(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】支持ユニット、支持体及びイオン化方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/04 20060101AFI20220926BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20220926BHJP
H01J 49/16 20060101ALI20220926BHJP
H01J 49/14 20060101ALI20220926BHJP
H01J 49/00 20060101ALN20220926BHJP
H01J 49/40 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
H01J49/04 180
G01N27/62 F
H01J49/16 400
H01J49/14
H01J49/00 040
H01J49/40
(21)【出願番号】P 2021162568
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2022-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】小谷 政弘
(72)【発明者】
【氏名】大村 孝幸
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-146550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0134039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/04
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のイオン化に用いられる支持ユニットであって、
第1表面、及び前記第1表面とは反対側の第2表面を有すると共に、前記第1表面及び前記第2表面に開口する複数の貫通孔が設けられた測定領域を有するイオン化基板と、前記複数の貫通孔が塞がれないように前記第1表面に設けられた導電層と、を有する第1支持体と、
前記第1支持体の前記第2表面に対向するように配置される第2支持体と、を備え、
前記第2支持体は、前記第2表面に対向する載置面を含む支持基板と、前記載置面に設けられた接着層と、を有し、
前記載置面は、
前記載置面に直交する方向から見た場合に前記測定領域と重なる第1領域と、
前記載置面に直交する方向から見た場合に前記第1支持体と重ならない領域を有しかつ導電性を有する第2領域と、を含み、
前記接着層は、
前記第1領域に設けられた第1部分と、
導電性を有し、前記第2領域と前記第1支持体の前記導電層とを電気的に接続するための第2部分と、を含んでいる、支持ユニット。
【請求項2】
前記接着層の前記第1部分と前記第2部分とは、別体で形成されており、
前記第1部分と前記第2部分とは、互いに離れている、請求項1に記載の支持ユニット。
【請求項3】
前記第2部分の表面は、前記第1部分の表面に対して前記支持基板側に位置している、請求項2に記載の支持ユニット。
【請求項4】
前記支持基板及び前記第1部分のそれぞれは、光透過性を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の支持ユニット。
【請求項5】
前記イオン化基板は、校正に用いられる校正領域を含み、
前記接着層は、前記載置面のうち、前記載置面に直交する方向から見た場合に前記校正領域と重なる領域には設けられていない、請求項1~4のいずれか一項に記載の支持ユニット。
【請求項6】
前記第2支持体は、少なくとも前記接着層を覆うカバー部材を更に有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の支持ユニット。
【請求項7】
前記第1支持体は、前記イオン化基板の前記第1表面に配置されると共に前記測定領域を囲む開口を含む保持部材を更に有し、
前記イオン化基板は、バルブ金属又はシリコンが陽極酸化されることで形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の支持ユニット。
【請求項8】
試料のイオン化に用いられる支持体であって、
載置面を含む支持基板と、
前記載置面に設けられた接着層と、を備え、
前記載置面は、前記試料の載置に用いられる第1領域と、導電性を有する第2領域と、を含み、
前記接着層は、前記第1領域に設けられた第1部分と、導電性を有し、前記第2領域に至っている第2部分と、を含んでいる、支持体。
【請求項9】
前記接着層の前記第1部分と前記第2部分とは、別体で形成されており、
前記第1部分と前記第2部分とは、互いに離れている、請求項8に記載の支持体。
【請求項10】
前記載置面の前記第2領域は、金属膜によって形成されている、請求項8又は9に記載の支持体。
【請求項11】
前記載置面は、透明導電膜によって形成されている、請求項8又は9に記載の支持体。
【請求項12】
前記第1領域は、前記載置面の中央部に位置し、
前記第2領域は、前記載置面の端部に位置している、請求項8~11のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項13】
前記支持基板及び前記第1部分のそれぞれは、光透過性を有している、請求項8~12のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項14】
第1表面、及び前記第1表面とは反対側の第2表面を有すると共に、前記第1表面及び前記第2表面に開口する複数の貫通孔が設けられた測定領域を有するイオン化基板と、前記複数の貫通孔が塞がれないように前記第1表面に設けられた導電層と、を備える第1支持体が用意される第1工程と、
載置面を含む支持基板と、前記載置面に設けられた接着層と、を備える第2支持体が用意される第2工程と、
前記接着層上に試料が載置される第3工程と、
前記第2表面が前記試料に対向するように前記第1支持体が前記試料上に配置される第4工程と、
前記導電層に電圧が印加されつつ前記第1表面に対してエネルギー線が照射されることで、毛細管現象によって前記第2表面側から前記貫通孔を介して前記第1表面側に移動した前記試料の成分がイオン化される第5工程と、を含み、
前記第2工程で用意される前記支持基板の前記載置面は、前記載置面に直交する方向から見た場合に前記測定領域と重なる第1領域と、前記載置面に直交する方向から見た場合に前記第1支持体と重ならない領域を有しかつ導電性を有する第2領域と、を含み、
前記第2工程で用意される前記接着層は、前記第1領域に設けられた第1部分と、導電性を有し、前記第2領域と前記第1支持体の前記導電層とを電気的に接続するための第2部分と、を含み、
