(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ブロック変性ポリシロキサンおよびそれから構成される組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 77/54 20060101AFI20220926BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08G77/54
D06M15/643
(21)【出願番号】P 2020555147
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 CN2018116374
(87)【国際公開番号】W WO2020102966
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ティアン、シュアイ
(72)【発明者】
【氏名】スン、チョンリャン
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/183057(WO,A1)
【文献】特開2012-107127(JP,A)
【文献】特開平11-199691(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103214679(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0045666(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19817776(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/182061(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0225099(US,A1)
【文献】特開平11-288087(JP,A)
【文献】特開2000-143797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/54
D06M 15/643
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(3)または(4):
【化1】
(式中、
Xは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも炭素数3である2価の炭化水素基を表すが、該炭化水素基は酸素原子によって中断されており、繰り返し構造単位中のXは同一であっても異なっていてもよく、
Mは、2価の炭化水素基またはC
aH
2a(aは1~10の正の整数で
ある。)を表し、繰り返し構造単位中のMは同一であっても異なっていてもよく、
Nは、窒素原子を表し、
mは、10~200の正の整数
であり、
nは、50~350の正の整数
であり、
Meはメチル基を表し
R
1、R
2、R
3およびR
4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、炭素数1~4個のアルキル基もしくはベンジル基、またはHを表し、
R
5およびR
6は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立してH、または炭素数1~20の、所望により酸素原子で置換されていてもよいアルキル基を表し
Yは、構造-B-[EO]
v[PO]
w-
(EOはエチレンオキシドであり、POはプロピレンオキシドであり、
Bは、線状または分岐のC1-C6アルキレン基であり、
vは、0~200であり、
wは、0~200であるが、
v+w≧1であり、
v/wは、1.1~5である。)
であり、
R
8およびR
7は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、Hまたは炭素数1~20のアルキル基を表し、
A
-は、無機または有機アニオンである。)を有する繰り返し構造単位を含む、ブロック変性ポリシロキサン。
【請求項2】
前記Xが、
(C
aH
2aO)
bCH
2CH(OH)(CH
2)、(C
aH
2aO)
bCH(OH)CH
2-、(C
aH
2aO)
b-CH(CH
2OH)(CH
2)
fCH(CH
2OH)-、(C
aH
2aO)
b-CH
2CH(OH)(CH
2)
fCH(CH
2OH)-、(C
aH
2aO)
b-(CH
2)
fOCH
2CH(OH)CH
2-、および(C
aH
2aO)
b(CH
2)
fOCH
2CH(CH
2(OH))-(上記式中、aは同一であっても異なっていてもよい、2~4の整数であり、bは同一であっても異なっていてもよい、0~100の整数であり、fは2~6の整数である。)
からなる群より選択される開環エポキシドである、請求項1に記載のブロック変性ポリシロキサン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブロック変性ポリシロキサンを含む組成物であって、下記原料
成分(A)-エポキシアルキルシリコーンオイル、
成分(B)-ポリエーテルアミン、
成分(C)-アミノアルキルシリコーンオイル
を含む反応から調製される組成物。
【請求項4】
前記成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイルがジエポキシアルキル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ジエポキシアルキル末端ポリジメチルシロキサンが、下記構造式(5)を有するジエポキシアルキル末端ポリジメチレンである、請求項4に記載の組成物:
