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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】疾患の診断用組成物
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220926BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220926BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220926BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20220926BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220926BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALN20220926BHJP
   C12Q 1/6804 20180101ALN20220926BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALN20220926BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20220926BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220926BHJP
【FI】
G01N33/53 P
G01N33/574 A
G01N33/50 Z
C07K16/24
C12N15/09 Z
C12Q1/6883 Z
C12Q1/6804 Z
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020194896
(22)【出願日】2020-11-25
(62)【分割の表示】P 2019548844の分割
【原出願日】2017-11-24
(65)【公開番号】P2021043216
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2016-0157502
(32)【優先日】2016-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519187403
【氏名又は名称】ヒュベット バイオ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HUVET BIO, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンキ
(72)【発明者】
【氏名】ハム スンジュ
(72)【発明者】
【氏名】ユク チョンイン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョンクン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0139129(US,A1)
【文献】国際公開第2015/067969(WO,A1)
【文献】特開2014-020930(JP,A)
【文献】特表2012-533076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0271621(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0029960(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0003985(US,A1)
【文献】特表2015-502176(JP,A)
【文献】TORRES Carolina et al.,Prognosis Relevance of Serum Cytokines in Pancreatic Cancer,BioMed Research International,2015年,Vol.2015,Article ID 518284
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/574
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的とする個体から分離された血液由来の単核球に対して、インターロイキン29(Interleukin 29)のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤を含む、膵臓癌の診断用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、インターロイキン10受容体、インターロイキン22及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤をさらに含む、請求項1に記載の膵臓癌の診断用組成物。
【請求項3】
前記タンパク質の発現水準を測定する製剤は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide nucleic acid)及びアプタマー(aptamer)からなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の膵臓癌の診断用組成物。
【請求項4】
前記mRNAの発現水準を測定する製剤は、前記mRNAに特異的に結合するプライマー、プローブ及びアンチセンスヌクレオチドからなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の膵臓癌の診断用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の診断用組成物を含む、膵臓癌の診断用キット。
【請求項6】
前記キットは、RT-PCRキット、DNAチップキット、ELISAキット、プロテインチップキット、ラピッド(rapid)キット又はMRM(Multiple reaction monitoring)キットである、請求項5に記載の膵臓癌の診断用キット。
【請求項7】
目的とする個体から分離された血液由来の単核球に対して、インターロイキン29(Interleukin 29)のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階を含む、膵臓癌の診断のための情報提供方法。
【請求項8】
前記血液由来の単核球からインターロイキン10受容体、インターロイキン22及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階をさらに含む、請求項7に記載の情報提供方法。
【請求項9】
前記目的とする個体から分離された血液由来の単核球で測定された前記タンパク質又は前記mRNAの発現水準が正常対照群での発現水準より高い場合、膵臓癌の発病可能性が高いと判定する、請求項7に記載の情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多様な疾患を診断することができる組成物に係り、例えば膵臓癌などを診断することができる組成物、これを含む診断用キット及び前記組成物を用いて診断のための情報を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人の主要疾患のうち、癌の治療方法と診断方法に関する研究は発病頻度の高い肺癌、肝臓癌、胃癌などを中心に比較的活発に進んでいる。しかし、発病頻度の低い食道癌、大膓癌、膵臓癌などに対する研究は相対的に低調な実情である。特に、膵臓癌は初期にはあまり症状を感じないが、既に全身に転移した後に痛症と体重減少などの症状が現れることが一般的であってもっと治癒率が低い方であるので、定期的な診断が非常に重要である。臨床症状は大部分が徐々に発病し、食欲減退、虚弱になりやすく、体重減少は一番有り勝ちな症状である。膵臓癌は5年生存率が1~4%、中央生存期間5ヶ月に至る致命的な癌であり、人体の癌の中で最も不良な予後を示している。また、80~90%の患者で、診断時に完治を期待する根治的切除が不可能な状態で発見されるから予後が不良であり、治療は主に坑癌療法に依存しているので、どの人体癌よりも早期診断法の開発が切実に要望されている。
【0003】
現在まで膵臓癌に効果があると知られた5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、タルセバ(tarceva)を含めた数種の抗癌剤の治療効果は極めて低調であり、坑癌治療に対する反応率は15%前後に過ぎない。このような事実は膵臓癌患者の予後を向上させるためにはより効果的な早期診断法及び治療法の開発が切実に要求されていることを示唆する。
【0004】
膵臓癌の診断は、胃、十二指膓のX線造影検査、皮膚及び肝を通しての胆道撮影と逆行性内視鏡胆道撮影術などによって施行されて来たが、最近超音波撮影及びコンピューター断層撮映が一番多く使われている。これらの方法によって疾病の病変が発見される場合、より精密な組職検査を行って比較的正確な検査結果を得ることもできるが、前記診断方法は正確度が落ちるか、患者に苦痛が伴うなど、その遂行方法が非常に不便であって被検者がこれを憚る実情である。よって、簡便で速かに膵臓癌有無を診断することができる検査方法の開発が要求されて来た。
【0005】
これに関連して、韓国特許第10-0819122号はマトリリン(matrilin)、トランスサイレチン(transthyretin)及びストラチフィン(stratifin)を膵臓癌マーカーとして用いた技術を開示しており、韓国特許出願公開第2012-0082372号はさまざまな膵臓癌マーカーを用いた技術を開示している。また、韓国特許出願公開第2009-0003308号は個体の血液試料でREG4タンパク質の発現量を検出して膵臓癌を診断する方法を開示しているし、韓国特許出願公開第2012-0009781号は個体の膵臓癌診断に必要な情報を提供するために個体から分離された癌組職でXIST RNAの発現量を測定する分析方法を、韓国特許出願公開第2007-0119250号は正常人間の膵臓組職と比較して人間膵臓癌組職で違って発現した新規遺伝子LBFL313ファミリーを開示しており、アメリカ特許出願公開第2011/0294136号はケラチン8タンパク質などのバイオマーカーを用いた膵臓癌診断方法を開示している。しかし、マーカーごとにその診断効率及び正確性に大きな差を示すので、効果がもっと優れたマーカーを発掘する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、インターロイキン10受容体(Interleukin 10 receptor、IL-1OR)、インターロイキン22受容体(Interleukin 22 receptor、IL-22R)、インターロイキン22(Interleukin 22、IL-22)、インターロイキン29(Interleukin 29、IL-29)又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1(Interferon lambda receptor 1 isoform1、IFNLR1 isoform1)のタンパク質、又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定して、膵臓疾患、自己免疫疾患、アレルギー、グレーブス病(Grave’s disease)、ハシモト病(Hashimoto’s thyroiditis)、自己免疫リンパ球増殖性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome、ALPS)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、カワサキ病(Kawasaki disease)又は乾癬(psoriasis)などの疾患、好ましくは膵臓癌を簡便で正確に診断することができる組成物を提供しようとする。
【0007】