前記第3工程では、前記接着層の前記第1部分の一部が露出するように前記第1部分上に前記試料が載置され、
前記第4工程では、前記測定領域が前記第1部分の露出している部分に接着されかつ前記導電層と前記第2領域とが前記第2部分によって電気的に接続されるように前記第1支持体が配置され、
前記第5工程では、前記第2領域に電圧が印加される、イオン化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持ユニット、支持体及びイオン化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料をイオン化するための試料支持体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような試料支持体は、第1表面及び第1表面とは反対側の第2表面に開口する複数の貫通孔が形成された基板を備えている。第2表面が試料に対向するように試料上に試料支持体が配置された場合、試料の成分は、毛細管現象によって基板の第2表面側から貫通孔を介して第1表面側に向かって移動する。そして、例えばレーザ光等のエネルギー線が第1表面に対して照射されると、第1表面側に移動した試料の成分がイオン化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような試料支持体では、基板の第2表面側から第1表面側への毛細管現象による試料の移動を促進させるために、基板の薄化が求められる場合がある。しかし、基板が薄化されると、基板の取扱いには注意が必要となる。
【0005】
本開示は、基板の取扱いを容易にすることが可能な支持ユニット、支持体及びイオン化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る支持ユニットは、試料のイオン化に用いられる支持ユニットであって、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面を有すると共に、第1表面及び第2表面に開口する複数の貫通孔が設けられた測定領域を有するイオン化基板と、複数の貫通孔が塞がれないように第1表面に設けられた導電層と、を有する第1支持体と、第1支持体の第2表面に対向するように配置される第2支持体と、を備え、第2支持体は、第2表面に対向する載置面を含む支持基板と、載置面に設けられた接着層と、を有し、載置面は、載置面に直交する方向から見た場合に測定領域と重なる第1領域と、載置面に直交する方向から見た場合に第1支持体と重ならない領域を有しかつ導電性を有する第2領域と、を含み、接着層は、第1領域に設けられた第1部分と、導電性を有し、第2領域と第1支持体の導電層とを電気的に接続するための第2部分と、を含んでいる。
【0007】
この支持ユニットでは、接着層は、載置面に直交する方向から見た場合に測定領域と重なる第1領域に設けられた第1部分を含んでいる。そのため、第1部分の一部が露出するように第1部分上に試料を載置し、測定領域の第2表面が試料に対向しかつ測定領域が第1部分の露出している部分に接着されるように、第1支持体を試料上に配置することができる。これにより、試料のみならず接着層の第1部分に対しても測定領域を固定することができる。したがって、たとえ、イオン化基板が薄化された結果、イオン化基板が破損しやすくなったとしても、破損したイオン化基板が試料及び接着層から飛散することが抑制される。また、載置面の第2領域は、第1支持体と重ならない領域を有しかつ導電性を有している。接着層の第2部分は、導電性を有し、第2領域と第1支持体の導電層とを電気的に接続する。そのため、第2領域及び第2部分を介して導電層に電圧を印加しつつ、第1表面に対してエネルギー線を照射することで、毛細管現象によって第2表面側から貫通孔を介して第1表面側に移動した試料の成分をイオン化することができる。一例として、電圧を印加するための端子等を導電層に接触させることで導電層に電圧を印加する場合も考えられる。その場合に比べて、上記の構成によれば、第2領域及び第2部分を介して導電層に電圧を印加しているため、たとえ、イオン化基板が薄化された結果、イオン化基板が破損しやすくなったとしても、イオン化基板の破損が抑制される。以上により、この支持ユニットによれば、イオン化基板の取扱いを容易にすることが可能となる。
【0008】
接着層の第1部分と第2部分とは、別体で形成されており、第1部分と第2部分とは、互いに離れていてもよい。これにより、第1部分及び第2部分のそれぞれの設計の自由度が向上する。
【0009】
第2部分の表面は、第1部分の表面に対して支持基板側に位置していてもよい。これにより、イオン化基板の測定領域を第1部分に確実に接着することができる。
【0010】
支持基板及び第1部分のそれぞれは、光透過性を有していてもよい。これにより、第1部分上に載置されている試料を容易に観察することができる。
【0011】
イオン化基板は、校正に用いられる校正領域を含み、接着層は、載置面のうち、載置面に直交する方向から見た場合に校正領域と重なる領域には設けられていなくてもよい。これにより、校正領域に例えば校正用の試薬を滴下した後、当該試薬のイオン化を行う際に、接着層に起因するノイズの発生を抑制することができる。
【0012】
第2支持体は、少なくとも接着層を覆うカバー部材を更に有していてもよい。これにより、接着層を保護することができる。
【0013】
第1支持体は、イオン化基板の第1表面に配置されると共に測定領域を囲む開口を含む保持部材を更に有し、イオン化基板は、バルブ金属又はシリコンが陽極酸化されることで形成されていてもよい。これにより、保持部材によって、イオン化基板の測定領域を規定しつつイオン化基板を補強することができる。
【0014】
本開示の一側面に係る支持体は、試料のイオン化に用いられる支持体であって、載置面を含む支持基板と、載置面に設けられた接着層と、を備え、載置面は、試料の載置に用いられる第1領域と、導電性を有する第2領域と、を含み、接着層は、第1領域に設けられた第1部分と、導電性を有し、第2領域に至っている第2部分と、を含んでいてもよい。
【0015】
この支持体では、接着層は、試料を載置するための第1領域に設けられた第1部分を含んでいる。そのため、第1部分の一部が露出するように第1部分上に試料を載置し、イオン化基板が試料に対向しかつイオン化基板が第1部分の露出している部分に接着されるように、イオン化基板を試料上に配置することができる。これにより、試料のみならず接着層の第1部分に対してもイオン化基板を固定することができる。したがって、たとえ、イオン化基板が薄化された結果、イオン化基板が破損しやすくなったとしても、破損したイオン化基板が試料及び接着層から飛散することが抑制される。また、載置面の第2領域は、導電性を有している。接着層の第2部分は、導電性を有し、第2領域に至っている。そのため、第2部分によって第2領域とイオン化基板の導電層とを電気的に接続することができる。これにより、第2領域及び第2部分を介して導電層に電圧を印加しつつ、イオン化基板の表面に対してエネルギー線を照射することで、毛細管現象によって貫通孔を介して表面側に移動した試料の成分をイオン化することができる。一例として、電圧を印加するための端子等を導電層に接触させることで導電層に電圧を印加する場合も考えられる。その場合に比べて、上記の構成によれば、第2領域及び第2部分を介して導電層に電圧を印加しているため、たとえ、イオン化基板が薄化された結果、イオン化基板が破損しやすくなったとしても、イオン化基板の破損が抑制される。以上により、この支持体によれば、イオン化基板の取扱いを容易にすることが可能となる。