【化2】
(式中、
nは、50~350の正の整数であり、
Meはメチルを表し、
Epoxyは、
(C
aH
2aO)
bCH
2CHO(CH
2)、(C
aH
2aO)
bCHOHCH
2-、(C
aH
2aO)
b-CH(CH
2O)(CH
2)
fCH(CH
2O)、(C
aH
2aO)
b-CH
2CHO(CH
2)
fCH(CH
2O)、(C
aH
2aO)
b-(CH
2)
fOCH
2CHOCH
2、および(C
aH
2aO)
b(CH
2)
fOCH
2CH(CH
2O)(上記式中、aは同一であっても異なっていてもよい、2~4の整数であり、bは同一であっても異なっていてもよい、0~100の整数であり、fは2~6の整数である。)からなる群より選択される。)。
【請求項6】
前記成分(B)のポリエーテルアミンが、
構造式:NR
a-B-[EO]
v[PO]
w-NR
aを有する物質の一種である、請求項3~5のいずれか一項に記載の組成物。
(式中、
vは、0~200であり、
wは、0~200であり、
Bは、線状または分岐のC2-C6アルキレン基であり、
Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、Hまたは炭素数1~6のアルキル基を表し、
aは、同一であっても異なっていてもよく、1~4の整数である。)
【請求項7】
前記成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイルが、ジアミノアルキル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項3~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
核磁気共鳴(NMR)により測定される未開環エポキシド基の含有量が0.05mmol/g未満である、請求項1または2に記載のブロック変性ポリシロキサンまたは請求項3~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
核磁気共鳴(NMR)により測定されるアミン価が、0.01~0.5meg/gである、請求項1または2に記載のブロック変性ポリシロキサンまたは請求項3~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記成分(B)のポリエーテルアミン中のアミノ官能基に対する、前記成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイル中のエポキシド基のモル比が、1.01~2の範囲である、請求項3~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイル中のアミノ官能基に対する、前記成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイル中のエポキシド基のモル比が、1~5の範囲である、請求項3~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記成分(A)エポキシアルキルシリコーンオイル、前記成分(B)ポリエーテルアミンおよび前記成分(C)アミノアルキルシリコーンオイルの総重量に基づく、前記成分(B)の重量比が、1~15重量%の範囲である、請求項3~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記成分(A)エポキシアルキルシリコーンオイル、前記成分(B)ポリエーテルアミンおよび前記成分(C)アミノアルキルシリコーンオイルの総重量に基づく、前記成分(C)の重量比が、5~30重量%の範囲である、請求項3~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1または2に記載のブロック変性ポリシロキサンまたは請求項3~13のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、下記工程:
成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイルを成分(B)のポリエーテルアミンと先ず反応させる第1工程、および
次いで成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイルを系に添加して、さらに反応させる第2工程、を含む、方法。
【請求項15】
請求項1または2に記載のブロック変性ポリシロキサン、または請求項3~13のいずれか一項に記載の組成物を含んでなるエマルジョンであって、10~100nmの粒子サイズD50を有する、エマルジョン。
【請求項16】
テキスタイル仕上げの分野における、請求項3~13に記載のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
テキスタイル柔軟剤、柔軟仕上げ剤、スムージング剤、および仕上げ剤の分野における請求項15に記載のエマルジョンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テキスタイル仕上げ用のシリコーン系軟化剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