本発明の他の目的は、インターロイキン10受容体(Interleukin 10 receptor、IL-1OR)、インターロイキン22受容体(Interleukin 22 receptor、IL-22R)、インターロイキン22(Interleukin 22、IL-22)、インターロイキン29(Interleukin 29、IL-29)又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1(Interferon lambda receptor 1isoform1、IFNLR1 isoform1)のタンパク質、又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定して、膵臓疾患、自己免疫疾患、アレルギー、グレーブス病(Grave’s disease)、ハシモト病(Hashimoto’s thyroiditis)、自己免疫リンパ球増殖性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome、ALPS)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、カワサキ病(Kawasaki disease)又は乾癬(psoriasis)などの疾患、好ましくは膵臓癌を簡便で正確に診断することができるキットを提供しようとする。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、インターロイキン10受容体(Interleukin 10 receptor、IL-1OR)、インターロイキン22受容体(Interleukin 22 receptor、IL-22R)、インターロイキン22(Interleukin 22、IL-22)、インターロイキン29(Interleukin 29、IL-29)又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1(Interferon lambda receptor 1isoform1、IFNLR1 isoform1)のタンパク質、又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定して、膵臓疾患、自己免疫疾患、アレルギー、グレーブス病(Grave’s disease)、ハシモト病(Hashimoto’s thyroiditis)、自己免疫リンパ球増殖性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome、ALPS)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、カワサキ病(Kawasaki disease)又は乾癬(psoriasis)などの疾患、好ましくは膵臓癌を診断するための情報を提供する方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
膵臓癌は初期にはあまり症状を感じないが、既に全身に転移した後に痛症と体重減少などの症状が現れることが一般的であってもっと治癒率が低い方であるので、定期的な診断が非常に重要である。臨床症状は大部分が徐々に発病し、食欲減退、虚弱になりやすく、体重減少は一番有り勝ちな症状である。膵臓癌は5年生存率が1~4%、中央生存期間5ヶ月に至る致命的な癌であり、人体の癌の中で最も不良な予後を示している。また、80~90%の患者で、診断時に完治を期待する根治的切除が不可能な状態で発見されるから予後が不良であり、治療は主に坑癌療法に依存しているので、どの人体癌よりも早期診断法の開発が切実に要望されている。
【0010】
故に、本発明の発明者は、膵臓疾患の中で特に膵臓癌の早期診断に有用なマーカーを開発するために鋭意努力した結果、膵臓癌患者から分離された血液来由単核球でインターロイキン10受容体(Interleukin 10 receptor、IL-1OR)、インターロイキン22受容体(Interleukin 22 receptor、IL-22R)、インターロイキン22(Interleukin 22、IL-22)、インターロイキン29(Interleukin 29、IL-29)又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1(Interferon lambda receptor 1isoform1、IFNLR1 isoform1)の発現が特異的に増加することを見つけて本発明を完成することになった。
【0011】
本発明の一具現例によれば、インターロイキン10受容体(Interleukin 10 receptor、IL-1OR)、インターロイキン22受容体(Interleukin 22 receptor、IL-22R)、インターロイキン22(Interleukin 22、IL-22)、インターロイキン29(Interleukin 29、IL-29)及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1(Interferon lambda receptor 1isoform1、IFNLR1 isoform1)からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤を含む疾患診断用組成物に関する。
【0012】
本発明の診断用組成物を用いて発病有無又は発病可能性を予測することができる疾患種類としては、膵臓疾患、自己免疫疾患、アレルギー、グレーブス病(Grave’s disease)、ハシモト病(Hashimoto’s thyroiditis)、自己免疫リンパ球増殖性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome、ALPS)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、カワサキ病(Kawasaki disease)及び乾癬(psoriasis)などであり得るが、これに制限されるものではない。
【0013】
特に、本発明は、前記診断用組成物を用いて膵臓疾患として、膵臓癌(pancreatic cancer)又は膵臓炎(pancreatitis)を診断することができ、より好ましくは膵臓癌を診断することができる。具体的に、本発明の診断用組成物は正常群と膵臓癌の患者群を区別して検出又は診断することができる。それだけでなく、他の種類の癌、例えば肺癌又は大膓癌などと区別して膵臓癌を選別的に検出又は診断することができる。
【0014】
本発明で、前記“膵臓癌(pancreatic cancer)”とは膵臓細胞で起源する癌を意味する。膵臓癌にはさまざまな種類があるが、膵管細胞で発生した膵管腺癌種が90%程度を占めているから、一般的に膵臓癌と言えば膵管腺癌種を意味する。その他に、嚢腫性癌(嚢腺癌)、内分泌腫瘍などがある。膵臓癌患者の中で約5~10%は遺伝素因を持っており、膵臓癌患者において膵臓癌の家族歴がある場合は約7.8%程度であり、一般人の膵臓癌発生率0.6%に比べて頻度が高い。膵臓癌は5年生存率が5%以下であって予後が非常に悪い癌である。その理由は、大部分癌が進んだ後に発見されるから、発見当時に手術切除が可能な場合が20%以内であり、肉眼で見るのに全く切除されたと言っても微細転移によって生存率の向上が小さく、抗癌剤及び放射線治療に対する反応が低いからである。よって、生存率を向上させることができる最も重要な方法は、症状がないか非特異的であるときに早期に見つけて手術することである。
【0015】
本発明で、前記“膵臓炎(pancreatitis)”とは膵臓(pancreas)で炎症が発生して生ずる疾病であり、急性膵臓炎(acute pancreatitis)及び晩成膵臓炎(chronic pancreatitis)がある。膵液(pancreatic juice)はアミラーゼ(amylase、炭水化物を加水分解する)、トリプシン(trypsin、タンパク質の加水分解作用)、リパーゼ(lipase、脂肪の加水分解作用)のような消化酵素を含む。膵臓炎はアルコール依存症(alcohol abuse)、胆石(gallstones)などによって膵液が円滑に流れなくて前記酵素が膵臓の自己分解を誘発して発生するだけでなく、代謝障害、薬物、腹部損傷などの多様な原因などによっても発生する。膵臓炎は膵臓腺細胞の損傷、広範囲な癲癇性むくみ、出血及び損傷部位への好中球性顆粒球の移動を誘発する膵臓の炎症性疾患である。膵臓炎は大きく2類型に分けて見ることができ、癲癇性むくみ(interstitial edema)と膵臓周辺の脂肪性怪死(peripancreatic fat necrosis)が発見される軽症(mild type)の膵臓炎、膵臓周辺(peripancreatic)及び膵臓内部(intrapancreatic)の広範囲な脂肪性怪死、膵臓の実質壊死(pancreatic parenchymal necrosis)、出血を伴う重症(severe type)の膵臓炎がある(BankPA.,Am.J.gastroenterol.,89,pp151-152,1994.;Bradley EL.,Arch.Surg.,128、pp586-590,1993.;キム チャン ドク、大韓消化器学会誌,46,pp321-332,2005)。
【0016】
また、本発明で、前記“自己免疫疾患”とは個体の自己組職に対して起きて指定された非悪性疾患又は障害である。全ての正常個体において一番重要な特性の一つは自己(self)を構成している抗原物質に対しては有害に反応しないが、非自己(non-self)抗原に対してはこれを認識して反応して除去することができる。自己抗原に対する生体の無反応を免疫不応答(immunologic unresponsiveness)又は寛容(tolerance)と言う。しかし、自己寛容を誘導又は維持することにおいて異常が生じれば、自己抗原に対して免疫反応が起こり、その結果、自己組職を攻撃する現象が発生し、前記過程によって発生する疾患を自己免疫疾患と言う。前記自己免疫疾患は自分の臓器組織又はその成分に対して抗体が生産される炎症性疾患であり、多数の組職と臓器に晩成的な全身的炎症を引き起こす疾病を総称することができる。
【0017】
具体的に、本発明で、前記自己免疫疾患はリュウマチ関節炎(Rheumatoid arthritis、SLE)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、クローン病(Crohns disease)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、多発性硬化症(Multiple sclerosis)、ブドウ膜炎(uveitis)、自己免疫髄膜炎(autoimmune meningitis)、シェーグレン症侯群(Sjogren syndrome)、硬皮症(scleroderma)、ヴェーゲナー肉芽腫症(wegener’s granulomatosis)、サルコイドーシス(sarcoidosis)、敗血症性ショック、涙腺炎、脳卒中、動脈硬化症、血管再狭窄、I型糖尿病、II型糖尿病、じんましん、結膜炎、乾癬、全身性炎症反応症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、結節性多発性束関節炎、混合結合組職病、通風、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、糖尿性網膜症、多発性硬化症、晩成甲状腺炎、セリアック病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、ウイルス疾患、細菌性疾患、動脈硬化、血管腫、血管繊維腫、再かん流傷害又は心臓肥大症などを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0018】
本発明で、前記“アレルギー(allergy)”は‘アトピー疾患(atopic diorder)’と互換して使われることができ、異物、すなわちアレルギー源(allergen)に対する特異に変形された反応を示す生化学的現象によって発生した疾患を意味することができる。
【0019】
本発明で、前記アレルギーは、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹、喘息、過敏症、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis)、アレルギー性結膜炎(allergic conjunctivitis)、アレルギー性皮膚炎、じんま疹、昆虫アレルギー、食品アレルギー又は薬品アレルギーなどであり得るが、これに制限されるものではない。