【0016】
接着層の第1部分と第2部分とは、別体で形成されており、第1部分と第2部分とは、互いに離れていてもよい。これにより、第1部分及び第2部分のそれぞれの設計の自由度が向上する。
【0017】
載置面の第2領域は、金属膜によって形成されていてもよい。これにより、第2領域の導電性を容易に確保することができる。
【0018】
載置面は、透明導電膜によって形成されていてもよい。これにより、載置面の導電性を容易に確保することができる。
【0019】
第1領域は、載置面の中央部に位置し、第2領域は、載置面の端部に位置していてもよい。これにより、接着層の第1部分及び試料に用いられるスペースの確保を優先しつつ、電圧の印加に用いられるスペースも適切に確保することができる。
【0020】
支持基板及び第1部分のそれぞれは、光透過性を有していてもよい。これにより、第1部分上に載置されている試料を容易に観察することができる。
【0021】
本開示の一側面に係るイオン化方法は、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面を有すると共に、第1表面及び第2表面に開口する複数の貫通孔が設けられた測定領域を有するイオン化基板と、複数の貫通孔が塞がれないように第1表面に設けられた導電層と、を備える第1支持体が用意される第1工程と、載置面を含む支持基板と、載置面に設けられた接着層と、を備える第2支持体が用意される第2工程と、接着層上に試料が載置される第3工程と、第2表面が試料に対向するように第1支持体が試料上に配置される第4工程と、導電層に電圧が印加されつつ第1表面に対してエネルギー線が照射されることで、毛細管現象によって第2表面側から貫通孔を介して第1表面側に移動した試料の成分がイオン化される第5工程と、を含み、第2工程で用意される支持基板の載置面は、載置面に直交する方向から見た場合に測定領域と重なる第1領域と、載置面に直交する方向から見た場合に第1支持体と重ならない領域を有しかつ導電性を有する第2領域と、を含み、第2工程で用意される接着層は、第1領域に設けられた第1部分と、導電性を有し、第2領域と第1支持体の導電層とを電気的に接続するための第2部分と、を含み、第3工程では、接着層の第1部分の一部が露出するように第1部分上に試料が載置され、第4工程では、測定領域が第1部分の露出している部分に接着されかつ導電層と第2領域とが第2部分によって電気的に接続されるように第1支持体が配置され、第5工程では、第2領域に電圧が印加される。
【0022】
このイオン化方法の第3工程では、接着層の第1部分の一部が露出するように第1部分上に試料が載置され、第4工程では、測定領域が第1部分の露出している部分に接着されるように第1支持体が配置される。これにより、試料のみならず接着層の第1部分に対しても測定領域を固定することができる。したがって、たとえ、イオン化基板が薄化された結果、イオン化基板が破損しやすくなったとしても、破損したイオン化基板が試料及び接着層から飛散することが抑制される。また、第4工程では、導電層と第2領域とが第2部分によって電気的に接続されるように第1支持体が配置され、第5工程では、第2領域に電圧が印加される。これにより、第2領域及び第2部分を介して導電層に電圧を印加することができる。一例として、電圧を印加するための端子等を導電層に接触させることで導電層に電圧を印加する場合も考えられる。その場合に比べて、上記の工程によれば、第2領域及び第2部分を介して導電層に電圧を印加しているため、たとえ、イオン化基板が薄化された結果、イオン化基板が破損しやすくなったとしても、イオン化基板の破損が抑制される。以上により、このイオン化方法によれば、イオン化基板の取扱いを容易にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、イオン化基板の取扱いを容易にすることが可能な支持ユニット、支持体及びイオン化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、一実施形態の支持ユニットの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の支持ユニットに試料が配置されている状態を示す図である。
【
図9】
図9は、
図6の第1支持体が第2支持体に接着されている状態を示す図である。
【
図10】
図10は、
図1の支持ユニットを用いた質量分析方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。各図において同一又は相当の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、図面においては、一部、実施形態に係る特徴部分を分かり易く説明するために誇張している部分があり、実際の寸法とは異なっている場合がある。
【0026】
[支持ユニットの構成]
図1~
図3を参照して、支持ユニット1について説明する。支持ユニット1は、試料のイオン化に用いられる。
図1~
図3に示されるように、支持ユニット1は、第1支持体10と、第2支持体20と、を備えている。第1支持体10及び第2支持体20は、試料のイオン化の際に、Z軸方向において互いに対向するように配置される。第1支持体10及び第2支持体20のそれぞれは、例えば矩形板状を呈している。第1支持体10の長辺に沿った方向(X軸方向)は、第2支持体20の長辺に沿った方向と一致している。第1支持体10の短辺に沿った方向(Y軸方向)は、第2支持体20の短辺に沿った方向と一致している。第1支持体10の厚さ方向(Z軸方向)は、第2支持体20の厚さ方向と一致している。一例として、第1支持体10及び第2支持体20のそれぞれのX軸方向の長さは、例えば数cm程度であり、Y軸方向の長さは、例えば数cm程度である。
【0027】
第1支持体10は、イオン化基板11と、フレーム(保持部材)12と、を有している。イオン化基板11は、例えば矩形板状を呈している。Z軸方向方向から見た場合におけるイオン化基板11の一辺の長さは、例えば数cm程度である。フレーム12は、例えば矩形枠状を呈している。フレーム12は、イオン化基板11の一方の表面に配置されている。フレーム12の外形は、Z軸方向から見た場合に、イオン化基板11の外形よりも大きい。第1支持体10の外形は、主にフレーム12によって規定されている。フレーム12のX軸方向の長さは、例えば5cm程度であり、フレーム12のY軸方向の長さは、例えば2.5cm程度である。
