた力が加わる。ガイドトラック479とのらせん係合により、カートリッジホルダー上の遠位に向けられた力は回転力をもたらす。これは所定の閾値に対して、回転可能ロック336及び476のロッキング力に打ち勝つ回転力となる。これは更には、カートリッジホルダーを「弾けるように開く」こととなり、ペン機構を機械的損傷から保護する。
【0081】
図4A及び
図4Bに示すような外部ハウジングアセンブリ500は、本質的に管状のハウジング部材510と、透明ウィンドウ部材520と、を備える。2つの対向する楕円形のウィンドウ512は、遠位部に形成されている。管状作動スリーブに形成された、対応する楕円形のウィンドウ312は、作動スリーブがその閉位置にある際に、それらと回転可能に整列する。ハウジング部材510は、ウィンドウ部材520を受容するよう構成されているウィンドウ開口519を更に備える。エンジンハウジング部材220内の、対応するウィンドウ開口229は、本装置が組み立てられた際に、それらと軸方向に回転可能に整列する。外部ウィンドウ開口519、したがってウィンドウ部材520は、内部ウィンドウ開口229より大きい。外部ハウジングは、金属又はプラスチックなどから形成されてよく、載置されると、例えば、遠位ハウジング部材470上の制御トラック479内に係合する駆動アームの把持フランジ329を保持することにより、そして、カートリッジホルダー部と内部ハウジングとの間の、それらの間の回転適合に応じての曲げを防止することにより、本装置を保護して安定させることの両方の役割を果たす。ここに示す実施形態において、遠位把持部311及び透明ウィンドウ部材520は、組み立てられた状態において、ハウジング部材の外面と本質的に同一平面となるよう設計されている。
【0082】
図3A及び
図3Bに示すようなキャップアセンブリ600は、管状のキャップハウジング部材610と、クリップ部材620と、内部キャップ部材630と、を備える。キャップハウジング部材の内径は、外部ハウジング部材500をぴったりと受容するような寸法となっている。キャップハウジング部材610はその遠位端部にて、クリップベース部を受容するよう構成されている切り欠き611と、スカート部材630に係合するよう構成されている(スナップ)開口612と、を備える。クリップ部材620は、閉鎖遠位端部を有する、一般的に管状のスカート部622を備える。スカート部は、フレキシブルクリップ部623が近位方向に伸長するクリップベース621と、内部キャップ部材630上の、対応する(スナップ)接続構造に係合するよう構成されている多くの(スナップ)構造624と、を備える。内部キャップ部材630は、キャップが取り付けられると、遠位把持部311に解除可能に係合するよう構成されている近位把持縁631を有する、近位に伸長するフレキシブルアーム632を有する、一般的な管状構成を有する。フレキシブルアームはまた、キャップハウジング部材の開口612にスナップ係合するよう構成されている。内部キャップ部材は、クリップ部材上の、対応する(スナップ)構造624に係合するよう構成されている、多くの(スナップ)構造634を更に備える。組み立て中には、内部キャップ部材630は、キャップハウジング部材610内に挿入されて、スナップ配置される。クリップ部材620は、内部キャップ部材630内に挿入されてスナップ係合する。
【0083】
最終組み立てでは、カートリッジホルダー及び駆動アセンブリ300をまず、エンジンアセンブリ200に取り付ける。より具体的には、内容物終了部材450が載置された、近位に突き出すピストンロッド410及び駆動部材420を、伝達部材内に挿入する。内容物終了部材の駆動フランジ456はこれにより、伝達部材210上の内部駆動スロット216Eに係合する。この作業中には、ピストンロッド及び内容物終了部材が、本装置の初期ゼロ状態に応じて軸方向に確実に配置されているようにする。エンジンハウジング部材220及び遠位ハウジング部材470が、軸方向の公差を補正することができる溶接などによって互いに接続されていると、これらの2つのアセンブリは互いに保持される。