(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】外科用器具のための駆動シャフト
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20220926BHJP
A61B 17/3201 20060101ALI20220926BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
A61B17/00
A61B17/3201
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021073310
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】594089821
【氏名又は名称】ジャイラス メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マーノ ナグテガール
(72)【発明者】
【氏名】ナフィセ アハンチアン
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0073462(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0065466(US,A1)
【文献】特開2004-057616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 17/3201
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用器具のための駆動シャフトであって、
一対の対向する第1及び第2の細長い駆動部材であって、前記第1及び第2の細長い駆動部材の遠位端は、前記外科用器具のエンドエフェクタを作動させるように構成される、前記第1及び第2の細長い駆動部材を備え、
前記第1の細長い駆動部材は、その遠位端から前記駆動シャフトの長手方向軸に垂直な第1の方向に延びる第1のフランジを少なくとも備え、
前記第2の細長い駆動部材は、その遠位端から前記駆動シャフトの前記長手方向軸に垂直な第2の方向に延びる第2のフランジを少なくとも備え
、
前記第1の細長い駆動部材の前記遠位端は、前記駆動シャフトを前記外科用器具のハンドルに固定するための保持成形品に取り付けることができるように、前記第2の細長い駆動部材の前記遠位端に対して横方向に移動可能である、
駆動シャフト。
【請求項2】
前記第1及び第2の方向は、逆方向である、
請求項1に記載の駆動シャフト。
【請求項3】
前記第1及び第2の細長い駆動部材は、前記駆動シャフトの近位端に向かって第1の位置で接続される、
請求項1又は請求項2に記載の駆動シャフト。
【請求項4】
前記第1及び第2の細長い駆動部材の前記遠位端は、前記エンドエフェクタを動作させるための駆動ピンを受け入れるように構成される、
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の駆動シャフト。
【請求項5】
前記第1及び第2のフランジは前記駆動シャフトの前記遠位端がスペード状となる形状に構成される、
請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の駆動シャフト。
【請求項6】
外科用器具のためのエンドエフェクタであって、
一対の対向する第1及び第2の顎部材であって、前記第1及び第2の顎部材は枢動可能に接続され、前記顎部材の各々は、その近位端から延在する顎フランジを備え、前記顎フランジはそれぞれ細長いスロットを有する、前記第1及び第2の顎部材と;
前記第1の顎部材を前記第2の顎部材に対して第1の開放位置から第2の閉鎖位置に移動させるように構成された駆動アセンブリであって、
前記第1及び第2の顎部材の前記細長いスロットに受け入れられるように構成された駆動ピンであって、前記細長いスロットの近位端と遠位端との間で移動可能な前記駆動ピンと;