【0020】
本発明で、前記“診断”は特定の疾病又は疾患に対する対象(subject)の感受性(susceptibility)を判定すること、対象が特定の疾病又は疾患を現在持っているかを判定すること、特定の疾病又は疾患にかかった対象の予後(prognosis)(例えば、前転移性又は転移性癌状態の同定、癌の段階決定又は治療に対する癌の反応性決定)を判定すること、又はテラメトリックス(therametrics)(例えば、治療効能に対する情報を提供するために客体の状態をモニタリングすること)を含む。本発明の目的上、前記診断は前述した疾患の発病有無又は発病可能性(危険性)を確認することである。
【0021】
本発明の前記診断用組成物は、好ましくはインターロイキン10受容体(Interleukin 10 receptor、IL-1OR)又は前記インターロイキン10受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤を含むことができる。
【0022】
本発明で、前記“インターロイキン10受容体(Interleukin 10 receptor、IL-10R)”とはII型サイトカインレセプターであり、2個のαサブユニットと2個のβサブユニットからなる四量体にあたる。αサブユニットは、T細胞、B細胞、NK細胞、肥満細胞(mast cells)及び樹状細胞(dendritic cells)のような造血細胞で発現し、βサブユニットは多様に発現する。本発明において、前記インターロイキン10受容体は、好ましくは配列番号1で表示されるインターロイキン10受容体のβサブユニット(IL-10RB)であり得る。
【0023】
また、本発明で、前記組成物はインターロイキン22受容体(Interleukin
22 receptor、IL-22R)又は前記インターロイキン22受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤をさらに含むことにより、前記疾患を診断するのに正確度を高めることができる。
【0024】
本発明で、前記“インターロイキン22受容体(Interleukin 22 receptor、IL-22R)”とはII型サイトカインレセプターであり、α1サブユニットとβ2サブユニットの異種二量体(heterodimer)にあたり、インターロイキン22(Interleukin 22)に結合する。本発明で、前記インターロイキン22受容体は、好ましくは配列番号2で表示されるインターロイキン22受容体α1サブユニット(IL-22RA1)であり得る。
【0025】
また、本発明で、前記組成物はインターロイキン22(Interleukin 22、IL-22)、インターロイキン29(Interleukin 29、IL-29)及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1(Interferon lambda receptor 1isoform1、IFNLR1 isoform1)からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤をさらに含むことにより、前記疾患を診断するのに正確度をより高めることができる。
【0026】
本発明で、前記“インターロイキン22(Inteleukin22、IL-22)”とは細胞免疫反応を仲栽する、IL-10ファミリー又はIL-10スーパーファミリー(IL-19、IL-20、IL-24及びIL-26)と呼ばれるサイトカインのグループに属するサイトカインである。前記インターロイキン22はIL-10R2及びIL-22R1のサブユニットからなる異種二量体細胞表面受容体に結合する。本発明で、前記インターロイキン22は配列番号3のアミノ酸配列で表示されることができる。
【0027】
本発明で、前記“インターロイキン29(Interleukin 29、IL-29)”とは‘インターフェロンラムダ-1(Interferon lambda-1)’とも呼ばれ、染色体19番に位置するインターロイキン29遺伝子によってコーディングされるタンパク質であり、螺旋形のサイトカインファミリー(helical cytokine family)に属し、III型インターフェロンにあたる。前記インターロイキン29は微生物に対する宿主防御に重要な役割をし、その発現水準はウイルスに感染された細胞で非常に増加している。本発明で、前記インターロイキン29は配列番号4のアミノ酸配列で表示されることができる。
【0028】
本発明で、前記“インターフェロンラムダ受容体1(Interferon lambda receptor1、IFNLR1)”とはII型サイトカイン受容体ファミリーに属する遺伝子によってコーディングされるタンパク質であり、インターロイキン10受容体ベータサブユニットと結合して受容体複合体(receptor complex)を形成する。このような受容体複合体はインターロイキン28A、インターロイキン28B及びインターロイキン29と互いに作用することができる。本発明で、前記インターフェロンラムダ受容体1としては、配列番号5のアミノ酸配列で表示されるインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1(Interferon lambda receptor 1isoform1、IFNLR1 isoform1)であり得る。
【0029】
本発明で、前記発現水準の測定対象となるインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のタンパク質又はこれをコードする遺伝子のmRNAは、目的とする個体から分離された生検、好ましくは個体から分離された血液、血清又は血漿、より好ましくは前記血液、血清又は血漿から分離された単核球又はエクソソームに存在するものであってもよい。
【0030】
以前には、多様な疾患、特に膵臓疾患の診断のためにバイオマーカーの発現水準を測定するためには、主に膵臓組職から細胞を分離した後、前記細胞内のバイオマーカーの発現水準を測定して来た。このように膵臓疾患、好ましくは膵臓癌の診断のために膵臓組職から細胞を分離しなければならない面倒さと、膵臓癌の初期には何の自覚症状もないという理由で膵臓癌の初期診断がほとんど不可能な欠点があった。
【0031】
しかし、本発明では、目的とする個体から分離された血液、血清又は血漿内に含まれた単核球又はエクソソームにおいて、インターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29、インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1又はこれらをコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定することにより、迅速で簡単でありながらも非常に正確に膵臓癌を含めた多様な疾患の発病有無と発病可能性を診断することができる。
【0032】
具体的に、前記のように目的とする個体から分離された単核球又はエクソソームで本発明によるマーカーの発現水準を測定する場合、患者を開腹して組職(例えば、膵臓組職)から組職細胞を分離するなどの浸襲過程が必要なく、前記単核球又はエクソソームを含む生検を獲得するまではおよそ5分以内がかかり、前記単核球又はエクソソームから本発明による多様な疾患バイオマーカーの発現水準を測定することにもおよそ2時間以内がかかるので、非常に迅速で簡便に疾患の発病有無又は発病可能性を確認することができる。
【0033】
本発明で、前記インターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の発現水準を測定する製剤は特に制限しないが、好ましくは前記インターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のそれぞれのタンパク質に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide nucleic acid)及びアプタマー(aptamer)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0034】
本発明で、前記“タンパク質の発現水準測定”とは膵臓癌を含めた本発明の疾患を診断するために生物学的試料で膵臓疾患の診断用マーカーであるインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のタンパク質の存在有無と発現程度を確認する過程を意味する。前記受容体の発現水準測定又は比較分析方法としては、プロテインチップ分析、免疫測定法、リガンド結合法、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of
Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組職免疫染色、補体結合分析法、2次元電気泳動分析、液相クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウエスタンブロット法及びELISA(enzyme linked immunosorbentassay)などがあるが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明で、前記“抗体”とは抗原と特異的に結合して抗原抗体反応を引き起こす物質を示す。本発明の目的上、抗体はインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1に対して特異的に結合する抗体を意味する。本発明の抗体は多クローン抗体、単クローン抗体及び組み換え抗体のいずれも含む。前記抗体は当該分野に広く知られた技術を用いて容易に製造されることができる。例えば、多クローン抗体は前記インターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の抗原を動物に注射し、動物から採血して抗体を含む血清を収得する過程を含む、当該分野に広く知られた方法によって生産されることができる。このような多クローン抗体は、ヤギ、兎、羊、猿、馬、豚、牛、犬などの任意の動物から製造されることができる。また、単クローン抗体は当該分野に広く知られたハイブリドーマ法(hybridoma method;Kohler及びMilstein(1976) European Journal of Immunology 6:511-519参照)、又は把持抗体ライブラリ技術(Clackson et al,Nature,352:624-628,1991;Marks
et al,J.Mol.Biol.222:58、1-597,1991参照)を用いて製造されることができる。前記方法で製造された抗体はゲル電気泳動、透析、塩沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどの方法を用いて分離、精製されることができる。また、本発明の抗体は、2個の全長の軽鎖及び2個の全長の中鎖を有する完全な形態だけではなく、抗体分子の機能的な断片を含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどがある。
【0036】
本発明で、前記“PNA(Peptide nucleic acid)”とは人工的に合成された、DNA又はRNAに似ている重合体を示し、1991年デンマークコペンハーゲン大学のNielsen、Egholm、BergとBuchardt教授によって初めて紹介された。DNAはリン酸-リボース糖骨格を有するに対し、PNAはペプチド結合によって連結された繰り返されたN-(2-アミノエチル)-グリシン骨格を有し、これによってDNA又はRNAに対する結合力と安全性が大きく増加して分子生物学、診断分析及びアンチセンス治療法に使われている。PNAは文献[Nielsen PE,Egholm M,Berg RH,Buchardt O(December 1991)。“Sequence-selective recognition of DNA by strand displacement with a thymine-substituted polyamide”.Science 254(5037):1497-1500]に詳細に開示されている。