中国特許CN100368467Cは、四級化アミノアルキルポリシロキサンと、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド(EO/PO)単位を含む非イオン性界面活性化合物とを含む繊維処理および仕上げ用の組成物を開示している。当該文献中の実施例1によれば、四級化アミノアルキルポリシロキサンは、N、N、N’、N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、JEFFAMINE ED600ポリエーテルアミン、およびエポキシアルキルシリコーンオイルの酸触媒反応によって得られている。
【0003】
米国特許US5807956は、親水性を持続できる柔軟剤として用い得る、ポリシロキサンとポリエーテルアミン単位とを含む(AB)nA型の共重合体を開示している。ポリシロキサン単位は、一般式[X(CaH2aO)bR2[SiO(R1)2]cSi(R1)2R2(OCaH2a)bX]で表され、ポリエーテルアミン単位は、一般式[YO(CaH2aO)dY](式中、Xは開環エポキシドであり、Yは二級または三級アミンである)で表される。
【0004】
市販されている既存の柔軟剤製品において、軟らかな手触りと良好な親水性とが両方しているものはほとんどない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許CN100368467C号
【文献】米国特許US5807956号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ブロック変性ポリシロキサンに関する。ブロック変性ポリシロキサンを含む組成物は、テキスタイル仕上げの分野において用いることができる。組成物を含むエマルジョンは、非常に小さく狭い粒径分布と優れた浸透性を有しており、かつ顕著な柔軟特性と良好な親水性を付与する。
【0007】
本発明はブロック変性ポリシロキサンに関し、当該ブロック変性ポリシロキサンは線状または環状のポリシロキサン共重合体であり、下記構造式(1)または(2)を有する繰り返し構造単位を含む。
【化1】
(式中、
Xは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも炭素数3である2価の炭化水素基を表すが、該炭化水素基は酸素原子によって中断されており、繰り返し構造単位中のXは同一であっても異なっていてもよく、
Mは、2価の炭化水素基またはC
aH
2a(aは1~10の正の整数であり、好ましくは2~4の正の整数である。)を表し、繰り返し構造単位中のMは同一であっても異なっていてもよく、
Nは、窒素原子を表し、
mは、10~200の正の整数、好ましくは20~150の正の整数、より好ましくは30~60の正の整数であり、
nは、50~350の正の整数、好ましくは70~300の正の整数、より好ましくは80~200の正の整数であり、
Meはメチル基を表し
R
1、R
2、R
3およびR
4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、炭素数1~4個のアルキル基もしくはベンジル基、またはHを表し、
R
5およびR
6は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立してH、または炭素数1~20の、所望により酸素原子で置換されていてもよいアルキル基を表し、
A
-は、無機または有機アニオンである。)。
【0008】
【化2】
(式中、
Yは、構造-B-[EO]
v[PO]
w-
(EOはエチレンオキシドであり、POはプロピレンオキシドであり、
Bは、線状または分岐のC1-C6アルキレン基、好ましくはC2-C4アルキレン基であり、
vは、0~200、好ましくは1~50、より好ましくは5~30であり、
wは、0~200、好ましくは1~20、より好ましくは1~10であるが、
v+w≧1、好ましくはv+w≧9、より好ましくは20≧v+w≧10であり、
v/wは、1.1~5、好ましくは2~4、より好ましくは2~3である。)
であり、
R
6およびR
7は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、Hまたは炭素数1~20のアルキル基を表し、
A
-は、無機または有機アニオンであり、好ましくはアセテートである。)。
【0009】
上記ブロック変性ポリシロキサンにおいて、Xは、
(CaH2aO)bCH2CH(OH)(CH2)、
(CaH2aO)bCH(OH)CH2-、
(CaH2aO)b-CH(CH2OH)(CH2)fCH(CH2OH)-、
(CaH2aO)b-CH2CH(OH)(CH2)fCH(CH2OH)-、
(CaH2aO)b-(CH2)fOCH2CH(OH)CH2-、および
(CaH2aO)b(CH2)fOCH2CH(CH2(OH))-
(上記式中、aは同一であっても異なっていてもよい、2~4の整数であり、bは同一であっても異なっていてもよい、0~100の整数であり、fは2~6の整数である。)
からなる群より選択される開環エポキシドである。
【0010】
上記ブロック変性ポリシロキサンを含む組成物である。
【0011】
上記ブロック変性ポリシロキサンと成分(C)-アミノアルキルシリコーンオイルとを含む組成物である。
【0012】
上記ブロック変性ポリシロキサンと成分(C)-アミノアルキルシリコーンオイルとを含むエマルジョン組成物である。
【0013】
上記ブロック変性ポリシロキサンを含む組成物であって、好ましくは、下記原料
成分(A)-エポキシアルキルシリコーンオイル、
成分(B)-ポリエーテルアミン、
成分(C)-アミノアルキルシリコーンオイル
を含む反応から調製される組成物である。
【0014】