請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の駆動シャフトであって、前記第1及び第2の細長い駆動部材は、前記駆動シャフトの前記遠位端で前記駆動ピンを受け入れるように構成され、前記駆動シャフトは、その長手方向軸に沿って第1の方向に移動して、前記駆動ピンを前記細長いスロットの前記遠位端に向かって長手方向に動作させることによって、前記第1の顎部材を前記第1の開放位置に移動させ、且つその長手方向軸に沿って第2の方向に移動して、前記駆動ピンを前記細長いスロットの前記近位端に向かって長手方向に動作させる、前記駆動シャフトと;を備える、前記駆動アセンブリと;を備える、
エンドエフェクタ。
【請求項7】
前記第1及び第2の顎部材から延在する外側シャフトであって、前記駆動シャフトは前記外側シャフトの内部に位置する、前記外側シャフトをさらに備える、
請求項
6に記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
前記第1及び第2の駆動部材の前記第1及び第2のフランジは、前記外側シャフト内における横方向の移動が制限されるように構成されている、
請求項
7に記載のエンドエフェクタ。
【請求項9】
前記駆動シャフトの前記遠位端の外径は、前記外側シャフトの内径と実質的に一致する、
請求項
7又は請求項
8に記載のエンドエフェクタ。
【請求項10】
前記第1及び第2の顎部材と電源とを接続するための1つ以上の電気ワイヤであって、前記1つ以上の電気ワイヤが前記第1のフランジ及び/又は前記第2のフランジから離れて配置され、前記第1及び第2の細長い駆動部材の一方又は両方に沿って延びるように設けられる、前記1つ以上の電気ワイヤをさらに備える、
請求項
6乃至請求項
9のいずれか1項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項11】
その遠位端に配設された切断ブレードを有するブレードアセンブリであって、前記ブレードアセンブリは、前記切断ブレードが前記第1及び第2の顎部材の間を移動するように、前記第1及び第
2の細長い駆動部材の間で長手方向に移動するように設けられる、前記ブレードアセンブリをさらに備える、
請求項
6乃至請求項1
0のいずれか1項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項12】
請求項
6乃至請求項1
1のいずれか1項に記載のエンドエフェクタを備える、
外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される本開示の実施の形態は、外科用器具のための駆動シャフトに関し、特に、外科用器具のエンドエフェクタを制御するための駆動シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
細長いシャフトの端部に配置され、それらの間に組織を把持するように構成された一対の対向する顎(jaw、顎状の)部材を有する外科用器具を提供することが知られている。この顎部材は、駆動シャフトを備える駆動アセンブリによって枢動可能に連結され、この駆動シャフトは、顎部材の一方又は両方が他方に対して移動し、それにより開位置と閉位置との間を移動するよう、顎部材の各々に配置されたスロットに沿って駆動ピンを移動させるように構成されている。ブレードアセンブリもしばしば提供され、このブレードアセンブリは駆動シャフト内のトラックに沿って移動可能であり、その結果、ブレードアセンブリは、第1の顎部材と第2の顎部材との間で平行移動され、それらの間で把持された組織を切断することができる。したがって、駆動シャフトは顎部材の開閉を制御するとともに、使用中に顎部材が傾くことを防止する、すなわち、顎部材を駆動シャフトの長手方向軸線に沿って保持するために、回転制御のレベルも維持する。
【0003】
従来技術の装置において顎部材が傾くのを防止するために、駆動シャフトには駆動ピン配置の前の軸の遠位端に細長いスロットが設けられている。この細長いスロットは2つの顎部材を連結する枢動ピンを受け入れるように配置されており、これにより、細長いスロットは駆動シャフトが前後に平行移動されるときに枢動ピンの上を滑るようになっており、これにより顎部材の2点拘束が得られる。
下記特許文献1には、遠端部に設けられたツール(16)を操作するために、少なくとも1つ、好ましくは2つのプル/スラスト要素(39、40)とスライド要素(56)を備える電気外科用器具が記載されている。