【0037】
本発明で、前記“アプタマー”はオリゴヌクレオチド又はペプチド分子であり、アプタマーの一般的な内容は文献[Bock LC et al.,Nature 355(6360):5646(1992);Hoppe-Seyler F,ButzK “Peptide aptamers:powerful new tools for molecular medicine”.J Mol Med.78(8):42630(2000);Cohen BA、Colas P,Brent R.“An artificial cell-cycle inhibitor isolated from
a combinatorial library”.Proc Natl Acad
Sci USA.95(24):142727(1998)]に詳細に開示されている。
【0038】
本発明による診断用組成物において、インターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤は、インターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のそれぞれをコードする遺伝子のmRNAに特異的に結合するプライマー、プローブ及びアンチセンスヌクレオチドからなる群から選択された1種以上を含むことができる。本発明によるインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の情報は知られているので、当業者であればこれに基づいて前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAに特異的に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドを容易にデザインすることができるであろう。
【0039】
本発明で、前記“mRNAの発現水準測定”とは、膵臓癌を含めた本発明の疾患を診断するために、生物学的試料でインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1をコードする遺伝子のmRNA存在有無と発現程度を確認する過程でmRNAの量を測定することを意味する。このための分析方法としては、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、競争的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Competitive
RT-PCR)、実時間逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロット法(Northern blotting)、DNAチップなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明で、前記“プライマー”は標的遺伝子配列を認知する断片であり、順方向及び逆方向のプライマー対を含むが、好ましくは、特異性及び敏感性を有する分析結果を提供するプライマー対である。プライマーの核酸配列が試料内に存在する非標的配列と一致しない配列であるので、相補的なプライマー結合部位を含む標的遺伝子配列のみ増幅し、非特異的増幅を引き起こさないプライマーであるとき、高い特異性が付与されることができる。
【0041】
本発明で、前記“プローブ”とは試料内の検出しようとする標的物質と特異的に結合することができる物質を意味し、前記結合によって特異的に試料内の標的物質の存在を確認することができる物質を意味する。プローブの種類は当該分野で通常的に使われる物質で、制限はないが、好ましくはPNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNA又はDNA、最も好ましくはPNAである。より具体的に、前記プローブはバイオ物質であって、生物に来由するかこれと類似したもの又は生体外で製造されたものを含むものであり、例えば酵素、タンパク質、抗体、微生物、動植物細胞及び器官、神経細胞、DNA、及びRNAであってもよい。DNAはcDNA、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチドを含み、RNAはゲノムRNA、mRNA、オリゴヌクレオチドを含み、タンパク質の例としては、抗体、抗原、酵素、ペプチドなどを含むことができる。
【0042】
本発明で、前記“LNA(Locked nucleic acids)”とは、2’-O、4’-Cメチレンブリッジを含む核酸アナログを意味する[J Weiler,JHunziker and J Hall Gene Therapy (2006)13,496.502]。LNAヌクレオチドはDNAとRNAの一般的核酸塩基を含み、Watson-Crick塩基対規則に従って塩基対を形成することができる。しかし、メチレンブリッジによる分子の‘locking’によって、LNAはWatson-Crick結合において理想的形状を形成することができなくなる。LNAがDNA又はRNAオリゴヌクレオチドに含まれれば、LNAはより早く相補的ヌクレオチド鎖と対を成して二重螺旋の安全性を高めることができる。本発明で、前記“アンチセンス”はアンチセンスオリゴマーがワットソンクリック塩基対の形成によってRNA内の標的配列と混成化し、標的配列内で典型的にmRNAとRNA:オリゴマー異種二量体の形成を許容する、ヌクレオチド塩基の配列及びサブユニット間バックボーンを有するオリゴマーを意味する。オリゴマーは標的配列に対する正確な配列相補性又は近似相補性を有することができる。
【0043】
本発明の他の具現例によれば、本発明による診断用組成物を含む疾患の診断用キットに関する。
【0044】
本発明の診断用キットを用いて発病有無又は発病可能性を予測することができる疾患の種類としては、膵臓疾患、自己免疫疾患、アレルギー、グレーブス病(Grave’s disease)、ハシモト病(Hashimoto’s thyroiditis)、自己免疫リンパ球増殖性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome、ALPS)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、カワサキ病(Kawasaki disease)、乾癬(psoriasis)などであり得るが、これに制限されるものではない。
【0045】
特に、本発明は、前記診断用キットを用いて膵臓疾患として膵臓癌(pancreatic cancer)又は膵臓炎(pancreatitis)を診断することができ、より好ましくは膵臓癌を診断することができる。具体的に、本発明のキットを使う場合、正常群と膵臓癌の患者群を区別して検出又は診断することができる。それだけでなく、他の種類の癌、例えば肺癌又は大膓癌などと区別して膵臓癌を選別的に検出又は診断することができる。
【0046】
本発明で、前記キットはRT-PCRキット、DNAチップキット、ELISAキット、プロテインチップキット、ラピッド(rapid)キット又はMRM(Multiple reaction monitoring)キットであり得るが、これに制限されるものではない。
【0047】
本発明の前記疾患の診断用キットは、分析方法に適した1種又はそれ以上の他の構成成分組成物、溶液又は装置をさらに含むことができる。
【0048】
例えば、前記診断用キットは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を遂行するために必要な必須要素をさらに含むことができる。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応キットは、マーカータンパク質をコードする遺伝子に対して特異的なプライマー対を含む。プライマーは前記遺伝子の核酸配列に特異的な配列を有するヌクレオチドであり、約7bp~50bpの長さ、より好ましくは約10bp~30bpの長さを有することができる。また、対照群遺伝子の核酸配列に特異的なプライマーを含むことができる。その他に、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応キットは、テストチューブ又は他の適切な容器、反応緩衝液(pH及びマグネシウム濃度は多様)、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq-ポリメラーゼ及び逆転写酵素のような酵素、DNase、RNase抑制剤、DEPC-水(DEPC-water)、滅菌水などを含むことができる。
【0049】
また、本発明の診断用キットは、DNAチップを遂行するために必要な必須要素を含むことができる。DNAチップキットは、遺伝子又はその断片にあたるcDNA又はオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)が付着されている基板、及び蛍光標識プローブを製作するための試薬、製剤、酵素などを含むことができる。また、基板は、対照群遺伝子又はその断片にあたるcDNA又はオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0050】
また、本発明の診断用キットは、ELISAを遂行するために必要な必須要素を含むことができる。ELISAキットは、前記タンパク質に対して特異的な抗体を含む。抗体はマーカータンパク質に対する特異性及び親和性が高く、他のタンパク質に対する交差反応性がほとんどない抗体であり、単クローン抗体、多クローン抗体又は組み換え抗体である。また、ELISAキットは、対照群タンパク質に特異的な抗体を含むことができる。その他に、ELISAキットは、結合した抗体を検出することができる試薬、例えば標識された2次抗体、発色団(chromophores)、酵素(例えば、抗体と共役する)及びその基質又は抗体と結合することができる他の物質などを含むことができる。
【0051】
本発明のさらに他の具現例によれば、目的とする個体から分離された生検でインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階を含む、疾患の診断のための情報提供方法に関する。
【0052】
本発明の情報提供方法で発病有無又は発病可能性を予測することができる疾患種類としては、膵臓疾患、自己免疫疾患、アレルギー、グレーブス病(Grave’s disease)、ハシモト病(Hashimoto’s thyroiditis)、自己免疫リンパ球増殖性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome、ALPS)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、カワサキ病(Kawasaki disease)又は乾癬(psoriasis)などであり得るが、これに制限されるものではない。
【0053】
本発明は、前述した疾患の中でも特に膵臓疾患として、膵臓癌(pancreatic
cancer)又は膵臓炎(pancreatitis)、より好ましくは膵臓癌の発病有無と発病可能性を比較的正確に診断及び予測することができる。
【0054】
本発明の情報提供方法による場合、正常群と膵臓癌の患者群を区別して検出又は診断することができるだけではなく、他の種類の癌、例えば肺癌又は大膓癌などと区別して膵臓癌を選別的に検出又は診断することができる。
【0055】
本発明で、前記自己免疫疾患及びアレルギーの具体的な種類は本発明の診断用組成物に記載したものと重複するので、以下ではその記載を省略する。
【0056】
本発明で、前記“目的とする個体”とは、前記列挙した疾患の発病有無が不確実な個体で、発病可能性が高い個体を意味する。
【0057】
また、本発明で、前記個体から分離された“生検”とは、発病可能性の高い患者の皮膚を切開せず、中空針などを生体内器官に刺入して病理組職学的検査用で採取した組職であり、例えば患者の組職、細胞、血液、血清、血漿、唾液又は痰などを含むことができ、好ましくは患者の血液、血清又は血漿、より好ましくは前記血液、血清又は血漿から分離された単核球又はエクソソームであり得る。
【0058】