【0028】
フレーム12は、開口12a及び複数(本実施形態では4つ)の開口12bを含んでいる。開口12aは、フレーム12を貫通している。開口12aは、フレーム12の中央部に位置している。開口12aは、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。開口12aは、Z軸方向から見た場合に、イオン化基板11と重なっている。
【0029】
イオン化基板11のうち開口12aに対応する部分(すなわち、Z軸方向から見た場合に開口12aと重なる部分)は、試料のイオン化に用いられる測定領域Rである。開口12aは、イオン化基板11の測定領域Rを規定している。開口12aは、Z軸方向から見た場合に、測定領域Rを囲んでいる。
【0030】
各開口12bは、フレーム12を貫通している。各開口12bは、フレーム12の各角部に位置している。各開口12bは、Z軸方向から見た場合に、例えば円形状を呈している。各開口12bの直径は、例えば2mm程度である。各開口12bは、Z軸方向から見た場合に、イオン化基板11と重なっている。
【0031】
イオン化基板11のうち開口12bに対応する部分(すなわち、Z軸方向から見た場合に開口12bと重なる部分)は、質量校正(マスキャリブレーション)に用いられる校正領域Cである。開口12bは、イオン化基板11の校正領域Cを規定している。開口12bは、Z軸方向から見た場合に、校正領域Cを囲んでいる。
【0032】
第2支持体20は、支持基板21と、接着層22と、カバー部材23と、を有している。支持基板21は、例えば矩形板状を呈している。支持基板21は、載置面21aを含んでいる。載置面21aは、XY面内の平坦面である。載置面21aは、第1領域21bと、第2領域22cと、を含んでいる。
【0033】
第1領域21bは、Z軸方向から見た場合に、載置面21aの中央部に位置している。Z軸方向から見た場合に、X軸方向における第1領域21bの両端は、X軸方向における載置面21aの両端よりも内側に位置している。Z軸方向から見た場合に、Y軸方向における第1領域21bの両端は、Y軸方向における載置面21aの両端と一致している。第1領域21bは、後述する試料Sの載置に用いられる。
【0034】
第2領域21cは、Z軸方向から見た場合に、載置面21aの端部に位置している。第2領域21cは、Z軸方向から見た場合に、第1領域21bに対して両側に位置している。つまり、載置面21aは、2つの第2領域21cを含んでいる。第2領域21cは、載置面21aのうち第1領域21b以外の領域である。
【0035】
第2領域21cは、導電性を有している。第2領域21cは、例えば金属膜によって形成されている。第2領域21cは、例えば支持基板21のベース部材の表面に蒸着されたアルミニウムである。本実施形態では、第1領域21bは、ベース部材の表面によって構成され、第2領域21cは、金属膜の表面によって構成されている。支持基板21のうち第1領域21bを含む部分は、光透過性を有している。具体的には、支持基板21のベース部材は、例えば紫外線又は可視光等に対して透過性を有している。支持基板21のベース部材は、例えばスライドグラスである。
【0036】
接着層22は、載置面21aに設けられている。接着層22は、第1部分24と、第2部分25と、を含んでいる。第1部分24は、第1領域21bに設けられている。第1部分24は、第1領域21bにおいて広範囲に広がっている。Z軸方向から見た場合に、第1部分24の縁は、第1領域21bの縁よりも内側に位置している。第1部分24は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。第1部分24は、光透過性を有している。第1部分24は、例えば紫外線又は可視光等に対して透過性を有している。第1部分24は、例えばアクリル系粘着剤である。
【0037】
第2部分25は、第1部分と別体で形成されている。第2部分25は、第1部分24と離れている。第2部分25は、Z軸方向から見た場合に、第1部分24に対してX軸方向における両側に位置している。つまり、接着層22は、2つの第2部分25を含んでいる。第2部分25は、第1領域21b及び第2領域21cの両方に設けられている。つまり、第2部分25は、第1領域21b及び第2領域21cを跨っている。換言すると、第2部分25は、第1領域21bから第2領域21cに至っている。
【0038】
第2部分25は、Z軸方向から見た場合に、例えばY軸方向に沿って延びる矩形状を呈している。第2部分25の表面は、第1部分24の表面に対して支持基板21側に位置している。つまり、第2部分25の厚さは、第1部分24の厚さよりも小さい(
図8参照)。第2部分25は、導電性を有している。第2部分25は、例えば導電性粒子を含むアクリル系粘着剤である。
【0039】
カバー部材23は、少なくとも接着層22を覆っている。本実施形態では、カバー部材23は、接着層22及び支持基板21の載置面21aの全体を覆っている。カバー部材23は、接着層22及び載置面21aを保護する。カバー部材23は、例えば保護フィルムである。カバー部材23は、第2支持体20の使用の際に剥がされる。なお、カバー部材23は、
図1のみに図示されている。
【0040】
第2支持体20は、載置面21aが、イオン化基板11のうちフレーム12とは反対側の第2表面11b(
図4参照)に対向するように配置される。以下、第1支持体10及び第2支持体20が互いに対向するように配置されている場合における、各部材の位置関係について説明する。
【0041】
載置面21aの第1領域21bは、Z軸方向(載置面21aに直交する方向)から見た場合に、イオン化基板11の測定領域Rと重なっている。第1領域21bの縁は、Z軸方向から見た場合に、測定領域Rの縁よりも外側に位置している。第1領域21bの縁は、Z軸方向から見た場合に、イオン化基板11の縁よりも外側に位置している。
【0042】
第2領域21cは、Z軸方向から見た場合に、イオン化基板11の縁よりも外側に位置している。第1領域21bと第2領域21cとの境界線は、Z軸方向から見た場合に、イオン化基板11の縁とフレーム12の縁との間に位置している。第2領域21cは、Z軸方向から見た場合に、フレーム12と重なる領域と、第1支持体10と重ならない領域と、を含んでいる。第2領域21cのうち、第1支持体10と重ならない領域は、電圧の印加に用いられる。
【0043】
接着層22の第1部分24は、Z軸方向から見た場合に、測定領域Rと重なっている。第1部分24の縁は、Z軸方向から見た場合に、測定領域Rの縁よりも外側に位置している。第1部分24の縁は、Z軸方向から見た場合に、イオン化基板11の縁よりも内側に位置している。第1部分24は、Z軸方向から見た場合に、校正領域Cと重なっていない。