下記特許文献2には、その遠位端にプッシュロッドを有する制御ワイヤと、クレビスに取り付けられたはさみ刃等の第1及び第2のエフェクタ要素を有するエンドエフェクタアセンブリとを含む内視鏡器具が記載されている。
【文献】米国特許出願公開第2015/73462号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/65466号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施の形態は、従来技術を超える利点を有する、外科用器具のエンドエフェクタ(end effector、手先効果器)を制御するための改善された駆動シャフトを提供する。具体的には、駆動シャフトが2つの別個の細長い要素を含み、各々の要素は、その近位端に器具の外側シャフト内に設置されたときに駆動シャフトの横方向の動きを制限するためのフランジを備える。フランジの寸法は、最小のクリアランスで外側シャフト内に収まるようになっている。これにより、いかなる横方向の動きも最小限に抑えつつ、外側シャフト内で駆動シャフトを長手方向に動かしてエンドエフェクタを作動させることができる。これは、結果として、エンドエフェクタが作動されるときに、エンドエフェクタが傾くことを防止する。駆動部材は、フランジが駆動シャフトの長手方向に垂直な逆方向(反対方向)に延びるように設けられると好ましい。これは、組立の容易性を向上させるのに役立ち、接続ワイヤ等の機構(feature、特徴)のための外側シャフト内の空間を提供する。
【0005】
本開示の第1の態様は、外科用器具のための駆動シャフトであって、
一対の対向する第1及び第2の細長い駆動部材であって、第1及び第2の細長い駆動部材の遠位端は、外科用器具のエンドエフェクタを作動させるように構成される、第1及び第2の細長い駆動部材を備え、
第1の細長い駆動部材は、その遠位端から駆動シャフトの長手方向軸に垂直な第1の方向に延びる第1のフランジを少なくとも備え、
第2の細長い駆動部材は、その遠位端から駆動シャフトの長手方向軸に垂直な第2の方向に延びる第2のフランジを少なくとも備える、駆動シャフトを提供する。
【0006】
このように、駆動シャフトは、互いに平行に位置する2つの別々の要素で形成される。これら別個の要素の遠位端は、それぞれ、駆動シャフトの長手方向軸線に垂直な方向に延在するフランジを有する。これらのフランジは、外科用器具の外側シャフト内に設置されると、この外側シャフトの内壁に当接して、駆動シャフトが長手方向に平行移動する際に駆動シャフトが横方向に移動することを防止し、これにより、前記器具のエンドエフェクタ、例えば組織を把持するための一対の顎部材を作動させるときにエンドエフェクタが傾くことが防止される。
【0007】
好ましくは、第1及び第2の方向が反対方向であってよい。すなわち、第1及び第2のフランジは、互いに離間するように延在する。この構成の結果として、各フランジに隣接して(すなわち、隣接するフランジの上又は下に)、電気ワイヤ等のエンドエフェクタの他のコンポーネントをルーティング(routing、引回し)するための空間が提供される。
【0008】
第1及び第2の細長い駆動部材は、駆動シャフトの近位端に向かって第1の位置で接続されてもよい。
【0009】
外科用器具内に設置する前において、第1の細長い駆動部材の遠位端は、外科用器具のコンポーネント内への設置を可能にするように、第2の細長い駆動部材の遠位端に対して横方向(側方)に移動可能であってよい。すなわち、駆動部材は2つのフランジの有効直径が低減されるように、一緒に押し込まれてもよい。これにより、エンドエフェクタをハンドルに固定するために使用される保持成形品など、外科用器具の様々なコンポーネントの狭い開口部に駆動シャフトを通すことが可能になる。
【0010】
第1及び第2の細長い駆動部材の遠位端は、エンドエフェクタを作動させるための駆動ピンを受け入れるように構成されてよい。例えば、各フランジは、互いに整列した駆動ピン穴を備えることができる。駆動ピンが所定の位置に配置されるとき、細長い駆動部材はこの所定の位置にロックされ、それらが互いに対して横方向に移動するのを防止する。
【0011】
第1及び第2のフランジは、駆動シャフトの遠位端がスペード状の形状を有するように構成してもよい。
【0012】
本開示のさらなる態様は、外科用器具のためのエンドエフェクタであって、