以前には、膵臓疾患の診断のためにバイオマーカーの発現水準を測定するためには、主に疾患の発生が予測される組職(例えば、膵臓組職)から細胞を分離した後、前記細胞内のバイオマーカーの発現水準を測定して来た。しかし、本発明は、目的とする個体から分離された血液、血清又は血漿内に含まれた単核球又はエクソソームにおいて本発明による疾患バイオマーカーの発現水準を測定することにより、迅速で簡単であるが非常に正確に膵臓癌を含めた多様な疾患の発病有無と発病可能性を予測することができる。
【0059】
具体的に、前記のように単核球又はエクソソームにおいて本発明によるマーカーの発現水準を測定する場合、患者を開腹して疾患組職から組職細胞を分離するなどの浸襲過程が必要なく、前記単核球を含む生検を獲得するまではおよそ5分以内がかかるので、前記単核球から本発明によるバイオマーカーの発現水準を測定することにもおよそ2時間以内がかかるので、非常に迅速で簡便に疾患の発病有無又は発病可能性を確認することができる。
【0060】
本発明の情報提供方法は、好ましくは前記のように分離された生検でバイオマーカーでインターロイキン10受容体又は前記インターロイキン10受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定することができる。
【0061】
また、本発明は、前記生検から膵臓癌を含めた本発明の疾患を診断するための他のバイオマーカーでインターロイキン22受容体又は前記インターロイキン22受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階をさらに含むことによって診断の正確度をより高めることができる。
【0062】
また、本発明は、前記生検で膵臓癌を含めた本発明の疾患のさらに他のバイオマーカーでインターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階をさらに含むことにより、前記疾患を診断することにおいて正確度をより高めることができる。
【0063】
本発明で、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の発現水準を測定する製剤は特に制限しないが、好ましくは前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のそれぞれに特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide
nucleic acid)及びアプタマー(aptamer)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0064】
好ましくは、本発明で、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の発現水準は前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1に特異的に結合する抗体を用いて測定及び比較することができる。前記抗体と生物学的試料内の該当タンパク質が抗原抗体複合体を形成するようにし、これを検出する方法を用いる。
【0065】
本発明で、前記“抗原抗体複合体”は生物学的試料中の該当遺伝子の存在又は不在を確認するためのタンパク質抗原とこれを認知する抗体の結合物を意味する。前記抗原抗体複合体の検出は当該分野に知られているような方法、例えば分光学的、光化学的、生物化学的、免疫化学的、電気的、吸光的、化学的及びその他の方法を用いて検出することができる。
【0066】
一方、本発明は、前記タンパク質発現水準測定又は比較分析方法としては、プロテインチップ分析、免疫測定法、リガンド結合法、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組職免疫染色、補体結合分析法、2次元電気泳動分析、液相クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウエスタンブロット法及びELISA(enzyme linked immunosorbentassay)などがあるが、これに制限されるものではない。
【0067】
また、本発明で、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤は、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のそれぞれのタンパク質をコードする遺伝子のmRNAに特異的に結合するプライマー、プローブ及びアンチセンスヌクレオチドからなる群から選択された1種以上を含むことができる。本発明による前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29及び前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の情報は知られているので、当業者であればこれに基づいて前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAに特異的に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドを容易にデザインすることができるであろう。
【0068】
本発明は、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1をコードする遺伝子のmRNAの発現水準の測定又は比較は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、競争的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、実時間逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、RNase保護分析法、ノーザンブロット法又はDNAチップなどを使うことができるが、これに制限されるものではない。前記測定方法によって正常対照群でのmRNA発現量と疾患発病有無を診断しようとする個体のmRNA発現量を確認することができ、これらの発現量程度を比較することによって膵臓癌などの疾患の発病可能性及び有無を診断又は予測することができる。
【0069】
本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定されたインターロイキン10受容体又は前記インターロイキン10受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群での発現水準より高い場合、疾患の中で特に膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができ、より好ましくは正常対照群での発現水準の2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上又は9倍以上の場合、膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができる。
【0070】
本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定されたインターロイキン10受容体の発現水準として、例えばインターロイキン10受容体を発現する細胞数の比率が正常対照群に比べて3倍~20倍、4倍~18倍、5倍~13倍、7倍~11倍、又は8倍~10倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。好ましくは、前記目的とする個体から分離された生検で測定されたインターロイキン10受容体の発現水準が正常対照群での発現水準の8倍~10倍増加した場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0071】
また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン10受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群での発現水準の2倍~20倍、2倍~15倍、2.5倍~15倍、2倍~10倍又は2.5倍~10倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。好ましくは、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン10受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群での発現水準の2.5倍~10倍増加した場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0072】
また、本発明は、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン22受容体又は前記インターロイキン22受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群での発現水準より高い場合、疾患の中で特に膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができ、より好ましくは、正常対照群での発現水準の1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上又は6倍以上の場合、膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができる。
【0073】
また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン22受容体の発現水準として、例えば前記インターロイキン22受容体を発現する細胞数の比率が正常対照群に比べて2倍~10倍、2倍~10倍、3倍~9倍、4倍~8倍、5倍~7倍、又は6倍~7倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン22受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群に比べて1.5倍~10倍、1.5倍~9倍、1.5倍~8倍、又は2倍~7倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0074】
本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定されたインターロイキン22又は前記インターロイキン22をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群での発現水準より高い場合、疾患の中で特に膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができ、より好ましくは、正常対照群での発現水準の2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上又は6倍以上の場合、膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができる。
【0075】
また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン22の発現水準として、例えば前記インターロイキン22を発現する細胞数の比率が正常対照群に比べて3倍~16倍、4倍~15倍、4倍~13倍、5倍~10倍、5倍~8倍、5倍~7倍、又は6倍~7倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0076】
また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン22をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群に比べて2倍~15倍、2.5倍~15倍、3倍~13倍、3.5倍~13倍、4倍~13倍、又は4倍~10倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0077】