上記ブロック変性ポリシロキサンまたは上記組成物において、該反応はエポキシ開環反応である。
【0015】
成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイルは、ジエポキシアルキル末端ポリジメチルシロキサンであり、好ましくは、下記構造式(5)を有するジエポキシアルキル末端ポリジメチレンである。
【化3】
式中、
nは、50~350の正の整数、好ましくは70~300の正の整数、より好ましくは80~200の正の整数であり、
Meはメチルを表し、
エポキシは、
(C
aH
2aO)
bCH
2CHO(CH
2)、
(C
aH
2aO)
bCHOHCH
2-、
(C
aH
2aO)
b-CH(CH
2O)(CH
2)
fCH(CH
2O)、
(C
aH
2aO)
b-CH
2CHO(CH
2)
fCH(CH
2O)、
(C
aH
2aO)
b-(CH
2)
fOCH
2CHOCH
2、および
(C
aH
2aO)
b(CH
2)
fOCH
2CH(CH
2O)
(上記式中、aは同一であっても異なっていてもよい、2~4の整数であり、bは同一であっても異なっていてもよい、0~100の整数であり、fは2~6の整数である。)
からなる群より選択される。
【0016】
上記組成物において、成分(A)のエポキシ、エポキシアルキルシリコーンオイルは、
ω-(3,4-エポキシシクロヘキシル)アルキレン、
β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチレン、
β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-β-メチルエチレン、および
β-(3,4-エポキシ-4-メチルシクロヘキシル)-β-メチルエチレン、
からなる群より選択される。
【0017】
本発明の成分(B)のポリエーテルアミンは、構造式:NRa-B-[EO]v[PO]w-NRaを有する物質の一種である。式中、
vは、0~200、好ましくは1~50、より好ましくは5~30であり、
wは、0~200、好ましくは1~20、より好ましくは1~10であり、
Bは、線状または分岐のC2-C6アルキレン基、好ましくはプロピレン基であり、
Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、Hまたは炭素数1~6のアルキル基を表し、
aは、同一であっても異なっていてもよく、1~4の整数である。
【0018】
本発明の成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイルはジアミノアルキル末端ポリジメチルシロキサンであり、好ましくはジ-3-アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンであり、より好ましくは下記構造式(6)を有するジ-3-アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンである。
【化4】
上記式中、
Mは、2価の炭化水素基またはC
aH
2a(aは1~10の正の整数、好ましくは2~4の正の整数である。)を表すが、繰り返し単位中のM基は同一であっても異なっていてもよく、
R
1、R
2、R
3およびR
4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基もしくはベンジル基またはHを表し、
mは、10~200の正の整数、好ましくは20~150の正の整数、より好ましくは30~60の正の整数であり、
Meはメチルを表す。
【0019】
上記ブロック変性ポリシロキサンまたは上記組成物は、核磁気共鳴(NMR)により測定される未開環エポキシド基の含有量が0.05mmol/g未満、好ましくは0.03mmol/g未満、より好ましくは0.01mmol/gである。
【0020】
上記ブロック変性ポリシロキサンまたは上記組成物は、核磁気共鳴(NMR)により測定されるアミン価が、0.01~0.5meg/g、好ましくは0.03~0.3meg/g、より好ましくは0.05~0.2meg/g、より好ましくは0.1~0.2meg/gである。
【0021】
アミン価とは、物質1g中に含まれるアミンと同当量の水酸化カリウムのミリグラム数をいう。
【0022】
上記ブロック変性ポリシロキサンまたは上記組成物は、30~70重量%、好ましくは40~60重量%、より好ましくは45~55重量%の固形分含有量を有する。
【0023】
なお、本明細書において固形分含有量は、2gの試料を時計皿上に置き、105℃で2時間乾燥した後の重量をいうものとする。
【0024】
上記組成物は、成分(B)のポリエーテルアミン中のアミノ官能基に対する、成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイル中のエポキシド基のモル比が、1.01~2の範囲であり、好ましくは1.1~1.5の範囲である。
【0025】
上記組成物は、成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイル中のアミノ官能基に対する、成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイル中のエポキシド基のモル比が、1~5の範囲であり、好ましくは1.5~3.5の範囲である。
【0026】