一対の対向する第1及び第2の顎部材であって、第1及び第2の顎部材は枢動可能に接続され、顎部材の各々は、その近位端から延在する顎フランジを備え、顎フランジはそれぞれ細長いスロットを有する、第1及び第2の顎部材と;
前記第1の顎部材を前記第2の顎部材に対して第1の開放位置から第2の閉鎖位置に移動させるように構成された駆動アセンブリであって、
第1及び第2の顎部材の細長いスロットに受け入れられるように構成された駆動ピンであって、細長いスロットの近位端と遠位端との間で移動可能な駆動ピンと;
第1及び第2の細長い駆動部材は、駆動シャフトの遠位端で駆動ピンを受け入れるように構成され、駆動シャフトは、その長手方向軸に沿って第1の方向に移動して、駆動ピンを細長いスロットの遠位端に向かって長手方向に動作させることによって、第1の顎部材を第1の開放位置に移動させ、且つその長手方向軸に沿って第2の方向に移動して、駆動ピンを細長いスロットの近位端に向かって長手方向に動作させる、駆動シャフトと;を備える、前記駆動アセンブリと;を備えるエンドエフェクタを提供する。
【0013】
上述したように、各細長い駆動部材のフランジは、駆動シャフトが長手方向軸に沿って移動するときに駆動シャフトの横方向の移動を防止するように構成され、これにより、顎部材が開放位置と閉鎖位置との間を移動するときに顎部材が傾くのを防止する。更に、駆動シャフトは駆動ピンで終端し、顎部材内に更に延びるいかなる追加の長さも備えない。したがって、駆動アセンブリは、顎アセンブリ内において占有する空間の量を減少させ、それによって、より大きな設計自由度を提供する。
【0014】
エンドエフェクタは第1及び第2の顎部材から延びる外側シャフトであって、駆動アセンブリが外側シャフト内に位置する、外側シャフトを更に含んでいてよい。このような場合、第1及び第2の駆動部材の第1及び第2のフランジは、外側シャフト内の横方向の動きが制限されるように構成される。すなわち、第1及び第2の駆動部材のフランジは、横方向の移動を防止するように外側シャフトに当接している。この点において、駆動シャフトの遠位端の直径は、外側シャフトの内径と実質的に一致していてよい。すなわち、フランジの有効直径は、外側シャフトの内径とほぼ一致させることができる。
【0015】
エンドエフェクタは第1の顎部材及び第2の顎部材を電源に接続するための1つ以上の電気ワイヤをさらに備えてよく、1つ以上の電気ワイヤは、第1のフランジ及び/又は第2のフランジから離れるように、第1の細長い駆動部材及び第2の細長い駆動部材の一方または両方に沿って延びるように配置される。
【0016】
エンドエフェクタは、ブレードアセンブリをさらに備えてよく、ブレードアセンブリはその遠位端に配設された切断ブレードを有し、切断ブレードアセンブリは切断ブレードが第1及び第2の顎部材間で平行移動されるように、第1及び第2の細長い駆動部材間で長手方向に移動するよう配置される。
【0017】
本開示のさらなる局面は、上記のようなエンドエフェクタを備える、外科用器具を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示の実施の形態を、単に例として、添付の図面を参照してさらに説明され、ここで、同様の参照番号は同様の部分を指す。
【0019】
【
図1】エンドエフェクタのための従来の駆動アセンブリを示す図である。
【
図2】本開示に係る駆動アセンブリを示す図である。
【
図3】
図2の駆動アセンブリの一部を示す図である。
【
図4A】本開示の駆動アセンブリを組み立てる方法を示す図である。
【
図4B】本開示の駆動アセンブリを組み立てる方法を示す図である。
【
図4C】本開示の駆動アセンブリを組み立てる方法を示す図である。
【
図5】外科用器具に駆動アセンブリを取り付けるためのコンポーネントを示す図である。
【
図6】エンドエフェクタに接続された本開示の駆動アセンブリを示す図である。
【
図7】エンドエフェクタに接続された本開示の駆動アセンブリをさらに示す図である。
【
図8】本開示に係る組み立てられたエンドエフェクタを示す図である。
【
図9】本開示に係るエンドエフェクタを有する器具を含む外科手術システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、従来の装置において顎部材が傾くことは、