本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定されたインターロイキン29又は前記インターロイキン29をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群での発現水準より高い場合、疾患の中で特に膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができ、より好ましくは、正常対照群での発現水準の2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上又は6倍以上の場合、膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができる。
【0078】
また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン29の発現水準として、例えば前記インターロイキン29を発現する細胞数の比率が正常対照群に比べて3倍~16倍、4倍~15倍、4倍~13倍、5倍~10倍、5倍~8倍、5倍~7倍、又は6倍~7倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0079】
また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターロイキン29をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群に比べて2倍~15倍、2.5倍~15倍、3倍~13倍、3.5倍~13倍、4倍~13倍、又は4倍~10倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0080】
本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定されたインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群での発現水準より高い場合、疾患の中で特に膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができ、より好ましくは、正常対照群での発現水準の1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上又は6倍以上の場合、膵臓疾患の発病可能性が高いと判定することができる。
【0081】
また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の発現水準として、例えば前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1を発現する細胞数の比率が正常対照群に比べて3倍~16倍、4倍~15倍、4倍~13倍、5倍~10倍、5倍~8倍、5倍~7倍、又は6倍~7倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0082】
また、本発明で、前記目的とする個体から分離された生検で測定された前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が正常対照群に比べて1.5倍~15倍、2倍~15倍、2.5倍~15倍、3倍~13倍、3.5倍~13倍、4倍~13倍、又は4倍~10倍の場合、膵臓疾患、特に膵臓癌の発病可能性が高いと判定することができる。
【0083】
本発明は、前記のようにインターロイキン10受容体のマーカー、好ましくはインターロイキン10受容体及びインターロイキン22受容体のマーカー、より好ましくはインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体と、それに加えてインターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の少なくとも一つのマーカーの発現水準を測定することによって膵臓癌の発病可能性を高正確度で診断することができる。
【0084】
さらに、本発明で、前記のように目的とする個体から分離された生検でインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定して、疾患、特に膵臓疾患、好ましくは膵臓癌の発病可能性が高いと予測又は診断する場合、前記目的とする個体に対してその疾患に対する薬剤投与(膵臓癌に対する抗癌剤など)、放射線治療、又は免疫治療などの適切な治療を行う段階をさらに含むことができる。
【0085】
本発明のさらに他の具現例によれば、(a)疾患患者から分離された生検でインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階、
(b)前記患者に候補薬剤を投与する段階、及び
(c)前記候補薬剤の投与後、前記患者から分離された生検でインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階を含む、疾患治療用薬物スクリーニング方法に関する。
【0086】
本発明の薬物スクリーニング方法で薬物の効用性又は感受性を予測することができる疾患種類としては、膵臓疾患、自己免疫疾患、アレルギー、グレーブス病(Grave’s
disease)、ハシモト病(Hashimoto’s thyroiditis)、自己免疫リンパ球増殖性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome、ALPS)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、カワサキ病(Kawasaki disease)又は乾癬(psoriasis)などであり得るが、これに制限されるものではない。
【0087】
本発明は、前述した疾患の中でも特に膵臓疾患として、膵臓癌(pancreatic
cancer)又は膵臓炎(pancreatitis)、より好ましくは膵臓癌に対する治療用薬物の効用性又は感受性を比較的正確に予測することができる。
【0088】
本発明で、前記自己免疫疾患及びアレルギーの具体的な種類は本発明の診断用組成物に記載したものと重複するので、以下でその記載を省略する。
【0089】
また、本発明で、前記個体から分離された“生検”とは、発病可能性の高い患者の皮膚を切開せず、中空針などを生体内器官に刺入して病理組職学的検査用で採取した組職であり、例えば患者の組職、細胞、血液、血清、血漿、唾液又は痰などを含むことができ、好ましくは患者の血液、血清又は血漿、より好ましくは前記血液、血清又は血漿から分離された単核球又はエクソソームであり得る。
【0090】
本発明の薬物スクリーニング方法は、好ましくは前記(a)及び(c)段階で患者から分離された生検に対してバイオマーカーでインターロイキン10受容体又は前記インターロイキン10受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定することができる。
【0091】
また、本発明は、前記(a)及び(c)段階で患者から分離された生検に対してインターロイキン10受容体又は前記インターロイキン10受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準の他にも、インターロイキン22受容体又は前記インターロイキン22受容体をコードする遺伝子のmRNAの発現水準をさらに測定することによって治療用薬物の感受性予測正確度をより高めることができる。
【0092】
また、本発明は、前記(a)及び(c)段階で患者から分離された生検に対してインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体又はこれらをコードする遺伝子のmRNAの発現水準の他にも、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準をさらに測定することによって前記疾患に対する治療用薬物の感受性予測時にその正確度をより高めることができる。
【0093】
本発明で、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の発現水準を測定するための製剤は特に制限しないが、好ましくは前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のそれぞれに特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide nucleic acid)及びアプタマー(aptamer)からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0094】
好ましくは、本発明で、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の発現水準は、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のそれぞれに特異的に結合する抗体を用いて測定及び比較することができる。前記抗体と生物学的試料内の該当タンパク質が抗原抗体複合体を形成するようにし、これを検出する方法を用いる。
【0095】
本発明で、前記“抗原抗体複合体”は生物学的試料中の該当遺伝子の存在又は不在を確認するためのタンパク質抗原とこれを認知する抗体の結合物を意味する。前記抗原抗体複合体の検出は当該分野に知られたような方法、例えば分光学的、光化学的、生物化学的、免疫化学的、電気的、吸光的、化学的及びその他の方法を用いて検出することができる。
【0096】
一方、本発明は、前記タンパク質発現水準測定又は比較分析方法としては、プロテインチップ分析法、免疫測定法、リガンド結合法、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組職免疫染色、補体結合分析法、2次元電気泳動分析、液相クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウエスタンブロット法及びELISA(enzyme linked immunosorbentassay)などがあるが、これに制限されるものではない。
【0097】
また、本発明で、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定するための製剤は、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のそれぞれをコードする遺伝子のmRNAに特異的に結合するプライマー、プローブ及びアンチセンスヌクレオチドからなる群から選択された1種以上を含むことができる。本発明による前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29及び前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1の情報は知られているので、当業者であればこれに基づいて前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAに特異的に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドを容易にデザインすることができるであろう。
【0098】
本発明は、前記インターロイキン10受容体、前記インターロイキン22受容体、前記インターロイキン22、前記インターロイキン29又は前記インターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1をコードする遺伝子のmRNAの発現水準の測定又は比較は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、競争的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、実時間逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、RNase保護分析法、ノーザンブロット法又はDNAチップなどを使うことができるが、これに制限されるものではない。前記測定方法によって正常対照群でのmRNA発現量と疾患発病有無を診断しようとする個体のmRNA発現量を確認することができ、これらの発現量程度を比較することによって膵臓癌などの疾患の発病可能性及び有無を診断又は予測することができる。