次に、外部ハウジング部材510を、ハウジングのウィンドウ開口511が、エンジンハウジング部材220のウィンドウ開口229に整列するように、エンジンハウジング部材上に近位端部から滑り込ませる。この後に、透明ウィンドウ部材520を、外部ハウジングのウィンドウ開口内に載置し、ウィンドウ開口229を取り囲むエンジンハウジングの外面に係合させる。これに続いて、ウィンドウ部材520を、溶接又は接着剤などにより、エンジンハウジング部材220に固定する。これにより、外部ハウジング部材を、内部ハウジングに軸方向に回転可能に固定する。この時点において、伝達チューブ210の近位端部は、ハウジングの外にわずかに伸長する。最後に、用量設定及びロギングアセンブリ100を、本ペンの外部ハウジングの近位端部内に挿入し、キャリア部材のコネクタチューブ部153を、近位伝達チューブの接続手段217にスナップ係合させる。これにより、用量設定及びロギングアセンブリ100が、ペン装置の残りの部分に軸方向に回転可能に固定される。最終仕上げとして、キャップ600を載置する。
【0084】
上述するように組み立てた薬剤送達装置の断面図を、
図6A及び
図6Bに示す。個別の構成要素及びそれらの関係を良好に示すために、
図7A及び
図7Bは、本装置の近位部を断面図にて示す。
【0085】
用量を設定する際の作業において、その近位位置にある用量設定部材110を、時計方向に回転する。これにより、伝達チューブ上に回転不可能に載置されているキャリア部材150が、用量設定及びロギングアセンブリ100の全体を、伝達チューブと共に回転する。以降、駆動ばね240が引っ張られて、内容物終了部材450が、設定用量の分量に対応して、駆動部材420上を遠位に移動する。駆動リフト制御部材170の駆動面が、ラチェット部材160上の、対応する駆動面に係合すると、後者は、所望する回転位置まで用量設定部材110と共に強制的に回転する。これにより、ラチェット部材のラチェット歯162が、エンジンハウジングのラチェット歯222を通過する。この間、傾斜したラチェット歯と、ラチェットばね185と、解除部材190とのスプライン接続161及び191と、により、ラチェット部材160が往復移動する。用量は、1つのラチェット歯に対応するインクリメントにて設定できる。これは通常、例えば、所定のインスリン送達装置について、インスリン製剤の1単位(IU)に対応する。最大用量が設定されると、すなわち、スケールドラムの最大ストップが、エンジンハウジングの最大ストップに係合すると、又は、内容物終了部材450がその遠位ストップに到達すると、用量ボタンの更なる回転により、駆動リフト制御部材170上の駆動面が、制御部材170及びラチェット部材160のそれぞれの上の、共動する駆動面のわずかな傾斜により、乗り上げることとなる。後者は、ラチェットばねの付勢に抗して往復移動する。用量設定中に、モードスイッチアーム180は、用量設定モードに応じて、モードスイッチアレイ143上に位置する。
【0086】
設定用量を減らす際には、用量設定部材を反時計方向に回転させる。これにより、ラチェット部材160上の対応するリフト面に係合する、駆動リフト制御部材170上の傾斜したリフト面が、ラチェット部材のラチェット歯162の、ハウジング部材のラチェット歯222との係合が外れるまで、ラチェットばねに抗してラチェット部材160を近位に移動させる。この時点では、引っ張られている駆動ばね240からの力により、伝達部材210が反時計方向に回転する。これにより、ラチェット部材160もまた回転する。これにより、傾斜したリフト面の互いの係合が外れることとなる。この結果、ラチェット部材160がラチェットばねにより遠位に移動することができる。これにより、ラチェット歯は再度係合する。これは、1つ分のインクリメントが減った、以前の設定用量に対応する。ユーザーが用量設定部材110を反時計方向に更に回転させると、設定用量は、ラチェット部材の往復運動に対する1つ分のインクリメント分、更に減る。