【0044】
接着層22の第2部分25は、Z軸方向から見た場合に、イオン化基板11の外側に位置している。第2部分25は、Z軸方向から見た場合に、フレーム12と重なっている。第2部分25は、Z軸方向から見た場合に、校正領域Cと重なっていない。つまり、接着層22は、載置面21aのうち、Z軸方向から見た場合に校正領域Cと重なる領域には設けられていない。
【0045】
[第1支持体の構成]
次に、
図4及び
図5を参照して、第1支持体10について詳細に説明する。第1支持体10は、試料をイオン化するために用いられるイオン化支援基板である。
図4に示されるように、イオン化基板11は、第1表面11a、及び第1表面11aとは反対側の第2表面11bを有している。イオン化基板11には、複数の貫通孔11cが一様に(均一な分布で)形成されている。各貫通孔11cは、Z軸方向(イオン化基板11の厚さ方向)に沿って延在しており、第1表面11a及び第2表面11bに開口している。つまり、各貫通孔11cは、イオン化基板11を貫通している。第1表面11aは、試料の成分をイオン化させる工程において、レーザ光等のエネルギー線が照射される面である。
【0046】
イオン化基板11の厚さは、例えば1μm~50μm程度である。一例として、イオン化基板11の厚さは、5μm~50μmである。Z軸方向から見た場合における貫通孔11cの形状は、例えば略円形である。貫通孔11cの幅は、例えば1nm~700nm程度である。イオン化基板11は、絶縁性材料によって形成されている。
【0047】
貫通孔11cの幅は、以下のようにして取得される値である。まず、イオン化基板11の第1表面11a及び第2表面11bのそれぞれの画像を取得する。
図5は、イオン化基板11の第1表面11aの一部のSEM画像の一例を示している。当該SEM画像において、黒色の部分は貫通孔11cであり、白色の部分は貫通孔11c間の隔壁部である。続いて、取得した第1表面11aの画像に対して例えば二値化処理を施すことで、測定領域R内の複数の第1開口(貫通孔11cの第1表面11a側の開口)に対応する複数の画素群を抽出し、1画素当たりの大きさに基づいて、第1開口の平均面積を有する円の直径を取得する。同様に、取得した第2表面11bの画像に対して例えば二値化処理を施すことで、測定領域R内の複数の第2開口(貫通孔11cの第2表面11b側の開口)に対応する複数の画素群を抽出し、1画素当たりの大きさに基づいて、第2開口の平均面積を有する円の直径を取得する。そして、第1表面11aについて取得した円の直径と第2表面11bについて取得した円の直径との平均値を貫通孔11cの幅として取得する。
【0048】
図5に示されるように、イオン化基板11には、略一定の幅を有する複数の貫通孔11cが一様に形成されている。複数の貫通孔11cの大きさは、互いに不揃いであってもよい。互いに隣り合う貫通孔11c同士は、連結していてもよい。
図5に示されるイオン化基板11は、バルブ金属(例えばAl(アルミニウム))を陽極酸化することにより形成されたアルミナポーラス皮膜である。例えば、Al基板に対して陽極酸化処理が施されることにより、Al基板の表面部分が酸化されると共に、Al基板の表面部分に複数の細孔(貫通孔11cになる予定の部分)が形成される。続いて、酸化された表面部分(陽極酸化皮膜)がAl基板から剥離され、剥離された陽極酸化皮膜に対して上記細孔を拡幅するポアワイドニング処理が施されることにより、上述したイオン化基板11が得られる。なお、イオン化基板11は、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Zn(亜鉛)、W(タングステン)、Bi(ビスマス)、Sb(アンチモン)等のAl以外のバルブ金属を陽極酸化することにより形成されてもよいし、Si(シリコン)を陽極酸化することにより形成されてもよい。
【0049】
フレーム12は、イオン化基板11の第1表面11aに配置されている。フレーム12は、第1表面11a側においてイオン化基板11を保持している。フレーム12は、第1表面11aに対向する第1面12hと、第1面12hとは反対側の第2面12gとを有している。第1面12h及び第2面12gのそれぞれは、XY面内の平坦面である。開口12a及び開口12bは、第1面12h及び第2面12gに開口している。上述したように、開口12aは、測定領域Rを規定し、開口12bは、校正領域Cを規定している。
【0050】
イオン化基板11には複数の貫通孔11cが一様に形成されているため、測定領域R及び校正領域Cのそれぞれは、複数の貫通孔11cを含んでいる。測定領域Rにおける貫通孔11cの開口率(Z軸方向から見た場合に測定領域Rに対して貫通孔11cが占める割合)は、実用上は10~80%であり、特に30~60%であることが好ましい。校正領域Cにおける貫通孔11cの開口率は、測定領域Rと同じである。
【0051】
フレーム12は、導電性を有している。フレーム12の材料は、例えば金属等である。本実施形態では、フレーム12は、非磁性であり且つ耐酸性を有する材料によって形成されている。このような材料としては、例えば、チタン、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。本実施形態では、フレーム12は、SUSによって形成されている。フレーム12の厚さは、例えば3mm以下である。一例として、フレーム12の厚さは、0.2mmである。
【0052】
イオン化基板11のうち測定領域R及び校正領域C以外の部分は、接着層14によってフレーム12に固定されている。接着層14は、イオン化基板11の第1表面11aとフレーム12の第1面12hとの間に形成されている。これにより、イオン化基板11がフレーム2によって支持されるため、第1支持体10のハンドリングが容易になると共に、温度変化等に起因するイオン化基板11の変形が抑制される。
【0053】
接着層14は、例えば、放出ガスの少ない接着剤(例えば、低融点ガラス、真空用接着剤等)によって形成され得る。接着層14は、導電性接着剤によって形成されてもよいし、金属ペーストを塗布することによって形成されてもよい。また、接着層14は、UV硬化性接着剤(光硬化性接着剤)又は無機バインダー等によって形成されてもよい。UV硬化性接着剤の例として、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。また、無機バインダーの例として、オーデック社製のセラマボンド(登録商標)、東亞合成社製のアロンセラミック(登録商標)等が挙げられる。本実施形態では一例として、接着層14は、UV硬化性接着剤によって形成されている。
【0054】