図1に示すように、駆動シャフトの最遠位端に細長いスロットを設けることによって防止される。
【0021】
図1では、顎アセンブリ2を制御するように設けられた駆動アセンブリ1が示されており、この駆動アセンブリは一対の対向する顎部材4a、4bを駆動するように設けられた駆動シャフト3を備えている。顎部材4a、4bはそれぞれ、駆動ピン7が通るスロット6が延在したフランジ5を備える。駆動シャフト3によるスロット6に沿った駆動ピン7の近づく及び遠ざかる動きは、顎部材4a、4bの一方又は両方を他方に対して動かし、顎部材4a、4bが開位置と第2位置との間を移動するようにする。駆動シャフト3は任意の適切な機構、例えば、器具の近位端のハンドル(図示せず)上に位置するトリガによって作動されてもよい。
【0022】
駆動シャフト3は、駆動ピン7より遠位側に、顎部材4a、4bを回動(枢動)可能に連結するピボットピン9を受け入れるように設けられた細長いスロット8を更に備える。駆動シャフト3が近づく及び遠ざかる方向に移動すると、細長いスロット8がピボットピン9上をスライドし、これは顎部材4a、4bの2点拘束を提供する。これにより、顎部材4a、4bは駆動シャフト3の長手方向軸(Xと表す)に対して傾くことがなく、顎部材4a、4bが長手方向軸Xの中心線に対して対称に開くようになる。しかしながら、これには、駆動シャフト3に駆動ピン7を越える追加の長さを設ける必要があり、これは顎アセンブリ2内のより多くのスペースを占有する。
【0023】
駆動シャフト3は、典型的にはそれに沿って移動する切断ブレードアセンブリを受け入れるために、その長さに沿って設けられたトラック(図示せず)を有する「U」字状である。使用に際し、顎部材4a、4bが組織の一部を把持するように閉鎖位置にあると、ブレードは顎部材4a、4bの間を移動して、それらの間に挟まれた組織を切断することができる。
【0024】
上述したように、細長いスロット8のために必要な駆動シャフト3の追加の長さは、顎アセンブリ2の内側のスペースを使い果たすが、このポリマー成形体は顎部材4a、4bが切断ブレードの遠位端を確実に拘束する(constrain)ように設計されなければならないため、製造を困難にし得る。この点において、切断ブレードは非常に薄く鋭利であるため、展開中にブレードを顎トラックに拘束する機構と位置合わせできる必要があり、それにより切断ブレードが曲がったり他の機構に引っ掛かったりすることを防ぐことができる。
【0025】
図2は、本開示に係る駆動アセンブリ10を示す図である。駆動アセンブリ10は、2つの対向する細長い駆動部材12a、12bを有する駆動シャフト12を備える。駆動シャフト12の遠位端14は、
図3に更に示すように、各駆動部材12a、12bが駆動シャフト12の長手方向軸線に垂直な逆方向に延びるフランジ16a、16bを備えた、略スペード状の構成を有する。各フランジ16a、16bは、他方のフランジの駆動孔と整列する駆動孔18(一方のみ図示)を備える。使用時には、この駆動孔18が顎部材を駆動するために、顎アセンブリの駆動ピンを受け入れることになる。このように、駆動シャフト12は、この駆動孔18を越えた顎の内部に不必要なスペースを使うことはない。
【0026】
駆動部材12a、12bは、例えばピン22によって、駆動アセンブリ10の近位端20に向かって一緒に連結される。駆動部材12a、12bを近位端20に向かって連結することにより、駆動部材12a、12bのいくらかの横方向(側方)の移動が可能になり、これは、以下にさらに詳細に説明するように、駆動アセンブリ10と顎アセンブリ2とを互いに組み立てるのに重要である。次に、駆動アセンブリ10の近位端20を、駆動シャフト12を駆動するための任意の適切な作動機構に連結することができる。
【0027】
図4A~
図4Cは、駆動アセンブリ1を外科用器具に設置するために使用されるシャフト成形体30内に駆動シャフト12を設置する方法を示した図である。
図5に示すように、シャフト成形体30は駆動シャフト12を受け入れるための開口部34を有するバレル形状のコンポーネント(構成要素)であり、この例では「T」形状の構成を有し、典型的には前の「U」形状の駆動シャフトを受け入れるためにこのように配置される。
【0028】
駆動シャフト12を取り付けるには、