同時に、内容物終了部材450及びスケールドラム230もまた、反時計方向に回転する。表示ウィンドウ229に示す用量分量も、これに応じて減少する。ラチェット機構はその設計により、リセット方向への過負荷に対する内蔵保護を有する。ユーザーがダイヤルをゼロ未満にしようとすると、ダイヤルに接続されたリフティング歯により、ラチェットが軸方向に偏向する、そして、ラチェットの、ハウジング内のワンウェイ歯との係合が外れる。しかし、ラチェットをリセット方向に移動させる駆動ばね力がないため、リフティング歯が次の係合に移動して、ラチェットが初期の軸方向の位置に戻るまで、ラチェットは更に軸方向にのみ移動する。
【0087】
薬剤の設定用量を吐出するには、一体型用量設定及び解除ボタン部材110を、ラチェットばね185の付勢力に抗して、最近位位置から最遠位位置まで遠位に移動させる。この間、上記構成要素の間の一連の係合及び係合の解除が行われる。上述するように、用量ボタンアセンブリ100は、伝達部材210及び211に軸方向に接続される。
図8A及び
図8B並びに
図9A及び
図9Bは、用量吐出モード及び用量設定モードのそれぞれの遠位接続配列を示す。
【0088】
第1に、用量ボタンのスカートのスプライン128が、エンジンハウジングのスプライン228に係合して、設定用量の更なる回転調整を防止する。同時に、スカート部材の歯のアレイ125が、トリガー部材の制御アームの歯265に係合して、トリガー制御部材を作動させる。
【0089】
第2に、伝達部材210及び211の遠位端部にある内部スプライン214が、クラッチ部材の外部スプライン444に係合して、2つの部材を回転可能にロックする。同時に、伝達部材の遠位フランジ215に軸方向に接続されている、クラッチロック部材250の内部スプライン254が、クラッチ部材の外部スプライン444との係合から外れる。これにより、クラッチロック部材250を介して、エンジンハウジングと回転可能にロックされているクラッチ部材440が解放される。クラッチ部材440とクラッチロック部材250との間のスプライン係合により、回転可能にロックされた状態のクラッチ部材が、伝達部材210及び211との容易な係合のために提供されている「インクリメント位置」に確実に停止して保持される。この作動状態にて、スイッチアレイ143が、固定されているスイッチアーム180により制御されて、中間モードに移動する。
図8A及び
図8B並びに
図9A及び
図9Bは、用量吐出モード及び用量設定モードのそれぞれの遠位接続配列を示す。
【0090】
第3に、用量ボタン及び伝達チューブに軸方向に接続されている、解除部材190上の外部スプライン191のアレイが、ラチェット部材のスプライン161との係合から外れる。これにより、引っ張られている駆動ばね240が、伝達チューブを回転させることができる。これは、クラッチ部材440を介して、駆動部材420及び421を回転させる。これはまた、スレッド駆動係合423及び413を介して、ピストンロッド410を回転させ、以降、ナット部材430とのスレッド推進係合411及び431を介して、軸方向に遠位に移動される。同時に、スケールドラム230は、その初期ゼロ位置に向けて後ろ向きに回転する。吐出される薬剤の現在残っている量が、ウィンドウ229に表示される。解除部材と伝達部材との間の係合の解除中において、この係合が完全に外れる前に、スイッチアレイ143は、固定されているスイッチアーム180により制御されて移動し、用量吐出モードとなる。
【0091】
クラッチ部材440の回転中、ブレーキ部材460は、遠位ハウジング470とのその係合により、水平面内を往復移動する。通常の作動時には、少量のエネルギのみが消失する。しかし、ピストンロッドがカートリッジのピストンに係合することなく、設定した吐出機構が解放されると、ピストンロッドが抵抗なく遠位に移動するに従って、より多くのエネルギが消失し得る。これにより、機構の損傷を防止するために必要な制動量が提供される。
【0092】