第1支持体10は、導電層13を更に備えている。導電層13は、イオン化基板11の第1表面11aに設けられている。導電層13は、イオン化基板11の第1表面11aのうちフレーム12の開口12aに対応する領域(測定領域R)、開口12aの内面、及びフレーム12の第2面12gに一続きに(一体的に)形成されている。導電層13は、イオン化基板11の第1表面11aのうちフレーム12の開口12bに対応する領域(校正領域C)、開口12bの内面、及びフレーム12の第2面12gに一続きに(一体的に)形成されている。
【0055】
導電層13は、測定領域R及び校正領域Cのそれぞれにおいて、イオン化基板11の第1表面11aのうち貫通孔11cが形成されていない部分を覆っている。つまり、導電層13は、各貫通孔11cが塞がれないように第1表面11aに設けられている。各貫通孔11cは、開口12a及び開口12bに露出している。
【0056】
導電層13は、導電性材料によって形成されている。導電層13は、試料の質量分析に適した材料によって形成されている。具体的には、導電層13は、例えば、Pt(白金)又はAu(金)によって形成されている。導電層13の材料としては、以下に述べる理由により、試料との親和性(反応性)が低く且つ導電性が高い金属が用いられることが好ましい。
【0057】
例えば、タンパク質等の試料と親和性が高いCu(銅)等の金属によって導電層13が形成されていると、後述する試料のイオン化の過程において、試料分子にCu原子が付加した状態で試料がイオン化され、Cu原子が付加した分だけ、後述する質量分析法において検出結果がずれるおそれがある。したがって、導電層13の材料としては、試料との親和性が低い金属が用いられることが好ましい。
【0058】
一方、導電性の高い金属ほど一定の電圧を容易に且つ安定して印加し易くなる。そのため、導電性が高い金属によって導電層13が形成されていると、イオン化基板11の第1表面11aに均一に電圧を印加することが可能となる。また、導電性の高い金属ほど熱伝導性も高い傾向にある。そのため、導電性が高い金属によって導電層13が形成されていると、イオン化基板11に照射されたレーザ光(エネルギー線)のエネルギーを、導電層13を介して試料に効率的に伝えることが可能となる。したがって、導電層13の材料としては、導電性の高い金属が用いられることが好ましい。
【0059】
以上の観点から、導電層13の材料としては、例えば、Pt、Au等が用いられることが好ましい。本実施形態では、導電層13は、Ptである。導電層13は、例えば、蒸着又はスパッタリング等によって形成されている。導電層13の厚さは、例えば1nm~350nm程度である。なお、導電層13の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Ag(銀)等が用いられてもよい。
【0060】
次に、
図6~
図9を参照して、試料Sが第2支持体20に載置されている場合について説明する。
図6に示されるように、試料Sは、接着層22の第1部分24上に載置される。試料Sの面積は、第1部分24の面積よりも小さい。つまり、試料Sが第1部分24上に載置されている場合、第1部分24の一部は露出する。本実施形態では、試料Sは、第1部分24の中央部に載置され、第1部分24のうち試料Sを囲む部分が露出する。試料Sは、例えば生体試料である。試料Sは、例えば動物の肝臓切片又は植物等である。試料Sは、含水試料である。
【0061】
図7に示されるように、試料Sは、Z軸方向から見た場合に、開口12aに囲まれる。第1支持体10の測定領域Rは、Z軸方向から見た場合に、試料S及び第1部分24の露出している部分と重なる。
【0062】
図8に示されるように、フレーム12のうちイオン化基板11よりも外側に位置する部分は、Z軸方向から見た場合に、接着層22の第2部分25と重なる。
図9に示されるように、第1支持体10が第2支持体20に対して押し付けられると、イオン化基板11のうち試料Sと重なる部分は、試料Sに接触すると共に試料Sに含まれる水分の作用によって試料Sに固定される。また、第1支持体10が第2支持体20に対して押し付けられると、イオン化基板11のうち試料Sと重ならない部分は、第1部分24の露出している部分に接着される。フレーム12は、接着層22の第2部分25に接着される。これにより、第2部分25は、載置面21aの第2領域21cとフレーム12とを電気的に接続することで、第2領域21cと導電層13とを電気的に接続する。
【0063】
第2部分25の厚さが第1部分24の厚さよりも小さいため、フレーム12が第2部分25に接着された状態では、第1部分24のうちフレーム12と重なる部分は、フレーム12の押圧によって薄くなっている。これにより、イオン化基板11が第1部分24に確実に接着される。
【0064】
[質量分析方法]
次に、
図8~
図10を参照して、支持ユニット1を用いた質量分析方法(イオン化方法を含む)の一例について説明する。まず、上述した第1支持体10が用意される(第1工程)。続いて、上述した第2支持体20が用意される(第2工程)。第1工程と第2工程との順番は、前後してもよい。
【0065】
続いて、
図8に示されるように、接着層22上に試料Sが載置される(第3工程)。具体的には、第3工程では、接着層22の第1部分24の一部が露出するように第1部分24上に試料Sが載置される。続いて、第2表面11bが試料Sに対向するように第1支持体10が試料S上に配置される(第4工程)。具体的には、第4工程では、第1支持体10は、Z軸方向から見た場合に、測定領域Rが試料S及び第1部分24の露出している部分と重なるように配置される。
図9に示されるように、第4工程では、第1支持体10は、測定領域Rが第1部分24の露出している部分に接着される。第4工程では、第1支持体10のフレーム12は、第2部分25に接着される。つまり、第4工程では、第1支持体10の導電層13と載置面21aの第2領域21cとが第2部分25によって電気的に接続される。
【0066】
続いて、
図10に示されるように、試料Sが挟まれた支持ユニット1が質量分析装置30の支持部31上に載置される。質量分析装置30は、支持部31と、試料ステージ32と、照射部33と、電圧印加部34、イオン検出部35と、カメラ36と、制御部37と、を備えている。支持部31は、試料ステージ32上に載置されている。
【0067】
照射部33は、第1支持体10の第1表面11aに対してレーザ光L等のエネルギー線を照射する。電圧印加部34は、第1支持体10の第1表面11aに対して電圧を印加する。具体的には、電圧印加部34は、載置面21aの第2領域21cに電圧を印加することで、接着層22の第2部分25及びフレーム12を介して、第1表面11aに設けられた導電層13に電圧を印加する。イオン検出部35は、イオン化された試料Sの成分(試料イオンS2)を検出する。カメラ36は、照射部33によるレーザ光Lの照射位置を含むカメラ画像を取得する。カメラ36は、例えば、照射部33に付随する小型のCCDカメラである。
【0068】