上記組成物は、成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイル中のエポキシド基に対する、成分(B)のポリエーテルアミンおよび成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイルの双方に含まれるアミノ官能基のモル比が、1.01~3の範囲であり、好ましくは1.1~2の範囲であり、より好ましくは1.1~1.4の範囲である。
【0027】
上記組成物は、成分(B)のポリエーテルアミン中のアミノ官能基に対する、成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイルのモル比が、0.2~0.8の範囲であり、好ましくは0.4~0.7の範囲である。
【0028】
上記組成物は、成分(A)エポキシアルキルシリコーンオイル、成分(B)ポリエーテルアミンおよび成分(C)アミノアルキルシリコーンオイルの総重量に基づく、成分(B)の重量比が、1~15重量%、好ましくは1.5~12重量%、より好ましくは5~10重量%の範囲である。
【0029】
上記組成物は、成分(A)エポキシアルキルシリコーンオイル、成分(B)ポリエーテルアミンおよび成分(C)アミノアルキルシリコーンオイルの総重量に基づく、成分(C)の重量比が、5~30重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは10~15重量%の範囲である。
【0030】
上記ブロック変性ポリシロキサンまたは上記組成物は、成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイルを成分(B)のポリエーテルアミンと先ず反応させ、次いで成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイルを系に添加して、ささに反応させることにより調製される。
【0031】
上記ブロック変性ポリシロキサンまたは上記組成物は、成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイルを成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイルと先ず反応させ、次いで成分(B)のポリエーテルアミンを系に添加して、ささに反応させることにより調製される。
【0032】
上記ブロック変性ポリシロキサンまたは上記組成物は、成分(A)のエポキシアルキルシリコーンオイル、成分(B)のポリエーテルアミンおよび成分(C)のアミノアルキルシリコーンオイルを同時に系に加えて反応させることにより調製される。
【0033】
上記ブロック変性ポリシロキサンを含むエマルジョンは、10~100nm、好ましくは10~50nmの粒子サイズD50を有する。
【0034】
上記組成物を含むエマルジョンは、10~100nm、好ましくは10~50nm、より好ましくは10~29nmの粒子サイズD50を有する。
【0035】
上記エマルジョンは、粒子サイズ分布幅が1.5以下であり、好ましくは1.35以下である。
【0036】
本発明において、粒子サイズの測定は、動的光散乱により行われる。
【0037】
参照標準:当該方法は、ISO 13321、ISO 22412 および21CFR Part11に準拠する。
【0038】
装置は、Malvem Nano ZS90(Malvem Instrument社製)を使用する。
【0039】
決定方法:25℃にて、試料を測定装置内に置く。本発明において、粒子サイズ分布幅は、(D90-D10)/D50として定義される。
【0040】
ここで、D50は、累積分布における50%での粒子サイズの値として定義される。例えば、D50が0.68μmであるとき、その試料中の粒子の50%は、0.68μmよりも大きく、50%は0.68μmよりも小さい。D10またはD90とは、それぞれ累積分布における10%または90%での粒子サイズの値として定義される。例えば、D10が0.1μmであるとき、試料中の粒子の10%は0.1μmよりも小さく、D90が1μmであるとき、試料中の粒子の90%は1μmよりも小さい。
【0041】
上記エマルジョンは、さらにアルキルアルコールポリオキシエチレンおよび/またはアルキル酸ポリオキシエチレンエステル型の非イオン性界面活性剤を含む。
【0042】
上記エマルジョンは、固形分含量が10~30重量%の範囲であり、好ましくは10~20重量%の範囲であり、より好ましくは13~18重量%の範囲である。
【0043】
テキスタイル仕上げ分野における上記ブロック変性ポリシロキサンの使用。
テキスタイル仕上げ分野における上記組成物の使用。
テキスタイル仕上げ分野における上記エマルジョンの使用。
テキスタイル柔軟剤、柔軟仕上げ剤、スムージング剤、および仕上げ剤の分野におけるエマルジョンの使用。
【0044】
テキスタイルは、セルロース繊維、タンパク質繊維、合成繊維、またはそれらの混合物からなり、繊維構造を有している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明において使用した原材料は下記のとおりである。
HP80X:Jiangxi Xinjiayi New Materials Co.、Ltdの水素末端ポリジメチルシロキサン、水素含有量0.03重量%、分子量(Mw)6666.6g/mol
HYC-12:Zhejiang Sucon Silicone Co.、Ltdの水素末端ポリジメチルシロキサン、水素含有量0.016重量%、分子量(Mw)12500g/mol
HP1000:Jiangxi Xinjiayi New Materials Co.、Ltdの水素末端ポリジメチルシロキサン、水素含有量0.01重量%、分子量(Mw)20000g/molです。