【0099】
本発明は、前記(c)段階で測定したインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準が(a)段階で測定された同一バイオマーカーに対する発現水準より減少した場合、前記候補薬剤を疾患の治療に適した治療剤として選別する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0100】
本発明は、インターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及び/又はインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1のバイオマーカーの発現水準を測定することにより、膵臓疾患、自己免疫疾患、アレルギー、グレーブス病(Grave’s disease)、ハシモト病(Hashimoto’s thyroiditis)、乾癬、カワサキ病(Kawasaki disease)及び自己免疫リンパ球増殖性症候群(autoimmune lymphoproliferative syndrome、ALPS)などの多様な疾患、特にその中でも膵臓癌の発病有無又は発病可能性を正確に予測又は診断するようにする。
【0101】
また、本発明は、個体から獲得した血液、血清又は血漿などから得られた単核球又はエクソソームから前記バイオマーカーの発現水準を測定して疾患の発病有無などを予測又は診断することができるので、従来に比べて非浸襲的方法で簡単で迅速でありながらも非常に正確に膵臓癌などの疾患を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】実施例1でFACS分析を用いて正常対照群、膵臓癌患者、膵臓炎患者、肺癌患者及び大膓癌患者から採取した血液内総単核球細胞数に比べてIL-22が発現する単核球細胞数の比率を%で示した図である。
図2】実施例1でFACS分析を用いて正常対照群、膵臓癌患者、膵臓炎患者、肺癌患者及び大膓癌患者から採取した血液内総単核球細胞数に比べてIL-22Rが発現する単核球細胞数の比率を%で示した図である。
図3】実施例1でFACS分析を用いて正常対照群、膵臓癌患者、膵臓炎患者、肺癌患者及び大膓癌患者から採取した血液内総単核球細胞数に比べてIL-10Rが発現する単核球細胞数の比率を%で示した図である。
図4】実施例2で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内単核球細胞でIL-10RBのmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
図5】実施例2で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内単核球細胞でIL-22RAのmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
図6】実施例3で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内単核球細胞でIL-22のmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
図7】実施例3で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内単核球細胞でIL-29のmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
図8】実施例4で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内単核球細胞でIFNLR1イソフォーム1のmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
図9】実施例4で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内単核球細胞でIFNLR1イソフォーム3のmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
図10】実施例5で膵臓癌患者の手術の前と後に患者から採取した血液内総単核球細胞数に比べてIL-22が発現する単核球細胞数の比率を%で示した図である。
図11】実施例5で膵臓癌患者の手術の前と後に患者から採取した血液内総単核球細胞数に比べてIL-22Rが発現する単核球細胞数の比率を%で示した図である。
図12】実施例5で膵臓癌患者の手術の前と後に患者から採取した血液内総単核球細胞数に比べてIL-10Rが発現する単核球細胞数の比率を%で示した図である。
図13】実施例6で膵臓癌患者の手術前と手術後3ヶ月が経過した時点で患者から採取した血液内総単核球細胞数に比べてIL-10Rが発現する単核球細胞数の比率を測定した後、paired T testで分析した結果をグラフで示した図である。
図14】実施例7で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内エクソソームでIL-10RBのmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
図15】実施例7で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内エクソソームでIL-22RAのmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
図16】実施例7で正常対照群、膵臓癌患者、胆管癌患者及び胆嚢癌患者から採取した血液内エクソソームでIFNLR1イソフォーム1のmRNA発現水準を比較してグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
本発明の一具現例によれば、インターロイキン10受容体(Interleukin 10 receptor、IL-1OR)、インターロイキン22受容体(Interleukin 22 receptor、IL-22R)、インターロイキン22(Interleukin 22、IL-22)、インターロイキン29(Interleukin 29、IL-29)及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1(Interferon lambda receptor 1isoform1、IFNLR1 isoform1)からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する製剤を含む疾患診断用組成物に関する。
【0104】
本発明の他の具現例によれば、本発明による診断用組成物を含む疾患の診断用キットに関する。
【0105】
本発明のさらに他の具現例によれば、目的とする個体から分離された生検でインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階を含む、疾患の診断のための情報提供方法に関する。
【0106】
本発明のさらに他の具現例によれば、(a)疾患患者から分離された生検でインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階、
(b)前記患者に候補薬剤を投与する段階、及び
(c)前記候補薬剤の投与後、前記患者から分離された生検でインターロイキン10受容体、インターロイキン22受容体、インターロイキン22、インターロイキン29及びインターフェロンラムダ受容体1イソフォーム1からなる群から選択された1種以上のタンパク質又は前記タンパク質をコードする遺伝子のmRNAの発現水準を測定する段階を含む、疾患治療用薬物スクリーニング方法に関する。
【0107】
[発明の実施のための形態]
以下、本発明を下記の実施例に基づいて詳細に説明する。ただ、下記実施例は本発明を例示するものであるだけ、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0108】
[準備例1]
Histopaq 1077はSigmaから購入し、Brefeldin AはBiolegendから購入した。抗体として、Alexa 647抗-IL-22、及びPE抗-マウスIL-10RはBiolegendから購入し、PerCPマウスIL-22RはR&Dから購入した。また、FACSバッファー(buffer)としてはBSA(bovine serum albumin)が0.5%含まれたPBS(phosphate buffered solution)を使った。細胞固定用バッファー(fixation buffer)及びパーマ/ウォッシュバッファー(Perm/wash buffer)もBiolegendから購入した。
【0109】
[実施例1]
1.単核球(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)の分離
膵臓癌患者3人、膵臓炎患者3人、正常対照群3人、肺癌患者3人、大膓癌患者3人からそれぞれ血液を採取して常温で保管した。血液の粘度が高い場合は単核球の分離が難しいので、1X PBSに1:1で希釈して準備した。15ml円錐管(conical tube)にフィコール(Histopaq 1077、sigma)を血液と同じ体積で準備した。フィコール上に血液サンプルが混じらないように添加した。加速と減速を最小にし、400gを30分間遠心分離した。中間に白い細胞層(単核球)を別に回収した後、PBSを添加し、400gを3分間遠心分離しながら洗浄した。洗浄された細胞を回収して50μl FACSバッファーに再浮遊させた後、PE抗-マウスIL-10R抗体及びPerCPマウスIL-22R抗体を添加し、アイス(ice)で1時間培養した。その後、FACSバッファーで2回洗浄し、FACSバッファー500μlに細胞を再浮遊させた。
【0110】
2.Brefeldin Aの処理
収集した細胞を計数し、1×10cells/mlでペニシリン及びストレプトマイシンを2%含むRPMI1640培地に入れた後、Brefeldin Aを1Xで処理して6時間培養した。
【0111】
3.固定、パーマ及び染色
培養された細胞を回収し、FACSバッファー(0.5%BSA in PBS)で2回洗浄した後、固定バッファーを500μlずつ入れ、アイスで30分間固定した。ついで、FACSバッファーで2回洗浄し、パーマバッファー1mlに再浮遊させた後、遠心分離を20分間2回遂行した。その後、細胞をまた回収してパーマバッファー50μlに再浮遊させた後、Alexa 647抗-IL-22抗体を添加し、アイスで1時間培養した。FACSで2回洗浄し、FACSバッファー500μlに再浮遊させた。
【0112】
4.FACS分析
FACS Calibur(BD Biosciences、San Jose、CA)を使って総単核球細胞数に比べてIL-10R、IL-22R又はIL-22が発現する細胞数を%で示した。その結果は下記の表1及び図1~3に示した。ただ、下記の表1で、データは平均±標準偏差で示し、統計的分析はDunn’s post hoc分析を用いたKruskal-Wallisテストを使って遂行した。
【表1】
【0113】
前記表1及び図1図3に示すように、膵臓炎患者及び膵臓癌患者でIL-22の発現水準は正常対照群でのIL-22の発現水準に比べてそれぞれ1.7倍又は0.9倍程度に相当する反面、前記IL-22が結合するIL-10Rの発現水準は、膵臓炎患者の場合は正常対照群に比べておよそ14.8倍が増加し、膵臓癌患者の場合は正常対照群に比べておよそ9.0倍が増加したことを確認することができた。しかし、肺癌患者の場合はIL-10Rの発現水準が正常対照群に比べておよそ2.75倍増加し、大膓癌患者の場合は正常対照群の発現水準のおよそ0.78倍にむしろ減少したことを確認することができた。
【0114】
また、IL-22Rの発現水準に関連して、膵臓炎患者の場合は正常対照群に比べておよそ18.66倍増加し、膵臓癌患者の場合は正常対照群に比べておよそ6.57倍増加したことを確認することができた。しかし、肺癌患者の場合はIL-22Rの発現水準が正常対照群の発現水準のおよそ0.28倍に減少し、大膓癌患者の場合は正常対照群の発現水準のおよそ0.17倍に、発現水準が著しく減少したことを確認することができた。