制御部37は、試料ステージ32、照射部33、電圧印加部34、イオン検出部35及びカメラ36の動作を制御する。制御部37は、例えば、プロセッサ(例えば、CPU等)、及びメモリ(例えば、ROM、RAM等)等を備えるコンピュータ装置である。
【0069】
続いて、導電層13に電圧が印加されつつ第1表面11aに対してレーザ光Lが照射されることで、毛細管現象によって第2表面11b側から貫通孔11cを介して第1表面11a側に移動した試料Sの成分S1がイオン化される(第5工程)。第5工程では、載置面21aの第2領域21c及び接着層22の第2部分25を介して導電層13に電圧が印加される。
【0070】
続いて、制御部37が、カメラ36により取得された画像に基づいて、照射部33を動作させる。具体的には、制御部37は、レーザ照射範囲(例えば測定領域Rのうち、カメラ36により取得された画像に基づいて特定された成分S1が存在する領域)内の第1表面11aに対してレーザ光Lが照射されるように照射部33を動作させる。
【0071】
一例として、制御部37は、試料ステージ32を移動させると共に、照射部33によるレーザ光Lの照射動作(照射タイミング等)を制御する。すなわち、制御部37は、試料ステージ32が所定間隔移動したことを確認した後に、照射部33にレーザ光Lの照射を実行させる。例えば、制御部37は、レーザ照射範囲内をラスタスキャンするように試料ステージ32の移動(走査)と照射部33によるレーザ光Lの照射とを繰り返す。なお、第1表面11aに対する照射位置の変更は、試料ステージ32ではなく照射部33を移動させることによって行われてもよいし、試料ステージ32及び照射部33の両方を移動させることによって行われてもよい。
【0072】
このように、導電層13に電圧が印加されつつレーザ照射範囲内の第1表面11aに対してレーザ光Lが照射されることにより、第1表面11a側に移動した成分S1がイオン化され、試料イオンS2(イオン化された成分S1)が放出される。具体的には、レーザ光Lのエネルギーを吸収した導電層13から、第1表面11a側に移動した成分S1にエネルギーが伝達され、エネルギーを獲得した成分S1が気化すると共に電荷を獲得して、試料イオンS2となる。以上の各工程が、支持ユニット1を用いた試料Sのイオン化方法(一例として、質量分析方法の一部としてのレーザ脱離イオン化法)に相当する。
【0073】
放出された試料イオンS2は、支持ユニット1とイオン検出部35との間に設けられたグランド電極(図示省略)に向かって加速しながら移動する。つまり、試料イオンS2は、電圧が印加された導電層13とグランド電極との間に生じた電位差によって、グランド電極に向かって加速しながら移動する。そして、イオン検出部35によって試料イオンS2が検出される。
【0074】
イオン検出部35による試料イオンS2の検出結果は、レーザ光Lの照射位置に関連付けられる。具体的には、イオン検出部35は、レーザ照射範囲内の各位置について個別に試料イオンS2を検出する。これにより、試料Sの質量分布を示す分布画像(MSマッピングデータ)が取得される。さらに、試料Sを構成する分子の二次元分布を画像化することができる。すなわち、イメージング質量分析を行うことができる。なお、本実施形態では、質量分析装置30は、飛行時間型質量分析法(TOF-MS:Time-of-Flight Mass Spectrometry)を利用する質量分析装置である。
【0075】
以上説明したように、支持ユニット1では、接着層22が、Z軸方向から見た場合に測定領域Rと重なる第1領域21bに設けられた第1部分24を含んでいる。そのため、第1部分24の一部が露出するように第1部分24上に試料Sを載置し、測定領域Rの第2表面11bが試料Sに対向しかつ測定領域Rが第1部分24の露出している部分に接着されるように、第1支持体10を試料S上に配置することができる。これにより、試料Sのみならず接着層22の第1部分24に対しても測定領域Rを固定することができる。したがって、たとえ、イオン化基板11が薄化された結果、イオン化基板11が破損しやすくなったとしても、破損したイオン化基板11が試料S及び接着層22から飛散することが抑制される。また、載置面21aの第2領域21cは、第1支持体10と重ならない領域を有しかつ導電性を有している。接着層22の第2部分25は、導電性を有し、第2領域21cと第1支持体10の導電層13とを電気的に接続する。そのため、第2領域21c及び第2部分25を介して導電層13に電圧を印加しつつ、第1表面11aに対してレーザ光Lを照射することで、毛細管現象によって第2表面11b側から貫通孔11cを介して第1表面11a側に移動した試料Sの成分S1をイオン化することができる。一例として、電圧を印加するための端子等を導電層13に接触させることで導電層13に電圧を印加する場合も考えられる。その場合に比べて、上記の構成によれば、第2領域21c及び第2部分25を介して導電層13に電圧を印加しているため、たとえ、イオン化基板11が薄化された結果、イオン化基板11が破損しやすくなったとしても、イオン化基板11の破損が抑制される。また、接着層22によってフレーム12を支持基板21に接着することで、フレーム12の反りを抑制することができる。以上により、支持ユニット1によれば、イオン化基板11の取扱いを容易にすることが可能となる。
【0076】
接着層22の第1部分24と第2部分25とは、別体で形成されている。第1部分24と第2部分25とは、互いに離れている。これにより、第1部分24及び第2部分25のそれぞれの設計の自由度が向上する。
【0077】
第2部分25の表面は、第1部分24の表面に対して支持基板21側に位置している。これにより、イオン化基板11の測定領域Rを第1部分24に確実に接着することができる。
【0078】
支持基板21及び第1部分24のそれぞれは、光透過性を有している。これにより、第1部分24上に載置されている試料Sを容易に観察することができる。例えば、支持基板21に対して第1部分24とは反対側から照射された光の透過像を取得することで、試料Sの存在範囲等を観察することができる。
【0079】
イオン化基板11は、校正に用いられる校正領域Cを含んでいる。接着層22は、載置面21aのうち、Z軸方向から見た場合に校正領域Cと重なる領域には設けられていない。これにより、校正領域Cに例えば校正用の試薬を滴下した後、当該試薬のイオン化を行う際に、接着層22に起因するノイズの発生を抑制することができる。
【0080】
第2支持体20は、少なくとも接着層22を覆うカバー部材23を有している。これにより、接着層22を保護することができる。
【0081】
第1支持体10は、イオン化基板11の第1表面11aに配置されると共に測定領域Rを囲む開口12aを含むフレーム12を有している。イオン化基板11は、バルブ金属又はシリコンが陽極酸化されることで形成されている。これにより、フレーム12によって、イオン化基板11の測定領域Rを規定しつつイオン化基板11を補強することができる。