更に、伝達部材210の回転中、これに固定的に取り付けられているキャリア部材150が回転する。これにより、PCBセンサ部142に対して接触ディスク155が回転する。これにより、電子部品が、吐出イベント中の回転量、及び、これに対応する、吐出された用量の分量を判定できる。
【0093】
吐出イベントの終了時には、スケールドラムの停止面234が、エンジンハウジングの停止面に係合する。これによりまた、伝達部材の回転も停止する。これにより、投薬の吐出が終了する。同時に、スケールドラムが、トリガー制御部材260を回転させて、エンジンハウジングとの、その停止した係合から外れる。これにより、トリガーばねが、トリガー部材のアーム272を近位に移動させることができる。これにより、用量終了スイッチが作動する。同時に、トリガーアーム272の近位端部が、(スイッチを挟んで)ハウジング部材130に強制的に係合すると、用量終了を知らせる「クリック」が発生する。このようにしてロギング電子部品は、所定の設定用量が完全に吐出されたことを判定できる。これは、ユーザーが、投薬吐出終了イベントを中止した状況とは対照的である。
【0094】
用量ボタン110への力の印加をユーザーがやめると、上記のクラッチ及びスイッチ構成要素の係合及び係合の解除が逆の順序で行われる。吐出された用量が判定されて、スイッチアレイ143が用量設定モードに戻ると、その吐出された用量が数秒間、ディスプレイ149に表示される。用量が設定されることなく用量ボタンが操作され、これに続いて解除されると、検出した運動を使用してディスプレイが制御され、最後に吐出された用量の分量及びそれからの経過時間などが表示され得る。
【0095】
図4Aを参照して上述するようなねじり駆動ばね240に戻り、代替的な構成を説明する。より具体的には、
図10A及び
図10Bは、伝達部材への取り付けのための遠位フック部1241と、エンジンハウジング部材への取り付けのための近位フック部と、を有する、らせん状の、部分的に開放して巻かれたねじりばねの形態の駆動ばね1240を示す。ばねは、互いに接触して巻かれた、すなわち密接構成のコイルを有する近位部及び遠位部と、個別のコイルの間に軸方向の距離を有して巻かれた開放構成をばねが有する中央部1243と、を備える。
図10Bの断面図では、ばねワイヤの矩形断面1243を見ることができる。ここに示す実施形態において、ワイヤの高さ寸法は、その厚さ寸法より大きい。この配列により、閉鎖部が、軸方向にコンパクトなばね設計を提供する。一方で、開放部が、載置中及び作動中に、ばねを軸方向に圧縮可能にする、軸方向への柔軟性を提供する。
【0096】
図3Aを参照して上述するように、コイルワイヤの矩形断面は、減少する傾斜を有する非線形のばね特性を有するねじりばねを提供するために使用されることがある。そのようなばねの特性を、
図11~
図14を参照してより詳細に説明する。
【0097】
図11A~
図11Cは、矩形断面を有するワイヤから巻いたらせんコイルの、コンピュータによる有限要素解析に対するスクリーンショットを示す。より具体的には、各図の右側のグラフ部は、垂直軸に、時間に応じてねじられ、続いて開放されるばねにより提供されるトルクを示す。動的効果からのシミュレーションにおけるノイズを最小化するために、時間単位当たりの角度変形は一定ではないが、シミュレーションの開始及び終了のそれぞれにて加速/減速している。
【0098】
グラフ部は、これらの3つの図では同一である。各図の左側は、ばねを引っ張ることでねじれて傾くシミュレーションである。
図11Aは、トルクが印可されない初期条件でのばねを示す。
図11Bは、9Nmmのトルクが印可されることでばねがねじれて、傾き始める様子を示す。これは、グラフ上に「肩部」を持たせる。
図11Cは、10Nmmのトルクが印可され、ばねのコイルがほぼ不均一に傾く様子を示す。グラフ上の対応するポイントを各グラフに示す。ワイヤがばねの長さに沿って、初期的に同じ方向に確実に傾くようにするために、ばねは、「予め傾斜した」ワイヤを全体的又は部分的に有してよい。これにより、ワイヤがこれに続いて所望する方向に(更に)確実に傾くようにする。更に、予めの傾斜は、初期傾斜を促進し、これにしたがって、「丸まった」肩部を示すようにもなり得る。予めの傾斜は、矩形ワイヤをらせんばねに形成する際に、加工機により導入され得る。
