IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ヨーロピアン ユニオン、リプレゼンテッド バイ ザ ヨーロピアン コミッションの特許一覧

特許7145975単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念
<>
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図1
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図2
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図3
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図4
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図5
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図6
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図7
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図8
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図9
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図10
  • 特許-単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】単一又はスタックした複数の打ち上げのための効率的な衛星構造の概念
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B64G1/64 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020562203
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2019061440
(87)【国際公開番号】W WO2019223984
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】18425039.7
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510304715
【氏名又は名称】ザ ヨーロピアン ユニオン、リプレゼンテッド バイ ザ ヨーロピアン コミッション
【氏名又は名称原語表記】The European Union,represented by the European Commission
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パネッティ,アニセト
(72)【発明者】
【氏名】ガラッシ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ランデラ,ジュセッペ
(72)【発明者】
【氏名】カロファノ,ヴィンチェンツォ
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0099059(US,A1)
【文献】特開2018-030556(JP,A)
【文献】米国特許第05522569(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0096240(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318635(US,A1)
【文献】米国特許第05803402(US,A)
【文献】実開平04-017504(JP,U)
【文献】特開2000-153800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/64
B64G 1/22
B64G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星構造と、前記衛星構造に対し解放可能に付着する専用の衛星分離部(PAF)(5)を含むシステムであって、前記衛星構造が外部負荷担持構造を備えており、
前記衛星構造は、
各々がトラス構造アーキテクチャにおける傾斜ビームの構造的補強機能を発揮するように構成されているところの、内部補強材もしくは補強材埋め込み構造またはスキン厚の補強材(23)を有してなる外部垂直平面パネル(1)
を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記衛星構造が、離散的な数、典型的には3つ、4つまたはそれ以上の数の、前記専用の衛星分離部(PAF)(5)に対し付着するためのインターフェースを有し、前記専用のPAF(5)は、打ち上げ機の上段のボルト締結型インターフェースに取り付け可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記衛星構造が、互いに同一であるか又は異なる質量および高さを有することができる2つ以上の衛星のスタッキングを可能にするところの、同一の下部および上部の離散的な数のインターフェースを有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
衛星構造と専用のPAFとの間、及び/又は、スタックされた衛星構造の間の個々のインターフェースが、互いに同一であり、それぞれが、局所的な機械的負荷に応じた1つ、2つ、またはそれ以上の電気作動式分離装置を装備することができる、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、打ち上げ機から軌道上に宇宙船/衛星を配備するためのシステムの技術部門に関し、より具体的には、効率的な衛星構造の概念、及び、単一の打ち上げ機からの単一の打ち上げまたはスタックした複数の打ち上げに適したその専用の発射装置インターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、打ち上げ機(単に発射装置としても知られる)は、地球の周りの所定の軌道に宇宙船/衛星を配備するために使用される。この目的のために、1つ以上の宇宙船および/または1つ以上の衛星を配備するための1つ以上のシステムが通常使用され、そのそれぞれは、一般に、以下のように構成される、即ち:
・打ち上げ時には、発射装置の利用可能な体積に収納された1つ以上の宇宙船および/または1つ以上の衛星をしっかりと強く保持する、及び、