AGE:市販のアリルグリシジルエーテル、分子量(Mw)114.14g/mol
Pt触媒:塩化白金酸
JEFFAMINE ED600:一般式NH2CH(CH3)CH2-[EO]v-[PO]w-NH2を有するハンツマン社のポリエーテルアミン(式中、EOはOCH2CH2を表し、エチレンオキシド単位であり、POはOCH2(CH3)CH2を表し、プロピレンオキシド単位であり、vは約9でありWは約3.6)
WACKER FLUID NH 40D:アミノアルキルシリコーンオイル、具体的にはWacker Chemicalsのジ-3-アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、分子量2900~3300g/mol、アミン値0.77~0.91mmol
WACKER FLUID NH 130D:アミノアルキルシリコーンオイル、具体的にはWacker Chemicalsのジ-3-アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、分子量9500~12000g/mol、アミン値0.16~0.21mmol
RH-NB-8168-9:Ningbo Runhe High-Tech Materials Co.、Ltdの線状多成分コポリマーブロック変性シリコーン(ジエポキシアルキル末端シリコーンオイルがポリエーテルアミンと開環反応を起こし得る単位を含む)
乳化剤1:Sasolのイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、EO単位が10個、HLB値13.5
乳化剤2:Sasolのイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、EO単位が5個、HLB値10.5
【0046】
例:エポキシアルキルシリコーンオイルの調製
【表1】
【0047】
表1によれば、HP80X、HYC-12、およびHP1000を、白金触媒の存在下で、80~150℃、窒素雰囲気下で一定時間AGEと反応させた。次に、得られた混合物を135℃で真空蒸留によって蒸発させてエポキシアルキルシリコーンオイル1~3を得た。反応中のPtの濃度は6ppmであった。エポキシアルキルシリコーンオイル1、2または3は、ジエポキシアルキル末端シリコーンオイルである。
【0048】
例:ブロック変性ポリシロキサンの調製とブロック変性ポリシロキサンからなる組成物
【表2】
【0049】
表2に従った組成物は、以下の工程により準備した。
(1)エポキシアルキルシリコーンオイル、ポリエーテルアミンおよびイソプロピルアルコールを、窒素雰囲気下、80℃で2時間反応させた。
(2)アミノアルキルシリコーンオイル(WACKER FLUID NH40DまたはWACKERFLUID NH 130D等)を添加して、工程(1)で得られた生成物と、84~90℃で2.5~5時間反応させた。
(3)工程(2)において得られた生成物に酢酸を加え、pH値が約7に調整されるまで、ゆっくりと撹拌しながら一定時間反応させた。
(4)工程(3)で得られた混合物を冷却して、本発明のブロック変性ポリシロキサンおよびそれを用いた組成物を得た。
【0050】
例:柔軟剤エマルジョンの調製(実施例と比較例)
【表3】
【0051】
【0052】
表3によれば、本発明の発明者らは、エマルジョン実施例1および実施例2では、約20nmの粒子サイズを有するマイクロエマルジョンとなり、一方、RH-NB-8168-9のみを含むエマルジョン比較例2では、約250nmの粒子サイズを有するエマルジョンとなることを予想外にも見出した。表3に示すように、本発明のブロック変性ポリシロキサンは、比較としてのRH-NB-8168-9やWACKER NH 130Dの特性とはかなり異なる特性を有しており、たとえば、著しく改善された自己乳化性を示す。優れた熱安定性おおび長期保存安定性を備えたマイクロエマルジョンは、粒子サイズが小さいため、テキスタイルの微細構造との接触が容易になり、浸透性が向上します。
【0053】
柔軟仕上げ工程:
試験で使用するテキスタイル:ポリエステルフランネル
仕上げ液の準備→5分間の含浸、バス比1:20→5分間の回転(液体の同伴率250~300%)→オーブン乾燥(105℃で20分間)→硬化(180℃で30秒間)→室温均衡→手触り評価
【0054】
【0055】
【0056】
表5によれば、本発明の発明者らは、エマルジョン実施例1においては、より柔軟で絹のような手触りであり、それが柔軟特性を際立たせていることを予想外にも見出した。
エマルジョン実施例1と比較すると、エマルジョン比較例2においては、エポキシアルキルシリコーンオイルがポリエーテルアミンと反応し得る繰り返し単位が含まれるものの、柔軟でツルツル感を付与することができないことがわかる。
【0057】
親水性テスト:
AATCC Test Method 79-2010(漂白したテキスタイルの吸収性)に準拠して、平坦に広げたテキスタイルの表面に、スポイトで水滴を3cmの高さから滴下し、テキスタイル表面から水滴が消失するまでの時間を濡れ時間とする。濡れ時間が短いほど、テキスタイルの親水性が強い。
【0058】
親水性を、5段階評価(1が最低で、5が最高)により示す。具体的には、濡れ時間(tm)<5秒:5点、5秒<tm<20秒:4点、20秒<tm<1分:3点、1分<tm<5分:2点、tm>5分:1点とした。
【0059】
【0060】
表6によれば、本発明の発明者らは、エマルジョン実施例1および2では、良好な親水性と顕著な柔軟性の両特性を有しており、親水性の有意な低下は見られなかったことを予期せず見出した。