図4Aに示すように、駆動シャフト12の遠位端14が開口部34に挿入される。近位端において、シャフトコンポーネント30は、シャフトコンポーネント30の空洞32内に狭い領域33を提供するように、内面36を備える。この狭い領域33の直径は、駆動シャフト12の遠位端14の直径よりも小さい。駆動シャフト12がシャフト成形体30内に前進されると、内面36は、フランジ16a、16b及び駆動部材12a、12bが互いに向かって横方向に並進するように、フランジ16a、16bに押し付けられる。フランジ16a、16bは、このようにして、ピボット連結部22によって、または駆動部材12a、12b自体のある程度の可撓性によって、共に押し込まれ得る。そうすることにより、
図4Bに示されるように、遠位端14の直径が、シャフトコンポーネント30内の狭い領域33の直径と一致するように小さくなり、これにより、駆動シャフト12が通過できるようになる。駆動シャフト12が狭い領域33を越えて動くと、フランジ16a、16bは解放され、駆動部材12a、12bは
図4Cに示すように、初期位置に戻る。
【0029】
次に、
図6及び
図8に示すように、シャフト成形体30は、外科器具のハンドルのケーシング60のソケット内に位置するように構成され、これにより、駆動シャフト12をケーシング60に連結する。例えば、シャフト成形体30は、対応する同心の嵌合面62と協働してシャフト成形体30をケーシング60内に保持するように構成された円筒形フランジ部を備えることができる。駆動シャフトは、近位端20がケーシング60内に位置するように配置され、駆動部材12a、12b及び遠位端14はシャフトコンポーネント30を越えて延在する。
【0030】
次いで、外側シャフト40を駆動シャフト12の外周囲に配置し、任意の適切な手段、例えば、スナップ嵌め配置または接着剤によってシャフト成形体30に接続し、それによってエンドエフェクタアセンブリ全体をケーシング60に固定することができる。
【0031】
次いで、駆動シャフト12の遠位端14は、前述のように構成された顎アセンブリ2に連結される。
図6及び
図7の両方に示すように、顎アセンブリ2は、ピボットピン9によって枢動可能に連結された対向する顎部材4a、4bを備える。顎部材4a、4bはそれぞれ、スロット6a、6bを有する顎フランジ5a、5bを備える。駆動シャフト12は、駆動ピン7が2つのスロット6a、6b及び駆動部材12a、12bの各フランジ16a、16bに配置された駆動孔18を貫通して延びるように設計されている。一旦組み立てられると、駆動ピン7は駆動部材12a、12bの互いに対するあらゆる横方向の動きを制限し、それらを固定された形状に保持する。駆動シャフト12によるスロット6a、6bに沿った駆動ピン7の近づく及び遠ざかる動きにより、顎部材4a、4bが開放位置と第2位置との間を移動するように、一方又は両方の部材4a、4bを他方に対して移動させる。
【0032】
駆動シャフト12が2つの別個の駆動部材12a、12bを備えるため、切断ブレードアセンブリ(図示せず)を2つの駆動部材12a、12bの間の空間に配置し、それに沿って移動させることもできる。使用において、顎部材4a、4bが組織の一部を把持するように閉鎖位置にあるとき、ブレードは顎部材4a、4bの間を近位方向に移動して、それらの間に突出した組織を切断することができる。この移動を可能にするために、切断ブレードアセンブリは駆動ピン7をも受け入れる大きな長手方向スロットを有する切断ブレードを備えることができ、このスロットは、駆動シャフト12による駆動ピン7の移動が切断ブレードを作動させない程度に十分に長く、それとは反対に、切断ブレードは駆動ピン7によって遮断されることなく作動させることができる。
【0033】
このような駆動シャフト12のスペード状の形状の結果として、駆動シャフト12は、顎アセンブリ2内に更には延在せず、従って、不必要なスペースを取らない。その結果、顎アセンブリ2内には切断ブレードの管理のための追加のスペースがある。この点において、本開示の駆動シャフト12によって与えられる追加のスペースは顎アセンブリ2を製造する際により大きな設計の自由度、例えば、作動中に切断ブレードを案内し、2つの顎部材4a、4bを整列させるのに役立つような機構を顎アセンブリ2に追加する自由度を提供する。