・発射装置が軌道上の所定の位置に到達すると、制御信号に応答して宇宙船/衛星を配備(すなわち、解放)する(、ように構成される)。
【0003】
この領域に関連するいくつかの公知の解決策は、特許文献1(US 8915472 B2)および特許文献2(US 9669948 B2)、並びに特許文献3~7において提供されている。
【0004】
特に、特許文献1は、複数の宇宙船打ち上げシステムに関するものであり、下部衛星および上部衛星という2つの衛星から構成される打ち上げシステムを開示している。下部のものは、標準のリングインターフェースによって打ち上げ機の上段に解放可能に取り付けられ、同じタイプの標準のリングインターフェースによって上部衛星に同様に解放可能に取り付けられている。下部衛星は、上部衛星によって誘発される打ち上げ負荷を支え、それによって追加の支持構造(例えば、ディスペンサ)の必要性を排除する。双方の衛星は、リングインターフェースに接続されている打ち上げ負荷の主要部分を支える中央コア構造を含む。
【0005】
特許文献2は、サイドバイサイドデュアル打ち上げ宇宙船構成に関し、デュアル打ち上げアダプタ上に並んで配置された2つの衛星から構成された打ち上げシステムを開示している。双方の衛星は、標準のリングインターフェースを使用してデュアル打ち上げアダプタに解放可能に取り付けられている。デュアル打ち上げアダプタは、標準のリングインターフェースを使用して打ち上げ機の最終段に搭載されている。双方の衛星は、リングインターフェースに接続された打ち上げ負荷の主要部分を支える中央コア構造を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,915,472号明細書
【文献】米国特許第9,669,948号明細書
【文献】米国公開US 2016/0318653 A1
【文献】米国特許第5,522,569号明細書
【文献】欧州公開EP 1008516 A1
【文献】米国公開US 2013/0099059 A1
【文献】米国公開US 2015/0151855 A1
【発明の概要】
【0007】
以下、<1>,<2>,<3>,<4>,<5>,<6>,<7>の各欄を順番に説明する(但し、<1>欄は「図面の簡単な説明」である。)。
尚、本発明をよりよく理解するために、純粋に非限定的な例として意図されている好ましい実施形態が、添付の図面(全て縮尺どおりではない)を参照して説明される。
<1.図面の簡単な説明>
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかる衛星構造の概念および衛星分離部(PAF)(Payload Attaching Fitting)を概略的に示している。
図2】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかる、PAF(単一タワーアーキテクチャを有する)上の3つの衛星のスタッキングを概略的に示している。
図3】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかる、PAF上の4つの衛星(サイドバイサイドアーキテクチャを有する)を概略的に示している。
図4】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかる、2つの隣接する衛星間、または下部衛星とPAF(任意のアーキテクチャを有する)との間の解放可能なカップコーンインターフェースを概略的に示している。
図5】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかる、隣接する衛星間、または下部衛星とPAF(任意のアーキテクチャを有する)との間に設置されることができる可変数の電気作動式分離装置を概略的に示している。
図6】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかる、選択されたカップコーン分離インターフェースに設置された解放可能な電気コネクタおよびばね駆動プッシャを概略的に示している。
図7】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかるトラス構造アーキテクチャの概念を概略的に示している。
図8】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかる、PAF(単一タワーアーキテクチャを有する)上の2つの衛星のスタッキングを概略的に示している。
図9】本発明の好ましい非限定的な実施形態にかかる、PAF(サイドバイサイドアーキテクチャを有する)上の2つの衛星のスタッキングを概略的に示している。
図10】本発明の非限定的な例にかかる、一般的な衛星(可変断面寸法を有する)とそのPAFとの間の解放可能なインターフェースを概略的に示している。
図11】本発明の非限定的な例にかかる、PAF上またはスタックの下部衛星上のボルト締結型インターフェースによって搭載および取り外しが可能なフレームに搭載された分離システムの下部を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<2.本発明の理論的根拠>
本発明の概念(コンセプト)は、以下の考察に基づいている。構造力学の観点から、宇宙船は、発射装置によって誘発される慣性負荷を受ける片持ち梁として単純化されることができる。外部衛星構造は、中央コア構造(外部衛星構造の断面寸法よりも小さい断面寸法を有する)とは対照的に、断面二次モーメントが大きいため、打ち上げ負荷を支えるのにより効果的であることは明らかである。断面二次モーメントは、構造の剛性および強度の重要な要素である。
【0010】
衛星の典型的な外面は平面であり、内部電子ユニットおよび外部熱ラジエータのための最も単純且つ効率的なサポートを提供する。これは、平面と打ち上げ機のボルト締結(型)インターフェースとの間のコーナーからの負荷遷移平均を提供することができる専用の発射装置インターフェースを導入する必要があることを意味する。
【0011】
要約すると、本発明は、専用の発射装置インターフェース(それは、比較的軽量且つコンパクトであると共に、それ自体の地球再突入または墓場軌道への廃棄を伴う衛星分離後の打ち上げ機に接続されたままである)と協力(又は連動)して、打ち上げ機の質量能力のより完全な活用を可能にするものである。
【0012】
<3.衛星の構造的概念>
本発明にかかる衛星の構造的概念は、典型的には正方形または長方形のベースを有する外部負荷支持構造を備える(しかしながら、他の形状もまた便利に使用されることができる)。
【0013】