【0082】
載置面21aの第2領域21cは、金属膜によって形成されている。これにより、第2領域21cの導電性を容易に確保することができる。
【0083】
第1領域21bは、載置面21aの中央部に位置している。第2領域21cは、載置面21aの端部に位置している。これにより、接着層22の第1部分24及び試料Sに用いられるスペース(第1領域21b)の確保を優先しつつ、電圧の印加に用いられるスペース(第2領域21c)も適切に確保することができる。
【0084】
上記のイオン化方法の第3工程では、接着層22の第1部分24の一部が露出するように第1部分24上に試料Sが載置され、第4工程では、測定領域Rが第1部分24の露出している部分に接着されるように第1支持体10が配置される。これにより、試料Sのみならず接着層22の第1部分24に対しても測定領域Rを固定することができる。したがって、たとえ、イオン化基板11が薄化された結果、イオン化基板11が破損しやすくなったとしても、破損したイオン化基板11が試料S及び接着層22から飛散することが抑制される。また、第4工程では、導電層13と第2領域21cとが第2部分25によって電気的に接続されるように第1支持体10が配置され、第5工程では、第2領域21cに電圧が印加される。これにより、第2領域21c及び第2部分25を介して導電層13に電圧を印加することができる。一例として、電圧を印加するための端子等を導電層13に接触させることで導電層13に電圧を印加する場合も考えられる。その場合に比べて、上記の工程によれば、第2領域21c及び第2部分25を介して導電層13に電圧を印加しているため、たとえ、イオン化基板11が薄化された結果、イオン化基板11が破損しやすくなったとしても、イオン化基板11の破損が抑制される。また、第4工程では、接着層22によってフレーム12を支持基板21に接着することで、フレーム12の反りを抑制することができる。以上により、このイオン化方法によれば、イオン化基板11の取扱いを容易にすることが可能となる。
【0085】
[変形例]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に限定されない。
【0086】
載置面21aの第1領域21bが、スライドグラスの表面によって構成され、第2領域21cが、スライドグラスの表面に形成された金属膜の表面によって構成されている例を示した。支持基板21の載置面21aは、透明導電膜によって形成されていてもよい。透明導電膜は、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜である。この場合、載置面21aの第1領域21b及び第2領域21cの両方が透明導電膜の表面によって構成されており、第1領域21b及び第2領域21cの両方が導電性を有している。このような構成によれば、載置面21aの導電性及び第1領域21bの光透過性を容易に確保することができる。
【0087】
接着層22の第1部分24と第2部分25とが別体で形成されている例を示したが、第1部分24と第2部分25とは、一体で形成されていてもよい。つまり、載置面21aには、1枚の接着層22が設けられていてもよい。接着層22のうち少なくとも第2部分25が導電性を有していればよい。接着層22の全体が導電性を有していてもよい。この場合、接着層22は、同一の材料によって一体的に形成されていてもよい。
【0088】
試料Sが含水試料である例を示したが、試料Sは、乾燥試料であってもよい。この場合、第1支持体10が試料S上に配置された後、例えば溶液等が第1表面11aに対して滴下される。試料Sの成分S1は、当該溶液と混合すると共に第2表面11b側から貫通孔11cを介して第1表面11a側に移動する。イオン化基板11の測定領域Rは、当該溶液の作用によって試料Sに固定される。
【0089】
導電層13は、少なくとも第1表面11aに設けられていればよい。導電層13は、第1表面11aに加えて、例えば、第2表面2bにも設けられてもよいし、各孔2cの内面の全体又は一部にも設けられてもよい。
【0090】
質量分析装置30は、走査型の質量分析装置であってもよいし、投影型の質量分析装置であってもよい。走査型の場合、照射部33による1回のレーザ光Lの照射毎に、レーザ光Lのスポット径に対応する大きさの1画素の信号が取得される。つまり、1画素毎にレーザ光Lの走査(照射位置の変更)及び照射が行われる。一方、投影型の場合、照射部33による1回のレーザ光Lの照射毎に、レーザ光Lのスポット径に対応する画像(複数の画素)の信号が取得される。投影型の場合においてレーザ光Lのスポット径に測定領域Rの全体が含まれる場合には、1回のレーザ光Lの照射によってイメージング質量分析を行うことができる。なお、投影型の場合においてレーザ光Lのスポット径に測定領域Rの全体が含まれない場合には、走査型と同様にレーザ光Lの走査及び照射を行うことにより、測定領域R全体の信号を取得することができる。また、上述したイオン化方法は、イオンモビリティ測定等の他の測定・実験にも利用することができる。
【0091】
試料支持体の用途は、レーザ光Lの照射による試料のイオン化に限定されない。試料支持体は、レーザ光、イオンビーム、電子線等のエネルギー線の照射による試料のイオン化に用いることができる。上述したイオン化方法及び質量分析方法では、このようなエネルギー線の照射によって試料をイオン化することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…支持ユニット、10…第1支持体、11…イオン化基板、11a…第1表面、11b…第2表面、11c…貫通孔、12…フレーム(保持部材)、12a…開口、13…導電層、20…第2支持体、21…支持基板、21a…載置面、21b…第1領域、21c…第2領域、22…接着層、23…カバー部材、24…第1部分、25…第2部分、C…校正領域、R…測定領域、S…試料。
【要約】
【課題】基板の取扱いを容易にすることが可能な支持ユニット、支持体及びイオン化方法を提供する。
【解決手段】支持ユニット1は、第1支持体10と、第2支持体20と、を備えている。第1支持体10は、イオン化基板11を有している。第2支持体20は、第1支持体10に対向するように配置される。第2支持体20は、支持基板21と、接着層22と、を有している。支持基板21の載置面21aは、第1領域21bと、第2領域21cと、を含んでいる。第1領域21bは、Z軸方向から見た場合に測定領域Rと重なる。第2領域21cは、Z軸方向から見た場合に第1支持体10と重ならない領域を含みかつ導電性を有している。接着層22は、第1部分24と、第2部分25と、を含んでいる。第1部分24は、第1領域21bに設けられている。第2部分25は、導電性を有し、第2領域21cと第1支持体10の導電層13とを電気的に接続する。
【選択図】
図9