【0099】
上記の知見に基づいて、
図12は、ばねのねじり回転数に応じて生成されたトルクを理想図にて示す。巻き数、直径、及び断面寸法などのばねパラメータは、
図2~
図10を参照して上述する種類の薬剤送達装置での適用に応じて選択されている。ここに示すように、7回転~10.3回転の間では、モデルのばねは、7Nmm~7.5Nmmのほぼ一定のトルクを生み出す。7回転は、薬剤送達装置用の初期ゼロ条件における、予め引っ張られたばねに相当する。10.3回転は、100IU/mlのインスリン製剤に対する、80単位のインスリンなどの、最大設定用量にほぼ相当する。より具体的には、ばねの巻き数が3回転のポイントAまでは、ばね特性は本質的に線形である。ばねワイヤの断面(又はワイヤ面)は依然として本質的に、
図11Aに対応するばねの中心軸に垂直である。7回転でのポイントBでは、ばねワイヤの断面が傾き始め、したがって、線形トルク特性の傾向が減少し始める。10.3回転でのポイントCでは、ばねワイヤの断面が
図11Cに示すように更に傾く。ここでのトルク特性は、ほぼ一定である。
【0100】
上記のシミュレーションが基づいている式に進むと、ばね特性(角度での角変化に応じたトルク)は次のように表現され得る:
(1) k=(π×E)/(180×n×D)
ここで、E=ヤング率、n=無負荷条件でのばねコイル数、D=無負荷条件でのばねコイル径、これらはすべて一定である、及び、I=第2の慣性モーメント、これは変化する。ワイヤの断面が傾斜しているため、Iはばね特性における変数である。第2の慣性モーメントは、次のように表現することができる:
(2) I=(t×h)/12×(h
2×cos(α)
2+t
2×(sin(α)
2);
t、h、及びαは、
図13に示す通り。
図13に示すように、αは、初期的に画定されたワイヤ面とばね基準面との間の傾斜角に相当する。
【0101】
t=0.15mmであり、h=0.7mmの場合、第2の慣性モーメントIは、αに応じて
図14に示す通りとなる。ここに示すように、たとえ角度が小さくても、例示的な矩形ワイヤに対する第2の慣性モーメントIは大きく変化する。これにより、上記の種類の薬剤送達装置内に配置されたねじり駆動ばねに対して指定した作動範囲において、上記のほぼ一定のトルク特性がもたらされる。
【0102】
矩形ワイヤを備えるねじりばねの様々な実施形態の上記説明では、ばねのトルク特性に影響を与える多くのパラメータについて述べている。ここに示すように、所定のねじりばねについて、非常に多くの設計オプションが可能である。例えば、ばねは、全体的又は部分的に矩形ワイヤから製造されてよい。ワイヤは、予め引っ張られた状態から作動してよい。ワイヤは、ワイヤの少なくとも一部が傾斜している(すなわち、引っ張られて、予め傾斜している)、予め引っ張られた状態から作動してよい。ワイヤは、予め傾斜している(すなわち、引っ張られていなくとも、予め傾斜している)ワイヤの少なくとも一部を有して巻かれていてよい。ワイヤは、1つ又はそれ以上の開放区間を有して巻かれていてよい。ワイヤは、一定でない直径を有して巻かれていてよい。ワイヤは、1.5超、2超、又は3超などの、所定の縦横比を有してよい。ワイヤは、引っ張る最中にばねの直径が減少することに従って、少なくとも部分的に内部支持面に係合するよう配置されてよい。これらの設計パラメータのすべては、引っ張られている所定の作動範囲内において、所定の装置のための所望するトルク特性を有するねじりばねを実現するために利用されてよい。
【0103】
実施形態の上記説明では、様々な構成要素について説明した機能を提供する様々な構造及び手段が、本発明の概念が当業者に明白な程度に説明された。様々な構成要素についての詳細構造及び仕様は、本明細書において提示した流れに沿って当業者により行われる通常の設計手順の対象とみなされる。