図1を参照すると、当該構造は、垂直ビーム2によって接続された外部垂直平面パネル1を含む。外部垂直平面パネル1は、衛星製造に通常使用される任意の材料(すなわち、アルミニウム、アルミニウムサンドイッチ、炭素繊維強化熱可塑性(CFRP)モノコック、CFRPサンドイッチ、チタンなど、またはそれらの組み合わせ)で実現されることができる。
【0014】
垂直パネル1は、4つ(またはそれ以上)のコーナービーム2によって接続されている。コーナービーム2は、任意の断面(通常、正方形、長方形、または円形)を有することができ、衛星製造に通常使用される任意の材料で実現されることができる。コーナービーム2は、それらの下端および上端8に解放可能なインターフェースを有する。内部垂直剪断パネル3および水平プラットフォームパネル4はまた、構造的または機器の収容の便宜のために使用されることができる。
【0015】
<4.下部遷移構造>
引き続き図1を参照すると、下部遷移構造(または衛星分離部-PAF)5が概念(コンセプト)を完成させる。PAF5の上部には、衛星構造の各コーナービーム2との別個の複数の解放可能なインターフェース6があり、下部には、打ち上げ機(図1には示されていない)の上段とのボルト締結型インターフェース7がある。
【0016】
図10を参照すると、様々な衛星断面寸法14が、後者(PAF15)を再設計する必要なしに、同じPAF15に適合されることができる。これは、垂直ビーム16の終端角度を変更することによって可能である。
【0017】
図11を参照すると、衛星の輸送、インターフェースの適合チェック、および分離テストを容易にするために、分離システムの下部は、PAF18のボルト締結型インターフェースを使用して搭載および取り外し可能なフレーム17に、又は、スタック19の下部衛星に搭載されている。
【0018】
<5.衛星のスタッキング>
衛星のスタッキングは、関連するPAFに搭載された図2に示すような単一タワーとして、または、衛星の2つのタワーを収容するように設計された関連するPAF20に搭載された二重タワー、すなわち、図3に示すように並べて配置された2つのタワーとして実現されることができる。アセンブリアーキテクチャは、選択された発射装置の利用可能なフェアリング容積と質量容量に依存する。
【0019】
スタックされた衛星間、および下部衛星とPAFとの間の解放可能なインターフェースは同一である。これらのインターフェースは、便利には、以下のものを含む:
図4を参照すると、各コーナービーム2の縁部に接続された少なくとも3つのカップコーンインターフェース10を含む機械的インターフェース;
図6を参照すると、打ち上げ機および地上支援装置との通信を提供するための電気ハーネスインターフェース21、電気コネクタ用のブラケットが装備されている解放可能なインターフェース;
・衛星分離検出用のマイクロスイッチ;
・再び図6を参照すると、宇宙船の分離を確実にするためのシステム22、典型的には、分離後に衛星に必要な初期運動エネルギを与えるための選択された分離インターフェースにおけるばね駆動分離プッシャ。
【0020】
再び図4を参照すると、カップコーンインターフェース10は、電気作動式分離装置(例えば、NEA、パイロボルトなど)によって担持される軸方向牽引負荷を除いて、全ての局所負荷を担持することができる。
【0021】
図5を参照すると、スタッキングの最も下の接続(PAF下部衛星)は、3つ(またはそれ以上)の分離装置11の全てを使用することができる。上部接続12は、より低い負荷レベルのために、より少ない数の分離装置を使用することができる。
【0022】
外部平面パネル1は、コーナービーム2を組み込むことができ、これは、積層造形技術が使用されている場合に予測可能である。
【0023】
図7を参照すると、基本的な構造的概念は、垂直ビームおよび傾斜ビーム(又は対角ビーム)のみから構成された公知のトラス構造アーキテクチャと同等である。それにもかかわらず、衛星外部構造は、電子機器を収容するために平面であり、熱放射体として機能し、放射線遮蔽のための緊密なエンベロープを提供するため、傾斜ビーム(又は対角ビーム)13によって開くことはできない。これは、傾斜ビーム(又は対角ビーム)によって発揮される構造的補強機能がサンドイッチパネルによって実行されることを意味する。これらのパネルは、構造的最適化の理由から、補強材が埋め込まれた構造またはスキン厚の補強材23を便利に含むことができる。
【0024】
<6.本発明の2つの好ましい非限定的な実施形態>
本発明の2つの好ましい非限定的な実施形態は、以下のとおりである:
1)図8を参照すると、専用のPAFに2つの同一の衛星のスタッキングが搭載された単一タワーアーキテクチャ、
2)図9を参照すると、専用のPAFに2つの同一の衛星が搭載されたサイドバイサイドアーキテクチャ。
【0025】
<7.類似の既存の概念に対する本発明の主な技術的利点>
a)原則として、<2.本発明の理論的根拠>の欄で説明したように、本発明は、既存の解決策に対して構造的観点からより効率的である(すなわち、特定の剛性性能レベルは、より低い構造的質量によって達成することができる)。
b)構造的効率は、CFRP構造に対して放射線遮蔽とコスト削減に関してより高い性能を備えた全アルミニウム構造を選択して使用されることができる。
c)衛星の内部容積は、機器の収容に完全に利用可能であるが、これは、大きくて長い内部構造チューブを備えた衛星には当てはまらない。
d)衛星の上部および下部プラットフォームは、機器の収容に完全に利用可能であるが、(同様に)これは、大きくて長い内部構造チューブを備えた衛星には当てはまらない。
e)本発明の複雑さは、コンパクトなPAF構造およびインターフェースに限定され、大きくて長い内部構造チューブには限定されない。
f)限られた数のパイロ/NEA分離ボルトのコストは、2つ以上のクランプバンドシステムのコストに対して競争力がある。
g)分離可能なインターフェースは、機械的負荷が高い衛星スタッキングのベースにおいてより堅牢になり、スタッキングのその他の分離可能なインターフェースでは堅牢性が低くなる。
【0026】
結論として、主に外部負荷担持構造とその専用の発射装置インターフェースとを有する衛星の構造的概念に関する本発明は、打ち上げ機の質量能力および衛星の内部容積の効率的な活用を可能にすることは注目に値する。本発明にかかるこの概念は、好都合と思われる限り、任意の宇宙ミッション/軌道/発射装置に有利に使用されることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 外部垂直平面パネル
5 衛星分離部(PAF[Payload Attaching Fitting])
13 傾斜ビーム(又は対角ビーム)
23 スキン厚の補強材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11