【0034】
さらに、2つのスペード状フランジ16a、16bは、顎部材4a、4bが開閉時に傾くのを防止するために、それらの寸法が外側シャフト40内に最小のクリアランスで適合するように構成される。すなわち、フランジ16a、16bの直径は外側シャフト40の直径と実質的に一致して、駆動ピン7を駆動するために外側シャフト40に沿って長手方向に移動し、顎アセンブリ2を作動させることができ、一方、駆動ピン7及び顎フランジ5a、5bを動かし、したがって顎部材4a、4bを傾斜させる駆動シャフト12のいかなる横方向の動きも最小限に抑えることができるように構成されている。
【0035】
加えて、この構成は、顎部材4a、4b内の電極を電源に接続するための接続ワイヤ50a、50bを2つの駆動部材12a、12bの外周囲に容易に通し得る、外側シャフト40内のさらなる空間を提供する。この点において、第1の接続ワイヤ50aは第2の駆動部材12bの頂部を覆うように配設することができ、第2の接続ワイヤ50bは、第1の駆動部材12aの下方に配設することができる。各駆動部材12a、12bは一つのスペード状フランジ16a、16bを有するため、接続ワイヤ50a、50bがそれぞれの駆動部材12a、12bの対向側に沿って延びるための空間を提供する。
【0036】
ここで
図9を参照すると、本明細書に記載される駆動シャフトアセンブリは器具100の一部として使用されることができ、使用時に、制御可能な高周波(RF)源(図示せず)を内部に有する外科用電気発生器(Electrosurgical generator、電気手術器)102への接続を意図したものであってよく、ここで、外科用電気発生器102は、器具100のエンドエフェクタ内に配置される電極を介して組織に適用されると、当該組織を凝固またはシールするRF凝固信号を生成するものである。外科用電気発生器102は制御入力スイッチ104及び106を含み、それぞれ、発生器のオン/オフ、及び器具100に供給されるRF凝固信号の電力の制御を可能にする。これらの点において、外科用電気発生器102は従来のものである。
【0037】
器具100は内部配線を介して器具100のエンドエフェクタにRF信号を供給することを可能にするために、また、器具100上のスイッチ(図示せず)から制御信号を受け取って、外科用電気発生器102にRF凝固信号を器具100に出力するように指令することを可能にするために、別々の電気ラインを含む制御及び電力線108によって、使用時に発生器102に接続されてもよい。使用に際して、外科医は、オン/オフスイッチ104を介して発生器を作動させ、ボタン106を使用して内部RF源によって発生されるべき凝固またはシール信号の強度を選択する。器具100を用いた外科的処置の間、エンドエフェクタにおいてシール又はRF凝固信号が必要とされる場合、外科医は器具100上のスイッチを押すことによってこのような信号を生成するように発生器102を制御し、次いで、生成されたRF信号は、電気ライン106を介してエンドエフェクタに送られる。すなわち、使用時にスイッチを押すと、RF凝固信号またはシール信号がエンドエフェクタ内に含まれる適切な電極に供給される。
【0038】
追加、削除、または置換のいずれによるかにかかわらず、上記の実施の形態に対する様々なさらなる修正は、追加の実施の形態を提供することが当業者にとっては明らかであり、そのいずれか及び全ては、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0039】
例えば、上記の例では駆動シャフト12のフランジ16a、16bはスペード状の構成を有しているが、それらは駆動シャフト12の横方向の動きを制限するための任意の適切な構成、例えば、正方形、長方形又は円形の構成を有していてもよいことが理解されるであろう。加えて、各駆動部材12a、12bは駆動シャフト12の長手方向軸に垂直な逆方向にそれぞれ延在する単一のフランジ16a、16bを有していることが、組立容易性を改善し、接続ワイヤ等のための追加のスペースを提供するためには好ましい。しかしながら、駆動部材12a、12bはそれぞれ駆動シャフト12の長手方向軸線に垂直な両方向に延在する2つのフランジを有していてもよく、このような構成は顎部材4a、4bが傾くのを防止するという利点を有することも理解されたい。