【0115】
また、IL-22に比べてIL-22Rの発現水準に関連して、膵臓炎患者の場合はIL-22の発現水準に比べてIL-22Rの発現水準がおよそ9.93倍であり、膵臓癌患者の場合はIL-22の発現水準に比べてIL-22Rの発現水準は6.31倍であることから、IL-22はIL-22Rに結合することにもかかわらず、IL-22Rの発現水準がIL-22に比べて有意に増加することを確認することができた。しかし、肺癌患者の場合はIL-22の発現水準に比べてIL-22Rの発現水準がおよそ1.18倍、大膓癌患者の場合はIL-22の発現水準に比べてIL-22Rの発現水準がおよそ1.76倍であることから、IL-22の発現水準とIL-22Rの発現水準が類似した結果を示した。
【0116】
このように、膵臓炎又は膵臓癌患者においてIL-10Rの発現水準は正常対照群又は他の種類の疾患と確実に区別される発現様相を示すことが分かり、膵臓炎及び膵臓癌も区分される発現様相を示すことが分かった。
【0117】
したがって、本発明は、前記方法を用いて膵臓炎及び膵臓癌を高正確度で検出及び診断することができるだけではなく、膵臓炎と膵臓癌も区別して診断することができる。
【0118】
[実施例2]
正常対照群4人、膵臓癌患者4人、胆管癌患者2人、胆嚢癌患者2人からそれぞれ血液を採取した後、前記実施例1と同様な方法で血液内単核球(PBMC)を分離し、正常対照群に比べて前記単核球でIL-10Rベータサブユニット(IL-10RB)とIL-22Rアルファサブユニット(IL-22RA)のmRNA発現水準の比率を測定し、その結果を図4及び図5に示した。
【0119】
図4及び図5に示すように、正常対照群に比べて膵臓癌患者から分離された単核球ではIL-10RB mRNAの発現水準はおよそ3倍、IL-22RA mRNAの発現水準はおよそ6倍程度増加したが、胆管癌及び胆嚢癌患者の場合、IL-10RB mRNAの発現水準はおよそ1~2倍増加し、IL-22RA mRNAの発現水準は胆管癌患者でむしろ減少する傾向を確認することができた。
【0120】
これから、膵臓癌の場合、他の癌種に比べて単核球で発現するIL-10RB及びIL-22RA mRNAの発現水準が著しく増加することを確認することができた。
【0121】
[実施例3]
正常対照群4人、膵臓癌患者4人、胆管癌患者2人、胆嚢癌患者2人からそれぞれ血液を採取した後、前記実施例1と同様な方法で血液内単核球(PBMC)を分離し、正常対照群に比べて前記単核球でのIL-22とIL-29のmRNA発現水準の比率を測定し、その結果を図6及び図7に示した。
【0122】
図6及び図7に示すように、正常対照群に比べて膵臓癌患者から分離された単核球ではIL-22mRNAとIL-29mRNAの発現水準が4倍以上増加した反面、胆管癌患者では両マーカー共に発現水準が減少し、胆嚢癌患者の場合はおよそ2~3倍程度のみ増加したことを確認することができた。
【0123】
これから、膵臓癌の場合、他の癌種に比べて単核球で発現するIL-22及びIL-29mRNAの発現水準が著しく増加することを確認することができた。
【0124】
[実施例4]
正常対照群4人、膵臓癌患者4人、胆管癌患者2人、胆嚢癌患者2人からそれぞれ血液を採取した後、前記実施例1と同様な方法で血液内単核球(PBMC)を分離し、正常対照群に比べて前記単核球でIL-29と結合するインターフェロン受容体1イソフォーム1(IFNLR1 isoform1)とインターフェロン受容体1イソフォーム3(IFNLR1 isoform3)のmRNA発現水準の比率を測定し、その結果を図8及び図9に示した。
【0125】
図8及び図9に示すように、正常対照群に比べて膵臓癌患者から分離された単核球ではIL-29と結合するインターフェロン受容体1イソフォーム1のmRNA発現水準が3倍以上増加したが、胆管癌及び胆嚢癌患者の場合はおよそ1~2倍程度のみ増加したことを確認することができた。
【0126】
これから、膵臓癌患者の場合、他の癌種に比べて単核球で発現するインターフェロン受容体1イソフォーム1のmRNAの発現水準が著しく増加することを確認することができた。
【0127】
[実施例5]
膵臓癌切除術を受けた膵臓癌患者に対し、手術の前と後にそれぞれ血液を採取した後、前記実施例1と同様な方法で血液内単核球(PBMC)を分離し、FACS Calibur(BD Biosciences、San Jose、CA)を使って総単核球細胞数に比べてIL-10R、IL-22R又はIL-22が発現する細胞数を%で示した。その結果は下記の表2及び図10図12に示した。
【表2】
【0128】
前記表2及び図10図12に示すように、膵臓癌患者において切除術によって膵臓癌組職の総量(mass)が減少すれば、単核球でのIL-10R、IL-22及びIL-22Rの発現水準が著しく減少することを確認することができ、特にIL-10Rの発現水準が有意に減少したことを確認することができた。
【0129】
[実施例6]
膵臓癌切除術を受けた膵臓癌患者に対し、手術前と手術後3ヶ月が経過した時点で血液を採取した後、前記実施例1と同様な方法で血液内単核球(PBMC)を分離し、FACS Calibur(BD Biosciences、San Jose、CA)を使って総単核球細胞数に比べてIL-10R(marker C)が発現する細胞の頻度を測定した後、paired T testに分析し、その結果を図13に示した。
【0130】
図13に示すように、切除術を用いて膵臓癌患者から癌組職を除去すれば、手術前と比較してIL-10Rを発現する単核球の比率が有意に減少したことを確認することができた。
【0131】
[実施例7]
正常対照群4人、膵臓癌患者4人、胆管癌患者2人、胆嚢癌患者2人からそれぞれ血液を採取した後、血漿(plasma)内の循環するエクソソーム(exosome)を分離し、正常対照群に比べて前記エクソソームでIL-10Rベータサブユニット(IL-10RB)、IL-22Rアルファ1(IL-22RA)及びインターフェロン受容体1イソフォーム1(IFNLR1 isoform1)のそれぞれのmRNA発現水準の比率を測定し、その結果を図14図16に示した。
【0132】
図14図16に示すように、正常対照群に比べて膵臓癌患者から分離されたエクソソームではIL-10RB mRNAの発現水準はおよそ4倍、IL-22RA mRNAの発現水準はおよそ1.5倍、インターフェロン受容体1イソフォーム1のmRNA発現水準はおよそ2.5倍増加したことを確認することができた。しかし、胆管癌患者から分離されたエクソソームでは、正常対照群に比べてIL-10RB mRNAの発現水準はおよそ1.5倍、インターフェロン受容体1イソフォーム1のmRNA発現水準はおよそ1.5倍増加したことに過ぎなく、特にIL-22RA mRNAの発現水準は正常対照群に比べてむしろ減少したことを確認することができた。胆嚢癌患者の場合もそれから分離されたエクソソームではIL-10RB mRNAの発現水準は正常対照群と同等な水準を示し、IL-22RAとインターフェロン受容体1イソフォーム1のmRNAの発現水準は正常対照群に比べておよそ1.5倍以下で増加したことを確認することができた。
【0133】
これから、膵臓癌患者の場合、血漿から分離されるエクソソームで発現するIL-10RB、IL-22RA及びインターフェロン受容体1イソフォーム1のmRNAの発現水準が正常対照群又は他の癌種に比べて著しく増加することを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は多様な疾患を診断することができる組成物に関するもので、例えば膵臓癌などを診断することができる組成物、これを含む診断用キット及び前記組成物を用いて診断のための情報を提供する方法に関するものである。
【配列表フリーテキスト】
【0135】
配列番号1(IL-10RB):mawslgswlggcllvsalgmvpppenvrmnsvnfknilqwespafakgnltftaqylsyrifqdkcmnttltecdfsslskygdhtlrvraefadehsdwvnitfcpvddtiigppgmqvevladslhmrflapkieneyetwtmknvynswtynvqywkngtdekfqitpqydfevlrnlepwttycvqvrgflpdrnkagewsepvceqtthdetvpswmvavilmasvfmvclallgcfallwcvykktkyafsprnslpqhlkeflghphhntllffsfplsdendvfdklsviaedsesgkqnpgdscslgtppgqgpqs
配列番号2(IL-22RA):mrtlltiltvgslaahapedpsdllqhvkfqssnfeniltwdsgpegtpdtvysieyktygerdwvakkgcqritrkscnltvetgnltelyyarvtavsaggrsatkmtdrfsslqhttlkppdvtciskvrsiqmivhptptpiragdghrltledifhdlfyhlelqvnrtyqmhlggkqreyeffgltpdteflgtimicvptwakesapymcrvktlpdrtwtysfsgaflfsmgflvavlcylsyryvtkppappnslnvqrvltfqplrfiqehvlipvfdlsgpsslaqpvqysqirvsgprepagapqrhslseitylgqpdisilqpsnvpppqilsplsyapnaapevgppsyapqvtpeaqfpfyapqaiskvqpssyapqatpdswppsygvcmegsgkdsptgtlsspkhlrpkgqlqkeppagscmlgglslqevtslameesqeakslhqplgictdrtsdpnvlhsgeegtpqylkgqlpllssvqieghpmslplqppsrpcspsdqgpspwglleslvcpkdeakspapetsdleqpteldslfrglaltvqwes
配列番号3(IL-22):maalqksvssflmgtlatscllllallvqggaaapisshcrldksnfqqpyitnrtfmlakeasladnntdvrligeklfhgvsmsercylmkqvlnftleevlfpqsdrfqpymqevvpflarlsnrlstchiegddlhiqrnvqklkdtvkklgesgeikaigeldllfmslrnaci
配列番号4(IL-29):maaawtvvlvtlvlglavagpvptskptttgkgchigrfkslspqelasfkkardaleeslklknwscsspvfpgndlrllqvrerpvaleaelaltlkvleaaagpaledvldqplhtlhhilsqlqaciqpqptagprprgrlhhwlhrlqeapkkesagcleasvtfnlfrlltrdlkyvadgnlclrtsthpest
配列番号5(IFNLR1 isoform1):magperwgplllcllqaapgrprlappqnvtllsqnfsvyltwlpglgnpqdvtyfvayqssptrrrwreveecagtkellcsmmclkkqdlynkfkgrvrtvspsskspwveseyldylfevepappvlvltqteeilsanatyqlppcmppldlkyevafwkegagnktlfpvtphgqpvqitlqpaasehhclsartiytfsvpkyskfskptcfllevpeanwaflvlpsllilllviaaggviwktlmgnpwfqrakmpraldfsghthpvatfqpsrpesvndlflcpqkeltrgvrptprvrapatqqtrwkkdlaedeeeedeedtedgvsfqpyieppsflgqehqapghseaggvdsgrpraplvpsegssawdssdrswastvdsswdragssgylaekgpgqgpggdghqeslpppefskdsgfleelpednlsswatwgtlppepnlvpggppvslqtltfcwesspeeeeeareseiedsdagswgaestqrtedrgrtlghymar
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【配列表】
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